ウェスタン・ムービーショー
●西部劇さながらに
乾いた草の玉が転がる砂地を、ウェスタンブーツが踏みしめた。
ブーツだけではない。ズボンも、ジャケットも、被る帽子まで西部劇映画の中に出てくる格好そのものだ。
彼は無精髭をはやした男だった。
馬をつなぎ、木造の建物へと入っていく。
開かれたウェスタンドアの向こうでは、眼帯の男や無骨な巨漢がビールをあおっている。
きぃというドアの開閉音に、彼らは一斉に振り返った。
振り返り、そして銃を抜く。
なぜならドアを通った彼もまた、両腰にさげた銃を抜いていたからだ。
「さあ、地獄のショーが始まるぜ」
――という、映画があった。
無名の監督と無名の俳優たちによる映画で、世にヒットすることなく埋もれていったが、フィルムに残された情熱だけは現代へ残り、それはいつしか妖へと昇華した。
●
久方 相馬(nCL2000004)はある映画ロケ地の地図を広げ、このように説明した。
「妖が発生した。心霊系ランク1。緊急の危機というほど強力ではないし、まだ実害も出ていない。けれどランクが進行する恐れも、発生地帯に人が立ち入る恐れもある。今のうちにこれらを撃破してほしい」
ロケ地は元々西部劇の雰囲気を楽しむためのテーマパークを兼ねており、今は不況のあおりで倒産。すべてまとめて廃墟化しているそうだ。
「主な発生地点は三つ。それらをまとめてある。うまくチーム分けしてあたってくれ」
乾いた草の玉が転がる砂地を、ウェスタンブーツが踏みしめた。
ブーツだけではない。ズボンも、ジャケットも、被る帽子まで西部劇映画の中に出てくる格好そのものだ。
彼は無精髭をはやした男だった。
馬をつなぎ、木造の建物へと入っていく。
開かれたウェスタンドアの向こうでは、眼帯の男や無骨な巨漢がビールをあおっている。
きぃというドアの開閉音に、彼らは一斉に振り返った。
振り返り、そして銃を抜く。
なぜならドアを通った彼もまた、両腰にさげた銃を抜いていたからだ。
「さあ、地獄のショーが始まるぜ」
――という、映画があった。
無名の監督と無名の俳優たちによる映画で、世にヒットすることなく埋もれていったが、フィルムに残された情熱だけは現代へ残り、それはいつしか妖へと昇華した。
●
久方 相馬(nCL2000004)はある映画ロケ地の地図を広げ、このように説明した。
「妖が発生した。心霊系ランク1。緊急の危機というほど強力ではないし、まだ実害も出ていない。けれどランクが進行する恐れも、発生地帯に人が立ち入る恐れもある。今のうちにこれらを撃破してほしい」
ロケ地は元々西部劇の雰囲気を楽しむためのテーマパークを兼ねており、今は不況のあおりで倒産。すべてまとめて廃墟化しているそうだ。
「主な発生地点は三つ。それらをまとめてある。うまくチーム分けしてあたってくれ」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
発生する妖は全て西部劇の登場人物のような格好と装備をもち、無限に銃を発砲することができます。
エリアは大きく分けて三つ。
・酒場エリア:吹き抜け二階建ての酒場をイメージした店舗です。椅子とテーブル、カウンターがそれぞれあり、無数のガンマン風妖が多数。数は少ないですが個体戦力がやや高め。
・ストリートエリア:二階建てが並ぶストリートです。二階の窓から狙うスナイパーや馬にのったガンマン、農具を持った民衆風の妖などが発生。個体戦力は低いが色々と工夫があると有利に。
・荒野エリア:山賊たちのアジトをイメージしたエリアです。複数のテントから武装した山賊風妖が複数発生します。数がとても多いが個体戦力が低い。
これらの妖を全て撃破しましょう。
妖はランク1で思考能力は低く、逃げるようなことはないと思うので複雑なことは考えずに場の空気を楽しんでください。
効率よりもロマンを優先すると、よりお楽しみ頂けると思われます。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
9/9
公開日
2015年12月05日
2015年12月05日
■メイン参加者 9人■

●酒場Aパート
砂塵吹く荒れ道を、『相棒捜索中』瑛月・秋葉(CL2000181)と『ゴシップ記者』風祭・誘輔(CL2001092)が歩いていた。
「なんや風祭君と一緒かいな」
「文句あんのか? ぼやくのはいいが足引っ張るんじゃねーぞ」
「そっちこそ」
二人はウェスタンドアを蹴り開けると、大股に店内へ踏み込んだ。
テーブルに置かれたビールジョッキを転倒させる勢いで、椅子とテーブルに足をかける。
周囲を見回すと、ウェスタンハットに革ジャケットのごろつきどもが今にも銃を抜こうと腰に手をかけていた。
「こりゃマジに映画みてえな連中だな」
「それっぽい格好してくれば良かったわ」
「なんだテメェら」
ランク1の妖に会話能力はない。恐らくそういうテンプレートで発音しているのだろう……が、二人はあえて応えてやった。
「ったくどいつもシケたツラしやがって」
「僕らは『brat(悪ガキ)』」
「このシマ、もらうぜ」
秋葉が銃を抜くのと誘輔が腕を機関銃に変形させるのは同時だった。
酒場のテーブルというテーブルが一斉にひっくり返り、バリケードと化す。
テーブルを倒すより酒を飲むことを優先した一握りの連中は誘輔の掃射で蜂の巣だ。
二階の手すりからライフル片手に慌てて飛び出してきた男へ秋葉が一発。悲鳴を上げて落下してくるライフルの男。
ひらひらと落ちてきたウェスタンハットをキャッチして被る秋葉。
懐からジッポライターを取り出し、煙草に火をつけた。
「ところで風祭君」
「ンだよ闘技場のリベンジは今受け付けてねーぞ」
「ネイム君どこいったん」
「……あー」
『名も無きエキストラ』エヌ・ノウ・ネイム(CL2000446)は椅子に腰掛け、ワイングラスを優雅に揺らしていた。
酒場の二階にある個室、その一番端の窓際である。元はスタッフルームとなっていた場所らしいが、綺麗に西部劇の安宿を再現している。
この場合の宿とは女を買うためのハコという意味だが。
「おやおや、これは刺激的ですねえ」
エヌの前にいるのは妖艶な遊女ではない。ショットガンを構えた髭のごろつきである。
だというのにエヌは、優雅に足を組み替えてみせる。
「僕は別に、西部劇もガンアクションも、なんなら背中を預け合う相棒も要らないんですよ。酒や女だって……フフ」
グラスを逆さにするエヌ。
「僕が欲しいのは、ひとつだけ」
身を乗り出す。
反射的にショットガンを撃とうとした男の腕に電撃が走り、発砲するまえに焼き切れて飛んでいった。
「悲鳴と怒声のオーケストラですよ。さあ始まりますよ。来賓席に行こうじゃありませんか」
エヌは椅子から立ち上がると、倒れた妖を絨毯のように踏みつけて進んだ。
そのまま壁をすり抜け、どこかしらへと消えていく。
●ストリートAパート
『コルトは俺のパスポート』ハル・マッキントッシュ(CL2000504)はリンゴを手の中で転がしながらストリートを歩いていた。
今にもカントリーミュージックが流れてきそうな雰囲気の建物群である。
後ろには気弱そうな眼鏡の少女と妙に近づきがたい成人男性という組み合わせである。
「おっと、ここを通るにゃお題がいるんだ。命というお題がな」
保安官のバッチをつけた男がライフルを手に立ちはだかる。
左右の家々の二階窓が開き、武装した男たちが銃口を覗かせた。
帽子のつばで目元を隠し、リンゴを高く放り投げるハル。
それをキャッチしたとき、彼の……いや、『彼ら』の姿は一変していた。
「いっえーい! ショーターイム!」
眼鏡と人格を異次元に投げ捨ててきた治子。が、ごつごつとした機関銃をどこからともなく引っ張り出した。
「ジェットストリームにアタックですよぉ! んッキャー!」
ギザギザした歯を晒して機関銃を乱射。身体をがくんがくん揺さぶられながらまき散らした弾に保安官はたちまちトマトペーストとなり、建物から襲いかかろうとしていた連中も一斉に中へ引っ込んだ。
むろん引っ込んだのは彼らだけではない。
赤髪赤目にチェンジしたハルやまるで美少女のような様相にチェンジした冬月はそれぞれ馬車の荷台に身を潜ませる。
「うわあ治子ってばすごい迫力。よーしオレも暴れるぞー!」
飛び出していこうとする冬月を察して、ハルは二台に積んであった干し草ロールの縄を切った。
転がり落ちる干し草とその音に思わず身を乗り出した狙撃手。荷台の反対側から飛び出した冬月は深緑鞭を飛ばして相手の首に巻き付けた。
「つっかまえた!」
引きずり下ろしつつ銃を明後日の方向に乱射。
牽制しながら別の物陰へと駆け込んでいく。
一方のハルは落ちてきた狙撃手の頭をきっちり狙って射撃。
ついでに馬に自分の帽子を乗っけて尻を蹴飛ばすと、ストリートを走らせた。
「二人ともテンションたっけーな。ハルコはあのモードだしフユツキはイミワカンネーし。ま、俺はやれることをやるかね」
呟くと、ハルは走る荷台を盾にしながらストリートを走り始めた。
二台の板や地面が次々と弾丸で跳ねていく。
ハルは途中で適当な物陰に転がり込んで、ありもしない帽子をおさえてため息をついた。
「穴とか開けないでくれよ? 一張羅なんだ」
●荒野Aパート
元はテーマパークとはいえ既に廃墟。荒野エリアへ続く道は本物のように荒れ果てていた。
今にも山賊か何かが出てきそうだ。
「あのね! ドクターが言ってたんだ、『びーきゅーえいがのかぞえやくまん』!」
「数え役満? 何がです」
「わかんない!」
無垢な少年の目をして笑う『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)。彼の手には日本刀が握られている。子供が持って歩くオモチャにしてはずいぶんと物騒だ。
『鉄仮面の乙女』風織 紡(CL2000764)は仮面にドレスの組み合わせ、足はあろうことか裸足という普通に生きていればまずお目にかけないような格好をしていた。
そんな二人を背にけらけら笑う『B・B』黒崎 ヤマト(CL2001083)。
「なんか遊園地みたいだな。すげーリアルな……お?」
さして隠れていない場所にテント群がある。盗賊のアジトという設定のエリアである。
だが今は盗賊を模した妖がたむろし、義眼の男や隻腕の男などがわらわらと現われ、銃や剣を抜いていた。
「名乗っていーぞ」
「うん! バウンティハンター参上!」
「なんだとぉ?」
盗賊のボスと思しき男が金ぴかの銃を手に現われた。
「テメェら身ぐるみ置いてとっとと――」
言い終わる前に。
紡は接近。ボスの口から後頭部にかけて剣で貫通させていた。
「ぶっ殺しちまってわりーですね、待ってるのだりーんですよ」
腹に靴底を押しつけ、剣を引き抜く紡。
銃を虚空に打ちながら仰向けに倒れるボスを中心に、盗賊たちが一斉に襲いかかってくる。
紡はナイフを投擲。義眼の男の目に刺さり、思わず掴もうとした瞬間に接近し、ナイフを抜きながらムーンサルト。
俺の義眼と言って虚空に手を翳した男の首と胴体そして足首までにかけて七箇所が水平に切断された。
紡によるものではない。彼に駆け寄ったきせきによるものだ。
「わーっ、これがびーきゅーえいがなんだね! えへへ、やくまんするためにぼくがんばるね!」
別の男の心臓に刀を差し、引き抜く。
吹き上がる血を頭から浴びながら、きせきは無邪気な少年の目をして笑った。
「おいおい、オレが『賞金とお宝をよこせ!』って言ってからだろーがよ。ったくしょうがねえな!」
背中、というより首筋に手を突っ込むヤマト。
「でてこいオレのレイジングブル! 俺たちの弾丸を見せてやろうぜ!」
引っ張り出したのはギターだった。
ギターを構える。繰り出された剣をのけぞってかわし、相手の後ろに回り込んで蹴り飛ばしつつピックを取り出す。
「ショータイムだ!」
ギターを強烈に弾き鳴らし、ヤマトは周囲の山賊たちを波紋状に吹き飛ばした。
●酒場Bパート
弾が飛んできていない時が無い。
くわえ煙草の先端が銃撃で吹き飛んでいった秋葉は眉を上げた。
「せわしない連中やなあ」
倒したテーブルの裏に背をつけて胸ポケットを探った。
ライターを取り出すも、それが銃撃で弾かれて飛んでいく。
「あっ俺のライター!」
思わず立ち上がる秋葉。飛んできた銃撃を剣で弾くと、ライターを追って駆けだした。
キャッチしようとしたところで銃弾に当たり、また当たり、また当たり、やっと地面へころりと落ちる。
それを拾い上げた所で、ふと気づく。
周囲を銃を構えたごろつきが埋めていた。
「ああ、気にせんで。コレ拾いに来ただけやから……って、聞くわけ無いか!」
素早く伏せる秋葉。その上を誘輔が飛び越え、ごろつきたちを蹴り飛ばす。
下段斬りで後方のごろつきを転倒させる秋葉。
そのまま二人とも時計回りに軸回転。秋葉は剣をエイトターンで閃かせ、誘輔は機関銃を乱射。
ごろつきたちが一斉に倒れていく。
「囲まれても案外なんとかなるもんやなあ」
「ライターなんか拾いにいくからだ、アホ」
「はあ……」
ライターを見てみると、思いっきり破損している。大事にしている方はたまたま置いてきてきて、今回はその辺のライターで代用していた。なので損害は軽微だが、火がないと煙草が吸えない。
と、その途端。
二階の吹き抜けから無数の男たちが現われ、ライフルをこちらに向けてぐるりと囲んできた。
「テメェ、よくもやりやがったな!」
「え、なんのこと?」
「乗り込んだこといってんのか? にしちゃあタイミングが絶妙すぎやしねえかい」
と言いつつ、二人は素早くカウンターテーブルの向こう側へ。
バーテン風の男に銃口を突きつけて黙らせる秋葉。誘輔は近くの酒瓶を手に取ると、天空に放り投げた。
一秒足らずで粉砕。
「こりゃたいした腕だ」
次は数本まとめて放り投げ――つつ、自分もカウンターの上に飛び出した。
狙いを定め損ねた男たちに機関銃射撃。
そうしている間に秋葉は階段を駆け上がり、通路をジグザグに駆け抜けながら男たちを切り伏せていった。
「ほい、いっちょあがり」
手すりを飛び越えて着地する秋葉。
「火ぃ貸して、火」
「あ? ライターねえぞ」
「あるやんほら」
指で手招きする秋葉。
誘輔は左右非対称に顔を歪めると、自分の煙草を彼の煙草に押し当てた。
ショットガンを持ってゆーっくりと顔を出すバーテン。
二人はちらりと横目で見て、同時に発砲。バーテンは頭を吹っ飛ばしてくたばった。
彼の後ろにある貯蔵庫らしき扉が開く。
そこには。
「いやー、お見事お見事」
優雅に足を組んだエヌが、ぱちんぱちんとゆっくり拍手をしていた。
「なんやネイム君、今更出てきたんかい」
「お前、今まで何してたんだ?」
「いやいや」
エヌは両手を翳す。
「なあにも?」
嘘丸出しの口調で、彼は笑った。
●ストリートBパート
「ヘイ、タマ無しのお嬢様ァ! 飴ちゃんあげるからこっちおーいで!」
家屋の二階部分を壁ごと吹き飛ばし、治子はゲラゲラと笑った。
そんな彼女を後ろから狙うべく、物陰から飛び出す男たち。
「はいチーズ!」
ぐるりと反転。歯を見せて笑う治子。
自分の身体も激しく揺さぶるような機関銃射撃が、彼らをたちまち穴あきチーズに変えていく。
「死ねぇ!」
金物屋の上から身を乗り出した男が治子めがけて射撃。
弾丸が彼女の胸に直撃しよう――とした寸前、ハルが飛び出して弾を身体で受け止めた。
「ぐうっ!」
「遮蔽物くーん!」
「おいハルコおまえ今なんつった!」
「ハールくーん!! たよりになーるーう!」
うりうりと言って肘で(傷口を)小突いてくる治子。
「まあいいや、フユツキのやつまねさせて貰うぜ!」
ハルはツルの投げ縄を放つとスナイパーの首に引っかけて引きずり下ろし、頭をズドンと打ち抜いた。
これで大体は片付いた……と思うが。
「馬小屋がまだなんだよねー。ほーら出ておいでー、可愛いオレが迎えに来たよー」
顔の横でぐーぱーしてみせる冬月。
ゆっくりゆっくりと薄暗い馬小屋に侵入する。
右よし、左よし。
誰も居ないな――と思った瞬間上から農夫が雄叫びをあげながら降ってきた。
四つ股の農具が繰り出されるが前方へ転がって回避。
銃撃を加えようとするも腕に縄が巻き付いた。さらなる伏兵だ。
農夫が別の農具を持って襲いかかってくる。冬月はハイキックでそれを迎撃。
蹴った勢いを乗せて身体を捻り、農夫の首に両足を挟み込む。ねじりを逆方向に戻して首をへし折た。
だがこれで終わりでは無い。先程の伏兵が拳銃で撃ってくる。
冬月は咄嗟にその場にぺたんと寝そべって回避。
しつつ、腕にからまったロープをあえて引っ張った。
バランスを崩して落ちてくる伏兵。
「おっとそこまでだ。ホールドアップ! 意味わかるか?」
馬乗りになって銃を押し当てるハル。
ゆっくり銃を手放す伏兵。
「よしよし。じゃあお前は……」
「穴あきチーズの刑ダァー! イーヤッハー!」
壁をぶち破って飛び込んできた治子が、機関銃を向けて全力射撃。
ハルは慌てて飛び退いた。
「ハッピーですか兄弟! しけた顔してたら穴あきチーズになっちゃいますよー!」
「今なるところだったんだよ! あっぶねえ!」
そんなやりとりをするハルと治子を見て、冬月は肩をすくめた。
「二人とも、中良いね」
●荒野Bパート
ボスを喪った盗賊たちはバラバラだ! いや、元々統率のとれた連中ではない。
「てーやー」
きせきはアメリカ人の子供がライトセイバーごっこで遊ぶような気軽さで男の足を切断すると、片足になった男を突きでごろごろと追い詰め、仰向けになって命乞いのようなことを言った所で首をはねるという遊びをしていた。
「あのね、これがびーきゅーえいがなんだって。上手にできたかな!」
テレビゲームでハイスコアをとったような顔をして笑うきせき。
「それとね、今日のためにこれ覚えたんだよ!」
きせきは地面に向かって刀を一閃。すると、衝撃が弧を描いて奔り、襲いかかろうとしていた山賊たちを一斉に切り裂いた。
血しぶきがシャワーのように吹き上がっていく。
そのなかを駆け抜ける紡。
崩れ落ちる男の膝、肩、後頭部を踏み台にして飛ぶと、空中でくるくるときりもみ回転。
一生懸命狙いを定めようとしていた盗賊の眼前へ着地すると同時に身体を上から下へと切断。
横合いから飛んできた弾丸を剣で持って切断した。
「ははー、一騎当千ですよー、あたしはー」
ゆらーりと身体と首を傾げる紡。
叫び声をあげて斬りかかってきた盗賊の剣をナイフで受けると、目だけをぎょろりと彼の方に向けた。
異様な柔軟さで蹴りを放ち、男を突き飛ばす。
突き飛ばされた男は後ろの男にぶつかり、そのまた後ろの男と巻き込んでテントへと突っ込んでいく。
「派手だなあ二人とも。よーし、ギターだけじゃそろそろ足りねえと思ってたんだ」
ヤマトは手を空に翳すと、パチンと指を鳴らした。
「ばーにんっ!」
倒れた男たちがテントごと爆発し、炎の柱に包まれていく。
更にヤマトはギターから炎を噴射させ、野球のバットのように構えてぶん回す。
後ろから襲いかかってきた盗賊は不幸にもその直撃をくらい、黒煙をあげならかなたへと飛んでいった。
「っしゃ、そんじゃあそろそろボスをみんなで倒しにいくか!」
「ボスってこいつじゃねーですか?」
紡が親指でもって、倒れた盗賊のボスらしき男を指さした。
「あれー、死んじゃってるね」
「そういや最初にやっちまったか」
ボスに背を向ける三人。
それを見計らって、靴底から隠し銃を抜いたボスはゆっくりと立ち上がりヤマトの後頭部へ鉛玉をくらわ――。
「と見せかけて!」
振り向きざまにファイヤーギターをフルスイングするヤマト。
同じく刀を繰り出すきせき。
同じくレイピアを突き刺す紡。
オーバーキルで滅多切りにされたボスは崩れ落ち、三人は黙ってハイタッチした。
こうして、古びたテーマパークに現われた妖は退治された。
この地はただの廃墟となり、やがて木や草に覆われ、いつしか誰かの手によって拓かれる。
その日まで、土地は眠るのみである。
砂塵吹く荒れ道を、『相棒捜索中』瑛月・秋葉(CL2000181)と『ゴシップ記者』風祭・誘輔(CL2001092)が歩いていた。
「なんや風祭君と一緒かいな」
「文句あんのか? ぼやくのはいいが足引っ張るんじゃねーぞ」
「そっちこそ」
二人はウェスタンドアを蹴り開けると、大股に店内へ踏み込んだ。
テーブルに置かれたビールジョッキを転倒させる勢いで、椅子とテーブルに足をかける。
周囲を見回すと、ウェスタンハットに革ジャケットのごろつきどもが今にも銃を抜こうと腰に手をかけていた。
「こりゃマジに映画みてえな連中だな」
「それっぽい格好してくれば良かったわ」
「なんだテメェら」
ランク1の妖に会話能力はない。恐らくそういうテンプレートで発音しているのだろう……が、二人はあえて応えてやった。
「ったくどいつもシケたツラしやがって」
「僕らは『brat(悪ガキ)』」
「このシマ、もらうぜ」
秋葉が銃を抜くのと誘輔が腕を機関銃に変形させるのは同時だった。
酒場のテーブルというテーブルが一斉にひっくり返り、バリケードと化す。
テーブルを倒すより酒を飲むことを優先した一握りの連中は誘輔の掃射で蜂の巣だ。
二階の手すりからライフル片手に慌てて飛び出してきた男へ秋葉が一発。悲鳴を上げて落下してくるライフルの男。
ひらひらと落ちてきたウェスタンハットをキャッチして被る秋葉。
懐からジッポライターを取り出し、煙草に火をつけた。
「ところで風祭君」
「ンだよ闘技場のリベンジは今受け付けてねーぞ」
「ネイム君どこいったん」
「……あー」
『名も無きエキストラ』エヌ・ノウ・ネイム(CL2000446)は椅子に腰掛け、ワイングラスを優雅に揺らしていた。
酒場の二階にある個室、その一番端の窓際である。元はスタッフルームとなっていた場所らしいが、綺麗に西部劇の安宿を再現している。
この場合の宿とは女を買うためのハコという意味だが。
「おやおや、これは刺激的ですねえ」
エヌの前にいるのは妖艶な遊女ではない。ショットガンを構えた髭のごろつきである。
だというのにエヌは、優雅に足を組み替えてみせる。
「僕は別に、西部劇もガンアクションも、なんなら背中を預け合う相棒も要らないんですよ。酒や女だって……フフ」
グラスを逆さにするエヌ。
「僕が欲しいのは、ひとつだけ」
身を乗り出す。
反射的にショットガンを撃とうとした男の腕に電撃が走り、発砲するまえに焼き切れて飛んでいった。
「悲鳴と怒声のオーケストラですよ。さあ始まりますよ。来賓席に行こうじゃありませんか」
エヌは椅子から立ち上がると、倒れた妖を絨毯のように踏みつけて進んだ。
そのまま壁をすり抜け、どこかしらへと消えていく。
●ストリートAパート
『コルトは俺のパスポート』ハル・マッキントッシュ(CL2000504)はリンゴを手の中で転がしながらストリートを歩いていた。
今にもカントリーミュージックが流れてきそうな雰囲気の建物群である。
後ろには気弱そうな眼鏡の少女と妙に近づきがたい成人男性という組み合わせである。
「おっと、ここを通るにゃお題がいるんだ。命というお題がな」
保安官のバッチをつけた男がライフルを手に立ちはだかる。
左右の家々の二階窓が開き、武装した男たちが銃口を覗かせた。
帽子のつばで目元を隠し、リンゴを高く放り投げるハル。
それをキャッチしたとき、彼の……いや、『彼ら』の姿は一変していた。
「いっえーい! ショーターイム!」
眼鏡と人格を異次元に投げ捨ててきた治子。が、ごつごつとした機関銃をどこからともなく引っ張り出した。
「ジェットストリームにアタックですよぉ! んッキャー!」
ギザギザした歯を晒して機関銃を乱射。身体をがくんがくん揺さぶられながらまき散らした弾に保安官はたちまちトマトペーストとなり、建物から襲いかかろうとしていた連中も一斉に中へ引っ込んだ。
むろん引っ込んだのは彼らだけではない。
赤髪赤目にチェンジしたハルやまるで美少女のような様相にチェンジした冬月はそれぞれ馬車の荷台に身を潜ませる。
「うわあ治子ってばすごい迫力。よーしオレも暴れるぞー!」
飛び出していこうとする冬月を察して、ハルは二台に積んであった干し草ロールの縄を切った。
転がり落ちる干し草とその音に思わず身を乗り出した狙撃手。荷台の反対側から飛び出した冬月は深緑鞭を飛ばして相手の首に巻き付けた。
「つっかまえた!」
引きずり下ろしつつ銃を明後日の方向に乱射。
牽制しながら別の物陰へと駆け込んでいく。
一方のハルは落ちてきた狙撃手の頭をきっちり狙って射撃。
ついでに馬に自分の帽子を乗っけて尻を蹴飛ばすと、ストリートを走らせた。
「二人ともテンションたっけーな。ハルコはあのモードだしフユツキはイミワカンネーし。ま、俺はやれることをやるかね」
呟くと、ハルは走る荷台を盾にしながらストリートを走り始めた。
二台の板や地面が次々と弾丸で跳ねていく。
ハルは途中で適当な物陰に転がり込んで、ありもしない帽子をおさえてため息をついた。
「穴とか開けないでくれよ? 一張羅なんだ」
●荒野Aパート
元はテーマパークとはいえ既に廃墟。荒野エリアへ続く道は本物のように荒れ果てていた。
今にも山賊か何かが出てきそうだ。
「あのね! ドクターが言ってたんだ、『びーきゅーえいがのかぞえやくまん』!」
「数え役満? 何がです」
「わかんない!」
無垢な少年の目をして笑う『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)。彼の手には日本刀が握られている。子供が持って歩くオモチャにしてはずいぶんと物騒だ。
『鉄仮面の乙女』風織 紡(CL2000764)は仮面にドレスの組み合わせ、足はあろうことか裸足という普通に生きていればまずお目にかけないような格好をしていた。
そんな二人を背にけらけら笑う『B・B』黒崎 ヤマト(CL2001083)。
「なんか遊園地みたいだな。すげーリアルな……お?」
さして隠れていない場所にテント群がある。盗賊のアジトという設定のエリアである。
だが今は盗賊を模した妖がたむろし、義眼の男や隻腕の男などがわらわらと現われ、銃や剣を抜いていた。
「名乗っていーぞ」
「うん! バウンティハンター参上!」
「なんだとぉ?」
盗賊のボスと思しき男が金ぴかの銃を手に現われた。
「テメェら身ぐるみ置いてとっとと――」
言い終わる前に。
紡は接近。ボスの口から後頭部にかけて剣で貫通させていた。
「ぶっ殺しちまってわりーですね、待ってるのだりーんですよ」
腹に靴底を押しつけ、剣を引き抜く紡。
銃を虚空に打ちながら仰向けに倒れるボスを中心に、盗賊たちが一斉に襲いかかってくる。
紡はナイフを投擲。義眼の男の目に刺さり、思わず掴もうとした瞬間に接近し、ナイフを抜きながらムーンサルト。
俺の義眼と言って虚空に手を翳した男の首と胴体そして足首までにかけて七箇所が水平に切断された。
紡によるものではない。彼に駆け寄ったきせきによるものだ。
「わーっ、これがびーきゅーえいがなんだね! えへへ、やくまんするためにぼくがんばるね!」
別の男の心臓に刀を差し、引き抜く。
吹き上がる血を頭から浴びながら、きせきは無邪気な少年の目をして笑った。
「おいおい、オレが『賞金とお宝をよこせ!』って言ってからだろーがよ。ったくしょうがねえな!」
背中、というより首筋に手を突っ込むヤマト。
「でてこいオレのレイジングブル! 俺たちの弾丸を見せてやろうぜ!」
引っ張り出したのはギターだった。
ギターを構える。繰り出された剣をのけぞってかわし、相手の後ろに回り込んで蹴り飛ばしつつピックを取り出す。
「ショータイムだ!」
ギターを強烈に弾き鳴らし、ヤマトは周囲の山賊たちを波紋状に吹き飛ばした。
●酒場Bパート
弾が飛んできていない時が無い。
くわえ煙草の先端が銃撃で吹き飛んでいった秋葉は眉を上げた。
「せわしない連中やなあ」
倒したテーブルの裏に背をつけて胸ポケットを探った。
ライターを取り出すも、それが銃撃で弾かれて飛んでいく。
「あっ俺のライター!」
思わず立ち上がる秋葉。飛んできた銃撃を剣で弾くと、ライターを追って駆けだした。
キャッチしようとしたところで銃弾に当たり、また当たり、また当たり、やっと地面へころりと落ちる。
それを拾い上げた所で、ふと気づく。
周囲を銃を構えたごろつきが埋めていた。
「ああ、気にせんで。コレ拾いに来ただけやから……って、聞くわけ無いか!」
素早く伏せる秋葉。その上を誘輔が飛び越え、ごろつきたちを蹴り飛ばす。
下段斬りで後方のごろつきを転倒させる秋葉。
そのまま二人とも時計回りに軸回転。秋葉は剣をエイトターンで閃かせ、誘輔は機関銃を乱射。
ごろつきたちが一斉に倒れていく。
「囲まれても案外なんとかなるもんやなあ」
「ライターなんか拾いにいくからだ、アホ」
「はあ……」
ライターを見てみると、思いっきり破損している。大事にしている方はたまたま置いてきてきて、今回はその辺のライターで代用していた。なので損害は軽微だが、火がないと煙草が吸えない。
と、その途端。
二階の吹き抜けから無数の男たちが現われ、ライフルをこちらに向けてぐるりと囲んできた。
「テメェ、よくもやりやがったな!」
「え、なんのこと?」
「乗り込んだこといってんのか? にしちゃあタイミングが絶妙すぎやしねえかい」
と言いつつ、二人は素早くカウンターテーブルの向こう側へ。
バーテン風の男に銃口を突きつけて黙らせる秋葉。誘輔は近くの酒瓶を手に取ると、天空に放り投げた。
一秒足らずで粉砕。
「こりゃたいした腕だ」
次は数本まとめて放り投げ――つつ、自分もカウンターの上に飛び出した。
狙いを定め損ねた男たちに機関銃射撃。
そうしている間に秋葉は階段を駆け上がり、通路をジグザグに駆け抜けながら男たちを切り伏せていった。
「ほい、いっちょあがり」
手すりを飛び越えて着地する秋葉。
「火ぃ貸して、火」
「あ? ライターねえぞ」
「あるやんほら」
指で手招きする秋葉。
誘輔は左右非対称に顔を歪めると、自分の煙草を彼の煙草に押し当てた。
ショットガンを持ってゆーっくりと顔を出すバーテン。
二人はちらりと横目で見て、同時に発砲。バーテンは頭を吹っ飛ばしてくたばった。
彼の後ろにある貯蔵庫らしき扉が開く。
そこには。
「いやー、お見事お見事」
優雅に足を組んだエヌが、ぱちんぱちんとゆっくり拍手をしていた。
「なんやネイム君、今更出てきたんかい」
「お前、今まで何してたんだ?」
「いやいや」
エヌは両手を翳す。
「なあにも?」
嘘丸出しの口調で、彼は笑った。
●ストリートBパート
「ヘイ、タマ無しのお嬢様ァ! 飴ちゃんあげるからこっちおーいで!」
家屋の二階部分を壁ごと吹き飛ばし、治子はゲラゲラと笑った。
そんな彼女を後ろから狙うべく、物陰から飛び出す男たち。
「はいチーズ!」
ぐるりと反転。歯を見せて笑う治子。
自分の身体も激しく揺さぶるような機関銃射撃が、彼らをたちまち穴あきチーズに変えていく。
「死ねぇ!」
金物屋の上から身を乗り出した男が治子めがけて射撃。
弾丸が彼女の胸に直撃しよう――とした寸前、ハルが飛び出して弾を身体で受け止めた。
「ぐうっ!」
「遮蔽物くーん!」
「おいハルコおまえ今なんつった!」
「ハールくーん!! たよりになーるーう!」
うりうりと言って肘で(傷口を)小突いてくる治子。
「まあいいや、フユツキのやつまねさせて貰うぜ!」
ハルはツルの投げ縄を放つとスナイパーの首に引っかけて引きずり下ろし、頭をズドンと打ち抜いた。
これで大体は片付いた……と思うが。
「馬小屋がまだなんだよねー。ほーら出ておいでー、可愛いオレが迎えに来たよー」
顔の横でぐーぱーしてみせる冬月。
ゆっくりゆっくりと薄暗い馬小屋に侵入する。
右よし、左よし。
誰も居ないな――と思った瞬間上から農夫が雄叫びをあげながら降ってきた。
四つ股の農具が繰り出されるが前方へ転がって回避。
銃撃を加えようとするも腕に縄が巻き付いた。さらなる伏兵だ。
農夫が別の農具を持って襲いかかってくる。冬月はハイキックでそれを迎撃。
蹴った勢いを乗せて身体を捻り、農夫の首に両足を挟み込む。ねじりを逆方向に戻して首をへし折た。
だがこれで終わりでは無い。先程の伏兵が拳銃で撃ってくる。
冬月は咄嗟にその場にぺたんと寝そべって回避。
しつつ、腕にからまったロープをあえて引っ張った。
バランスを崩して落ちてくる伏兵。
「おっとそこまでだ。ホールドアップ! 意味わかるか?」
馬乗りになって銃を押し当てるハル。
ゆっくり銃を手放す伏兵。
「よしよし。じゃあお前は……」
「穴あきチーズの刑ダァー! イーヤッハー!」
壁をぶち破って飛び込んできた治子が、機関銃を向けて全力射撃。
ハルは慌てて飛び退いた。
「ハッピーですか兄弟! しけた顔してたら穴あきチーズになっちゃいますよー!」
「今なるところだったんだよ! あっぶねえ!」
そんなやりとりをするハルと治子を見て、冬月は肩をすくめた。
「二人とも、中良いね」
●荒野Bパート
ボスを喪った盗賊たちはバラバラだ! いや、元々統率のとれた連中ではない。
「てーやー」
きせきはアメリカ人の子供がライトセイバーごっこで遊ぶような気軽さで男の足を切断すると、片足になった男を突きでごろごろと追い詰め、仰向けになって命乞いのようなことを言った所で首をはねるという遊びをしていた。
「あのね、これがびーきゅーえいがなんだって。上手にできたかな!」
テレビゲームでハイスコアをとったような顔をして笑うきせき。
「それとね、今日のためにこれ覚えたんだよ!」
きせきは地面に向かって刀を一閃。すると、衝撃が弧を描いて奔り、襲いかかろうとしていた山賊たちを一斉に切り裂いた。
血しぶきがシャワーのように吹き上がっていく。
そのなかを駆け抜ける紡。
崩れ落ちる男の膝、肩、後頭部を踏み台にして飛ぶと、空中でくるくるときりもみ回転。
一生懸命狙いを定めようとしていた盗賊の眼前へ着地すると同時に身体を上から下へと切断。
横合いから飛んできた弾丸を剣で持って切断した。
「ははー、一騎当千ですよー、あたしはー」
ゆらーりと身体と首を傾げる紡。
叫び声をあげて斬りかかってきた盗賊の剣をナイフで受けると、目だけをぎょろりと彼の方に向けた。
異様な柔軟さで蹴りを放ち、男を突き飛ばす。
突き飛ばされた男は後ろの男にぶつかり、そのまた後ろの男と巻き込んでテントへと突っ込んでいく。
「派手だなあ二人とも。よーし、ギターだけじゃそろそろ足りねえと思ってたんだ」
ヤマトは手を空に翳すと、パチンと指を鳴らした。
「ばーにんっ!」
倒れた男たちがテントごと爆発し、炎の柱に包まれていく。
更にヤマトはギターから炎を噴射させ、野球のバットのように構えてぶん回す。
後ろから襲いかかってきた盗賊は不幸にもその直撃をくらい、黒煙をあげならかなたへと飛んでいった。
「っしゃ、そんじゃあそろそろボスをみんなで倒しにいくか!」
「ボスってこいつじゃねーですか?」
紡が親指でもって、倒れた盗賊のボスらしき男を指さした。
「あれー、死んじゃってるね」
「そういや最初にやっちまったか」
ボスに背を向ける三人。
それを見計らって、靴底から隠し銃を抜いたボスはゆっくりと立ち上がりヤマトの後頭部へ鉛玉をくらわ――。
「と見せかけて!」
振り向きざまにファイヤーギターをフルスイングするヤマト。
同じく刀を繰り出すきせき。
同じくレイピアを突き刺す紡。
オーバーキルで滅多切りにされたボスは崩れ落ち、三人は黙ってハイタッチした。
こうして、古びたテーマパークに現われた妖は退治された。
この地はただの廃墟となり、やがて木や草に覆われ、いつしか誰かの手によって拓かれる。
その日まで、土地は眠るのみである。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
