● 「年の瀬」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、端的に口にした。 「いろいろ案件抱えている中、リベリスタに風邪とかひかれると困る」 そうですね。 「だけど、なんかなりふり構わぬ人も多い。一人暮らし初めてとか、南国生まれの人とか、文字通り外国から来た人とか――」 日本の冬は、寒いだけじゃないから。 風は吹くわ、雪は降るわ。 その雪も重かったり、風でぶっ飛んできたり。 その風も、湿気ってたり、疾風居合切りだったりするのだ。 かまいたちは、自然現象ですよ? 長い。長いぞ、日本列島。 日本のあっちゃいけこっちゃいかなくちゃいけないリベリスタの体調管理が非常に心配です。 厚生課からのお知らせ。 「――七緒は、間に合わなかった」 『スキン・コレクター』曽田 七緒(nBNE000201)と言えば、『戦闘以外でころっと死にそうなリベリスタ』ランキングで上位に入れるクリミナルスタアだ。 ついに、死んだか。 「生きてる。というか、この寒空にパンイチで作業してたらしく、風邪ひいて昏倒してるのを発見された」 パンイチだと。 ――想像禁止。銭取るぞ。 「やつの部屋、全く冬支度というものがなかった」 掃除ができないから、フローリング。 必要最低限のものしか置いてない。 三高平に来てから、フロアモップの使い方を覚えました。 いくら温暖な静岡南部だからってな、日本の冬なめんな? 「そういう訳だから、『日本の冬、初めてで~す』な人達に冬支度というものを教えてやって。衣食足りてるから、今度は『住』。みんなには、大型インテリアショップに買出しに行ってもらう。割引券あるから、みんなで行ってくるといい」 でも、色々忙しいのに。 「なんなら、インフルエンザの予防接種とかを推進しようか?」 お買い物、行ってきます。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月17日(月)22:59 |
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■メイン参加者 31人■ | |||||
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● 話は、二日前に遡る。 曽田七緒生活向上委員会は、アーク職員立ち会いの元の訪問。 「ちわーす、新田酒店でーす」 「どーもぉ。七緒さんのお部屋リフォームし隊です」 快と終は、一応きちんと挨拶する。 本人の許可ももらった上、アーク厚生課にドア開けてもらって、突撃七緒さんのお部屋。 「何やってんの?」 「快気祝いの撮影」 快は、一升瓶ケース(6本入り)に積載された「清酒 三高平」を置いて、証拠写真を携帯に収めている。 「飲みたきゃ、早く退院しろと激入れてやろうと思って……」 「あさって、退院だってよ?」 「え、本当に?」 「うん、だから、突貫工事。七緒さんにはエアコンが必要だと思うんだよね! 最近のエアコンってフィルター自動掃除してくれるのあるし」 終はニコニコしながら、エアコンのカタログを取り出す。 「被らない様にみんなで相談」 「あいつに暖房器具なんて使わせてもロクな事無さそうなんだよなあ。灯油ストーブ? 論外。電気? ひっくり返して火事になりそう、ボツ」 ランディの脳裏にはこんがりと丸焼けマンションしか浮かんでこない。 「エアコンとコタツ位しかねーな……」 よし、エアコン、選ぶぞ。 「エアコンのつけっぱなしはお肌の乾燥の敵になるです」 どりんっと顔を出したそあらさん、美肌運転付きチェック。 「窓を全部二層構造のに取りかえれば外からの寒気を遮断してくれるし、夏場はエアコンを最小限で効率良くまわせるよ☆ で、床暖房しけば掃除とかの心配いらないし……」 終、着々とリフォーム箇所をチェックして、厚生課の人に相談。 「日本の冬は超進化してるね」 ● 三高平市立病院。 曽田七緒は、本日退院である。めでてえな。 うさぎは、開口一番説教だ。 「ぬぁにをやってるんですか貴女は! 昏倒なんて洒落になりません風邪を舐めちゃいけませんよちゃんと処置できなきゃ普通に死ぬ病気なんですよ!? 全くもう面倒臭いのは分かりますが面倒臭がりすぎて最低限の事しなかったら結局こうやってもっと面倒臭い事になるんです!」 「あ~」 七緒の相槌に常にはない濁点がついているのを聞き取り、更に説教ヒートアップ。 ばさばさっと衣類がベッドにぶちまけられる。 「てかもっと厚着なさいまだ病み上がりなんでしょぶり返したら大変ですよ! ほらネックウォーマー着けて首の後ろ暖めて! それからもっと上着重ねて! いっそ着膨れしなさい!」 「え~、カッコ悪い……」 「良いから!!」 「本当にもう、お世話がかかって大変なのです」 こまったどりん顔のそあらさんに言われると、七緒もおとなしくネックウォーマー付けざるを得ない。しおしお。 「女の子なのですから、おぱんつだけでうろうろしてはいけないのです」 まず、そこだよな。お行儀の問題だよな。 「こんなに寒いのですから、倒れてあたりまえなのですよ」 細菌やウィルスは、革醒者でもお構いなしです。 「これから冬のイベント満載なのです」 クリスマス、ニューイヤー、バレンタイン。 「三高平を代表するカメラマンとして、七緒さんは倒れてるひまなどないのです」 そして、私とさおりんのツーショットを撮りまくるのです。 言葉にならない想いがビンビン響いてくる。 お着替え終了。 無いに等しい荷物を持って病室から、病院玄関へ。 「お前、アホだろ」 何故かお迎えに来ているランディ、ホントのことをズバ。 「正直ツッコムまいと思っていたが、つい」 言わずにはいられなかった。 顔見て言わずにはいられなかった。 「くっそおおおお! パンイチ見逃したああああ!」 悲しみとともに吐き出される、竜一の絶叫。 (この寒空にパンイチで作業、一人でするだなんて! なぜ俺に声をかけてくれなかったのか! 一声かけてくれれば、すぐに駆けつけたというのに!) いや、マンションのオートロック外さないよ? 「こんな悲劇を繰り返してはならない。誰かが傷つくことは、もういやなんだ。俺の心は、今まさに深く傷ついている。七緒たんを倒れるまで放置していたことに。あるいは誰かがみていればこの悲劇は避けられたはず。悔やんでも悔やみきれない」 かっこいいこと言ってるみたいに聞こえるけど、七緒は竜一がどんな奴かはしっかりわかっている。 「おっかないから、あんたの妹よぶわぁ」 このまま行くぞ、インテリアセンター。 みんな、いろいろ目星つけて待ってるんだから。 ● 覇界闘士三人組は、アウトドア売り場から衣料品売り場に移動中。 「え? なんで火車きゅんキャンプ用品?」 「この寒いのに……」 夏栖斗は目を丸くし、悠里は眉をひそめる。 「寒いから良いってのもあってなぁ 焚火は良いぞ? 神聖な気持ちになる……」 だから、それ前提でぬくいものを探しに来たのだ。 やはり野外の寒さは相応に厳しい! 「いやーん、ねっね!火車きゅん、悠里、これかーわーいーあいてっ」 言い切る前にどつかれた。 火が付いてないだけマシだ。 無言。旋回、前進の二人。 「いやさ、ほら、ヤロー3人でってなんかアレじゃん。せめてこう女子的な可愛さを演出……やだ! 二人共無視しないで! 僕に構って!!」 いや、野郎二人にオネエ混じったら微妙だから。 「うーん、簡単に着れて暖かいものっていうとやっぱり袢纏かなぁ?」 七緒用。 「服か……新しい冬物オレも探すか」 手に取られるパーカーにスカジャン。 「火車きゅんは半纏? これこれ! ハート模様にあいそ……」 離れたファミリーブースから夏栖斗の声がする。 ちゃっかり、キャラメルカラーのアルパカマフラー購入済み。 限りなく直線移動で夏栖斗に迫る火車の突進。 「カズトォ、何でもかんでも爆走して喋ってんなよぉ? 野外で半纏はちょっと効果薄そうだな!」 ばべちーん。 「だから、いてーってば!」 駆け出しの革醒者なら首がもげて飛んで行きそうなビンタをはる火車も火車だが、いてーで済ませる夏栖斗も夏栖斗だ。 「はいはい、二人共あんまり暴れないでよ。恥ずかしいから。特に夏栖斗」 それを、日常茶飯事と受け流す悠里も悠里。 「何!? 暴れてるのはオレのせいじゃねぇだろ! 悠里! 訂正しろよ!」 火車の抗議も、華麗にスルー。 「僕は外出用のだから、ジャケットを買おうかな。夏栖斗のオススメは?」 おしゃれに自信がない。と、悠里。 「普段制服が白いから暗い色のジャケットとかよくね? 定番はダウンジャケットだけどさ、袖なしのダウンジャケットとか。おしゃれに服も合わせるのできるよ」 「白ジャケならすぐに血塗れで赤黒くなるな はっはっは」 夏栖斗が包もうとしたオブラートを火車が盛大に引っぺがす。 どれほど血をかぶろうと、悠里はそれに染まることはないだろう。 きっと、どこまでも染まらぬ白。 ● 家電コーナーに吸い寄せられるようにリベリスタたちが溜まっていた。 この季節、これを手に入れるか入れないかでクオリティオブライフに関わってくる。 ハイディは、一人用こたつコーナーを徘徊する。 (ボクの恩人の彼女は言っていた。ニホンの冬といえば炬燵でミカンが至高である、と) ハイディさんの恩人の彼女はいいことを言いました。 (ならば、新聞のチラシでみかけた一人用の炬燵を買いにいくべきだ。これで彼女の領域に一歩でも近寄れるはずだ……!) 手に握られた今日の目玉、一人用こたつ、炬燵布団に、敷ラグもついてこのお値段! 弥千代、三高平に来たばかり。 というか、いきなり10歳に退行した体にも慣れていない。 (必要最低限の家電しか揃ってねんだよなァ……とりあえず炬燵は要るよな。炬燵が無い冬とかありえん。絶対凍死する) それは、考えすぎよ。 (今年は特に冷え込むしな。エアコンだけで乗り切れるモンでもないだろ。炬燵はチビんなったからソロ用のでも十分か……くそ、出費ぱねぇ。ただでさえ年始末は入り用だってのに) アラサー真っ只中、世知辛い。 (つか外見コレなら甥っ子たちのお年玉とか免除されて然るべきじゃね? むしろ俺にくれ) ここで、中身は大人アピールするか、子供として生きるかで、人生かなり分岐するよ。 八十代のショタがうろちょろしている三高平では、三十代、実はあんまりおっさんじゃない。 「カートでけェし! 俺非力だし! ちっくしょ、マジこのサイズやりづれぇ……」 渾身の力で押しても、家電製品、結構重い。 カツンと靴音。 「あ、店員さん。こんだけ配送頼むわ」 振り向けば、黒コートウルフカット。 「え、あ、いや、店員じゃないんだけど……」 新城拓真、こたつ、買いに来ました。 (見ない間に随分と、家電製品も便利になったと言うか……形を変えたと言うか。まぁ、予算と相談をしつつ新しい物を購入して帰るとしよう) 拓真さんは、老成していると言えば聞こえはいいが、実際若さが足りない。 黒コートウルフカットが、それでいいのか。 いや、無理しなくていいんだけどね、風邪ひくから。 「……うちにある炬燵も、もうそろそろ買い換えないと……さて、どれにするか」 炬燵布団に新素材とか、ヒーター部分が埋め込みとか、足がスライド可動式とか、最近流行りはちゃぶ台型とか、そんなこと言われても自分で選べないから。 部屋の大きさとか予算とかから、店員さんお勧めの物を買ってしまおう。 ある意味、非常に賢い。丸投げとも言う。 「ふむ、となるとやはりこれが良いかな……。じゃあ、これを一つ頼みます」 店員さんは、ホクホクとこたつを購入して去っていく拓真の背中を笑顔で見送った。 ベルカは、友情に篤かった。 「同志イドがこの寒空の下であのスーツ一枚だと言うのでな。問題無いとは言うが、寒そうでならないぞ!」 実際、真夏はそのスーツの中に扇風機で風送ってた。 も少しヒトらしく。そんなコンセプトに、イドもアーク支給の生活費を使ってみる気になる。 「今回の主目的はずばり、こたつ! いかな寒気があろうとも、これさえあれば立ちどころに心底暖まる必殺グッズよ……」 大規模家電量販店から街の電気屋さんまで、ありとあらゆる所を見て回り値引き交渉を粘り強く行い、たどり着いたここが最後の決戦場だ。 「こたつ? バカを言うな! 人たらしの達人たるヤツを、いきなり初心者にあてるわけにはいかん!」 日本人たる風斗は、今まで数多くのこたつに人が飲み込まれるのを見てきた。 一度飲み込まれたら、ある一定のみかんと雑誌と積みゲーを消費しなくては出られないBS発生装置。 自然が呼ぶか、猫が飯食わせろと言わない限り、脱出の機会すらない。 「石油ストーブも子供に扱わせるのは危険だし、まずは基本の布団と毛布、それと電気湯たんぽあたりを揃えるか」 こたつは、大人になってから。 「布団……毛布……電気アンカ……こたつ……はいけませんか? しかしベルカはこたつを薦めています。聞いた所によると、寝具にもなるとか……」 「 あと、こたつで寝ると風邪をひくって先生が言ってた!」 風斗、風邪をひかせたくない一心での咆哮。 「二人の間でコンフリクトが発生しています……」 イド、少しだけ困り眉。 「うー寒い寒い」 ネイルは、いいとこの生まれの一般的な革醒者。違う所をあげるとすれば労働に興味が無いってことかな。 いや、それ、割とよくいる。 まさに今日南半球からアークに配達され、冬支度などない。 これ幸いとここに来たのだ。 (ブランケットのついた低いテーブル……日本のコタツというものか) 「床に座る文化ないと作れないよなー、どれよっこらせ」 ほわん。 「……!?」 イドは、その時、人がこたつに飲み込まれるのを目の当たりにした。 (今、運命の人と出会った――あ……温かい……これが日本での私の寝具だ……) 恋に落ちたと言っても過言ではない、ネイルの上気した頬。 これで、ネイルはもうこたつなしの日本の冬など想像できない体になってしまったのだ。 「よし!そうと決まればこれを家に……家がまだない!」 ネイル、痛恨の失態。 「くっ……不動産屋に先に行かないと……ここで待ってて!」 見たか? 今、こたつに話しかけたぞ。 ちなみに、アークの厚生課さんに行くと当座の住居を紹介してくれるよ、豆知識。 「イド。あれ見ても、欲しいか。こたつ……」 こたつの求心力おそるべし。 風斗がぼそりと呟いた。 ● 旭は、切羽詰っていなかった。 (かわいーのも大事だよねぇ。こころもからだもあったかが一番なの) ウィンドウショッピングは、懐を冷やさない上、心を温めます。 「わあ、この子たちかわいい…!」 レンジでジェルのパックをチンして入れれば、湯たんぽになる子猫のぬいぐるみ。 (買っちゃお、かなかわいーのはいくつあったっていーし。日替わりで使えば。うん) 言い訳始めた時点で、お買い上げは決定だ。 迷って、まっくらな毛並みの子を購入。 (最近の依頼で出会って別れた、一晩だけの相棒。子猫みたいなアザーバイドによく似てるから) これで、冬のあいだはずっと一緒だ。 「えへ、これからよろしくねぇ」 (おうち帰ったら首に赤いおリボン、巻いたげよ) リンシードは、切羽詰っていた。 いつものゴスロリとは別の白いゴスロリ……いわゆる甘ロリを着ているから。 恥ずかしさのあまり気配を遮断しても、見えなくなる訳ではない。 (設楽さんの誕生日プレゼントとして貰ったから……) 言い訳をはじめるのは、煮詰まってきたからだ。 (着るしかないじゃないですか……! 着ない、なんて言った時のあの人の寂しそうな顔が離れないんです……) 甘ロリは恥ずかしい乙女心を、プレゼントした本人はわかっているのだろうか。 たまには白いの。と、単純に決めたのかもしれない。 (着るのは恥ずかしい……ので、上から黒いコートを着ればほとんどいつもの私と変わらない! ということで、あったかコートを買いに来たのでした) 見えなきゃ大丈夫! (で、ですが……店員と話しづらい……いつもなら普通に喋れるのに……) 別に店員さんは、「リンシードさん、甘ロリ。クスクス」とか思ってたりしない。 自意識過剰だ。 (今は顔すら見れない……顔の火照りが取れません……一体どうしたら……!) こんなリンシードが、同じ建物にいる悠里に遭遇するまで、あと34分。 「幾ら年寄りの御布団爺さんの頼みとはいえ、何故俺達が買い出しに出ているのかね、ほむほむ」 「ぐっ、俺はほむほむではない!」 優希の拳をギリギリでうける猛。 じゃれあいも回避判定が必要です。 「御老公の頼みならば、例え相手が葛木であろうと、どこへなりとも使いに行くとしよう。 気合いを入れろ、キリキリ歩け! ……で、何を買えばよいのだ?」 猛は、買い出しリストのメモを懐から出した。 「えー、焔殿が使う電気毛布、焔殿が使うゆたんぽ、焔殿が使う…って、お前、愛されてんなぁ……」 優希はキョトンとして、そのまま動かなくなる。 冷静沈着を心がけ、自らを律しているが。 人からの無償の厚意は、優希を年相応の少年に戻す。 「御老公、俺のためにそんなお気遣いを……こ、この礼はいつか必ず……!」 そんな優希を見るタケルの頬に浮かぶのは、ライバルの優樹の心が凍っているわけではないと再確認した柔らかな笑顔だ。 「ぐ、葛木はそんな目で見るのではない!」 猛は、優樹が手の下に隠した耳まで赤いのをスルーする程度の情けは持っている。 「ほれ、お前が使う品物買いに来たんだからよ、意見はしっかりな。これとか、最新式らしいけど、どうよ?」 ホイホイと、目に付く商品を指し示す。 「色は赤とかで統一すんのが良いのかね」 「どちらかというと、茶や白の落ち着いた色合いの方が――」 (お布団帝国は暖かで賑やかな場だ) 優希は、世話になっているコーポの様子を思い浮かべる。 (いつまでもそうであるよう、御老公が長生きされるよう、俺も何か出来ることを探していくとしよう) たまにはこういうのも悪くない、のんびりした買い物が続いた。 いりすは、三高平に来たばかりだ。 (小生のお部屋は、暖房器具と冷房器具が存在しない。先住民が買った物とかあるんだろうけど。春にはまた仕舞わなきゃいけないんだし。めんどい) こうして、物が増えていく。 (じゃぱん、あんまり寒くないし。めんどい。大切だから、いっぱい言った。めんどい) ここにも、生活向上させなくちゃいけない子羊が。 (なので、あったかい布団を買うのです。大抵の寒さはしのげる。布団偉大。出たくない。働きたくない。働きたくない。だれか養ってください。じゃぱにーずまんねんどこ!) 誰だ、こんな危険ワード教えたのは! サメか。サメの記憶か!? (ときむらけの養子になりたい。ひだりうちわ。なんて素敵な言葉。寒そうだけど。だれか布団買って、小生の店に届けてほしい。タダで) げんじつとーひ。 布団売り場をさまよいながら、ナイルワニは暖かい寝床を夢見ていた。 ● 七緒がショッピングモールに到着するのを、カートの中を山にして待ち構える一団。 鷲祐の後ろには、カートで足りずに、台車まで置いてある。 毛布、厚手のカーテン、厚手のもふもふ靴下、面積を専有しかねない巨大なセンザンコウのぬいぐるみ。 それと分けてストーブ、ヒーター、絨毯その他のデカ目家具を積み込んで。 「ストーブ、ヒーターは却下だな……」 曽田七緒生活向上委員会は、七緒の能力を過剰評価いたしません。 危なすぎる。 「あ、なら、うちで使うわ。俺も暖房器具が欲しくてな」 鷲祐んち――公園不法占拠ツリーハウス――は、一月前、ある依頼で破損して、今は解体して組み直し中。 詳細は、コーポで。 「おかげで、寒くて……」 あれ、トカゲって冬眠するっけ? 「――というわけで、俺が持ってきた酒を全部置いていく。治ったら飲め。一時的にでもブーストかかるから。そのあとは必ずこのセンザンコウにくるまるんだ! いいな、必ずだぞ! 死ぬから!!」 そんな怖いもの置いていくなよ。 というか、なんでセンザンコウ。 普通とっさにわからないぞ、一見丸まらないアルマジロ。 「曽田様。嫁入り前の娘が下着一枚でお仕事というのは如何なものでしょう? お体を冷やしては障りもございます」 北海道とはまた違う寒さで、自分の感覚以上にじわじわと体が冷えているのです。と、北の永御前様に言われると、さすがの七緒様も、モウシワケゴザイマセンとしか言えない。 「暖房器具は、放り投げた服に引火して火事を起こしかねない気が致しまして 」 藍染の丹前を進呈。 布団にも出来る万能衣料。 着れば着るほど味が出るよ。 「まおは着る毛布を選びました」 今日のまおは、幻視を使っているのでマスクなしだ。 「これだと、着たままうろちょろもできますよね。そのまま寝るのもリベリスタなら大丈夫だとまおは思います」 堕落への一歩だが、心底楽しそうな幼女にツッコめない。 「曽田様はどの色がお好きでしょうか? 余ったら、まおや真白様で分けましょう。あこがれの大人買いができて、まおはちょっと嬉しいです」 この店の着る毛布。 カラーバリエーション豊富。全24色。 「まずはアンダーシャツ。サイズは前に誕生日の時チェック済みですので」 亘の差し出した包みに、七緒はあぁあとうめいた。 「あたしはつっ返すのめんどくさいから、もらっとくけど。クラリスには、こういうのやめときなよ」 女性に下着を送る意味をいまいちよくわかっていないらしい亘の手には、窓に貼る防寒シートに、ヒーター用ダクトとストーブガード。 ストーブは危ないという共通見解により、ダクトのみ採用。 「よーしこのまま皆と一緒にお部屋を完璧に冬対策を施して、曽田さんが喜んでくれるよう頑張ります!」 「へ?」 七緒が頓狂な声を出した。 「みんな、来んの?」 一同キョトン。当たり前だ。でなきゃ、誰がこの大荷物持って帰るんだ。 雷慈慟は、ダンボール箱を抱えている。 「日本で生まれはしたものの覚醒早く、年端いかぬ内から組織に従属していた為、一般的な素養が少々不足気味の自分だ。書籍を攫い越冬を学んだ」 栄養補給には、みかん。 (曽田御婦人は見目麗しく……下着一枚で……? それは……ふむ……) 「む……不埒な妄想は宜しくないな」 あと1秒で、課金タイム突入だった。 (頼まれれば否定はしない性質と聞く) 「女性が腰を冷やすのは頂けないな 確りと暖を取って頂きたく願う」 「はいはい」 それとどうだろう。と、雷慈慟は切り出した。 「……宜しければ 我が子を宿しては頂けないでしょうか」 「――事務所、通してくれる?」 命の保証はしない。 ● 七緒さんの部屋。 リフォームされたお部屋にあれこれ搬入中です。 エーデルワイスは、満面の笑み。 部屋の中にカレー臭。 「七緒さんの為に、超美味しいカレーを買ってきたですよ♪」 寸胴鍋いっぱい。 「あはははは~。知合いのフィクサードさんが作ってるカレーなんですけど、エリューションを生み出しちゃうくらいの素晴らしい神秘味なんですね」 カレーってそんな魔力あるよね、な、新田! 「……あれ? 七緒さんは食べないのです?」 食事制限中です。 「あー食べれないのですか、残念ですね。じゃぁ、美味しいカレーの匂いを嗅ぎながら 味気ない病院食でも食べててくださいねー」 なんと。 「特に知らない方ですが、フォーチュナーにはいつもお世話になるのがアークのリベリスタ。お見舞いに果物詰め合わせをもってきたのですが」 アラストールさん、この人、フォーチュナなんて勤勉な生き物ではないです。 一介のクリミナルスタアです。 「病院食以外駄目だと、ではこのまま駄目にするのももったいないので――」 いきなり、バナナの皮をむき始める。自分で食う気だ。 「よければ皆さんも召し上がれー」 予期せず始まる、カレーパーティ。 「おお、新田。帰りによらせてもらうでござるよ。度数の高いやつが欲しいのでござる。冬支度として。もちろん二人には内緒でござるよ。日本酒と洋酒どっちが――どっちも買って買っていこうかと思うでござるよ」 行きがかり上、連れてこられた虎鐵は酒屋と隠し酒談義をはじめる。 「上半身裸でパンイチだったのでございますか?彼シャツにパンイチだったのでございますか?」 ハウスの庭で育てたお花を持ってきた愛音は、ずずいと七緒に迫ってくる。 てきぱきお茶を入れて、花を生けるのはいいんだが、同じ質問をエンドレスリピートだ。 「イロがいない女に、彼シャツはないでしょうがぁ。彼のじゃないのは、ただのデカイシャツ」 「なんと!」 愛音、大き目の彼シャツ(胸元はきつい)を持ってきたのに、付加価値全否定! しかし、そのくらいでは負けない。 「パンイチは問題じゃない。胸だ。脱ぐとすごいは脱がないからこそ華なのでございます。七緒殿」 「ほう」 「それ着て、記念に写真を一枚」 「事務所通して」 命の保証はしない。 「エリューションカレー置いていかれても困るからいいんだけどさぁ。何、コレ。いじめぇ?」 なぜ、みんなして、うちの米で飯をたいてカレーを食うか。 「お湯を入れるだけでOKな体が温まるお茶を持ってきたです。日本の冬は乾燥するですから水分ちゃんと取って下さいです」 そあらの優しさに涙がこみ上げる。 「――そんなこと言うんだったら――」 もう、風邪ひいてお腹壊したりしないでね、七緒ちゃん。 ● 「曽田女史は相変わらずほっておくと死にかけている訳か。困ったモノだ」 ウラジミールさんは、苦笑する。 皆が帰ったあと、ゆっくりたずねてきたのだ。 「皆が心配するから食事はとった方がいいぞ。」 何かに集中するとそうもいかんだろうけどなと苦笑まじりに話しをして、レーションを壱年分を差し出した。 「数年はもつ食べ物だ、また、見には来るが病気には注意だ」 はぁい。と、七緒は子供のように返事をする。 「――で、今日は楽しかったのだろう?」 話を聞かせてくれるかな? と尋ねる紳士のために、七緒はこっそり撮っていたカメラのフォルダを開いた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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