バレンタイン&ホワイトデーSS 2016

 湯煎で溶かしたチョコレートが、細い腕でかき混ぜられる。数多はボウルの端についたそれを指ですくい、口に含む。少しほろ苦い味が口の中に広がる。
「んー、こんな感じかな」
「あんまり味見しすぎると、太るんじゃないか?」
「ちょっと、にーさまぁ!」
 からかうような笑みを浮かべる千歳に、数多は困ったように口許をへの字に曲げる。
「ほら、手を動かしましょう。ね?」
「むう。はーい……」
 てきぱきと作業を続ける冬佳を見て、数多は渋々と言った様子で作業に戻る。
「冬佳の言う通りだな」
「貴方も。あんまり妹さんをからかわない」
 うんうんと頷く千歳を見て、冬佳はヘラで彼を差す。それを見て、千歳は軽く肩を竦めた。
「分かったよ。それで、あとどれくらいで出来上がるんだ?」
「ちょっとにーさま。がっつきすぎよ?」
「別に、そこまでじゃない。そろそろ暇だからさ」
 すでに彼らの前には、ふわふわとしたチョコレートスポンジがあった。それが冬佳の手によって手際よく数多の溶かしたチョコレートによってコーティングされている。
「……っと。これで完成。後はお願いできる?」
「よし来た」
 冬佳の手によってケーキにムラなく塗られたチョコレート。千歳は手元にある、色とりどりの果実が盛られた皿とそれとを見比べる。
「さて。にーさまのセンスを拝見しようかしら」
 数多がからかうように笑う。ケーキの完成は近い。


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