<ヒノマル戦争>琵琶湖ゲート制圧作戦
●琵琶湖ゲート
中 恭介(nCL2000002)は集まったファイヴ所属覚者たちの顔ぶれを見て頷いた。
「皆よく集まってくれた。ヒノマル陸軍と戦争状態になっていることは知っているな?
初めて関わるメンバーのために説明するが、現在本拠地同時襲撃に備えて重要拠点の制圧や防衛を進めている。そして互いの条件を通すため、チーム戦の勝敗で制圧の是非を決める協定が結ばれている。
今回はヒノマル陸軍がファイヴの本拠地五輪大学へ攻め入る際に使用する拠点のひとつ、『琵琶湖ゲート』を制圧する」
琵琶湖ゲートは、ファイヴが周辺調査中に発見した霊的結界である。
一年前の京都襲撃作戦の際、琵琶湖周辺の霊的結界を潜って秘密裏に京都へ襲撃をしかけた形跡を見つけ、再び利用できないように制圧するのが目的だ。
「ヒノマル陸軍はこの結界を更に強化して、より強力な兵力を送り込む準備を進めているようだ。こちらの守りを固めるためにも、琵琶湖ゲートは抑えておきたい。皆、頼んだぞ」
●琵琶湖競艇場、氷上決戦仕様
普段は大勢の客がレースに賑わう琵琶湖競艇場は、一転してしんと静まりかえっていた。
それだけではない。
水場を四角く仕切ったレースエリアには砕くのも難しいほど分厚い氷がはり、巨大な広場と化していた。
その中央に浮かぶは残虐大帝。ヒノマル陸軍協力団体が一つ、残虐帝国の古妖である。
「フハハハハ、我が人間どもの戦争に再び関わることになろうとは。暴力坂も相変わらぬ男よ……」
巨大な仮面の下で笑う残虐大帝。
そのそばでは、真っ赤な巨漢が地面の氷を殴りつけていた。
部下のひとりヤツアタリである。
「クソオ! クソオ! ファイヴめ、カクセイジャーめぇ! 俺が負けたのはあいつらのせいだ! コノオ!」
「ヤツアタリさん。復活したばかりで暴れないでくださいな。まだ身体が弱いままですぞ」
「その元気、ああ妬ましい妬ましい……」
ネタミとヒガミもスタンバイしている。勿論、同じく復活したサカウラミもだ。
「罪もない人間どもを恐怖に陥れることができないのは残念だが……戦争となれば残虐の限りをつくせる。フフフ、楽しみよのう」
「「待てぇ!」」
そろった声がこだまする。
観客席から交差宙返りで飛び込むは、五人の戦士プラスワン。
「カクセイレッド!」
「カクセイブルー!」
「カクセイイエロー!」
「カクセイグリーン!」
「カクセイブラウン!」
「わしじゃ!」
「「五行戦隊、カクセイジャー!」」
五人で一斉にポーズをとるカクセイジャー。
レッドがびしりと残虐大帝を指さした。
「残虐帝国、お前たちの好きにはさせないぞ!」
「フン、何を言おうと貴様らは今や部外者。この戦争に首を突っ込もうというのか?」
「部外者じゃあないぞ」
ブルーは刀を抜き、不敵に笑った。
バルカン砲を構えるグリーン。
「僕たちはファイヴに協力する。僕らのピンチを救ってくれたんだ、今度は僕らが助ける番だよ!」
「ええい……こざかしい!」
残虐大帝はぶわりと空中に浮かび上がると、虚空から無数の『ザコ』という簡易兵隊を呼び出した。
「ファイヴもろとも始末してくれる!」
中 恭介(nCL2000002)は集まったファイヴ所属覚者たちの顔ぶれを見て頷いた。
「皆よく集まってくれた。ヒノマル陸軍と戦争状態になっていることは知っているな?
初めて関わるメンバーのために説明するが、現在本拠地同時襲撃に備えて重要拠点の制圧や防衛を進めている。そして互いの条件を通すため、チーム戦の勝敗で制圧の是非を決める協定が結ばれている。
今回はヒノマル陸軍がファイヴの本拠地五輪大学へ攻め入る際に使用する拠点のひとつ、『琵琶湖ゲート』を制圧する」
琵琶湖ゲートは、ファイヴが周辺調査中に発見した霊的結界である。
一年前の京都襲撃作戦の際、琵琶湖周辺の霊的結界を潜って秘密裏に京都へ襲撃をしかけた形跡を見つけ、再び利用できないように制圧するのが目的だ。
「ヒノマル陸軍はこの結界を更に強化して、より強力な兵力を送り込む準備を進めているようだ。こちらの守りを固めるためにも、琵琶湖ゲートは抑えておきたい。皆、頼んだぞ」
●琵琶湖競艇場、氷上決戦仕様
普段は大勢の客がレースに賑わう琵琶湖競艇場は、一転してしんと静まりかえっていた。
それだけではない。
水場を四角く仕切ったレースエリアには砕くのも難しいほど分厚い氷がはり、巨大な広場と化していた。
その中央に浮かぶは残虐大帝。ヒノマル陸軍協力団体が一つ、残虐帝国の古妖である。
「フハハハハ、我が人間どもの戦争に再び関わることになろうとは。暴力坂も相変わらぬ男よ……」
巨大な仮面の下で笑う残虐大帝。
そのそばでは、真っ赤な巨漢が地面の氷を殴りつけていた。
部下のひとりヤツアタリである。
「クソオ! クソオ! ファイヴめ、カクセイジャーめぇ! 俺が負けたのはあいつらのせいだ! コノオ!」
「ヤツアタリさん。復活したばかりで暴れないでくださいな。まだ身体が弱いままですぞ」
「その元気、ああ妬ましい妬ましい……」
ネタミとヒガミもスタンバイしている。勿論、同じく復活したサカウラミもだ。
「罪もない人間どもを恐怖に陥れることができないのは残念だが……戦争となれば残虐の限りをつくせる。フフフ、楽しみよのう」
「「待てぇ!」」
そろった声がこだまする。
観客席から交差宙返りで飛び込むは、五人の戦士プラスワン。
「カクセイレッド!」
「カクセイブルー!」
「カクセイイエロー!」
「カクセイグリーン!」
「カクセイブラウン!」
「わしじゃ!」
「「五行戦隊、カクセイジャー!」」
五人で一斉にポーズをとるカクセイジャー。
レッドがびしりと残虐大帝を指さした。
「残虐帝国、お前たちの好きにはさせないぞ!」
「フン、何を言おうと貴様らは今や部外者。この戦争に首を突っ込もうというのか?」
「部外者じゃあないぞ」
ブルーは刀を抜き、不敵に笑った。
バルカン砲を構えるグリーン。
「僕たちはファイヴに協力する。僕らのピンチを救ってくれたんだ、今度は僕らが助ける番だよ!」
「ええい……こざかしい!」
残虐大帝はぶわりと空中に浮かび上がると、虚空から無数の『ザコ』という簡易兵隊を呼び出した。
「ファイヴもろとも始末してくれる!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.戦闘に勝利する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
この特殊氷ステージでは、通常歩行するユニットは全て『反応速度、物特防御、回避補正、命中補正』に足場ペナルティをうけます。
対処の仕方に応じてペナルティが軽減されます。
敵ユニットは以下の通り
・『残虐帝国大帝』残虐大帝:古妖:飛行能力あり
→残虐帝国のボス。敵全体を薙ぎ払う強力な攻撃がある。他は詳細不明、
・『怪人』ヤツアタリ:古妖
→近列物理攻撃が得意。一度倒され復活したて。戦闘力は前の半分程度。
・『怪人』サカウラミ:古妖
→後衛ヒーラー。回復スキルが豊富。一度倒されて復活したて。戦闘力は前の半分程度。
・『怪人』ネタミ:古妖
→中衛ジャマー『特遠単【呪い】【不運】』の技が強力。前回よりも強化されている。
・『怪人』ヒガミ:古妖
→中衛ジャマー『特遠列【弱体】【鈍化】』の技が強力。前回よりも強化されている。
・『怪人』ザコ×10:能力の低い文字通りの雑魚。棍棒で戦う。
●味方戦力
今回は味方の戦力が加わっています
・レッド:火行暦
→前衛アタッカー
・ブルー:水行暦
→前衛アタッカー・ヒーラー
・グリーン:木行暦
→後衛アタッカー・BSサポーター
・ブラウン:土行暦
→後衛体術式ヒーラー・こまごましたサポーター
・イエロー:天行暦
→前衛ディフェンダー
==============================
・補足ルール1
EXプレイングにてこちらからの攻撃アクションを投票できます。
ヒノマル陸軍のもっている施設や侵攻に必要なルートの中で、『攻撃したい場所』をEXプレイングに書いて送ってください。
『3票以上』ある選択肢を票が多い順に中恭介が採用していきます。
票が固まらなかった場合全て無効扱いとなり、中恭介が適当に選びます。
投票は本戦争期間中ずっと有効です。
・補足ルール2
ヒノマル陸軍に所属する主要覚者の能力は殆どが未解明です。
しかし戦闘の中で能力を探り出すことで今後の依頼にその情報を反映することができます。
・補足ルール3
性質上『FH協定』をこちらから一方的に破棄することが可能です。
ただしそのためには『依頼参加者全員』の承認を必要とします。
協定を破棄した場合、互いに無秩序状態になり、捕虜の獲得や兵器の鹵獲、リンチによる完全殺害が可能になる反面、民間人や協力団体にも多大な被害が出ます。
※エネミースキャンについての追加ルール(当依頼限定)
ターンを消費してスキャンに集中したり、敵の能力を深く推察したり、調査する部分を限定したり、数人で分担したりといったプレイングがあるとスキャンの判定にボーナスをかけます。
・FH協定
ファイヴとヒノマル陸軍の間に交わされた戦争上の協定です。
戦闘に関係の無い民間人に被害を出したくないファイヴ。
兵器製造など戦争の準備を邪魔されたくないヒノマル陸軍。
双方の条件を満たすものとして、戦争におけるルール、つまり協定を結んでいます。
双方『ほぼ同格』の総合戦闘力を持ったチームを編成し、民間人に直接的被害の出ない場所で戦闘を行なうこと。
またファイヴが所属覚者を長期拘束できないため、ヒノマル側・ファイヴ側双方どちらが敗北した場合でも捕虜獲得や兵器鹵獲をせず、撤退を許すこと。
こうしたチーム戦で互いに要所を制圧・もしくは奪還し、来たるべき決戦の日に両者同時に拠点を襲撃・及び防衛し合うものである。
互いにルールの曲解や、逆手に取った悪用はしないことで合意しています。
==============================
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年11月17日
2016年11月17日
■メイン参加者 6人■

●残虐帝国の野望
カクセイジャーと残虐帝国が氷上で対峙する中、観客席より飛び込んでくる人影があった。
宙返りをかけ、拳を地面に叩き付けるように着地する『花守人』三島 柾(CL2001148)。「硬い氷だ。見事なものだな」
その姿に、残虐大帝とカクセイレッドが同時に反応した。
「お前は……!」
「柾!」
「よう、カクセイジャー」
観客席で立ち上がって腕をぶんぶん振るざーちゃん。
「おっ、おまえらなどお呼びでないわ! 残虐帝国なぞワシが蹴散らしてく――うまうまあまーい」
横から飴ちゃん突っ込まれて、ざーちゃんはついつい笑顔になった。
ふんわり笑う『彼誰行灯』麻弓 紡(CL2000623)。
その左右に立つ賀茂 たまき(CL2000994)と『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)。
「なぜ争いがここまで大きくなってしまったのでしょうか……。少し、胸が痛いです」
「大丈夫」
しゅんとするたまきを、紡がやんわり慰めている。
覚醒し、衣装をチェンジさせるラーラ。
「少しでも敵の戦力を見極めておきたいですね。皆さん。準備はいいですか」
「いいよ!」
プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)がお手製の背景を背負って現われた。
「生まれたときから王子! プリンスオブグレイブル! 悪い民のみんな、こんにちは!」
「「こんにちはー!」」
「挨拶なんかするなっ」
うっかり反応したザコたち。をれを殴りつけるヤツアタリ。
背景を片付けつつ、『ファイブレッド』成瀬 翔(CL2000063)が前に出た。
「残虐帝国!」
びしりと指を突きつけ、翔はスマートホンを取り出した。
「今度こそ決着をつけてやる! 変身!」
翔は高くジャンプすると、バトルフォームへとチェンジした。
「小癪な。貴様ら全員処分してくれるわ! やれぃ!」
黄金の杖を掲げる残虐大帝。ザコやヤツアタリたちが一斉に吠え、走り出した。
同じく走り出すカクセイジャーと翔たち。
大量のザコたちと混じり合い、それぞれの格闘に入り始めた。
ブロック対抗では相手が上だ。ザコたちによるファーストウェイブをどう処理するかが、この戦いの形勢を決定づけると言っても過言では無い。
紡は翼を広げ、1メートルほど飛び上がるとザコたちの棍棒を回避。
ステッキの先端についたスリングショットを天空へ向けて放つと、キラキラとした粒子を降らせた。
「よし――一気に蹴散らすぞ!」
輝きを身体に受けて、柾はプリンスへやたまきへと目配せをした。
「待って今スケート靴はいてる」
「早くしろ!」
「はいたはいた!」
「い、いきます!」
柾は拳にエネルギーを溜め、たまきは大きな白封筒から大量の護符束を引っ張り出し、プリンスはミュージックプレイヤーの再生スイッチを入れた。
「ハハッ悪い子のみんな、王子オンアイスだよ!」
プリンスはスケートダッシュからのスピンジャンプを繰り出し、ハンマーからの衝撃波をまき散らした。
と同時にたまきは護符を大量に空中に投げ、それらが巨大な壁となって展開。えいっと両手で押し込むと、ザコたちを一斉に撥ね飛ばした。
攻撃のチャンスだ。
柾は両手の拳に溜めたエネルギーを連続パンチによって発射。
チップに乗って解き放たれたエネルギーはショットガンのようにザコたちを打ち払った。
「こんな所か……ラーラ!」
「はいっ」
一方のラーラは後方に下がり、魔方陣を集中展開していた。
両目の周りに小さな魔方陣を大量に展開し、まるで複合レンズのようにがちゃがちゃと回転させては敵のスペックの照合を進めている。
「ヤツアタリ、サカウラミ……ネタミ、ヒガミ……スキャンが完了しました! 行けます!」
「よっしゃ!」
翔はスマホのアプリを起動。スワイプで印をきると、天空へと掲げた。
「天の怒りをくらいやがれ!」
空に無数の光が生まれ、敵へと降り注ぐ。
ザコたちは一斉に吹き飛び、消滅していった。
「ザコめ! こいつらのせいでうまく戦えねえんだ! クソッ! クソォ!」
足を踏みならすヤツアタリ。
たまきはそんな彼と向き合い、掛け軸用の巻き筒を取り出した。
留め具を回してひもを解く。
と同時に、ブラウンと紡が左右に並ぶ。
「たまきちゃん、がんばれー」
ステッキをくるりと回すと、たまきの身体に光の粒子がまとわりつく。
「おじさんも応援してるからね」
更にブラウンがたまきの身体にエネルギーの壁を形成していく。
たまきは頷くと、ヤツアタリめがけて走り出した。
「仲間を作りやがって、俺が勝てないのはそいつらのせいだ!」
「その気持ちは大事なものです。けど、使い方は間違っています!」
打撃をエネルギー壁で受け流し、掛け軸を開いて地面に投げる。
すると掛け軸に描かれた岩が現実に飛び出し、ヤツアタリの身体を貫いた。
「二度も……クソッ、チクショオオオオ!」
爆発四散するヤツアタリ。
「ヒイイ、あのヤツアタリさんがまた」
「あの強さ、ねたましいィ……!」
ネタミとヒガミがそれぞれ手を翳すと、たまきたちの身体がどっと重くなった。
まるで全身に鉄の鎖を巻かれたような感覚に、おもわず膝を突くたまきたち。
「こ、これは……」
「ネタミとヒガミの新しい力です。ネタミは多くの人の足を止め、ヒガミは多くの人の心を重くします。これを受け続ければ人は自滅してしまうんです」
スキャンを終えたラーラの説明を受けて、イエローとグリーンが振り向いた。
「このままじゃ戦えないんだな」
「グリーン、清廉珀香だ!」
「そうか……!」
翔に呼びかけられ、グリーンは手榴弾のようなものを放り投げた。
緑色の爆発が起きて皆の身体が軽くなる。
「よし、今だ……!」
翔はアプリ画面で印をきり、眼前に翳す。
「いけ、雷獣! こいつらをまとめてしびれさせてしまえ!」
スマホから飛び出したホログラムの虎が駆け抜け、ネタミとヒガミに激しい電撃を与えていく。
「ヒイイ! か、からだが……!」
「しびれる……!」
よたよたとする二人に、プリンスとラーラが同時に構えた。
「同時にいきましょう」
「王子ファイヤーダンスだね!」
プリンスのイイ笑顔が空中に描かれ、その周囲にラーラのおまじないが特殊文字で描かれていく。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
「アンド、余!」
巨大魔方陣を突き抜けて飛び出すプリンス。
炎に包まれたプリンスがハンマーアタックをしかけ、ネタミとヒガミをまとめて空の彼方へと吹き飛ばした。
「し、しまった……おのれファイヴめ! カクセイジャーめ!」
慌てて回復を始めるサカウラミだが……。
「今更巻き返そうとしたって遅いぜ!」
「残る幹部はお前だけだ」
「覚悟しろ」
レッドとブルー、そして柾が剣と拳にエネルギーを溜め、同時に突撃した。
クロススラッシュでX字に切り裂かれたサカウラミ。そのクロスポイントに拳を叩き込む柾。
彼の拳が激しく発光し、サカウラミを大爆発させた。
「お、おのれええええええええ!」
灰となって散っていくサカウラミ。
「ムゥン……」
ゆっくりと顎を上げる残虐大帝。
柾はしっかりと構えなおした。
「今度は負けない。そして、逃がさない」
「よかろう。カクセイジャー、そしてファイヴよ。我直々に手を下してやる……!」
残虐大帝は黄金の杖を地面に突き立てると、暗黒の稲妻を生み出した。
●残虐大帝
「帝王の力を思い知り、ひれ伏すが良い」
「なにが帝王だ!」
「叩ききってやる」
レッドとブルーが飛びかかり、全く隙の無いコンビネーションアタックを繰り出した。
一切の打ち合わせもなく互いに相手の死角を作り合い、的確に最大の打撃を打ち込む連携プレイだ。
しかし。直撃した筈の剣は残虐大帝の鎧によって弾かれた。
接触した途端、まるで感電したかのように暗黒の稲妻がはしり、レッドとブルーが打ち払われたのだ。
「ぐわっ!」
「二人とも!」
「ここは任せるんだな!」
グリーンとブラウン、そしてイエローが飛び出し、残虐大帝を取り囲む。
「グリーンバルカン!」
「たがやしアタック!」
「ゴールデンプレミアムなんだな!」
三方向からの一斉攻撃。
しかし。
残虐大帝はまるでこたえている様子がない。直立姿勢のままびどうだにしなかった。
「フン、そんなものか」
残虐大帝は杖を振りかざすと暗黒の稲妻をまき散らす。
「うわあっ!」
一斉に吹き飛ばされる三人。
カクセイジャーたちはそろって氷上を転がり、倒れたまま呻いていた。
「な、なんて力なんだ……」
「カクセイジャーさんっ」
駆け寄るたまきとラーラに、ブラウンは小さく首を振った。
「おじさんたちはもうダメだ。あとは、頼むよ……」
気を失うブラウン。
彼を寝かせて、ラーラは立ち上がった。
「敵戦力を削る所までは順調でした。しかし逆に言えば、敵戦力を削ることばかり考えてカクセイジャーさんたちとの連携をおろそかにしていたのかもしれません」
「残虐大帝さんを倒すには……私たちだけの力じゃ足りないんですね」
「いや、諦めるのはまだ早いぜ!」
翔が叫んだ。
「ダメージは蓄積してる筈だ。俺たち六人の力を合わせれば、大きな力になる!」
「……はい!」
たまきは御朱印帳を展開すると、身体に黄金の輝きを纏わせた。
ラーラと逆の方向に走り、残虐大帝を囲みにかかる。
立ち方を固定し、滑る勢いに身体をまかせて魔方陣を展開するラーラ。ブレる照準を残虐大帝にあわせていく。
一方でたまきは、動きの悪い足場に苦労しながらも残虐大帝に体当たりを仕掛けた。
同時攻撃。
が、レッドたちと同じく暗黒の稲妻に打たれてはじき飛ばされる二人。
身体が強くしびれるが、翔が素早くスマホをスワイプ。演舞・舞音を展開していた。
「これでかなり楽になる筈だ。畳みかけろ!」
「了解っ」
柾は重心を保ちながらダッシュ。残虐大帝に殴りかかった。
手のひらで止められるパンチ。
暗黒の稲妻が身体を駆け抜けるが、柾は歯を食いしばってこらえた。
うつ伏せのラーラが起き上がって叫ぶ。
「まともに打ち合ってはだめです! 残虐大帝にはカウンターや反射……いいえ、強カウンターや強反射がかかっています。それに恐らく、自ら放つ稲妻には……」
「黙れぃ!」
杖を掲げる残虐大帝。
暗黒の稲妻が周囲に放たれ、柾やラーラたちを打った。
ラーラの魔方陣やたまきを覆っていたエネルギーシールドが消え去り、柾は身体の自由がきかなくなって膝を突いた。
「解除効果に、麻痺効果だと……」
「憶測ですが封印効果も……」
「さすがに、ラスボスってことか」
同じく膝を突いた翔が、頬に流れた血をぬぐった。
肩を揺すって笑う残虐大帝。
「フハハハハ! 脆弱な人間たちよ。どうだ、降参する気になったか」
「冗談じゃ……」
柾は顔を上げ、ふとあることに気がついた。
残虐大帝の鎧に一部だけ傷が付いているのだ。
柾の必殺技の命中によってついた傷だが、たまきやラーラの攻撃が蓄積してできたものでもあるようだ。
「麻弓、王子、あそこを狙えるか」
「殿?」
プリンスに填気を施して貰った紡は、プリンスの横顔を見た。
いい笑顔で親指を立てるプリンス。
「任せて!」
紡は頷くと、再び飛行。スリングショットにエネルギーの弾を込めると、プリンスの後頭部めがけて放った。
スケートダッシュをかけるプリンスの衣装がきらめき、外骨格が豪華な衣装に包まれた。
「ご覧ください余の表現力! 王子ブリザードオロシ!」
高速回転によって繰り出される強烈なハンマーアタック。
残虐大帝へ直撃するが、やはり暗黒の稲妻によって打ち払われた。
「だめか!?」
「いや、見ろ……!」
残虐大帝の鎧が砕け、脇腹から血が流れ始める。
「ぐっ、これは……!」
血を手でぬぐい、じっと見つめる残虐大帝。
「我に血を流させるとは。ククク、おもしろい」
ゆっくりと浮遊高度をあげていく。
「この拠点はくれてやろう。次に会うときは、我が全身全霊をもって貴様たちをたたきつぶすと予告しておくぞ。フハハハハハハ!」
ゲートを開き、残虐空間へと消えていく残虐大帝。
消えゆくゲート。
レッドたちは空を見上げていた。
「次に戦うときは……」
皆、次なる戦いに強く決意を固めていく。
●新たなる拠点の発見
「やあ皆、いいねこの戦い方、緊張感がなへぶっ!?」
「お疲れちゃん」
ニコニコするプリンスを踏みつけて、紡が着地した。
「助太刀ありがとう。また戦えたらいいな」
「こっちこそ。この戦争が終わるまで、キッチリ付き合うぜ!」
握手を交わすレッドと柾。
その一方で、グリーンが周辺地図をタブレットPCに表示していた。
「みんな見て。僕たちは残虐大帝を追う過程で、残虐空間に直接攻め込む方法を発見したんだ」
「なんだって?」
集まる仲間たち。ラーラは深く考え込むように口元を押さえた。
「残虐大帝の拠点そのものを押さえれば、ゲートの使用を停止させることができます。ザコをいっぺんに呼び出したように、ヒノマルの兵隊をファイヴの拠点へ直接送り込んでくるおそれが減るでしょう。けれどそれは……」
「うん、とてつもなく難易度が高い。僕の調べだと残虐帝国の怪人たちは現実空間に出ることで弱体化しているんだ。元の力が強ければ強いほど弱体化を抑えられるようだけれど」
紡たちは残虐大帝の強さを思い出した。あれだけ強ければ現実空間でも弱体化しないということなのだろう。
一方で復活したてのサカウラミたちはさして強くなかった。大きな弱体化を受けているのだ。
「ゲートといえば、残虐大帝の鎧にゲートを作り出す力があることも分かってる。残虐大帝を一度でも倒せば鎧も破壊できるから、それだけでも充分意味はあるはずだよ」
「だが奴らがフルパワーで存在している空間に攻め込めば、当然無事では帰れない。その覚悟であたってくれ」
「むー」
「のー」
プリンスとざーちゃんが飴ちゃん舐めながら『難しい話してるなー』という顔をしていた。理解しているかどうかはわからないが、要するに残虐空間への直接制圧は失敗濃厚の依頼になるんだなというところだけ理解した。
「それにしても、こんな連中まで味方につけるなんて、暴力坂のおっさんは以外とすごいのかもな。けど、企みは全部ファイヴがぶっつぶしてやる!」
「おう、そのいきだ!」
がしりと手を握り合う翔とレッド。
一方で、たまきは少し沈んでいた。
「このまま、戦いが大きくなるんですね……。けど、目の前の敵さんを倒すことを考えるしか、なさそうです」
「いいや、そればかりでもないよ」
ブラウンがたまきの横に立って微笑んだ。
逆側には紡。
「始まったものは、終わらせることができる。大きくしたくないなら、戦って勝つことで消すことができる」
「『みんな死ぬまで終わらない』なんて悲しい話じゃないんだ」
「はい……」
まずは、この先。
未来のことを考えよう。
――拠点制圧に成功しました!
――成功により敵拠点『敦賀中継基地』『残虐空間』を発見しました!
カクセイジャーと残虐帝国が氷上で対峙する中、観客席より飛び込んでくる人影があった。
宙返りをかけ、拳を地面に叩き付けるように着地する『花守人』三島 柾(CL2001148)。「硬い氷だ。見事なものだな」
その姿に、残虐大帝とカクセイレッドが同時に反応した。
「お前は……!」
「柾!」
「よう、カクセイジャー」
観客席で立ち上がって腕をぶんぶん振るざーちゃん。
「おっ、おまえらなどお呼びでないわ! 残虐帝国なぞワシが蹴散らしてく――うまうまあまーい」
横から飴ちゃん突っ込まれて、ざーちゃんはついつい笑顔になった。
ふんわり笑う『彼誰行灯』麻弓 紡(CL2000623)。
その左右に立つ賀茂 たまき(CL2000994)と『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)。
「なぜ争いがここまで大きくなってしまったのでしょうか……。少し、胸が痛いです」
「大丈夫」
しゅんとするたまきを、紡がやんわり慰めている。
覚醒し、衣装をチェンジさせるラーラ。
「少しでも敵の戦力を見極めておきたいですね。皆さん。準備はいいですか」
「いいよ!」
プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)がお手製の背景を背負って現われた。
「生まれたときから王子! プリンスオブグレイブル! 悪い民のみんな、こんにちは!」
「「こんにちはー!」」
「挨拶なんかするなっ」
うっかり反応したザコたち。をれを殴りつけるヤツアタリ。
背景を片付けつつ、『ファイブレッド』成瀬 翔(CL2000063)が前に出た。
「残虐帝国!」
びしりと指を突きつけ、翔はスマートホンを取り出した。
「今度こそ決着をつけてやる! 変身!」
翔は高くジャンプすると、バトルフォームへとチェンジした。
「小癪な。貴様ら全員処分してくれるわ! やれぃ!」
黄金の杖を掲げる残虐大帝。ザコやヤツアタリたちが一斉に吠え、走り出した。
同じく走り出すカクセイジャーと翔たち。
大量のザコたちと混じり合い、それぞれの格闘に入り始めた。
ブロック対抗では相手が上だ。ザコたちによるファーストウェイブをどう処理するかが、この戦いの形勢を決定づけると言っても過言では無い。
紡は翼を広げ、1メートルほど飛び上がるとザコたちの棍棒を回避。
ステッキの先端についたスリングショットを天空へ向けて放つと、キラキラとした粒子を降らせた。
「よし――一気に蹴散らすぞ!」
輝きを身体に受けて、柾はプリンスへやたまきへと目配せをした。
「待って今スケート靴はいてる」
「早くしろ!」
「はいたはいた!」
「い、いきます!」
柾は拳にエネルギーを溜め、たまきは大きな白封筒から大量の護符束を引っ張り出し、プリンスはミュージックプレイヤーの再生スイッチを入れた。
「ハハッ悪い子のみんな、王子オンアイスだよ!」
プリンスはスケートダッシュからのスピンジャンプを繰り出し、ハンマーからの衝撃波をまき散らした。
と同時にたまきは護符を大量に空中に投げ、それらが巨大な壁となって展開。えいっと両手で押し込むと、ザコたちを一斉に撥ね飛ばした。
攻撃のチャンスだ。
柾は両手の拳に溜めたエネルギーを連続パンチによって発射。
チップに乗って解き放たれたエネルギーはショットガンのようにザコたちを打ち払った。
「こんな所か……ラーラ!」
「はいっ」
一方のラーラは後方に下がり、魔方陣を集中展開していた。
両目の周りに小さな魔方陣を大量に展開し、まるで複合レンズのようにがちゃがちゃと回転させては敵のスペックの照合を進めている。
「ヤツアタリ、サカウラミ……ネタミ、ヒガミ……スキャンが完了しました! 行けます!」
「よっしゃ!」
翔はスマホのアプリを起動。スワイプで印をきると、天空へと掲げた。
「天の怒りをくらいやがれ!」
空に無数の光が生まれ、敵へと降り注ぐ。
ザコたちは一斉に吹き飛び、消滅していった。
「ザコめ! こいつらのせいでうまく戦えねえんだ! クソッ! クソォ!」
足を踏みならすヤツアタリ。
たまきはそんな彼と向き合い、掛け軸用の巻き筒を取り出した。
留め具を回してひもを解く。
と同時に、ブラウンと紡が左右に並ぶ。
「たまきちゃん、がんばれー」
ステッキをくるりと回すと、たまきの身体に光の粒子がまとわりつく。
「おじさんも応援してるからね」
更にブラウンがたまきの身体にエネルギーの壁を形成していく。
たまきは頷くと、ヤツアタリめがけて走り出した。
「仲間を作りやがって、俺が勝てないのはそいつらのせいだ!」
「その気持ちは大事なものです。けど、使い方は間違っています!」
打撃をエネルギー壁で受け流し、掛け軸を開いて地面に投げる。
すると掛け軸に描かれた岩が現実に飛び出し、ヤツアタリの身体を貫いた。
「二度も……クソッ、チクショオオオオ!」
爆発四散するヤツアタリ。
「ヒイイ、あのヤツアタリさんがまた」
「あの強さ、ねたましいィ……!」
ネタミとヒガミがそれぞれ手を翳すと、たまきたちの身体がどっと重くなった。
まるで全身に鉄の鎖を巻かれたような感覚に、おもわず膝を突くたまきたち。
「こ、これは……」
「ネタミとヒガミの新しい力です。ネタミは多くの人の足を止め、ヒガミは多くの人の心を重くします。これを受け続ければ人は自滅してしまうんです」
スキャンを終えたラーラの説明を受けて、イエローとグリーンが振り向いた。
「このままじゃ戦えないんだな」
「グリーン、清廉珀香だ!」
「そうか……!」
翔に呼びかけられ、グリーンは手榴弾のようなものを放り投げた。
緑色の爆発が起きて皆の身体が軽くなる。
「よし、今だ……!」
翔はアプリ画面で印をきり、眼前に翳す。
「いけ、雷獣! こいつらをまとめてしびれさせてしまえ!」
スマホから飛び出したホログラムの虎が駆け抜け、ネタミとヒガミに激しい電撃を与えていく。
「ヒイイ! か、からだが……!」
「しびれる……!」
よたよたとする二人に、プリンスとラーラが同時に構えた。
「同時にいきましょう」
「王子ファイヤーダンスだね!」
プリンスのイイ笑顔が空中に描かれ、その周囲にラーラのおまじないが特殊文字で描かれていく。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
「アンド、余!」
巨大魔方陣を突き抜けて飛び出すプリンス。
炎に包まれたプリンスがハンマーアタックをしかけ、ネタミとヒガミをまとめて空の彼方へと吹き飛ばした。
「し、しまった……おのれファイヴめ! カクセイジャーめ!」
慌てて回復を始めるサカウラミだが……。
「今更巻き返そうとしたって遅いぜ!」
「残る幹部はお前だけだ」
「覚悟しろ」
レッドとブルー、そして柾が剣と拳にエネルギーを溜め、同時に突撃した。
クロススラッシュでX字に切り裂かれたサカウラミ。そのクロスポイントに拳を叩き込む柾。
彼の拳が激しく発光し、サカウラミを大爆発させた。
「お、おのれええええええええ!」
灰となって散っていくサカウラミ。
「ムゥン……」
ゆっくりと顎を上げる残虐大帝。
柾はしっかりと構えなおした。
「今度は負けない。そして、逃がさない」
「よかろう。カクセイジャー、そしてファイヴよ。我直々に手を下してやる……!」
残虐大帝は黄金の杖を地面に突き立てると、暗黒の稲妻を生み出した。
●残虐大帝
「帝王の力を思い知り、ひれ伏すが良い」
「なにが帝王だ!」
「叩ききってやる」
レッドとブルーが飛びかかり、全く隙の無いコンビネーションアタックを繰り出した。
一切の打ち合わせもなく互いに相手の死角を作り合い、的確に最大の打撃を打ち込む連携プレイだ。
しかし。直撃した筈の剣は残虐大帝の鎧によって弾かれた。
接触した途端、まるで感電したかのように暗黒の稲妻がはしり、レッドとブルーが打ち払われたのだ。
「ぐわっ!」
「二人とも!」
「ここは任せるんだな!」
グリーンとブラウン、そしてイエローが飛び出し、残虐大帝を取り囲む。
「グリーンバルカン!」
「たがやしアタック!」
「ゴールデンプレミアムなんだな!」
三方向からの一斉攻撃。
しかし。
残虐大帝はまるでこたえている様子がない。直立姿勢のままびどうだにしなかった。
「フン、そんなものか」
残虐大帝は杖を振りかざすと暗黒の稲妻をまき散らす。
「うわあっ!」
一斉に吹き飛ばされる三人。
カクセイジャーたちはそろって氷上を転がり、倒れたまま呻いていた。
「な、なんて力なんだ……」
「カクセイジャーさんっ」
駆け寄るたまきとラーラに、ブラウンは小さく首を振った。
「おじさんたちはもうダメだ。あとは、頼むよ……」
気を失うブラウン。
彼を寝かせて、ラーラは立ち上がった。
「敵戦力を削る所までは順調でした。しかし逆に言えば、敵戦力を削ることばかり考えてカクセイジャーさんたちとの連携をおろそかにしていたのかもしれません」
「残虐大帝さんを倒すには……私たちだけの力じゃ足りないんですね」
「いや、諦めるのはまだ早いぜ!」
翔が叫んだ。
「ダメージは蓄積してる筈だ。俺たち六人の力を合わせれば、大きな力になる!」
「……はい!」
たまきは御朱印帳を展開すると、身体に黄金の輝きを纏わせた。
ラーラと逆の方向に走り、残虐大帝を囲みにかかる。
立ち方を固定し、滑る勢いに身体をまかせて魔方陣を展開するラーラ。ブレる照準を残虐大帝にあわせていく。
一方でたまきは、動きの悪い足場に苦労しながらも残虐大帝に体当たりを仕掛けた。
同時攻撃。
が、レッドたちと同じく暗黒の稲妻に打たれてはじき飛ばされる二人。
身体が強くしびれるが、翔が素早くスマホをスワイプ。演舞・舞音を展開していた。
「これでかなり楽になる筈だ。畳みかけろ!」
「了解っ」
柾は重心を保ちながらダッシュ。残虐大帝に殴りかかった。
手のひらで止められるパンチ。
暗黒の稲妻が身体を駆け抜けるが、柾は歯を食いしばってこらえた。
うつ伏せのラーラが起き上がって叫ぶ。
「まともに打ち合ってはだめです! 残虐大帝にはカウンターや反射……いいえ、強カウンターや強反射がかかっています。それに恐らく、自ら放つ稲妻には……」
「黙れぃ!」
杖を掲げる残虐大帝。
暗黒の稲妻が周囲に放たれ、柾やラーラたちを打った。
ラーラの魔方陣やたまきを覆っていたエネルギーシールドが消え去り、柾は身体の自由がきかなくなって膝を突いた。
「解除効果に、麻痺効果だと……」
「憶測ですが封印効果も……」
「さすがに、ラスボスってことか」
同じく膝を突いた翔が、頬に流れた血をぬぐった。
肩を揺すって笑う残虐大帝。
「フハハハハ! 脆弱な人間たちよ。どうだ、降参する気になったか」
「冗談じゃ……」
柾は顔を上げ、ふとあることに気がついた。
残虐大帝の鎧に一部だけ傷が付いているのだ。
柾の必殺技の命中によってついた傷だが、たまきやラーラの攻撃が蓄積してできたものでもあるようだ。
「麻弓、王子、あそこを狙えるか」
「殿?」
プリンスに填気を施して貰った紡は、プリンスの横顔を見た。
いい笑顔で親指を立てるプリンス。
「任せて!」
紡は頷くと、再び飛行。スリングショットにエネルギーの弾を込めると、プリンスの後頭部めがけて放った。
スケートダッシュをかけるプリンスの衣装がきらめき、外骨格が豪華な衣装に包まれた。
「ご覧ください余の表現力! 王子ブリザードオロシ!」
高速回転によって繰り出される強烈なハンマーアタック。
残虐大帝へ直撃するが、やはり暗黒の稲妻によって打ち払われた。
「だめか!?」
「いや、見ろ……!」
残虐大帝の鎧が砕け、脇腹から血が流れ始める。
「ぐっ、これは……!」
血を手でぬぐい、じっと見つめる残虐大帝。
「我に血を流させるとは。ククク、おもしろい」
ゆっくりと浮遊高度をあげていく。
「この拠点はくれてやろう。次に会うときは、我が全身全霊をもって貴様たちをたたきつぶすと予告しておくぞ。フハハハハハハ!」
ゲートを開き、残虐空間へと消えていく残虐大帝。
消えゆくゲート。
レッドたちは空を見上げていた。
「次に戦うときは……」
皆、次なる戦いに強く決意を固めていく。
●新たなる拠点の発見
「やあ皆、いいねこの戦い方、緊張感がなへぶっ!?」
「お疲れちゃん」
ニコニコするプリンスを踏みつけて、紡が着地した。
「助太刀ありがとう。また戦えたらいいな」
「こっちこそ。この戦争が終わるまで、キッチリ付き合うぜ!」
握手を交わすレッドと柾。
その一方で、グリーンが周辺地図をタブレットPCに表示していた。
「みんな見て。僕たちは残虐大帝を追う過程で、残虐空間に直接攻め込む方法を発見したんだ」
「なんだって?」
集まる仲間たち。ラーラは深く考え込むように口元を押さえた。
「残虐大帝の拠点そのものを押さえれば、ゲートの使用を停止させることができます。ザコをいっぺんに呼び出したように、ヒノマルの兵隊をファイヴの拠点へ直接送り込んでくるおそれが減るでしょう。けれどそれは……」
「うん、とてつもなく難易度が高い。僕の調べだと残虐帝国の怪人たちは現実空間に出ることで弱体化しているんだ。元の力が強ければ強いほど弱体化を抑えられるようだけれど」
紡たちは残虐大帝の強さを思い出した。あれだけ強ければ現実空間でも弱体化しないということなのだろう。
一方で復活したてのサカウラミたちはさして強くなかった。大きな弱体化を受けているのだ。
「ゲートといえば、残虐大帝の鎧にゲートを作り出す力があることも分かってる。残虐大帝を一度でも倒せば鎧も破壊できるから、それだけでも充分意味はあるはずだよ」
「だが奴らがフルパワーで存在している空間に攻め込めば、当然無事では帰れない。その覚悟であたってくれ」
「むー」
「のー」
プリンスとざーちゃんが飴ちゃん舐めながら『難しい話してるなー』という顔をしていた。理解しているかどうかはわからないが、要するに残虐空間への直接制圧は失敗濃厚の依頼になるんだなというところだけ理解した。
「それにしても、こんな連中まで味方につけるなんて、暴力坂のおっさんは以外とすごいのかもな。けど、企みは全部ファイヴがぶっつぶしてやる!」
「おう、そのいきだ!」
がしりと手を握り合う翔とレッド。
一方で、たまきは少し沈んでいた。
「このまま、戦いが大きくなるんですね……。けど、目の前の敵さんを倒すことを考えるしか、なさそうです」
「いいや、そればかりでもないよ」
ブラウンがたまきの横に立って微笑んだ。
逆側には紡。
「始まったものは、終わらせることができる。大きくしたくないなら、戦って勝つことで消すことができる」
「『みんな死ぬまで終わらない』なんて悲しい話じゃないんだ」
「はい……」
まずは、この先。
未来のことを考えよう。
――拠点制圧に成功しました!
――成功により敵拠点『敦賀中継基地』『残虐空間』を発見しました!
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
