<デジタル陰陽道>絶望を破壊し、希望の心を取り戻せ
<デジタル陰陽道>絶望を破壊し、希望の心を取り戻せ


●過ちを突き止めろ!
「アンリミテッドエイトは俺たちの先輩にあたる陰陽チームだ。
 日本逢魔化以前から『怪人』という古妖と戦ってきた八人の陰陽師で構成されている」
「これまで皆さんが一緒に戦ってくれた太歳(たいさい)さんと太陰(たいいん)さんがそのメンバーです。
 本来の活動内容からも分かるとおりに、人の世を乱すどころか人々を守る立場の人たち……の、はずなんですけれど」
「ダンナやアネさんは明らかにおかしくなっちまってる。
 そしてその原因も、皆のおかげでハッキリした。
 今こそ――皆の心を取り戻す時だぜ!」

 これまでのあらすじ、と言うと大仰である。
 ファイブに所属するいくつかの覚者たちは過去、ふたつの事件に関わった。
 第一、『カカシキ妖刀』。
 人の大切なものを力にする特殊な妖刀と、その刀鍛冶の事件。力を悪用した者たちは滅び、二度と悪用されないようにと刀鍛冶は技術の抹消を試みた。
 第二、『デジタル陰陽道』
 旧陰陽組織アンリミテッドエイトと新陰陽組織インフィニットエイトの対立事件。
 本来正義組織であった筈のアンリミテッドエイトが不可解な暴走を始めた。
 その原因は彼らが正義活動のために接収したカカシキ妖刀鍛造機によるものであった。
 重要な核を抜かれた鍛造機を完成品と偽って仲間へ持ち帰った歳刑(さいぎょう)によって、偽カカシキ妖刀が作られた。
 偽カカシキ妖刀はアンリミテッドエイトの大切にしてきた規律や思いやりといったものを奪い去り、暴徒へと化してしまったのである。
 歳刑の目的とは。
 仲間を裏切り、彼が『ひとりじめ』したものとは。
 ファイヴの仲間たちは、心を取り戻すための戦いを始めた。

 デジタル陰陽道、新章の幕開けである。

●こんどこそ、鍛造機を破壊せよ!
「皆、よく集まってくれた。カカシキ妖刀、アンリミテッドエイト……それらの事件に一端の区切りをつける作戦が始まるんだ。お前も勿論、参加するよな!」
 ファイブの夢見、久方 相馬(nCL2000004)は関係者を集めた会議室で説明を始めた。
「俺たち夢見がアンリミテッドエイトの隠し拠点を感知した。
 移送された鍛造機もここにあって、偽カカシキが今も作り続けられているようだ。
 前例を考えると、彼らは必ず人々へ猛威を振るうだろう。
 それに、彼らの暴走を止めるべく戦ったインフィニットエイトの仲間もここにとらわれている。
 今ある戦力で襲撃を仕掛け、『鍛造機の破壊』『仲間の救助』を達成するんだ!」

 隠し拠点というのは山小屋に偽装した地下施設である。
 ここにはアンリミテッドエイトの幹部と、その配下にある『怪人』たちが常駐している。
「ここに常駐しているのは歳破(さいは)、歳殺(さいさつ)、黄幡(おうばん)、豹尾(びょうび)、そして歳刑(さいぎょう)だ。
 それぞれが複数の『怪人』をしたがえ、襲撃に対応するだろう」
 施設は4つのブロックに分かれている。
 区分けするならこうだ。

・鍛造機ブロック
 歳破と10体前後の怪人部隊が守護している。
 彼らを倒し、鍛造機を破壊する必要がある。
 鍛造機を破壊しようとすると『鍛造鬼』という古妖がセキュリティとして現われる。
 この両方を相手にするため、連戦を要求されることになる。
 そのため、突破には『約五人分』の戦力が必要になるだろう。

・仲間が捕らわれているブロックA
 仲間のひとり風見 木蓮がとらわれてるブロック。
 歳殺と10体前後の怪人部隊が守護している。
 彼らを倒すには『約五人分』の戦力を必要とする。
 戦いながら風見を助けるか、倒してから風見を助けるかの判断が重要になるだろう。

・仲間が捕らわれているブロックB
 仲間のひとり、神 海生がとらわれているブロック。
 黄幡と10体前後の怪人部隊が守護している。
 彼らを倒すには『約五人分』の戦力を必要とする。
 戦いながら神を助けるか、倒してから風見を助けるかの判断が重要になるだろう。

・歳刑たちの居住エリア
 豹尾と歳刑、そしてこの施設に雇われた大量の一般兵がいるブロック。
 攻略の必要はないが、ここからそれぞれのブロックに兵力が投入される。
 通路を塞げば援軍を阻止できるだろう。
 しかし通せんぼを続ければ命をおとす危険がある。無理は禁物だ。

「それぞれに戦力が配置され、時間に応じて敵戦力が次々に駆けつけることになる。
 だから幹部の撃破を優先する必要は無い。むしろ、無理をせずに鍛造機の破壊と仲間の救助に集中するべきだろう。欲ばって全てを失う危険があるからな」
 相馬はそこまでの内容をメモにまとめると、全員に配った。
「戦いはまだ続く。けど、鍛造機を破壊することで歳刑を追い詰めることができるはずだ。
 皆、たのんだぜ!」


■シナリオ詳細
種別:通常(EX)
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.鍛造機の破壊
2.仲間(風見、神)の救出
3.なし
デジタル陰陽道、第二章の幕開けです。
これまで皆さんが培ったものがそのまま戦力になるでしょう。
こちらではプレイングをかけやすいように内容を簡潔にまとめます

【成功条件まとめ】
・鍛造機の破壊
 →連戦が必要
 →5人分の戦力が必要
・仲間の救出
 →救出を先にするか後にするかで要求されるプレイが変化
 →5人分×2の戦力が必要

【味方NPCまとめ】
●インフィニットエイト関係
・一文字太陽:火行暦。USB式陰陽メモリで状況に応じて強化を切り替える。
・本郷大地:土行暦。スマホに陰陽術式を自動起動するアプリで戦う
・結城裂花:木行暦。押花ICカードで高速で術式を発動させる。

●とらわれている仲間
・風見木蓮:火行暦。QRコードに圧縮した陰陽陣を使うマルチ術式タイプ。
・神海生:水行暦。陰陽カセットで自己強化。体術と術式を組み合わせた棒術が得意。

●カカシキ関係
・九条蓮華:カカシキ妖刀の刀鍛冶。普通の刀で参戦するので戦力は若干弱め。体術メインで戦う。
・絹笠:天行械。偽妖刀リスクマネジメントの所持者。雑魚を蹴散らす戦いが得意。ベースの能力が低いので戦力は覚者一人分。

【敵戦力まとめ】
・偽カカシキ持ち
 アンリミテッドエイトの幹部は偽カカシキという強力な武器をもつ。
 ふつうの覚者二人がかりで倒せる戦力。
 鍛造機ブロック、仲間救出ブロックAB、居住ブロックにそれぞれ一人ずついる。
・怪人
 負の感情(今回は主にアンリミテッドエイトたち)から生み出された古妖。
 今回配備されているのは特別な能力はもたないものばかりだが、束になると覚者よりも強い。

・一般兵
 弱い偽カカシキ妖刀で武装した一般兵たち。刀や拳銃といった普通の武器なので蹴散らすのは簡単。ただし数が増えると厄介。
・歳刑
 戦力不明の黒幕。
 今回、普通に成功条件を達成する場合はタッチしない相手。

【用語解説】
・インフィニットエイト
 一文字、本郷、結城たちが所属する現代の陰陽組織。
 人々を守るべく日夜『怪人』と戦っていた。
・アンリミテッドエイト
 太陰の所属する陰陽組織。インフィニの先輩にあたり、メンバーはもれなく世話になっている、らしい。
 歳刑の策略で暴徒化してしまった。
・怪人
 悪性古妖。人々の悪い心にとりつき悪行を働かせる。
 古来より陰陽組織がそれを吸い出し、退治してきた。
・カカシキ妖刀と偽カカシキ
 京都が日本の中心だった頃、天才刀鍛冶が作った魔を払う妖刀。現代にまで製法が伝わったが、つい最近唯一の鍛造手段を破壊したばかり。鍛造設備の大部分はアンリミテッドエイトが「妖から人々を守るために」と回収していった。
 大切なものを守りつづける限り力をもつ妖刀だが、偽物になると大切なものを喪う代わりに強大な力を得る。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
150LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2017年12月01日

■メイン参加者 8人■

『天を舞う雷電の鳳』
麻弓 紡(CL2000623)
『エリニュスの翼』
如月・彩吹(CL2001525)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)
『冷徹の論理』
緒形 逝(CL2000156)
『五行の橋渡し』
四条・理央(CL2000070)

●描け電子の五芒星
 古びた田舎道を歩く一人の青年、本郷大地。
 彼はスマートホンを取り出すと、専用アプリを起動した。
 左右から合流する『天を翔ぶ雷霆の龍』成瀬 翔(CL2000063)と『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)。
 翔はタブレットPCを取り出して専用アプリを起動。理緒は色とりどりの護符を扇状に広げた。
 三人はそれぞれに指で五芒星を描いていく。
「「――覚醒」」

 少女、結城裂花は茂みを抜けてすっくと立ち上がった。
 ベルトのカードホルダーから押し花の入ったラミネートカードを取り出した。
 左右から合流する『意志への祈り』賀茂 たまき(CL2000994)と『修羅の拳』如月・彩吹(CL2001525)。
 彼女たち三人はそれぞれ腕時計型端末に自分のカードを翳した。
 『rosemary』『babybless』『strelitzia』
「「――覚醒」」

 民家の屋根より跳躍。力強く着地する青年、一文字太陽。
 彼は肩掛け式のホルダーからUSBメモリースティックを引き抜いた。
 左右から合流する『天を舞う雷電の鳳』麻弓 紡(CL2000623)と『冷徹の論理』緒形 逝(CL2000156)。
 二人もまたメモリースティックを手に取り、それぞれを自らの武器にすっぽりと挿入した。
 『sun and moon!』『Jupiter!』『Saturn!』
「「――覚醒」」

 彼らを待っていたかのように、腕組みをして振り返る九条蓮華。眼鏡を指で押し上げてちらりと見やる絹笠。
 その左右から、『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)と『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)がそれぞれ合流した。
 二人は手を翳し、祈りを唱える。
「余はもうニポンを見捨てない。――妖槌・アイラブニポン!」
「私はもう大事な何かを抱きしめない。――妖器・インブレス!」
「「覚醒」」

 今ここに、十二人の戦士たちが集まった。
 彼らは一様に巨大な施設を見上げ、身構えた。
 目指すはアンリミテッドの集合拠点。
 インフィニットエイトの仲間たちがとらわれ、接収された鍛造機が置かれ、そして全ての黒幕である歳刑がすまう場所。

 十二人の戦士たちは、一斉に走り出した。

●本能を解き放てば、野生が吠える
 檻に仕切られた独房に、赤いジャケットを着た青年が座り込んでいた。
「なあ歳殺……アンタ、いつからそんな風になっちまったんだ。褒めて伸ばすっていうアンタの考え方、合わねえけど嫌いじゃあなかったんだぜ」
「黙れよこのクソ野生児が」
 ショットガンを両手に持ったスキンヘッドの男性、歳殺。彼は吐き捨てるように言うと鉄格子を蹴りつけた。
「すぐにでもそのナメたクチをきけなくしてやる。もうすぐにだ」
 にらみ合う二人。
 そこへ、激しい爆発音と共に怪人が吹き飛ばされてきた。
 ごろごろと転がる怪人。それを一瞥してから、入り口方向を見やる。
 そこに居たのは
「おう、アンリミテッドエイトの歳殺! これ以上勝手はさせねえぞ!」
 タブレットPC型神具、カクセイパッドを握って二本指を立てる翔。
「誰だ、貴様……」
「よくぞ聞いてくれた――ファイヴブルー、成瀬翔だ!」
「同じくファイヴイエロー、麻弓紡」
 三日月型ステッキをくるくるとやってポーズする紡。
「如月彩吹だけど……えっ、それ今やらなきゃダメ……?」
 若干テンポについていけていない彩吹。
 三人はとりあえず構えると、背後でおこる爆発演出に合わせた。
「とりあえず邪魔者だってのは確からしいな」
 歳殺はショットガンをくるりと回すと、二丁いっぺんに乱射した。
「紡、まかした!」
「まかされた!」
 マジックスリングショットロッド、ネウラ・クーンシルッピ。その根元に現われた挿入口にメモリースティックを挿入。『Jupiter!』の電子音と共にばちばちとはじける電撃。
 電撃のつぶを素手で掴むと、その全てをスリングショットにかけて発射した。
「カウンタースパーク!」
 無数に分裂しながら飛んだ電撃の粒が同じく分裂したショットガンの弾に正面からぶつかって相殺。
 左右から回り込んだ怪人たちが両手を突き出すように翳した。
「やれ、『ヘイトスピーカー』。脳みそグチャグチャにしてやれ!」
 声にならない奇声を放つ怪人ヘイトスピーカーたち。
 脳に直接突き刺さるような声に、紡は思わず耳を塞いだ。
「この――うるさいよ!」
 声を振り切った彩吹はカードを翳した。『strelitzia』の電子音と共に彼女の足に炎が灯り、跳躍。回転。翼を広げ加速して、流星のごとく怪人の列へと突っ込んだ。
 大爆発がおき、怪人たちが押しのけられた。
 だが全てというわけにはいかない。その後ろに控えていた怪人たちが彩吹の両腕を掴んで固定し、一方的に殴りつけ始める。
「こいつらやり方が汚え! ったく、偽カカシキから生まれる怪人ってのはみんなこうなのかよ!」
 翔はタブレットに龍の文字を書き込むと、デジタル式神召喚ボタンをタップした。
 激しい光が画面から漏れ、無数の龍がホログラムによって現われる。
 竜に薙ぎ払われるようにして怪人たちが吹き払われる……が、その直後に打ち込まれた歳殺のショットガン乱射によって翔たちはまとめて吹き飛ばされた。
 激しく散る火花。
 地面を転がる翔たち。
「この俺に刃向かった度胸もクソだが、その程度の戦力で戦おうと思った浅はかさもクソだな。てめえら全員クソの集まりかよ」
 ぐるりと回してショットガンをリロードする歳殺。
「へっ、そいつはどうかな」
 背後からの声。
 ハッとして振り返ると、鍵を破壊して開かれた鉄格子の扉があった。
「こっちだセンパイ野郎!」
 天井に張り付いていた風見木蓮が急降下と共に炎の爪を繰り出した。
 反動で飛び退くと、複雑なQRコードを刻んだ護符をベルトバックルに読み込ませた。
 『crocodile』『piranha』『dangerous fangs!』の電子音と共に巨大な炎と鋼が混ざり合った牙が生まれ、歳殺へと襲いかかる。
「ぐうっ……一体いつの間に抜けやがった!」
「あんたが紡たちに気を取られてる間さ、先輩」
 逆方向から奇襲をかける一文字太陽。赤いメモリースティックを銃型端末に差し込むと『mars!』の電子音と共に炎の矢を連発。歳殺へと直撃させていく。
 こうして五人は合流すると、ハイタッチを交わして振り返った。
「さあて、仕上げと行こうぜ!」
 タブレットに超越の文字を書き付ける翔。
 翼を広げて飛び立つ紡と彩吹。
 それぞれに身構える太陽と木蓮。
 全員の力を一つにあわせ、巨大な高熱ビームとなった龍が歳殺やヘイトスピーカーたちを飲み込んでいった。
「クソッ、他の連中は何をやってる! 他の連中さえ来れば、こんなことにはこんなことにはこんなことにはあああああああああ!」

●ファーストキッスよりだいじなもの
 木蓮がとらわれていたAブロックには居住区からの援軍が駆けつける筈であった。
 しかしそれが一人たりとも到達できなかったことには、ハッキリとした理由がある。
「ええい、そこをどけ! 俺様の邪魔をするな! 殺してやるぞ!」
 アンリミテッドエイトのひとり、豹尾が巨大な薙刀をぐるぐると振り回し、自らの兵隊もろともめちゃくちゃに破壊しながら突っ込んでくる。
 それを正面からハンマーインパクトで迎撃するプリンス。
 垂れ目のまま片眉を上げる。
「ごめんね。そう言わずにゆっくりしていかない? 粗茶とか出そうよ。余、ヨーカン2本はいけるよ」
「軽口が過ぎるわい、殺してやるぞ!」
 力強い蹴り。ひょろりとしたプリンスなど簡単に蹴り飛ばしそうなものだが、それを足のふんばりだけで耐えてみせる。
「余はね、決めたんだ。もう見捨てないって。どんなに愚かな民がいても、どんなに愚かな選択がなされても、余だけは見捨てない。だからかな、こんなに力がわいてくるのは」
 豪快に振り込まれる巨大薙刀に対してハンマーをぶつけて相殺していく。
 その一方で、絹笠は名刺ケースを渚はアタッシュケースを開いてそれぞれの武器を展開した。
「私は最も信じた自らの感情を喪いました。ゆえに、感情で動くあなたがたは信頼できる」
 絹笠の放ったメタルカードが兵隊たちに突き刺さり、指先から伝った電流が激しい火花になって散っていく。
 迎撃にと放たれた兵隊たちの銃撃。
 しかし大量の弾丸は渚の放った大量の注射器と相殺した。
「私の心臓は痛みと重みでできている。誰かの痛みを代わるために、誰かの悲しみを代わるために。この手ももはや、そのためだけに……!」
 胸に当てた手を離すと、渚の背に大きな光の翼が生まれた。癒やしの羽根となってプリンスたちに降り注ぐ。
 兵隊たちも、豹尾も、プリンスたちの鉄壁の守りを抜けることができない。
 だが、居住区から出ていく戦力はこればかりではなかった。
「随分元気だねえ。なんでも暴力で解決しちゃうなんて、家庭環境が悪かったのかな?」
 カンに触る詭弁とスマートなシルエット。
「やあ……親戚の民、そのセツはごめんね」
「いやなに」
 プリンスの軽口ですらさらりと流す、彼の名は……歳刑。
「おかげで色々と儲かった」
 肩をすくめ、手を翳す。すると手の中に拳銃が現われた。
 側面に特殊な文字が刻まれた、太歳が持っていたのと同じ陰陽拳銃だ。
 空を薙ぎ払うかのごとく横一文字に振って射撃。それだけで何十発という銃弾がホーミングしながらプリンスや渚たちに直撃した。
 吹き飛ばされるプリンスたち。
 更なる射撃が行なわれるが、代わりに前へ出たたまきがリュックサックから護符を展開。複数の大型護符が鋼のように硬化すると、弾丸をはねる盾となった。
「ふうん、ならこっちはどうかな」
 歳刑は左手に万年筆を取り出すと、先端から炎を放ちながら陰陽陣を描いた。
 凄まじいプレッシャーに吹き飛ばされるたまき。
 プリンスは口元の血をぬぐって建ち上がる。
「太歳と太陰の偽カカシキ妖刀……なるほどね、やっぱり」
「歳刑さん……あなたはこんなことまでして、何を求めているのですか。信念や、心情や、願い……そんなものを集めて、何になろうとしているのですか」
「見て分かるだろう?」
 肩をすくめる歳刑。
 彼の背後にはショットガンや薙刀や日本刀。両手に持ったものとあわせて計六つの偽カカシキ妖刀が出現した。
 神具の限界を超えた武装。覚者という枠の制限解除。
 だがそんな行為が代償なしに行なえる筈が無かった。
 その代償とは……。
「歳刑? だれだ、それは?」
 豹尾が、すぐ隣にいる人物に対してまったく関知していなかった。
「代償は仲間とのつながりというわけですか」
「そんな悲しい力……!」
 たまきはカードを翳すと、『babybless』の電子音と共に無数の大護符を展開させた。
 護符から放たれたプレッシャーアタックが兵隊たちを一斉に吹きとばす。
 回転した薙刀によって守られた歳刑は、軽やかに髪をかきあげて見せた。
「君らがここまで辿ってくるとは思わなかった。途中でよその怪人に矛先を向けて終わりだと思ったから……んー、そうだね、ここももう終わりか」
 豹尾に全く関知されることなく、歳刑はくるりと背を向けて立ち去ろうとしている。恐らくこの基地を脱出するつもりだろう。
 それを追いかけることは、しなかった。
 いずれまた、戦うことになるだろうから。

●人の命は、無限の未来!
 医術用の白衣を着た青年が鉄格子を掴んでゆすった。
「黄幡さん、なぜですか! なんで俺たちが戦う必要があるんです!」
「…………」
 相手は腕組みしてあぐらをかき、一言も喋らない。
 服装は黄色と黒の縦縞虎模様。野球帽をかぶり、野球バットを膝に乗せている。
「なんか言ってくださいよ! いつものウザい野球話、聞いてあげますから!」
「…………」
 黄幡は黙ったまま、すっくと立ち上がる。
 何事かと見やれば。
「アハハ。アハハハ」
 刀をずるずると引きずった黒づくめの男がいた。
 身体は喪服のごとく黒いパンツとジャケット。黒いネクタイにイエローのシャツを着て、両腕はあろう事かブレード状に変化していた。
「違法改造に不良品の量産、やめておくれよ。バグを食べきるのが大変さね」
 隣をゆくは、三つ編みの少女。眼鏡を外し、髪をおろし、赤く変色した目を開いて言った。
「陰陽道の悪用。いつの時代でもありそうだけど、この時代では見過ごさないよ」
 理央は複数の護符を一斉に投げると、それぞれの術式を時間差展開させ始めた。
 カウントワン。
「水龍牙!」
「……!」
 理央の護符のうち一つが激しい水流となり襲いかかる。
 バックバイトと呼ばれる怪人たちが耳障りな奇声を放ちながら飛びかかり、ぶつかり合った。
 カウントツー。
 怪人たちから浴びせられた怪音波を払うように、護符がはじけた水の雨が降り注ぐ。
 カウントスリー。
 また別の護符がはじけて花吹雪となり、甘い香りが辺りを満たし始める。
「喰い散らかすわよ」
「ぶっ殺す!」
 刀を握った逝と九条蓮華が同時に突撃。
 怪人とぶつかり合った蓮華とは別に、逝はふらふらとした奇妙な体術で怪人の間をすり抜け、黄幡へと斬りかかった。
 木製バットと刀がぶつかり、エネルギーの火花を散らす。
 力量は互角か。否、逝の方がいくらか弱る。
 しかし黄幡のパワーを逝の防御が頑強にしのいでいるといった状態だ。
 トータルで不利。しかしその戦力差は、すぐに覆されることになる。
 ギン、という耳障りな音と共に鉄格子が切り裂かれ、本郷大地が海生を救出したのだ。
「…………」
 その様子をどこか忌々しそうに振り返る黄幡。
「黄幡さん、あなたがなぜ変わったのかはもう聞かない。その代わり、貴女を殴ってでも止めてやる!」
 海生は陰陽術式を大量に保存したカートリッジを胸の端末に差し込むと、『superーsniper!』の電子音と共にロッドをアンチマテリアルライフルに変換した。
 彼の射撃と共に豪快な跳び蹴りを放つ大地。
 集中攻撃をくらった黄幡に、逝がとどめの一文字斬りを叩き込んだ。
 すっと背を向ける理央。続いて、怪人たちがばたばたと倒れていく。

●心よ回れ、歪んだ正義を貫いて
 鍛造機を保管しているエリアでは、ブロンド女性の歳破が退屈そうにしていた。
「歳刑と連絡がつかなくなったから、まさかと思ったけど……」
 こんこんとこめかみをクレジットカードの角で叩きつつ、目の前に並んだ戦士たちにため息をついた。
「もうおしまいね、ここも」
 歳破が諦めるのも無理はない。
 救出してきた海生と木蓮をはじめ、大地や裂花、太陽といったインフィニットエイトの面々。
 そして蓮華や絹笠を仲間に加えたファイブの八人がそろい踏みしているのだ。
 居住区側から追いかけてきた豹尾たちを加算したとしても、ギリギリ対抗できるかどうかの戦力である。
「だったら、こうするしかないわね」
 歳破がクレジットカードを振ると、十体ほどの金色をした怪人が出現。
 その全員の頭上にきわめて高級な銃器が出現した。それを彼らに装備させると、一斉に鍛造機へと攻撃させる。
「あっ、おい! そんなことしたら……!」
 身を乗り出す翔。
 彼の心配通りに、鍛造機からは鬼のようなバケモノが三体ほど飛び出してきた。
「やぶれかぶれの総力戦ってわけだね」
「なに、やることは一緒さね」
 護符や刀を握る理央と逝。
「シンプルでいいかも? 殿、調子のらないようにね」
「余はいつも真面目だよ?」
 ハンマーやロッド、背をあわせそれぞれの武器を握りしめるプリンスと紡。
 彩吹は槍をぐるぐると回し、渚は大量の注射器を片手に握り、たまきはリュックサックからポスターのように丸めた護符を二本引っ張り出した。
「さあ、行きましょう。みなさん」
「悪によって生まれた力なら」
「まずはお仕置きしないと、だよね!」
 敵味方、一斉に走り出す。

 怪人たちが三人一斉にミサイルランチャーを担ぎ、発射。
 着弾したミサイルが激しい爆発を起こすが、紡と理央がそれらを激しい水流によって押し流した。
「おかえしだよっ」
 天に放った理央の護符が炎の弾に変わり、怪人へと次々に打ち込まれていく。
 と同時に、紡と逝は自分の武器に陰陽メモリースティックを装填。それに併せて太陽も腕の端末に虹色のメモリースティックを装填すると、怪人たちへと一斉に突撃を仕掛けた。
 電撃を纏った紡のロッドが、瘴気を纏った逝の剣が、虹を纏った太陽の拳が怪人たちを粉砕する。
 その一方で、豹尾が薙刀を振りかざして突撃してきた。
 挟み撃ちの状況だ。逃げ場は無い。
 しかし逃げる必要だってない。
 たまきは護符を投げて巨大な盾にすると、描かれた虎が咆哮をあげた。薙刀が護符によって止められる。
「仲間同士が争うなんて、どうしてこんなことになるいかねっ」
 翼を広げて跳躍する彩吹。
 たまきが、彩吹が、そして裂花が押し花アイシーカードを翳した。
 彼女たちのエネルギーがひとつに集まり、混ざり合う。
 彩吹の放つ炎のような熱気が、たまきの生み出す鋼のような衝撃が、裂花の生み出す猛毒が、ひとつの巨大なトゲとなって豹尾を貫いた。
 後じさりする歳破。
 しかし彼女を逃がすまいと翔が素早く回り込んだ。
「この程度の窮地――あんたら、給料分は働きなさい!」
 号令に応じた兵士たちが翔に襲いかかるが……。
「おいおい。俺相手に頭数で攻めようとは、悪手だぜ。なあ、本郷大地!」
「愚問。やるぞ翔!」
 大地は自分のスマートホンを、翔は自分のタブレットPCをお互いに向けて投げると、空中ですれ違いながらデータを交換互いにキャッチすると、空中に『星』と『竜』の文字を描いた。
「八岐大蛇!」
 大地を割るかのごとき強引さで雷の竜が無数に飛び出し、兵士たちを歳破ごと薙ぎ払っていく。
 残るは鍛造機の鬼――鍛造鬼だけだ。
「あの時成し遂げられなかった破壊を、今こそ――!」
 渚が注射器を放つと、鍛造鬼はそれを片手でうけて握りつぶす。
 一方で、蓮華は刀を持つ手を震えさせていた。
「ねえンゲ姫」
「その呼び方ムカつく死ね」
「辛辣ー」
 プリンスは彼女の肩を掴んで、もったりと笑った。
「やりたいことと、やるべきこと。でもってできることが分かったら、人間なんでもできるんだよ。姫は今、全部そろってるじゃない」
「……うっさい」
 目をそらす蓮華。
 その様子を見ていた木蓮と海生が、頷きあって歩み寄った。
 プリンスと渚それぞれの横に立つと、木蓮はQRコードステッカーを、海生はカセット型カートリッジを手渡した。
「使ってくれ、今日の主役は俺らじゃなさそうだ」
「あなたが誰かの笑顔を守るなら、僕はあなたを守ります」
「ありがとう……」
 渚がQRコードの書かれたステッカーをメタルケースに貼り付けると激しい輝きと共にケースから大量の青い鳥が飛び出した。むろん、幻影の鳥である。
 同じくプリンスがハンマーにカートリッジを差し込むと、ハンマーが突然巨大化した。
 突撃をしかけてくる鍛造鬼。
 しかし恐れるものなどない。
 渚は鳥の群れを、プリンスは巨大ハンマーをそれぞれ叩き込み、背後の鍛造機ごと粉砕した。

●「大将軍ってだれだっけ」
 アンリミテッドエイトの拠点を制圧し、幹部たちもまとめて拘束したファイヴたち。
 彼らは外に出ると、ぐっと背伸びをした。
「今度こそ、みんなとわかり合えるといいな」
「はい。そして……歳刑さんが求めた力も、わかって上げたいです」
 頷きあう渚とたまき。
 その二人の肩をぽんと叩いて、彩吹がにっこりと笑いかけた。
「歳刑を覗いて幹部をみんな捕まえられたから、部下たちも大人しく投降してくれたし、今回は一件落着ってことでいいんじゃない?」
「そうだな。思ったよりうまくいったよな!」
 頭の後ろで手を組んで笑う翔。
 そこで『おや』という顔で固まった。
 眼鏡をかけなおす理央。
「そういえば、アンリミテッドエイトって八人いるんじゃなかったかな」
「太陰、太歳――ひふみよいつむな……七人さね」
「みんな同じような名前してるからわかんないけど、八人目いるの?」
 にゅっと顔を出してきたプリンス(キスマークつき)に、理央が本を開いて見せた。
「あの人たちの名前ね、陰陽道の八神将にちなんでるみたいなの。だから猛一人は……『大将軍』って名前のひといる?」
「ダイショーグン? 巨大ロボかな」
「巨大な大将軍ってそんな……あっ」
 会話に今から混ざろうとした紡が、はたと自分の額を叩いた。
「ボクそのひと知ってる気がする」

●このひとですよ
「へっくち!」
「おい、ジェンガしてるときにくしゃみしするなよ!」
「五月蠅いぞレッド。貴様のばんだ」
「ねえ今日のカレー、キーマでもいい?」
「みんなー白菜とれたよー」
「ダメだよブラウン、テーブルにおいちゃくずれ……あー……」
 わっちゃわちゃになったテーブルを見下ろす五人の男性とひとりの幼女。プラスショタ。
「何をやっておるのだ貴様らは、人間の遊びなどくだらぬな。ほら、PUPGするから席につけ」
 くぅるりと振り返ったのは残虐大帝ことざーくん。
 でもってジェンガのはじっこを持って投げつける幼女は、残酷大将軍ことざーちゃんである。
「ええいなんじゃ、貴様もやっとるではないか! わしもまぜ――へっくち!」
「なにざーちゃん、風邪?」
「怪人も風邪ひくんだな」
「ひくわい風邪くらい……うーむ、このやりとり、四百年くらいまえにもしたきがする……」

 そんな彼らを加えましての、デジタル陰陽道、第二幕。
 ザンギャク帝国編――はじまり、はじまり。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

レアドロップ!

取得キャラクター:『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)
取得アイテム:陰陽QR『Trochilidae』

取得キャラクター:『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)
取得アイテム名:陰陽カセット『hammer hunter』




 
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