目覚める厄
●ワザワイ
雷獣が妖を封印してた地、愛媛県。
無数の妖を倒し平穏が訪れていたこの地は、古くから地元の人々が祭りをして封じていた古妖がいた。
ツバキとサザンカという名の2体の古妖。
「あぁ、この怒りと怨み……」
「封じてたヒトに……」
注連縄を巻き、黄ばんだ御札が貼られた大岩に亀裂がピシッと入る。
「「今コソ、返す時!」」
牛の様な唸り声が岬に響くと、パァン! と破裂音に近い音を立て大岩は真っ二つに割れてしまった。
「あぁ、久しぶりの外」
牛の頭を持ち、体は鬼、胴からは節足動物の様な足が生えていた。
「これで、怨みが晴らせる」
大きな鼻を鳴らし、ツバキとサザンカは夜になるまで息を潜めた。
「寒い、寒い……でも、絶好の天体観測日和♪」
防寒具を着込み、望遠鏡を片手に浜辺に訪れたのはやや幼さが残る青年だ。
「ヒト……この、怨みぃぃっ!」
ツバキは大きな瞳に青年を映すと、低い唸り声を上げながら浜辺を駆け抜ける。
「牛……? えっ! ちがっ!」
青年がツバキを古妖と認識する前に、喉に牙を立て首を噛み千切った。
「まだ、足りぬ……」
長年溜めてきた怨みはこんな事では簡単には晴らせぬ、とサザンカはツバキに言うともっと人がいる方へと走り出した。
●封じよ
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
久方 真由美(nCL2000003)はアナタ達に軽く一礼をする。
「雷獣が封じてた妖を倒し、平和が訪れたと思っていたのですが……昔、愛媛県の岬にある大岩に封じられてた古妖が封印を破って人を襲います。私の夢と愛媛県の雷獣から聞いた情報を纏めました。皆さんの役にたてれば良いのですが……」
真由美は資料をアナタ達に手渡す。
「先ずは古妖を弱らせ、封印していた大岩に再度封じて下さい。封じ方は代々管理している神主から聞いております。新しい注連縄と御札は預かっておりますが、不安でしたら九重さんがサポートしてくれますので安心してください」
と、真由美は隣に立っている九重 蒼玉(nCL2000157)に視線を向けた。
「封印の成功を祈っております」
アナタ達に向かって真由美は深々と頭を下げた。
雷獣が妖を封印してた地、愛媛県。
無数の妖を倒し平穏が訪れていたこの地は、古くから地元の人々が祭りをして封じていた古妖がいた。
ツバキとサザンカという名の2体の古妖。
「あぁ、この怒りと怨み……」
「封じてたヒトに……」
注連縄を巻き、黄ばんだ御札が貼られた大岩に亀裂がピシッと入る。
「「今コソ、返す時!」」
牛の様な唸り声が岬に響くと、パァン! と破裂音に近い音を立て大岩は真っ二つに割れてしまった。
「あぁ、久しぶりの外」
牛の頭を持ち、体は鬼、胴からは節足動物の様な足が生えていた。
「これで、怨みが晴らせる」
大きな鼻を鳴らし、ツバキとサザンカは夜になるまで息を潜めた。
「寒い、寒い……でも、絶好の天体観測日和♪」
防寒具を着込み、望遠鏡を片手に浜辺に訪れたのはやや幼さが残る青年だ。
「ヒト……この、怨みぃぃっ!」
ツバキは大きな瞳に青年を映すと、低い唸り声を上げながら浜辺を駆け抜ける。
「牛……? えっ! ちがっ!」
青年がツバキを古妖と認識する前に、喉に牙を立て首を噛み千切った。
「まだ、足りぬ……」
長年溜めてきた怨みはこんな事では簡単には晴らせぬ、とサザンカはツバキに言うともっと人がいる方へと走り出した。
●封じよ
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
久方 真由美(nCL2000003)はアナタ達に軽く一礼をする。
「雷獣が封じてた妖を倒し、平和が訪れたと思っていたのですが……昔、愛媛県の岬にある大岩に封じられてた古妖が封印を破って人を襲います。私の夢と愛媛県の雷獣から聞いた情報を纏めました。皆さんの役にたてれば良いのですが……」
真由美は資料をアナタ達に手渡す。
「先ずは古妖を弱らせ、封印していた大岩に再度封じて下さい。封じ方は代々管理している神主から聞いております。新しい注連縄と御札は預かっておりますが、不安でしたら九重さんがサポートしてくれますので安心してください」
と、真由美は隣に立っている九重 蒼玉(nCL2000157)に視線を向けた。
「封印の成功を祈っております」
アナタ達に向かって真由美は深々と頭を下げた。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖の封印
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
今年になって最初の戦闘シナリオです。
皆さんの参加をお待ちしております。(一礼)
●場所
愛媛県の浜辺(夜)
障害物はありませんが、砂が柔らかく少し動きにくいです。
●一般人
浜辺に天体観測しに青年が来ます。
近くに民家が何件かあるので、大きな音がしたら住民が出てくる可能性があります。
●封印道具
新品の注連縄と御札5枚をFIVEが用意しています。
●敵
古妖
ツバキ、サザンカの2体
頭は牛、体は鬼、脚は節足動物の様なのが6本
・紫煙(全特、毒)
・突進(近単)
・薙ぎ払い(近列、毒)
●NPC
指示してくださればその通りに行動します。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年01月31日
2017年01月31日
■メイン参加者 8人■

●目覚め
「古妖の、封印……。妖じゃないんですね。でも、被害が出るなら同じことだから。はい、わかりました」
会議室で説明を聞き終えた大辻・想良(CL2001476) は、資料に目を通しながコクリと頷いた。
「姿形からすると復活した妖は牛鬼というものでしょうか? 愛媛にも伝承があったそうですが中々厄介なものが現れましたわね。周囲の人達に被害が出る前に再封印しませんと!」
と、意気込むのは幼い少女の『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)。
「フン、人に封印された牛鬼が相手か」
『隔者狩りの復讐鬼』飛騨・沙織(CL2001262) は無表情のまま鼻を鳴らしながら呟く。
「倒すのではなく、大岩に封印するのか」
斎 義弘(CL2001487) は資料を睨んだまま呟いた。
どんな依頼であれ、覚者の仕事として完遂するだけだ。
「古妖とは、仲良くしたいと常日頃思うんやが。古妖は彼等独自のルールで生きているから人間の都合なんか聞きゃしないのがいる。悲しいな……」
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403) は神妙な面持ちで資料をクシャリと握り締めた。
雷獣の様に人へ好意を持つ古妖もいれば、今回の古妖みたいに人へ怨みを持つモノは少なからずいる。
悲しいが、最悪の場合は『倒す』という残酷な判断が下りる事もある。
彼らの気持ち、自分達人間の気持ち、生き方等が違うので簡単には変えることは難しい。
「古くから封じられている古妖……過去にそうされるような悪さを何かしたってことなんでしょうか?」
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)は小さく首を傾げた。
「愛媛県では『牛鬼』を型どったモノの頭を家に入れて、悪魔払いをするという祭りや山伏が退治した説話がある程なんですよ」
九重 蒼玉が説明をする。
「愛媛にとっての牛鬼は、悪魔から守ってくれる存在みたいな感じなのですか」
「だから、最初は退治の予定だったけど……『それは可哀想、分かってもらえる時が来るまで封印していただけませんか?』と、神主や市長さんが言ってね」
ラーラの問いに、蒼玉は封印する依頼に関しての経緯を話す。
「良い古妖ばかりではない……それは分かってる。きっとその古妖も良くないものなんだろうね」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) は緋色の瞳を細め、胸元をギュッと握りしめる。
「具体的にはどんな悪さをしてきたのか分からないけど……でもこうして夢見では人を殺めてる……必ず止めなくちゃ!」
と、奏空が仲間に向かって言うと、古妖が現れるより早めに着くように現場へと向かった。
既に暗い浜辺、波の揺らめく音と冷たい風が耳元でヒュウヒュウと音を立てる。
「ヒト……」
ほら貝の様な鳴き声を上げるとツバキとサザンカは、現れた覚者達に向かって砂をまき散らしながら浜辺を駆け抜ける。
「アハハ! 抑える気の無い怨みや怒りが垂れ流しさね、上等だ。……ほおう、牛に蜘蛛に胴は……何だろう。人のようにも見えるさね、でもちょっと違うから鬼みたいな物かな? 見た目からして喰いでが在って大変よろしい。動けなくなるまで喰い潰してやらんと。そいつが厄だと言われるなら尚更、だ。悪食の大好物が向こうから来るんだもの」
緒形 逝(CL2000156)が、ツバキとサザンカの殺気を感じ取り声を上げた。
大半は暗視で暗闇を走るツバキとサザンカの姿を目視していた。
「天」
想良は守護使役の名を呼ぶと『ていさつ』させる為に飛び立たせた。
「蘇って早々申し訳御座いませんが、再封印させていただきますわ!」
いのりは冥王の杖の先をツバキ達に向けながら声を上げた。
「サセヌ……サセヌ……」
荒く鼻息を立てながらサザンカは言う。
「人への復讐心を持ってるようだが……お笑い草だな」
と、2体の古妖に対し沙織は嘲笑うかのように言葉を投げる。
「結界は張ってある。来るであろう一般人以外は大丈夫だ」
義弘は仲間に言うと一番前に出る。
「あ、いい所に奏空」
と、ジャックが奏空の肩に手を置く。
「あ、あの……ジャックさん……?」
ハイバランサーで砂に足を取られない様にした奏空は、ジャックを見て首を傾げた。
「寄越せ、お前の血」
ジャックは、奏空の手を取り跪くとガリッと噛みついて血を口にする。
封解 裏コード『赤兎』が発動する。
瞳を見開き、血を纏うかのように体が朱色に染まる。
「……あ? ……あぎゃーーー!? なんか血ぃ吸われたー!? いえ、でもあのその……美味しかったですか!??」
指から滴る血を口にするジャックを見て、奏空は目を丸くし驚きの声を上げながら混乱した様子で問う。
「いやあ随分と吸血鬼になったもんだ。美味しいか美味しくないかまだ分別はつけられないけれど。悪くねえな、純度百パーセントの少年の血」
ジャックはペロリと、唇を舌で舐めると口元を吊り上げながら答えた。
「で、でもこれでジャックさんのパワーが上がるならイイデスヨー!!」
戦う前から混乱している奏空は、噛まれた部分に絆創膏を貼りながら言う。
「撃破でなく封印が成功条件っていうのは、今の私達じゃ倒せない相手ってことかもしれません。油断しないように気を付けましょう」
ラーラは煌炎の書を手にすると、エネミースキャンでツバキとサザンカの体力と耐久力を分析する。
「ツバキは体力は少な目ですが耐久が高めです。サザンカは体力は多いですが耐久が低めです」
「つまり、サザンカを先に狙えば良いのか?」
義弘はラーラを見る。
「そうですね。防御が高いより低い方がどんなに体力があっても削りやすい、って事です」
ラーラは仲間にツバキとサザンカの情報を伝える。
「九重、一緒に戦おう」
と、ジャックは一緒に来た蒼玉に明るく言う。
「邪魔にならないかな?」
蒼玉は小さく首を傾げた。
「好きなように動けばいい。必ず支えるから、一人じゃないよ」
「ええ、切裂さん。頼りにしています」
蒼玉は差し出された手を取り、ジャックに向かって穏やかな笑みを浮かべた。
パッ、と手を離し、蒼玉は演舞・清風で戦う覚者達の為に強化する。
●牛鬼
牛鬼、一説ではツバキの根が化けたモノという。
因果なのか、故意になのか牛鬼の名は『ツバキ』とツバキ科の花『サザンカ』と呼ばれている。
「人、殺ス……ブォォォォォォォォ!」
サザンカの牛の様な喉から発せられた『ほら貝』を吹いた様な鳴き声が浜辺に響く。
「ツバキにサザンカと言ったか……首から下は喰ってあげるからおいで」
逝のヘルメットにライトは付いているが、万能ではないので感情探査でツバキ達の負の感情を探る。
底なし沼に体を浸かったかの様に、ぬるっとした『人への怨念』が強く、深く、ツバキ達の心から湯水の様に湧き出る。
「人が来る前に倒すさね」
と、いつもの調子で言いながら逝は蔵王・戒で己を強化する。
「封じられてきたことに対する怒りと怨み、それはあるのかもしれませんが……復讐なんかさせませんよ。私達はそのために来たんです」
ラーラは、手にしている魔導書に金の鍵を挿し封印を解除する。
魔導書の中から炎が花開くように飛び出し、ラーラの体を包み込むと普段着から惑える魔女の衣へと変わり、漆黒の髪は白銀に、紺青色の瞳は燃える炎の様な色へとなった。
「普通、チガウ……」
ツバキは一歩後ろに下がると、口から毒々しい紫色の煙を吐き出し浜辺を覆う。
「……清め、ます」
想良は演舞・舞衣で大気にある浄化物質を集め、紫煙により毒を受けた仲間を癒す。
「動きを鈍らせますわ!」
いのりが迷霧でツバキ達を覆う。
「何故ならこれからまた私達の手で封印されるんだからな! 同類として立ちはだかってやるよ……貴様等の復讐がどれほどのものかな!」
と、吠える様に言うと沙織は、捕縛蔓でツバキ達の節足動物の様な足に蔓を絡めた。
(奴等の近くに、誰も現れないように願おう)
義弘は拳に炎を集め、紫煙をものともせずにサザンカに向かって駆け出す。
「1人デ、何ガ出来ヨウカ!」
獲物が向こうから来た、と思いサザンカは笑い声を上げながら、ぎょろりとした大きな瞳で動義弘を見る。
「その恨み、怒り、分かることは出来ない。だが……俺の炎で燃やしてやろう!」
ゴウッと小さな炎が義弘の手の中に現れ、サザンカの額に当てると爆破音と共に炎が触手の様にうねりながら鬼の胴体を燃やす。
「ツバキにサザンカ。牛鬼は人に奉られる、特にこの地方はそうやき。人に崇められる名のある神が、何してこんな所業を犯す?」
ジャックは、氷巖華を手にツバキとサザンカを交互に見る。
「簡単ダ。危険ダカラ、我子ヲ殺サレ、殺シ、殺サレ……グルグル、輪ヲ、回ルバカリ。タダ、人ガ、憎イ」
燃える炎の中でサザンカが悲し気に言う。
「それは、どういう事かしら?」
いのりがサザンカの言葉の意図が分からないのだろう、困惑した表情で見つめる。
「神主から聞いております。お子さんを殺した妖は雷獣が封じていたのを覚者が倒しました。でも、当時はそんな事が分からなくて、アナタ達を嫌っていた人達を敵にして倒しても、子孫がまたやってきてアナタ達の子を殺す」
「それではっ! もう、終わって良いのにどうしてかしら? 分からないですわ……」
蒼玉の話を聞いていのりは仲間を見渡す。
「何、アレを喰ってしまっても構わんのだろう? ……悪食や。喰い散らすぞう!」
その話を聞いても動じない逝は、直刀・悪食を鞘から刀身を抜くと四方投げでサザンカの体勢を崩し鋭い会心の一撃で鬼の様な胴を貫く。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
ラーラは魔導書から生成された炎を掌に集め、サザンカに向かって火焔連弾を放つ。
「ツバキさん、サザンカさん、あなた達は今のところ悪い子なのかもしれません。だから、封印しなきゃいけません」
「うん、だから。今はもーすこし頭を冷やしてよね? 『いつか』の為にね」
ラーラの躊躇いの無い言葉、前衛で奏空は十六夜の踊る様な動作でサザンカの体に攻撃を連続叩き込む。
(人に討たれた恨みか? それとも封印された恨みか? 年単位で牛鬼を鎮める祭りにも限界がきたか?)
ジャックは、ツバキ達の言葉を頭の中でグルグルと考えながら鋭利な氷柱をサザンカに向かって投げた。
「どうやら貴様等の復讐心はその程度の様だな。再び封印されるがいい。疾く堕ちろ」
沙織は香仇花の独特は花の香りでツバキ達を包み込む。
「……雷獣」
想良がツバキ達に向けて激しい雷を落とす。
「何故、何故ニッ!」
低い声で呻きながら覚者達を見上げるサザンカ。
体を、脚を、動かそうと意識するもピクリとも動かせない。
悔しい、無様、そんな言葉が脳内を行き交う。
(ツバキ、死ヌ、ナ……)
と、サザンカは己の気持ちをツバキに飛ばすと意識を手放した。
「あれ? 貴女も天体観測ですか?」
見慣れた浜辺に、見慣れぬ少女に青年は声を掛けた。
「……ちょっと、こっち」
想良は青年の手首を掴み強引に浜辺の外へと連れ出す。
「え? あのー……」
困惑した表情の青年は想良を見つめる。
「今、封印から解かれた古妖を再封印しに来たFiVEの者です。戦闘中の為、今日は家に帰ることをオススメします」
「そう、でしたか……わかりました。今日は諦めますね」
想良の話を聞いて青年は、少し残念そうな表情で軽く一礼すると踵を返し家へと向かった。
「お前達二体を封じた人間はもういないよ。月日が経って子孫ばかりやき。それでも人間を一括りにして恨むのなら……」
ジャックは鼻息を荒くし、節足動物の様な足をダンダン! と地団駄するツバキを見つめた。
「そうさね! 大人しく悪食の餌食になるか、封印されるか選ぶんさね」
逝は直刀・悪食の先をツバキに向けた。
「ソレデモ、我ハ、赦セヌ!」
ツバキが咆哮を上げる。
その咆哮が合図となり、覚者達は覚悟を決めた瞳で浜辺の砂を蹴り上げながら駆け出した。
「ふん。なら、沈めるだけだ」
沙織がツバキに五織の彩で攻撃をする。
「分かる日まで、眠っていてくれ」
義弘はツバキの足元から複数の大炎の柱を起こし、機動力や逃げ場を無くす様に柱配置する。
「悪食、思う存分に……喰らえっ!」
大炎の柱の間を駆け抜け、逝はツバキの懐に素早く潜り込み四方投げで攻撃をする。
傷口から鮮血が砂浜に落ち、恨みも怒りも大地……いや、地球自信が受け止めるかのように血は砂に吸われていく。
「次に会う時まで、おやすみなさい」
奏空が優しい笑みをツバキに向けると、活殺打の衝撃が鬼の様な体に鋭い痛みが走り思わずツバキは呻いた。
「でも、いつか怒りと怨みが晴れた時には、仲良く出来たらなって思います」
ラーラは、慈しみを込めツバキの牛の様な頭を優しく撫でながら力無く倒れる姿を最後まで見つめた。
「フン、他愛のない……牛の畜生如きに私達が負けるはずないだろう」
少し悲しそうな瞳でサザンカとツバキを見つめながら、沙織はいつもの声色で言う。
●再封印
「では、封じますので岬の所まで移動させてください」
と、蒼玉が新品の札を2枚を覚者達に手渡す。
「力仕事は俺に任せな」
義弘がサザンカを持ち上げようとすると、想良といのりが駆け寄り反対側で持ち上げた。
「重たくないか?」
「……古妖の、辛さを考えれば」
想良は義弘の問いに首を軽く振った。
「私も、大辻様と同じ気持ちですわ」
愛媛の地では親しまれてた彼ら、深い、深い、傷と憎しみは理解は出来ないが、せめて彼らがいつの日か和解出来ると信じていのりはサザンカを抱える。
「いつか、和解すると良いよな」
「出来るさね」
ジャックの言葉に逝は明るい声で言う。
「うん、だからね。封印は一つの手段だと思うんだよね」
奏空はツバキとサザンカにお札を貼りながら話す。
「岩は、地元の神主が新しいの用意してくださっていますので、後は注連縄を付ける作業をお願いします」
蒼玉は、神主としての経験がない覚者達に指示を出す。
「え、と……こう?」
「もうちょっと、上にあげて下さらないかしら?」
想良といのりは互いに声を掛け合いながら注連縄を大岩に掛ける。
「あの、封印の強化をした方が良いんじゃないか?」
着々と準備が進んでいる中で、ジャックは仲間を見回しながら言う。
「大丈夫です。愛媛の雷獣も封印に手助けをして下さるそうです」
「なら、前よりは強化されているわけか」
蒼玉の言葉にジャックは大岩を見つめながら頷いた。
「えっと、祭壇に置く物の位置ってこれであっていますか?」
奏空は折り畳み式のテーブルに布を被せ、小さな皿とにらめっこしながら問う。
「それは、こちらに……」
蒼玉は、何故この位置にコレを置くかを覚者達に説明しつつ準備は完了した。
「……それでは、封印の儀式を行います」
蒼玉が懐から用紙を取り出し、ソレを広げると神社のお祓い等で聞いたことのある呪文が静かな岬に響く。
(俺は奴等に恨みはないが、これ以上人が襲われないように、しっかりと心を込めて、な。)
義弘は月明りで照らされている大岩を見上げた。
その頃、沙織は浜辺で波音を聞きながら空を見上げる。
復讐鬼という肩書をもつ彼女は、都会では見れない美しい満点の星空を見つめながら一時の休息を取る。
憎しみは、新たなる憎しみを産み負の連鎖。
それを断ち切るのは、『赦し』だけでは足りないだろう。
だが、その連鎖を断ち切る力は覚者達にはある。
いつのひか、互いの壁が無くなることを祈りながらツバキ達が封印された大岩を覚者達は見つめた後にFIVEへと帰還した。
「古妖の、封印……。妖じゃないんですね。でも、被害が出るなら同じことだから。はい、わかりました」
会議室で説明を聞き終えた大辻・想良(CL2001476) は、資料に目を通しながコクリと頷いた。
「姿形からすると復活した妖は牛鬼というものでしょうか? 愛媛にも伝承があったそうですが中々厄介なものが現れましたわね。周囲の人達に被害が出る前に再封印しませんと!」
と、意気込むのは幼い少女の『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)。
「フン、人に封印された牛鬼が相手か」
『隔者狩りの復讐鬼』飛騨・沙織(CL2001262) は無表情のまま鼻を鳴らしながら呟く。
「倒すのではなく、大岩に封印するのか」
斎 義弘(CL2001487) は資料を睨んだまま呟いた。
どんな依頼であれ、覚者の仕事として完遂するだけだ。
「古妖とは、仲良くしたいと常日頃思うんやが。古妖は彼等独自のルールで生きているから人間の都合なんか聞きゃしないのがいる。悲しいな……」
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403) は神妙な面持ちで資料をクシャリと握り締めた。
雷獣の様に人へ好意を持つ古妖もいれば、今回の古妖みたいに人へ怨みを持つモノは少なからずいる。
悲しいが、最悪の場合は『倒す』という残酷な判断が下りる事もある。
彼らの気持ち、自分達人間の気持ち、生き方等が違うので簡単には変えることは難しい。
「古くから封じられている古妖……過去にそうされるような悪さを何かしたってことなんでしょうか?」
『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)は小さく首を傾げた。
「愛媛県では『牛鬼』を型どったモノの頭を家に入れて、悪魔払いをするという祭りや山伏が退治した説話がある程なんですよ」
九重 蒼玉が説明をする。
「愛媛にとっての牛鬼は、悪魔から守ってくれる存在みたいな感じなのですか」
「だから、最初は退治の予定だったけど……『それは可哀想、分かってもらえる時が来るまで封印していただけませんか?』と、神主や市長さんが言ってね」
ラーラの問いに、蒼玉は封印する依頼に関しての経緯を話す。
「良い古妖ばかりではない……それは分かってる。きっとその古妖も良くないものなんだろうね」
『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955) は緋色の瞳を細め、胸元をギュッと握りしめる。
「具体的にはどんな悪さをしてきたのか分からないけど……でもこうして夢見では人を殺めてる……必ず止めなくちゃ!」
と、奏空が仲間に向かって言うと、古妖が現れるより早めに着くように現場へと向かった。
既に暗い浜辺、波の揺らめく音と冷たい風が耳元でヒュウヒュウと音を立てる。
「ヒト……」
ほら貝の様な鳴き声を上げるとツバキとサザンカは、現れた覚者達に向かって砂をまき散らしながら浜辺を駆け抜ける。
「アハハ! 抑える気の無い怨みや怒りが垂れ流しさね、上等だ。……ほおう、牛に蜘蛛に胴は……何だろう。人のようにも見えるさね、でもちょっと違うから鬼みたいな物かな? 見た目からして喰いでが在って大変よろしい。動けなくなるまで喰い潰してやらんと。そいつが厄だと言われるなら尚更、だ。悪食の大好物が向こうから来るんだもの」
緒形 逝(CL2000156)が、ツバキとサザンカの殺気を感じ取り声を上げた。
大半は暗視で暗闇を走るツバキとサザンカの姿を目視していた。
「天」
想良は守護使役の名を呼ぶと『ていさつ』させる為に飛び立たせた。
「蘇って早々申し訳御座いませんが、再封印させていただきますわ!」
いのりは冥王の杖の先をツバキ達に向けながら声を上げた。
「サセヌ……サセヌ……」
荒く鼻息を立てながらサザンカは言う。
「人への復讐心を持ってるようだが……お笑い草だな」
と、2体の古妖に対し沙織は嘲笑うかのように言葉を投げる。
「結界は張ってある。来るであろう一般人以外は大丈夫だ」
義弘は仲間に言うと一番前に出る。
「あ、いい所に奏空」
と、ジャックが奏空の肩に手を置く。
「あ、あの……ジャックさん……?」
ハイバランサーで砂に足を取られない様にした奏空は、ジャックを見て首を傾げた。
「寄越せ、お前の血」
ジャックは、奏空の手を取り跪くとガリッと噛みついて血を口にする。
封解 裏コード『赤兎』が発動する。
瞳を見開き、血を纏うかのように体が朱色に染まる。
「……あ? ……あぎゃーーー!? なんか血ぃ吸われたー!? いえ、でもあのその……美味しかったですか!??」
指から滴る血を口にするジャックを見て、奏空は目を丸くし驚きの声を上げながら混乱した様子で問う。
「いやあ随分と吸血鬼になったもんだ。美味しいか美味しくないかまだ分別はつけられないけれど。悪くねえな、純度百パーセントの少年の血」
ジャックはペロリと、唇を舌で舐めると口元を吊り上げながら答えた。
「で、でもこれでジャックさんのパワーが上がるならイイデスヨー!!」
戦う前から混乱している奏空は、噛まれた部分に絆創膏を貼りながら言う。
「撃破でなく封印が成功条件っていうのは、今の私達じゃ倒せない相手ってことかもしれません。油断しないように気を付けましょう」
ラーラは煌炎の書を手にすると、エネミースキャンでツバキとサザンカの体力と耐久力を分析する。
「ツバキは体力は少な目ですが耐久が高めです。サザンカは体力は多いですが耐久が低めです」
「つまり、サザンカを先に狙えば良いのか?」
義弘はラーラを見る。
「そうですね。防御が高いより低い方がどんなに体力があっても削りやすい、って事です」
ラーラは仲間にツバキとサザンカの情報を伝える。
「九重、一緒に戦おう」
と、ジャックは一緒に来た蒼玉に明るく言う。
「邪魔にならないかな?」
蒼玉は小さく首を傾げた。
「好きなように動けばいい。必ず支えるから、一人じゃないよ」
「ええ、切裂さん。頼りにしています」
蒼玉は差し出された手を取り、ジャックに向かって穏やかな笑みを浮かべた。
パッ、と手を離し、蒼玉は演舞・清風で戦う覚者達の為に強化する。
●牛鬼
牛鬼、一説ではツバキの根が化けたモノという。
因果なのか、故意になのか牛鬼の名は『ツバキ』とツバキ科の花『サザンカ』と呼ばれている。
「人、殺ス……ブォォォォォォォォ!」
サザンカの牛の様な喉から発せられた『ほら貝』を吹いた様な鳴き声が浜辺に響く。
「ツバキにサザンカと言ったか……首から下は喰ってあげるからおいで」
逝のヘルメットにライトは付いているが、万能ではないので感情探査でツバキ達の負の感情を探る。
底なし沼に体を浸かったかの様に、ぬるっとした『人への怨念』が強く、深く、ツバキ達の心から湯水の様に湧き出る。
「人が来る前に倒すさね」
と、いつもの調子で言いながら逝は蔵王・戒で己を強化する。
「封じられてきたことに対する怒りと怨み、それはあるのかもしれませんが……復讐なんかさせませんよ。私達はそのために来たんです」
ラーラは、手にしている魔導書に金の鍵を挿し封印を解除する。
魔導書の中から炎が花開くように飛び出し、ラーラの体を包み込むと普段着から惑える魔女の衣へと変わり、漆黒の髪は白銀に、紺青色の瞳は燃える炎の様な色へとなった。
「普通、チガウ……」
ツバキは一歩後ろに下がると、口から毒々しい紫色の煙を吐き出し浜辺を覆う。
「……清め、ます」
想良は演舞・舞衣で大気にある浄化物質を集め、紫煙により毒を受けた仲間を癒す。
「動きを鈍らせますわ!」
いのりが迷霧でツバキ達を覆う。
「何故ならこれからまた私達の手で封印されるんだからな! 同類として立ちはだかってやるよ……貴様等の復讐がどれほどのものかな!」
と、吠える様に言うと沙織は、捕縛蔓でツバキ達の節足動物の様な足に蔓を絡めた。
(奴等の近くに、誰も現れないように願おう)
義弘は拳に炎を集め、紫煙をものともせずにサザンカに向かって駆け出す。
「1人デ、何ガ出来ヨウカ!」
獲物が向こうから来た、と思いサザンカは笑い声を上げながら、ぎょろりとした大きな瞳で動義弘を見る。
「その恨み、怒り、分かることは出来ない。だが……俺の炎で燃やしてやろう!」
ゴウッと小さな炎が義弘の手の中に現れ、サザンカの額に当てると爆破音と共に炎が触手の様にうねりながら鬼の胴体を燃やす。
「ツバキにサザンカ。牛鬼は人に奉られる、特にこの地方はそうやき。人に崇められる名のある神が、何してこんな所業を犯す?」
ジャックは、氷巖華を手にツバキとサザンカを交互に見る。
「簡単ダ。危険ダカラ、我子ヲ殺サレ、殺シ、殺サレ……グルグル、輪ヲ、回ルバカリ。タダ、人ガ、憎イ」
燃える炎の中でサザンカが悲し気に言う。
「それは、どういう事かしら?」
いのりがサザンカの言葉の意図が分からないのだろう、困惑した表情で見つめる。
「神主から聞いております。お子さんを殺した妖は雷獣が封じていたのを覚者が倒しました。でも、当時はそんな事が分からなくて、アナタ達を嫌っていた人達を敵にして倒しても、子孫がまたやってきてアナタ達の子を殺す」
「それではっ! もう、終わって良いのにどうしてかしら? 分からないですわ……」
蒼玉の話を聞いていのりは仲間を見渡す。
「何、アレを喰ってしまっても構わんのだろう? ……悪食や。喰い散らすぞう!」
その話を聞いても動じない逝は、直刀・悪食を鞘から刀身を抜くと四方投げでサザンカの体勢を崩し鋭い会心の一撃で鬼の様な胴を貫く。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
ラーラは魔導書から生成された炎を掌に集め、サザンカに向かって火焔連弾を放つ。
「ツバキさん、サザンカさん、あなた達は今のところ悪い子なのかもしれません。だから、封印しなきゃいけません」
「うん、だから。今はもーすこし頭を冷やしてよね? 『いつか』の為にね」
ラーラの躊躇いの無い言葉、前衛で奏空は十六夜の踊る様な動作でサザンカの体に攻撃を連続叩き込む。
(人に討たれた恨みか? それとも封印された恨みか? 年単位で牛鬼を鎮める祭りにも限界がきたか?)
ジャックは、ツバキ達の言葉を頭の中でグルグルと考えながら鋭利な氷柱をサザンカに向かって投げた。
「どうやら貴様等の復讐心はその程度の様だな。再び封印されるがいい。疾く堕ちろ」
沙織は香仇花の独特は花の香りでツバキ達を包み込む。
「……雷獣」
想良がツバキ達に向けて激しい雷を落とす。
「何故、何故ニッ!」
低い声で呻きながら覚者達を見上げるサザンカ。
体を、脚を、動かそうと意識するもピクリとも動かせない。
悔しい、無様、そんな言葉が脳内を行き交う。
(ツバキ、死ヌ、ナ……)
と、サザンカは己の気持ちをツバキに飛ばすと意識を手放した。
「あれ? 貴女も天体観測ですか?」
見慣れた浜辺に、見慣れぬ少女に青年は声を掛けた。
「……ちょっと、こっち」
想良は青年の手首を掴み強引に浜辺の外へと連れ出す。
「え? あのー……」
困惑した表情の青年は想良を見つめる。
「今、封印から解かれた古妖を再封印しに来たFiVEの者です。戦闘中の為、今日は家に帰ることをオススメします」
「そう、でしたか……わかりました。今日は諦めますね」
想良の話を聞いて青年は、少し残念そうな表情で軽く一礼すると踵を返し家へと向かった。
「お前達二体を封じた人間はもういないよ。月日が経って子孫ばかりやき。それでも人間を一括りにして恨むのなら……」
ジャックは鼻息を荒くし、節足動物の様な足をダンダン! と地団駄するツバキを見つめた。
「そうさね! 大人しく悪食の餌食になるか、封印されるか選ぶんさね」
逝は直刀・悪食の先をツバキに向けた。
「ソレデモ、我ハ、赦セヌ!」
ツバキが咆哮を上げる。
その咆哮が合図となり、覚者達は覚悟を決めた瞳で浜辺の砂を蹴り上げながら駆け出した。
「ふん。なら、沈めるだけだ」
沙織がツバキに五織の彩で攻撃をする。
「分かる日まで、眠っていてくれ」
義弘はツバキの足元から複数の大炎の柱を起こし、機動力や逃げ場を無くす様に柱配置する。
「悪食、思う存分に……喰らえっ!」
大炎の柱の間を駆け抜け、逝はツバキの懐に素早く潜り込み四方投げで攻撃をする。
傷口から鮮血が砂浜に落ち、恨みも怒りも大地……いや、地球自信が受け止めるかのように血は砂に吸われていく。
「次に会う時まで、おやすみなさい」
奏空が優しい笑みをツバキに向けると、活殺打の衝撃が鬼の様な体に鋭い痛みが走り思わずツバキは呻いた。
「でも、いつか怒りと怨みが晴れた時には、仲良く出来たらなって思います」
ラーラは、慈しみを込めツバキの牛の様な頭を優しく撫でながら力無く倒れる姿を最後まで見つめた。
「フン、他愛のない……牛の畜生如きに私達が負けるはずないだろう」
少し悲しそうな瞳でサザンカとツバキを見つめながら、沙織はいつもの声色で言う。
●再封印
「では、封じますので岬の所まで移動させてください」
と、蒼玉が新品の札を2枚を覚者達に手渡す。
「力仕事は俺に任せな」
義弘がサザンカを持ち上げようとすると、想良といのりが駆け寄り反対側で持ち上げた。
「重たくないか?」
「……古妖の、辛さを考えれば」
想良は義弘の問いに首を軽く振った。
「私も、大辻様と同じ気持ちですわ」
愛媛の地では親しまれてた彼ら、深い、深い、傷と憎しみは理解は出来ないが、せめて彼らがいつの日か和解出来ると信じていのりはサザンカを抱える。
「いつか、和解すると良いよな」
「出来るさね」
ジャックの言葉に逝は明るい声で言う。
「うん、だからね。封印は一つの手段だと思うんだよね」
奏空はツバキとサザンカにお札を貼りながら話す。
「岩は、地元の神主が新しいの用意してくださっていますので、後は注連縄を付ける作業をお願いします」
蒼玉は、神主としての経験がない覚者達に指示を出す。
「え、と……こう?」
「もうちょっと、上にあげて下さらないかしら?」
想良といのりは互いに声を掛け合いながら注連縄を大岩に掛ける。
「あの、封印の強化をした方が良いんじゃないか?」
着々と準備が進んでいる中で、ジャックは仲間を見回しながら言う。
「大丈夫です。愛媛の雷獣も封印に手助けをして下さるそうです」
「なら、前よりは強化されているわけか」
蒼玉の言葉にジャックは大岩を見つめながら頷いた。
「えっと、祭壇に置く物の位置ってこれであっていますか?」
奏空は折り畳み式のテーブルに布を被せ、小さな皿とにらめっこしながら問う。
「それは、こちらに……」
蒼玉は、何故この位置にコレを置くかを覚者達に説明しつつ準備は完了した。
「……それでは、封印の儀式を行います」
蒼玉が懐から用紙を取り出し、ソレを広げると神社のお祓い等で聞いたことのある呪文が静かな岬に響く。
(俺は奴等に恨みはないが、これ以上人が襲われないように、しっかりと心を込めて、な。)
義弘は月明りで照らされている大岩を見上げた。
その頃、沙織は浜辺で波音を聞きながら空を見上げる。
復讐鬼という肩書をもつ彼女は、都会では見れない美しい満点の星空を見つめながら一時の休息を取る。
憎しみは、新たなる憎しみを産み負の連鎖。
それを断ち切るのは、『赦し』だけでは足りないだろう。
だが、その連鎖を断ち切る力は覚者達にはある。
いつのひか、互いの壁が無くなることを祈りながらツバキ達が封印された大岩を覚者達は見つめた後にFIVEへと帰還した。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
雷獣のシナリオでちらっと名前が出ていたのをお気づきでしたでしょうか?
覚えている方が居たら嬉しいです。
皆さんの古妖に対するお言葉が、本当に素敵で、私なんかが書いてよかったのだろうか? と思いながら書かせていただきました。
参加して下さった皆様、本当にありがとうございまいした。
覚えている方が居たら嬉しいです。
皆さんの古妖に対するお言葉が、本当に素敵で、私なんかが書いてよかったのだろうか? と思いながら書かせていただきました。
参加して下さった皆様、本当にありがとうございまいした。
