<冷酷島>ダイアモンドワーム坑道奇襲作戦
●約束されなかった島・最終章
『冷酷島』正式名称・黎刻ニューアイランドシティは埋立式人工島である。
妖大災害によって一時は妖に占拠されたものの、ファイヴの活躍によって着々と有力妖の撃滅は進み、島内に拠点を築くまでに至った。
そして今、彼らを最大の脅威と見なしておぞましきものどもが動き出す。
島最大の敵であり、島で妖が増え続ける元凶とも言うべき存在。
準大妖級妖『おみやがえり』。
戦いは、ついに最終局面を迎えつつあった。
●ダイアモンドワーム坑道奇襲作戦
R3妖コミュニティ『デッドリースライムの海』が冷酷島拠点であるシェルターを襲うという予知夢をファイヴに報告した際、別の夢見からある報告が寄せられた。
『ダイアモンドワームが島中央部に潜伏し、デッドリースライムの襲撃失敗の際の追撃準備を進めている。撃破直後に奇襲をかけ、これを撃滅できる可能性がある』
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。
今回拠点シェルターへの襲撃を予知しましたが、同時に控えのR3大隊を撃滅するチャンスも巡ってきました。
このチームでは、それぞれ覚者小隊を編成・指揮していただきR3大隊『ダイアモンドワーム坑道』への奇襲作戦を行なうものとします」
ダイアモンドワーム坑道は、巨大な妖によって掘り進められた地下トンネルである。
その入り口は妖が群れを成しており(妖も侵入に気づけば穴を掘って撤退してしまうので)襲撃のチャンスがなかったが、追撃準備を整えるべく穴の奥に軍隊を集中させ容易に動けなくなっているため、襲撃が可能になったのだ。
「坑道の構造と敵戦力については既に調べがついています。全て生物系妖。R1~3の混合です。詳しくはこちらを」
マガツアリ(R1):巨大アリ。先兵として積極的に攻撃してくる。
マガツグモ(R1):巨大クモ。糸を飛ばす(麻痺)攻撃が主体。
マガツイモムシ(R1):巨大芋虫。体液を付着させる体当たり(毒)が主体。
マガツドクムシ(R2):アリとクモとイモムシが複合した妖。強力な近列攻撃と毒体液(カウ・反射)がある。少数しかしない。
ダイアモンドワーム(R3):防御は硬く、攻撃は近列貫2の大ダメージ。自然治癒がかなり高く自己回復もするため、一点突破の集中攻撃が適切。
坑道は分かれ道がいくつかあり、正しいルートで進まないと行き止まりを引き返して戦力が余計に消耗してしまう。
技能スキルを駆使して正しい道を探りながら最奥へと到達し、ダイアモンドワームを撃破しよう。
「一度侵入すれば激戦が続くでしょう。体力や気力の消耗に注意して、最後まで戦い抜いてください。それでは、ご武運を」
『冷酷島』正式名称・黎刻ニューアイランドシティは埋立式人工島である。
妖大災害によって一時は妖に占拠されたものの、ファイヴの活躍によって着々と有力妖の撃滅は進み、島内に拠点を築くまでに至った。
そして今、彼らを最大の脅威と見なしておぞましきものどもが動き出す。
島最大の敵であり、島で妖が増え続ける元凶とも言うべき存在。
準大妖級妖『おみやがえり』。
戦いは、ついに最終局面を迎えつつあった。
●ダイアモンドワーム坑道奇襲作戦
R3妖コミュニティ『デッドリースライムの海』が冷酷島拠点であるシェルターを襲うという予知夢をファイヴに報告した際、別の夢見からある報告が寄せられた。
『ダイアモンドワームが島中央部に潜伏し、デッドリースライムの襲撃失敗の際の追撃準備を進めている。撃破直後に奇襲をかけ、これを撃滅できる可能性がある』
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。
今回拠点シェルターへの襲撃を予知しましたが、同時に控えのR3大隊を撃滅するチャンスも巡ってきました。
このチームでは、それぞれ覚者小隊を編成・指揮していただきR3大隊『ダイアモンドワーム坑道』への奇襲作戦を行なうものとします」
ダイアモンドワーム坑道は、巨大な妖によって掘り進められた地下トンネルである。
その入り口は妖が群れを成しており(妖も侵入に気づけば穴を掘って撤退してしまうので)襲撃のチャンスがなかったが、追撃準備を整えるべく穴の奥に軍隊を集中させ容易に動けなくなっているため、襲撃が可能になったのだ。
「坑道の構造と敵戦力については既に調べがついています。全て生物系妖。R1~3の混合です。詳しくはこちらを」
マガツアリ(R1):巨大アリ。先兵として積極的に攻撃してくる。
マガツグモ(R1):巨大クモ。糸を飛ばす(麻痺)攻撃が主体。
マガツイモムシ(R1):巨大芋虫。体液を付着させる体当たり(毒)が主体。
マガツドクムシ(R2):アリとクモとイモムシが複合した妖。強力な近列攻撃と毒体液(カウ・反射)がある。少数しかしない。
ダイアモンドワーム(R3):防御は硬く、攻撃は近列貫2の大ダメージ。自然治癒がかなり高く自己回復もするため、一点突破の集中攻撃が適切。
坑道は分かれ道がいくつかあり、正しいルートで進まないと行き止まりを引き返して戦力が余計に消耗してしまう。
技能スキルを駆使して正しい道を探りながら最奥へと到達し、ダイアモンドワームを撃破しよう。
「一度侵入すれば激戦が続くでしょう。体力や気力の消耗に注意して、最後まで戦い抜いてください。それでは、ご武運を」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.ダイアモンドワームの撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
『拠点シェルター防衛作戦』との連携作戦ですが、両方の依頼に並行して参加できます。
目的はデッドリーワームの撃破です。
【チーム戦闘】
皆さんはそれぞれ5人のNPC部下をもつチームリーダーです。
チーム種別を『軍事』『宗教』『一般』『特別』のうちから選択し、
コマンド種別を『統率集中』『率先戦闘』『臨機応変』のうちから選択してください。
最後に『チームオーダー』を指定することでPC専用のチームが完成します。
●チーム種別
NPC部下はファイヴ二次団体からなる精鋭覚者たち。
二次団体とは、これまでファイヴが行なってきた覚者保護や組織協力により培った協力者たち。命数は低めで魂は1つ。
個体ごとの戦闘レベルは高めですがリーダーを必要とします。
特徴は以下の通り。
『軍事』:物攻防が高い。
『宗教』:特攻防が高い。
『一般』:バランス型。
※『特別』チームについて
これは「過去のシナリオやシリーズで援軍に駆けつけてくれそうな絆を結んだ人たちがいるんだけど、つれてきていーい?」という方のための枠です。
シナリオ名もしくはURLを添付の上、5名まで指定してください。強すぎる時はトータルで五人分になるよう制限がかかることがあります。(古妖や武装一般人などの戦力もOK)
●コマンド種別
NPC部下は個人ごとに考えて動くためスキル選択やポジションなどの細かい指示を必要としません。(基礎戦闘システム同様に指示行動がシステム化されています)
以下のようなコマンド種別から選択してください。
『統率集中』:指示を送ることに集中します。PCの各種ダイス目が大きく低下しますが、その分チームのダイス目に大きなボーナスがかかります。チームへの指示を沢山書きたい人向け。
『率先戦闘』:PCが率先して戦い、部下たちはそのフォローに徹します。PCのダイス目にボーナスがかかります。自力で戦うの好きな人向け。
『臨機応変』:チームに指示を出しつつ要所要所で率先する、統率と率先の中間にあたるコマンド。ダイス目はそのまま。指示を沢山出したいが自分でも沢山動きたい人向け。
※チームが混乱するので依頼中のコマンド変更はできません
●チームオーダー
「土行で固めて欲しい」「全員盾装備」「回復役オンリー」などの指定をする部分です。
最強スキルや高レベルなどのメタなオーダーにはお応えしずらいですが、逆に「女子だけ」や「気の合いそうな人」といったご要望にはお応えできそうです。
特に指定が無かった場合はジムカタさんがいい感じにマッチングしてくれます。
そして最後は極めつけ。チームの名前を決定しましょう。指定が無い場合PC名から仮名されます。
大体五文字くらいにまとまるとプレイングにも優しいでしょう。
こうして完成したチームは保存され、今後も選択できます。何度も連れて行くと部下との絆が深まり、ダイス目のボーナスや特別な描写などの特典がゲットできることも。
ぜひPC自慢のオリジナルチームを結成してください。
既成隊:奈、刹、イ、ゲ、翼、結(隊称略)
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年10月09日
2017年10月09日
■メイン参加者 6人■

●死の大穴
三台のヘリが着陸した。
駆け足で下りてきたのは、つい先程デッドリースライムからシェルター拠点を防衛しきった部隊たちだ。
「引き続きで、ごめんなさい。でも……」
申し訳なさそうにする大辻・想良(CL2001476)に、翼小隊の面々は小銃を手に微笑みで返した。
「そんなこと言わないでくださいよ」
「あなたは我々のリーダーなんですから、どっしり命令しちゃってください」
「妖を倒したいって気持ちは、皆一緒なんですから!」
その一方で、『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)と『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)はそれぞれのイージス小隊、刹華小隊を引き連れて味方の部隊と合流する。
「皆さん、ご無事でしたか。なにより」
おっとりとした様子で出迎える『教授』新田・成(CL2000538)。その後ろには別の部隊も既に集まっていた。
そのまたむこうには、虫の大穴。
苦笑する恭司。
「ここを潰せばR3コミュニティは全て壊滅できる。準大妖級妖『おみやがえり』への襲撃が可能になるんだよね」
「それにしても、妖が二段構えの作戦をたてるとは驚きました。R4というのは、それだけの知能を備えているのでしょうか」
うむと頷く成。恭司たちが部隊はどうしたのかと聞くと、成は苦笑ぎみに答えた。
「水芭忍軍に真朧暁を備えて集まるように言おうと思ったのですが、そもそも連絡がとれませんでした。後の報告書によると既に全員が学園を退学され散り散りになっていたようです」
だが仮に連絡がとれ、全員集合したとしても、思い切り敵である以上ファイヴの部下になって命令を聞けという要求には応えなかったろう。
代わりに編成されたバランス型部隊、新田小隊(仮)のサブリーダーが苦笑した。
「我々も、逆の立場……七星剣を倒すために手下になって経験を積めと言われたら断固として拒否しますしね。仕方ないでしょう」
「まあ、ダメ元でしたからね。作戦の五割方は消失しましたが、残り五割は汎用的なものでしたから、そのまま適用できるでしょう。よろしくお願いします」
「やあ『王子マジラブ組』のみんな、今日も余のこと敬愛してるー!?」
横ピースで歯を光らせる『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)……の襟首を掴み上げる東雲。
「王子ぃ、プロフェッサーってラインやってますぅ?」
「こわいこわい目がこわい」
目ぇかっぴらいて婚姻届を束で出してくる大井。
「王子、婚約者いるんですって? ちょっと拇印押してくださいよ今から血ぃ出すんで」
「なにこれこわい」
「王子ー! これつけてくださーい」
大崎、品川、天王洲が『今日の主役』って書かれたパーティータスキを無理矢理プリンスにかけてきた。
「えっなんで」
「いいからいいからー」
「わたしをしんじてー」
「なにこれ身体に張り付いてはずれない! ノロイ!? 恐!」
「旦那様。お久しゅうございます。天王寺、美章園、鶴ヶ丘、我孫子、百舌鳥……総員そろいましてございます」
深々と頭を下げる天王寺。
『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)は優しく微笑み返した。
「みんな、元気そうだね」
「だんなさまー、げんきだったー?」
「だんなさま、せーのびた?」
子供たちに大人気である。
彼女たちは玉串黒子衆癒組。秋人が編成し、秋人が育てた若き巫女たちである。
全員が破魔弓を装備し、回復術式を得意とするヒーラーチームだ。
強さの秘訣はなんといっても秋人への深い敬愛である。
「あれから豊四季は幾度か代替わりをしましたけれど、私たちにとっての『豊四季』はいつまでもあなたさまでございます」
「そんな……」
謙遜しようとして、やめた。秋人は弓をぎゅっと握りしめて頷く。
「皆、よろしくね。やり方はあの時と一緒だ」
●大虫の大群
巨大化したアリやクモの群れに、ひとり突撃する者が居る。
「必殺――えっとあのなんだっけそう王子ハリケーンハンマー!」
ふおーと言いながらベーコマのように回転するプリンス。ベーゴマっていうかベイブレードみたく謎の幻影を放ちながらアリだのクモだの岩だのをばかすか破壊しながら走って行く。
その後ろを猛烈なスピードで追いかけながら討ち漏らした虫を千切ってはなげーのしていく巫女集団。
「王子ィィィィィ! プロフェッサーのアドレス教えろォォォォ!」
「血判を押せえええええええええ!」
「ひいっ!?」
進むというか逃げる勢いでぐいぐい敵の群れを穿っていくプリンス率いる玉串黒子衆王子マジラブ組(略して王子組)。
敵からのダメージを無視して突き進むもんだから、秋人たち癒組は必死においつきつつ弓矢による回復支援を続けていた。
「旦那様、やはり頼もしいですね」
「そ、そうかな」
回答にこまる秋人。ともかく……。
「はぐれないように注意してね。各リーダーの香質を覚えたから滅多なことじゃあはぐれないとは思うけど……」
秋人は『猟犬』スキルによってチームリーダー六人のにおいを覚え、定期的におおまかな位置を把握していた。
プリンスも透視能力を働かせてくれてはいるが、小生物が大量に埋まっている土は透過性が悪いのであまりアテにできず、一方で排泄臭のない妖が掘った穴では人間の臭いが目立つため秋人の猟犬スキルは非常に有効だった。
非常に有効と言えば、成の『土の心』もである。
「人工的な建造物ならともかく、大穴の空いた土であればかなり鋭く把握できます。見通しの有無も関係ありませんから……まさにこのためにあるようなスキルですね」
成はそう言いながら、送受心による通話でプリンスたちに順路を指示していた。
「さ、我々はクモの退治を優先しましょう。回復手段が万全であるとはいえ、麻痺ダメージは不意のトラブルを招きますからね」
そう言って、成は仕込み杖で巨大グモを斬り殺した。
穴の探索は順調に進み、先端をゆくプリンスたちは今も活気の叫びをあげていた。
「殿下の見事な指揮ぶり。やはりあの方は王の器」
順路選択と仲間の位置把握が正しく行なえている以上、戦闘で苦労する要素は殆ど無かった。
ダイアモンドワームを追い詰める工程において大変になるのは、間違ったルートにうっかり入っちゃったときに袋小路っぽくなることや、ゆっくり進みすぎるせいで敵がぎゅうぎゅう詰めになって進みづらくなることなんかがあげられるが、ここまで順調に進むと悪い部分を探すのが難しいくらいだった。
飛びかかってくるアリを横っ飛びにかわし、ビッと指をさす想良。指先から放たれた電撃がアリに流れ、伝わるように他のイモムシやクモたちに伝達していく。
「後方から追いかけてくる敵も、倒したほうがいいですよね」
想良は小隊のメンバーに命じて面射撃を開始。
かなり順調に進んでいるので追いついてくる敵は少ないが、挟み撃ちも気持ちよくないので念を入れて潰している次第である。
「念を入れるのは大事、だよね」
光源をしっかり確保しつつ、天井をはうように突進してくる巨大アリの集団に連続フラッシュを浴びせる恭司。
目をくらませて落ちてくる敵たちを、小隊のメンバーたちが神具カメラによって素早く破壊していく。
妖化が解かれ、虫の死体があちこちに散らばっていく。そんな中をずかずかと突き進むマガツドクムシ。
「R2か。燐ちゃん、任せても大丈夫?」
「はい」
とだけ応えて、光のような速さで突っ切っていく燐花。
ドクムシの足下をくぐり抜けてからブレーキアンドターン。
方向転換しようとするドクムシに電撃や銃撃による足止めをしかける刹華小隊のメンバーたち。
反撃の機会を失ったドクムシの背を飛び越えるように抜けていくと、燐花は下から上に一周するかのようにドクムシに切り込みをいれ、とどめとばかりに刀を突き刺しえぐり込んだ。
切り込みから血を吹き出し、崩れ落ちるドクムシ。
「先へ進みましょう」
「んっ」
想良や恭司たちは頷きあい、気力の回復をしながらずんずんと穴の奥へと突き進んでいった。
●ダイアモンドワーム
「その先が穴の終わりです。つまり、ダイアモンドワームとの戦いになるでしょう」
成の呼びかけに応じて、秋人と想良はそれぞれ平たく部隊を展開させた。
激しい照明によって姿を現わしたのは巨大な壁。ではなく、ダイアモンドワームである。
掘削作業の末に埋める形で処理されたトンネル掘削機の一部が妖化したものだ。
ダイアモンドワームはこちらを認識すると逆回転をはじめ、凄まじい勢いで走ってきた。
「後退しながら攻撃します。接触に気をつけてください」
「多少接触しても大丈夫だ。回復は任せて」
ダイアモンドワームは中央にある口のような部位を動かすと、巨大な波動を発射してきた。
それを破魔矢の一斉発射によってカウンターヒールする癒組。
秋人はその中に混ぜるように矢を放つと、巨大な水の竜にかえて突撃させた。
表面装甲にぶつかってはじけ飛ぶ竜。
「まるで『B.O.T.』の発展型のような技だね」
「でもって堅さは『機化硬』の発展型かな。防御の隙を突かないとかも」
「それでもダメージが通っていないとは思えません。攻撃を続けましょう」
新田小隊の一斉攻撃にあわせ、想良の部隊も一斉攻撃をしかけていく。
が、そこへ割り込んできたのが眷属の虫たちである。
集中攻撃によって生み出された巨大な雷の槍を、代わりに引き受けるかのようにマガツグモが滑り込んだのだ。
「味方ガード? R1の知能で、ですか?」
「恐らくダイアモンドワームが指示しているのでしょう。ランクの上昇は戦力だけの違いではない。これは対妖戦闘の常識です」
成はそう述べたが、しかしどこか落ち着いていた。なぜならば。
「王子あのなんとかスマッシュ!」
滑り込んだクモをプリンスがぶっ飛ばした。
すり抜けていった雷の槍がダイアモンドワームに直撃。表面装甲を大きく歪ませた。
「余の王子マジラブ組はサークラとタフネスに優れた巫女。邪魔な奴を蹴落とす作業において右に出る者はいないよ! だよね!」
「サークルに女子が入ってきたら隠しツイアカを晒すべし」
「肉体関係を嫌う真面目君は早めに修羅場に陥れるべし」
「そうだけどちがう!」
「仲間の彼氏は寝取っても、仲間の命は取らせない」
「ちがうけどそう!」
プリンスの部隊は盾になろうと割り込みにかかる眷属たちを片っ端からたたきつぶし、防御の隙を無くしていった。
眼鏡をくいっとあげる成。
「ダイアモンドワームは強力な列攻撃と防御スキルを備えていますが、防御スキルにはかならずかけ直しの隙があります。その隙を補うために手下を盾にする作戦だったようですが……さすがは殿下、王の器」
ダイアモンドワームに存在していた最大の難点を見事にへし折った玉串黒子衆王子マジラブ組。
「ごめんね、トンネル工事はおしまいだよ!」
こうなればもはや負ける要素などなかった。
「燐ちゃん」
「蘇我島さん」
二人は同時に呼び合い、そして同時に攻撃をしかけた。
部隊による一斉射撃を背景にして、ダイアモンドワームに飛びかかる燐花。
その勇姿を撮影するかのごとくカメラのシャッターをきる恭司。
覗き込んだファインダーの中に梵字が円形に並び、ダイアモンドワームを覆うように輝き始める。
強い霊的な光が線となって走り、ダイアモンドワームを貫いていく。
と同時に燐花の斬撃がダイアモンドワームの装甲を切り裂き、激しく黒い血を噴き出させた。
がきがきと軋む音をたて、停止するダイアモンドワーム。
着地した燐花に、恭司は『お疲れ様』と微笑んで見せた。
●最終決戦へ向けて
成や想良、恭司や燐花の部隊が残存した妖たちを殲滅しながら離脱。
地上へと到達したころ。
「どうなさいました、旦那様?」
深く思案していた秋人ははたと顔をあげた。
「ああ、ダイアモンドワームが使っていた『近列貫2』の衝撃弾なんだけど、もしかしたら俺の因子スキルを応用することでまねが出来るかも知れないな、と思ってね」
「あっ、余も似たようなこと思った」
小さく手を上げるプリンス。
「妖ってなにげに因子や術式のスキルと似た性質があるからさ、高位の……高知能の妖になるとかなりスキル攻撃に似てくるんだよね。ダイアモンドワームのあれなんて、機化硬の発展系でしょ?」
「少し調べてみる価値は、ありそうだね」
一方で、恭司や燐花たちは島の中央に聳え立つビルを眺めていた。
どうやら妖を利用した改築を繰り返し、島の中央に巨大な砦を築いているようなのだ。
「つくづく、厄介な存在なのですね……R4というのは」
「だからこそ放ってはおけないよね。次こそ、いよいよ……かな」
冷酷島をめぐる戦いは、ついに最終局面を迎えようとしている。
三台のヘリが着陸した。
駆け足で下りてきたのは、つい先程デッドリースライムからシェルター拠点を防衛しきった部隊たちだ。
「引き続きで、ごめんなさい。でも……」
申し訳なさそうにする大辻・想良(CL2001476)に、翼小隊の面々は小銃を手に微笑みで返した。
「そんなこと言わないでくださいよ」
「あなたは我々のリーダーなんですから、どっしり命令しちゃってください」
「妖を倒したいって気持ちは、皆一緒なんですから!」
その一方で、『想い重ねて』蘇我島 恭司(CL2001015)と『想い重ねて』柳 燐花(CL2000695)はそれぞれのイージス小隊、刹華小隊を引き連れて味方の部隊と合流する。
「皆さん、ご無事でしたか。なにより」
おっとりとした様子で出迎える『教授』新田・成(CL2000538)。その後ろには別の部隊も既に集まっていた。
そのまたむこうには、虫の大穴。
苦笑する恭司。
「ここを潰せばR3コミュニティは全て壊滅できる。準大妖級妖『おみやがえり』への襲撃が可能になるんだよね」
「それにしても、妖が二段構えの作戦をたてるとは驚きました。R4というのは、それだけの知能を備えているのでしょうか」
うむと頷く成。恭司たちが部隊はどうしたのかと聞くと、成は苦笑ぎみに答えた。
「水芭忍軍に真朧暁を備えて集まるように言おうと思ったのですが、そもそも連絡がとれませんでした。後の報告書によると既に全員が学園を退学され散り散りになっていたようです」
だが仮に連絡がとれ、全員集合したとしても、思い切り敵である以上ファイヴの部下になって命令を聞けという要求には応えなかったろう。
代わりに編成されたバランス型部隊、新田小隊(仮)のサブリーダーが苦笑した。
「我々も、逆の立場……七星剣を倒すために手下になって経験を積めと言われたら断固として拒否しますしね。仕方ないでしょう」
「まあ、ダメ元でしたからね。作戦の五割方は消失しましたが、残り五割は汎用的なものでしたから、そのまま適用できるでしょう。よろしくお願いします」
「やあ『王子マジラブ組』のみんな、今日も余のこと敬愛してるー!?」
横ピースで歯を光らせる『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)……の襟首を掴み上げる東雲。
「王子ぃ、プロフェッサーってラインやってますぅ?」
「こわいこわい目がこわい」
目ぇかっぴらいて婚姻届を束で出してくる大井。
「王子、婚約者いるんですって? ちょっと拇印押してくださいよ今から血ぃ出すんで」
「なにこれこわい」
「王子ー! これつけてくださーい」
大崎、品川、天王洲が『今日の主役』って書かれたパーティータスキを無理矢理プリンスにかけてきた。
「えっなんで」
「いいからいいからー」
「わたしをしんじてー」
「なにこれ身体に張り付いてはずれない! ノロイ!? 恐!」
「旦那様。お久しゅうございます。天王寺、美章園、鶴ヶ丘、我孫子、百舌鳥……総員そろいましてございます」
深々と頭を下げる天王寺。
『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)は優しく微笑み返した。
「みんな、元気そうだね」
「だんなさまー、げんきだったー?」
「だんなさま、せーのびた?」
子供たちに大人気である。
彼女たちは玉串黒子衆癒組。秋人が編成し、秋人が育てた若き巫女たちである。
全員が破魔弓を装備し、回復術式を得意とするヒーラーチームだ。
強さの秘訣はなんといっても秋人への深い敬愛である。
「あれから豊四季は幾度か代替わりをしましたけれど、私たちにとっての『豊四季』はいつまでもあなたさまでございます」
「そんな……」
謙遜しようとして、やめた。秋人は弓をぎゅっと握りしめて頷く。
「皆、よろしくね。やり方はあの時と一緒だ」
●大虫の大群
巨大化したアリやクモの群れに、ひとり突撃する者が居る。
「必殺――えっとあのなんだっけそう王子ハリケーンハンマー!」
ふおーと言いながらベーコマのように回転するプリンス。ベーゴマっていうかベイブレードみたく謎の幻影を放ちながらアリだのクモだの岩だのをばかすか破壊しながら走って行く。
その後ろを猛烈なスピードで追いかけながら討ち漏らした虫を千切ってはなげーのしていく巫女集団。
「王子ィィィィィ! プロフェッサーのアドレス教えろォォォォ!」
「血判を押せえええええええええ!」
「ひいっ!?」
進むというか逃げる勢いでぐいぐい敵の群れを穿っていくプリンス率いる玉串黒子衆王子マジラブ組(略して王子組)。
敵からのダメージを無視して突き進むもんだから、秋人たち癒組は必死においつきつつ弓矢による回復支援を続けていた。
「旦那様、やはり頼もしいですね」
「そ、そうかな」
回答にこまる秋人。ともかく……。
「はぐれないように注意してね。各リーダーの香質を覚えたから滅多なことじゃあはぐれないとは思うけど……」
秋人は『猟犬』スキルによってチームリーダー六人のにおいを覚え、定期的におおまかな位置を把握していた。
プリンスも透視能力を働かせてくれてはいるが、小生物が大量に埋まっている土は透過性が悪いのであまりアテにできず、一方で排泄臭のない妖が掘った穴では人間の臭いが目立つため秋人の猟犬スキルは非常に有効だった。
非常に有効と言えば、成の『土の心』もである。
「人工的な建造物ならともかく、大穴の空いた土であればかなり鋭く把握できます。見通しの有無も関係ありませんから……まさにこのためにあるようなスキルですね」
成はそう言いながら、送受心による通話でプリンスたちに順路を指示していた。
「さ、我々はクモの退治を優先しましょう。回復手段が万全であるとはいえ、麻痺ダメージは不意のトラブルを招きますからね」
そう言って、成は仕込み杖で巨大グモを斬り殺した。
穴の探索は順調に進み、先端をゆくプリンスたちは今も活気の叫びをあげていた。
「殿下の見事な指揮ぶり。やはりあの方は王の器」
順路選択と仲間の位置把握が正しく行なえている以上、戦闘で苦労する要素は殆ど無かった。
ダイアモンドワームを追い詰める工程において大変になるのは、間違ったルートにうっかり入っちゃったときに袋小路っぽくなることや、ゆっくり進みすぎるせいで敵がぎゅうぎゅう詰めになって進みづらくなることなんかがあげられるが、ここまで順調に進むと悪い部分を探すのが難しいくらいだった。
飛びかかってくるアリを横っ飛びにかわし、ビッと指をさす想良。指先から放たれた電撃がアリに流れ、伝わるように他のイモムシやクモたちに伝達していく。
「後方から追いかけてくる敵も、倒したほうがいいですよね」
想良は小隊のメンバーに命じて面射撃を開始。
かなり順調に進んでいるので追いついてくる敵は少ないが、挟み撃ちも気持ちよくないので念を入れて潰している次第である。
「念を入れるのは大事、だよね」
光源をしっかり確保しつつ、天井をはうように突進してくる巨大アリの集団に連続フラッシュを浴びせる恭司。
目をくらませて落ちてくる敵たちを、小隊のメンバーたちが神具カメラによって素早く破壊していく。
妖化が解かれ、虫の死体があちこちに散らばっていく。そんな中をずかずかと突き進むマガツドクムシ。
「R2か。燐ちゃん、任せても大丈夫?」
「はい」
とだけ応えて、光のような速さで突っ切っていく燐花。
ドクムシの足下をくぐり抜けてからブレーキアンドターン。
方向転換しようとするドクムシに電撃や銃撃による足止めをしかける刹華小隊のメンバーたち。
反撃の機会を失ったドクムシの背を飛び越えるように抜けていくと、燐花は下から上に一周するかのようにドクムシに切り込みをいれ、とどめとばかりに刀を突き刺しえぐり込んだ。
切り込みから血を吹き出し、崩れ落ちるドクムシ。
「先へ進みましょう」
「んっ」
想良や恭司たちは頷きあい、気力の回復をしながらずんずんと穴の奥へと突き進んでいった。
●ダイアモンドワーム
「その先が穴の終わりです。つまり、ダイアモンドワームとの戦いになるでしょう」
成の呼びかけに応じて、秋人と想良はそれぞれ平たく部隊を展開させた。
激しい照明によって姿を現わしたのは巨大な壁。ではなく、ダイアモンドワームである。
掘削作業の末に埋める形で処理されたトンネル掘削機の一部が妖化したものだ。
ダイアモンドワームはこちらを認識すると逆回転をはじめ、凄まじい勢いで走ってきた。
「後退しながら攻撃します。接触に気をつけてください」
「多少接触しても大丈夫だ。回復は任せて」
ダイアモンドワームは中央にある口のような部位を動かすと、巨大な波動を発射してきた。
それを破魔矢の一斉発射によってカウンターヒールする癒組。
秋人はその中に混ぜるように矢を放つと、巨大な水の竜にかえて突撃させた。
表面装甲にぶつかってはじけ飛ぶ竜。
「まるで『B.O.T.』の発展型のような技だね」
「でもって堅さは『機化硬』の発展型かな。防御の隙を突かないとかも」
「それでもダメージが通っていないとは思えません。攻撃を続けましょう」
新田小隊の一斉攻撃にあわせ、想良の部隊も一斉攻撃をしかけていく。
が、そこへ割り込んできたのが眷属の虫たちである。
集中攻撃によって生み出された巨大な雷の槍を、代わりに引き受けるかのようにマガツグモが滑り込んだのだ。
「味方ガード? R1の知能で、ですか?」
「恐らくダイアモンドワームが指示しているのでしょう。ランクの上昇は戦力だけの違いではない。これは対妖戦闘の常識です」
成はそう述べたが、しかしどこか落ち着いていた。なぜならば。
「王子あのなんとかスマッシュ!」
滑り込んだクモをプリンスがぶっ飛ばした。
すり抜けていった雷の槍がダイアモンドワームに直撃。表面装甲を大きく歪ませた。
「余の王子マジラブ組はサークラとタフネスに優れた巫女。邪魔な奴を蹴落とす作業において右に出る者はいないよ! だよね!」
「サークルに女子が入ってきたら隠しツイアカを晒すべし」
「肉体関係を嫌う真面目君は早めに修羅場に陥れるべし」
「そうだけどちがう!」
「仲間の彼氏は寝取っても、仲間の命は取らせない」
「ちがうけどそう!」
プリンスの部隊は盾になろうと割り込みにかかる眷属たちを片っ端からたたきつぶし、防御の隙を無くしていった。
眼鏡をくいっとあげる成。
「ダイアモンドワームは強力な列攻撃と防御スキルを備えていますが、防御スキルにはかならずかけ直しの隙があります。その隙を補うために手下を盾にする作戦だったようですが……さすがは殿下、王の器」
ダイアモンドワームに存在していた最大の難点を見事にへし折った玉串黒子衆王子マジラブ組。
「ごめんね、トンネル工事はおしまいだよ!」
こうなればもはや負ける要素などなかった。
「燐ちゃん」
「蘇我島さん」
二人は同時に呼び合い、そして同時に攻撃をしかけた。
部隊による一斉射撃を背景にして、ダイアモンドワームに飛びかかる燐花。
その勇姿を撮影するかのごとくカメラのシャッターをきる恭司。
覗き込んだファインダーの中に梵字が円形に並び、ダイアモンドワームを覆うように輝き始める。
強い霊的な光が線となって走り、ダイアモンドワームを貫いていく。
と同時に燐花の斬撃がダイアモンドワームの装甲を切り裂き、激しく黒い血を噴き出させた。
がきがきと軋む音をたて、停止するダイアモンドワーム。
着地した燐花に、恭司は『お疲れ様』と微笑んで見せた。
●最終決戦へ向けて
成や想良、恭司や燐花の部隊が残存した妖たちを殲滅しながら離脱。
地上へと到達したころ。
「どうなさいました、旦那様?」
深く思案していた秋人ははたと顔をあげた。
「ああ、ダイアモンドワームが使っていた『近列貫2』の衝撃弾なんだけど、もしかしたら俺の因子スキルを応用することでまねが出来るかも知れないな、と思ってね」
「あっ、余も似たようなこと思った」
小さく手を上げるプリンス。
「妖ってなにげに因子や術式のスキルと似た性質があるからさ、高位の……高知能の妖になるとかなりスキル攻撃に似てくるんだよね。ダイアモンドワームのあれなんて、機化硬の発展系でしょ?」
「少し調べてみる価値は、ありそうだね」
一方で、恭司や燐花たちは島の中央に聳え立つビルを眺めていた。
どうやら妖を利用した改築を繰り返し、島の中央に巨大な砦を築いているようなのだ。
「つくづく、厄介な存在なのですね……R4というのは」
「だからこそ放ってはおけないよね。次こそ、いよいよ……かな」
冷酷島をめぐる戦いは、ついに最終局面を迎えようとしている。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
