クリスマスSS 2015
cocktail night
(……すげー歩きづらいけどうまい飯のために我慢我慢……)
雷鳥の顔が強張っている事を理解しているのは、兄の誘輔くらいなものであろう。
何せ容姿端麗である。深紅のドレスが一層その美しさを際立させていた。
そして内心では、彼女は参っていた。
柾に招待されて訪れたこの場所は。聊かフォーマルが過ぎる様であった。
「お手をどうぞ、お姫様―――ってな」
面白そうに笑みを浮かべた誘輔は、そんな妹に恭しく手を差し出す。
じろり、と一瞬彼を捉えた雷鳥の視線には、一抹の不満が孕んでは居たが、すぐに鳴りを顰め誘輔の手を取る。
カクテルパーティの夜である。
各々の手には、煌びやかな液体が揺れていた。
「そんなに畏まる必要はない。
身内なんだ、気にせず楽にすると良い」
風祭兄妹に笑い掛ける柾。
ワイングラスを揺らす彼の言葉に、雷鳥も少し肩の力を抜く。
「しかし、折角のカクテルパーティで”ワイン”は、芸がないねぇ」
「ほう。
なら、俺にピッタリなカクテルを選んでみてくれよ」
柾の言葉に誘輔はにやりと口を歪めた。
「ここは”お姫様”に選んでもらった方が洒落てるんじゃ?」
「……私はパス」
ひらひらと手を振って断った雷鳥。
「仕方ねえな。
―――ま、赤ワイン片手にした紳氏様ってんなら、≪枢機卿≫(カーディナル)ってとこかな?」
「随分気が良いているじゃないか。
……君、カーディナルを。勿論、ボジョレーでね」
バーテンダーに注文した柾は「俺からも選んでやろう」と風祭兄妹を一瞥する。
「妹君はやはり紅い酒がいい。
苺も美味い季節だ。レオナルドを一つ」
「美味かったら、何でもいーけど」
「兄君は、そうだな」
柾は一瞬思案して、
「シャルトリューズを浸した角砂糖なんかがお似合いかな―――」
雷鳥の顔が強張っている事を理解しているのは、兄の誘輔くらいなものであろう。
何せ容姿端麗である。深紅のドレスが一層その美しさを際立させていた。
そして内心では、彼女は参っていた。
柾に招待されて訪れたこの場所は。聊かフォーマルが過ぎる様であった。
「お手をどうぞ、お姫様―――ってな」
面白そうに笑みを浮かべた誘輔は、そんな妹に恭しく手を差し出す。
じろり、と一瞬彼を捉えた雷鳥の視線には、一抹の不満が孕んでは居たが、すぐに鳴りを顰め誘輔の手を取る。
カクテルパーティの夜である。
各々の手には、煌びやかな液体が揺れていた。
「そんなに畏まる必要はない。
身内なんだ、気にせず楽にすると良い」
風祭兄妹に笑い掛ける柾。
ワイングラスを揺らす彼の言葉に、雷鳥も少し肩の力を抜く。
「しかし、折角のカクテルパーティで”ワイン”は、芸がないねぇ」
「ほう。
なら、俺にピッタリなカクテルを選んでみてくれよ」
柾の言葉に誘輔はにやりと口を歪めた。
「ここは”お姫様”に選んでもらった方が洒落てるんじゃ?」
「……私はパス」
ひらひらと手を振って断った雷鳥。
「仕方ねえな。
―――ま、赤ワイン片手にした紳氏様ってんなら、≪枢機卿≫(カーディナル)ってとこかな?」
「随分気が良いているじゃないか。
……君、カーディナルを。勿論、ボジョレーでね」
バーテンダーに注文した柾は「俺からも選んでやろう」と風祭兄妹を一瞥する。
「妹君はやはり紅い酒がいい。
苺も美味い季節だ。レオナルドを一つ」
「美味かったら、何でもいーけど」
「兄君は、そうだな」
柾は一瞬思案して、
「シャルトリューズを浸した角砂糖なんかがお似合いかな―――」
