バレンタイン&ホワイトデーSS 2016

手間暇

バレンタインといえば、意中の彼へ思いを伝える日と言われ、贈り物に気持ちを乗せて託す日だ。
とはいえ、それが全てという事でもない。
例えば感謝を伝えたり、大切な人に親愛を伝えたりもする。
そして、ただそのイベントを楽しむこともそうだろう。
その日、ミュエル、ユスティーナ、たまき、紡の4人はちょっとした楽しみと手を合わせてチョコレート作りに挑むことにした。

最年長のミュエルがボールの中でかき混ぜているのは、チョコクッキーの生地だ。
混ぜるだけといっても意外と手間のかかる作業であり、ムラが無くなるまでじっくりと混ぜ続ける必要がある。
それが終われば生地を均一に伸ばして型抜きをするのだが、この肯定は何度も繰り返さねばならない。
その作業に取り掛かる為にも茶色一色の生地を仕上げなければならないが出来上がるまで、まだ時間がかかりそうだ。


西洋人形のような可愛らしさと装いに身を包んだユスティーナは、手作りチョコを担当する。
溶かして固めるだけというが、意外とこれが大変な作業だ。
溶かす温度も固める温度も決まった手順を踏まねば、口当たりが悪くなってしまう。
慣れぬお菓子作りに少女の鼻先に、チョコレートの飛沫が飾られるほど懸命である。

その隣でメモを片手に難しい表情を浮かべるたまきが作るのはトリュフだ。
トリュフと一口に言っても色んな種類がある。
スタンダードな丸いのもあれば、少々無骨ながら整った形の四角型、チョコチップで彩ったデコレーション。
料理と異なり、細かく寸分の狂いが許されないお菓子作りなだけあり、石橋を叩くように慎重に作業を進めていた。

各々健闘する中、マイペースに作業を進めている紬はこっそりとつまみ食いをしている。
苺をトリュフのチョコレートで包んだコーティングトリュフを作っていたのだが、まだ固まる前のガナッシュを見て、思うことがあった。
チョコレートフォンデュみたい、そう思うと自然とチョコレートの中をくぐらせた苺をそのままいただいてしまう。
その味は想像していたより濃厚なものだろう。

かくして出来上がったチョコレートは大皿いっぱいに満たしていた。
異口同音に出来たとはしゃぐ少女達は、弾ける様な笑みでフォトフレームに収まっていく。
一入の達成感もあってその後の御茶会はとても美味な一時だっただろう。


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