テッペンを取るのはワイらじゃ!
テッペンを取るのはワイらじゃ!


●チーム『Teppen』
 とある路地裏の廃ビル。
 そこには、20人ほどのチンピラが集まっていた。
 一団高いところで、3人の隔者がふんぞり返り、時折ケタケタと笑っている。
「最近、この辺じゃ、俺っちらに歯向かうヤツ、いなくなったっすねえ」
 やや汚らしい翼を持つ男が、さらに壇上にいるリーゼントの男へと尋ねる。
 械の因子を持つそいつは、隣に付き従う酉の獣憑の女が差し出す鏡を覗き込み、ご自慢の髪型を入念にチェックしている。
「そりゃ、ワイらが『テッペン』やからに決まっとるからじゃ」
 リーゼントの男こそこのチームのリーダー、浅野・貴志だ。彼は女をぐいっと抱き寄せつつ、その場のチンピラどもへと告げる。
「そういや、てめぇら、F.i.V.E.って知ってるか」
 チンピラどもの反応はまちまちだが、半数以上は知っていた。なんでも、七星剣、暴力坂・乱暴率いるヒノマル陸軍を倒したとか……。
「なら、ワイらがそのF.i.V.E.を倒せば、『Teppen』が七星剣より強いって証となるじゃろ?」
 浅野がにやりと笑って立ち上がると、その場のチンピラどもは戦う気概に満ち溢れるリーダーの勇姿に、喝采を上げるのだった。

●傍迷惑な隔者集団
 F.i.V.E.入り口にて、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)が嘆息する。彼女は覚者が集まるのを待っていた。
「折角、ヒノマルが倒れたというのに……」
 彼女は茶封筒に入った紙切れを取り出す。
『3月某日14時に、岡山県某市の裏通り倉庫に来られたし。来ない場合はお前らの負けと見なす』
 そんな内容の果たし状が、F.i.V.E.に届いている。差出人は『Teppen』と殴り書きで書かれていた。
 名のある組織を潰せば、それだけで名が上がる。そうなれば、こういったごろつきどもが名を上げる為にと戦いを申し込んでくる。何とも傍迷惑なことだ。
「下手に無視して暴れられても困りますし、大人しくしていただくしかありませんわね……」
 『テッペン』の連中は周囲の隔者組織を少しずつ吸収し、力を拡大してきているようである。新たな脅威となる前に叩く必要があるかもしれない。
 やってくる覚者の反応は様々。思うままに相手を叩き潰せると意気込む者。F.i.V.E.を守る為にと時間を空けてやってきた者。暴力を振るう者を懲らしめねばと正義感を抱いて参加する者……。
「それでは、皆さん、よろしくお願いしますわ」
 売られた喧嘩を買おうと集まる覚者達。それに静音を加えた一行は、『テッペン』の待つ倉庫へと出向いていくのである。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.隔者の撃退
2.なし
3.なし
覚者の皆様、こんにちは。なちゅいです。

暴力坂・乱暴を倒したというF.i.V.E.の力を知った
隔者が喧嘩を吹っかけてきているようです。
こちらの撃退を願います。

●敵
○隔者……チーム『Teppen』メンバー
 周辺の隔者組織を倒し、徐々に名を上げているチームです。
 決闘においては、3人が覚者の皆様の相手をします。

・リーダー……浅野・貴志(あさの・たかし)21歳。
 械×火。グレートソードを所持。
 リーゼントの男。かなりの力を持っており、
 その両刃の剣と、覚者としての力を存分に振るって相手を叩き潰します。
 
・幹部……伏谷・悟(ふしや・さとる)19歳。
 翼×木。組織ナンバー2。槍を所持。
 短髪に剃り込みの入った男。元は別の組織トップでしたが、
 浅野に負けてその強さに従っております。
 その強さは、覚者の皆様と同程度くらいです。

・幹部……神嶋・奈緒子(かみしま・なおこ)20歳。
 獣(酉)×土。ナックルを所持。
 茶髪ロング。髪は右手前に再度ダウンで流しています。
 レディースを率いていた彼女も浅野の強さに惚れたようです。
 彼女の強さも、覚者に匹敵するレベルです。

・所属メンバー×20……10代後半の男女。
 因子、術式は様々。ナイフ、大槌、片手斧など。
 基本的には襲ってきません。
 なお、覚者としての力はさほど強くありません。
 
●戦場
 路地裏の倉庫内。
 所属メンバーが円状になって囲む中、幹部3人と戦う事になります。
 リーダー浅野の命で所属メンバー達は直接手を出してはきませんが、
 決闘の決着がつかぬうちに覚者の皆様が戦場から離脱するなどの
 動きを見せた場合に襲ってきます。
 勝利した場合は恐れをなして、襲ってきません。

●NPC
○河澄・静音
 お邪魔します。
 出来る限り邪魔にならないよう戦いますが、
 皆様のプレイングでのご指示を優先させていただきます。

純戦依頼です。
思いっきりカッコよくアピールしつつ、
敵を倒していただければと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2017年03月19日

■メイン参加者 6人■

『ストレートダッシュ』
斎 義弘(CL2001487)
『星唄う魔女』
秋津洲 いのり(CL2000268)
『清純派の可能性を秘めしもの』
神々楽 黄泉(CL2001332)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)

●名前が売れると……
 現場に向かうF.i.V.E.の覚者達。
 一行を乗せた車は、果たし状の差出人、『Teppen』の指定場所を目指す。
「えーっと……おっさん納品帰りなんだけど、サッサと帰って押し入れの中の刀の手入れをしたいのよ」
「まあまあ、そうおっしゃらずに……」
 刀専門の骨董店を営むフルフェイスメット着用の緒形 逝(CL2000156)は、割と本気で語る。思いの他忙しい彼を、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)が労っていたようである。
「果たし状……ですか。名前が売れるのは悪いことではないと思いますが、俗に言う有名税というものなんでしょうね……」
「名を上げるとこうして、挑戦してくる輩がいるのは困り者ですわ」
 『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)の言葉に対し、『星唄う魔女』秋津洲 いのり(CL2000268)はこういった組織の対処が大変だと悪態づく。
「こういう奴等はいい加減、大人になってほしいものだな……」
 学生時代から厳つい見た目だったという斎 義弘(CL2001487)は、今回の相手のような連中に絡まれてきたという。それだけに、果たし状までして喧嘩を吹っかけてくる連中に嘆息せざるをえない。
「それにしても、あの暴力坂を倒した影響は、こんな風にも広がっていたのか」
 これも、一つの世間の受け取り方なのかもしれない。世界とは広いものだと、鋭いツリ目に黒縁眼鏡が特徴的な水蓮寺 静護(CL2000471) は唸る。
「確かに、世界は広いですよね。既に私達を超える力の覚者がいるのも事実です」
 こういった集団が力をつける前に倒さねばならない。それも私達の責任だとラーラは語る。
「挑戦状……、受けねばなるまい」
「隔者をそのままにはしておけませんし、ここは一番受けて立ちませんと!」
 義弘、いのりが意気込むとラーラが小さく頷く。
「はい、頑張りましょう」

●うぬぼれか、それとも……
 現場となる裏路地の倉庫。
 覚者達が意を決してその扉を開くと、そこには20人余りの若い男女が待っていた。
「待っとったぞ、F.i.V.E.……」
 入ってきた覚者達に声をかけてきたのは、リーゼントの男。こいつがチーム『Teppen』のリーダー、付喪の浅野・貴志だ。
 円陣を組む『Teppen』メンバーの中を覚者達は歩いていく。
 そして、覚者に対するように浅野と、幹部の男、反りこみの入った翼人の伏谷と、茶髪ロングの酉の獣憑、神嶋が歩み寄ってくる。
「ところで、勝負の前に一つ聞きたい事があるのですが」
 いのりがそこで、神嶋に声をかける。資料によれば、相手は元レディースの長だという。
「あんだよ」
「いえ、レディースとスケバンとは違うものなのですか?」
「レディースとガキを一緒にすんじゃねーよ!」
 威圧的な視線にも、いのりはおっとりと質問。ちなみに、女性ばかりの暴走族がレディース、スケバンは中高生の不良を指す。
 スケバンは神がかり的なヨーヨーの技術を持つといのりは聞いていたが、違ったようである。
「おいてめぇら、手ェ出すなよ」
 リーダーの言う事は絶対のようで、チームメンバーは浅野の言う通り、誰一人動かない。
「人数は向こう側が不利、随分と余裕な態度だな。それとも僕達をなめているのか」
 相手の出方に、静護は些か呆れを覚えていた。
「3人なのに、倍いる私達に決闘。かなり自信、ある?」
 こちらは、静音を入れて7人。もしかすれば、彼らはランク4並みの妖ほどの力を持っているのか。右目と頭部に包帯を巻いた『自殺撲滅委員会』神々楽 黄泉(CL2001332)は、それならばとても楽しみだとアホ毛を揺らす。強敵とのバトルは、強くなる近道だと疑わぬ彼女である。
「ずいぶん自信をお持ちのようですね。でも、力に任せて悪いことをするのは良くないって思うんです」
 ラーラが自分よりもやや大きな相手を見上げ、気丈に言い放つ。
「すまんが、大人しくしててくれんかね?」
 進み出る逝も彼らへと告げる。自身はやるべき事ができる力さえあれば、それでいいと。
「天辺だか底辺は如何でもいい。強さだけで言うなら、おっさんそんなに強くないわよ。遥か上は幾らでも居るさね」
「リーダーさん個人は、確かに私達より強いかもしれません。……でも、ここにいる私達に勝ったからって、暴力坂さんより強いってことにはなりませんよ?」
「少なくとも、ガキばっかの集団に負けていられっかよ!」
 ラーラに反論する反りこみ、伏谷の言葉に、普段は無表情の黄泉がむっとしたのか、アホ毛をぴんと伸ばす。黄泉と伏谷の2人はどうやら同い年らしい。
「甘く見ると、痛いお仕置き、するから、覚悟する」
「ええ、私達だってF.I.V.E.の覚者です。悪いことをする人達に負けてあげるつもりなんてありません」
 ラーラも敵を見据える。対峙する両者はしばし、相手の出方を伺う。
「それでは、勝負と参りましょう」
 なかなか動かぬ両者に、いのりは敢えて声を上げる。彼女は覚醒して成長した17歳の姿になると、仲間の後方で冥王の杖を掲げる。
「今まで負けた事がないのでしょうが、その鼻っ柱をいのり達でへし折ってやりますわ!」
「へへへ……」
 威風を込めたいのりの宣言にも、隔者どもは笑ってみせる。
「僕も全力で応えるまでだ。後悔するな、手加減はできないぞ」
「遠慮せず、本気で行く、ね」
 静護が顔の刺青を光らせると、背中に第三の目を開眼させた黄泉も大斧「燕潰し」をブンブンと素振りする。
「どういう理屈でふざけた挑戦状を出してきたかは分かるが、理解はしてやらん」
 足裏に生えるスパイクを懸念して靴を脱いだ義弘も覚醒し、己の体内に宿る炎を灼熱化させた。
「しっかりと本気で、ぶん殴ってやるから覚悟しろよ?」
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 ラーラもまた髪を銀色に変色させ、赤い瞳で敵を見つめる。
「ワイらも行くぞ!」
 臨戦態勢に入ったF.i.V.E.メンバーに対し、『Teppen』幹部らも覚醒して飛び掛ってきたのだった。

●頂点を目指して
 円陣を組む『Teppen』のメンバー達は喝采を上げて、自らのリーダー、幹部に声援を贈る。
 それに応え、グレートソードを鋼鉄と化した片手で軽々と扱う浅野が覚者へ躍りかかった。
 その正面にいた逝はその身に岩を纏い、浅野の一撃を受け止める。
「おっさん強くは無いけど……、しぶとい方なのよ。さあ、傾向は教えてあげたぞう」
 逝もまた直刀・悪食を抜き、地面から擦り上げるように敵全員へと刃を連続して浴びせていく。
「さすがに、浅野の力はいのり達を上回っているようですわね」
 それを、後方からいのりが冷静に見つめ、冥王の杖を振るって敵陣を絡みつく霧で包み込んだ。
 静護が攻め入るのは、反りこみの男、伏谷だ。その背には、汚らしい翼が生えている。
(翼は地上と空中のどちらも行き来できて、戦闘範囲が広い)
 戦場を飛ばれ、毒やエアブリットなど撃ってくれば非常に厄介だ。
 静護はそう考えつつ自身の力を高め、牽制ついでの一撃で水の礫を浴びせかけた。
(さぁ、地上と空中、どちらに動くか)
 敵は地面を駆けて槍を操り、踊るように二連で斬撃を食らわせてくる。
 ならばと、静護は構えを取り、カウンターを叩き込んでいく。
(ただ真っ直ぐ行って、これで全部、薙ぎ倒す、だけ)
 黄泉は前面に出て燕潰しを振るっていたが、ラーラと狙いを合わせるべく後方を振り返る。
「まずは、あの幹部二人、倒せば良い、の?」
 そのラーラは英霊の力で自己強化した上で、相手の分析を試みていた。
「男性の幹部さんが回復スキルをセットしていますので、先に狙いましょう」
「解った、詳しい指示は、どんどん出して、ね」
 それならと彼女は男性幹部……伏谷をメインに、地を這うような軌跡を刃で描く。
「地烈ー↓」
 重い刃を軽々と操る黄泉はやや周りを脱力させるような声を上げ、連続して『Teppen』の連中へと叩き込んだ。
 義弘も集中攻撃をと、炎の柱を敵陣へと浴びせかける。ただ、神嶋が彼に狙いを定めたらしく、ナックルをつけた拳で殴りかかってきた。
 その拳を、義弘は冷静に対処し、受け止める。
「これは、チームでの戦いだからな」
「ええ、いのり達の力を合わせれば、決して負けたりいたしません」
 連携こそが第一。力で攻めくる敵に慢心などせず、油断なきように確実に叩いていきたい。
「後で、人数が少ないから負けた等と、見苦しい言い訳はなさらないでくださいませ!」
 叫びかけるいのりが雷雲を呼び起こし、敵へと雷を叩き落とす。
 一般メンバーへと当ててしまうと、面倒な事態になりかねない為、覚者達は目の前の幹部のみを確実に叩くよう心がけ、戦いを進めるのである。

 浅野は覚者としての力を使いこなし、遺憾なく発揮していた。
「おらおらあっ!」
 炎の力で自らを高めた後、浅野はグレートソードで切りかかる。その三連撃はかなりの威力だ。正面から直撃を浴びれば、それだけで地を伏すことにもなりかねない。
 そいつの刃をうまく抑えていたのは、両腕を戦闘機の主翼のように変化させた逝だ。
 幹部二人は時折こちらを見ている。相手を連携させれば、危険だ。
「最近、ヒトが喰えなくて困っていたんだ。悪食の手入れがてら喰われて貰おうじゃないかね」
 逝は敵へと挑発の言葉を繰り返し、呪いを込めた刃を差し向ける。
「喰われたく無いならお避けよ、まあ避けても当てるがな!」
 確実に、彼は敵へと刃を浴びせた。呪いは幹部達の身を蝕み、その動きを束縛していく。
「皆さんを倒れさせはしませんわ……!」
 その間に、傷つく逝ら前衛陣は、静音が回復に当たる。
 神秘の力を使って生成した滴。それを、彼女は逝へと落とし、浅野から受けたダメージを癒す。
 戦いが繰り広げられる中、早くも連続攻撃を受けていた伏谷が息を荒くし始めていた。
「やろぉ……!」
 こいつは元々、浅野のサポートを考えていたはずだ。だが、覚者に集中して狙われた彼は、苦い顔をして自身に樹の滴を落として傷を塞ぐこととなる。
 その隙を静護は逃さず、抜刀の構えから一歩踏み出す。
「……そこか、『閃』っ!」
 それはまさに閃光の如く。静護の手にする絶海が伏谷の体を捉えて切り裂く。血を飛び散らせながら、そいつは倉庫の床に倒れた。
「殺しはしない。部下にしっかり手当てして貰うんだな」
 静護が言い放つと、囲う配下達が慌てて伏谷の体を外側へと運び出す。
 1人が倒れたことで、いのりは周囲のメンバーを巻き込まぬよう気をつけながら、残る2人の幹部だけを狙って光の粒を振らせる。彼女はすぐに、静音と連携して前衛の状態を確認し、回復にも当たっていたようだ。
 次に攻撃が集まるのは、拳を振るってくる酉の獣憑、神嶋。彼女は軽いフットワークを活かし、鮮烈なる一撃を叩き込んでくる。この力で、浅野に敗れるまではレディースを仕切っていたのだろう。
 だが、神嶋のレベルであれば、まだ同等以上に相手ができると覚者達は確信する。
 ラーラが生成した火炎弾を連続して食らわせていく。その狙いは彼女が動体視力でしっかりと観察したこともあり、敵の腹へと叩き込まれる。
 燃え広がる炎によって火傷を負う神嶋へ、ラーラと狙いを同じくする黄泉が迫り、思いっきり斧を振りかぶる。
「会心のー……一撃ー↓」
 これまた気の抜けるような声だが、その一撃は効果覿面。避けようとした神嶋は足をもつれさせ、その刃を正面から受けることとなってしまう。
「きゃああっ!」
 大きく体制を崩す神嶋。だが、まだ戦意が消えたわけではない。元々の部下もこの場で見ていることで彼女も負けられぬという矜持があるのだろう。
 神嶋は地面から岩槍を突き出して黄泉を狙うが、そこで、義弘が攻め入る。
「残念だったな」
 義弘は拳を振り上げ、神嶋へと叩きつける。その瞬間、一点に集中した火力を爆発力に変えて炸裂させた。
 言葉なくよろける神嶋は卒倒する。彼女もまた『Teppen』の女性メンバーに抱えられ、退避させられることとなったのだった。

 残るは、リーダー浅野ただ1人。
「さすがやな、じゃが、ワイは負けん!」
 そいつは激しい動きにも全くリーゼントを動かすことなく、グレートソードを振るい、あるいは、刃を突き出してくる。
 逝はそれを捌き、時に受けながらも、敵に溜めた気を投げつけ、あるいは飛び掛ってくる敵を投げ飛ばす。相手は個々の覚者よりも格上の相手には違いない。それだけに、彼も念入りに攻め立てようと、地を這う斬撃を食らわせていく。
 静護がそのサポートの為に一歩下がり、攻撃支援と回復に当たる。水礫を飛ばし、潤しの滴を振りまくのだが……そのモーションが全く同じにしか見えなくて。
「なに? 区別が付かない? 気のせいだ」
 彼に悪びれる様子は微塵も感じられない。だからこそ、いのりや静音が優しく手当てしてくれるのに、心なしか効果が大きく感じられる覚者達である。
 相手の力量を直に感じたラーラも、魔導書の封印を解き、全力で火炎弾を放出し、浅野へと叩きつけて行く。
「リーダーさんは……醒の炎、白夜、貫殺撃・改……」
 その上で、ラーラは敵の能力分析も続けた。相手のスキルがわかれば、対処も格段にしやすくなる。
 その分析を黄泉は耳にしてはいたが、彼女はただ敵の懐へと深く飛び込み、力の限り叩き切る。それが黄泉の戦闘スタイルだ。
「黄ー→泉ー↑ー……クラーッシューーー→」
 黄泉なりに気合を入れて繰り出す一撃。やはり気の抜ける声ではあるが、受け止める浅野は溜まった物ではない。
「ちっ……」
 浅野も場数は踏んでいるのは間違いない。だからこそ、直撃は避け、覚者達に致命傷を食らわせるべく首、胸、脚といった部位を狙う。
 ただ、F.i.V.E.の覚者達とて、命を張って妖、古妖などと激戦を繰り広げてきている。
 静護が浅野の足元に激流の渦を発生させると、それに気を取られた敵へと義弘が迫った。
「大人になれよ。そんな理屈をかざすんじゃねえよ」
 それは、『ヒノマルに勝ったF.i.V.E.に勝利すれば、自分達が一番』などという子供の理屈だ。義弘は体で分からせるべく、浅野の顔面を殴りつけた。
「……っ」
 だが、浅野は瞬時に、体を後方へと飛ばして致命傷を避ける。
 しかしながら、その浅野が表情を歪ませる様を、そして、そいつの感情を逝は見る。想像以上に手強い相手だと、浅野は焦りを覚えていたようだ。
「喰い殺……散らすさね」
 逝は再び、直刀・悪食の刀身に呪いを纏わせる。
「流石に喰い殺したりはしないわよ、ちょーっと喰べるだけだから!」
 そうして、彼は浅野の体を切りつけた。そこで、覚者も、隔者達も、命が砕ける音が聞こえたような気がして。
 それでも、浅野は立ち上がってくる。しかし、彼は悔しそうに首を振って力任せに殴りつけると、床に亀裂が走る。
「ワイの……負けじゃ」
 これ以上は無駄と悟ったのか、浅野は悔しそうに武器を置き、両手を上げたのだった。

●実力でねじ伏せたが……
 『Teppen』メンバーを倒した覚者達。
 義弘は覚醒状態を解き、幹部達に背を向ける。
「力を使うのは勝手だが、人様に迷惑かけてんじゃねえよ」
 さすがに、リーダーを倒されてはたまらない。円陣を組んでいた『Teppen』メンバー達が道を開けたところを、義弘は歩いて去っていく。
「悪い事をして天辺を取るより、良い事をして天辺を取る方がずっと良いと思いますわよ」
 伏せる浅野へ、いのりが呼びかける。F.i.V.E.に来てみないかと。
 だが、浅野は首を縦に振るどころか……、床に唾すら吐き捨てて。
「クソが、リベンジするから、覚えてやがれ……」
 浅野の体を神嶋が抱え、伏谷が回復を施しながらも、『Teppen』メンバーは裏口方向へと去っていく。
「あれほどの力、ファイブとしは戦力にしたい所だが……。難しいか」
 相手の強さを知ったからこそ、静護は勧誘したかったのだが。そう簡単に分かり合える相手ではなさそうだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

リプレイ、公開します。
MVPは率先して、
リーダーの抑え、そして討伐に当たったあなたへ。

力を求める彼らは
また、F.i.V.E.に再戦を挑んでくることでしょう。
再び彼らを退けられるよう、
こちらも力をつけたいところです。

参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!




 
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