炎の遺跡の最深部で
●ついに最深部へ……!
奈良県のとある遺跡。
それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
きっかけはボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件。この原因は、地中から現れた炎の塊のような妖であったという。
妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
これにより、考古学者達は炎が噴き出すその場所に興味を抱き、調査を考えるのだが、妖を倒さねば始まらない。考古学者はほとんどが非覚者。この為、F.i.V.E.に妖討伐依頼が舞い込んだのだ。
その遺跡調査も、一つの山場を迎えていた。
「ちょくちょく、炎の遺跡に突っ込んでいたのだけれどね」
「もー、大変なんだよー」
遺跡の入り口がある工事現場跡。そこには、調査の為に訪れていた考古学者に交じって、MIAを名乗る女性の発現者2人組がいた。
彼女達の名前は、翼人の水玉・彩矢と、酉の獣憑の荒石・成生。
盗掘専門に活動していた2人はすっかり考古学者の中に馴染み、遺跡調査の助力を行っている。盗掘を行っていたといえど、なんだかんだで2人とも人懐っこい部分があるのだろう。
2人で連携し、遺跡内に現れる火の玉妖を倒すなど、発現者としても手練のMIA。しかし、今回ばかりは彼女達も頭を抱える事態のようだ。
「さすがに、アレは私達ではどうにもならなくてね」
彩矢の話によれば、遺跡最深部に強力な妖がいると言う。これは、前回の探索で覚者達が確認したのと同じ個体で、炎で大きな鳥を象った見た目をしている。
この強力な妖は遺跡探索の障害となる上、何より、町の地下にいつ地上に現れるとも分からぬ妖が潜伏している状況はあまりに脅威だ。この為、妖……仮称、炎鳥討伐に乗り出すこととなる。
「相手は強敵だけれどー、少しだけ能力は制限されていると思われるよー」
考古学者とMIAの調査で、断片的に残された小部屋の装飾などから、この遺跡全体に封印が施されているのではと見られている。
「そのせいで、妖は外へと出られないみたいだね。もっとも、調査当初は火の玉が外に出ていたって聞いたけれど」
妖はこの遺跡内で力を少しずつ取り戻しながら、内側から封印の破壊を試みていた。それがあの炎であり、火の玉の妖……という見方を学者達はしている。
「遺跡の四隅の小部屋の鏡はー、おそらく、封印を強化する為の触媒みたいなものなのかなー」
成生がそんな主観を語る。鏡は妖の力を封じる為に、一役買っていたという見方をしていたようだ。
学者とMIAの推論はこれから検証していくそうだが、今は遺跡内の妖、炎鳥の対処が先だ。
遺跡最深部周辺の通路やフロア内は炎に包まれており、入るだけでもじりじりと体力が削られてしまう。敵がそこから動くことは現状ない為、どうしてもその中での交戦を想定して戦術を組む必要がある。
「炎鳥はお供として、翼の生えた顔付きの火の玉を2体、従えているわ」
MIAの2人が調べた範囲では、常に炎鳥は火の玉を従えており、例え倒しても新たに呼び寄せてくるという。彼女達はこちらの相手を考えている。
「だからー、覚者の皆さんに炎鳥の相手をお願いしたいんだよー」
「あんた達はできるだけ、炎鳥の相手に集中して撃破を頼むよ。こちらは基本、自分達でなんとかしてみるからさ」
MIAとの共闘で妖と当たることとなるが、それでも戦いは楽ではないだろう。
2人が先んじて、ある程度分析した炎鳥のデータを資料として配布してくれる。しっかりと作戦を立て、討伐に当たりたいところだ。
「それでは、今回はよろしく頼んだよ」
「頼んだよー」
笑顔を見せつつ、MIAの2人は覚者達と握手を交わすのだった。
奈良県のとある遺跡。
それは、某市の町外れにおいて、ボーリング調査を行っていた際に発見された。
きっかけはボーリングマシンから突然炎が湧き出て、工事現場で働いていた男性達が焼死した事件。この原因は、地中から現れた炎の塊のような妖であったという。
妖が出現するとあって、この場所の土地計画……商業施設が建設予定だったらしいが、白紙に戻された。
これにより、考古学者達は炎が噴き出すその場所に興味を抱き、調査を考えるのだが、妖を倒さねば始まらない。考古学者はほとんどが非覚者。この為、F.i.V.E.に妖討伐依頼が舞い込んだのだ。
その遺跡調査も、一つの山場を迎えていた。
「ちょくちょく、炎の遺跡に突っ込んでいたのだけれどね」
「もー、大変なんだよー」
遺跡の入り口がある工事現場跡。そこには、調査の為に訪れていた考古学者に交じって、MIAを名乗る女性の発現者2人組がいた。
彼女達の名前は、翼人の水玉・彩矢と、酉の獣憑の荒石・成生。
盗掘専門に活動していた2人はすっかり考古学者の中に馴染み、遺跡調査の助力を行っている。盗掘を行っていたといえど、なんだかんだで2人とも人懐っこい部分があるのだろう。
2人で連携し、遺跡内に現れる火の玉妖を倒すなど、発現者としても手練のMIA。しかし、今回ばかりは彼女達も頭を抱える事態のようだ。
「さすがに、アレは私達ではどうにもならなくてね」
彩矢の話によれば、遺跡最深部に強力な妖がいると言う。これは、前回の探索で覚者達が確認したのと同じ個体で、炎で大きな鳥を象った見た目をしている。
この強力な妖は遺跡探索の障害となる上、何より、町の地下にいつ地上に現れるとも分からぬ妖が潜伏している状況はあまりに脅威だ。この為、妖……仮称、炎鳥討伐に乗り出すこととなる。
「相手は強敵だけれどー、少しだけ能力は制限されていると思われるよー」
考古学者とMIAの調査で、断片的に残された小部屋の装飾などから、この遺跡全体に封印が施されているのではと見られている。
「そのせいで、妖は外へと出られないみたいだね。もっとも、調査当初は火の玉が外に出ていたって聞いたけれど」
妖はこの遺跡内で力を少しずつ取り戻しながら、内側から封印の破壊を試みていた。それがあの炎であり、火の玉の妖……という見方を学者達はしている。
「遺跡の四隅の小部屋の鏡はー、おそらく、封印を強化する為の触媒みたいなものなのかなー」
成生がそんな主観を語る。鏡は妖の力を封じる為に、一役買っていたという見方をしていたようだ。
学者とMIAの推論はこれから検証していくそうだが、今は遺跡内の妖、炎鳥の対処が先だ。
遺跡最深部周辺の通路やフロア内は炎に包まれており、入るだけでもじりじりと体力が削られてしまう。敵がそこから動くことは現状ない為、どうしてもその中での交戦を想定して戦術を組む必要がある。
「炎鳥はお供として、翼の生えた顔付きの火の玉を2体、従えているわ」
MIAの2人が調べた範囲では、常に炎鳥は火の玉を従えており、例え倒しても新たに呼び寄せてくるという。彼女達はこちらの相手を考えている。
「だからー、覚者の皆さんに炎鳥の相手をお願いしたいんだよー」
「あんた達はできるだけ、炎鳥の相手に集中して撃破を頼むよ。こちらは基本、自分達でなんとかしてみるからさ」
MIAとの共闘で妖と当たることとなるが、それでも戦いは楽ではないだろう。
2人が先んじて、ある程度分析した炎鳥のデータを資料として配布してくれる。しっかりと作戦を立て、討伐に当たりたいところだ。
「それでは、今回はよろしく頼んだよ」
「頼んだよー」
笑顔を見せつつ、MIAの2人は覚者達と握手を交わすのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.炎鳥の討伐
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
遺跡内部にいる妖の討伐を願います。
●妖
○ランク3……仮称、炎鳥。
全長は3メートルほどある、炎で構成された鳥です。
本来はランク4に届く力の妖ですが、
遺跡の封印が若干働いている為か、能力が抑えられています。
それでも強敵ですので、油断なきよう対処願います。
・業火……特全・炎傷
・熱風……物近列貫2[100、50%]
・嘶き……特全・解除
・再生……特遠味単・
火傷、麻痺無効。30%の確率でニ連が発動します。
○ランク2……仮称、翼持ち
直径25センチメートルの火球の左右に炎の翼が生えております。
ランク2の中では強い部類です。
戦闘開始時に2体おり、
1体でも倒れると30%程度の確率で同個体の援軍が来ます。
炎鳥撃破で消滅、増援はなくなります。
・炎舞……特全・炎傷
・特攻……物近貫3・解除
・修復……遠単・HP回復・BSリカバー50%
●NPC
『MIA』……発現者女性2人組。
名前は彼女達の苗字、頭文字から。両者共にかなりの力を持つようです。
主にランク2の相手をします。
2人で攻撃、回復は行う一方、
炎鳥と戦う覚者達の支援は苦しいと思われます。
○水玉・彩矢(みずたま・あや)翼×水
飛行、物質透過をセット済み。
ぐいぐい引っ張るタイプのちょっと露出高めの女性。
戦闘では回復支援を行いつつ、弓矢、波動弾を放ちます。
○荒石・成生(あらいし・なるき)獣(酉)×土
面接着、守護空間をセット済み。
相棒の彩矢に振り回されがちな気弱な性格で、露出が小さな服を着た女性。
前に立って直接拳で殴りかかり、防御態勢を取ります。
●遺跡について
遺跡内部には侵入者避け用と思われる、
炎が噴き出す罠が壁に設置されていますが、
最深部までの通路の罠は全てMIAが事前に解除してくれています。
また、遺跡北側通路より奥では
以下の特別ルールが適用されます。
●当シナリオ特別ルール
炎上エリア突入時は
1ターン(10秒)経過ごとにHPが10減少し、
戦闘以外でも回復することがありません。
妖を倒してもすぐには鎮火しませんので、
多少の余力を考えて戦う必要があるでしょう。
それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年08月21日
2017年08月21日
■メイン参加者 8人■

●遺跡の奥とまだ見ぬ遺跡の存在
工事現場跡から、F.i.V.E.の覚者達は地下に伸びるボーリングの穴を見つめる。
「遺跡探索遺跡探索~♪ ……と、楽しめる状況じゃないよね」
普段は遺跡探索とあれば、目を輝かせる『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070) だが、今回ばかりはそうも言っていられないらしい。
「最深部、ね。ついにたどり着いてしまったわね」
蛇が出るか、邪が出るか。『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は、その先にある物をしっかりと見定めようとしている。
これがラストの探索になるかなと踏んでいる『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410) 。彼もようやくここまで来たと呟く。
「この遺跡、なんとしても攻略して眠ってるものを見てみたいよね」
「まー……乗りかかった船だし、奥が気になって夜しか寝れねえし、ついでにクソ上司に顛末見といて、って言われた訳ですしおすし!」
続いて、フルフェイスの緒形 譟(CL2001610)が声を荒げる。
「いよいよ炎の洞窟も最深部! ラスボスはやっぱり鳥型だったか!」
「苦労して遺跡を探索したその先に、強いラスボスがいるってのはロマンあるよな……」
MIAの2人から話を聞いた『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) が叫ぶと、『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は感慨深げに呟く。
「やっぱり、朱雀と関係あるのかな?」
「炎鳥を封印するための遺跡……」
奏空の語った推論に、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が唸る。
妖の発生については、まだまだ謎の部分も多い。
だが、大昔から妖の存在は知られていたのではないか。あるいは、想定されていたのではないか。
「そう考えたくなるような、不思議な施設に出会うことがありますね」
ラーラの言葉を受け、譟が『クソ上司』と自身の共通の考えだと前置きして。
「……もしかしたら、似たような遺跡が後2つか3つは在るんじゃ無えかなって」
「玄武、朱雀と続いてね」
譟に、エメレンツィアが同意する。
「となると……、大亀遺跡は玄武。後々、それぞれの遺跡名を改名すべきかな」
朱雀遺跡、玄武遺跡。そんな遺跡の改称案を奏空が口に出すと、それらが点、線で繋がる場所に入り口があってもおかしくないだろうと譟は示唆した。
以前もその話は上がっており、考古学者が別途調査を行っているらしい。
その辺りは、理央が詳しそうだと示唆する譟。ただ、今回考えるべきは……。
「こいつが外に出た時の被害を考えると、悠長なことも言ってらんねー」
『ストレートダッシュ』斎 義弘(CL2001487) は飛馬の主張に頷く。敵は強大な相手、その上で翼持ちという取り巻きまでいるのだ。
「一筋縄ではいかない相手だろうが、とにかく全力を出すだけだ」
「さ、いくよ。……頼りにしているからね」
「よろしくー」
今度は、義弘の言葉に仲間達が頷く。MIAの2人、水玉・彩矢と荒石・成生も同意の声をあげ、一行は遺跡の中へと突入して行くのである。
●奥に鎮座する炎の鳥
炎の遺跡に入った一行。
メンバー達はまず北上し、分かれ道を右に曲がるが、そこからは炎上フロアだ。飛馬、ラーラが全力移動を皆に提案すると、それに皆同調する形となる。
「ここで消耗したら、後がつらいからね」
理央は遺跡の暑さを感じながら、急いで通路を駆け抜ける。
飛馬も第六感を働かせながら、ハイバランサーを使ってなめらかな足運びを意識して急いで進む。
そして、遺跡最深部。大きな玄室となったそこで、それは覚者達の来訪を待っていた。
「人間……カ」
全長3メートルもの巨躯を持つ炎の鳥は、鋭い視線を一行へと向けてくる。
肌でぴりぴりと威圧感すら感じるその威容に、義弘は僅かに後ずさる。敵はランク3、しかも遺跡の力で弱体化して、なのだ。
「これと正面からやり合わなければいけないとなると……大変だな、これは」
「完全復活したら、ランク4に至る敵。ここでちゃんと倒さないと」
しかし、ここで背を向けるわけには行かないと靴を脱ぐ、義弘はスパイク状になった足で踏みとどまる。理央もまた赤く変色させた瞳で敵を見据えていた。
そこで、梛、奏空がそれぞれ朱と蒼の鏡を取り出してみせる。これで炎鳥の抑制ができれば。そう考えての行為だったが。
「ナルホド、貴様ラガ封印ヲ弱メテクレタノカ……ククク」
しかし、炎鳥は逆に笑ってすらいる。
やはり、鏡は触媒に過ぎないらしい。封印と合わせて使うことで効力を大きく発揮する。
炎でボロボロになっていたが、封印の謎を解き明かすことができれば、あるいは炎鳥の力を抑えることができただろうか。
そこで、髪を真紅に染めたエメレンツィアはひそかに、MIAの様子を窺っていた。
(まあ正直、このご時世ですもの)
彼女は、この2人が黒霧である可能性も考えていた。
以前、黒霧首領、霧山・譲が地上部に姿を現したことがあった。タイミングが良すぎたこともあったし、黎明の件もある。警戒するに越したことはないと踏んでいたのだ。
そのMIAの2人も敵の出方を見つつ、覚醒している。特に怪しい動きをする様子はなさそうだ。
「ともあれ、このラスボスを倒せば、きっと洞窟内の炎も消えるはず」
そうしたら、遺跡の調査は大きく進むことだろう。新たな発見があるかと思うと、髪を金に染めた奏空は胸を躍らせた。
ラーラも炎の中で銀の髪をなびかせながら、魔導書『煌炎の書』を手に取る。
その間に、相手はどこからか2体の妖を呼び寄せる。火の玉の形をしたそれらには、1対の炎の翼が生えていた。
「敵方の増援は厄介ですね……」
事前情報に寄れば、炎鳥は常に2体になるよう、火の玉を従えるという。
一般的なセオリーからは反するかもしれないが、今回は助言どおりに炎鳥から撃破をと、ラーラは仲間に提案をしていた。
「さあ、気合い入れていこうじゃないか」
体の細胞を活性化させる義弘。そばのラーラも手のひらから炎を生み出して。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
その声を合図として、人と妖の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
●炎の中、熱い戦い
その炎鳥は覚者達よりも大きな体にも拘らず、素早く翼を羽ばたかせて襲い掛かってくる。
それは強い熱風となり、布陣を整えていた覚者達の前衛にいるメンバーがそれを浴びせかけられた。
「恐らく、こいつを倒してしまえばこの洞窟内の炎どころか、顔付きとかの妖も消えるんじゃないかって思う」
布陣中央に位置する奏空はそれに耐え、英霊の力を引き出してから飛び出す。
「だから……、絶対にこいつは倒す!」
狙うは、先程ラーラが告げたとおり炎鳥のみ。
相手は翼持ちの火の玉を配下に引き連れてはいるが、横一列に並んで仕掛けてきている。まずは、高密度の霧を発することで、奏空は敵の弱体化へと動く。
すでにMIAも動いていた。2人は最初に宣言していた通りに翼持ちをメインに相手をしてくれる。
腕を戦闘機の主翼のように変形させていた譟は炎鳥が発してくるという、業火に対する炎傷の対処を考えていた。
現状その対処の必要がないこと、敵より後攻が取れていることもあり、彼は威嚇用の閃光手榴弾をバラ撒き、相手の動きを制限しようとする。
後方では、ラーラが魔法陣を宙に描く。そこから彼女は流転する紅の炎を生み出し、敵へと浴びせかけていく。
相手に火傷を負わせることはできずとも、単体攻撃を行うならば、これが最善とラーラは判断していた。
第三の目を開眼させた梛は攻め入る仲間の状況を見ながら、特殊な花から引き出した香りを凝縮して炎鳥へと振り撒く。元の力が強いのであれば、その力を弱めてから攻め入るだけだ。
熱風を浴びたメンバーには、後方のエメレンツィアが恵みの雨を降らせることで癒しを行う。警戒こそ強めてはいるが、エメレンツィアはMIAの2人も対象に含んでいたようだ。
中央の理央も回復を考えてはいたが、彼女は攻撃も考えて立ち振る舞う。
「回復担当でも攻撃しない訳じゃないからね」
同列に翼持ちが並ぶことも有り、彼女は神秘の力を込めて生成した水竜を敵陣へとけしかけ、飲み込んでいく。
水剋火、五行相克通りに水行の通りがよいと理央は判断するも、種を取り出して棘散舞も試していたようだ。
水竜に合わせ、前衛の義弘も全力で攻め込む。彼は手のひらに空気を熱圧縮し、さらに自身から噴き出す炎を融合させ、炎鳥の体を破壊しようとする。
敵の次なる攻撃に備えていた飛馬は無銘の脇差と太刀を両手で構えて。
すると、翼持ちが特攻、そして、炎を躍らせて放ってきた。
「させないよー」
MIAが抑えるも、さすがに広域の炎を全て防ぐことはできない。
そして、炎鳥が大きく息を吸い込み、業火を吐き出してくる。覚者全員を包み込むほどの広域の炎がメンバーの体を苛み、十分な力が出せなくなってしまう。
「炎傷か……大したことはねー。ただ、塵も積もれば……」
焔傷に比べればではあるが、放置してよいものでないのは間違いないと火馬は判断する。
「気合入れて対処してくぞ」
仲間の炎傷を見た譟がその解除に当たる中、飛馬は大きな声を放ち、味方の士気を高めていく。
炎に包まれた空間でじりじりと減る覚者達の体力。しかし、炎の妖達がさらに覚者達へと炎で襲い掛かり、燃やし尽くそうとしてくるのである……。
事前に聞いてはいたが、いざ交戦してみると、やはり炎鳥は手強い。
それでも、炎鳥にほぼ専念して相手にできるのは、MIAの力量あってこそだろう。彼女達はランク2の妖2体をたった2人で相手にしているのだから。
「いーくよー」
MIAは淡々と攻め入っている。成生が粉砕した岩を火の玉へと浴びせかけると、彩矢がそいつを弓矢で狙い撃つ。
「残念ね」
その一矢は的確に火の玉に浮かぶ顔を貫き、完全に鎮火させてしまう。
(彼女達を信頼してるから……、任せられる……!)
妖の相手はMIAに任せ、奏空は炎鳥に向けてスキルを発動する。
天に轟く雷鳴。それが炎鳥目掛けて落ち、そいつの体に強烈な雷撃となって襲い掛かり、痺れを与えていく。
とはいえ、相手は弱体化しているとはいえ、元はランク4の妖。
「クエエエエエエエッ!!」
そいつは甲高い声を上げて多少の覚者の強化を消し去り、絶え間なく炎を、熱風を浴びせかけてきた。
感情探査を働かせ、新手の発生のタイミングを探っていた譟を苛むこととなる。
前衛陣は、特に飛馬は盾となってカバーに動くが、中衛陣の傷は徐々に深くなっていく。
回復を求めていた譟。されど、どうしても傷の集まる前衛陣、特に耐える飛馬に回復の手が集まることとなる。
「厳しい戦いになるし、回復はしっかりとね」
理央は潤しの滴を落とし、飛馬、義弘、梛の傷を1人ずつ癒す。
エメレンツィアの癒しの雨を浴びてはいたが、それでも、敵の吐き出す業火に意識が途絶えかけ、命の力を削って堪えてみせる。
「クソ上司と違って、耐久性はそんなに無えんだよ」
ただ、耐久力があれども、運が悪ければ。
義弘は炎鳥を狙い、超直感で周りを見回す義弘。危険を察知しようとする彼はそれに気づく。
湧き上がるように、姿を現す新手の火の玉。
「来たわね」
「させないよー」
MIAの2人が迎え撃つが、そいつらの特攻、炎舞を抑えるのは難しい。
義弘は気合を入れ、それに気づいて前線を支えようとする。
だが、敵の状態をエネミースキャンで見た後、破眼光で攻撃を仕掛けていた梛は対処が遅れた。
回復が間に合わないと判断した彼は植物の生命力を凝縮させて雫とするが、それを自らに落とすには至らない。
炎鳥が羽ばたき、吹きつけられる熱風。それに、梛が倒れかけたが、命を僅かに砕いて強く地面を踏みしめる。
なかなか攻め落とせぬ炎鳥。ラーラは守護使役ペスカに預けていた金の鍵で魔導書の封印を解く。
そして、彼女は燃え上がる炎をラーラは生み出し、炎鳥へと浴びせかけていく。
僅かに怯む炎鳥。火の玉もまた、MIAがスキルをぶつけて抑えていた。
そんな仲間の為に、潤しの雨を降らせるエメレンツィア。さらに、彼女は少しずつ減り行く氣力を気に掛ける。
(……しくじったわね)
エネミースキャン、そして、填気。スキルの用意に不備があったことを彼女は悔やむ。
だからこそ、彼女は出来る範囲で仲間の回復を行い、合間に生み出した水竜をぶつけていく。
炎鳥の攻撃は激しい。まれに2回連続して浴びせてくる攻撃は覚者達の体力を大きく削る。
出来る限り、身を挺してそれを受け止めていたのは飛馬だ。
「皆、まだこれからだぜ」
全力防御でじっと耐える飛馬は、鬨の声を上げる。その声は炎傷を負う仲間達に力を与えていく。
さらに、理央が潤しの雨を降らせる。誰も倒れることがないように。体力の維持が最優先。態勢が整っていなければ、攻撃すらロクにできないのだ。
なおも、続く戦い。奏空は時折、エネミースキャンで敵の体力をチェックする。
毎回成功するわけではなかったが、それでも、仲間の攻撃で減り行く敵の体力を、奏空は察して。
「もう一息だよ、一気に攻撃して行こう!」
奏空は雷鳴轟く一撃を、大太刀・虔翦と共に浴びせかけていく。
続けられる覚者達の攻撃。MIAの2人も笑顔を浮かべて火の玉と対する。
義弘は握ったメイスの先の一点に火力を集中させ、爆発力に変えて叩きつけた。
「じっくり腰を据えてはこちらが不利になる。戦いを加速させるべき時には、加速させないとね!」
理央もまた最初に確認した通り、水行を行使し、水竜をまたも生み出して炎鳥へと噛み付いていく。
だが、炎鳥はそれを振りほどいて炎を吐きかける。攻勢を強めたいメンバーを燻ぶる炎が苛む。
仲間が攻勢を仕掛ける中、ラーラは治癒力を高める香りを振り撒き、仲間達の体を包み込む。
そうして、癒しを受けたメンバー達がさらに炎鳥を叩く。
「グ、グウッ……」
嗚咽を漏らす炎鳥。今度は梛が体内の気を燃焼させる。
明らかに敵が弱ってきているのをエネミースキャンで確認した梛は、ここぞと炎鳥へと体当たりを繰り出す。
「木っ端微塵になりなよ」
「クエエエエエエェェェッ!!」
相手ごと梛は爆発する。大きく目を見開いた炎鳥が甲高い声で一声鳴き、爆ぜ飛ぶ。
同時に、MIAの相手にしていた火の玉もまた、掻き消えるように姿を消したのだった。
●炎鳥が落ちて……
戦いが終わり、メンバー達は互いの体力を気遣う。
なにせ、炎鳥が倒れても、すぐに遺跡内の炎が収まるわけではないのだ。
「そーいや、さっきから何かしら」
「もー、鏡をとったりしないよー」
MIAの2人は、エメレンツィアの向ける警戒に顔をしかめる。戦闘中に敵意を感じ、エメレンツィアに説明を求めていたのだ。
「すまなかったわ。また遺跡で会えたらいいわね」
杞憂だったかと察したエメレンツィアはそこで、過剰な警戒を詫びた。
一方で、梛は残る氣力を使い、大樹の息吹を仲間へと振り撒く。
「この遺跡が封印しているのは、この炎鳥ではないと思うのだが……」
それは、もっと巨大で、厄介なものではないだろうかと彼は推測するが果たして……。
譟は手早く、この部屋を探索していた。
「長い事残って居られそうに無いし。ポイントを絞って調べないとな」
とはいえ、この玄室は完全に四方をみっちりと石壁に覆われている。
また、部屋の中には、ボロボロと焼け焦げた封印に使われた紙らしき物が散らばっていたことに梛は気づく。炎鳥は中から長い年月を掛けて少しずつ、封印を壊そうとしていたのだろう。
程なく、メンバーはじりじりと炎によって体力の減少を感じた為、足早に入り口へと戻っていく。
「ほんとに四神の遺跡なら……、あと2つある事になるよね……」
よく守り神として耳にする四神。されど、今戦った相手はどう見ても妖であったが……。
突入前に、ラーラも言っていたが、封印されたのは日本逢魔化の前時代であるのは間違いない。
深まる謎を抱えつつも、覚者達は妖討伐の完了報告を済ませる為にF.i.V.E.へと帰投していくのだった。
工事現場跡から、F.i.V.E.の覚者達は地下に伸びるボーリングの穴を見つめる。
「遺跡探索遺跡探索~♪ ……と、楽しめる状況じゃないよね」
普段は遺跡探索とあれば、目を輝かせる『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070) だが、今回ばかりはそうも言っていられないらしい。
「最深部、ね。ついにたどり着いてしまったわね」
蛇が出るか、邪が出るか。『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は、その先にある物をしっかりと見定めようとしている。
これがラストの探索になるかなと踏んでいる『静かに見つめる眼』東雲 梛(CL2001410) 。彼もようやくここまで来たと呟く。
「この遺跡、なんとしても攻略して眠ってるものを見てみたいよね」
「まー……乗りかかった船だし、奥が気になって夜しか寝れねえし、ついでにクソ上司に顛末見といて、って言われた訳ですしおすし!」
続いて、フルフェイスの緒形 譟(CL2001610)が声を荒げる。
「いよいよ炎の洞窟も最深部! ラスボスはやっぱり鳥型だったか!」
「苦労して遺跡を探索したその先に、強いラスボスがいるってのはロマンあるよな……」
MIAの2人から話を聞いた『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) が叫ぶと、『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)は感慨深げに呟く。
「やっぱり、朱雀と関係あるのかな?」
「炎鳥を封印するための遺跡……」
奏空の語った推論に、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が唸る。
妖の発生については、まだまだ謎の部分も多い。
だが、大昔から妖の存在は知られていたのではないか。あるいは、想定されていたのではないか。
「そう考えたくなるような、不思議な施設に出会うことがありますね」
ラーラの言葉を受け、譟が『クソ上司』と自身の共通の考えだと前置きして。
「……もしかしたら、似たような遺跡が後2つか3つは在るんじゃ無えかなって」
「玄武、朱雀と続いてね」
譟に、エメレンツィアが同意する。
「となると……、大亀遺跡は玄武。後々、それぞれの遺跡名を改名すべきかな」
朱雀遺跡、玄武遺跡。そんな遺跡の改称案を奏空が口に出すと、それらが点、線で繋がる場所に入り口があってもおかしくないだろうと譟は示唆した。
以前もその話は上がっており、考古学者が別途調査を行っているらしい。
その辺りは、理央が詳しそうだと示唆する譟。ただ、今回考えるべきは……。
「こいつが外に出た時の被害を考えると、悠長なことも言ってらんねー」
『ストレートダッシュ』斎 義弘(CL2001487) は飛馬の主張に頷く。敵は強大な相手、その上で翼持ちという取り巻きまでいるのだ。
「一筋縄ではいかない相手だろうが、とにかく全力を出すだけだ」
「さ、いくよ。……頼りにしているからね」
「よろしくー」
今度は、義弘の言葉に仲間達が頷く。MIAの2人、水玉・彩矢と荒石・成生も同意の声をあげ、一行は遺跡の中へと突入して行くのである。
●奥に鎮座する炎の鳥
炎の遺跡に入った一行。
メンバー達はまず北上し、分かれ道を右に曲がるが、そこからは炎上フロアだ。飛馬、ラーラが全力移動を皆に提案すると、それに皆同調する形となる。
「ここで消耗したら、後がつらいからね」
理央は遺跡の暑さを感じながら、急いで通路を駆け抜ける。
飛馬も第六感を働かせながら、ハイバランサーを使ってなめらかな足運びを意識して急いで進む。
そして、遺跡最深部。大きな玄室となったそこで、それは覚者達の来訪を待っていた。
「人間……カ」
全長3メートルもの巨躯を持つ炎の鳥は、鋭い視線を一行へと向けてくる。
肌でぴりぴりと威圧感すら感じるその威容に、義弘は僅かに後ずさる。敵はランク3、しかも遺跡の力で弱体化して、なのだ。
「これと正面からやり合わなければいけないとなると……大変だな、これは」
「完全復活したら、ランク4に至る敵。ここでちゃんと倒さないと」
しかし、ここで背を向けるわけには行かないと靴を脱ぐ、義弘はスパイク状になった足で踏みとどまる。理央もまた赤く変色させた瞳で敵を見据えていた。
そこで、梛、奏空がそれぞれ朱と蒼の鏡を取り出してみせる。これで炎鳥の抑制ができれば。そう考えての行為だったが。
「ナルホド、貴様ラガ封印ヲ弱メテクレタノカ……ククク」
しかし、炎鳥は逆に笑ってすらいる。
やはり、鏡は触媒に過ぎないらしい。封印と合わせて使うことで効力を大きく発揮する。
炎でボロボロになっていたが、封印の謎を解き明かすことができれば、あるいは炎鳥の力を抑えることができただろうか。
そこで、髪を真紅に染めたエメレンツィアはひそかに、MIAの様子を窺っていた。
(まあ正直、このご時世ですもの)
彼女は、この2人が黒霧である可能性も考えていた。
以前、黒霧首領、霧山・譲が地上部に姿を現したことがあった。タイミングが良すぎたこともあったし、黎明の件もある。警戒するに越したことはないと踏んでいたのだ。
そのMIAの2人も敵の出方を見つつ、覚醒している。特に怪しい動きをする様子はなさそうだ。
「ともあれ、このラスボスを倒せば、きっと洞窟内の炎も消えるはず」
そうしたら、遺跡の調査は大きく進むことだろう。新たな発見があるかと思うと、髪を金に染めた奏空は胸を躍らせた。
ラーラも炎の中で銀の髪をなびかせながら、魔導書『煌炎の書』を手に取る。
その間に、相手はどこからか2体の妖を呼び寄せる。火の玉の形をしたそれらには、1対の炎の翼が生えていた。
「敵方の増援は厄介ですね……」
事前情報に寄れば、炎鳥は常に2体になるよう、火の玉を従えるという。
一般的なセオリーからは反するかもしれないが、今回は助言どおりに炎鳥から撃破をと、ラーラは仲間に提案をしていた。
「さあ、気合い入れていこうじゃないか」
体の細胞を活性化させる義弘。そばのラーラも手のひらから炎を生み出して。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
その声を合図として、人と妖の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
●炎の中、熱い戦い
その炎鳥は覚者達よりも大きな体にも拘らず、素早く翼を羽ばたかせて襲い掛かってくる。
それは強い熱風となり、布陣を整えていた覚者達の前衛にいるメンバーがそれを浴びせかけられた。
「恐らく、こいつを倒してしまえばこの洞窟内の炎どころか、顔付きとかの妖も消えるんじゃないかって思う」
布陣中央に位置する奏空はそれに耐え、英霊の力を引き出してから飛び出す。
「だから……、絶対にこいつは倒す!」
狙うは、先程ラーラが告げたとおり炎鳥のみ。
相手は翼持ちの火の玉を配下に引き連れてはいるが、横一列に並んで仕掛けてきている。まずは、高密度の霧を発することで、奏空は敵の弱体化へと動く。
すでにMIAも動いていた。2人は最初に宣言していた通りに翼持ちをメインに相手をしてくれる。
腕を戦闘機の主翼のように変形させていた譟は炎鳥が発してくるという、業火に対する炎傷の対処を考えていた。
現状その対処の必要がないこと、敵より後攻が取れていることもあり、彼は威嚇用の閃光手榴弾をバラ撒き、相手の動きを制限しようとする。
後方では、ラーラが魔法陣を宙に描く。そこから彼女は流転する紅の炎を生み出し、敵へと浴びせかけていく。
相手に火傷を負わせることはできずとも、単体攻撃を行うならば、これが最善とラーラは判断していた。
第三の目を開眼させた梛は攻め入る仲間の状況を見ながら、特殊な花から引き出した香りを凝縮して炎鳥へと振り撒く。元の力が強いのであれば、その力を弱めてから攻め入るだけだ。
熱風を浴びたメンバーには、後方のエメレンツィアが恵みの雨を降らせることで癒しを行う。警戒こそ強めてはいるが、エメレンツィアはMIAの2人も対象に含んでいたようだ。
中央の理央も回復を考えてはいたが、彼女は攻撃も考えて立ち振る舞う。
「回復担当でも攻撃しない訳じゃないからね」
同列に翼持ちが並ぶことも有り、彼女は神秘の力を込めて生成した水竜を敵陣へとけしかけ、飲み込んでいく。
水剋火、五行相克通りに水行の通りがよいと理央は判断するも、種を取り出して棘散舞も試していたようだ。
水竜に合わせ、前衛の義弘も全力で攻め込む。彼は手のひらに空気を熱圧縮し、さらに自身から噴き出す炎を融合させ、炎鳥の体を破壊しようとする。
敵の次なる攻撃に備えていた飛馬は無銘の脇差と太刀を両手で構えて。
すると、翼持ちが特攻、そして、炎を躍らせて放ってきた。
「させないよー」
MIAが抑えるも、さすがに広域の炎を全て防ぐことはできない。
そして、炎鳥が大きく息を吸い込み、業火を吐き出してくる。覚者全員を包み込むほどの広域の炎がメンバーの体を苛み、十分な力が出せなくなってしまう。
「炎傷か……大したことはねー。ただ、塵も積もれば……」
焔傷に比べればではあるが、放置してよいものでないのは間違いないと火馬は判断する。
「気合入れて対処してくぞ」
仲間の炎傷を見た譟がその解除に当たる中、飛馬は大きな声を放ち、味方の士気を高めていく。
炎に包まれた空間でじりじりと減る覚者達の体力。しかし、炎の妖達がさらに覚者達へと炎で襲い掛かり、燃やし尽くそうとしてくるのである……。
事前に聞いてはいたが、いざ交戦してみると、やはり炎鳥は手強い。
それでも、炎鳥にほぼ専念して相手にできるのは、MIAの力量あってこそだろう。彼女達はランク2の妖2体をたった2人で相手にしているのだから。
「いーくよー」
MIAは淡々と攻め入っている。成生が粉砕した岩を火の玉へと浴びせかけると、彩矢がそいつを弓矢で狙い撃つ。
「残念ね」
その一矢は的確に火の玉に浮かぶ顔を貫き、完全に鎮火させてしまう。
(彼女達を信頼してるから……、任せられる……!)
妖の相手はMIAに任せ、奏空は炎鳥に向けてスキルを発動する。
天に轟く雷鳴。それが炎鳥目掛けて落ち、そいつの体に強烈な雷撃となって襲い掛かり、痺れを与えていく。
とはいえ、相手は弱体化しているとはいえ、元はランク4の妖。
「クエエエエエエエッ!!」
そいつは甲高い声を上げて多少の覚者の強化を消し去り、絶え間なく炎を、熱風を浴びせかけてきた。
感情探査を働かせ、新手の発生のタイミングを探っていた譟を苛むこととなる。
前衛陣は、特に飛馬は盾となってカバーに動くが、中衛陣の傷は徐々に深くなっていく。
回復を求めていた譟。されど、どうしても傷の集まる前衛陣、特に耐える飛馬に回復の手が集まることとなる。
「厳しい戦いになるし、回復はしっかりとね」
理央は潤しの滴を落とし、飛馬、義弘、梛の傷を1人ずつ癒す。
エメレンツィアの癒しの雨を浴びてはいたが、それでも、敵の吐き出す業火に意識が途絶えかけ、命の力を削って堪えてみせる。
「クソ上司と違って、耐久性はそんなに無えんだよ」
ただ、耐久力があれども、運が悪ければ。
義弘は炎鳥を狙い、超直感で周りを見回す義弘。危険を察知しようとする彼はそれに気づく。
湧き上がるように、姿を現す新手の火の玉。
「来たわね」
「させないよー」
MIAの2人が迎え撃つが、そいつらの特攻、炎舞を抑えるのは難しい。
義弘は気合を入れ、それに気づいて前線を支えようとする。
だが、敵の状態をエネミースキャンで見た後、破眼光で攻撃を仕掛けていた梛は対処が遅れた。
回復が間に合わないと判断した彼は植物の生命力を凝縮させて雫とするが、それを自らに落とすには至らない。
炎鳥が羽ばたき、吹きつけられる熱風。それに、梛が倒れかけたが、命を僅かに砕いて強く地面を踏みしめる。
なかなか攻め落とせぬ炎鳥。ラーラは守護使役ペスカに預けていた金の鍵で魔導書の封印を解く。
そして、彼女は燃え上がる炎をラーラは生み出し、炎鳥へと浴びせかけていく。
僅かに怯む炎鳥。火の玉もまた、MIAがスキルをぶつけて抑えていた。
そんな仲間の為に、潤しの雨を降らせるエメレンツィア。さらに、彼女は少しずつ減り行く氣力を気に掛ける。
(……しくじったわね)
エネミースキャン、そして、填気。スキルの用意に不備があったことを彼女は悔やむ。
だからこそ、彼女は出来る範囲で仲間の回復を行い、合間に生み出した水竜をぶつけていく。
炎鳥の攻撃は激しい。まれに2回連続して浴びせてくる攻撃は覚者達の体力を大きく削る。
出来る限り、身を挺してそれを受け止めていたのは飛馬だ。
「皆、まだこれからだぜ」
全力防御でじっと耐える飛馬は、鬨の声を上げる。その声は炎傷を負う仲間達に力を与えていく。
さらに、理央が潤しの雨を降らせる。誰も倒れることがないように。体力の維持が最優先。態勢が整っていなければ、攻撃すらロクにできないのだ。
なおも、続く戦い。奏空は時折、エネミースキャンで敵の体力をチェックする。
毎回成功するわけではなかったが、それでも、仲間の攻撃で減り行く敵の体力を、奏空は察して。
「もう一息だよ、一気に攻撃して行こう!」
奏空は雷鳴轟く一撃を、大太刀・虔翦と共に浴びせかけていく。
続けられる覚者達の攻撃。MIAの2人も笑顔を浮かべて火の玉と対する。
義弘は握ったメイスの先の一点に火力を集中させ、爆発力に変えて叩きつけた。
「じっくり腰を据えてはこちらが不利になる。戦いを加速させるべき時には、加速させないとね!」
理央もまた最初に確認した通り、水行を行使し、水竜をまたも生み出して炎鳥へと噛み付いていく。
だが、炎鳥はそれを振りほどいて炎を吐きかける。攻勢を強めたいメンバーを燻ぶる炎が苛む。
仲間が攻勢を仕掛ける中、ラーラは治癒力を高める香りを振り撒き、仲間達の体を包み込む。
そうして、癒しを受けたメンバー達がさらに炎鳥を叩く。
「グ、グウッ……」
嗚咽を漏らす炎鳥。今度は梛が体内の気を燃焼させる。
明らかに敵が弱ってきているのをエネミースキャンで確認した梛は、ここぞと炎鳥へと体当たりを繰り出す。
「木っ端微塵になりなよ」
「クエエエエエエェェェッ!!」
相手ごと梛は爆発する。大きく目を見開いた炎鳥が甲高い声で一声鳴き、爆ぜ飛ぶ。
同時に、MIAの相手にしていた火の玉もまた、掻き消えるように姿を消したのだった。
●炎鳥が落ちて……
戦いが終わり、メンバー達は互いの体力を気遣う。
なにせ、炎鳥が倒れても、すぐに遺跡内の炎が収まるわけではないのだ。
「そーいや、さっきから何かしら」
「もー、鏡をとったりしないよー」
MIAの2人は、エメレンツィアの向ける警戒に顔をしかめる。戦闘中に敵意を感じ、エメレンツィアに説明を求めていたのだ。
「すまなかったわ。また遺跡で会えたらいいわね」
杞憂だったかと察したエメレンツィアはそこで、過剰な警戒を詫びた。
一方で、梛は残る氣力を使い、大樹の息吹を仲間へと振り撒く。
「この遺跡が封印しているのは、この炎鳥ではないと思うのだが……」
それは、もっと巨大で、厄介なものではないだろうかと彼は推測するが果たして……。
譟は手早く、この部屋を探索していた。
「長い事残って居られそうに無いし。ポイントを絞って調べないとな」
とはいえ、この玄室は完全に四方をみっちりと石壁に覆われている。
また、部屋の中には、ボロボロと焼け焦げた封印に使われた紙らしき物が散らばっていたことに梛は気づく。炎鳥は中から長い年月を掛けて少しずつ、封印を壊そうとしていたのだろう。
程なく、メンバーはじりじりと炎によって体力の減少を感じた為、足早に入り口へと戻っていく。
「ほんとに四神の遺跡なら……、あと2つある事になるよね……」
よく守り神として耳にする四神。されど、今戦った相手はどう見ても妖であったが……。
突入前に、ラーラも言っていたが、封印されたのは日本逢魔化の前時代であるのは間違いない。
深まる謎を抱えつつも、覚者達は妖討伐の完了報告を済ませる為にF.i.V.E.へと帰投していくのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
リプレイ、公開です。
この後、考古学者、MIAの2人は遺跡東部の調査に当たるようです。
しばし、遺跡関連シナリオはお時間をいただきます。
STとしましては、
しばし黒霧依頼に専念させていただく予定です。
遺跡シナリオは10~11月に再開予定ですので、
またよろしくお願いいたします。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!!
この後、考古学者、MIAの2人は遺跡東部の調査に当たるようです。
しばし、遺跡関連シナリオはお時間をいただきます。
STとしましては、
しばし黒霧依頼に専念させていただく予定です。
遺跡シナリオは10~11月に再開予定ですので、
またよろしくお願いいたします。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!!
