<冷酷島>霧中の影へ問う
<冷酷島>霧中の影へ問う


●序論・冷酷島とは
 『冷酷島』
 正式名称・黎刻ニューアイランドシティは埋立地に作られた複合都市でした。
 日本の多くが妖によって被害を受ける中、日本国土の外側に居住地を建設すれば安全になるのだという主張から建設されたその人工島は、政治家と市民たちが夢見たフロンティアだったのです。
 学校、病院、警察署や消防署、スタジアムや自然公園、高層マンションや一戸建ての住宅街。最新の技術で整えられたその人工島は、安息の地になるはずでした。
 しかし、ならなかったのです。

●島内調査記録と『赤子を抱いた女性像』
「最初はよくある怪談話だと思ったんだけどねぇ」
 蘇我島 恭司(CL2001015) は自身と仲間たちの集めた調査記録のまとめを提出しながら、中 恭介(nCL2000002)に語りかけた。
「島が建設されて人が住み始めてから、あちこちで妙な人影が目撃されていたんだよ。いわく、『赤子を抱えた女性らしきシルエットを見た』ってね」
 それだけなら別に珍しいことではない。島には住宅地も託児所もある。
「けど、なんだか和服を着ていて、しばらくするとフッと消えているそうなんだ。だから怪談話かと思ったけど……」
 恭司は直感的に、『赤子を抱いた女性像』を島の妖が急増する現象の中心だと考えたようだ。
「もちろん、『ラスボスを倒してハイおしまい』とは思ってないよ。倒すだけでも決戦規模だろうし、もし倒せてもあちこちにいるR3のコミュニティが一斉に散っていくから、周囲の土地が壊滅的な打撃を受けちゃうしね」
 けど、放っておくことはできない。
「攻略した企業ビルをスタート地点にして、妖を倒しながら近くのコミュニティに攻撃を仕掛けてみるのはどうかな。何かキッカケをつかめるかもしれない」
「なるほど……分かった。依頼を作成してみよう」

●自由選択制の攻撃作戦
 中 恭介(nCL2000002)は集まった覚者たちに資料を配った。
 安全が確保された企業ビルと、その周辺200メートル圏内の地図である。
「冷酷島のことは聞いているな? この島はあちこちで妖が跋扈しておりとてもではないがウロウロできる環境ではない。せいぜいが近くのエリアに進出し、サッと戻ってくる程度でだ。だが限られた……地図にある範囲までなら探索ができるだろう」
 近隣には三つのエリアが存在している。
 『住宅地』
 『遊園地』
 『製材所』
 である。
「この中から行き先を選んで、妖と戦闘を行なって欲しい。コミュニティを刺激することで何らかの発展が見込めるかもしれない。
 おっと、探索は後回しだ。ものを調べている間にやられていたのでは元も子もないからな。
 くれぐれも安全に注意しつつ、戦闘を行なってくれ。危なくなったらすぐに撤退するように。以上だ」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.戦闘不能者が3名を超える前に撤退する
2.妖との戦闘を1回以上行なう
3. 
 こちらはシーズンシナリオ<冷酷島>のひとつです。
 色々な形に分岐し、場合によってはルートが増える構成となっております。
 そんなわけで、飛び入り参加をいつでも歓迎しております。

【作戦目的】
・主目標:妖との戦闘を行ない、コミュニティを軽く刺激する
・副目標:周辺妖のコミュニティを知る
・発展目標:すべての中心となる妖を知る

【行動のかけかた】
 プレイング冒頭に『住宅地』『遊園地』『製材所』のいずれかのエリア名をコピペすることで、戦闘エリアを決定できます。
 全員で一箇所をせめても良いし、複数に分散してせめても良いでしょう。くれぐれも安全には注意して下さい。
 一人で複数を選択することも一応可能ですが、大体ヤバいことになります。

●『住宅地』
 一戸建ての新築が並んだ最新型のモデルタウンです。オール電化やエコ住宅が並んでいますが、家々はしんと静まりかえっています。
 探索可能範囲ギリギリまで離れた辺りに、全壊した住宅が数件確認されています。
 このエリアでは心霊系妖が複数確認されています。
 妖襲撃時に死亡した人々の霊魂が元になっていると思われます。

●『遊園地』
 観覧車やメリーゴーランドなどオーソドックスなアトラクションが並ぶ遊園地です。
 破壊のあとが多く、全てのアトラクションは機能していないと思われます。
 ジェットコースターの乗り物部分が見当たりません。
 物質系妖が多く点在し、その殆どは遊園地の一部が妖化したものと思われます。

●『製材所』
 板や石などを加工する施設です。北の工業エリアに存在しています。
 およそ50メートルほどの天井が高い作業場が複数並んでおり、特に大きな面積をもつ作業場には天井が内側から大きく歪められたあとが見られます。
 ほとんどの作業場は屋根に覆われており、内部に妖が潜んでいるものと思われますが、作業場内のものが妖化したなら物質系妖や自然系妖だろうとみられています。

【エネミーデータ】
 どんな敵が出るかまだ分からないので、『どんな種類の敵が出てもいいように』装備やスキルを整えましょう。
 また、今回の作戦は撤退に高いリスクを伴います。
 撤退時のプレイングがあると撤退時のダメージを軽減できるかもしれません。

【事後調査】
(※こちらは、PLが好むタイプのシナリオへシフトしやすくするための試験運用機能です)
 島内は非常に危険なため、依頼完了後は一般人や調査・戦闘部隊はみな島外に退避します。
 しかし高い生存能力をもつPCたちは依頼終了後に島内の調査を行なうことができます。
 以下の三つのうちから好きな行動を選んでEXプレイングに記入して下さい。
 ※EX外に書いたプレイングは判定されません
・『A:追跡調査』今回の妖や事件の痕跡を更に追うことで同様の事件を見つけやすくなり、同様の依頼が発生しやすくなります。
・『B:特定調査』特定の事件を調査します。「島内で○○な事件が起きているかも」「○○な敵と戦いたい」といった形でプレイングをかけることで、ピンポイントな依頼が発生しやすくなります。
・『C:島外警備』調査や探索はせず、島外の警備を手伝います。依頼発生には影響しなさそうですが、島外に妖が出ないように守ることも大事です。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2017年04月27日

■メイン参加者 6人■


●ゆうえんち
 真新しいコンクリートとペンキの臭い。それに混じったわずかなサビの臭い。
 レイコクパークと表記されたゲートの下で、宮神 早紀(CL2000353)は小さく息をついた。
「どんな建物もそうだと思ってたけど……」
 ひとの気配はまるでない。
 どこかしかし電気だけは通っているようで、園内からぶんわかぶんわかと楽しげな音楽だけが漏れ聞こえてくる。
「バリバリに新品な建物でも、放って置かれるってだけでハンパない寂れかたするんだね」
「廃墟ならぬ廃島、だからな。言葉の響きほど朽ちてはいないようだが」
 水蓮寺 静護(CL2000471)は刀を納めたままの状態で、しかしいつでも抜くことができるようにと柄を握っていた。
「目的はコミュニティの刺激と敵勢力の把握だったな?」
「久しぶりに調査員のまねごとか……じゃあ、色々気になるところをまとめるぞう」
 ぐるぐると腕を回してやる気を見せる緒形 逝(CL2000156)。
 全体的に人間離れしたシルエット(ヘルメットにスーツになんかとがった手足)のせいで本気なんだか演技なんだか分からなかったが、そのあたり場慣れした静護は短く『たのむぞ』と返した。

 当作戦をざっくりと表現すると『藪をつつく』である。
 『蜂の巣に石を投げる』でもいいが、とにかく隠密作戦ではない。
 ということで、逝は感情探査を、早紀は暗視と熱感知を、静護は第六感をそれぞれアクティブにして挑むことにした。
「んー、こっちの足音に反応したのかな。いくつか妖が近づいてきてるっぽいさね」
 ヘルメットの側面に指をとんとんとやって、逝が二人を止めた。
 早速刀を抜く静護。
「数は分かるか」
「精度が落ちてるからざっくりだけど、ひとつやふたつじゃなさそうだ」
「熱感知は」
「相手が熱を発してなかったら意味ないから、あんまりアテにしないで。けど近づいてくる熱源体を感知したから――」
「ふむ」
 30m先から移動熱源体を感知。これだけで構えるには充分だ。
「目視し次第戦闘を始める。前衛を任せていいか」
「ほいほい」
 静護とはまるで異なる雑な掴み方で刀を担ぐと、逝は舗装された道を走った。
 角を曲がったところから木馬が飛び出してくる。
 メリーゴーランドから妖化したものだろう。すぐさま逝が切りつけたが、肉体を僅かに削るだけに留まった。随分と頑丈らしい。
 が、こいつばかりに気を取られているわけにはいかない。アイスクリームの自動販売機がオモチャのロボットのように手足をはやし、攻撃後の逝へと殴りかかる。
「熱源体はこいつか」
 パンチが逝にヒットする直前、割り込んだ早紀が跳び蹴りをくらわせる。
 炎を伴った蹴りに大きくのけぞった自動販売機。早紀は反動で飛び退きつつ、火炎弾を連続で叩き込んだ。
 爆発を起こして倒れる自動販売機を飛び越え、逝が木馬に再びの斬撃。
 今度は打撃だけでなく足を引っかけて放り投げるような技だ。ポールに激突した木馬はへし折れて行動不能。
 巨大なカマをはやして高速回転するコーヒーカップを、逝と早紀は左右それぞれに飛び退いて回避する。
「遊具を外れて飛び回るな」
 静護は刀に術を纏わせ、振り込むことで発動。水の刃がコーヒーカップを真っ二つに切断する。
「構えた方がいいわよ。なんだか沢山やってくる」
 逝の呼びかけに応じて隊列を組み直すと、遠くからウサギやクマの着ぐるみが凶悪そうな武器をたずさえてゆらゆらと集まってきていた。
「安息の地とは、あまりにかけ離れた光景だ。そうは思わんか」

●じゅうたくがい
 風のおとしか聞こえない。
 誰の話し声も、生活音も、動物の声すらない、まっしろな住宅街。
 同じような形の家々が蛇行した道に連なっていて、まるで巨大な怪物が眠っているようだった。
 真昼の明るい時間だというのに、雰囲気は日本のホラー映画だ。引っ越した家に幽霊が現われて全員殺される的な。
「うう……」
 『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)はこんなことなら遊園地がよかったと少し思ったが、心霊系の妖が沢山出てくるとなれば術式攻撃が得意な自分がピッタリというのも事実。ここは覚悟を決めなければ。
 あとなんていったらいいのか、すがる相手もここには居ない。
「この地の現状は、すこし胸が痛みますね」
「まあ、大体のひとは希望や善意でこの島を見ていただろうからねえ」
 『桜舞うひと時を、君と』柳 燐花(CL2000695)と『桜舞うひと時を、君と』蘇我島 恭司(CL2001015)が、それぞれ戦闘態勢を整えつつ住宅地へと足を踏み入れていく。
「けど、焦りは禁物だよ。燐ちゃん」
「はい……」
 頷くでもなく目線だけで意志を通じ合わせる恭司と燐花。
 別にそういうアレじゃあないが、ラーラは急に自分に独り身っぽさを感じて『頑張れ私』と自分にガッツポーズをとった。17歳にして、既に婚期を気にするキャリアウーマンの雰囲気である。
 と、冗談はさておき。
「私は超視力とエネミースキャンを持ってきています。高ランクの妖が出ても、情報は持ち帰れると思いますが……」
「僕と燐ちゃんで超直観と鋭聴力をパッシブしてるから、索敵は多少大丈夫だと思うよ。この辺りも、そこそこ見通しは良さそうだしね」
 土地ごとイチから作っているだけあって、住宅地は綺麗に道が通っていた。並木が適度に植えられ、あえて蛇行した道にはところどころベンチが設置されている。
 最新の技術が用いられたというだけあって、住みやすそうな町だ。
「妖が現われなかったら、今もみんな幸せに暮らしていたでしょうに」
「本当に、そうですね。ところで全壊した住宅が見えるまで、どのくらいかかるでしょうか」
「探索限界範囲ギリギリだからね。うまくやらないとたどり着くのは難しいかも……って、そろそろ会話もおしまいにしなきゃかな」
 民家の窓からうねうねと半透明の物体がはみ出てきた。
 やがて人の形となり、足の無い幽霊めいた妖が両手を翳して突っ込んでくる。
 小太刀を握る燐花。
「道を変えますか?」
「いや、この分だとどこも同じだ」
 恭司は護符を握ると、ばちばちと電撃を散らせ始めた。
 腕を水平に払い、帯状の連想魔方陣を展開するラーラ。
「了解、切り抜けましょう」

 家々のドアが開く。
 眼孔が暗く窪んだ青白い人々が飛び出しては、こちらの首を掴まんと駆け寄ってくる。
「これだから心霊系妖はいやなんです……!」
 打ち切った魔力を恭司の大填気で補填しつつ、ラーラは帯状の魔方陣をリボン結びにするように重ねた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 解き放たれた無数の炎弾が妖を穿ち、さらには後方の民家の植木や窓を打ち破っていく。
「燐花さん、今のうちに!」
 ラーラに促される形で、燐花は街路樹の間をジグザグに駆け抜け、道行く妖を次から次へと切り払っていった。
 一度ブレーキをかけ、小太刀をしっかりと握り直す。
「大丈夫? 燐ちゃん」
「元が住民の皆さんだと思うと、少し……」
 これもまたラーラのいう『心霊系妖の嫌なところ』である。
 恭司は左右非対称に苦笑すると、燐花の頭を一度だけぽんとやった。
「妖っていうのはずるいよね。動物だとか物だとか、人の霊魂だとか、そういうものに寄生して襲ってくるんだから」
 ……という話をしつつも、恭司自身は敵の戦力分析に意識を向けていた。
 物理攻撃に耐性があるといってもせいぜいがランク1の妖。もとからハイスペックな燐花であればゴリ押しが効くし、速度や連撃を活かして戦った方が最終ダメージ値が稼げそうだというのが、恭司の読みである。
 周辺の妖相手にエネミースキャンを試みていたラーラも同じ意見で、低ランクの妖相手ならそこまで神経質になることはなさそうだ。
 が、問題はランク2から先の妖である。
「この先が全壊した建物のある場所だけど……ここからはちょっと気を引き締めたほうが良さそうだね」
「それは、パッシブしたスキルの影響ですか?」
「いや……カンかな」
 新たに沸いてくる妖相手に電撃を浴びせつつ、恭司はどこか冷徹に言った。

●ランク3物質系妖『デッドコースター』
 遭遇は突然だった。
 アスファルト舗装された地面が突如として吹き飛んだかと思うと、足下から大蛇にも似た巨大な妖が飛び出してきたのだ。
 今はそれが空中を竜の如く飛び回っている。
「おや、ジェットコースターのなれはてかな?」
「そうじゃなかった逆にイヤだよね」
 直撃を受けて肉体を軽くもぎ取られた逝は、自分に刀を刺して治療していた。
 最初お腹に刀をぶっさした時は切腹自殺かなと思った早紀だけど、どうやら逝なりの治癒術らしい。その証拠にもぎとられた腕がめきめき再生していた。
「乗り物部分がなくなっていると聞いたときに予想はしていた」
 ちゃっかり第六感でもって瞬時にかわしていた静護は、妖めがけて水の斬撃を発射。
 対する妖はそれらを食いちぎるようにして弾いていく。
「が、思ったより苦戦しそうだ。最低でも今の二倍の戦力は必要だろう。撤退するか?」
「んー、おっさんとしてはもうちょい情報ほしいとこさね」
「あたしもヘルメットのひとに賛成。あとちょっとだけ粘ってから逃げよ」
 早紀は逝と前衛を交代して一時的に後衛へ下がり、静護と共に火炎弾による支援攻撃を開始した。
 一方の逝は身体を硬くして、食らいついてくる妖を受け止めた。
 止めたといっても、巨大な顎の上と下を手足でもって突っ張っただけである。
「なるほど、ふむふむ。座席らしきものは残ってないし、全身が相手をこそぎとる武器になってるわけか。で、空気でレールを作って走ってるんだなあ。そこだけはジェットコースター感を残している、と……」
 ひとしきり観察を終えたところでばっくんと喰われた。
 喰われたといっても喉や胃袋があるわけでは無い。逝を無理矢理プレスして放り出すのみである。
 ぐしゃりと落下した逝は(またオバケみたいな復活のしかたをして)立ち上がった。
「情報は大体取れた。撤退するぞう!」
「あ、待って待って!」
 次に殴られたら絶対死ぬぞとばかりに走り出す逝。
 早紀は彼のフォローについて、トドメをさそうとするウサギの着ぐるみに跳び蹴りをくらわせた。
「で、撤退プラン的なものは?」
「プランBだ」
 なあにそれは、という目を受けて静護は咳払いをひとつ。
「とにかく走れ!」
 傷つきすぎて戦闘ができなくなった逝を左右からフォローしつつ、静護と早紀は安全地帯を目指してひた走ることになった。

●ランク3心霊系妖『ふしあわせなベイビー』
 巨大な赤子が家をたたきつぶして遊んでいた。
「これは……」
「赤ちゃん、だねえ」
 眼孔が闇のように窪んで、全身が青白くかすんでいることを覗けば生後六ヶ月前後の乳幼児である。
 おっと、這いつくばった状態で高さが軽く10メートル近くあることも付け加えねばなるまい。
「たしか、一人が戦闘不能になった時点で撤退という予定でしたよね」
「そうだね」
「提案なんですが、今から撤退しませんか」
 ラーラに言われて、恭司はことの重大さを改めて理解した。
 仮に一人が倒れ、その一人を庇いながら二人で戦いながら逃げるとする。
 『一人倒されてしまうくらいの敵戦力』を前にそれを行なうと、高い確率で二人目が倒される危険があった。最悪三人倒され、情報を抱いたまま帰らぬ事態にもなりかねない。
 これまでのランク1の群れを薙ぎ払うのと、いま目の当たりにしているランク3のバケモノに追われながらとではヤバさが桁違いなのだ。
「じゃあ、スキャンしながら全力で撤退ってことにしようか。燐りゃんもいい?」
「……はい、お二人を危険にさらすのは、苦しいですから」
 三人の意見は土壇場ではあるが一致した。ということで、撤退である。
『だあだ』
 巨大な赤子は民家や街路樹をなぎ倒しながらずかずかとこちらを追いかけてくる。
 それまでてんでバラバラに行動していた周囲の妖たちも、積極的に燐花たちの行く手を阻むように動き始めた。
「道を開きます」
 燐花はイナズマのように駆け抜け、妖たちを消滅させていく。
 恭司も恭司で脣星落霜を放って妖を散らすのだが……。
「ボスの赤ちゃんにはてんで効いてないなあ。あれは防御系の強化術があるとみたね。スキャンのほうは?」
「流石に相手が相手なので……」
 目の辺りに小さな魔方陣を複数展開させて巨大な赤子を見やるラーラだが、うまくはいっていないようだ。
 と思っていると、赤子がその場にずでんと突っ伏した。
 転倒か、と思いきや頭がぱっくりと開き、中から一般的なサイズの赤子が大量に飛び出し、しかし恐ろしい速度で這いずってくる。
「燐ちゃん、ラーラちゃん。戦闘行動抜きにして全力で逃げて。あれはやばい」
「それは……」
 言われてすぐに走り出す燐花とラーラ。
 恭司もまた走りながら。
「カンだけど、たぶんこのパターンって」
 小さな赤子が恭司の足にしがみつき、即座に爆発した。

●帰還報告
 『遊園地』と『住宅地』へ探索に出かけた覚者たちは、それぞれかなりボロボロになりつつもなんとか安全地帯へと帰還。島からの脱出に成功した。
 ダメージは激しかったが、それだけに得られた情報は大きかった。
 本来なら6人総出で一箇所集中しなければ得られないような情報を半分の人数でゲットしてきたと思っていいだろう。
 ヘリポートから飛び立つヘリの中で、皆はそれぞれの思いで島を見下ろしている。
 遠からぬうち、またここへ訪れることになるだろう。
 この島を取り返し、本当の『安息の地』へと変えるために。 

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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