●キャドラデイズ 「面倒な事になったわ……」 その日、 集められたリベリスタらに向けて、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は深刻と言うか本当に辟易したという表情でそう言った。 VTS。仮想世界の体験装置。訓練用によく用いられるものだ。時折、大規模な使用も臨まれるこれ。いつものブリーフィングルームではなく、リベリスタらはここに集められていた。 いったい、どうして。 「猫が、でっかくなっちゃったの……」 はは、さっぱりいみわかんねえ。というか分かりたくはない。アークにおいて猫の代名詞だけで指し示される人物は複数存在するが、その中でも厄介事を持ち込むどころか引き起こす誰某となれば自ずと限られてくる。 突如起き上がるモニター。そこに映った『SchranzC』キャドラ・タドラ(nBNE000205)を確認し、嗚呼やっぱりかと何人もがため息をついた。 「にゃーんだよノリ悪ぃニャ。あちし、乗っ取ったよ? VTS、乗っ取っちゃったよ?」 驚いてもらえなかったのが不満なのか、モニター内の猫は適当なビルに頬杖ついて…………なんだって? 「もう、にゃんだよー。かまえよー。猫は寂しいと死んじゃんだぞー」 死なねえよ。とかツッコミいれたかったがそれどころではない。空飛ぶヘリを片手ではたき落とす猫。いや、でかいでかいでかいでかいでかいでかいでかいでかい。 「……見ての通り、どういう設定にしたのか。大きくなってるのよ。訓練用のスペースだけ確保しようとしても何故か必ず出現するから、他のシチュエーションで使用するわけにもいかないの」 暇なのか、モニター内の猫が尻尾を揺らしている。びたーん。どごーん。びたーん。ぐしゃーん。うわぁ。 「まあいい機会だし、巨大怪獣戦の訓練も兼ねようかなって。そんな自体、想像もできないんだけど」 まあ、想定してはいまい。そんなものが上位世界から降りてきた日にはおしまいである。もともと、地球防衛軍だけで大怪獣を打ち倒すなど不可能なのだから。 仕方ない。やってやるとしよう。普段行わない類の戦闘に興味が無いと言えば嘘になる。だが、しかし。 「がおーにゃー」 迫力ねえなぁ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月01日(金)22:31 |
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●キャドラデイズ 巨大化はロマン。 「にゃはははははははは!!」 この文字だけ大きいフォントにできないかと画策したが、やめておこう。 まあ、なんだ。でかい。でかいな。見上げればキャドラ。見上げるほどキャドラだ。 凹凸はっきりした身体はいつもよりビッグサイズで、ぎざぎざの口は今なら戦車だって噛み砕けそうだ。 ものくろきゃっと。ものくろきゃっと。尻尾をぶんぶん振っている。 どうないせえと。思うがまあ、戦ってみるしか無いのだろう。 ●キャドラデイズ 夏栖斗曰く。猫がね、おっきいの。 「あいつなんだよ! なんでもありじゃねえか! 責任者でてこいよやっきーなんとかしろよ! こいつ!」 メタいこと言うんじゃねえよ。 しかしまあ倒さねば。そうは思うものの心は正直だ。さり気なくキャドラの真下へと。 「がおーにゃーきーっく」 「げふぅ!」 蹴られた。 「その程度じゃ僕は負けない! アンブレイカルの名は伊達じゃない事を知らしめるんだ!」 書き手の視点からだとぱんつかぶり→ノーパン確認である。 「ぼっちです!」 おい、いつもの頑張ってリア充臭出してるアレはどうした。 その辺の屋上で待機している竜一。下からの確認。そんなことはしない。あ、なんか超次元スポーツの前作みたいな表現はカットで。 ずしーんずしーん。 目標確認。補足。そしてダイブ。その巨大な双丘へ。 「うっひょーー! まさにおっぱいモンスターだぜぇー!」 ばいーん。跳ねる。落ちる。落ちても下から覗ける二段構えだそうな。良い子は死ぬのでやめましょうね。 「キャドラさんはホントにVTS好きねぇ」 去年も似たような乗っ取りを行ったのだ、エナーシアにそう思われても仕方がない。 まあ、でかい相手は足元から崩すのがセオリーだ。幸い、画像処理されてない云々を確認すべくと不届き者どもがその辺りには犇めいている。 「あいたーっ!?」 猫の膝を撃った。たまらず尻餅をつく猫。そのヒップアタックで何人か潰れたようだが、 「大丈夫だわ、(私は特に)問題ない」 あいつらの話を聞く必要はないからな。 「うおおー! きゃどらー!!」 「にゃっはっは、おみゃー相変わらず猪突猛進だニャー」 指先で襟首をつままれたブリリアント。 「キャドラが! キャドラがでっかいぞー! うわーいいなー、おもしろそうだなあー。なんだよー私もでっかくなりたいぞー。とりあえず、埋まらせれー!」 「はいはいまいどあり。お代はキャッシュでニャ?」 おさわり現金である。 「……はっ。これだけでっかいんだから、後で請求される金額も天文学的に!?」 大怪獣VSリベリスターズ。そんな様子を、杏は遠巻きに眺めていた。 「ああ、キャドラちゃんかわいいわ。まこにゃんとは違った無邪気さを持ってて、やわらかそうな体をしてるのがとてもいいわよね。ぐふふ」 怪しい笑いがこみ上げる。 「ただ、あの大きさは手に余るわね……いろんな意味で」 どんな意味があるのだろう。 「画像処理されてないって事はあれなの? もろなの? それは許されるの?」 映像として表示されませんって意味だったんだけどな。 「まったくぅ。また面倒なこと起こしてぇ。これだから猫は好きじゃないんだようぅ。あたしは狼だからねぇ。孤高の存在なのだぁ」 ぼやく御龍。しかし、どこか諦めたものでもあるようで。 「でもまぁキャドラちゃんらしいといえばらしいかぁ」 ともあれ倒せとのことだが。どこをどうすれば良いのやら。特撮映画ではあるまいし。なに、大きくても対人。弁慶の泣き所でも狙おうか。 「いてえ! 割と普段感じねえ痛み!」 あ、効いた。 怪獣に仕掛ける前、準備運動を念入りに行う亘がいた。 「はいはーい、イケてるびっくにゃんにゃんキャドラさん。今から貴方の頭の上、一番眺め良さそうな所最速でゲットしにいくので宜しくです」 「にゃにゃ? ちょ、のぼんなし! うにゃ! ううにゃ!」 ぺちぺち叩いてくるそれを避けながら、上へ上へと駆け上がる。 自由に空を蹴り上がれ。風を切り、楽しさに笑みもうかぼうものだ。 「そして……そこに障害があれば燃えるというものです!」 「誕生日くらいおとなしく祝われろよ!!」 叫んで、思い直す。 「……無理な話か」 芸能学校の人、悟りの境地。 気を取り直して事態を整理しよう。キャドラがでっかくなった。邪魔なのでなんとかしれ。 「なめとんかーー!!」 ぺちんと叩きつけられる依頼報告書。 「増えるとか巨大化とか、好き放題しやがって! 何度言っても履かないし!」 最早堪忍袋も限界である。あの猫め、今日という今日は。 「この際、ちょっと痛い目を見せてやる!」 「またキャド以下略」 レイラインのこの文言も、もう何回目だろうか。 「神聖なる猫の日に騒動を起こすとは猫の風上にも置けん奴じゃな」 クソ猫が生まれた日にがっつりグレードダウンしてそうだが。 「構って貰いたいというキャドラの気持ちも分かるんじゃがのう。わらわも彼氏と(ry」 あ、そういうのいいです。 「くらえ、最終兵器『蜜柑の皮から汁飛ばし』! ふ、これに耐えれる猫は居な……あ、こっちにも飛んでにゃぎゃー!!」 そう、そういうの。 「またやらかしやがったのかコイツは……!」 エルヴィンは、あえて仮想世界には入らないでいた。 「実はもうどこをどういじるとどうバグるかわかってて、狙ってやってるんだろって思えてきたぜ……」 アーク内にある大きな一室を借り、そこを飾りつけていく。 「とりあえずは、寂しいと死んじゃうらしいイタズラ猫に、ちょっとだけ付き合ってやろうじゃねーか」 誕生日の準備はできた。下着でも贈ろうかと思ったが、流石にやめておくとしよう。 「今回は地球防衛軍なのね♪ 正義の味方だぞー、ばっきゅーん!!」 ノリノリで、烏頭森は巨大猫へと射撃する。 しかしまあ、せっかくの仮想空間である。たいていのことは許されよう。そう例えば、下から覗く馬鹿どもへのお仕置きとか。 「不届き者のケツの穴に鉛の座薬をプレゼント♪ さぁ、お薬の時間ですよー、発射ー♪」 「いま、ケツ言うたニャこの女。ナチュラルにケツ言うたな」 「レッツ・座薬・カーニバル♪♪♪」 「なにその新しい地獄」 情報を制すれば、集団戦は落ちたも同然である。 久嶺は、遥か上空から下で戦う誰かに連絡を送っていた。 「えー……こちら上空偵察部隊」 なんか投げやり。 「そろそろ眺めてるだけも飽きてきたし、攻撃してもいいわよね? 別に倒してしまっても構わんのだろう!?」 あ、テンションあがってきた。 「この高さから撃たれたら反撃できないでしょう! なっ……尻尾が伸びてきたですって!? くっ、高度を上げて……避け切れない!! うわあああー!?」 曳馬野涼子は登りたい。 なんて、一世代前の娯楽小説じみた言い回しをしてみたが。「怪獣映画もいいけど、おっきいキャドラの上まで上がれたら楽しそうじゃない?」なんて理由である。 「周りもよく見えそうだし、たてものとちがって生き物は動くしね」 「ちょ、くすぐってぇ! 内股登るのやめれっ」 なんだかんだで肩まで登ってみたけれど。とうりあえず、味方になってみようか。やれ、キャドラ。なんて。 「がおーにゃー」 ノリが良かった。 セラフィーナは空から攻める。高度をとって眼前で剣を構えるのだ。 「あえて穿かないなんてやんちゃすぎます。私が勝利したら、貴方にはパンツを穿いてもらいます!」 「嫌や! この空気はあちしが負ける空気ニャ! 絶対絶対穿かねえぞ!!」 聞き分けの悪い猫である。しかし、世界の風紀は護らねばならない。 「剣士セラフィーナ、行きます!」 フラッシュバンを投げつけ、閃光を炸裂させる。 「うおっ、まぶし!」 「大怪獣ビッグキャドラ、覚悟!」 「やぁ、オレSHOGO! キャッシュがなくてもパンツ☆と聞いてやってきたのさ。じゃなくて戦闘訓練さ。戦闘の最中に面白いやらしいハプニングが起きた時にも冷静に対処できるように今からいやらしくしておきたいとかそんなんじゃないんだ。本当だよ?」 春先のアニメ番宣がだいたいこんな感じである。 まあ、えらくキメ顔でなにやら言ってはいるものの。やることは周囲の男衆と何ら変わらない。下から覗くのだ。 画像が無いって意味だってば。 「おぬしだけ楽しむのはずるいではないか」 「ニャ? じゃあおみゃーもやる? せーの、がおーにゃー」 がおーにゃー、なんて送り返したかはおいておいて。シェリーは猫と一緒になって暴れだした。普段の依頼であれば厳罰ものだが。いいんじゃないかな、VTSだもの。 「ふふ、おぬしとならば、この地を真っ平らにすることも叶う」 「ああ、なんか仲間っぽいヒトに向かってビームが!」 それにしてもみんなこんなとこでフェイと使うの好きだな。消費しないけど。 仲間とともに戦う。それでも良かった。相手があの猫でなければ、自分はそうしていたことだろう。 だがしかしだ。隆明にはやらねばならぬ、退くことのできない戦いがあったのだ。 「具体的には真下からッ! 確かめねば! 確かめねばあぁぁぁぁああ!!」 男は外聞を気にもとめず、駆けていく。 「うっひょー!」 はじかれ、ふきとばされても。そこに辿り着いた。見上げれば。 「だから無修正って意味じゃねえって」 「あぁ、これが……真理か」 「きゃどらはんたーG。ちなみにGは『GOUMONN』のG」 「ハントじゃねえぞそれは!?」 「ねこさんを酷い目にあわせて、尻尾や耳をちょんぎり、きゃどら装備を作る。ねこさんはえろいから、きっと、えろい素材が剥ぎ取れたり、えろい装備が作れるに違いない」 「こええ、こええよなんか見覚えある人!」 尻尾に行くと見せかけて、靴の中に潜り込む。でかいやつには末端から攻撃すべきなのだ。 どんな攻撃かは割愛。普通に痛そうなので。 「ハハハ――なんという面倒な事を」 あらゆる感情は、極限に達すると笑いしか出てこなくなるとかなんとか。シビリズの今がそんな感じだろうか。 まあなに、前向きに考えよう。あんなものと戦える機会は滅多にない。自分の力を試すチャンスである。 「小細工不要。真正面から打ち倒してこそ闘う意義が……うわサイズ差があり過ぎて攻撃が(ry」 でも負けない、リベリスタだもん。 「うぉぉおお再度行くぞうわ尻尾の攻撃がかわせな以下略」 「ちょっと見ない間に随分育ったわねー、何て。ハァ、現実逃避終わり」 焔には、ひとりノリツッコミまで行くほど元気はなかった。 「真っすぐ行って、ぶっ飛ばす。業炎撃で、ぶっ飛ばす!」 心を読まれても大丈夫なストレートパンチ。 「……って、あ!?」 「がおーにゃー」 「い、痛いじゃない……って言うか、一撃一撃がアレってどんな反則よ!?」 巨大生物の醍醐味だもの。 「……私達も対抗して大きくなってスーパー大戦とか出来ないものかしら?」 「これがアーク流のお誕生会なのでございましょうか? 何とも迫力でございますね!」 誰か、リコルにあとで正しい知識で書き換えておくように。 「せっかくのお誕生日でございますから記念写真は必要でございましょうね! では、僭越ながらわたくしがカメラマンを勤めさせて頂きます!」 うん、割と理解してないな。 「キャドラ様~! こちらに視線をお願い致します~!!」 「ニャ? ぴーす!!」 おもいっきりポーズを決める猫。足元からあがる悲鳴。 「アークは色々と非常識な組織とも聞いていたけれど、こういうこともあるのね」 霧音は自分を納得させるためだろうか、呆れた声でそう言った。 「対巨大怪獣……流石にそういうモノを斬った事は無いけれど。まあ、良い訓練に……なるの、コレ?」 わかんない。 「……って言うか、登ろうとする子何人居るのよ? ああもう、危ないわね……あと足の間で上見上げるばっかで攻撃しないのも居るし……これがアークなのね」 深々と、ため息を付いた。 「なるほど……この本には獅子身中の虫という言葉があった。巨大怪獣戦の訓練に加えてスパイや謀反への備えもと言う事かな」 何やら納得顔のヘンリエッタだが、何から何まで間違っている気がする。 「さすが我らフュリエの友、ボトムのリベリスタだね。全力で挑ませて頂こう」 こう大きいと工夫も必要だが。とまれ、またたびでも投げてみるか。 「先日読んだ本によると猫はまたたびでへろへろになるそうだ」 「へっくち」 ちょっと効いたようだ。 「VTS……というものの仕組みはよくわかりませんが。実際に大きな危険もなく、経験を積める方法……すごいですね。そんなもの、私達の世界にはありませんでした」 感心するファウナ。しかし、現実の実戦に勝る訓練がないのも事実ではあるのだが。 「巨大怪獣なんて言葉を聞くと、思い浮かぶものもあるけれど……これはこれで、なんというか。この大きな人……元から大きいわけではないの…ですよね?」 こんな生き物が最初からいてたまるか。 「まずは……そうだ、支援の練習!」 訓練であるという言葉を真面目に受け取ったのだろう。エフェメラは自身で考え、この機会を実戦に活かせるものとしようとしていた。ええこや。 「……ってあれ? あの人攻撃しないで上ばっかり見てる? あ、他の人もだ。何かあるのかなー?」 それが何なのか、是非ともわからないままでいていただきたい。 「あ、あの人は確か…クスカミ・フートさん! えーっと、『フートさん、上から来るぞ、気をつけろ!』」 上の方へ戻る。 (ばーちゃるとれーにんぐしすてむ…アークには凄いキカイがあるのね! それで、えーっと…暴れてるのは巨大な猫お姉さん? あの人を止めないと皆が困るのね。お姉さんには悪いけれど、やっつけちゃう!) ぐっと拳を握るアミリス。フュリエにはこういう子が多いのだろうか。つくづく、この猫を向こうに派遣しなくてよかったと思う。 (ひゃあぁぁ! 踏み潰されちゃう~!!) 「………来ない、で」 「がおーにゃー」 やっと怪獣らしくなっただろうか。 アルシェイラは、怪我の心配なく戦闘訓練が積めると聞いてこれに参加したのだが。 「みんな、何時もこんなのと戦ってたの? ボトムチャンネル怖い……」 流石にそこまで阿鼻叫喚ではない。なんか殺人鬼が大量発生したり異界の鬼が跳梁跋扈する程度である。 心が折れそうになる。やはり、自分には戦いなど向いていないのかもしれない。そんな悲嘆にもくれながら、それでも使命感があった。 「でも、必要になるかもしれないから、せめて周りを参考にするの……」 糾華とリンシードのふたりは、頑張ってキャドラを登ることにしていた。目指せ登頂、というか頭頂。 この巨体を登るのだから、その苦労は相当なものだ。ふたりは何故か1段階下の単位で数の多さを強調するドリンク剤の宣伝みたいなことをしながら、お互い助けあって登っていく。表現が曖昧なのは勘弁して欲しい。 胸のあたりで少し休憩。ここまで来ればもう少しである。しかし、 「でもこの辺で休憩できるっていうことは、それほどの大きさということですよね……」 リンシードから、乙女にあるまじき歯を食いしばる音が聞こえた気がした。 「邪悪は破壊しなければいけないの……」 登りを再会際、糾華は炸裂する置き土産を残していた。持たざるものの妬みである。 「負け犬の嫉妬が聞こえるニャ……」 ここぞとばかりに。 「ねぇ、知ってる? 猫ってヒゲの根本に神経があって、切られると凄く困るんだって。つまりは……」 「ひげ、切りましょうか……お姉様?」 こいつヒゲあったっけ。 「たく、訓練しようと思って来たのになぁ……優希! この迷惑な巨大猫を懲らしめようぜ!」 「またしても賑やかな惨劇を招いてくれたな。フ、キャドラ対峙も良い訓練になるであろう。コンビネーションプレーを見せてやるとしよう」 このふたり、なんとまじめに戦闘してございます。だが、訓練となるのは確かである。これを活かせる場面の想像はできないが。 踏まれそうになれば距離を取り、当たれば受け身をとって前線へ。 「だぁぁ、でっかいから踏まれそうになるな。足元からじゃ無理か?」 巨体から繰り出されるでっかいキック。優希では避け切れぬと踏んだ翔太が前に出て、枯れを庇う。その瞬間を逃すまいと、優希はキャドラに電撃を浴びせていた。 「ふぎゃっ、なんぞビリビリする!?」 そして上へ。流石にこの巨体を直接登っては時間がかかる。手頃な建造物を駆け上り、屋上から飛びついた。そして耳元で同時に叫ぶのだ。 「「いい加減にしやがれー!」」 きーん。 「ルナちゃん、ボトムって凄いよねぇ……こんな大きな人が居たりするのぉ? え? これは違う? ばーちゃる……何?」 「な、何だかよく分かんないけど私達の力が必要って言うのは確かだよ! だからリリスちゃん、一緒に頑張ろうね!」 なんや、異文化コミュニケーション言うてな。 「んー……まぁ、とりあえずアレと戦えば良いんだよねぇ? あれだけ大きな的だったら、フリーズを効果的に当てる練習にはちょうど良いよねぇ~」 「……ねぇ、リリスちゃん。さっきからリリスちゃんが攻撃するたびに足元の人たちがカチーンって凍って、パリーンって割れてる気がするんだけど」 「んー、でも、大丈夫大丈夫~。ほら、足元に居る人達って戦闘に慣れてそうだし、直接当てて凍らせたりしなければ!」 「い、言われてみれば確かにそうなのかな? それなら行くよ、リリスちゃん! 今の私達の全力全開!」 「OKルナちゃん! 今の私達の全力全開!」 「「フィアキィ達に力を借りて、今必殺のエル・フリーズ!」」 なんや、異文化コミュニケーション言うてな…… 神よ。この五人を纏めよとおっしゃるのですか。 「俺、この戦いが終わったら、彼女とスキー旅行に行くんだ……!」 いきなり死亡フラグ立ててくれたのは新田快。チームキャ特隊の雑魚隊員である。お前のような雑魚がいるか。 「相変わらずこのモノクロ猫はよく解からん事を……ま、命の危機なくデカブツと殴り合える機会だと思っておきましょう」 阿野弐升は多分特攻役だ。書いてないけどきっとそうだ。いつもそんな感じだし。 「何というべきかこのワンダバ展開。乗るしかない、このビッグウェーブに」 晦烏は射撃の名手。眉間を撃ちぬくスナイパー。最近、どっちかというと静岡に出てきそうだけど。 「私は暫定的に隊長っぽい立ち位置のベルカだ。キャップと呼んでもくるしゅうない!」 そしてこのキャ特隊体調、ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァである。 「パンツの一枚や二枚ナンダッテイウノデゴザイマスカー! はいてなかったってイイジャナイデスカ! ウワァン!」 あと、えっと、なんだこれ。 「なんだかキャドラ君を見ていると小生。そこはかとなく哀しい気持ちになって来るのでゴザイマス……これって、マサカ、恋?」 「はいはい、恋と愛は有料ニャー」 アンドレイの戯言を流す猫。 「ビッグキャドラだかビックリキャドラか知らないけど、俺達キャ特隊の敵じゃあないぜ! うわーもーだめだー」 フラグ回収はお早めに。ところでこれ、やり過ぎると逆に生存フラグだよね。 「皆、後は頼むぞ……!」 プレイングにはこの後サムイこと書いてあったので割愛しました。 「巻き込まれてたまるかっての!」 弐升は持ち魔の直感力でキャドラの攻撃を掻い潜る。転倒狙って足攻撃。 「にゃぎゃー!?」 ずどーん。でしーん。ぎゃああああああ。湧き上がる悲鳴。下敷きのリベリスタ。気にせず大型のかまいたちを生じさせる。範囲的に味方も巻き込むが気にするな。 「イヤッホオオオオウ! チョーキモチイイー」 心にあのAAを。 烏は、なんか四角くて向こう側の見えなさそうな眼鏡を顔の前に添えると、 「でゅわっ!」 それっぽいこと言ってみた。 すると、みるみる烏が大きくなっていくではないか。ライトの国からミーらの為に。そんな戦士の誕生だ。 「面白そうだから、OKニャ!」 システム支配者の承認だった。 「さて、今回出現した黒猫怪獣ビッグキャドラであるが……どうやら彼奴めは猫の因子を持つ怪獣らしい!」 ならば、巨大キャドラにもきっとみかんの皮とか通じるはずだ。 「高層ビルで待ち伏せて、秘密兵器のみかんスプラッシュを喰らわせてくれよう……決定打にならずとも、きっと後に続く同志がトドメをさしてくれるはずだ!」 すげえ後ろ向きである。 ●キャドラデイズ 「うにゃー……だからさー、最近殺伐としてんじゃん? そんな時こそあちしが面白おかしいハプニングをだな」 はた迷惑な理屈をこねながら、連行されていくキャドラ。 こける→ふるぼっこ→ガリバーのコンボをくらい、とうとうVTSシステムを明け渡した彼女は、今こんな状態である。 ずるずる。ずるずるずるずる。 きっとお仕置きされるに違いない。知ってんだ、あちしいつもこの展開だもん。また減給かな。そろそろ毎日猫缶も飽きて来たんだけどにゃ。牛肉置いときゃ、よかったかにゃー。 そうして連れて来られて部屋、ドアが開けられて中へ入り、彼女はぽかんと口を開けた。 『お誕生日、おめでとう』 でかでかと書かれた題目がいやでも目に入る。しばらく瞼をぱちくりさせると、そのまま後を振り返った。 「おめでとう」 「え、誕生日……あちしの!?」 「おめでとう」 「いや、でも、あれ、今日だっけ?」 「誕生日おめでとう」 「誕生日おめでとうございます!」 「誕生日おめでとうございました?」 「まって、や、ちょっとまって!?」 「誕生日おめでとう」 「誕生日をおめでとうである」 「誕生日おめでとう」 「お誕生日おめでとー!」 「…………はっ、ドッキリ!?」 素直に祝われなさいよ。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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