● ――おい、勘違いするなよ。 俺ぁ、何も飛び道具が嫌いだと言っているんじゃねえ。 敵と距離を置いて戦うのが、死ぬほど性に合わないだけだ。 得物はなんだっていいさ。 ヤッパだろうが、チャカだろうが、好きに使えばいい。 だがよ、衣擦れの音、相手の呼吸――ま、何でもいいや。 そういったアレを感じ取ってこそだろうがよ、戦いなんてのはよ。 手合わせとは、よく言ったもんだ。 俺ぁ、殺るのも殺られるも、直に手を合わせた奴じゃなきゃ嫌だね――。 ● 「剣林派フィクサードから、アークのリベリスタにデートのお誘いらしいですよ」 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を前に、『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)はそう言って説明を始めた。 「アークに挑戦状を叩きつけてきたのは『空閑拳壮(くが・けんそう)』というフィクサードだ。 何と言うか、とにかく近接戦闘に命懸けてる男で、心ゆくまで殴り合いたいんだと」 下手に突っぱねて他所で暴れられても面倒なことになるので、ここは彼の挑戦を受けて戦ってきてほしい、と数史は言う。 「――で、空閑拳壮だが。 『インファイト・フリークス』というアーティファクトを体に埋め込んでいてな。 これの効果で、三メートルを超える距離にいる相手には攻撃がほぼ当たらなくなる。 つまり、嫌でも敵に近付いて戦わなきゃいけないってことだ」 逆に、三メートル以内の距離であれば武器や攻撃方法は問わない。 銃や射撃系のスキルであっても、近接していればいつも通りに使えるということだ。 「敵は、空閑拳壮とその配下で合計八人。当然ながら、全員が近接戦闘に長けている。 遠距離からの攻撃が封じられることも含めて、簡単な相手じゃあない」 幸いというべきか、彼らは『一対一の戦い』にはそこまで拘ってはいないらしい。 もちろん、一対一を持ちかければ喜んで乗ってくるだろうが、こちらが互いに連携を取って戦うことに文句は言わないようだ。 「場所はあちらから指定された廃倉庫だ。 障害物も何もない、正面から戦うことに特化したフィールドになる。 真っ向からぶつかるか、緻密に戦術を組んでいくか――どう戦うかは皆に任せるよ」 説明を終えると、数史はリベリスタ達を見て「どうか気をつけてな」と言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月10日(月)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 廃倉庫では、八人の男達がリベリスタを待っていた。 「ハローハロー、デートのお誘い感謝ですよ」 『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)の挨拶を受け、中央に立つ男――空閑拳壮が口の端を持ち上げる。リベリスタ達はほぼ全員が女性、しかもいずれ劣らぬ美人ばかりだ。 「こりゃまた……随分と綺麗どころが集まったもんだ」 軽い口調だが、拳壮の視線に侮りの色は見えない。『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が、凛とした声で言った。 「心滾る舞踏会にお招き頂き、感謝するわ。 こちらも箱舟の美女揃い、決して貴方達を退屈させないわよ」 巨大な鋼のハンマーを携えた『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)が、「近接戦闘特化のチームとは、とっても素敵ですね」と微笑む。 白兵戦に長け、近距離での打ち合いを望む剣林のフィクサード達。 そして、その願望を実現させる破界器『インファイト・フリークス』。 「望むところよ。相手になろうではないか」 青いドレスと白銀の脚甲を纏った『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)が、真っ向から男達を見据えた。 「接近戦主体の身としては~、とっても楽しみですよ~」 ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)が、チャクラムを両手で弄びながら口を開く。薙刀を手に進み出た『永御前』一条・永(BNE000821)が、堂々と名乗りを上げた。 「我こそは、アークがリベリスタ、奥州一条家永時流三十代目、一条永! 名乗られよ、剣林の兵ども!」 拳壮が「礼を欠いちゃいけねえな」と表情を改める。 「空閑拳壮だ。背負うべき流派はもはや無いが、此度は挑戦を受けて頂き感謝する」 武術家の顔を覗かせた彼に続き、フィクサード達が次々に名乗った。 やり取りを眺めていた『慈愛と背徳の女教師』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)が、婉然と笑う。 「あらあら、相変わらず暑苦しい連中ねえ」 しかし、決して嫌いではない。せっかくの機会、楽しまなくては損というものだろう。 「個人戦でも集団戦でも構わんが、どうする」 「良かったら、一対一で戦いませんか?」 ななせの提案に続き、永が言葉を重ねる。 「まずは腕比べ。それでも残れば決着を付けましょう」 協議の結果、基本は一対一の個人戦となった。回復スキルを除き、手出しは無用。先に五勝した側を勝利とする。 そして、拳壮の希望で追加されたルールが一つ。 勝者同士、互いに望む場合は二戦目を開始して良い。 ただし、この結果は個人戦で四勝四敗になった場合を除いてチームの勝敗に影響しない――。 「これだけの面子、一人で満腹という可能性もあり得るが。俺ぁ欲張りでね」 やる前からチャンスを潰すのは勿体ねえ、と嘯く拳壮に、『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)が鮫の笑みを浮かべた。 「そんじゃ、早速、ダンスとイこう。夜は長いとはいえ、所詮それは有限だ」 命短し恋せよ乙女――。 拳壮を一瞥した後、りりすはナイトクリーク『坂江』を指名する。 「ぐるぐさんも拘りのある人が好きでね。やり合ってくれるというなら喜んで!」 悪戯っぽく笑って拳壮の前に立ったぐるぐに、彼は「存分に闘ろうや」と答えた。 それを皮切りに、リベリスタ達は次々に対戦相手を指名する。 「そちらの闘士さ~ん、私の相手をして貰えませんか~?」 棍を手にした覇界闘士『苗村』に向けて、ユーフォリアが挨拶代わりにチャクラムを投擲した。 続いて、アイリがソードミラージュ『具塚』、ななせがダークナイト『間枝』、永がデュランダル『相上』、ティアリアがクリミナルスタア『灰尾』をそれぞれ相手取る。 「――私に見初められた事、光栄に思いなさい!」 ヘビーレガース装備の覇界闘士『大門』と相対したミュゼーヌが、不敵に笑った。 ● 対戦カードが決まったのを見て、拳壮が『インファイト・フリークス』を発動させる。 遠距離からの攻撃を阻む不可視の力場が、全員を覆った。 「さぁ……ゆくぞ!」 夏の海を思わせる青のドレスを靡かせ、アイリが具塚に肉迫する。瞬く間に最高速に達した彼女は、愛剣“カラドボルグ・レプリカ”に音速を纏わせ、淀みなき斬撃を繰り出した。 先手を取られた具塚が、逆手の防御用短剣で辛くも直撃を防ぐ。心惑わす幻を伴った彼の反撃を、アイリは剣でしっかりと受けた。 同じく、速度で坂江を圧倒したりりすが、彼の眼前で音速の二刀を振るう。決して止まらぬ連撃が、初手から坂江の足を封じた。 ぐるぐが鋭く床を蹴り、拳壮の懐に飛び込む。 「お望みどおり、零距離で闘りあいましょうや!」 射撃を除くあらゆる技を仕込み得るナイフと、あらゆる銃撃に対応し得る銃が、同時に唸りを上げた。 人中にこめかみ、鳩尾――急所のみを的確に狙い、次々に攻撃を浴びせていく。 「いいね、実に好みだ」 ダメージに揺らぎながらも半歩の後退で踏み止まった拳壮が、虎の目を嬉しげに細めた。お返しとばかり、破壊の気を込めた掌打を零距離から叩き込む。 一歩も退かぬ構えで耐えるぐるぐの全身を、ティアリアが光輝く鎧で包みこんだ。 「気合入れてイってらっしゃい?」 それは、最も手強い敵と戦う仲間に対する、せめてもの激励。 自らに血の掟を刻む灰尾に向き直り、彼女は薄い笑みを浮かべる。 「さあ、こちらも楽しみましょう?」 手にした鉄球の鎖が、じゃらりと音を立てた。 「さぁ、気兼ねなく心置きなく、武を舞いましょう」 マスケット風の中折れ式リボルバーを携えたミュゼーヌが、肩に羽織ったナポレオンコートの裾を優雅に翻す。 彼女は黒銀の脚に全身の力を込め、渾身の蹴りを大門に見舞った。 「――成る程、あんたが『鋼脚のマスケティア』か」 重い一撃を受け止め、大門が納得したように口を開く。 「あら、名を知られていたとは光栄ね」 「アークで派手に動いてりゃ、黙ってても名は売れるさ」 雪崩の威力を秘めた回し蹴りが、咄嗟に飛び退いたミュゼーヌの肩口を掠めた。 白い翼を羽ばたかせるユーフォリアが、流れる水の構えを取る苗村の背後に回り込む。 「真正面からのぶつかり合いは苦手ですからね~。私の得意分野で戦わせて頂きます~」 近接距離ギリギリの間合いから、彼女は両手で操る二個のチャクラムを閃かせた。左右で対をなす円形の刃が、あらゆる角度から苗村に襲い掛かる。 漆黒の闇を無形の武具として纏った間枝に、ななせが「よろしくお願いします」と小さく頭を下げた。触覚のように飛び出した二房の髪が、ぴょこりと揺れる。 「せっかくの機会ですので、思いっきりの打撃戦を楽しみましょう」 彼女は“Feldwebel des Stahles(鋼の軍曹)”と名付けた鎚を軽々と振り上げると、怒涛の連続攻撃を繰り出した。小柄な体格に見合わぬ重い打撃に、間枝が目を見張る。 相上と向かい合った永が、やや細身の刀身を持つ静型の薙刀“桜”を流れるように構えた。 それは、剣も、槍も、柔も学んだ彼女の手に最も馴染んだ得物。 長さと重さ、時に相手の力すら乗せて敵を斬り殺す、紛れも無き兵器――。 「小細工無用、尋常の太刀打ちは武者が誉れ――いざ、参る!」 高らかに声を上げた永に、相上が強引な踏み込みから斬馬刀の一撃を見舞う。彼女はその打ち込みを薙刀で受け流すと、自らの闘気を雷に変えて手痛い反撃を浴びせた。 ● 雪崩の如き勢いで、拳壮がぐるぐに拳を叩き付ける。光の鎧に攻撃を跳ね返されようと、躊躇い一つ見せない。 「そこそこ拳闘士さんとの戦いは積んでます、特に雪崩落とされまくった!」 降り注ぐ乱打を紙一重で見切り、ぐるぐがさらに前に出る。 決して踵を後ろに下げない――それこそ、彼女がこの戦いで自らに課したルールだ。 「強欲さでは負ける気ないのよ」 ぐるぐの狙いは、まだ見ぬ拳壮の隠し技。 手に入れるためには、それを彼から引き出した上で盗まねばならない。簡単に、倒れるわけにはいかないのだ。 伝達処理を向上させた脳が、最適とされる攻撃タイミングを瞬時に弾き出す。一分の隙もない打撃が、拳壮の急所を鋭く穿った。 低空を軽やかに舞うユーフォリアを狙い、苗村が雷撃を纏った棍を激しく回転させる。彼女は激流に逆らうことなく、しなやかに揺れる柳の動きで打撃の威力を巧みに受け流した。 「その一発~、そのままお返ししますよ~」 すかさずチャクラムを投じ、カウンターで苗村の肌を斬り裂く。 周囲の神秘を取り込んで力を高め、全身を光の鎧に包んだティアリアが灰尾に迫った。 「ふふっ……ホリメだと思って油断してると、痛い目に遭うわよ?」 鉄球の一撃を囮にして、彼の首筋に牙を立てる。眉を顰めた灰尾がフィンガーバレットの銃口をティアリアに押し当て、早撃ちで彼女の脇腹を抉った。 その攻防を視界の隅に映したミュゼーヌが、リボルバーマスケットを大門に向ける。 「あら、銃も使って良いの? じゃあ――遠慮なく!」 零距離から放たれた弾丸が、大門の鳩尾を容赦なく抉った。負けじと繰り出された回し蹴りを受け、ミュゼーヌの身体が破壊の気に揺らぐ。 彼女にとって、剣林派フィクサードは因縁の相手だ。 個人的な感情としては、憎く思う気持ちもあるが――それでも。 彼らの裏表なく清々しい脳筋っぷりは、決して嫌いじゃない。 アイリと具塚の剣が、鋭く交錯する。 スピードではアイリが上回り、防御の技や耐久力では具塚が勝る。しばらく一進一退の攻防が続いた後、光の飛沫を散らす無数の刺突がアイリを捉えた。 鮮やかな青のドレスに、鮮血の赤が加わる。今にも崩れそうな身を、アイリは運命を代償に支えた。 「まだまだ私は未熟者よ。だが、そなたも歯ごたえのない相手では満足できまい」 淡く青みを帯びた銀の剣を構え直し、反撃に転じる。 「――期待にこたえよう!」 彼女は瞬時に集中を高めると、さらに加速して目にも留まらぬ斬撃を浴びせた。次々に繰り出される音速の刃が、具塚の動きを封じ込める。 だが、フィクサード達は平均的に状態異常からの回復が早い。麻痺から立ち直った坂江が、破滅のオーラを纏った蛇腹剣でりりすの側頭部を貫いた。 「あーめんどくせぇ!」 こめかみに痛打を食らったりりすが、鮮血を滴らせて叫ぶ。 苦手とする『命中度外視の高威力型』を克服すべく選んだ相手ではあったが、いちいち考えながら闘うなど性に合わない。 「悪い。ちょっと考え事してた。こっから本番な?」 致命傷を己の運命で塞ぎ、二刀を低く構えて急所をガードする。灰尾と激しく打ち合っていたティアリアが、それに気付いて詠唱を響かせた。 「っと、あなたと遊ぶのに熱中するところだったわね」 聖なる神の息吹を呼び起こし、仲間達の体力を取り戻す。 相上の斬馬刀から繰り出される“生死を分かつ一撃”を受け止めた永が、果敢に攻め続ける敵手を見て静かに口を開いた。 「本当に、剣林らしいと申しますか。なれど……好きですよ、左様な心意気は」 全身に漲らせた闘気を雷に変換し、“桜”の号を持つ薙刀に伝える。己をも傷つける捨て身の斬撃が、相上に深い傷を刻んだ。 続いて、暗黒の魔力を帯びた間枝の槍に耐えたななせが、“Feldwebel des Stahles”に全身のエネルギーを込める。 精神を穿たれようが、状態異常を受けようが、気合で負けはしない。 「これがわたしの、全力全開ーっ!」 巨大なハンマーの一閃が、間枝を勢い良く吹き飛ばした。 ● 鉄球を自在に操りながら、ティアリアが「インファイト、嫌いじゃないわよ」と灰尾に語りかける。 「マジックアローでは、鉄球をぶつける感覚には勝てないものね」 灰尾に叩き込まれた鉄球が、神秘の打撃で彼の全身を軋ませた。 「スリルがいいのよね。楽しまなきゃ損じゃない?」 鎖を引きつつ微笑むティアリアに、苦痛に大きく顔を歪めた灰尾が「同感だね」と答える。彼は間合いを詰めると、両手のフィンガーバレットを彼女に押し当てて引き金を絞った。 銃声が響き渡り、ティアリアの身体を無数の弾丸が立て続けに撃ち抜く。運命引き寄せること叶わず、彼女はそのままゆっくりと床に倒れた。もはや、リベリスタ達に癒し手は居ない。 拳壮の掌打が、ぐるぐを体内から揺さぶった。 こみ上げる血を飲み込み、彼女は運命を燃やして笑う。 痛みに挫けず、逆境に屈さず、純粋に闘いを楽しむ者の表情。 「たかが皮一枚、だけどその皮一枚で牙を鋭くするのが盗人なのよ――」 左右で色の異なる瞳は、拳壮の一挙一動を捉え、貪欲に盗み取らんとする。 虎穴に入りて研ぎ澄まされた狐の牙が、とうとう拳壮の喉元に喰らいついた。 「ほら、こっからが本番でしょう? 空っぽになるまで遊びましょうよ」 運命を削り踏み止まった拳壮が、呵々と笑う。 ぐるぐの狙いを知りつつも、彼は彼女の誘いに乗った。 「リクエストには、応えないとなぁ!」 右手の指を獣の爪を思わせる形に曲げた拳壮が、掌打をぐるぐの胸に叩き込む。 彼はそのまま指を食い込ませると、強靭な握力をもって皮膚を裂き、肉を引き千切った。 獣牙爪印――虎の爪と牙を受け、ぐるぐの胸元に血の赤い花が咲く。 彼女が倒れた瞬間、坂江を仕留めたりりすが拳壮を見た。 「闘るか、『人間失格』」 虎と鮫が、獣の笑みを交わす。無論、りりすに断る理由は無い。 「ヤるんなら、やっぱ白兵だろ」 近接戦闘に特化した者同士の第二戦が幕を開ける中、それを視界に映したミュゼーヌが微笑を浮かべた。 「インファイト、良いわね。私好みだわ――」 燃え盛る炎を纏った大門の蹴りを掻い潜り、その勢いをバネに跳ぶ。 「私も、足で直接叩き伏さないと気が済まなくってね!」 すらりとした黒銀の鋼脚から繰り出された強烈な踵落としが、大門を沈めた。 銀の脚甲でステップを踏み、ドレスの裾をふわりと舞わせるアイリが“カラドボルグ・レプリカ”を果敢に振るう。しかし、ティアリアを欠いたことで、耐久力に劣る彼女も窮地に陥りつつあった。 音速の斬撃を辛くも凌いだ具塚が、二条の剣閃でアイリを貫く。 それでもなお、アイリは『舞台』に踏み止まろうとしたが――気紛れな運命(ドラマ)は、この時、彼女に恩寵をもたらさなかった。 アイリが力尽きると同時に、裂帛の気合とともに振るわれた相上の斬馬刀が永の肩口に深く食い込む。 身に纏ったセーラー服が、たちどころに鮮血に染まった。 「南無三!」 運命の加護で体勢を立て直し、茎に桜の家紋を刻んだ薙刀を再び構える。 勝機は一瞬。己が身を傷つけることも厭わず、永は雷に変換した闘気を込めて薙刀を一閃させた。 相上が、血飛沫を上げて床に崩れ落ちる。 「先に地獄で待っていなさい。またお会いすることもございましょう」 敵手の亡骸に向けて、彼女は厳かに言った。 ● ななせが間枝に牙を立て、自己再生で回復が追いつかぬ傷を癒す。 赤き魔具と化した槍が、お返しとばかり彼女の脇腹を抉った。 致命の呪いに蝕まれつつも、ななせは一歩も退かない。 ただ、今は――目の前の相手を殴り飛ばすことのみに専念する。 巨大な鋼の鎚に破壊のオーラを纏わせるななせに、一切の迷いは無い。 「今日は最後まで思いっきり、ですっ! いくよ『軍曹』っ!」 “鋼の軍曹”が、雪崩の如き勢いで振り下ろされる。強烈極まりない打撃の前に、間枝がとうとう倒れた。 「そろそろ~、私も決めましょうか~」 苗村の魔氷拳を素早い身のこなしでかわしたユーフォリアが、彼の死角を突いてチャクラムを操る。 変幻自在の軌道を描く円刃の強襲で苗村が我を失った隙を、彼女は見逃さなかった。 手元に戻ったチャクラムを指先で踊らせ、幻惑の武技を展開する。 美しき幻を重ねた純白の翼が羽ばたいた瞬間、全身を切り刻まれた苗村が床にくずおれた。 八戦中、アークの五勝三敗――チームとしての決着は既についたが、もう一つの闘いは未だ終わらない。 りりすと拳壮、二人の獣は互いに退くことなく、零距離の攻防を繰り広げている。 傷ついた体を起こし、アイリはその勝負を真剣に見詰める。 技の模倣は叶わずとも、得られるものはある筈だ。 「闘いはこうでなきゃな」 「同意だ。そうじゃなきゃ喰った気がしない」 拳壮の正拳突きを凌いだりりすが、さらに一歩踏み込んで言葉を続ける。 「狙撃に命かけてるヤツも知っている。敬意も払う」 「拘る奴は好きだぜ、得物に関係なくな」 「「だが――」」 二人の声が、期せずして重なった。 「それと同じくらい、僕は白兵が好きなのさ」 「やっぱ、俺ぁコレしかねぇのよ!」 血塗られた音速の二刀――蹂躙と暴食を孕んだ鮫の牙と、赤き印を刻む虎の爪が交錯する。 結果は、相打ち。 二人は互いに深手を負い、相次いで床に倒れ込んだ。 「……これ以上は贅沢過ぎるか」 膝を突き、上体を起こした拳壮が、ミュゼーヌを始め、今もなお健在のリベリスタ達を眺めて悔しげに呟く。 アークに負けた事よりも、全員と戦えなかった事が口惜しいといった風情だ。 拳壮は死んだ仲間の回収を命じつつ、「ま、楽しかったぜ」と遺恨無く笑う。 「『騙し絵』の嬢ちゃんも、また闘ろうや。簡単には盗ませねぇけどな」 彼はぐるぐにそう言い残すと、よろめきながら立ち上がって踵を返した。 「また、どこかで楽しめそうね?」 再戦を予感させるティアリアの言葉が、今宵の“喧嘩”を締め括った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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