オババとマゴとマゴの寒中見舞い
オババとマゴとマゴの寒中見舞い


●風の噂で聞きました

 伊豆周辺は何故か意外と古妖の住人が多い。
 整骨院の看板娘も、旅館の大旦那も、観光ガイドのリア充も、ケモミミを生やした森ガールも割と高い確率で古妖である。

「京の稲荷様がFiVEの方に勾玉を授けたんですって!」
 黒髪に一本白筋の走る、老婆にも妙齢の美女にも見える女は台に横たわっている。一方、キラキラとした薄緑の髪にスミレ色の目をした、若い方の女は整体師のようで、ゴリゴリモミモミとマッサージをしながら、口にオイルでも注されたかのように喋り続けている。

 年嵩の方は以前もFiVEに縁のあった絡新婦の結絹、整体師の方はこの辺土着の古妖、石妖の蛍石(ほたるいし)である。
 つい最近、この辺では珍しい大雪が降ったのだが、孫の香糸をおぶったまま近所の雪かきに勤しんでいた結絹は、派手に腰をギックリしてしまった。
 ので、ほぼ毎日のように整骨院通いというわけだ。おばあちゃんも辛い。
 今はもう一人の孫、真綿が珍しく帰ってきているので手伝ってくれるのが幸いか。

「天城山のヒメちゃんとバンくんも助けて貰ったでしょー、なんかできないかなーってホタルも思ったけど、なかなかできないよねえー」
 蛍石は思うが侭に口を滑らしているものの、結絹はウンウンと穏やかに頷いているばかり。

 そしてそのまま十分程。電流で暖める機械や、あれこれ済んだ後
「はい終わり!ユイばあちゃんも、無理しちゃダメだからねっ!」
「うんうん、ありがとね。ホタルちゃんもすっかり大きいお姉さんになったわねーえ」
 テンションも高く明るい蛍石に礼を言って会計を済ませると、ヨッコラショと重そうな腰を上げる。
 少しストーブに手をかざして暖めて、手袋を付けて整骨院を後にした。
 ちなみに、今日は前のような着物ではなく、ゆったりパンツに手編みのモコモコカーディガンというおばあちゃんスタイル。
 
 整骨院から出た後、行きつけの書店で婦人誌や絵本やティーン向けファッション誌を買った帰路に、結絹はふと思い出した。
「なんか、それらしいものが蔵にあったかしら……。家に帰ったら探してみないとね」


――そして数十分後
「アイタタタタ!!おーい、まぁちゃーん!バァちゃん、またちょっと動けなくなっちゃったのー!」
 無理して蔵の中を探しているうちに、ギックリ腰が再発してダウンする結絹。
「ちょ!おばあちゃん!?何で蔵なんかで片付けしてんの!?安静にしろってホタルさんも言ってたじゃん!!」
 駆けつけた孫娘が祖母を助け起こし、代わりに『なんだか神々しいなんかを感じる勾玉』を見つけるのがそのまた数十分後の話。


●寒中見舞いは雪掻き依頼

「先程、伊豆の結絹さんから電話がかかってきました。」
 久方 真由美(nCL2000003)が口にしたのは、少し懐かしい依頼人の名前だった。
 なんでも、家の蔵でFiVEに役立ちそうな勾玉が見つかったのだそうだ。
「本来なら前回のように自分が京都まで出向きたかったものの、今はギックリ腰にやられてしまって、外出そのものが難しいそうです」
 古妖とはいえ、やはり寄る年波には勝てないということだろうか……と、心配するも束の間
「香糸くんをおんぶしたまま雪かきをしていたら、ギックリ来てしまったとのことで……」
 それはギックリしてもしょうがない。

「そこで、勾玉の引き渡しついでに、お店の物をバイト代として持っていって良いし、お茶やお菓子や軽食も出すので雪かきを手伝ってほしいというお願いがありました」
 確かに見た目が若くとも、老婆に雪かきは酷な重労働だろう。
「今はもう一人のお孫さんが寒中休みとかで帰ってきていて、結絹さんのお手伝いをしているそうなのですが、そのお孫さんも雪かきに加勢してくれるそうですよ」
 寒中休みって何でしょうね、と不思議がる真由美。
 結絹の話によると、半年ほど見ない間に覚者になっていたのだそうだ。因子は怪で、FiVEの噂を聞いて憧れており、話も聞きたがっているとか。

「まだ狐神様から頂いた勾玉しかFiVEの下にはありませんが、もしかしたら宿木さんちの勾玉も、似たようなものなのかもしれませんね。」
 それに続けて真由美は締め括りに、防寒と足元の対策は忘れないで下さいね、と付け加えたのだった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:簡単
担当ST:安曇めいら
■成功条件
1.宿木邸の雪掻きをして、勾玉を貰ってくる
2.なし
3.なし
秋ぶりの宿木さんちです。怪の因子のお姉ちゃんも初登場となります。
ちなみに安曇は小学生の頃、ランドセルをソリがわりにしていたため、卒業の頃にはランドセルはボロボロになっていました。

●目的
静岡県伊豆市、店舗を兼ねた宿木邸とその回りの雪かき。
本来あまり雪が降らない地域のため、普通のシャベルしかありませんが、自前の雪かき道具を持ち込めます。
覚者の力を使ったエクストリーム雪かきも可能です。


今回も和雑貨のお土産があります。
結絹曰く「バイト代がわりになんでも持って行ってね」とのことなので、プレイングにてどんなものが欲しいかざっくりと記述があればそれに沿った物を発行いたします。

雪かきが終わったら後半は、お茶やお菓子、うどんや餅などの温かい食べ物で暖をとりつつまったりできます。


●NPC
【宿木一家】
拙作『愛の思い出を取り返せ?』で初登場した、伊豆で和雑貨の店を営む一家です。
表向きは祖母の結絹と、表向きは孫の真綿と香糸の姉弟の三人。
実際には十数代ほど離れた先祖と子孫のようです。
前回取り返した斧は、お店の床の間に丁寧に飾られています。

『絡新婦』結絹(ゆいきぬ)
 何本か白い筋のある黒髪を結い上げた、年齢不詳の美女。若くも見えるし、老婆にも見えます。
 香糸をおんぶしたまま雪掻きをしていたら腰を痛めてしまい、FiVEに雪掻きを依頼しました。

『ヨコミミボーイ』やどりぎ かいと
 もくぎょうでけもののいんし(ねこ)
 1がつ16にちに3さいになりました
 ちょっとおおきくなりました

『羊じゃないもん』宿木 真綿(やどりぎ まわた)
 木行、怪の因子
 前作、『愛の思い出を取り返せ?』では遠くの学校に居たため未登場でしたが、今回は学校が寒中休みのため帰省してきています。
 長野県にある全寮制の中高一貫校に通う中学三年生、剣道少女。
 髪が綿のように白くモコモコとした天然パーマのせいで羊なんてあだ名が付いています。

 最近覚者になったばかりのため、FiVEの先輩達に色々な話を聞いてみたいようです。
 学校の近くでトラックに轢かれそうな仔熊を助けようとして発現したとのこと。

【ご近所さん】
『石妖』蛍石(ほたるいし)
静岡県土着の古妖、石妖の女性です。
鈴木ホタル、という人間としての名前も持っています。
先祖代々整体師、もとい昔の言い方では按摩さんの家系。
父親が人間であり、古妖側の血を引き当てて生まれた1990年代前半生まれ(要するにゆとり世代)なので、古妖の中ではかなり若い部類に入ります。
指定があれば後半に遊びに来ます。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2016年02月09日

■メイン参加者 6人■

『淡雪の歌姫』
鈴駆・ありす(CL2001269)
『飛び蜘蛛』
山蜘蛛 朽葉(CL2001258)
『愛求独眼鬼/パンツハンター』
瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
『マジシャンガール』
茨田・凜(CL2000438)
『可愛いものが好き』
真庭 冬月(CL2000134)

●雪やこんこ

――静岡県伊豆市
 本部で渡された地図を元に、前回も訪れたことのある真庭 冬月(CL2000134) の先導で、FiVEの面々が歩いている。
 鈴駆・ありす(CL2001269)はコートを分厚く着込んでいるにも関わらず、歯をガチガチと鳴らして震えている。燃えてしまう懸念があるため、手袋を着けられないので尚寒い。
「はー……なんだって、こんな雪の多い所に。ホントやだ寒いとこ嫌い。最低最悪帰りたい!」
 それでも、FiVEのためだし人のためでもあると彼女自身に暗示するように言い聞かせる。バディのゆるゆるも(がんばれよ)とばかりに肩をポンポンする。

「FiVEの皆さんですね!こんにちはー!」
「あいうー!きたー!」
 小さいソリに乗っている香糸と、その横に立つダウンコート姿の少女が一人。間違いなく香糸の姉、真綿である。
「初めまして。宿木 真綿です。おばあちゃんから話は聞いてるんで、今日はどうかよろしくおねがいしますね」
 ぺこりとお辞儀をする彼女の双肩にはそれぞれに猫の守護使役が。どうやら彼女自身のパートナーと、弟のパートナーらしい。

「あらあらまあまあ!もういらして下さったの!」
 一度会ったことのある冬月に声をかけたのは、以前よりも少し老いた印象のある結絹。
「結絹さんお久しぶり。腰を痛められたそうですね。雪かきは僕たちに任せて、安静にしていてくださいね。」
 とは言ってみたものの、雪かきの経験はあまりない冬月。だが、普段は自分の店でも力仕事はしている。男性ならではの膂力もあるので、このなかではかなり頼りになるだろう。
「ふふ、若いイケメンさんからそう言われると照れちゃうわ。では、お家の中で待たせて頂こうかしら。ほら、かいちゃんも行きますよ」
 ニコニコと微笑み、香糸を抱き上げて店舗兼住居へ戻る結絹。暫くすると出汁のよい香りが漂ってきたので、何か作っているのは外の面々にも分かった。

 さて、外の雪かきメンバーへ目を向ければ、頑張っている山蜘蛛 朽葉(CL2001258)。
 山育ちの彼は、実家で雪が降った時は家族と雪おろしをしていたので、この中では慣れている方だ。
 まずは散水栓のある所を片付け、水を使えるようにしようとしたが……
「ちょっと待った!」
 と、真綿の声がそれを遮った。
「それやったら、水が道路にまで流れるし、夜中に凍ってツルツル滑る路面になっちゃうよね。それってウチだけじゃなく、ご近所の迷惑じゃないかな?」
 そう言われてみればそうだと朽葉は納得し、地道な雪かきの作業に戻るのだった。

 瀬織津・鈴鹿(CL2001285)もまた山で育っており、古妖であるらしい育ての親の手伝いで雪かきには親しみがある。随分とツギハギが多く寒そうな格好だが、水の心でまったく寒さは気にならないようだ。
 さらに言えば古妖には好印象があるので、宿木家の掃除はかなり乗り気な仕事のようだ。

 赤坂・仁(CL2000426)は静かに、だが堅実に雪かきを進めている。醒の炎を纏ったからには、常人を超えたスピードで周囲の雪をサクサクと一箇所に積み上げてゆく。
 もう一人の男手、冬月も、持参したショベルでせっせと雪をどけている。
「そういえば、ショベルとスコップの違いって足をかける部分があるかないからしいね」
「ほほー!そうなんだねー!」
 初めて納得したのか、大きく頷く真綿。彼が言うには、足をかける部分があるのがショベルなのだそうだ。確かに、言われてみれば納得である。
 世間話を交えつつ、マイナスイオンを生かして雪かきを進める冬月。
 ただ黙々と進めるだけでは、体感時間も長いものになって疲れもまた溜まるだろう、という彼らしい優しい配慮であった。

「真綿ちゃん、脚立とかホウキってあるー?」
 茨田・凜(CL2000438) は雪国の生まれではないが、彼女もまた水の心で寒さへの大きな耐性を身に着けている。既にジャージに着替えている彼女は、庭や玄関の常緑樹に付いた雪を払って落とすつもりのようだ。
「うん、あるよー。私、下持ってるね。」
 蔵から脚立を持ってくる真綿。雪で足場がただでさえ不安定なので、押さえには真綿だけでなく仁も加勢する。
「あっ、上っ」
 ドサドサッと落ちてくる雪。頭から雪を被る真綿と仁。まあ、このあとは屋内でのんびり出来るのでその時乾かせば良いだろう。

 ありすは雪かきを雪片付けと呼ぶ。冷たいものが嫌いで、熱いものが好もしい少女には、この雪景色も忌まわしいものにしか映らないようだ。
 月明かり灯る夜の、幽玄な景色を目にすれば、雪への印象もまた変わるのかもしれないが。
「……燃やす。雪だって何だって。寒いのよ!」
 八つ当たりであることは自覚があるようだが。ともかく、彼女の奮戦(?)によって、雪かきのスピードはぐんぐんと上がる。

 始めてから二時間ほど経っただろうか、見た目は若い老婆と、幼児しかいない家の周囲は、二人が生活するのに困らない程度にきれいに雪が片付いたのだった。

●勾玉囲んでお茶を飲もう

「うふふ、皆様ありがとうございました。ささやかですが、おうどんとお茶菓子を用意したので、食べてくださいね」
 クタクタになったFiVEと真綿を迎えた結絹は、腰をさすりながらもこたつテーブルへ、大きな土鍋を載せる。
 中身は肉も野菜もたっぷりのうどん。先程外で嗅いだのと同じ、出汁の香りがかぐわしい。
「「いっただっきまーす!」」
 ありすと真綿の声がユニゾンする。よっぽど寒かったのと、空腹だったのだろう。年齢的に食べたいお年頃なのかもしれないが。
 仁や冬月の男性陣には大盛りに、少女の多い女性陣は本人の希望を聞きつつ椀によそう結絹。

「やっほぉーん!呼ばれたようだからホタル来ちゃったよー!」
 一息ついて炬燵に当たろうとする宿木一家やFiVEの皆が耳にしたのは、高く明るい声色。
 古妖と人間の間に生まれた、というのが興味を惹いたようで、ありすや凛の希望もあり招かれた、ご近所の蛍石その人。
 彼女の母方は静岡周辺土着の妖怪『石妖』の一族である。按摩、要するにマッサージ師であるが、石の鋭片で人間の脊髄を傷つけ、死に至らしめるというおっかない伝承もあったりする。
「女の人に乱暴しようとする、不届き者を成敗しようとしたご先祖様が、誤解された伝承みたいだけどね」
 というのは彼女の弁。

「っていうか、古妖と人間が交わって子を成せるものなのね……。正直初めて知ったわ。びっくりね。」
 もしかしたら、アタシもハーフだったのかしら……と、いたく感心している様子のありす。
「人間の中から古妖が出てきたんだったら、みんなさぞ驚いたでしょう?」
「うーん、私の場合はそうでもなかったみたい。人間に近いしね。もう覚者も居た時代だから、生まれた病院でもスルーされたみたい」
 なるほど、1990年代生まれなら既に神秘的な物事が認知されつつあった時代になる。もしかしたら自分もと、ありすは不思議に思う。その横の真綿も口を開き
「私みたいに、ずっと前の先祖なおばあちゃんの血を引いていて、ここ数代は人間の家系なのに怪の因子になったり、香糸みたいに普通の覚者になったりもするし、そこは本当にご縁と運……かな?」
 ともかく、ありすと真綿と蛍石に共通するのは『古妖に縁のある、90年代以降生まれ』ということだ。

「なあなあホタルさん、彼氏とかおるん?」
 ゆったりとした雰囲気で問いかける凛だったが、結絹の返事は厳しいもので、実家暮らし自営業なので出会う暇が無い、という世知辛いもの。

 何人かが、そういえばさっきから結絹の姿が見えないな、と思ったところで、家の奥の方から結絹がゆっくりゆっくりと歩いて戻ってきた。
「お待たせしたわねえ、これが家にあった勾玉ですよ」
 腰をさすりながらこたつに座った結絹は、こたつテーブルの上に載せられた小さな木箱をそっと開ける。
 真っ白い中にゆらゆらと光を湛えた石は、例えるならムーンストーンやミルキークォーツに近い。ずっと、この温かみのある半妖の家系を見守ってきたのに相応しく、優しい輝きを持っていた。
「昔は色々と使っていたようだけど、今のウチにあっても蔵の肥やしになってしまうから、どうぞ持って行って下さいね」
 ニッコリと微笑み、木箱ごと、FiVEの覚者達の座る方向へ差し出す結絹。
 特にやる気に溢れていたありすが、木箱を閉じて丁寧に慎重に、自分のカバンへ仕舞う。

 床の間に飾られた斧を見てほっと一息する冬月の横で、トタトタと歩く香糸。
「そういえば、前にあった時より香糸大きくなった?子どもの成長って早いものだねー」
 冬月は、顔を見知っていて懐いてくる香糸をあやしつつ、まじまじと彼を眺める。
 確かに、背は少し伸びて重みも若干ずっしりしてきている。地味なポイントだが、猫の耳も生後間もない仔猫の横を向いたそれから、前を向いたもっと成長した仔猫のものへと変化しつつある。
 
 話のネタに困ったアリスが、ふと思いついたように真綿の頭を撫でる
「そういえば……」
 猫や犬を愛でるように、わしゃわしゃと撫でられる真綿の頭。
「なるほど、もこもこで羊……真綿、ウール?」
「違うよー!ウールじゃなくてシルクの綿で真綿だよー!」
 くすふったさそうにニヤけながら反論する真綿。
 見た目はともかく、名づけは絹の真綿である。ちなみに、物騒な例えだが【真綿で首を絞める】の真綿はそのことだったりもする。
「なーんて、ごめんなさいね」
「ううん、いいんだよー。皆そう思うよねえ」
 しかしそれにしても、羊に見える。

 一方、寡黙な仁は、温かいお茶をすすりながら話の聞き役に徹している。
「おかわりもあるから、何でも言ってちょうだいねえ」
 と、結絹が疲れていそうな彼を気遣う。今回のチームは全体的に、男性陣の気苦労が忍ばれる面子である。

「そうえばね、FiVEに興味あるんだけど、お話聞かせてもらえますか?」
 そう切り出したのは真綿。蛍石も興味がありそうな様子だ。
「じゃあ私が答えてあげる!真綿お姉ちゃん!」
 勢いよく名乗り出たのは鈴鹿。真綿が興味ありげに彼女へ視線を向けた。というか、鈴鹿以外はそこまで話す事が無いか、年少者の鈴鹿に場を譲った形だ。
「FiVEは基本悪い人や妖怪を懲らしめる組織なの」
「うん、それは知ってるよ」
 だが、鈴鹿はなぜかしかめっ面になって言葉を続ける。
「でも……正義感気取りで入るならやめておいた方がいいの。時には命を奪う事もあるし、奪われる事もあるの」
 それを聞いて、何人かはFiVE側も眉を顰める。一方真綿は、うーんと唸って考えたかと思うと
「命のやりとりって言っても、山育ちからすると強い動物が弱い動物に食われるのは自然なことだし分かんないや。殺しすぎも生かしすぎも良くないよね?畑の間引きにも似てないかな?

 軽い様子でアッサリと鈴鹿は言い切った。だが、鈴鹿は言い足りないとばかりに言葉を続ける。
「……殺したり殺される覚悟はある?真綿お姉ちゃん。私はあるよ、私からお父さんとお母さんを引き離した古妖狩人みたいな悪い存在や邪魔する存在は……殺すよ」
 意思と気合は十分だが、逆に真綿は肩を竦める。
「うーん、でもその考えって生きづらくない?疲れないかなー?」
 聞いておいてなんだか生意気な態度だが、育った環境が違いすぎることと、真綿は祖母の記憶があっても両親の記憶が元々そこまで無いので、仕方の無いことなのだろう。
 真綿が家庭環境の割に楽観的かつ軽すぎるのかもしれないが。

 ふと時計を見れば、もう夕方になっている。話し足りないこともあるが、この辺りは終電も早い。そろそろ京都へ帰らなくては。
 伊豆は古妖の多い街だ。また何かの頼みごとで訪れることもあるだろう。
 勾玉を手土産に、それぞれのバイト代がわりも懐に。

「また、おいでになって下さいね」
「私がFiVEに行くことがあったら、そのときはよろしくお願いします!」
 さらに心付けとばかりにお菓子の紙袋まで手渡す結絹。真綿は、抱き上げた香糸の手を取り、一緒にバイバイと手を振っている。
 FiVEの皆は夕暮れを背に受けながら、京都へ向かう帰りの特急へ乗り込むのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『トウガラシ入れ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴駆・ありす(CL2001269)
『絵付けの扇子』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:瀬織津・鈴鹿(CL2001285)
『柘植の梳き櫛』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:茨田・凜(CL2000438)
『コウバコネコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:真庭 冬月(CL2000134)




 
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