クリスマス・イブに降る雪に ~願いよ叶え
●
イブの朝。
久方・相馬(nCL2000004)に呼ばれて会議室に顔をだすと、広いテーブルの上に一枚の紙が置かれていた。
夢見の姿はどこにもなかった。
●
『テーマパークで人工雪で作られた巨大雪ダルマが妖化した。
幸せそうなカップルを羨んだ『ぼっち』たちの怨念が乗り移ったらしい。
今の時期、どこへ行ってもカップルであふれかえっている。
正真正銘の恋人たちから、イベントを乗り切るための急造カップルまで。
分かっているならそんなところへ出かけて行かなければいいのに……。
ともあれ、巨大雪ダルマはイベントステージを降りて人々を襲いだす。
簡単に倒せる相手なので、さっと行ってさっと倒して欲しい。
あとが少々面倒くさいけど。
なに、たった一日、バラバラになって小さくなった雪だるまと過ごすだけだ。
0時を回ると勝手に溶けて、『ぼっち』の怨念ごと消えてしまうよ。
じゃあ、頼んだぜ』
イブの朝。
久方・相馬(nCL2000004)に呼ばれて会議室に顔をだすと、広いテーブルの上に一枚の紙が置かれていた。
夢見の姿はどこにもなかった。
●
『テーマパークで人工雪で作られた巨大雪ダルマが妖化した。
幸せそうなカップルを羨んだ『ぼっち』たちの怨念が乗り移ったらしい。
今の時期、どこへ行ってもカップルであふれかえっている。
正真正銘の恋人たちから、イベントを乗り切るための急造カップルまで。
分かっているならそんなところへ出かけて行かなければいいのに……。
ともあれ、巨大雪ダルマはイベントステージを降りて人々を襲いだす。
簡単に倒せる相手なので、さっと行ってさっと倒して欲しい。
あとが少々面倒くさいけど。
なに、たった一日、バラバラになって小さくなった雪だるまと過ごすだけだ。
0時を回ると勝手に溶けて、『ぼっち』の怨念ごと消えてしまうよ。
じゃあ、頼んだぜ』

■シナリオ詳細
■成功条件
1.テーマパークで暴れる巨大雪ダルマを撃破
2.チビ雪ダルマをお持ち帰り。一日一緒に過ごす
3.なし
2.チビ雪ダルマをお持ち帰り。一日一緒に過ごす
3.なし
●時間と場所
・朝。
晴れていますがとても寒いです。
なお、天気予報によると夕方から雪が降る模様。
・ファンタジーやSF映画などの内容をモチーフに作られた、大阪にある某テーマパーク。
開場直後です。
●巨大雪だるま(ランク1)
頭に赤いバケツをのせて、首にマフラーを撒いている。まんま、よくある雪だるま。
『ぼっち』たちの怨念が乗り移て妖化したらしい。
炎系の攻撃にすこぶる弱い。
逆に水系の攻撃を受けると回復したり、強くなったりする。
体力がゼロになると6つのチビ雪だるまに分裂する。
●チビ雪だるま
攻撃力なし。
ただし、ぼっちにすると拗ねて相手を呪う。
呪いの内容は「そうすけ」なるものが好き勝手に決めるらしい。
25日になると自然消滅する。
●その他
家族や友だち、恋人と過ごす場合はチーム名をプレイングの冒頭に記載してください。
もちろん、『ぼっち』参加も大歓迎です。
なお、イベシナではありませんが……。
!!-----------------
クリスマスプレゼントの交換やクリスマスケーキを食べるシーンは、クリスマスケーキ(各種)とプレゼントボックスをアイテム装備している人に限らせていただきます。
●STより
巨大雪ダルマは冒頭千文字以下でサクッと倒される予定。
ただし、イベシナではないのできちんと作戦立てて倒してください。
戦闘に関する指定がまったくない、または少ないな、とそうすけが判断したら依頼失敗です。
戦闘終了後、24日をチビ雪だるまとどう過ごすかは各自ご自由に。
次の戦いへチビ雪だるまと赴くもよし、そのままテーマパークでチビ雪だるまと遊ぶもよし、家に連れ帰って飾るもよし。
その日一日の行動をまるっと書くよりも、時間とシチュエーションはある程度絞ったほうがいいですよ~。
それではご参加お待ちしております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年01月09日
2016年01月09日
■メイン参加者 6人■

●まずは妖退治
スタッフから話を聞いた『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)は、VIPプレミアムチケットを受け取ると、持参したガイドブックを開いた。
「見て、巨大雪だるまはここなの」
みんなで集まってガイドブックをのぞきこむ。
『ゆるゆるふああ』鼎 飛鳥(CL2000093)が、チケットの角が示す先を見て得意げに胸を張った。
「クリスマスツリーの前。あすかの思ったとおりなのよ!」
ここでバイトをしている五麟大学の生徒に頼んで便宜を図ってもらい、覚者たちは長い列の一番前を取っていた。場所も分かったことだし、開園と同時にダッシュすれば、人が大勢集まる前に妖化した巨大雪だるまを倒せるだろう。
あとは自由時間だ。
「頑張りましょうね!」
賀茂 たまき(CL2000994)は工藤・奏空(CL2000955)に微笑みかけた。
奏空が振り向いて、鼻と鼻の先が触れそうになる。
「う、うん。頑張ろう」
頬が熱くなるのを感じながら、たまきはガイドブックへ目を戻した。
奏空はといえば、やはり頬を赤くして入場ゲートを見ている。
「あ~、オープンまだかな?」
そんなふたりを傍で微笑ましく見守りながら、鈴白 秋人(CL2000565)は永倉 祝(CL2000103)に使い捨てカイロを手渡した。
カイロは事前に封を切ってポケットの中で温めておいた。こたつの代わりにはならないが、寒い外へ連れ出した手前、これで少しでも祝を暖かくしてあげたい。
「……あったかい。ありがとう、鈴白さん」
「雪だるま……。張り切って……いや、慎重に頑張りましょう……」
ゲートが開くと同時に、覚者たちは走り出した。
ガラス屋根のあるメインストリートをまっすぐ南下して、クリスマスツリーのあるエリアを目指す。
ころんは走りながらころん流アイドルオーラを放つと、ゲストを出迎えるため通りに出ていたスタッフたちに呼びかけた。
飛鳥も一緒に声を張り上げる。
「妖が出るの。急いで逃げなさい!」
「雪だるまさんが妖になるのよ。危ないから下がってください」
ちょうど、巨大雪だるまが動きだしたところだった。
「スノーマン……!?」
見上げながらつぶやく祝と奏空に、たまきが蒼鋼壁を張る。
「防御は、任せて下さい……!」
「倒しちゃうの、ちょっとためらうくらい可愛い妖だよね」
見た目は、とつぶやいて、奏空は雷雲を空に呼び出した。
「さて、この後楽しく遊ぶ為に……。い、いや……、パーク内の皆の安全を守る為に倒させて貰うよ!」
雲より黄金の獣が解き放たれ、巨大雪だるまの頭に食らいついた。
たまきが地面を鋭く隆起させて、倒れかけた妖を下から刺して止める。
人が続々と集まってきた。
アトラクションに見せかけて楽しませようと、ころんと飛鳥が魔法少女アニメっぽく変身ポーズを決めて覚醒した。
「えい、なのよ!」
飛鳥が振袖をなびかせながら突撃し、グーパンチを雪だるまのまるい腹へ叩き込む。
衝撃で落ちてきた頭を、ころんがキャンディケインで豪快に打ち返す。
「ホームランなの!」
体だけになっても巨大雪だるまの動きは止まらない。マフラーを手に取ると、猛烈な勢いで振り回しはじめた。
第六感が働いた秋人は巨大マフラーを紙一重でかわすと、霧を広げて倒れた仲間たちを癒した。
祝が矢を放って、巨大マフラーを白い体に刺しとめる。
「せっかくだし……。最後はみんなで」
「そうね。そうしましょう」
秋人たちの提案で二人一組みになった。三方向から同時に攻撃を仕掛ける。
巨大雪だるまの体が白い煙と雪の結晶になってはじけ飛び、後に六体の小さな雪だるまが残された。
●奏空とたまき
「可愛らしい小さな雪だるまさんが、沢山!」
たまきはチビ雪だるまたちの姿を一目見るなり、はしゃいだ声を上げた。体を屈めると、腕を広げて青いマフラーのチビを呼んだ。
奏空もたまきの横でしゃがみ込むと、ボンボン付マフラーのチビに向かって白い歯を見せる。
「やっぱり『ぼっち』は寂しいよな。いいよ、一緒に遊ぼうな」
選択の余地はないと悟ったチビたちは、ぴょこんぴょこん、と跳ね飛んで、自ら奏空とたまきの腕に飛び込んだ。
「ふふ……! 動く姿も、先程とは少し違って、可愛いですね!」
チビを抱きかかえて立ちあがると、ふたりは仲間と別れてサンフランシスコエリアへ向かった。
奏空はカニの看板を見上げながら、抱えたチビを赤ん坊のように揺らした。
一応、プランはあるのだが、ここはやはりたまきの希望を聞いてスマートにエスコートしたい。
「……何だか、パパさんみたいですね!」
「え!? あ、これ……べ、別にあやしていたんじゃないから」
あわててチビを下に降ろす。
「それより、どこ行こうか? 俺、実はここ来るの初めてなんだ! あ、でも、ちゃんと調べて来たから……た、たまきちゃんはどこに行きたい? たまきちゃんが行きたいのに付き合うよ!」
たまきもチビを降ろすと、チビ同士で手を繋がせた。
「あまり怖くないアトラクションが良いのですが、いつも奏空さんには、私に合わせて頂いているので、奏空さんが好きそうなアトラクションにチャレンジです……!」
奏空さんが「楽しい」なら、私も「楽しい」ですから、とチビの手を取る。
「え? 俺の行きたい所……? んー、そうだな~」
ほんとはたまきちゃんと「直接」手を繋いでパーク内を歩きたい。……なーんてこと、言えるはずもなく、奏空はちょっぴりがっかりしながら自分のチビと手を繋いだ。
「じゃあさ、魔法使いと恐竜のエリアに行きたいな! ここからだと、恐竜が近いから、先に行こう」
アトラクションの入口にはもうというか、やはりというか、長い順番待ちの列ができていた。現時点で60分待ちだ。ふたりと二体のチビたちは、VIPプレミアムチケットのおかげで列に並ぶことなく、スムーズに探検ツアーのライドに乗ることができた。
「あ、これ。着て。かなり濡れるらしいよ」
奏空は持ってきたレインコートをたまきに渡した。入口ちかくの自販機で売られている使い捨てのものではなく、たまきのために、たまきが着て似あうものを選んで買っておいたものだ。
依頼に向かう前に買い物へ行く暇があったのか、だって?
そこはあえて突っ込まないで欲しい。
ともかく、ふたり(とチビたち)を乗せたライドは、草食恐竜を巡る旅へ出発した。
大きな木のゲートを抜けてすぐ、首長竜が長い首をもたげて出迎えてくれた。鳴き声を上げて、首を伸ばしていく。
ライドを見下す頭の高さに、ふたりは、わぁ、と声をあげた。
その後も穏やかに、ライドは亜熱帯の草木が茂る中を進んでいく。
「あそこにステゴザウルスが」
「どこ? あ、いた!」
あれはどんな恐竜で、こっちはこんな恐竜で、とみんなで指さしながらわいわいしゃべっていると、空から小雪が落ちてきだした。
「雪……」
ライドが右へ折れると同時に、両岸に設置されていた赤いランプが回り出し、けたたましい警告音が鳴り響いた。演出だと分かっていても、雰囲気にのまれて不安になる。
壊れた鉄柵の囲いの影から、小さな肉食恐竜が飛び出した。
「きゃあ!」
奏空はたまきを守ろうとして、とっさに腰を浮かせた。シートの安全バーに置かれていたたまきの手をぎゅっと握りしめる。
小さな肉食恐竜は岸壁の端で立ち止まった。
悔しそうに首を上下に振ってライドを見送る姿に、ようやく我に戻った。
「アトラクションだと分かっていても思わず覚醒しそうになるね。あはは!」
笑って照れを隠しつつ、握っていた手を離そうとした。すると、逆にたまきが手を握り返してきたではないか。
「リアルで……怖いですよね。私も覚醒しそうになっちゃいました」
建物に入るとすぐ、ライドが坂を登りだした。この先に待ち受けているのは、恐竜の王者Tレックスと――。
急流を猛スピードで落ちていくライドを撮った写真の中で、ふたりは二体のチビ雪だるまとともに楽しそうに笑っていた。
●秋人と祝
ぴょこん、ぴょこんと跳ねまわるチビ雪だるまを見て、秋人は思わず頬を緩めそうになった。
実は秋人、大の雪だるま好きなのだ。依頼を引き受けた時からテンション高めだったのだが、今日は祝とも一日中一緒にいられるとあって、心の中はお祭り状態である。イメージを崩さないよう、表情を引き締めるのに一苦労していた。
祝は腕を伸ばすと、青いバケツに白いマフラーのチビを捕まえた。
秋人もとりあえず、すぐそばを通り過ぎようとしていたチビを捕まえた。
こちらは頭にふあふあの耳あてをつけて、首に赤いマフラーをまいている。
「かわいいね」
相変わらず淡々とした様子だが、チビにかける祝の声に弾みというか少し揺らぎが感じられた。
(……よかった、楽しんでもらえてるみたいで。声も弾んでって――え?)
そこでようやく秋人は、祝が震えていることに気づいた。
「永倉さん、ちょっと待ってて」
チビを抱きかかえたまま走り出した。一番近くのレストランに飛び込んで、ホットコーヒーを二つ、テイクアウトする。
店を出たところで、迎えに来た祝たちとぶつかりそうになった。
「じっとしていると寒かったから」
「ああ、すみません。気が回らなくて……。温かいコーヒーです、どうぞ」
「ううん。そんなことない。……ありがとう」
チビたちに熱いコーヒーがかからないよう、そっと蓋をあけて口をつけた。
飲みながらふたりで肩を並べてゆっくりと池へ向かう。
「一緒に、イルミネーションを観ませんか?」
うん、と頷く祝に秋人の口元がわずかに緩む。
チビが冷やかし始めると、誤魔化すように弛んだマフラーをまき直してやった。
「でも、夜までまだ時間があるね」
「ですね。VIPチケットもあることですし、何かアトラクションに乗りますか?」
首を横に振った祝の腕の中で、チビがもぞもぞと動いて抗議した。
秋人の腕の中でも同じようにチビが騒いでいる。
「まあまあ……アトラクション以外にも楽しく過ごせる方法は沢山ありますよ。そうだ。とりあえず記念写真を撮りに行きませんか? ……そうですね。うーん、どこがいいかな」
通りがかったスタッフに尋ねると、ハリウッド・エリアにいい撮影スポットがあるという。池のほとりを歩き、景色を楽しみながら向かうことにした。
かの有名な「HOLLYWOOD」の文字が入った山――実は「書き割り」なのだが、を背景にまず一枚。
「パームヤシと雪だるま……南国の木に真冬の象徴という組み合わせ、考えるとおかしいですね」
「……うん。でも、こういうのもあっていいと思う。記念だし」
レストランで遅い昼食を取りながら、買い取った写真を眺めているうちに、窓の外でちらちらと雪が降りだした。
チビたちが外へ出ようと騒ぎ出す。
「ほかも見て回りましょうか」
高級ショッピング街ビバリーヒルズをイメージして作られた、ビバリーヒルズブランジェリーからメルズドライブインまでの通りを、パークのキャラクターたちを探して回った。
「あ、あそこにいますよ。一緒に写真を撮ってもらいましょう」
ただ手を振っただけなのに、乗りのいいキャラクターたちは大げさな身振りで近づいてきて、秋人と祝の肩に腕を回し抱きしめてくれた。
そのたびに、ふたりと着ぐるみの間で押しつぶされるチビたちがプンプンと怒った。だから、ここで撮った写真のチビたちは、どれもふくれっ面をしている。
雪だるまのふくれっ面を初めて見た、と祝が笑うと、秋人もついに表情を崩して笑いだした。
「あ……!」
空が茜色から藍色に変わってまもなく、建物のライトアップが始まった。雪の降る中、クリスマス仕様の通り一面がキラキラと輝きだす。
「イルミネーション……綺麗」
クリスマスツリーを目指して歩くうちに自然と指先が絡まった。
ほんのりと互いのぬくもりが感じられる程度の、軽いふれあい――。
「来年も来れると良いですね……」
秋人は前をむいたまま、白く煙る息に乗せて独り言のように零した。
「なんていうか、こういうの、観に来るの初めてで……いつもはめんどくさがってたから。また……こうやって出かけられればうれしい」
きゅっと指が握りしめられる。
そっと隣の様子を伺うと、祝は素知らぬ顔で光り輝くクリスマスツリーを見ていた。
秋人は顔を前に戻すと、そのまま手を持ち上げてポケットの中に入れた。
●飛鳥ところん
「あすか、赤いバケツをかぶったあのチビちゃんがいいのよ。急いで捕まえるのよ!」
飛鳥は叫ぶなり、チビ雪だるまたちに向かって猛突進した。その姿はウサギというよりもオオカミっぽい。
襲撃に驚いたチビたちがてんでバラバラに逃げ始める。
「飛鳥ちゃん、脅しちゃダメ。優しく呼んであげるの。ほら、こんなふうに」
ころんはぴょこんぴょこんと跳ねるチビたちの中から好みの一体を見つけ出すと、優しく笑いつつ手招きした。
「おいで、おいで。一緒に魔法の国で遊びましょうなの」
一緒に、というフレーズに引かれたのか、腕がキャンディス・ティックのチビが目を輝かせながら飛んできた。
「ころんとお揃いなの。うふふ、かわいい」
チビを追いかけ回していた飛鳥もころんにならってやりかたを改めた。最初は警戒していた赤バケツのチビも、根気よく声掛けしているうちに自ら飛鳥のところへやってきた。
「ふぉぉ、チビを捕まえるのにものすごく時間かかってしまったのよ。ころんお姉さんごめんなさいなのよ」
「ううん、いいの。それよりも魔法の国エリアへ急ぎましょう」
VIPチケットを持っているので、アトラクション待ちの列に並ぶことはない。ふたりが時間を気にしているのは、夜のパレードまでどれだけ遊び倒せるか、ということだった。
チビをしっかり腕に抱くと、ふたりは手を繋いで駆けだした。
エリア門の向こう側に雪をかぶる異国の城下町が見えた。
「あ、雪が降ってきたのよ」
「ほんとだ。見てみて、飛鳥ちゃん。お城に続く通りがものすごくロマンチックなの」
建物の屋根に乗った雪は作りものだが、少し青い色を残す空から降るこの雪は本物だ。しかもいまはクリスマスシーズンとあって、どの店も美しく飾りつけられている。まさに異国を旅している気分だ。
いつまでもロマンチックな気分に浸っていたかったが、スケジュールが押していた。時計で時間を確認すると、ふたりは猛然と行動を開始した。
「先に買い物をしまいましょう。でもその前に、記念写真なの」
蒸気を吹き出す機関車の前で、赤ら顔の車掌さんと一緒にみんなで写真をとった。車掌さんに撮影を頼んで、城と城下町をバックにもう一枚。
お礼を言って別れると、魔法のお菓子屋さんに向かった。
「このお菓子、映画に出てきたやつそっくりなの!」
「いっぱいあって、どれを買うか悩むのよ」
お菓子くらいならころんお姉さんがご馳走してあげる、ところんが胸を叩く。
「どーんと任せなさいなのっ!」
買い物を済ませたふたりは、砂糖たっぷりの甘いお菓子を腕に下げ、様々な味が楽しめるミラクルグミを食べながら城へ向かった。
チビたちが食べたいとせがむので、グミを1個ずつ口に入れてやる。すると――。
「わぁ~、体の色が変わってしまったのよ。カラフルスノーマンズなのよ」
「そういう飛鳥ちゃんのベロも虹色なの。ん、もしかして……ころんも?」
ふたりでフクロウの郵便屋さんの窓に向かってベロを出した。窓際のカウンターではがきを書いていた人が気づいて、ぎょっとした顔をした。
「ごめんなさいなの」
「ごめんなさいなのよ」
神妙に頭を下げたものの、すぐに顔を見合わせて笑いだした。チビたちも楽しそうに笑った。
その後、笑いながら城内を見学し、グリフォンの背に乗って空中飛行を楽しんだ。後ろ髪を引かれる思いで魔法の国をでたあとは、パークの端から順番にアトラクションを回って楽しんだ。
日暮れとともにパークのホテルへ。部屋で軽くシャワーを浴びて(チビたちはミニ冷蔵庫に)からレストランに向かった。予約していた、ガラス張りのテラス席につく。
「メリークリスマスなのよ、ころんお姉さん」
「メリークリスマス、飛鳥ちゃん」
ころんはシャンパン、飛鳥はシャンパン風ジュースが入ったグラスを合わせた。
巨大クリスマスツリーとイルミネーションパレードを上から眺めながら、チビたちと豪華な食事を楽しんだ。
「あそこに奏空ちゃんとたまきちゃんがいるのよ!」
「ツリーの近くに秋人さんと祝さんも見つけたの。手を振ったらころんたちに気づく?」
声は無理でももしかしたら、と手を大きく振ったが、さすがにわからなかったようだ。
ふたりは食事を終えると、チビたちをつれて部屋を戻った。
●さよなら。また来年?
三組はそれぞれの場所で、チビ雪だるまたちと別れの時を迎えた。
ころんと飛鳥は、ホテルの部屋でのんびり女子会(+α)を楽しんでいる時に。
「チビちゃんと遊べて、楽しかったの……」
「さよなら、チビちゃん……」
奏空とたまきは、たまきの家へ向かう道の途中で。
「バイバイ……」
「ありがとう」
たまきの笑顔は少し寂しげだ。
秋人と祝は、祝の家でこたつに入りながらアイスクリームを食べている時に。
「……あ」
淡く黄金色に輝いて崩れ出したチビ雪だるまたちは、キラキラと光る雪の結晶となって少しずつ天へ昇っていった。
――素敵な時間をありがとう。
――メリークリスマス♪
スタッフから話を聞いた『かわいいは無敵』小石・ころん(CL2000993)は、VIPプレミアムチケットを受け取ると、持参したガイドブックを開いた。
「見て、巨大雪だるまはここなの」
みんなで集まってガイドブックをのぞきこむ。
『ゆるゆるふああ』鼎 飛鳥(CL2000093)が、チケットの角が示す先を見て得意げに胸を張った。
「クリスマスツリーの前。あすかの思ったとおりなのよ!」
ここでバイトをしている五麟大学の生徒に頼んで便宜を図ってもらい、覚者たちは長い列の一番前を取っていた。場所も分かったことだし、開園と同時にダッシュすれば、人が大勢集まる前に妖化した巨大雪だるまを倒せるだろう。
あとは自由時間だ。
「頑張りましょうね!」
賀茂 たまき(CL2000994)は工藤・奏空(CL2000955)に微笑みかけた。
奏空が振り向いて、鼻と鼻の先が触れそうになる。
「う、うん。頑張ろう」
頬が熱くなるのを感じながら、たまきはガイドブックへ目を戻した。
奏空はといえば、やはり頬を赤くして入場ゲートを見ている。
「あ~、オープンまだかな?」
そんなふたりを傍で微笑ましく見守りながら、鈴白 秋人(CL2000565)は永倉 祝(CL2000103)に使い捨てカイロを手渡した。
カイロは事前に封を切ってポケットの中で温めておいた。こたつの代わりにはならないが、寒い外へ連れ出した手前、これで少しでも祝を暖かくしてあげたい。
「……あったかい。ありがとう、鈴白さん」
「雪だるま……。張り切って……いや、慎重に頑張りましょう……」
ゲートが開くと同時に、覚者たちは走り出した。
ガラス屋根のあるメインストリートをまっすぐ南下して、クリスマスツリーのあるエリアを目指す。
ころんは走りながらころん流アイドルオーラを放つと、ゲストを出迎えるため通りに出ていたスタッフたちに呼びかけた。
飛鳥も一緒に声を張り上げる。
「妖が出るの。急いで逃げなさい!」
「雪だるまさんが妖になるのよ。危ないから下がってください」
ちょうど、巨大雪だるまが動きだしたところだった。
「スノーマン……!?」
見上げながらつぶやく祝と奏空に、たまきが蒼鋼壁を張る。
「防御は、任せて下さい……!」
「倒しちゃうの、ちょっとためらうくらい可愛い妖だよね」
見た目は、とつぶやいて、奏空は雷雲を空に呼び出した。
「さて、この後楽しく遊ぶ為に……。い、いや……、パーク内の皆の安全を守る為に倒させて貰うよ!」
雲より黄金の獣が解き放たれ、巨大雪だるまの頭に食らいついた。
たまきが地面を鋭く隆起させて、倒れかけた妖を下から刺して止める。
人が続々と集まってきた。
アトラクションに見せかけて楽しませようと、ころんと飛鳥が魔法少女アニメっぽく変身ポーズを決めて覚醒した。
「えい、なのよ!」
飛鳥が振袖をなびかせながら突撃し、グーパンチを雪だるまのまるい腹へ叩き込む。
衝撃で落ちてきた頭を、ころんがキャンディケインで豪快に打ち返す。
「ホームランなの!」
体だけになっても巨大雪だるまの動きは止まらない。マフラーを手に取ると、猛烈な勢いで振り回しはじめた。
第六感が働いた秋人は巨大マフラーを紙一重でかわすと、霧を広げて倒れた仲間たちを癒した。
祝が矢を放って、巨大マフラーを白い体に刺しとめる。
「せっかくだし……。最後はみんなで」
「そうね。そうしましょう」
秋人たちの提案で二人一組みになった。三方向から同時に攻撃を仕掛ける。
巨大雪だるまの体が白い煙と雪の結晶になってはじけ飛び、後に六体の小さな雪だるまが残された。
●奏空とたまき
「可愛らしい小さな雪だるまさんが、沢山!」
たまきはチビ雪だるまたちの姿を一目見るなり、はしゃいだ声を上げた。体を屈めると、腕を広げて青いマフラーのチビを呼んだ。
奏空もたまきの横でしゃがみ込むと、ボンボン付マフラーのチビに向かって白い歯を見せる。
「やっぱり『ぼっち』は寂しいよな。いいよ、一緒に遊ぼうな」
選択の余地はないと悟ったチビたちは、ぴょこんぴょこん、と跳ね飛んで、自ら奏空とたまきの腕に飛び込んだ。
「ふふ……! 動く姿も、先程とは少し違って、可愛いですね!」
チビを抱きかかえて立ちあがると、ふたりは仲間と別れてサンフランシスコエリアへ向かった。
奏空はカニの看板を見上げながら、抱えたチビを赤ん坊のように揺らした。
一応、プランはあるのだが、ここはやはりたまきの希望を聞いてスマートにエスコートしたい。
「……何だか、パパさんみたいですね!」
「え!? あ、これ……べ、別にあやしていたんじゃないから」
あわててチビを下に降ろす。
「それより、どこ行こうか? 俺、実はここ来るの初めてなんだ! あ、でも、ちゃんと調べて来たから……た、たまきちゃんはどこに行きたい? たまきちゃんが行きたいのに付き合うよ!」
たまきもチビを降ろすと、チビ同士で手を繋がせた。
「あまり怖くないアトラクションが良いのですが、いつも奏空さんには、私に合わせて頂いているので、奏空さんが好きそうなアトラクションにチャレンジです……!」
奏空さんが「楽しい」なら、私も「楽しい」ですから、とチビの手を取る。
「え? 俺の行きたい所……? んー、そうだな~」
ほんとはたまきちゃんと「直接」手を繋いでパーク内を歩きたい。……なーんてこと、言えるはずもなく、奏空はちょっぴりがっかりしながら自分のチビと手を繋いだ。
「じゃあさ、魔法使いと恐竜のエリアに行きたいな! ここからだと、恐竜が近いから、先に行こう」
アトラクションの入口にはもうというか、やはりというか、長い順番待ちの列ができていた。現時点で60分待ちだ。ふたりと二体のチビたちは、VIPプレミアムチケットのおかげで列に並ぶことなく、スムーズに探検ツアーのライドに乗ることができた。
「あ、これ。着て。かなり濡れるらしいよ」
奏空は持ってきたレインコートをたまきに渡した。入口ちかくの自販機で売られている使い捨てのものではなく、たまきのために、たまきが着て似あうものを選んで買っておいたものだ。
依頼に向かう前に買い物へ行く暇があったのか、だって?
そこはあえて突っ込まないで欲しい。
ともかく、ふたり(とチビたち)を乗せたライドは、草食恐竜を巡る旅へ出発した。
大きな木のゲートを抜けてすぐ、首長竜が長い首をもたげて出迎えてくれた。鳴き声を上げて、首を伸ばしていく。
ライドを見下す頭の高さに、ふたりは、わぁ、と声をあげた。
その後も穏やかに、ライドは亜熱帯の草木が茂る中を進んでいく。
「あそこにステゴザウルスが」
「どこ? あ、いた!」
あれはどんな恐竜で、こっちはこんな恐竜で、とみんなで指さしながらわいわいしゃべっていると、空から小雪が落ちてきだした。
「雪……」
ライドが右へ折れると同時に、両岸に設置されていた赤いランプが回り出し、けたたましい警告音が鳴り響いた。演出だと分かっていても、雰囲気にのまれて不安になる。
壊れた鉄柵の囲いの影から、小さな肉食恐竜が飛び出した。
「きゃあ!」
奏空はたまきを守ろうとして、とっさに腰を浮かせた。シートの安全バーに置かれていたたまきの手をぎゅっと握りしめる。
小さな肉食恐竜は岸壁の端で立ち止まった。
悔しそうに首を上下に振ってライドを見送る姿に、ようやく我に戻った。
「アトラクションだと分かっていても思わず覚醒しそうになるね。あはは!」
笑って照れを隠しつつ、握っていた手を離そうとした。すると、逆にたまきが手を握り返してきたではないか。
「リアルで……怖いですよね。私も覚醒しそうになっちゃいました」
建物に入るとすぐ、ライドが坂を登りだした。この先に待ち受けているのは、恐竜の王者Tレックスと――。
急流を猛スピードで落ちていくライドを撮った写真の中で、ふたりは二体のチビ雪だるまとともに楽しそうに笑っていた。
●秋人と祝
ぴょこん、ぴょこんと跳ねまわるチビ雪だるまを見て、秋人は思わず頬を緩めそうになった。
実は秋人、大の雪だるま好きなのだ。依頼を引き受けた時からテンション高めだったのだが、今日は祝とも一日中一緒にいられるとあって、心の中はお祭り状態である。イメージを崩さないよう、表情を引き締めるのに一苦労していた。
祝は腕を伸ばすと、青いバケツに白いマフラーのチビを捕まえた。
秋人もとりあえず、すぐそばを通り過ぎようとしていたチビを捕まえた。
こちらは頭にふあふあの耳あてをつけて、首に赤いマフラーをまいている。
「かわいいね」
相変わらず淡々とした様子だが、チビにかける祝の声に弾みというか少し揺らぎが感じられた。
(……よかった、楽しんでもらえてるみたいで。声も弾んでって――え?)
そこでようやく秋人は、祝が震えていることに気づいた。
「永倉さん、ちょっと待ってて」
チビを抱きかかえたまま走り出した。一番近くのレストランに飛び込んで、ホットコーヒーを二つ、テイクアウトする。
店を出たところで、迎えに来た祝たちとぶつかりそうになった。
「じっとしていると寒かったから」
「ああ、すみません。気が回らなくて……。温かいコーヒーです、どうぞ」
「ううん。そんなことない。……ありがとう」
チビたちに熱いコーヒーがかからないよう、そっと蓋をあけて口をつけた。
飲みながらふたりで肩を並べてゆっくりと池へ向かう。
「一緒に、イルミネーションを観ませんか?」
うん、と頷く祝に秋人の口元がわずかに緩む。
チビが冷やかし始めると、誤魔化すように弛んだマフラーをまき直してやった。
「でも、夜までまだ時間があるね」
「ですね。VIPチケットもあることですし、何かアトラクションに乗りますか?」
首を横に振った祝の腕の中で、チビがもぞもぞと動いて抗議した。
秋人の腕の中でも同じようにチビが騒いでいる。
「まあまあ……アトラクション以外にも楽しく過ごせる方法は沢山ありますよ。そうだ。とりあえず記念写真を撮りに行きませんか? ……そうですね。うーん、どこがいいかな」
通りがかったスタッフに尋ねると、ハリウッド・エリアにいい撮影スポットがあるという。池のほとりを歩き、景色を楽しみながら向かうことにした。
かの有名な「HOLLYWOOD」の文字が入った山――実は「書き割り」なのだが、を背景にまず一枚。
「パームヤシと雪だるま……南国の木に真冬の象徴という組み合わせ、考えるとおかしいですね」
「……うん。でも、こういうのもあっていいと思う。記念だし」
レストランで遅い昼食を取りながら、買い取った写真を眺めているうちに、窓の外でちらちらと雪が降りだした。
チビたちが外へ出ようと騒ぎ出す。
「ほかも見て回りましょうか」
高級ショッピング街ビバリーヒルズをイメージして作られた、ビバリーヒルズブランジェリーからメルズドライブインまでの通りを、パークのキャラクターたちを探して回った。
「あ、あそこにいますよ。一緒に写真を撮ってもらいましょう」
ただ手を振っただけなのに、乗りのいいキャラクターたちは大げさな身振りで近づいてきて、秋人と祝の肩に腕を回し抱きしめてくれた。
そのたびに、ふたりと着ぐるみの間で押しつぶされるチビたちがプンプンと怒った。だから、ここで撮った写真のチビたちは、どれもふくれっ面をしている。
雪だるまのふくれっ面を初めて見た、と祝が笑うと、秋人もついに表情を崩して笑いだした。
「あ……!」
空が茜色から藍色に変わってまもなく、建物のライトアップが始まった。雪の降る中、クリスマス仕様の通り一面がキラキラと輝きだす。
「イルミネーション……綺麗」
クリスマスツリーを目指して歩くうちに自然と指先が絡まった。
ほんのりと互いのぬくもりが感じられる程度の、軽いふれあい――。
「来年も来れると良いですね……」
秋人は前をむいたまま、白く煙る息に乗せて独り言のように零した。
「なんていうか、こういうの、観に来るの初めてで……いつもはめんどくさがってたから。また……こうやって出かけられればうれしい」
きゅっと指が握りしめられる。
そっと隣の様子を伺うと、祝は素知らぬ顔で光り輝くクリスマスツリーを見ていた。
秋人は顔を前に戻すと、そのまま手を持ち上げてポケットの中に入れた。
●飛鳥ところん
「あすか、赤いバケツをかぶったあのチビちゃんがいいのよ。急いで捕まえるのよ!」
飛鳥は叫ぶなり、チビ雪だるまたちに向かって猛突進した。その姿はウサギというよりもオオカミっぽい。
襲撃に驚いたチビたちがてんでバラバラに逃げ始める。
「飛鳥ちゃん、脅しちゃダメ。優しく呼んであげるの。ほら、こんなふうに」
ころんはぴょこんぴょこんと跳ねるチビたちの中から好みの一体を見つけ出すと、優しく笑いつつ手招きした。
「おいで、おいで。一緒に魔法の国で遊びましょうなの」
一緒に、というフレーズに引かれたのか、腕がキャンディス・ティックのチビが目を輝かせながら飛んできた。
「ころんとお揃いなの。うふふ、かわいい」
チビを追いかけ回していた飛鳥もころんにならってやりかたを改めた。最初は警戒していた赤バケツのチビも、根気よく声掛けしているうちに自ら飛鳥のところへやってきた。
「ふぉぉ、チビを捕まえるのにものすごく時間かかってしまったのよ。ころんお姉さんごめんなさいなのよ」
「ううん、いいの。それよりも魔法の国エリアへ急ぎましょう」
VIPチケットを持っているので、アトラクション待ちの列に並ぶことはない。ふたりが時間を気にしているのは、夜のパレードまでどれだけ遊び倒せるか、ということだった。
チビをしっかり腕に抱くと、ふたりは手を繋いで駆けだした。
エリア門の向こう側に雪をかぶる異国の城下町が見えた。
「あ、雪が降ってきたのよ」
「ほんとだ。見てみて、飛鳥ちゃん。お城に続く通りがものすごくロマンチックなの」
建物の屋根に乗った雪は作りものだが、少し青い色を残す空から降るこの雪は本物だ。しかもいまはクリスマスシーズンとあって、どの店も美しく飾りつけられている。まさに異国を旅している気分だ。
いつまでもロマンチックな気分に浸っていたかったが、スケジュールが押していた。時計で時間を確認すると、ふたりは猛然と行動を開始した。
「先に買い物をしまいましょう。でもその前に、記念写真なの」
蒸気を吹き出す機関車の前で、赤ら顔の車掌さんと一緒にみんなで写真をとった。車掌さんに撮影を頼んで、城と城下町をバックにもう一枚。
お礼を言って別れると、魔法のお菓子屋さんに向かった。
「このお菓子、映画に出てきたやつそっくりなの!」
「いっぱいあって、どれを買うか悩むのよ」
お菓子くらいならころんお姉さんがご馳走してあげる、ところんが胸を叩く。
「どーんと任せなさいなのっ!」
買い物を済ませたふたりは、砂糖たっぷりの甘いお菓子を腕に下げ、様々な味が楽しめるミラクルグミを食べながら城へ向かった。
チビたちが食べたいとせがむので、グミを1個ずつ口に入れてやる。すると――。
「わぁ~、体の色が変わってしまったのよ。カラフルスノーマンズなのよ」
「そういう飛鳥ちゃんのベロも虹色なの。ん、もしかして……ころんも?」
ふたりでフクロウの郵便屋さんの窓に向かってベロを出した。窓際のカウンターではがきを書いていた人が気づいて、ぎょっとした顔をした。
「ごめんなさいなの」
「ごめんなさいなのよ」
神妙に頭を下げたものの、すぐに顔を見合わせて笑いだした。チビたちも楽しそうに笑った。
その後、笑いながら城内を見学し、グリフォンの背に乗って空中飛行を楽しんだ。後ろ髪を引かれる思いで魔法の国をでたあとは、パークの端から順番にアトラクションを回って楽しんだ。
日暮れとともにパークのホテルへ。部屋で軽くシャワーを浴びて(チビたちはミニ冷蔵庫に)からレストランに向かった。予約していた、ガラス張りのテラス席につく。
「メリークリスマスなのよ、ころんお姉さん」
「メリークリスマス、飛鳥ちゃん」
ころんはシャンパン、飛鳥はシャンパン風ジュースが入ったグラスを合わせた。
巨大クリスマスツリーとイルミネーションパレードを上から眺めながら、チビたちと豪華な食事を楽しんだ。
「あそこに奏空ちゃんとたまきちゃんがいるのよ!」
「ツリーの近くに秋人さんと祝さんも見つけたの。手を振ったらころんたちに気づく?」
声は無理でももしかしたら、と手を大きく振ったが、さすがにわからなかったようだ。
ふたりは食事を終えると、チビたちをつれて部屋を戻った。
●さよなら。また来年?
三組はそれぞれの場所で、チビ雪だるまたちと別れの時を迎えた。
ころんと飛鳥は、ホテルの部屋でのんびり女子会(+α)を楽しんでいる時に。
「チビちゃんと遊べて、楽しかったの……」
「さよなら、チビちゃん……」
奏空とたまきは、たまきの家へ向かう道の途中で。
「バイバイ……」
「ありがとう」
たまきの笑顔は少し寂しげだ。
秋人と祝は、祝の家でこたつに入りながらアイスクリームを食べている時に。
「……あ」
淡く黄金色に輝いて崩れ出したチビ雪だるまたちは、キラキラと光る雪の結晶となって少しずつ天へ昇っていった。
――素敵な時間をありがとう。
――メリークリスマス♪
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
