クリスマスSS 2015

二人と一匹で…

”二人と一匹”で迎えたクリスマスには、世間の喧騒が対岸の火事の様に果敢無く移ろう。
 それもその筈か。
 どれだけ強がって見た所で、此処には”一人と一匹”しかいない。
 やっぱりそれは、紛れもない事実であった。
 ―――シャンパンの傍らに置かれた、二対のグラス。
 一人で食べきるには、少し大きすぎるケーキ。
 抗ったところで、己の無力さを痛感する。
 そんな事実を捻じ曲げるだけの異能は、当然だが行成には無かった。
 行成には―――、無かったのだ。
「分かってはいる」
 ぽつり呟いた行成の横顔は、けれど、穏やかだ。

 受け入れたのか。
 諦観したのか。
 尚、抗い続ける心算なのか―――。

 もちまるがそんな行成の心情など何処吹く風で、ケーキを眺めている。
(分かっては、いるんだ)
 行成は一歩離れて俯瞰する。
 その客観性を保証する。
 そしてその冷静さ故に苦しまねばならぬ時があることを、彼は知る。
 卓上に立てかけられた写真立て。
 その中身と、あの日、追い縋った血染めの後ろ姿が、不意に重なる。
 今の私なら、彼女を救えたのだろうか……。
 無意味。
 実に無意味な、仮定だ。
 ……だが今夜だけ。

 君の眼前でなら―――。
 そんな無意味な仮定も、笑って話せるような気がして。

●発注キャラクター●
志賀 行成(CL2000352)

担当ST:いかるが
イラスト:新月 竜

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