クリスマスSS 2016
骨付きチキンが焼ける、美味しそうな匂い。もうお腹がペコペコ。
「もうすぐ焼きあがるからね」
宇賀神・慈雨は天原・晃の耳に優しくささやいてから、窓辺へ行って雪景色を眺めた。
窓の外の空は晴れて、澄みわたっている。天気予報では今夜は雪になると言っていたが、いまのところ青い空のどこにも雲は浮かんでいない。
冷たい窓ガラスに指をあてて、ふるり、と体を震わせた。
後ろから晃の足音が近づいてきた。腰に腕が回され、慈雨は自分の体が晃にもたれかかるのを感じた。ふたり重なったまま、ベッドにすとんと腰から落ちる。
「な、なに?」
晃は慈雨の頭のてっペんに顎をのせた。
「寒そうだったから……」
体に触れる晃の手、後ろから抱き寄せる腕。頭に感じる吐息に胸が高鳴る。
左手のリビングルームには輝くクリスマスツリーがあった。きらきらと輝く電飾と金の玉の横に置かれた姿見に、頬を赤くした自分の姿を見つけて、ますます胸の鼓動が激しくなる。
鏡の中の晃と目があった。
「メリークリスマス、慈雨……」
焼き上がりを知らせるレンジの音に掻き消されてしまったのか。続く言葉に音はなく、鏡の中で晃の口だけが動き続けていた。
大丈夫。それでも気持ちは伝わったから。ちゃんと受け取ったから。
「……私もよ。メリークリスマス、晃」
「もうすぐ焼きあがるからね」
宇賀神・慈雨は天原・晃の耳に優しくささやいてから、窓辺へ行って雪景色を眺めた。
窓の外の空は晴れて、澄みわたっている。天気予報では今夜は雪になると言っていたが、いまのところ青い空のどこにも雲は浮かんでいない。
冷たい窓ガラスに指をあてて、ふるり、と体を震わせた。
後ろから晃の足音が近づいてきた。腰に腕が回され、慈雨は自分の体が晃にもたれかかるのを感じた。ふたり重なったまま、ベッドにすとんと腰から落ちる。
「な、なに?」
晃は慈雨の頭のてっペんに顎をのせた。
「寒そうだったから……」
体に触れる晃の手、後ろから抱き寄せる腕。頭に感じる吐息に胸が高鳴る。
左手のリビングルームには輝くクリスマスツリーがあった。きらきらと輝く電飾と金の玉の横に置かれた姿見に、頬を赤くした自分の姿を見つけて、ますます胸の鼓動が激しくなる。
鏡の中の晃と目があった。
「メリークリスマス、慈雨……」
焼き上がりを知らせるレンジの音に掻き消されてしまったのか。続く言葉に音はなく、鏡の中で晃の口だけが動き続けていた。
大丈夫。それでも気持ちは伝わったから。ちゃんと受け取ったから。
「……私もよ。メリークリスマス、晃」
