こなゆきひらり、雪景色
こなゆきひらり、雪景色


●ひらりひらりと
 今日は随分と寒い日だ。
 ストールをきゅっと引き寄せため息をつけば、外気に冷やされた水蒸気が液体に変わり白く染まる。
 随分と冬に近づいたものだ、と久方 真由美(nCL2000003)は空を見上げた。
 灰色の空からふわりと降りてくる六花。
「わぁ、初雪ですね~」
 人好きのするのんびりとした声で真由美はつぶやくと、手をのばし粉雪をつかもうとする。
 降り始めの細かい雪は、体温で一瞬にして溶け消えた。

――くすくす、くすくす。
 気のせいだろうか?小さな笑い声が足元で響いたような気がした。
 振り返るがそこには誰もおらず、舞う粉雪が本格的な冬の到来を伝えているようだった。
 真由美はもう一度ストールを引き寄せ、鞄の中から弟にもたされた携帯を取り出し、不器用な手つきで文字を打ち込んでいく。

『2017/12/04
 サブジェクト ReReReRe今日の晩御飯なに?
 
雪、降ってきまsた 真由美 』

「送信~」
 満足そうに真由美は微笑むと、家路を急ぐ。
 積もるほどではないかもしれない。だけれども、初雪というものは心が踊るものだ。
「そうだ、みんなにもおしえないと~。えっと、みんなに送るのはこれを~こうして~」

『発ツ、雪、触って鱒、よ』

 その日、夢見である久方 真由美からの緊急メールでの怪文書に首をひねる覚者たちが多数いたという。



■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
■成功条件
1.粉雪の舞う五麟市を楽しんでください。
2.なし
3.なし
 はじめまして。†猫天使姫†です。
 初シナリオはイベントシナリオです。お手柔らかにお願いします。

 五麟市に初雪が降りました。
 真由美さんからの怪文書で気づいても構いませんし、その前に気づいていても構いません。

 時間はお昼~夕方、夜。
 ぜひ初雪を楽しんでください。
 
 なお、こっそりと身長30センチ程度の小さなゆきんこが五麟市を徘徊しています。
 この初雪も彼らのいたずらかもしれません。
 特になにも悪さはしませんが、雪を喜ぶ人を見ると自分たちも嬉しくなるようです。
 みなさまでしたら少し探せばすぐに見つかると思います。
 言葉は話せます。甘いものがすきなようです。


●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(4モルげっと♪)
相談日数
8日
参加費
50LP
参加人数
18/30
公開日
2017年12月13日

■メイン参加者 18人■

『天衣無縫』
神楽坂 椿花(CL2000059)
『在る様は水の如し』
香月 凜音(CL2000495)
『月々紅花』
環 大和(CL2000477)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『想い重ねて』
蘇我島 燐花(CL2000695)
『想い重ねて』
蘇我島 恭司(CL2001015)
『聖夜のパティシエール』
菊坂 結鹿(CL2000432)
『花屋の装甲擲弾兵』
田場 義高(CL2001151)
『天を舞う雷電の鳳』
麻弓 紡(CL2000623)
『モイ!モイ♪モイ!』
成瀬 歩(CL2001650)
『エリニュスの翼』
如月・彩吹(CL2001525)
『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)

●ふわりふわりと。
 昼過ぎから舞い降りた白が、京都は五麟の街を染め上げる。例年より少々早いその降雪が齎す物語を紐解こう。
――願わくば、この一日がしあわせでありますように。
 二人のゆきんこがくすくすと笑いながら街を歩く。誰かの喜ぶ顔を見るために。


「今日は寒いね」
 足を止め、スマートフォンを操作しながら工藤・奏空は大切な少女にメッセージを送る。すぐにつく『既読』の文字。ああ、彼女は自分とおなじように嬉しそうに丁寧なメッセージを返してくれるのだろうと思うと、遠くにいるはずなのにいつだって側にいる気持ちになれていることに、思わず顔が綻ぶ。
 そんなさなか、緊急連絡を示す一斉メールの着信音に、瞬時に奏空は緊迫した顔になるが、中身を読んだ瞬間に破顔し、空をみあげた。
 曇天から六花が舞い落ちる。もう一度スマートフォンの画面を操作しはじめた。

「今何処にいるの?」
 賀茂 たまきは、奏空と真由美から受け取ったメッセージで雪に気づき、空を見上げ冬の空を優しく染める白に目を奪われていた。ブルルッと揺れる手元にスマートフォンを見れば、とくんと心が跳ねる。
震える指で、自分の居場所を伝えた。
 
「案外近くだね」
 想いが近かった所為もあるのだろうか。二人の距離はそれほど遠くもなく。
 
――早く、奏空さんに、会いたい。
 足取りは早く、目的地である公園に向かう。

――早く、会いたいな。雪やまないよね?

 公園の入口で出会った二人は白い息を吐きながら微笑み合う。身体が、頬が熱い。それは走ってきたからだけではない。
「あの、記念写真、撮りませんか?」
 愛おしい少女の小さな願いに、少年は頷いた。


 皐月 奈南は両親と買い出しの最中だ。ペットへのおみやげの向日葵の種のお徳用袋を胸にだいて、おもちは喜ぶかなと顔をほころばせていると、ポケットに仕舞ってある携帯端末が着信を伝えてきた。
「うわぁ……!」
 お土産を母親に預け、外に飛び出せばふわふわの初雪が世界に舞い降りている。
「おかあさん、ナナン、ちょっと雪で遊んでくるのだ!」
 店内の母親に伝えると一気に走り出す。頬をさす風はつめたいけれど、奈南には気にならない。
 「ふおぉ!」
 まるで雪の中を空に向かって昇っていくような不思議な光景に心が弾む。自然と笑顔になっている自分に気づいているのだろうか? 奈南はくるくるとその場でダンスを踊るように回り始めた。
 だって、こうすると、もっともっと空に昇っていけるような気がするから。
 瞬間、首にふわりとマフラーが巻かれる。はたと気づき背を向けば母親が風邪をひいたらクリスマスツリーをみにいけないわよと苦笑していた。


 商店街をウインドウショッピングしていた環 大和は届いたメールに苦笑する。緊急連絡かと思えば何の事はない、ちょっとだけおかしな、けれど優しいメール。
「雪、降ってきたのね」
 雪を捕まえようとはしゃぐ守護使役(あいぼう)に微笑み話しかける。
「明日香は寒くても元気ね。雪は捕まえてもすぐに溶けてしまうわよ? もう少し沢山降れば積もるかもしれないけれど」
 大和はふるりと身体を震わせ雪を見上げる。
「どおりで寒いはずだわ」
「これ、離せ、うちらは食い物じゃない」
「これ、離せ、食い物はうちらじゃない」
 30センチほどの雪の精が困ったようにあげる声が聞こえた。ゆきんこだ。明日香に匂いを嗅がれ困惑をしている。
「あら、お友達を見つけたの? とても可愛らしい子ね。でもいじめちゃだめよ、明日香」
 大和の言葉に明日香はふるふると首を振り、身の潔白を示す。
「ひどい目にあった」
「あったのはひどい目」
「ごめんなさいね、悪気はないの」

 その様子をカフェから眺めていた森宮聖奈は、開いていた本を閉じ料金を支払うと外に出てくる。
「あの……ゆきんこさん、でしょうか?」
 かけられた声に大和は頷いた。
「ええ、小さくて可愛らしいわよね」
「はい、わたし、かわいいものが好きで」
「うちらはかっこいいゆきんこぞ」
「かっこいいのはゆきんこだぞ」
 えへんと胸をはるゆきんこに二人は顔を見合わせくすりと笑う。
「あの、写真をとってもいいでしょうか?」
「しゃしんとはなんだ」
「なんだとはしゃしんだ」
「えっと、今の一瞬を絵に納めるものといいましょうか」
 聖奈がスマートフォンを出して周りをカメラで撮る姿をゆきんこたちは覗き込んできゃっきゃと喜び、ならば写せと強請った。
「あの、あやかしの中にも人を喜ばすものがいるのでしょうか?」
「うちらは古妖ぞ。ひとのこは愛おしい。短いいのちをなき、わらい、くるしみ、よろこび、見ていて飽きぬ。愛おしい。」
「古妖がうちらぞ。だからこそよろこびの顔のひとのこが好きだ。おまえたちひとのこが好きだ」
 残念ながらゆきんこは写真に写ることはなかったが、それでも聖奈と大和の心には思い出として残っただろう。



「凜音ちゃん! 雪なんだぞ! 今年最初の雪!」
 今年最初の雪にはしゃぎ手を広げふわふわと降ってくる雪をつかもうと神楽坂 椿花は空を見上げキラキラした目でまるで子犬のようにかけ回る。
「ん?ああ。初雪になるか」
 心配症の香月 凜音はこの後の惨劇を予想し、走り回る椿花の側に駆け寄る。案の定バランスを崩し倒れそうになる椿花を受け止めると「はしゃぐのはいいが、転んだら痛いぞ」と、窘めるいつもの光景。
 ふと気づく受け止めたその重さに「ちょっと重たくなったか?」と呟けば「重たくなったんじゃないぞ! 大きくなったんだぞ!」と耳聡く講義の声。ぷっくりと膨らんだ頬が愛らしい。
「成長してる証だって、お母さんも言ってたもん」
「そうか。それはよかったな」
 この重さは成長の証。守るべき重さ。ああ、そうだ。こいつももう中学生になったんだなと凜音は思う。目の前の少女はいつまでも子供ではないのだ。
 自分より随分と背の低い少女に目線を合わせ解けかけたマフラーをまきなおす。まだまだお子様な彼女が愛おしく思え、頭を撫でた。今暫く、もう暫くでいいからこのままの関係でいたいと思う気持ちと、保護者を脱却できる日が来ることを願う複雑な想いが凜音の胸に到来した。
「うん、もっともっと大きくなるんだぞ!」
 大きな手が自分を撫でてくれる。とても幸せで満足で。いつか、この手に見合うような……隣を歩いてても丁度良くなるくらいに大きくなりたいと椿花は思う。
「凜音ちゃん! 手を繋いでほしいんだぞ!」
 大きな手と小さな手。重なる二つの成長の物語の終着点は未だ遠い未来。


「どれくらい積もるでしょうか?」
 降り始めた雪は未だ止む気配はない。通学路が心配だわ、と教師らしいことを思う向日葵 御菓子は納屋に向かいスコップを探し始めた。
「凍結したらみんなが困るし、万が一転んで怪我などしたら大変です」
 防寒対策はばっちり! 厚めのコートにもこもこマフラー、すべらないように雪用ブーツもしっかり装備した御菓子は通学路に向かう。うっすらとは積もってはいるが、雪かきをするほどでもない。
 心配のし過ぎかな?と思いながらも積もった雪で小さな雪だるまを作ると校門に飾り、家路に戻ろうとした。
――くすくす、くすくす。
 笑い声に振り向くと小さな雪だるまの両隣にもうひとつ小さな雪だるまがふたつ飾られている。御菓子は微笑むと「いたずらっ子がいるようね」と周辺を探し出すのだった。


 娘のはしゃぐ声に田場 義高は立ち上がり、妻を誘うと店先に出る。雪だるまを娘に強請られるがうっすらと積もる粉雪ではさらさらとしすぎて娘のおもうような大きさを作るのは難しいだろう。
「しょうがねぇなあ」
 義高は雪に少し水を混ぜて固めて芯にして、これでやってみな? と娘を促す。不器用な手つきでころころと転がせば少しずつおおきくなっていく雪玉。雪がくっつきにくければ店先のじょうろで水を足してやる。
 妻は奥にもどりボウルを用意し雪を詰め固め胴体を作った。思うよりは小さい雪だるまだが娘は喜び、店にある南天で目を、枝の腕を作ると満足そうに笑う。
「よくできてるじゃねぇか」
 愛娘の力作に惜しみなく褒め言葉をおくった。
 ふと姿が見えなくなっていた妻が温かいミルクティを持って戻ってくる。さあ、雪だるまと一緒にティーパーティだ。


 菊坂 結鹿はふと思い立つ。外に出て、綺麗な雪をあつめて氷とともにバットに敷き詰める。鍋にかき氷シロップに真っ白なお砂糖を足して煮詰めて、ラップを敷いておいた初雪氷のバットに少しずつ流し込み、竹串を添えて固まるのを待つ。あっというまに色とりどりのべっこう飴の完成だ。
 思いの外たくさんできたと思い子どもたちに配りにいこうと、準備を整えて玄関を出れば、小さな人影が二つ。
 結鹿はにっこりと微笑むとその人影に手招きをする。藁帽子姿の二人は招かれるままに近づき
「赤いのがほしいのがうちらだ」
「うちらは青いのがほしい」
 そんなリクエストに結鹿は笑顔でべっこう飴を差し出す。
「美味しいですか?」
「甘いのが美味しいな」
「美味しいのが甘いのだ」
「まだありますよ、ご遠慮無く」
 ショコラティエールの作るべっこう飴は随分と気に入られたようでその後も2回ほどおかわりを請求されたのだった。


 妙なメールを受け取った蘇我島 恭司は窓の向こうを眺める。ああ、なるほどと思い、雪が降ってきたんだねと呟いた。柳 燐花は頭頂の耳をぴるぴると震わせると弾かれたように窓際に向かい窓を開ける。
「わぁ……本当です。……初雪ですね。本格的な冬になりましたね」
 キンと冷えた空気が温かい部屋の温度を入れ替える。くちゅん、と可愛らしいくしゃみをすれば
「燐ちゃん、いくら室内に居ても流石にそれは寒いよ?」
と恭司もまた窓際に向かい、初雪を喜ぶ少女を微笑ましく思い上着をはおらせた。
「すみません。ありがとうございます……」
 かけられた上着が恭司のものだと気づけば、温かみが増すような気がした。なによりその心遣いが燐花の心を暖めているのを彼は気づいているのだろうか?
「流石に積もらないだろうけど、雪が降るだけで冬という感じが強まるねぇ」
 隣に寄り添う少女の肩はまだ震えているようにも見える。意を決して、これはやましい気持ちがあるわけではなく燐ちゃんが風邪をひくと困るからだと自分に言い訳をしながら、少女の肩を抱いた。
 少女はドキリとして青年を見上げる。
「風邪を引くと厄介だからね」
 大丈夫だ。声は上ずってはない。やましくはない、絶対。特に嫌がられないことにホッとしている自分がいることに恭司は苦笑する。自分はこの少女にたいしてこんなに臆病だったのだろうか。
「風邪なんて、ひきませんよ」
 子供扱いが憎らしい。けれどその肩におかれた手を逃したくないから、自分の手を重ねた少女は思う。
(一緒に居てもらって、看病してもらうのも、いいかもしれません……内緒ですけど)
(……風邪になった燐ちゃんを看病しに行くのも悪くないかな? いやいや、燐ちゃんには元気なままで居て欲しいよね)
重なる手に反して、二人の想いは裏腹だった。
 
 
――歩がプリンを買いに行ったきり戻ってこない……。五麟に来たばかりだから迷子になったんじゃ……。

 FiVEでは名うての覚者とはいえ、オフモードでは普通のお兄ちゃんである成瀬 翔は未だ戻らぬ妹にやきもきとする。
 窓の外は少し前から降り出した雪景色。――アイツも子供だからな、遊びたくなるよなあ。しょうがない。予備のマフラーを収納スツールから出すと自分も防寒装備を整えると家を飛び出す。その足取りはまるでウキウキとした少年そのものである。


「なんかいるーっ!」
 公園に入ったところで粉雪に気づき空をみあげていたユスティーナ・オブ・グレイブルは大きな声にビクリと肩をすくませると声がした方に目を向ける。
 そこには小さな可愛い銀狐と二人のゆきんこの姿。
「いますわねっ!」
 思わず同じように大きな声をだしてしまうのは仕方ないというもの。
「なんだなんだ! うちらにようがあるのか」
「ようがあるのはうちらか! なんだ!」
「おねえちゃんも見えるの?」
 周りの人はこのゆきんこを気にしてはいなかった。だけれども、目の前に現れたお姫様のような少女も同じように見えているという。それがとても素敵で、嬉しいことだと思い目をキラキラさせた成瀬 歩は尋ねる。
「はい。見えますわよ。ユキボーシの可愛い二人とギン色キツネさん! わたくしはユスティーナといいますの」
「お名前はユスティー……えっと、ゆすちゃんだね。あゆみはねあゆみって言うの、よろしくね」
 小さなレディたちはお互いに名乗り合う。
「モイ♪」
「もい?」「もい?」「もい?」
 ユスティーナが挨拶をすると三者三様の声。
「挨拶ですのよ。レイセツは大事ですのよ」
「モイ♪」「モイ♪」「モイ♪」
 唱和する声は楽しそうで、小さな新しい友人たちにユスティーナは破顔した。


 右手にはできたての肉まん。左手には温かい飲み物。買い物帰りの麻弓 紡はご満悦だ。降り始めた粉雪の中、蒼い小鳥は見慣れた後ろ頭を見つけ、雪のように音もなく並走する。
「お、いいにおい、って紡か。ちょうどいいところに。銀狐見なかったか?」
 相棒である小鳥に気づいた翔は迷子の子猫ちゃんならぬ迷子の小狐ちゃんの情報を尋ねる。
「なるほどね、迷子か。ボクも一緒に探すよ」


 少し時間は遡る。
 「『発ツ、雪』……?あぁ、初雪」
 真由美からのメールに気付き 真顔で首を傾げた如月・彩吹は、暗号を解読し空を見上げる。
「寒いとは思っていたけれど 降るのは予想外だったわ」
 買い物の荷物をぎゅっと抱きしめ、公園を通り過ぎようとすれば「モイ♪」「モイ♪」「モイ♪」と聞き覚えのある声と知らない声。
「こんにちは。歩と、ユス姫? こんな所で何しているの……ってあれ、他にもいる」
 顔見知りの二人と小さな二人に気づいた彩吹は足早に近づく。
「おおきなのがきたぞ、モイ♪」
「きたのはおおきなのだ、モイ♪」
 ゆきんこの挨拶に、笑みを浮かべた彩吹は「このこたちがゆきんこなのね、モイ♪」と声をかければ、ユスティーナと歩もまた嬉しそうに「モイ♪」と挨拶する。
「君たちが来たから雪が降ってきたのかな?」
「雪と共にくるのがゆきんこだ」
「ゆきんこなのが雪なのだ」
 くすりと笑い彩吹は撫でようと手をだして、慌てて引っ込めた。自分が火行であることに気づいたからだ。
「ひとのこ、その程度ではうちらは消えぬ」
「消えぬのがうちらだ、撫でれ」
 ほっとした彩吹が嬉しそうにゆきんこを撫でれば「モイ、モイ♪」と答える。ゆきんこは随分とこの挨拶がきにいったようだ。
「そうだ、コンペートゥをあげますのよ、手をだしてくださいまし」
 ユスティーナは紙袋から金平糖をだすと、ちいさな手に配りはじめる。そんなお姉さんぶった光景を彩吹は微笑ましく見つめる。

「いたーーーっ!」「いたね」
 翔と紡がそんな面々をやっとのことで発見し、合流を果たす。
「なるほどねー、あー、お使いを頼んだ姫と雪ん子と遊んでいたら寄り道になっちゃったのかぁ」
「心配させやがって、ほんとに」
「わわ、おにいちゃん、ごめんなさい」
「そっか、友達になったのか、良かったな、でもな遅くなるならちゃんと……」
 歩の寒さで真っ赤になった頬を守るようにぐるぐるとマフラーを巻くと翔は小言を言い始める。そんな相棒の兄貴風の吹かせ方にクスクスと笑いながら歩に紡が声をかけた。
「あゆちゃんって言うんだね。ボクは紡だよ、よろしくね?」
「モイ♪」
「……で、姫は何を隠れようとしているのかな?」
「お、お使いのおかし、あげてしまいましたの」
「いいよ、友達増えて良かったねー」
「ハイ!」
 友人たちが集まれば、そこはもうパーティ会場だ。紡は買ってきた肉まんを提供し、しばしの歓談が続いた。寒いけれど、友達といればそんなのも吹き飛んでしまうのだ。


――……雪、綺麗、ね。
 昼間に流れてきたメールに誘われ、夜半のビルの屋上で白い翼人は呟く。夜半になるまで降り続けた雪はうっすらと街を白い絨毯で覆った。晴れた夜空から月が白い世界と大辻・想良を幻想的に浮かび上がらせる。
「……ちょっと寒いけどね」
 想良の側で浮かんでいた守護使役の天を引き寄せ暖をとるように抱き寄せ撫でる。
「小さなゆきんこ、見たひとがいるんだって。それでね、ゆきんこは甘いものが好きなんだって」
 こんな夜更けだけど、見つかるかなぁと独り言をこぼせば、くいくいと天が想良の袖をひく。
「あ……」
 その先には二人のゆきんこ。おいでと呼べば、想良の膝の上にふてぶてしく座る。
「美味しそうなおかしをもっているひとのこだ」
「ひとのこだから美味しいおかしをもっている」
 図々しいほどの二人にバックから赤と緑の包装紙につつまれたおかしを渡せば、一目散にばりばりとやぶりあけておかしを食べ始める。
「随分なれている、のね」
「ここのひとのこは親切だ」
「親切なのがひとのこだ。だから好きだ。ひとのこは」
 想良はそんな生意気なゆきんこを抱きしめる。
「友達は、いいものだ」
「いいものだから友達だ」
 そうねと想良は新しい友人に微笑んだ。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『モイ!モイ♪モイ!』
取得者:成瀬 歩(CL2001650)
『モイ!モイ♪モイ!』
取得者:ユスティーナ・オブ・グレイブル(CL2001197)
『六花の盟友』
取得者:大辻・想良(CL2001476)
特殊成果
『雪物語』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:賀茂 たまき(CL2000994)
『雪物語』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)



■あとがき■

初依頼にご参加くださってありがとうございました。
皆様の思い出の一頁になれば幸いです。
いっぱい甘いものをもらったゆきんこはすこし横幅が増えて
山に帰りました。




 
ここはミラーサイトです