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霧に隠れた黒

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　千載一遇の確率（チャンス）を我が物とした誉高き黒兎――深緋・恋呪郎(CL2000237) は、破綻者から時を戻した神父から話を聞いていた。
「逢魔ヶ時紫雨……な。あのチンケな悪党の名はそういうのか」
「ええ、七星剣の幹部の一人です。まさか彼が自ら動くとは……。残念ながら姿形や人相、年齢は」
　神父は申し訳無さそうに、首を横に振った。
「隠していたものな。正体が分らないというのは、武器であろうよ」
「ふーんー、じゃあもしかしたら。もう、ボクたちの近くにいるのかもしれないねー」
　八百万円（CL2000681）は、長くを生きたような姿の守護使役を膝に乗せながら、軽くふんわりとした面持ちで不穏を口にした。
　確かに逢魔ヶ時紫雨という人物は最中に姿を現した。
　だが、顔を覆うガスマスクに、フード付きのローブを着込み、体型から髪色、あたかも目の色さえも伺えない滑稽な姿であったのだ。声色でさえ、ガスマスクの妨害で聞き取れず終いである。
　中・恭介（nCL2000002）も報告を受けた後、すぐに素性を調べてみたのだが。『禍時の百鬼』と呼ばれる紫雨の部下が基本的に動いている事、『紫雨がないたら、血雨が降る』という都市伝説のような逸話があるとの情報しか得られず、終いにはあまり紫雨を探ると『なかれるぞ』と……冗談には程遠い冗談をかまされたという。
「血雨。孤児院の子供達もよく口にしておりました。なんでも、恐ろしい妖(バケモノ)の仕業だとか、荒ぶる能力者の仕業だとか色々噂が囁かれているようで。人間、動物、最悪は村ひとつが綺麗に消えて、血溜りと化した事もあったと聞きます」
　これについて紫雨の口から直接聞けるのであれば、ＡＡＡも喉から手が出る程欲しい情報であるだろう。しかし、正体不明が彼の正体となっている今、血雨への成す術も対抗手段も無い。
　実しやかな噂は事実でもあり、ひとつの『厄災』でもあった。
「ところで、子供達はどうなるのー？」
「あぁ、FiVEで預かる事にしてもらったよ。全員救ってくれて、ありがとうございました。私も含めてね」
　ひとつの闇は拭い去り、またひとつの闇は色濃く姿を見せている。
　恭介は胸に燻る一物の不安を感じながら、報告書を閉じた。