<大妖一夜>妖無双! 百鬼夜行をぶった切れ!
<大妖一夜>妖無双! 百鬼夜行をぶった切れ!



「畜生、手が足りない!」
「治療薬はいないか! こっちにけが人がいる!」
「いいわね、1匹たりとも通さないわよ!」
 日本最大の覚者組織だったAAA京都支部は、今や修羅の巷と化していた。襲来する妖を前に、必死の防衛を行う覚者達。しかし、いかんせん数が違い過ぎる。どこにこれほどの妖が潜んでいたのか、と思わされる。
 しかし、彼らは逃げるわけにいかない。妖の魔の手からこの国を、そしてそこに住む人を守るために彼らは戦っているのだ。それに、AAAにだって非戦闘員は少なくない。そうした者達の逃げる時間が稼げるまで、逃げるわけにはいかないのだ。
 勢力を弱めたとはいえ、AAAは日本最大を謳った組織だ。質も決して低くはない。
 それでも、多勢に無勢。
 時間が経つうちに、1人また1人と覚者は数を減らしていく。
 こんな所に増援に来ようという愚か者はおるまい。憤怒者組織にしてみれば、AAAは敵だ。隔者にはそもそも助ける理由がない。覚者と言えども、百鬼夜行ともいえるこの数を見れば逃げ出すのは当然だ。
 それゆえに、AAAの全滅はもはや確定したかのように見えた。


「今日は集まってくれてありがとう! 大変なことが起きてるの!」
 集まった覚者達に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。明るい笑顔がトレードマークの彼女だが、今日は不安と焦りがにじんでいる。そして、全員そろったことを確認すると、彼女は発生した事件の説明を始めた。
「うん、AAAが妖の群れに襲われてるんだって。助けるために、みんなの力を貸して!」
 依頼と言うのは文字通り。AAA京都支部が妖の群れに襲われているのだという。天災ともいえる妖の襲撃。それに対抗するには例え覚者とはいえ力不足だ。実際、他に動ける組織はない。動けるのはFIVEの覚者だけだ。
「みんなに向かってほしいのはある門の前。沢山の妖が押し寄せているのを止めてほしいの」
 麦によると、入り口の1つから大量の妖が押し寄せているらしい。現場にいる覚者は限界を迎えようとしている。あと、数分でも防ぐことが出来れば、多くの人員を逃すことが出来る。
 そこで、現場に向かって代わりに防いでほしいとのことだ。
 幸い、門や壁のおかげで真っ向から受け持つ数は抑えることが出来る。あとは、覚者達の根気次第だ。
「もちろん、多くの敵を倒せば倒すだけ状況は良くなるけど……無理はしないでね?」
 麦の言うとおりだ。ここで雑兵を減らせば、その分戦場全体は安定するだろう。だが、覚者達の身の安全もある。その辺は上手く判断してほしい。
 説明を終えると、麦は無理やり笑顔を作る。そして、覚者達を元気良く送り出した。
「無事に帰って来てね? みんなのこと信じているから!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:KSK
■成功条件
1.30ターン耐え抜く
2.なし
3.なし
皆さん、こんばんは。
死線の上で踊る、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は妖と戦っていただきます。

●戦場
 AAA本部前の門の1つです。
 時刻は夜ですが、足場や明かりに関して問題はありません。
 門の前には4人まで並んで戦闘を行うことが出来ます。
 現場には戦闘不能になったAAAの覚者が数名倒れています。

●妖
 ランク1の妖が大量にいます。種別は生物系、物体系、心霊系、自然系と一通りそろっています。特質はそれぞれのものに準じます。
 近接射程の物理単体攻撃を行います。
 常に前列・中列・後列に4体ずつおり、ターン終了時に補充されます。

●重要な備考
<大妖一夜>タグがついたシナリオは依頼成功数が、同タグ決戦シナリオに影響します。
 具体的には成功数に応じて救出したAAAが援護を行い、重傷率の下降と情報収集の成功率が上昇します。


状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2017年05月12日

■メイン参加者 6人■

『想い重ねて』
蘇我島 恭司(CL2001015)
『デアデビル』
天城 聖(CL2001170)
『突撃爆走ガール』
葛城 舞子(CL2001275)


 四半世紀以上にわたる、人と妖の戦い。
 これを長いとみるか短いとみるかは、人によって意見が変わるだろう。
 しかし、この戦いの歴史の中でこれ程多くの妖が動いたことはあったのだろうか?
「本当に、これだけ大量の妖…一体どこに居たんだろうねぇ」
「百鬼夜行とはよく言ったものです。どこからこれほどの数が」
 実際に目の当たりにして、『想い重ねて』蘇我島・恭司(CL2001015)も自分の背筋に冷たいものが走るのを感じた。
 見渡す限りの妖の群れ。
 AAAはたしかに精強な組織だ。1対1でならランク1の妖程度に後れを取ることもないだろう。しかし、一定を超えると数は質へと変わる。
 まさしく数の暴力と言うやつだ。
 『想い重ねて』柳・燐花(CL2000695)もこれから始まる激戦を予感して、小さな背を震わせる。
「夢で見たことは数あれど、実際に百鬼夜行を拝むことができるなんて……! こんな状況でなければ大歓迎だったんスけどねぇ」
 明朗快活がモットーの『突撃爆走ガール』葛城・舞子(CL2001275)もさすがに不安を隠せない。
 しかし、すぐさま切り替え、目の前の脅威をポジティブに受け入れる。これが出来るのも彼女の強みだ。
「でもそれとやり合えるなんて、これはこれで貴重ッスね!」
「えぇ、それに助けなくちゃ。この手の届く範囲でAAAの人達を、いつもお世話になっているあの組織を」
 三島・椿(CL2000061)は毅然と決意を固くする。
 正直な話、怖くて仕方ないというのが正直なところだ。それは目の前の妖に限った話でもないが。
 それでも、目の前で奪われようとしている命があるのだ。
「俺の力は殺す為の力じゃない。護るためにある。命を護るためなら、剣だって槍だって抜いてやる」
 そういう『黒い太陽』切裂・ジャック(CL2001403)は実際に剣を握っているわけではない。むしろ、持ってきたのは覚悟1つという、大量の妖を前にしては心もとないものだけだ。
 
 一方で、全員が全員、正義感だけで戦いに来ているわけでもない。『異世界からの轟雷』天城・聖(CL2001170)のように、戦いを求めてきたものもいる。
「いやぁ、待ってたんだよねーこういうの。この有象無象の雑魚達を飽きるまで蹴散らすのをさ」
 聖にとっては、命を賭けた戦いであっても遊びと変わらない。むしろより魅力的だとすら思っている。
 今か今かと突撃の合図を待っている。
 そんな中、ジャックが叫んだ。
「こんな絶望的な歪夜はさっさと終わらせる。さあ、かかってこい! ここから先は、一歩も通さねえぞ!!」
 ジャックの怒りの咆哮が合図となり、覚者と妖の戦いが始まる。
 合図とばかり、恭司の呼んだ雷が戦場に閃いた。
 後方から攻撃することの多い恭司だが、今回は最前線。実際、傍らにいる少女を守るにはこの場所が一番向いている。
「この数の妖を中に入れるわけにはいかないからね。耐えるだけだと辛いから、これが終わったら何かご褒美を用意しないとだね」
 そっと微笑みを浮かべる恭司。戦いは始まったばかりだ。まだまだ、妖はわんさかいる。
 動きの鈍っている火の妖を、水龍が食らいつくす。椿の術式だ。
(数は多いけど、普通の妖ね)
 自分に言い聞かせるように心の中で呟く。1匹1匹は決して強くないし、対策も取れる相手だ。十分相手取ることが出来る。
「動けるようになった方は、早く後方へ避難してください!」
「AAAを助ける為にも、ふんこつさいしん頑張るッス!! 漢字は分からないッスけど!」
「FIVEだ、応戦する! 体力に余裕があるAAAは動けないAAAに力を貸してやってくれ! その他は逃げろ!」
1人でも多くを救うためにやって来たのだ。こうして敵が減れば、助かる可能性は上がる。そう信じて、椿は次の矢をつがえた。
 現状、AAA職員の手当は舞子が行っている。その方が、回復に専念できる。とは言うものの、彼女の手にもボウガンは握られており、暇を見ては妖に対して撃ち出される。
 ランク1の妖と言えども油断は出来ないし、減らせるうちに減らせるのならそれが一番いい。
 FIVEの名を出して、AAAを鼓舞しているのはジャックだ。人一倍不安定な心を持つ彼は、同時に優しさを抱えた少年だ。この場にいる者たちを逃がすためなら、文字通り命を賭けることだろう。
 そして、AAA職員の避難が始まったのを尻目に、聖は何かから解き放たれたかのように思い切り錫杖を振るう。
「AAAの皆さんが負傷してる? んなこたぁどうでもいいんだよ! 私は据え膳を喰らい尽くしたくてウズウズしてるの!」
 見る間に蹴散らされていく妖達。
 それでも、聖は止まらない。
 せっかく食べ放題のサービスタイムなのだ。思う存分食い尽くしてやるとばかり、次の敵へと向かっていく。
 まだまだ続々と、妖はやって来る。
 その様に驚く一方で、燐花は冷静だった。
 意志を持たない敵など、恐れるものではないからだ。人間の心の方が、よほどとらえどころがなく、恐ろしい。
 自分の戦い方が持久戦に向いていないのは分かっているが、頼りになる人が横にいる。
 だから、強い心で燐花は言葉を口にした。
「ここは通しません。堪え忍んでみせましょう」


 実際の所、時間にすると大したものではない。
 ほんのわずかな時間ここを守り切れば、AAAの職員が逃げ切る時間を稼ぐことが出来る。とても簡単な話だ。言葉にするだけならば。
 しかし、実行するのは決して簡単なことではない。
 戦う覚者達は途中から、時間感覚が曖昧になっているのを感じていた。とにかく、目の前にいる妖の数が多すぎる。
「こんなに沢山……すごい数の妖……」
 椿は心を落ち着けて、回復にシフトして仲間を生き残らせるように動く。大事なことは妖を殲滅することではなく、この場を守り切ることだ。
「気張れ、俺! ここが崩壊したらAAAが壊滅すると思え。妖には妖の理由があるだろうがそんなの知ったことじゃない!」
 辺り一面から、妖はやって来ている。どこから湧いているのかは、ここからだとさっぱり分からない。ひょっとしたら、大妖が引き連れているのかとも思うが推測にとどまる。
 ならば、全て倒してやればよいことだ。
「あまり人間を、舐めるなよ!」
 ジャックの声に応じて、現れた炎が妖達を包み込んでいく。
 これは古妖から誰かを守るために使ってほしいとFIVEに与えられた技だ。託された願いと力を、今使わずにいつ使う。
 自身が力尽きても構わないとばかりに、ジャックは炎を解き放つ。
 わずかに息が残った妖も、聖が撃ち込んだ空気の弾丸で動かなくなった。だが、まだ遊び足りないとばかりに聖は敵の真っただ中へと突っ込んでいく。
「さて、死んだら骨くらいは拾ってね?」
 軽口を叩きながら錫杖を天に掲げると、星のように降り注ぐ星の粒が現れた妖達を貫いていく。
 もちろん、全てを葬り去れるわけではない。生き残った妖達は聖に牙を容赦なく突き立てて来る。
 それでも聖の顔に恐れはない。「無理だからやる」「危機こそ楽しむ」が信条だ。命を燃やし、血に塗れながら錫杖を振るう。
 そこへ神秘の滴が与えられ、傷が癒えていく。
「攻撃は皆さんにお任せしてるんで、私はガンガン回復頑張るッスよ!」
 実の所、回復に専念している舞子にだって決して余裕があったわけではない。それでも愚直なまでの真っ直ぐさで仲間の治療を行う。
 そして、その正直さが舞子を助けた。
 動けるようになった恭司やAAAが彼女の支援を行ってくれたからだ。彼らにも余裕があるわけではないが、これで多少はマシになる。
「よーし。ほら、そっちから自動車みたいのがくるからやっちゃって欲しいッス。自然系は全体攻撃の巻き添えで消えるからスルーでいいッス!」
 ここまできたら、もう一息。
 あとは気力の問題だ。せめて気持ちで負けないよう、テンション高く鼓舞していく。
「この門を越えたくば、私を倒してからにしてほしいッス!!」
 上がった鬨の声に、最後の気力を振り絞って気勢を上げる覚者達。
 そんな中で、燐花は何匹目かの妖の心臓を貫きながら、ふと思う。
(人と妖のいざこざは、今後も避けられないものなのでしょうか。共存というのは子供の見る甘い夢なのでしょうか)
 妖がどこから来て、どこへ行くのか。それはいまだに解明されていない謎だ。
 しかし、それが分かったところでそう簡単に解決できるとも思えない。同じ人類の間であっても、隔者だ憤怒者だなどと言っている状況なのだ。
 そんなことを考えてしまって気が散ったのがいけなかったのか。燐花は敵の接近を許してしまう。そして、気付かずにいる無防備な背中に妖の刃が迫る。
 そして、盛大に血飛沫が上がる。
「ひょっとして、人と妖が共存出来たら、とか考えてたのかい?」
「え?」
 流れた血は恭司のものだった。
 いつの間にか、燐花と妖の間に恭司が割り込んでいたのだ。
 深々と刺さった妖の刃を引き抜いて、恭司は雷を周囲にまき散らす。
「お互い歩み寄れるなら、共存の可能性も見えるんだけど、それは超えるべきハードルが少し大きすぎるかな……?」
 冗談めかした口調と共に恭司は術符を展開する。
 背中の傷は痛む。だけど、大切な人が傷つく姿を見る痛みに比べれば、マシというものだ。
「そろそろ終わりにしようか。僕も、燐ちゃんが攻撃に晒されてる姿を見るのは心臓に悪いからねぇ」
 恭司の言葉に覚者達は目を合わせて頷いた。
「ただ黙って潰しまくってもアレだし、こんな時だけど聞いてみよっか。カレーの具材にじゃがいもはアリかナシか。私はアリ派だね、断然」
「倍返しだ。絶対に殲滅してやる」
 聖は返り血のかかった顔で軽口を叩き、ジャックは力強く宣言した。
 炎が舞い、光が躍る。
 水龍が飛び、雷が炸裂する。
 そして、放たれた矢と共に、刃が閃いた。
 全ては百鬼夜行を打ち破るため。大妖のもたらした地獄の夜に、一筋の光明をもたらすために。


 覚者達の後ろで門が固く閉ざされる。
 ひとまず、この近辺に来ていた妖達は撤退した。これ以上、無理に防ぐ必要もない。
「蘇我島さんが矢面に立って攻撃に晒される姿は、心臓に悪いですね」
 ぽつりとつぶやく燐花。
 これが聞こえていたら、きっといつもの苦笑いが返って来るだろう。だから、聞こえないように小声で言った。
 戦果としては悪くない。十分に敵を倒すことは出来たし、AAAの損耗も抑えることが出来た。ジャックは100体以上倒したから、お祝いをしなくてはと張り切っている。
 しかし、椿の表情は暗い。
(これから日本はまた変わってしまうのかしら?)
 一晩でAAAは事実上の壊滅状態だ。この国の覚者の扱いに変化は余儀なくされるだろう。それはある意味で、先ほど戦った妖達以上に恐ろしいことだ。
 でも、と椿は表情を引き締める。この大きな運命のうねりは止められない。それでも、自分たちにやらなくてはならないことがあるのだ。
 だから、覚者達は立ち止まらない。
 この大妖一夜を乗り越え、新たな朝日が差すまでは。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『デアデビル』
取得者:天城 聖(CL2001170)
特殊成果
なし




 
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