《ピンナップシナリオ》覗き魔撲滅すべし
《ピンナップシナリオ》覗き魔撲滅すべし


●覗きに命を掛ける隔者
 かぽーん。
 山梨県某所にある温泉。
「きゃあああああああああああっ!!」
 女性の絶叫が浴場に響き渡る。
 そばではガサゴソと何やら音がし、何かが飛び立っていく。
 浴場の関係者が駆けつけた時、そこにはもう誰もいなくなっていた。

 この地では現在、とある被害に悩まされていた。
「この付近で、覗き魔が出るって話がありましてね……」
 その女中は女将さんは語る。なんでも、この近辺一帯に温泉を覗き、盗撮する中年男がいるのだという。
 ある時は塀によじ登って。ある時は、ホテル高所の窓の外から。総じて高所から覗く傾向があるらしい。
「どうしたものかね……」
 この覗き魔の存在はかなり知れ渡ってしまい、近場の温泉宿では予約のキャンセルが相次いでいるという。早いところ対策を練らねば、客足が遠退く一方。経営にすら影響が出てしまう。
 そこで、別の女中が手を上げる。現の因子持ちのその女性は、実年齢よりもかなり若い。
「こういったときに力を貸してくれるって人達を、私の知人が知っているそうでして」
 覚者のその女性は一度、覗き魔を追いかけようとしたが、覗き魔は空を飛んで逃げてしまったという。ならば、相手も覚者。一筋縄ではいかぬ相手だろう。
「ちょっと掛け合ってきますので、しばしお待ちくださいね」
 その女性はそうして、宿の電話に手を掛けたのである。

●女性の敵は滅すべし
 所変わって、京都府某所、『F.i.V.E.』の会議室。
「覗き魔の討伐を願います」
 覚者へと淡々とした口調で語る、久方 真由美(nCL2000003)。その顔は微笑みに満ちていたが、彼女から物凄いプレッシャーを覚者達は感じていた。女性の敵の存在を知り、修羅の如きオーラを放つ真由美である。
「場所は、山梨県のとある温泉街ですね。そこにある民宿、ホテル問わず、覗き被害は多くの場所に及んでいるようです」
 覗き魔はデジカメでの撮影も行い、盗撮して売りさばいているのも確認されている。
 このままでは、覗き魔の出る温泉街として定着してしまい、観光客が減ってしまう。その前に、この覗き魔を撲滅してほしいという依頼があったそうなのだ。
 この覗き魔が特定の場所を狙っていないのは、自身の特定を避ける為だったようだ。ただ、温泉街全体に被害が及んでおり、場合によっては高所が現場となっていることもあって、相手は覚者に間違いないという目星がついていたようだ。
「覗きが発覚した際、空に逃げたという証言もあり、翼の因子持ちの覚者が犯人だとほぼ断定されたのです」
 そいつは覚者ではあるが、その力を私利私欲の為に使う隔者であることは間違いない。
「この覗き魔が次に現れる場所を予知しましたので、皆さんに対処を願います」
 真由美の予知でこの覗き魔の素性も分かったようだ。
 覗き魔の正体は、徳田・二三夫、45歳。最近、この地へと引っ越してきた塗装業の男だという。おそらく行った先々で覗き、盗撮を行い、各地を転々としつつ、盗撮した写真、映像を売りさばいているのだろう。
 さて、次に徳田が現れるのは、とある民宿。大きな露天風呂を構えており、外とは竹の仕切りを使って視界を遮る形を取っているのだが、敵は外側の林の中の木に登り、仕切りの上から覗いていると思われる。気づかれれば飛んで逃げるという、なんとも手慣れた犯行だ。
「ですから、誰かが囮になって湯に入り、気づかれないように、覗き魔へと近づくといいかと思います」
 もちろん、徳田はその場から逃げ出そうと動く。逃がさぬように配慮しつつ、捕まえる必要があるだろう。
 無事、覗き魔を捕まえることができたら、民宿の女将から温泉に入っていってくれと言われている。折角だから、その好意に甘えていくといいだろう。
「思う存分、覗き魔を懲らしめてあげてくださいね。このような女性の敵に情けなど無用ですよ」
 うふふと笑う真由美に背を向けた覚者達は、最後まで彼女の笑いに威圧されてしまっていた。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.覗き魔の撃退、もしくは討伐。
2.温泉を思いっきり楽しむこと。
3.なし
初めましての方も、どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
女湯ばかりを覗くという隔者が現れました。女性の敵であるこの覗き魔の討伐を願います。
終わったら、ゆったりと温泉での一時も味わえますよ!
それでは、OPの補足です。

●敵
・隔者×1体。
徳田・二三夫(とくだ・ふみお)、45歳。翼の因子、水行。飛行スキルを活性化。
覗き魔です。デジカメでも盗撮も行い、販売をする外道です。
場合によっては所持しているペンキを投げてくることがあり、
視界が遮られる可能性があります。
力に溺れた覚者でしかなく、割とすんなり倒せます。
完膚なきまでにのしてしまってください。

●『頑張り屋の和風少女』河澄・静音
この場にはいませんが、後ほど話を聞いて、今回の依頼にお邪魔します。
何もなくとも皆様の邪魔にならないよう動きますが、効率的に動かしたい場合はプレイングで指示をお願いいたします。

●温泉
温泉は混浴です。ただ、公序良俗の関係がありますので、水着の着用を願います。
疲れ、美容に効能がある湯ですので、
皆様でごゆるりとご堪能していただければと思います。

それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!

大丈夫、もしもの時は湯気が何とかしてくれるよ!

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◆重要な備考
この依頼は『たぢまよしかづ』VC発案企画による特別依頼です。

・リプレイ納品後一ヶ月以内に参加PC全員描写のピンナップがつきます。
・基本的に水着のデザインはVCのお任せとなります。
 ※NG要素がある場合はプレイングに必ず明記してください。
・プレイング文字数は800文字となります。
 プレイング600文字にプラスしてイラストに関する記述が200文字記入できます。
 イラストに関する記述はプレイングの後部に【ピンナップ:日常or覚醒】とタグをつけて記述下さい。
・ピンナップへの描写はBUイラストを所持していることが条件です。
・BU未所持のキャラクターも参加は可能ですがピンナップには描写されません。
・参加した時点で開催中のイラストキャンペーン(ピンナップ扱い)対象となります。

※イラスト記述について
イラストの描写については数人のプレイングからの抽出になる為、すべてが適用されない場合があります。
ステータスシートだけでは伝えきれない服装や髪型、NGポイント等をメインに御活用下さい。

参加費用は450LPです。全員描写ピンナップの料金が含まれています。 

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11月8日追加

描画シーンはゆっくりと温泉を楽しんでいる部分がメインとなります。
通常、戦闘時以外で覚醒した姿を描写することはありませんが、今回のピンナップでは特別に日常、覚醒どちらの姿であっても描画可能です。
タグのところにわかりやすく【ピンナップ:日常】または【ピンナップ:覚醒】の表記をお願いします。
オプション設定である守護使役は今回描写なしとなりますのでご了承下さい。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
450LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2015年11月20日

■メイン参加者 8人■

『ママは小学六年生(仮)』
迷家・唯音(CL2001093)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『デアデビル』
天城 聖(CL2001170)
『偽弱者(はすらー)』
橡・槐(CL2000732)
『雨後雨後ガール』
筍 治子(CL2000135)

●覗き魔はとっちめる!
 山梨県某所にある温泉。
 ここを覗き魔の被害から救うべく、『F.i.V.E.』の覚者達が駆けつけていた。
「やれやれ……隔者とは言え、仮にも覚者がその力を覗きに使うとはな……」
 呆れてそれ以上の物が言えない、天明 両慈(CL2000603)。早速依頼に当たるのだが、今回参加している覚者の中、男性は彼1人。
「……しかし、何故今回の依頼、男は俺だけなんだ?」
 両慈はそれに、疑問を抱いてしまっていた。
 対して、参加する女性陣は。
「のぞき、盗撮、よくないことですね。カミサマも言ってました。カンインすることなかれ的なこと?」
 シスターである『猪突妄信』キリエ・E・トロープス(CL2000372)は、そんなことをお告げとして頂いていたらしい。
「見たいなら、きちんと許可を得れば良いと思うのでございます。なんでそうしないのでしょう?」
 首を傾げるキリエ。隠れて覗く行為が、彼女には理解ができない。
「覗き魔、ですか……」 
 橡・槐(CL2000732)は今回の隔者について考える。
 槐は事前に資料として盗撮映像などを確認していたのだが、本物の盗撮映像などは素人撮影でしかなく、荒くぶれてしまっていて、その物自体では作り物にもとても及ばないレベルの物ばかりだった。
「やはり、撮った物よりも、撮るという行為に常習にさせるようなモノがあるのでしょうね」
 槐のそんな分析を聞いても、キリエにはいまいち理解に苦しんでしまう。
「覗きとはイケナイ人ですねー! ここはOHANASIからのOSIOKI コンボ! どっちも物理属性!」
「覗きと盗撮なんて許せない!」
 すでに覚醒していた、『雨後雨後ガール』筍 治子(CL2000135)はハイテンションで叫ぶ。『ママは小学六年生(偽)』迷家・唯音(CL2001093)も元気にそう主張していた。
「女の人のリフレッシュリラックスタイムを邪魔する悪いおじさんは、ゆいねがお仕置きするよ」
 もちろん、覗き魔のお仕置きは全力で行うのだが、それは建前で。唯音は、仕事後の温泉目当てでこの依頼に参加していたりする。
(ゆいねのパパ平凡なサラリーマンだから、温泉なんか滅多にこれないし、スク水とゴーグルも持ってきたから、ばっちり遊ぶぞー!)
 とはいえ、そう考えるのは、彼女だけではない。
「全部終わったら、皆でお風呂! 囮とかは気にせずに、めいいっぱい楽しむぞー!」
 『罪なき人々の盾』鐡之蔵 禊(CL2000029)も依頼を片づけ、思いっきり楽しみたいと考えているようだ。『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059) も「そうですわね、頑張りますわ」と同意していたようだ。
「デジカメ回しゅ……覗き魔を撃退して客足を取り戻す!」
 『罪なき人々の盾』天城 聖(CL2001170)も建前を口にするが、本音がぽろりと……。とはいえ、風呂を覗く奴は潰すのがお決まりだというのは、彼女の参加動機に違いないようだ。
 そのキリエ含め、禊、『罪なき人々の盾』明石 ミュエル(CL2000172)が今回の作戦の中で囮役を請け負う。
「因子の力で、盗撮なんて……絶対、許せないよね……」
 思いっきり、懲らしめて、もう二度と、こんなことしないように思い知らせてやらなきゃ。ミュエルがそう発した言葉に、メンバー達は一様に頷くのだった。

●覗き魔を確保しろ!
 さて、覚者達が行う作戦だが。
「温泉でお色気極楽大作戦!! 徳田さんの注意を引き付け! その間に私達がスニーキングミッションでーす!」
 大筋は治子が大声で説明した通り。覚者一行は 覗き魔を引き付ける為に温泉に浸かる囮班と、こっそり奇襲をかける捕縛班とに分かれる。捕縛班が木の周りを取り囲み、囮班と示し合わせ、覗き魔、徳田を挟み撃ちにする作戦だ。
「そんな訳でここからは静かに行きますよー」
 治子は急に声を潜め、行動を始める。
 両慈は同行している静音へと指示を出す。
「すまないが、河澄も俺達と共に行動してくれ」
 翼人の静音ならば、仮に徳田が空を飛んでも追撃ができると両慈は考えたのだ。
「そうなる前に仕留めたい所ではあるが……万が一の時には宜しく頼む」
「分かりましたわ」
 静音はこくりと頷き、メンバー達と共に捜索を始める。
 槐は温泉の外にある林を調査する。さらに、彼女は可能な限り場所を絞り込んでから張り込む。その際、限界まで集中を行っていたようだ。
「ペンキを投げてくるのが厄介だけど、大丈夫! ちゃんと対策は練ってある!」
 唯音は相手の情報を元にし、色々と対策を練っていた。
「鬼ごっこや木登りは得意だもん」
 彼女はそう言って、よいしょと木をよじ登り始め、枝の上でにっこりと笑い、敵の姿を探し始めた。

 一方、浴場では。
「わたくし、日本の温泉好きですよ! ポカポカあたたかい、この彩のタトゥーと同じ!」
 バスタオルを巻いたキリエがそう叫ぶ。彼女の下腹部には、火行を示す真っ赤な刺青が光る。
 彩のタトゥーに関しては、隔者に疑われる危険があると他のメンバーから窘められつつも。キリエはできる限り、相手に疑われないように自然に振る舞おうとする。
(今日はちょっと色っぽく、かな)
 同じく、バスタオルでその身を隠す禊。彼女は演技っぽくならない程度に、色気を出そうとポージングする。
「ねえ、2人はどうやってその体型を維持してる?」
 禊は折角だからと、2人へとそんな質問を投げかけると、しばしの間、普段の生活の話に花を咲かせる。
 ミュエルも、裸で浴場にいるよう装う為にと他の2人同様、バスタオルを体に巻くのだが、他の2人のスタイルとどうしても比較してしまって。バスタオルの上からでもわかる凹凸をまじまじと見つめる。
「二人とも、スタイルいいなぁ……すごい……」
 そこで、キリエがミュエルの体にそっと手を伸ばす。
「きゃ……、くすぐったいよぉ……」
 ミュエルは体が敏感に反応してしまい、思わず艶めかしい声を上げてしまう。
 それを、遠くから見つける男。覗き魔、徳田・二三夫はカメラを構えていたが。
「ちっ……」
 もうもうと立ち込める湯気に苛立ち、舌打ちをする。
 彼は木に登り、食い入るように浴場を覗き込んでいたのだ。あそこは確か混浴だったはず。しかし、バスタオルを巻いて楽しく語っているということは。もしかすると、バスタオルの下は裸ではないのか。そんな考えを頭に巡らせた彼は妙なスイッチが入り、テンションが高まる。
 肌蹴そうになるタオル。しかし、白い湯気が邪魔をし、その度に徳田の苛立ちは募る。
 その間に、捕獲班は動き出していた。
 聖も守護使役のタマの力を使い、足音を消してこっそりと近づく。
(肝心のペンキは……あれかな)
 彼女は徳田が腰に取り付けたいくつかの缶に気づく。
 そして、そいつの左手に握られたデジカメ。実は聖の狙いはそこにある。
(データ残ったまま、デジカメ欲しいな)
 いっそのこと、もう少し、囮になっているメンバーの写真を撮ってほしくもあるのだが。彼女は観察したまま、待機を行う。
 唯音は林を回り、醒の炎で身体能力を上げながらも、敵の背後へと迫る。
 メンバー達がそれぞれ、遠距離攻撃の射程範囲に入ったことを、両慈は確認する。
「1、2の3で一斉攻撃!」
 治子が声を上げると、メンバー達は息を合わせ、一斉攻撃を行う。
 両慈が撃ち放つ雷が、徳田の腰のペンキ目がけて落ちる。
 同じく、木に登っていた唯音もペンキを狙う。高めた力で火柱を出現させると、落ちかけたペンキ缶を持ちあげ、徳田の身体へと振りかかる。
「缶がなければ、ペンキぶちまけられないでしょ? ゆいねあったまいー!」
「な……!」
 ペンキまみれになった徳田へ、治子が風邪ひきマリーと名付けた機関銃を撃ち放つ。それを浴びた徳田はバランスを崩し、木から落下してしまう。
 聖、そして、静音は敵が宙へと逃げることを懸念し、構えを崩さずに成り行きを見守る。
「あっ、まあ、これはこれで……」
 聖としては、もう少し引っ張りたかったのだが。結果としては悪くないと彼女は考える。
「クッ……!」
 一方、地面へと落下した徳田は痛みに耐えていたが、気づいた時にはもう遅い。徳田の周りには、覚者が姿を現し、取り囲んでいたのだった。

●見苦しい覗き魔に制裁を
 徳田はきょろきょろと見回し、一度はペンキを覚者に向けて飛ばしてくるが、唯音がそれを寸前で躱してしまう。
 ペンキのほとんどは地面にこぼれ、使い物にならない。徳田はペンキを諦め、翼を大きく広げる。彼とて翼人。この場から逃れようと宙へ羽ばたく。
「上には上がいるってことを教えてあげないとね」
 そこで、上から聖の声がした。彼女は徳田が上空に逃げようとしたのを察し、一足早く空へと舞っていた。彼女の言う『上』とは文字通り、位置的なことを差している。
(何としてでも潰しておかないと。あとデジカメ。……だって、マユミのあの感じ、絶対ブチ切れてたもん)
 聖の脳裏に、威圧するような真由美の笑顔が浮かぶ。あの圧倒するような彼女に、逃がしましたなどという報告などできようか。
「……逃がすかオラァ!!」
 デジカメへの被害を気にしつつ、彼女は逃げようとする敵に雷を落とす。同じく、静音も飛び立ち、圧縮した空気を叩き付けていた。
「覗きのスリルもリスクへと結実する時が来たようです」
 さらに、守護使役ぞんでの力を借りて、宙に浮いていた槐が、狙い澄ませて、B.O.T.をぶっ放す。その狙いは徳田の翼だ。
「うおおおおっ!」
 翼を穿たれて地面へと叩き付けられた徳田を、覚者達が改めて取り囲む。
「抵抗すると大怪我します、本意ではありませんね? 大人しく捕まる、嬉しいです」
 キリエはにこにこしながら、それでいて、ぐるぐると回転させた瞳を徳田へ向け、懺悔があるならお伝えしますよと告げる。その相手は当然、彼女が信仰する神様なのだろう。
「やり過ぎたとすら判断出来ないようでしたら、どうせこの先なんて無いのですよ」
 槐が術符を差し向けて言い放つ。
「此処で墜ちて終わってください、覗き魔の人」
「う、うるさい!」
 だが、徳田も捕まるわけにはと悪あがきをする。水行の力で氷を作りだし、覚者目がけて放ったのだ。
 それに貫かれて傷を負う両慈は、ならば徳田を無力化しようと、書物から魔力を撃ち放つ。唯音も炎を纏わせたステッキを振るい、徳田へと叩き付けていた。
 そこで、徳田に飛びかかったのは治子だ。
「はーい! それじゃマリー・イン・御仕置きターイムでーすよー!!」
 その際、多少、ペンキで汚れようが、治子はお構いなし。
「ちねーでーす!」
 彼女は至近距離から機関銃を撃ち放った。銃弾を受けてボロボロになる敵は、なおも見苦しく手足をジタバタさせる。
 そこへやってきた、囮メンバー3人。バスタオルの上からパーカーなどを羽織った彼女達は、竹垣を押し倒して一直線にこちらへと向かってきていたのだ。
「アタシの、スキルの中で……一番痛そうなやつ……選んだから……覚悟してね……?」
 ミュエルはお仕置きとばかりに、投げた植物の種を急成長させ、鋭い棘で徳田の身体に裂傷を負わせる。
「燔祭のほのおよつどえ、みちびけ、主のみもとへ――」
 キリエも炎の塊を飛ばし、徳田の体を炎で包む。
 連続して攻撃を受けると、抵抗する体力が尽きたのか、徳田の動きは止まってしまう。そこへ、禊はゆっくり近づいてきた。
「実はね……」
「く、くそ……」
 近距離攻撃のみの禊は、もう攻撃はいらないだろうと考える。彼女はバスタオルの隙間からちらりとだけ、水着を着用していたことを見せると、徳田はがっくりと崩れ落ちたのだった。

 その後、槐は徳田が逃げようとした先に何があるのかを探っていた。ただ、特に目立ったものはなかったことから、おそらく彼は追跡を恐れて明後日の方向に逃げようとしたのだろうと推測する。
 その間に、徳田は覚者達によって、用意されたロープで縛りあげられていた。傷つく彼に、治子が植物の生命力を凝縮した雫を分け与える。
「死んじゃうのは嫌ですからねー。樹の雫ベタベタ」
 イケナイ人なので、反省しないかもと考える治子。それでも、嫌いではないからと、彼女は治療に当たっていたようだ。
「温泉はほっこりするための場所、悪い事しちゃだめなんだよ!」
 唯音はかれの仕事道具を手にし、プンプンと口をへの時にして怒る。
「こんな事してないで、真面目に働かなきゃダメだよおじさん」
 ペンキのコントロールは悪くないし、腕もいいんだろうからと、彼女は諭す。
「おまわりさんにしっかり絞られて、ちゃんと更生してね」
「甘い蜜には、棘がある……なんて、ね……」
 がっくりとうなだれる徳田に語りかけたのは、囮役をしていたミュエル。だが、彼女はなぜか、自分で言って照れていた。
「あと、これ……」
 ミュエルが手にしたのは、徳田が持っていたデジカメだ。
「文句ないよね、天城さん……?」
「う……」
 密かにデジカメに移った映像を観賞し、かつ『F.i.V.E.』男性陣に見せて貢献しようとかんがえていた聖だったが。ミュエルは有無を言わさず、デジカメを自らの守護使役、レンゲさんに食べさせてしまう。その瞬間、徳田はもちろん、聖は崩れ落ちてしまった。
「一件落着ですね」
 唯音も、全て憂いが消え、晴れやかな顔をするのである。

●湯気は万能ですよ
 かぽーん。
 無事に覗き魔を捕まえることができた覚者達は、女将の好意で温泉へと入ることにする。
「では改めて、温泉を楽しむのでございますです!」
 ビキニ姿のキリエは大きな胸を弾ませて、浴場へ飛び込んだのだが。
「あ、ああああ……ままままた、私、滅茶苦茶して……」
 通常状態に戻った治子は湯船のそば、壁際で打ちひしがれていた。温泉に入る為、眼鏡は外していた。
「あら? ハルコさん、元気ないですね?」
 吐き気をこらえる彼女へ、頭の上にタオルを乗せたキリエが笑顔を浮かべて声を掛ける。褐色肌の彼女が白いビキニを着ると、その色合いがくっきりと映えていた。
「何か困り事ありましたら、どうぞわたくしに相談くださいますです」
「ぜ、全部私の自業自得と言うか、そ、そもそも加害者が私と言うか……」
 湯から上がったキリエはなだめるように語り、治子の肩に優しく手を置く。
 だが、治子はハイテンションだった時の振る舞いに対し、後悔と罪悪感から青い顔、涙目で動こうとしない。
「折角の温泉ですもの、もっと気楽にスマイル、ね?」
「私なんかより、そ、それこそ、せ、折角なのですから、温泉に漬かって下さい……」
 治子はキリエの誘いに戸惑ってしまうのである。
 大量の髪をアップにしていた槐は、覚醒した状態で湯船に浸かっていた。
 彼女は一見平静を装うが、忙しなく周囲を見回す。他の人とお風呂に入るという行為自体が10年ぶりという彼女。どうしても人の目が気になってしまうのだ。
 静音も他の人と入浴する機会があまりないのか、ちょっと恥ずかしそうに浴場の隅で寛ぐ。
 同じく、ミュエルも寛いでいたのだが。
(みんなで、温泉……こういう機会、なかなかないから……楽しみ、だったんだよ……)
 髪をまとめてはいたが、アホ毛をぷるんと揺らして湯に浸かる彼女のそばに、聖が近づいてくる。
「ミュエルってば一人でゆっくりしてないでさー、私も一緒にゆっくりするよ!」
 聖が楽しそうに差し出したのは、強めの炭酸ジュース。
「どう、炭酸ジュース? 疲れも吹っ飛ぶよ?」
「炭酸は……苦手、だから……遠慮するよ……遠慮するってば……」
 元気な聖に、ミュエルは圧倒されてしまうのである。 
 そんな浴場の逆サイドの隅では。
(……温泉に入って行けとは言われたが、何だこれは)
 女性ばかりの混浴で黒一点の両慈は困惑してしまう。
(風呂でこんなに肩身の狭い思いをしたのは、初めてだな……)
 その近くでは、禊、唯音が浴槽内でほっこりと温まっていた。
「いくぞー!」
「きゃっ、やったなー えいっこの!」
 楽しく語らっていた彼女達はパシャパシャとお湯の掛け合いをしている。
(女の子ばっかりで大変そうだし、誘うかな?)
 そこで、禊が済みにいる両慈に気づいて。肌を見せることに少しだけ抵抗がある彼女はちょっとだけ恥じらいつつ、にっこりと両慈へと手を差し伸べる。
 クールに流そうとした両慈は表情を変えることは無いが、それでも、彼は、多少迷惑がりつつも、嬉しさに照れつつ、複雑な心境になっていたようだ。
「ということで、3人でいっぱい遊ぶぞー!」
 禊は両慈を巻き込みながら、思いっきりはしゃぐ。
 同じく、年上の2人にじゃれ合う唯音。お団子にした髪とゴーグル、白いスクール水着がなんとも可愛らしい。
「温泉ってほんとたのしー。またきたいな!」
 彼女もまた、楽しい一時を思いっきり満喫するのだった。

 のんびり、まったり。
 依頼をこなしたメンバー達はゆっくりとした一時で過ごし、心身共に温泉で癒されたのである。

■シナリオ結果■

大成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

リプレイ、公開です。
皆様の見事な手際で覗き魔を撃退することができました!
温泉にのんびり浸かることもできましたし、言うことなしですね。
МVPは、今回唯一の男性参加者となったあなたへ。
参加された皆様、本当にありがとうございました!




 
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