【儚語】夢の終わりに
【儚語】夢の終わりに


●夢の終わり
 彼女が目を覚ました時、ひどい頭痛と吐き気が襲い、たまらず嘔吐した。
 ひとしきり吐ききった彼女は、目のあたりに手をやった。
 眼鏡はかかっている。
 少しだけ、安心した。野暮ったい、飾り気のないものであったが、彼女はそれなしで周囲を把握する事は出来ない。
 彼女は痛む頭をさすりながら、あたりを見渡した。
 見覚えのない部屋である。
 頭上には頼りなげに揺れる裸電球。自分が転がされている床の汚れと、土と埃の臭いから、あまり人の出入りのなさそうな場所なのだろうと判断できた。部屋の隅には飾り気のないオフィス用のデスクがあり、その上に赤い色をしたステープラーが――。
 それを見た瞬間、彼女の記憶の歯車が、かちりと音を立てて組み合ったのを感じた。
 
 見覚えのない部屋。ああ、それは嘘だ。私は、この部屋を知っている。なぜこうなるのかも知っていた。全て、夢で――。

 その時、部屋の扉が強く開かられた。幾つかの人影が部屋になだれ込み、自分を囲むように並び立った。
 年齢も、性別も、バラバラである。しかし、すべての人物に共通する点が一つ。
 彼らが、彼女を覗く眼。そこからくみ取れるモノは、明確な殺意。
 よく見れば、彼らは包丁であったり、金属バットであったり、鉄パイプであったり、そういった、人に振るわれれば凶器と呼ばれるものを持っていた。
「お前が悪いのだ」
 彼らが、うわ言のようにつぶやいた。

 ああ、知っている。
 こうなる事を知っている。
 これからどうなるかも知っている。

 事実は、変わらない。
 破滅は、変わらない。
 運命は、変わらない。
 
 私は、ここで死ぬのだ。

 怖くないわけではない。いや、むしろ怖くて仕方ない。
 だが、仕方がないのだ。諦めるしかないのだ。

 速水結那(はやみ ゆうな)の人生は無力感と共にあった。
 彼女は幼い頃から夢見の力が発現しており、15歳になる今日まで、いくつかの夢を見たが、その全てを見過ごして生きてきた。
 残酷だったわけでも、無関心だったわけでもない。
 ただ、無力だった。
 ただ、何もできなかった。
 両親の離婚を夢に見た。彼女は必死に止めたが、二人の仲をつなぎとめる事は出来なかった。
 無残に殺される人を夢に見た。警察も被害者も、彼女の言葉を妄言と笑った。これ以上、小娘1人に何ができる?
 所属する美術部の、仲の良い先輩が、彼氏に二股をかけられ、破局する夢を見た。どう伝えろと言うのだ、センパイの彼氏、浮気してますよ、等と? 

 事実は、変わらない。
 破滅は、変わらない。
 運命は、変わらない。

 ただ絶望を見せられるだけの能力。
 何もできずにそれを見過ごしてきた自分。

 今、結那を取り囲んでいる彼らは、お前が悪い、と言った。
 そうなのだろうな、と結那は思う。
 分不相応な力を持ち、何もできぬと目をそらしてきた自分に与えられた、当然の罰だ。

 だから、諦めるしかない。

 ――ああ、でもそうだ。もしかなうなら。
 結那の瞳に、鉄パイプを振り上げる男の姿が映る。
 ――あの絵、描き上げたかったなぁ。
 鉄パイプが振り下ろされる。それを皮切りに、様々な凶器が彼女に襲い掛かる。

●夢に救いを
「覚者が憤怒者に拉致された」
 久方 相馬(nCL2000004)が、集まった覚者達に告げた。
「彼女は夢見である可能性が高い……けど、そんな事はどうでもいい! 女の子なんだぞ!? よってたかって……人間のやる事か!?」
 彼は、明らかに憤っていた。それは、卑劣な憤怒者達へか。それとも、戦う力を持たない己に対してか。
「……悪い。詳細は資料を確認してくれ。作戦の成功を、頼む」
 言って、彼は勢いよく頭を下げた。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:洗井 落雲
■成功条件
1.覚者の少女(速水結那)の救出
2.なし
3.なし
 お世話になっております、洗井落雲です。
 覚者の少女が憤怒者に拉致されました。
 どうか助けてやってください。

●敵
 憤怒者×17名。
 内訳は、
 正面入り口見張り担当:2人
 一階待機戦闘要員:10人
 二階待機制裁担当:5人
 となります。
 制裁担当以外は、銃と刃物で武装しています。
 憤怒者は一般人なので、スキルなどは使用しません。

●ロケーション
 廃工場。多少薄暗いですが、明かりはついています。
 一階部分はひとつの大部屋になっています。部屋の壁面にはいくつか大きな窓があり、また、部屋中に大きな作業機械などが置き去りにされています。そのため身を隠す場所には困りませんが、一気に部屋を横断する、というような行動は難しくなっています。
 二階部分には、一階の、正面入口から最も遠い場所に設置してある階段から上がります。
 二階部分は二部屋あり、手前の部屋に制裁担当者が待機しており、一番奥の部屋に速水結那が囚われています。
 詳細な地図は、覚者達に配られているものとします。

●特記事項
 作戦開始時点では、速水結那は目覚めていません。
 何らかの形で戦闘が開始されてから、2分(12ターン)で、制裁担当は移動を開始し、それから30秒(3ターン)後に速水結那への私刑を実行します。

●補足
この依頼で説得及び獲得できた夢見は、今後FiVE所属のNPCとなる可能性があります。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2015年10月08日

■メイン参加者 6人■


●夢の始まり
 秋、日が落ちてほどない時刻。
 今はもう稼働していない廃工場の入口に、男が2人、立っている。
 一見すると、ラフな格好をした、ごく普通の一般市民の様に見える。一般市民が、こんな場所で何をしているのか、という疑問はわかないでもないが、まぁ、その程度の違和感など些細な事だろう。
 だがよく見れば、彼らがその懐に、実に物騒な物を隠していることに気付く者もいるかもしれない。
 拳銃である。それも、一般の物より威力を増した、特殊な物だ。
 つまり、彼らは、そういった物を扱う連中であり、彼ら2人が入口に立っているという事は、何かただ事ではない事が、この建物の中か、或いは周辺にある、と言う事だ。
 空気は緊張感を帯びているものの、周囲は静寂が支配している。今は。まだ。

「開いている窓は、ありませんね」
 『水天』水瀬 冬佳(CL2000762)が呟いた。『蹴撃系女子』鐡之蔵 禊(CL2000029)が、それに頷いて答える。
 2人は、建物の横に潜んでいた。内部へと進入するため、入り口となる場所を探していたが、流石に窓にはすべて鍵をかけているようで、楽な侵入とはいかない。
「となると……ちょっとリスク高いけど、中から開けてもらうしかない、かなぁ」
 禊がぼやく。作戦上、彼女たち2人の他に、別ルートから侵入するチームもいる。其方のチームは技能的な問題で、此方よりは静かに侵入しているはずだろう。それに、いずれかのチームが陽動役を買って出なければならないのだ。見つかったなら見つかったで、陽動に徹すればいいだけの話である。
 ――早くあの子を助けてあげないとね。
 禊は内心で誓いつつ、冬佳に視線を送った。冬佳が頷く。禊は立ち上がると、窓の隅をこんこん、と叩いた。すぐさま身を隠し、待つ。
 どうせ風かなにかだろう。念のため確認しておけ。わかったよ、うるさいな……。
 窓越しでくぐもって聞こえる男たちの声。近づいてくる足音。男が窓を開き、身を乗り出す――。
 瞬間、禊が動いた。男の胸元を掴むと、一本背負いさながらに窓から引きずり出し、地面に叩きつける。くぐもったうめき声をあげる男の腹部に、禊の鋭い蹴りが突き刺さった。男が動かなくなる。死んだわけではないが、無力化は出来た。
 その間に、冬佳は窓から内部を覗き見る。数名の憤怒者たち。埃をかぶった工作機械。事前情報通りの配置。
 冬佳は禊に先に侵入する旨を伝えると、窓から内部へ侵入した。直ぐ手近な死角に隠れる。その後まもなく、禊も同じ場所に身を潜めた。一応、窓は締めておいたが、流石に敵の仲間が一人、外で伸びているのである。恐らく、此方の存在が発覚するのは早いだろう。
 ならば、速やかに事を進めるのみ。
 2人は隠れるのを止め、手近に居た憤怒者に躍りかかった。冬佳がみねうちで敵の獲物を叩き落とすと同時に、禊が力を込めた一撃。憤怒者が崩れ落ちる。
「十天のひとり、鐡之蔵禊!」
 禊が叫ぶ。構えをとる。
「正しいことをしにきたよ!」
 声が響く。敵の注目を引き付けるため。今は眠っている夢見の少女に、希望を届けるため。
「斬妖の剣故、人を斬る剣はありません。しかし――」
 冬佳が、凛とした声でいう。刀を構える。
「相応の報い、受けていただきます」
 言い放つ。それは、断罪の言葉。外道の所業を止める宣誓。
 一階の憤怒者たちの視線を一挙に集めながら、2人の覚者が戦場に舞う。

 その、少し前――。

 ――おじゃましまーす、っと。
 胸中でつぶやきつつ、エルフィリア・ハイランド(CL2000613)は天井を透過し、室内へと進入した。
 事前情報では対神秘防御やトラップの類は説明はされていなかったため、存在しないはずではあったが、念のため、細心の注意を払っての潜入である。
 自身の翼を利用し、ほぼ無音で着地。すぐさまあたりを見渡す。部屋を照らす弱々しい裸電球、そしてその下に倒れている学生服姿の少女。
 ――ビンゴ。さて、次は……。
 救助対象を確認したエルフィリアは、次の行動に移った。忍び足で、この部屋唯一の出入り口であるドアまで移動すると、ゆっくりとドアノブを回す。果たしてあっけなく、ドアは開いた。不用心な。いや、この場合は相手の怠慢に感謝するべきか。
 エルフィリアは静かに退室し、ドアを閉める。廊下は人2人が余裕ですれ違える程度の広さで、左右に伸びている。左手は突き当りに階段がある。一階へとつながるものだ。途中に扉が一つ見え、そこに憤怒者の一団が待機しているはずである。
 右手は数メートルほどですぐに突き当たりとなり、大きな窓が一つ。彼女はゆっくりとその窓へ向かい、念のため、簡潔にチェックを行ってから、鍵を開け、窓を開いた。
「首尾は?」
 窓のすぐ横、片手を壁に貼り付け、待機していた『鴟梟』谷崎・結唯(CL2000305)が尋ねる。
「上々だわ。入って」
 促されるまま、結唯は窓から侵入した。エルフィリアは、現状を簡単に説明する。
「つまり、ここで2階の憤怒者共を待ち受ければいいわけか」
 結唯が呟いた瞬間、一階の方で動きがあった。銃声と怒号。どうやら、1階担当の内、どちらかが陽動を始めた様だ。
「2分だったか?」
 結唯が時計を見ながらひとりごちる。夢見の予言によれば、彼らは1階で何らかの騒ぎがあった場合、2分程度で救助対象に私刑を加えるべく行動を開始するはずだ。
「最悪、アタシたち2人でここを守らなきゃならないけど」
 万一、1階で2チームが足止めを食らっていた場合、そうせざるを得ない。
「問題はない。まとめて滅ぼしてやるよ」
「あら、殺しちゃだめよ? アタシが虐めてあげるんだから」
 エルフィリアの軽口に、結唯は肩をすくめ、
「善処しよう」

「冬佳さん達が見つかったようですね」
 物陰に潜みつつ、『便利屋』橘 誠二郎(CL2000665)が囁く。
 彼らもまた、1階から建物に侵入し、2階へ向かう、或いは陽動を行うチームである。
 解錠能力と匂いの探知を武器に、隠密裏に移動を行っていた2人であったが、どうやら、別班が先に陽動を開始したらしい。足音や、匂いの流れから察するに、ほとんどの憤怒者たちが、別班の2人を排除すべく動いているようだ。
「2階までは行けるか?」
 天明 両慈(CL2000603)の問いに、
「道は開いていますが……多少は攻撃にさらされる危険性はあります」
 2階への階段まで、比較的近くに移動していた2人であったが、ここから先は多少身を晒さなければ突破は難しいようだ。
「最優先事項は、夢見の少女の保護だ。一気に駆け抜ける」
 力強い両慈の言葉には、この作戦を必ず成功させなければならない、という強い意志が感じられた。いや、作戦の成功、と言うより、少女を助けなければ、と言う方が正しいかもしれない。
 彼自身もまた、憤怒者には浅からぬ因縁がある。或いは、憤怒者に今命を奪われようとしている少女に、かつての己の姿を重ねているのかもしれない。
 もちろん、誠二郎にも、憤怒者の所業を許せない、と言う感情と、正義感はあった。
「……ですね。では、行きましょう」
 誠二郎が合図をすると、2人は同時に駆け出した。幸い、と言うよりは、大立ち回りを演じる別班に敵の意識が集中したおかげだろう、2人は首尾よく階段へと到達した。
 ――冬佳さん、禊さん、後はお願いします!
 胸中で誠二郎が叫んだ。もたついていてはこちらも危ない。背後を残る仲間に任せ、2人は階段を駆け上がった。
「なるほど、どうやらいいタイミングのようだ」
 両慈の言葉通り。2階へ到達した2人が見たものは、今まさに部屋から飛び出してきた憤怒者たちと、其の奥、廊下をふさぐように立つ2人の仲間の姿だ。
 覚者達の姿を見た憤怒者の1人が、驚愕のあまりか、裏返った声を上げる。
「な、なんだ!? お前ら!?」
「そうですね。運命は変えられる。それを証明しに来た者です」
 戦闘態勢を取りながら、誠二郎が答えた。
「橘の杖術、お見せしましょう。加減は、ありませんよ」

●夢の途中
 速水結那(はやみ ゆうな)が目を覚ました時、ひどい頭痛と吐き気が彼女を襲い、たまらず嘔吐した。
 ひとしきり吐ききった彼女は、痛む頭をさする。殴られたのだろうか、後頭部のあたりにこぶと、傷ができているようで、触ると痛い。
 頭上には頼りなげに揺れる裸電球。自分が転がされている床の汚れと、土と埃の臭いから、あまり人の出入りのなさそうな場所なのだろうと判断できた。部屋の隅には飾り気のないオフィス用のデスクがあり、その上に赤い色をしたステープラー――。
 と、その時。部屋の外で、数名の男女が争うような声と、物音が聞こえた。
 おかしい、と彼女は思う。自分が何者かに拉致される事、そして殺害されることを、彼女は夢で知っていた。そして、自分がここで目を覚ます、ここまでは夢の通りだ。だが、今は違う。外で何かが起きている。こんな事は夢にはなかった。
 彼女は恐る恐る、少しだけ、扉を開いた。その隙間から外を覗き見ると、やはり数名の男女が争っているのが見える。うち、何人かは、見覚えがある。夢で見た顔だ。だが、残りの人達には見覚えがなかった。
 その人達は、まるで通せんぼをしているかのように廊下に立ち、殺人者達と対峙していた。
 一体、何が起きているのだろう? 彼女には全く理解できなかった。
 何故なら、彼女にとって、夢とは変わらないモノであったから。運命とは、定められたものであったからだ。
 今、彼女の目の前で起きていることは、運命の改変。善意による悪意の討伐。絶望が希望へと変わる瞬間。
 ふと、見覚えのない人たちの内、一人と目が合った。その人は、口元に人差し指を立てて微笑む。
 なんだかそれが、たまらなく嬉しかった。
 結那が慌てて頷くのを確認すると、その人は再び戦いの中へと舞い戻る。それを見届けた結那は顔をひっこめて、静かに扉を閉めた。

「あの子、目覚めたみたい。さっき確認したわ」
 最後の憤怒者の一人を無力化したエルフィリアが言った。
 先ほど戦闘中、此方を覗く救助対象の少女と目が合ったのだ。
「……無事か?」
 両慈の問いに、エルフィリアは頷く。
「だが、憤怒者どもはまだいるのだろう?」
 結唯の言葉は事実である。2階の制圧は完了したが、階下では、冬佳と禊の2人が奮闘しているはずである。
「彼女に関しては下手に連れまわすより、2階で待っていてもらった方が安全です。1階の2人に合流しましょう」
 誠二郎の言葉に、全員が頷く。
 彼らが階下へと到達すると、流石に疲労困憊、と言った様子の冬佳と禊の姿があった。一般人と覚者の身体能力の差はあれど、流石に10名近い相手を、2人でさばき切るのは困難である。
「ごめん、2人とも大丈夫!?」
「はい、なんとか……其方は上手く行ったようですね」
 エルフィリアの言葉に、冬佳が答えた。
 両慈と結唯は、残る敵の掃討にすでに動いている。
「2人とも、いったん下がっていてください。残りは僕達で」
 誠二郎の言葉に、禊は首を振った。
「ううん、あたしはまだ大丈夫。それより、早くあの子を迎えに行ってあげなきゃ!」
 自分を奮い立たせるように、笑顔でそういった。冬佳も同じく、退くつもりはないようだった。
 誠二郎はやれやれ、と頭を掻くと、
「分かりました。でも、くれぐれも無理はなさらないでください」
 くぎを刺してから、憤怒者たちへの攻撃を開始した。

 彼らが残る憤怒者たちすべてを無力化するのに、さしたる時間もかからなかった。

●夢の終わり、現実の続き
 憤怒者たちを制圧した覚者達は、改めて、2階に残る夢見の少女の元へと向かった。
「無事なようだな。怪我は?」
 両慈が少女に駆け寄り、尋ねる。
「あ……はい。その。ちょっと頭が痛いくらいで」
 少女が答える。やや西方訛りのアクセント。
「そうか……念のため、後で検査を受けた方がいいだろうな」
 両慈の表情はいつも通りのクールな物だったが、心から無事を安堵していることが、纏う雰囲気から、なんとなく、読み取れた。
「さーて、これで夢見が夢見た、結那ちゃんの死ぬ未来はひとまず回避ね」 
 背伸びをしつつ呟いたエルフィリアの言葉に、夢見の少女が目を丸くし、
「! あの、知ってたん、です?」
「そうですね。遅くなってしまいましたが、自己紹介も兼ねて、僕達の事をお教えします」
 誠二郎は、何故、どうやって、自分達が今日この時に現れたのか、そして自分達が何者なのかを簡単に説明する。
「それと、お誘いを」
「誘い?」
「ええ。アタシ達に協力してほしいの。結那ちゃん、未来を見過ごすか、アタシ達と未来を変えてみるか。貴女はどっちを選ぶ? 」
 エルフィリアの言葉に、少女は食いついた。未来を見過ごす。それは少女のコンプレックスであったし、少女の抱える無力感の原点だ。
 それに、悲惨な未来を「しょうがない」と済ませる事が出来る程、少女は摩耗していなかった。運命を、未来を変える。それが出来るのならば。
「なら、私の代わりに、あなた達が、未来を変えてくれるんですか!? 皆を救ってあげられるんですか!?」
「厳密には、違います。貴方の代わりに、ではありませんよ。貴方と、私達。全員の力で、未来を変えるんです」
 諭すように、冬佳が言う。
「速水さんは――見えたもの、変えるべきを変えたいと、まだ思えますか?」
「僕達に教えて下さい、貴方の希望を、望む未来を。僕達が、それをお手伝いします」
 その言葉に、少女は少し考えるように目を閉じた後、覚者達の一人一人の顔を見ていく。
 やがて頷くと、
「……やります。私、あなた達と一緒に、行きます」
 覚者が手を差し出した。少女が、その手をとる。
「ようこそ、FiVEへ」
 夢の終わりにあったのは、終焉ではなく、未来の始まり。
 そして、新たな友人との出会いだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『速水結那からの手紙』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員




 
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