《紅蓮ノ五麟》選択の結末
《紅蓮ノ五麟》選択の結末



「ふー。ついに、始まっちゃったかー」
 禍時の百鬼の一員。
 アルカは、憂鬱な気分で戦地を駆けた。
「FiVEとの共存もそう悪くなかったけどねー。作戦の一環とはいえ、助けてくれた相手を攻め落とすってのは気が引けるなー」
 ぼやくように、火に包まれた街を眺める。
 この光景を作り出したのは、間違いなく自分達であって。その現実が、何とも複雑な気分にさせてくれる。
「アルカさん。今は、任務に集中しないと」
「いや、それはそうなんだけどさー」
 引き連れた部下にたしなめられて、アルカは頬をかいた。彼女達は、以前にFiVEによってヒノマル陸軍から救出を受けたという過去がある。こちらにとっては半分芝居だったとはいえ。
 笑うに笑えない状況というのが、世の中にはあるものだ。
「あー、本部が見えてきちゃったねー」
 すぐそこまでに迫った、五燐学園を前にしてアルカは嘆息する。
 彼女達に課せられたのは、まさしくFiVE本部の襲撃。敵の本拠地を叩くために、選りすぐられた精鋭部隊の一つだった。
「アルカさん、やる気を出してくださいよ」
「情が移ったとか言わないで下さいね」
 リーダ格の体たらくに、部下達は口々に言い募る。
 赤髪の少女は、辟易したように肩をすくめた。
「へーへー。お仕事お仕事っと……悪く思わないでね、FiVEの皆さん」


 深夜の五麟市。
 紅蓮が飲み込む。街を、思い出を、――逢魔ヶ時紫雨の炎が。
 血雨討伐部隊が帰ってきたとき。
 五麟市内が攻撃を受けていた。あちらこちらが燃え、いつもとは変わった五麟市がそこにある。
 五麟は今、空前絶後の事態に存亡の危機を迎えている。血雨部隊から帰ってきた覚者は皆、変わり果てた街に唖然とした。
 周到に用意された茶番により、FiVEは追い込まれかけている。なんとか百鬼を撃退しなければならない。
 刻、一刻と七星剣により飲み込まれていく街。最早これ以上、奴等に何も譲るものは無い。
 指示はひとつ、速やかに侵入者を制圧せよ。
 全ての百鬼をこの街から追い出す為、FiVE覚者の長い夜は始まった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:難
担当ST:睦月師走
■成功条件
1.禍時の百鬼の撃退
2.なし
3.なし
 今回は、紅蓮ノ五麟に関連するシナリオとなります。

●禍時の百鬼アルカ達
 アルカとその部下が四人。【日ノ丸事変】黎明たる選択で、以前に黎明として覚者達に助けられた禍時の百鬼です。全員が彩の因子、火行の使い手。ずっと覚者達の前では真の実力を隠していましたが、特にアルカは相当の使い手です。

●現場
 本部(考古学研究所)自体の防衛戦となります。アルカ達の撃退に失敗すると、本部に侵入されてしまいます。五燐学園の考古学研究所近くのグラウンドまで迫っているので、そこで迎撃して下さい。

 よろしくお願いします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年03月14日

■メイン参加者 8人■

『偽弱者(はすらー)』
橡・槐(CL2000732)
『落涙朱華』
志賀 行成(CL2000352)
『幻想下限』
六道 瑠璃(CL2000092)
『正義のヒーロー』
天楼院・聖華(CL2000348)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)


「グラウンドから本部へ続く二本の道と、本部入り口前に警報空間をそれぞれ設置しておこう」
 『落涙朱華』志賀 行成(CL2000352)は本部正面から迎撃体制を整える。
 街が紅蓮の炎に包まれた夜。
 覚者達は、百鬼の迎撃のために布陣していた。
(まずはあいつらを倒す。今すぐ街の人達を救いに行きたいが、防衛を手薄にしたら、本部への侵入を許す。そうしたら、それこそ街を守れなくなる。だから、今はここを守る!)
 暗視を用い『笑顔の約束』六道 瑠璃(CL2000092)は、グラウンド南側の通路で待ち構える。
 物陰に隠れなるべく身を低くしつつ、かぎわけると鷹の目も適宜使い分け、どの方向から来るのかを確認する。
 反応は、すぐだ。
「まっすぐに五人抜けてきたか」
 仲間が示し。
 『偽弱者(はすらー)』橡・槐(CL2000732)と三島 椿(CL2000061)が、懐中電灯を向けると隔者達の姿が照らされる。
「アルカさん、どうやらこちらの動きが察知されていたようですよ」
「……マジでか、対応早いなー」
 覚者達の前に現れたアルカは、肩を竦めてみせる。
「待ってたぜ、アルカ。お前は強そうだと思ってたんだ。今夜は楽しくやろうぜ!」
 鋭聴力と暗視で暗闇と死角をカバーしていた『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)は、敵の姿をしっかりと見据え。
「天楼院聖華、行くぜっ!」
 英霊の力を引き出し、正面から飛び込む。『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)も、紫鋼塞を使ってそれに続く。
「意地でも通さない覚悟デスヨ!」
「……あー、こんなやる気満々な方々相手に城攻めするのかー」
「お久しぶりね、アルカ。貴女もこうなるなんて、残念で仕方がないわ。でも、こうなった以上は敵同士だものね。遠慮はしないわ」
「しかも、見知った顔が何人かいるし……やりづらー」
 『女帝』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)が、注意を引くために話し掛けながら錬覇法を使うと。アルカはうんざりした表情をする。
(……今だ!)
 そこへ死角になる場所で待ち構えていた『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が、迷霧を発生させ百鬼の弱体化を図る。高密度な霧が、辺りに漂う。
「アルカさん、これは!?」
「……やられたね、まだ来るよ」
「夜も遅いですし、やる気も無いなら寝てると良いのですよ」
 更にそこに槐が、艶舞・寂夜を使う。
 眠りを誘う空気に、アルカ達は足を止められた。
「体術も術式も潰させてもらう!」
 瑠璃は艶舞・慟哭で敵を怒り状態にせんとする。
 その間に行成は錬覇法、椿は水衣を自身に付与した。
「私たちは選択した。だからその選択の結果を真正面から受け止める」
「そうか。そっちは、もう受け止めちゃったかー……強いね」
「なごんでいる場合じゃないですよ、アルカさん!」
 先手を打たれたアルカの部下達が動き出す。
 重い身を引きずって火炎弾を覚者達へと飛ばしてくる。拳大の炎の塊が、夜に弾ける。
「ほら、アルカさんも!」
「弾幕を張って下さい!」
「へいへい。皆、仕事熱心だなあ」
 アルカが指を鳴らすと一際大きな火柱が巻く。
 地面より燃え盛る業火が、前列の者達を焼き払う。
「……全員火行の彩で揃えてくるだなんて。突破力には眼を見張るものがあるわね。ホント、油断ならないわ。でも、私達にも守るものがあるの。ここが守りの要。絶対に通しはしないわよ」 
 本当は戦わずに済むならそれが一番なのだけどね。
 心の底ではそう思いながらも、エメレンツィアは癒しの霧で味方に回復を施す。
「百鬼を止める。貴方達を止める。FiVEを、この街を、この街に住む人達を守る……私は諦めないっ」
 気合い入れて頑張らなきゃ、と椿は皆をフォローする。潤しの滴で、打撃を受けた味方を癒し。火傷を負った者には、深想水でリカバーだ。
「一気に攻めさせてもらう」
 まずは部下の数を減らすべく行成は、敵の炎を目印に攻撃を打ち込む。腕に結わいた懐中電灯で灯りを確保し、貫殺撃で敵を突き貫く。
「血雨部隊も戻って来たよ。まだまだやれるよ、五麟の底力見せてやる」
 不意打ちを成功させた奏空は戦線に復帰。
 錬覇法の後には、雷獣をぶっ放す。激しい雷が鳴り響く。
「うぎぎ、化物と殺り合って帰って来たらそのまま迎撃とか人使いが荒すぎるのですよ。まあ、やる気の無い相手ならとっとと追い返して決着を付けに行くのですよ」
 槐がかけておいた清廉香が、皆の自然治癒を促進する。
 蔵王を切らさぬようにして、味方を戦闘不能にせぬようにガードをした。
「うわ。今、雷が掠った」
「怯むな、火力を集中させろ。アルカさんを守れ!」
 アルカが耳を塞ぐ。
 部下達はリーダーを守らんと覚者達にすぐに応酬してくる。
「アルカはあんまり乗り気じゃ無さそうだな。戦いは楽しくやろーぜ!」
 聖華は後衛を狙おうとする敵をブロック。
 アルカの部下の一人に狙いを定めて、飛燕で集中攻撃する。
「遠慮すんなよ。どうせ勝つのは俺達なんだから、さ!」
「はー、大した自信だねー。こっちもお仕事なんで、あまりやる気になられても困るんだけどさ」
「例えお仕事でも悪く思いマスヨー!! こんな事やっておいて怒られないとでも思ってるのデスカー!! ちょっとでも悪いと思うならバレない様に手でも抜くのデース!」
 明るく優しい直情タイプのリーネは、今回もちょっと怒り混じり。紫鋼塞を絶やさないようにして、癒しの霧で回復。余裕があればB.O.T.で攻撃する。
(敵の部隊が火行一辺倒であるなら、かかってしまえば治すのは難しいはずだ。いくら隔者とはいえ、治癒能力には限界がある!)
 瑠璃は、敵の過半数を怒り状態にすべく艶舞・慟哭を見舞う。
 二人以上を狙えるときは、小さな雷雲を呼びこんで召雷で攻撃する。
「うーん、火行の特性を突かれたか。こりゃあ、まずいかなあ」
 覚者と隔者の戦いは激しさを増し、お互いに消耗を続ける。
 ただ、アルカは対岸の火事でも眺める風情である。そんな隔者に、乱戦のさなか奏空は近付く機会があった。 
「俺の事覚えているかな?」
「ああ。探偵見習いの工藤君ね。ヒノマルの時は、お世話になったわね」
 この二人は以前の事件で顔見知りであった。
 暗がりに、奏空は暗視ではっきりとかつて助けた少女の顔を見やる。
「多少なりとも黎明の受入れに疑いを持っていた俺から言えたものじゃないけど。でもあの時……日ノ丸事変の時に感じた事は、あんたが本気で仲間を思い遣る気持ちだったよ。……だから分かるでしょ?」 
「……さあて、とんと分からないけど?」
「俺も仲間が大事だ。五麟を守りたい。あんたと気持ちは一緒だよ。守りたいものの為に……本気であんたらをぶっ飛ばす!」
 まずは部下から片づけて行く。覚者達は攻撃を集中する。 
 奏空は双子の刀で列攻撃。意志を漲らせた、双刀が冴え渡り……一人の隔者が膝をついた。
 

「もうやめましょう。貴方の表情、すっきりとしないわね。この襲撃は貴方の本意ではないと……そう思ってしまうわ」
 椿の言葉を受け。
 蹲る部下の一人をアルカは見やる。
「……あの時の出来事は、貴方達にとって演技でしかなかったかもしれない。けど縁を結んでこれまで接し続けた日々は、本当に演技だけですむものだったのかしら。私にはそうでないように思えるわ。貴方には迷いがある。だから私は貴方に部下を連れて、この場から引いてほしい」
「……」
「貴女、部下にとても慕われていたわね。部下の手前もあって、こんな事をさせられているのかしら? もし投降する意思があるのなら、私達は手荒な真似はしないわ。全員を受け容れる意思もあるけど。どうかしら?」
 エメレンツィアも、アルカの戦意があまり高くないと踏み声を掛ける。
 まあ、呼びかけが上手く行くにしろ失敗するにしろ、少しでもアルカの戦意が落ちてくれれば良い。
「戦いは好きだけど、殺し合いはあんまり好きじゃねーんだよな」
 撤退勧告の頃合いだとは、聖華も思っている。
 行成も一緒に、理を持って言い募る。
「ここから先には通すわけにはいかない、お引き取り願おうか」
「撤退しねーで戦うのも良いけどさ。仮に俺らを倒しても、この先には俺らと同等の部隊がいくつもいるぜ。そんな中、負傷者を抱えて、あるいは負傷者とその護衛だけ先に撤退させた少人数部隊で戦えるとは思えねーな」
「……まあ、確かにね」
 素直に、アルカはその言を認める。
 認めているように見えた。
「私は初めマシテ、だったと思いマスガ、正直そこまで恨んでないデスヨ。何となくこう……あまり嫌いになれない感じがするのデスヨ。他の人達と違ってしっかり話が出来そうデスシ……ちょっと話してみたいと思っていたデスネ」
 リーネはそこまで口にして、ふと違和感を覚える。
 それは彼女が持つ、超直観によるものか。アルカの周りには、部下達が集まっていた。
「アルカさん」
「ここは、もう観念して下さい」
「出し惜しみしている場合では、ありません」
「はあ……仕方ないか」
 赤い前髪を弄って。
 アルカは、目をギラリと光らせた。
「気は進まないけど。この戦い、勝つにしろ負けるにしろ……このまま終わるわけにはいかないよなあ!!!」
 雰囲気がガラリと変わる。
 隔者の胸元の刺青が禍々しく光り輝いた。
「元々、オレ様はちと気性に問題があってねえ! 普段からセーブしておかないと、大変なことになるんだよ!! こんな風にな!!!」
 百鬼の少女は舌を出しながら烈火のごとく飛び込み。
 全力防御をする槐に牙を剥く。瞬間、世界が震え閃光に包まれる。一点に集中した爆発力が解放されて、大爆発を引き起こした。
「っ! 凄い威力です」
 防御をしていなければ、確実にやられていた。
 爆炎の勢いは未だとどまることなく、槐は傷だらけになった身体をどうにか支える。
「ククク! まだまだ行くぞ、覚者!! 燃えろ燃えろ燃えろ!!!」
 変貌したアルカは、致命傷必死の炎を舞わせる。
 空気が灼熱して、肺そのものを焼く。息をするのも難儀な地獄絵図。破壊の炎撃が爆ぜては、全てのものを炭と化す。
「ヒノマル陸軍を相手にした時もそうだったな」
 一面に火が沸く光景が、過去のビジョンとリンクする。
 自身も多くの火傷を受け、瑠璃は歯を食いしばって疑念をぶつけた。
「あの時は、オレ達を炙り出すために街を焼いた。それで今回もまた、街を焼くのか。救助に手を割かせるためか? オレ達の苦しむ顔が見たいからか? 単純に、お前らが楽しいからか?」
「別にー? ああ、でもヒノマルのときは大したことはしてないぜー。オレ様達の演技に騙されたヒノマル陸軍の奴らが、勝手にやったことだってーの!」
「いい加減にしろよ、お前ら」
 瑠璃は斬・一の構えから、アルカに斬りかかる。
 赤髪の少女はそれを平然と受けて、ニヤリと笑った。
「ぬるい、ぬるい、ぬるいなあ! ぬるくて、せっかくの炎が湿気っちまう!!」
 隔者が拳に大熱量の炎を纏わせる。
 業炎の拳打の反撃が、覚者の身体へと容赦なく叩きこまれた。
(恐ろしい大火だ……しかも、いつの間にか他の連中がいなくなっている)
 アルカと火の無双に目を奪われて、覚者達は隔者の部下達を見失う。
 念の為上空にライライさんを飛ばしておいた奏空は、深夜の街灯の灯りを頼りに戦線を離脱して本部へ行こうとする者がいないかを偵察する。果たして、敵はこの隙を縫って先へ行こうとしていた。
(今、アルカの部下がここを突破しようとしている。対応を頼む)
 見つけた敵の影は自分からは遠い。
 奏空が仲間に声ではなく送受心・改で連絡する。対応できる者に対応して貰わねばならぬ。
「アルカもアルカの部下も殺さない。けど止めるわ、絶対に」
「本部に向かわれない様に、しっかり移動妨害もシマスカラネ!」
 椿が薄氷で縦列になっていた百鬼達へと追撃する。貫通力のある氷の一角が、アルカの部下達の背を射ち足を止めさせる。更にそこへ、リーネもライフルで、正確に狙いつけて射ち放った。
「くっ。アルカさん、見つかりました!」
「使えねー! お前ら、本当使えねーな! もっと踏ん張れや、役立たずのクズ共が!!」
「助けた事は後悔していない、だが……こちらも守るものがあるのでな」
 鋭聴力で距離を測っていた行成も、瞬時に反応する。
 水礫を飛ばし、周囲の者に大声で対応を指示し、薙刀を振るって敵を押し戻す。
「全く、レイメイというのはいけ好かないわね。アルカもこっちを謀っていたなんて。ヒノマルの時の騒ぎが茶番過ぎるわ。女王を欺いた罪、ここで裁いて上げるわ」
 エメレンツィアは海衣を自分に掛ける。
 そして、伊邪波の荒波で敵群は完全に本部への道を塞がれた。結局アルカの部下達は、後退を余儀なくされて戻ってくる。
「背負ってる物は重いけれど、緊張してどうにかなるもんじゃない。戦いは楽しく! 目指すは最強! んでもって、勝つのは正義の味方だ!」 
 ……そう信じて戦うから、俺は迷い無く刀を触れる。
 聖華は疾風斬りで、隔者達へと牽制を混ぜ。
「今夜も飛ばして行くぜ!」
 敵のリーダーに対して、ブレイドを一閃する。
 斬撃を加えれば、炎の一撃が返ってくる。炎が返ってくれば、斬撃を返す。その繰り返しが続く。「きゃはははは! 正義? 正義か!? なら、悪の炎を飛ばしてやんよ!!?」
 激戦につぐ激戦。何度叩こうとも。
 アルカは哄笑をあげて、血を流しながらも炎を攻撃一辺倒に爆発させる。
「アルカさん、援護します。傷の回復を!」
 そこに、アルカの部下の一人が駆け寄る。 
 密かに突破しようとしたのを覚者達に止められたため、リーダーの助力をしようとしたようだったが……
「邪魔だ、ボケクズ虫!」
 アルカは。
 同性の仲間の顔を、手加減抜きで殴り飛ばす。女性の身体は、重力を無視したように飛ばされる。
「馬鹿、今のアルカさんに不用意に近付くな」
「ああなったら、もうこちらにも手が付けられないのは知っているだろうが」
 慌てて、他の部下達が手をあげられた仲間を介抱する。
 その際には、アルカから充分に距離を開けることを忘れない。
「こいつらは、オレ様がきっちり派手に火葬する! 使えねえクソ虫は、ジャマにならない所で、ジャマにならないことをしていろ!!」
 仲間との連携などは完全に無視。
 ほとんど一人で、アルカは覚者達と渡り合う。
「今宵の夜はまだまだ長く続くのです。黎明など遥か遠くなのですよ」
「ぎゃははは! そうだなあ!! 黎明なんて、どこにもないなあ!!!」
 重い怪我と大量の火傷の数々。そして、気力の不足。
 槐は演舞・舞音で味方を回復させ、大填気でMPを補填し、迷霧で弱体化を振りまく。
(この敵を、本部に侵入させるのは危険だ。可能性はゼロにしておかないといけない……ここまでしないといけない事態なんだよ)
 瑠璃が応戦しながら、敵の体術と術式を封じにかかる。
 だが、アルカには艶舞・慟哭はことごとく避けられてしまう。
「あんたらが何を信じてこんな事をしているのか……もう一度よく自身の胸に聞いてみるといい……! 心は……悲鳴をあげていないのか……! それが本当に『自分』のやりたい事なのかを!」
 出来れば不殺で捕縛したい。
 気づいて欲しい自分の意思を。そして不幸の連鎖を断ち切る勇気を。
 声をあげ、奏空はアルカに至近する。炎と双刀が鈍い輝きをもって交錯した。
「自分のやりたいことだあ!? お前らに悲鳴をあげさせることだっての!!」
「流石に手強いわね。今回復するわ」
 エメレンツィアは、ダメージが集中している者に癒しの滴を使う。死闘は、俄かに決着がつかぬと思われたが……意外なところから均衡は崩れる。
「私と愛しの彼の愛の巣を壊そうなんて絶対許せまセーン!!」
 リーネは本音な上に勘違いな言動をしながら、ライフルを発砲する。その弾丸を受けた、アルカの部下の一人が身体をくの字に曲げる。瀕死の相手に、行成が鋭刃脚で追撃をかけ。
「ちっ! だから、邪魔になるところにいるなっての!!」
 舌打ちしたアルカが、ガードに割り込む。 
 裂くような鋭い蹴りをまともに受け。その動きが鈍る。
「私はFiVEを、この街を守りたい……そして私は……」
 ぎゅっと祈るように自分の拳を握り。
 目を閉じて、深呼吸して。椿が放つ渾身のエアブリットが、隔者の肩を大きく抉った。
「貴方達の炎、まとめて消してあげるわ」
 エメレンツィアが、伊邪波を発生させ。奏空と瑠璃が雷撃を飛ばし。槐は敵の双撃を艶舞・寂夜で妨害し、B.O.T.で殴る。
「もしこの戦いで紫雨が負けて行く所無くなったらさ、五鱗に来いよ。待ってるぜ!」
「!」
 聖華の怒涛の刀の一撃を。
 味方を庇う隔者が、躱す術はなく。アルカはその場に崩れて、纏った炎は淡くも散った。
「ア、アルカさん!」
「……ここまでみたいね。負傷者を回収して、撤退を」
 アルカの顔からは、刺々しさが消え去り。
 深手を負いながら、整然と部下を率いて退く指示を出す。
「縁があったらまたね、覚者さん達……さて、この調子だとうちのボスもどうなっているか」
 こちらもうかつに動けず。
 隔者が闇に消えるのを見届け、行成は息を吐く。
「結局、全てが演技で騙されていたという事か? それとも……あの時助けた事に少しは意味があったのだろうか。あったのならば、それでいいのだがな……」
 ごうごうと、残り火が煙を巻く。
 覚者達は、その消火を急いだ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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