真夜中に古妖の大会開かれる
【夜行武闘会】真夜中に古妖の大会開かれる


●夜行武闘会
「夜行武闘会ぃ?」
「はい。ざっくり言ってしまえば古妖が開く武闘大会です」
 あまりにざっくりとした説明だが、それだけで大会の概要は理解できた。
 基本的に古妖は武闘に興味がない。背後から迫る相手に回し蹴りをするよりは尻尾ではたいた方が速く、関節を極めずとも相手の動きを止める術はある。そもそもの話として、相手を圧倒するならその力や妖術でねじ伏せる方が効率的なのだ。
 だが人間に興味を持つ古妖の中には、人間の技法を学ぶ者もいる。長く生きる存在の暇つぶし的な意味もあるが、身体能力が高い古妖が武術を学べばその威力は人間を圧倒する。
 まあ端的に言えば――
「それに参加すれば強い古妖と戦えるって寸法か。もっと詳しく教えな」
 話を聞いた少女は膝を叩き、立ち上がる。自らのシンボルである雷太鼓を背負い、笑みを浮かべて話を促した。
「はい。予選はバトルロワイヤルです。八チームになったところでトーナメント戦。優勝者は大会主催者の妖狐と戦い、勝利すれば『武神の冠』と呼ばれる物がもらえるとか」
「商品に興味はねぇが、面白そうじゃねえか。何時やるんだ?」
「開催日時は――」

●古妖達
「ここで優勝して、おいどんの狸相撲をしめすでごわす!」
 四股を踏むタヌキが鼻息荒く笑みを浮かべた。弟子たちが賛同するように四股を踏む。

「児戯だな。だが武神の名がつくなら捨て置けぬ」「然り」
 腕を組み二体の鬼が立ち上がった。

「ふふ。強い男に出会えるかしら?」「私達より強い男、久しく見てないねぇ」
 妖艶に口元を隠し、氷柱女が笑う。

「カラカラカラ! 殺し禁止? 死ななきゃいいんだろう!」「カラカラカラ!」
 闇の中、複数の髑髏武者が大笑いする。

「武神の衣だと!? べらんめぇ、強い布はオレだけだ。行くぞ相棒!」「きゅう」
 怒る一反木綿と頷く絹狸が道を歩いていた。

「兄が転ばし!」「次男が切り裂き!」「長女が罵る!」「古妖戦隊カマイタチ! 参上!」
 鎌鼬三兄弟妹が山の上で無意味にポーズを決めていた。

●FiVE
「――という大会があるんじゃが、出てみる気はないか?」
『気炎万丈』榊原・源蔵(nCL2000050)はFiVEの覚者に和紙で書かれた招待状を見せながら呼び掛けていた。
「ざっくり言えば古妖の喧嘩祭じゃよ。六十年周期で行われる大会でな。前回の時はワシも若かった。入道相手に――」
 暫く老人の昔話が続くが、本依頼と関係ないので割愛。
「古妖の大会とは言うが人間が出ても問題ないらしくてな。腕試しや交流がてら、参加してみるのも悪くないかもしれんぞ」
 暴力的ではあるが殺し禁止の武術大会だ。気分転換にはいいかもしれない。
 源蔵の誘いを貴方は――



■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:簡単
担当ST:どくどく
■成功条件
1.予選を突破する
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 どこかの少年雑誌なノリで問題ありません。

●夜行武闘会
 古妖が開催する武術大会です。六十年に一度の周期で行われ、今年がその年に当たります。噂を聞きつけ、OPで出た以外にも様々な古妖や人間が参加しています。
 前回参加者の源蔵の誘いで大会に参加することになりました。強さを求めて、戦を求めて、賞品を求めて、誘われてなんとなく。理由は様々でしょう。

 予選は全参加者によるバトルロワイヤルです。役者不足の古妖を薙ぎ払いながら、特定のチームを落とす事も可能です。そして同時に相手の実力を計るチャンスとも言えます。
 ある程度の実力があるなら予選突破は可能(ぶっちゃけると全員白紙でない限りは予選突破は可能)ですが、ここで実力を見せすぎるとトーナメントで対策を立てられる可能性があります。逆に実力を認められて気に入られることもあります。それによりこの大会の情報を得ることが出来るでしょう。

 予選でとれる選択肢としては主に二つ。
『実力を隠し、相手の強さを探る』
 情報収集に特化します。相手の強さなどは解りますが、他の古妖達に戦いには消極的だと受け取られてしまう可能性があります。
『実力を示して戦う』
 武勇を示すことはできますが、こちらの戦闘に関する情報を渡すことになります。

 リプレイは『バトルロワイヤル』→『予選突破後、対戦相手との歓談』の流れになります。
 予選突破するメンバーは、
『戦いが好きな雷太鼓を背負った仮面少女率いる人間チーム(参加PCと同数)』
『名声を求める太った狸とその弟子四名』
『無骨な鬼二体』
『強い男が好きな氷柱女三姉妹』
『血を見るのが好きな七体の髑髏武者』
『短気な一反木綿と連れ添いの絹狸』
『奇妙なノリの鎌鼬三体』
 になります。一人で複数チームと話すこともできますが、内容を絞った方が描写が増えるでしょう。また予選でどう戦ったかも、会話内容に影響します。
 初回なのでキャラ紹介回です。キャラの感性に合う相手と会って話をするのをお勧めします。

●場所情報
 とある山の中にある広場。時刻は夜……ですが明りは古妖達が様々な手段で照らしてくれます。武舞台の広さなどは十分な広さがあると思ってください。周りには古妖の観客がたくさんです。
 予選後は、寺のようなところに連れてこられて、各チームごとに大部屋を与えられます。
 
 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2017年10月23日

■メイン参加者 6人■



 夜行武闘会。
 集まった古妖の組数は百を超え、それぞれが戦意は高い。古妖達の持つ武器も様々で、徒手空拳の者もいれば、人の身では持つことが出来ないほどの重さのモノもある。数を揃える者もいれば、単騎で挑む者もいる。そして――そんな古妖達に交じって人間の姿もあった。
「古妖達が武術大会を開催しているというのは驚きだな」
 多種多様な古妖達を見て、『献身の青』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は驚くように呟いた。ゲイルは人間の武術などに興味がないと思っていた。事実武術を使う古妖は少数派だろう。どうあれ古妖と触れ合うにはいい機会だ。
(主催者は妖狐か。どのような思惑があるのだろうな)
 強者を集め、最終的に己と勝負させる。そこにどのような意図があるのだろうか。強い者と戦いたいのか。場を盛り上げるための演出か。己の強さを示すための贄探しか。どちらにせよ、全力で当たるのみだ。
「あたしの剣がどこまで通用するか、楽しみやで」
 場の戦意にあてられて鯉口に指をあてる『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119)。いつでも抜けるようにするのは剣士の所作。しかし武闘会となれば開始前の挑発は禁物。開始の合図を今か今かと待っていた。
(六十年に一度か。もしかしたら師範も出とったかもな)
 六十年に一度行われるという夜行武闘会。年代的に凛の祖父である焔陰流の師範が修行に明け暮れていた時期だ。腕試しにと参加していたかもしれない。実家に帰ったら聞いてみるか、と思いながら笑みを浮かべる。
「なるほど、妖力に頼る古妖だけが全てじゃないと」
 周りの古妖達を見て水蓮寺 静護(CL2000471)は静かに頷いた。古妖の能力は人を凌駕する。空を泳ぎ、火を吐き、鉄を切り裂く爪を振るい。もって生まれた能力だけで人を凌駕する古妖。だが古妖にもさまざまな種類がいる。
(武術は弱い者が強きに挑むための術。妖力が弱い古妖が強者に挑む術として学んだか)
 古妖の中には人と同じ力しかもっていない者もいる。人より小さい古妖もいる。そんな存在が強い存在に挑む手段として、人の武を学んだのだ。人もまた、強い存在に抗うために武を磨くのだから。
「殺し無しの大会。ならば全力で挑みましょう」
 弓の張りを確認しながら三島 椿(CL2000061)は宣言する。予選のバトルロワイヤルは情報戦も含んでいる。相手の強さを知ることと、己の情報を絞る事。これも肝要と言えよう。だがしかし、ここで手を抜くことは椿のスタンスに反する。
(手の内をすべて見せ、それで勝つ。正々堂々と挑みましょう)
 かつて両親を失い、兄に守ってもらった少女がいた。成長した少女は誰かを護ろうと戦いに身を投じた。守られる立場が守る立場に。そこに至る道程に如何なる決意があったかは、余人の知ることではない。その心のままに、椿はこの戦いに挑む。
「まだ見ぬ強者との出会い! 神様ありがとう!」
 様々な古妖達を見て『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)は感謝の声を上げた。強者との戦いを望む遥にとって、この武闘大会は遊園地のようなものだ。どんな強者がいて、どんな戦いが待っているのか。想像するだけでワクワクしてくる。
「こんちわー! 今回初参加の人間、鹿ノ島遥っていいます! 全力でぶつかっていきますんで、よろしくお願いします!」
 早速参加者の鬼に話しかける遥。鬼の一人は無言で拳を突き出した。それに拳を重ねる遥。人よりも大きく硬い拳。軽く押し合うだけでもパワーの差が伝わってくる。それを感じるたびに、心が震えてくる。どんな戦いになるのだろうか。
「古妖のみんなとこんな風に戦える機会ってのはそんなに多くないしな。せっかくだから目いっぱい楽しませてもらうぜ」
 着流しの襟を整えながら『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は古妖達を見て刀の柄を握る。FiVEの依頼で古妖と切り結ぶことはある。だがこういった武術大会という戦いはそうないだろう。ならばめいっぱい楽しむのみだ。
(巌心流……もしかしたら、使い手と戦ったことのある古妖もいるかもな)
 長い歴史をもつ剣術流派。永き時を生きる古妖の中には、巌心流と刃を交えたことがある者もいるかもしれない。だが恐れることはない。代を継ぐごとに剣術は変化し、進化する。飛馬が受け継いだ巌心流は、その時と違うのだ。
「それでは皆様、この鐘が鳴ったら試合開始です」
 武舞台に居る全員に響く声。山彦あたりが声を反響させているのだろうか。周囲を照らす火の古妖達が選手たちを照らす。開始の合図を戦意押さえて静かに待つ古妖達。そして――
 かぁぁぁぁぁぁぁん!
 鐘の音と同時に古妖達の戦意が膨れ上がった。


 武舞台は一気に戦場と化した。
 出遅れた者はいない。鐘の音と共に弾かれるように皆行動を開始する。突撃する者、見定める者、陣を組む者、伏して安全を確保する者、そして――
「おりゃああああああああ!」
 鬨の声をあげて遥が拳を振るう。四方八方から迫る古妖達。脳内で迎撃する順番を瞬時に決定し、同時に足を動かす。真っ直ぐ体を支える背骨を回転軸とし、体をねじらせて力を籠める。拳は強すぎず、しかし弱すぎず。
 拳を放つ。拳から伝わる確かな感触。相手が脱力するのを拳の感覚でつかみ、同時に体をひねって次の相手に向き合う――と同時に蹴りを放っていた。向き合うという所作と同時に攻撃。否、所作自体が攻撃のモーション。一切の無駄なく動くことが乱戦の基礎。
「加減なしだ! ガンガン行くぜ!」
「せやな。出し惜しみ無しや!」
 可能な限り覚者同士陣を組もうとしながら凛が吼える。しかし数十の古妖に周りから攻められている時点で陣の維持は容易ではない。ならば、とばかりに乱戦に身を投じる。舞うように、踊るように。そして燎原の火のように。
 足運びは円を描き、刀は縦横無尽に戦場を薙ぐ。近寄る古妖達と交差したと思えば既に切っており、四方から迫る刀をすべて受け流す。二〇代続いた剣術。それは一対一のみならず乱戦においての立ち回りもある。足を止めず、常に己の有利な位置を保ち続けよ。
「焔陰流二十一代目継承者(予定)焔陰凛、推して参る!」
「参加する以上勝ちに行かせてもらう」
『絶海』を手に静護は戦場を注視する。蒼き刃を持つ日本刀。何かを封印したかのようなその刀は、何かしらの古妖のようでもある。抜かば魂すら凍らせる冷気が漂い、振るわば鋭い刃が血肉を割く。それを御するように静護は刀を強く握った。
 視覚だけではなく、聴覚や嗅覚、それ以外の第六感も駆使して戦場を調べる静護。味方や敵の位置。それぞれが誰に刃を向けているか。それを冷静に判断し、水で作られた龍を打ち放つ。乱戦だからこそ心を静かに。
「僕は支援に回らせてもらうよ。不意打ちに気を付けて」
「護りは任せてもらうぞ」
 二本の太刀を構え飛馬が古妖の群れの前に立つ。太刀は通常の刀よりも長く、それ故振り回すに相応の感覚が必要になる。空間把握能力ともいえる自らの間合を理解する能力。自分を中心とした『球』を強く意識する。
『球』に触れた古妖に向けて太刀を一閃する。同時に踏み入った古妖の炎を切り裂くように太刀を振るった。二対の刀をぶつかることなく振るい、次の行動に移る。巖心流と呼ばれる防御の型。体に染みついた剣術が考えるより先に体を動かしていく。
「負けねーぞ。俺らもそれなりの死線は越えて来てるからな」
「数が減ってきたな。そろそろ攻勢に回れそうか」
 回復に回っていたゲイルは古妖の攻撃が減ってきたことを察し、攻めに転じる。回復用に使用していた水を扇に纏わせた。舞うように扇を振るえば、水飛沫のように打ち放たれる水の弾丸。細かな水の針が迫る古妖を穿つ。
 戦いながらゲイルは他の古妖達の闘いを見ていた。目についたのは背中合わせで戦う赤鬼青鬼のコンビ。力任せに剛力を振るうのではなく、何かの拳法のように構えを取り確実に古妖を迎撃していく。無駄のない動きともって生まれたパワー。それが背筋を震わせる。
「予想はしていたが、かなりの強敵のようだな。さて勝ち進めるかどうか」
「そうですね。他にも強い方はいらっしゃるようです」
 椿は矢を放ちながら他の選手たちを見ていた。全力で戦いながら、ということもあり十全に調べられたわけではないが、それでも頭角を示しそうな組は把握している。事実、それら古妖チームの周りには多くの離脱者が倒れていた。
 一番気にかかったのは氷柱女の三姉妹。同じ水を使う者としての興味があったが、彼女達は周囲を氷の霧で包み自分に有利な状況を生み出してから攻めている。霧で体温を奪い、弱ったところを穿つ。それが彼女達の基本戦略のようだ。
「まだ実力は隠しているみたいですね」
 時間が経つにつれ、古妖の数は減ってくる。炎が走り、冷風が迸る。刃が交差し、槌の重音が轟く。そして――かんかんかん、と鐘が鳴る。
「試合終了! 今経っている八組のチームが予選突破となります!」
 武舞台の上で立つ八組のチーム。仮面の人間。狸。鬼。氷柱女。髑髏武者。一反木綿と絹狸。鎌鼬。そしてFiVEの覚者達。
 互いを倒すべき相手と認識する視線を交差させ、予選のバトルロワイヤルは終了した。


 予選が終了し、それぞれのチームには大部屋が宛がわれた。一〇人ぐらいが寝泊まりできる日本式の大部屋だ。新鮮な畳の匂いが鼻をくすぐる。
 覚者達はそこで予選の疲れを癒していると、襖を開けて太った狸が入ってきた。予選を通過した狸だ。
「ふん、人間如きがこの夜行武道会の予選を突破するとはな。偶然とはいえ見事と心の広いおいどんは褒めておくでごわす。
 だが貴様達の闘い方は充分見させてもらったでごわす! 人間如きが勝ち残れるとは思わないが、本選で戦うことになれば狸相撲の神髄をもって土をつけてやるでごわす!」
 一方的にそう告げて、笑いながら去っていく狸。覚者達に何かを言う余裕すら与えなかった。
 事実、覚者達は全力で予選に挑み、その戦い方を示していた。それを観察していた古妖達には情報面で不利になるだろう。夢見の予知がない以上、情報面のアドバンテージはこの夜行武闘会では存在しない。
 だが賽は投げられた。それを悔いる覚者達ではない。
 試合開始までまだ間がある。覚者達はそれぞれ気になった選手たちに接触するため動き出す。

「カラカラカラ! 人間、この髑髏武者『骨車』に何用か! 死にたいのか!」
 飛馬と静護は七人の髑髏武者に接触する。二人を見るや否や、七人の髑髏はカタカタと葉を鳴らし笑い出す。人間が話しかけてくることが珍しい、という様子だ。
「巌心流――」
 飛馬が自らの流派を口にすると、髑髏達の笑いが止まる。
「ちっとは歴史ある流派だって聞いてるんだけど、あんた等の中に誰か使い手と戦ったことある奴っているんかな?」
「そうか、獅子王弦馬の跡取りか。この『錆刀』をもってして脊髄を断てなんだ男はあれのみ。あれは人か? 二対の刀が阿修羅のごとく振るわれた。ならばその意趣返しが出来よう。カラカラカラ!」
 獅子王弦馬。飛馬の記憶にはないが、遠い祖先にそんな名前がいたのかもしれない。嗤う髑髏武者を見て、そんなことを考える。
「お前達は何故血を好むんだ?」
「決まっておろう、小僧! 血を流し、肉を割き、苦しむ様が見たいからだ!」
 静護の問いかけに、即答する髑髏武者。彼らが抜く刀を見定めながら、髑髏達の言葉を聞いていた。
「殺し、穿ち、食らう! 戦いの本質はまさにそれ。武とはその為の術。効率よく殺し、効率よく奪う。カラカラカラ!」
 髑髏達の言葉は野蛮ではあるが、武術の一面でもあった。武とは力無い存在が強者に挑む術。効率よく相手を無力化するということは、すなわち殺すこととなる。
「いいだろう。君達と良い勝負ができるのならこの血、いくらでも流してやろう。だが――」
「人間を甘く見るなよ」
 静護と飛馬はそう宣戦布告する。表情の存在しない髑髏が、笑みを浮かべた気がした。

「なかなかイカスポーズ決めとるやないか。どこぞでヒーローでもやっとるんか?」
「む。そちらも中々の決めポーズ!」
 鎌鼬の三人にポーズを決めてから話しかける凛。ふと疑問に思ったことを聞いてみる。
「所で鎌鼬の三人目って薬塗るんやなかったっけ? なんで罵るん?」
「平時ならそうだけど、これは戦いなのよ。心を鬼にして心を折ってるの」
 メタな事を言うとMアタックのようである。
「アンタらの事、知ってるぜ。ふぁいぶっていう正義の人間なんだろう?」
「古妖達の間でもいろいろ噂になってるからな」
「まあ、私達にはまだ及ばないけど先輩正義の味方として歓迎するわ」
 鎌鼬三人は笑みを浮かべてそう告げる。どうやらFiVEの活躍は古妖達にも知れ渡っているらしい。いくつかの事件で古妖を護り、暴走する古妖を諫めている。人間と古妖の架け橋的な存在になりつつあるようだ。
「もっとも、大会で加減はしないけどな」
「当然や。手ぇ抜いたら面白くないやん」
「上等! それでこそだ!」
 笑みを浮かべ合う鎌鼬と凛。これ以上の言葉は不要、と腕を突き出す。
「鎌使いとやりあえる機会は少ないからな。トーナメントで当たったらその時はよろしゅうな」
「ああ、鎌鼬の正義のコンビネーション見せてくれよう。さらばだ!」
 腕を交差させ、互いの健闘を祈る凛と鎌鼬長男。そのまま互いの大部屋に戻っていった。

「何用か、女」
 氷柱女の所を尋ねた椿は、物理的にも態度的にも冷たい声で迎えられた。
「そうね。女性同士の話をしようかと思って。お目当ての人はいたかしら?」
 笑顔で冷気を受け流す椿。同じ女性だからか格下とみられたか、三姉妹は隠すことなく椿の質問に答える。
「オヌシらの連れはさぞ元気よさそうだ。捕まえて山に持ち帰りたいの」
 ヤンデレ誘拐は勘弁だが、味方が評価されたことは純粋に嬉しかった。
「後はあの狸か。我らとは相性が悪い。毒やら斬撃やらを受け付けぬ体躯じゃな。燃やしても凍らせてもすぐ脂肪で弾いて復活する」
 メタな事を言うとパート2。BS回復能力が高いという事のようだ。
(成程。予選では周りを見ていたようね)
 ふむふむと頷きながら椿は氷柱女の話を聞いていた。

「よう! 凄かったな、あんたら!」
「鬼が武術に興味を持つとは驚きだ」
 遥とゲイルは鬼の二人に声をかけていた。鬼達は互いに組み手をしていたようで、それを中断して向き直る。
「やっぱり鬼はすげーよなぁ。力とか人間の比じゃねぇぜ」
「単純な力はただの優劣でしかない。それを証明したのが武というモノだ」
「うんうん。わかるわかる。そんなわけで戦うことになったら負けるつもりはないぜ!」
 戦いの事について語る遥。それに静かに答える鬼。
「ふむ。武術に興味を持ったのは一度武に触れたからか?」
「我らより強い鬼や古妖はいくらでもいる。それらに挑む術として学んだのだ。生まれ持った力の差を如何に覆すか」
「成程。その辺りは人間と変わらないのか」
 鬼が武術を学ぶ。その事を疑問に思ったゲイルがぶつけが疑問に、頷き答える鬼。生まれ持った力に奢らない。努力する天才。やはり難敵か、とゲイルは唾をのんだ。
 十分に語り合った後、去ろうとする二人に鬼達が語りかける。
「気を付けよ、人間。この大会、陰謀の香りがする」
「単なる腕試しではいかぬ何か。それが存在している」

「こんばんは」
 椿は仮面の覚者に声をかけていた。
「よう久し……じゃねぇ。あたいは仮面の雷使い。あんたらとは――」
「焔陰さんも鹿ノ島さんも気を使って他人のふりをしてくれるみたいよ」
「バレバレじゃねえか!」
 一部覚者達は仮面の雷使いの正体が分かっていたようで、敢えてそこに触れない形にするようだ。椿もその正体を知っている。
「決勝で是非、貴方達とまた戦いたいわね。組織とかそういうのは関係なく」
「それまであんたらが勝てるか、って話だけだな。……待て、組織と関係なくっていったな。つーとあれか? お前らの夢見が予知したわけじゃないのか?」
 仮面の少女の物言いに、疑問符を浮かべる椿。この大会は榊原が紹介して知ったので、夢見から何かを告げられたわけではない。
「まあいいや。だったら純粋に戦えるな。トーナメントだから決勝になるかはわからないけど、会えた時は全力でやってやるぜ!」
 些か疑問は残ったが、拳を突き出す雷使いに椿は拳を重ねた。


 集まった八組の選手たち。その名前の書かれた札を前に大会主催者である妖狐は笑みを浮かべる。
「ふふ。さてどのような組み合わせにしようかしら」
 トーナメント表を前に心躍らせる。どのような形にすれば盛り上がるか。
「誰が勝ち上がって来るかしら。この武神の衣を着るにふさわしい武闘家であればいいのだけど――」
 札が宙に浮かび、竜巻の中にあるようかのように回転する。暫く宙を舞った札はふわりと机の上にあるトーナメント表に着地する。

 さあ、夜行武闘会の始まりだ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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