≪嘘夢語≫おいでよ、もふもふの夢
●はじまりの嘘
四月一日、それは始まりの日であり――どんな嘘を吐いても許される素敵な日。そう、折角嘘を口にするのなら、普段なら絶対叶わない、夢みたいな素敵な嘘が良い。
――そんな訳で、そろそろ三十路に届こうとしている厳つめの男性(ふんどし愛用)は思ったのでした。
「もっふもふでふぁんしーな、可愛い古妖たちにもみくちゃにされたいなー」
そんな何気ない男の呟きを、むっふふーんと笑いながら聞き届けたのは――自分もふぁんしーと言えなくもない古妖、獏(バク)であったのです。
●ある意味、本望な夢
はっ、と気が付いた其処は、パステルカラーの木々やお花畑が広がるメルヘンワールド。お菓子で出来た家やチョコレートの噴水が、夢のような世界を彩っています。
と――頭上から、ひゅるるるるるとひとつふたつ、まぁるい姿をしたものが次々に落下してくるではありませんか!
「かっぱー」「かぱ!」「かぱかぱ」「かっぱ……」
何とそれは、つぶらな瞳をしたまるっこいペンギンのような古妖、温泉かっぱ達でした。かっぱかっぱと鳴きつつ、彼らはじたばたと手足を動かして着地――そうしている間にも、その数はどんどん増え続けています。
「かぱちゃん、遂に空を飛べたのだな……って、はうっ!」
温泉かっぱの雄姿に見惚れていると、不意にすねの辺りに、もふっとしたものがすり寄ってきました。その心地よさにときめきつつ、何事かと足元を見れば――此方を見上げている切なげな瞳と目が合います。
「す、すねこすりさん……!」
ちょっぴり頬を赤らめつつ、何かを訴えたそうにしている、もっふもふ古妖――それは以前大量発生したすねこすりでした。当時の事件が思い起こされるように、何と地面にはすねこすりの集団が、すねをこすりたそうにして行列を作っています。通勤電車もかくやと言う、乗車率の高さです。
「もきゅー」「もきゅもきゅ」
「ああああ、毛玉! 毛玉まで!」
更に何処からか、古妖ケサランパサランまで沸いてきました。彼らは幸福を呼ぶとも伝えられる古妖で、もふもふの白毛玉につぶらな瞳をした、可愛い子たちです。
――そう。こんな可愛い沢山の古妖に、わらわらと迫られてもみくちゃにされたいと言う嘘。それは確かに、幸せな光景なのですが、獏の見せる夢は容赦がありませんでした。
「もふもふに溺れる……早くもふらなければ、身動きが取れなくな――」
そんな悲鳴が不意に途切れ、ハムスターっぽい古妖さんが「モルッ!?」と鳴いたその先には――まるで映画のワンシーンのように、すねこすりに埋もれて二本の脚を天に向かって突き上げている、ふんどし男の姿があったのです。
――ああ、このままでは楽しい夢の世界がシュールなホラーになってしまいます! 増え続けるふわもこな古妖さんを落ち着かせるには、彼らを思う存分もふって満足させなければなりません。
「……レッツ、もふもふモルッ」
そんなモルの声に促され、夢の世界に迷い込んだ一行は、彼らをひたすらもふることになったのでした。
四月一日、それは始まりの日であり――どんな嘘を吐いても許される素敵な日。そう、折角嘘を口にするのなら、普段なら絶対叶わない、夢みたいな素敵な嘘が良い。
――そんな訳で、そろそろ三十路に届こうとしている厳つめの男性(ふんどし愛用)は思ったのでした。
「もっふもふでふぁんしーな、可愛い古妖たちにもみくちゃにされたいなー」
そんな何気ない男の呟きを、むっふふーんと笑いながら聞き届けたのは――自分もふぁんしーと言えなくもない古妖、獏(バク)であったのです。
●ある意味、本望な夢
はっ、と気が付いた其処は、パステルカラーの木々やお花畑が広がるメルヘンワールド。お菓子で出来た家やチョコレートの噴水が、夢のような世界を彩っています。
と――頭上から、ひゅるるるるるとひとつふたつ、まぁるい姿をしたものが次々に落下してくるではありませんか!
「かっぱー」「かぱ!」「かぱかぱ」「かっぱ……」
何とそれは、つぶらな瞳をしたまるっこいペンギンのような古妖、温泉かっぱ達でした。かっぱかっぱと鳴きつつ、彼らはじたばたと手足を動かして着地――そうしている間にも、その数はどんどん増え続けています。
「かぱちゃん、遂に空を飛べたのだな……って、はうっ!」
温泉かっぱの雄姿に見惚れていると、不意にすねの辺りに、もふっとしたものがすり寄ってきました。その心地よさにときめきつつ、何事かと足元を見れば――此方を見上げている切なげな瞳と目が合います。
「す、すねこすりさん……!」
ちょっぴり頬を赤らめつつ、何かを訴えたそうにしている、もっふもふ古妖――それは以前大量発生したすねこすりでした。当時の事件が思い起こされるように、何と地面にはすねこすりの集団が、すねをこすりたそうにして行列を作っています。通勤電車もかくやと言う、乗車率の高さです。
「もきゅー」「もきゅもきゅ」
「ああああ、毛玉! 毛玉まで!」
更に何処からか、古妖ケサランパサランまで沸いてきました。彼らは幸福を呼ぶとも伝えられる古妖で、もふもふの白毛玉につぶらな瞳をした、可愛い子たちです。
――そう。こんな可愛い沢山の古妖に、わらわらと迫られてもみくちゃにされたいと言う嘘。それは確かに、幸せな光景なのですが、獏の見せる夢は容赦がありませんでした。
「もふもふに溺れる……早くもふらなければ、身動きが取れなくな――」
そんな悲鳴が不意に途切れ、ハムスターっぽい古妖さんが「モルッ!?」と鳴いたその先には――まるで映画のワンシーンのように、すねこすりに埋もれて二本の脚を天に向かって突き上げている、ふんどし男の姿があったのです。
――ああ、このままでは楽しい夢の世界がシュールなホラーになってしまいます! 増え続けるふわもこな古妖さんを落ち着かせるには、彼らを思う存分もふって満足させなければなりません。
「……レッツ、もふもふモルッ」
そんなモルの声に促され、夢の世界に迷い込んだ一行は、彼らをひたすらもふることになったのでした。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖の集団をもふもふ、可愛がって落ち着かせる
2.夢の出来事を、ひたすら楽しむ!
3.なし
2.夢の出来事を、ひたすら楽しむ!
3.なし
■エイプリルフール依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性がありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。
※要約すると夢の世界で盛大な嘘を思いっきり楽しんじゃえ!です。
●夢の舞台
ファンシーでメルヘンチックな世界で、きゅーとな古妖さんがわらわらと現れてきます。このままだともみくちゃにされて、OPのようなショッキングな姿で身動きが取れなくなってしまいます。
これを何とかするには、彼らを可愛がりつつもふり、満足させてあげること。そうすれば落ち着いて段々古妖の数が減っていき、丁度いい感じに収まります。
●古妖について
今まで依頼に登場した古妖が色々出てきます。その他、可愛らしい感じの古妖であれば、夢に出て来てもおかしくないですね(希望があればプレイングに記入してください)ちなみに温泉かっぱ、すねこすり、モルなどは、イラスト閲覧用のNPCで確認できます。
●もふもふテクニック
基本は愛があれば大丈夫です。更に、仲間と協力したり一度に沢山もふるなどの工夫をすることで、満足度がアップして幸せな雰囲気になります。
●NPC
冒頭で大変な目に遭っているのは『銀閃華』帯刀 董十郎(nCL2000096)です。彼の姿は、もふもふに失敗した場合のサンプルですので放置で構いません(背景の一部だと思ってください)いや、すねこすりの群れから、二本の足が突き出ていたら面白いだろうなとか、そんなことは思って……ない、筈です。
リプレイはOP文のような、童話っぽい文体にする予定です。楽しい夢の世界で、素敵な思い出が作れるようお手伝い出来たらと思います。それではよろしくお願いします。
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◆重要な備考
この依頼は『もっか』VC発案企画による特別依頼です。
・リプレイ納品後一ヶ月以内に参加PC全員描写のピンナップがつきます。
・基本的に服装などのデザインはVCのお任せとなります。
※NG要素がある場合はプレイングに必ず明記してください。
・プレイング文字数は800文字となります。
プレイング600文字にプラスしてイラストに関する記述が200文字記入できます。
イラストに関する記述はプレイングの後部に【ピンナップ:日常or覚醒】とタグをつけて記述下さい。
・ピンナップへの描写はBUイラストを所持していることが条件です。
・BU未所持のキャラクターも参加は可能ですがピンナップには描写されません。
※イラスト記述について
イラストの描写については数人のプレイングからの抽出になる為、すべてが適用されない場合があります。
ステータスシートだけでは伝えきれない服装や髪型、NGポイント等をメインに御活用下さい。
参加費用は450LPです。全員描写ピンナップの料金が含まれています。
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状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
450LP[+予約50LP]
450LP[+予約50LP]
参加人数
5/6
5/6
公開日
2017年04月15日
2017年04月15日
■メイン参加者 5人■

●四月一日の試練
もっふもふでふぁんしーな、可愛い古妖たちにもみくちゃにされたい――嘘と言うよりは、ささやかな願いと思われるそれを「むふふーん」と聞き届けたのは、古妖・獏。否応なしに夢の世界に誘われた覚者たちは、先ずメルヘンとホラーの狭間で深く悩むことになったのでした。
「……見事なもふもふワールドね」
ふんわりパステルカラーの背景を見渡して頷くのは『月々紅花』環 大和(CL2000477)。そうしている間にも、空からは温泉かっぱが次々に飛来してきており――地面からはもきゅもきゅと、毛玉のケサランパサランやすねこすりの集団が、地平線を埋め尽くす勢いで沸き続けています。
「ファンシーな古妖で溢れかえった、テーマパークと言ったところかしら」
と、冷静な様子で夢世界を分析する大和ですが、彼女とて動物好きの女の子なのです。ちいさな古妖にもみくちゃにされる危機があるとは言え、足元に気を付けて怪我をさせてはいけないと、心配りも忘れていません。
(やった~! 久しぶりのもふもふ依頼だ~!)
一方で『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は、厳つめの外見の裏で喜びに打ち震えていました。ここ最近はシリアスで命がけの依頼が多く、彼は癒しを求めていたのでしょう。そんな矢先のこの状況ですから、これは自分へのご褒美に違いないと思ったのです。
「今回は全身全霊でもふもふを楽しむぞ~!」
「わー、何時か分からないけど、可愛い妖怪全員集合!ってかんじだねー」
心の声を思わず口に出してしまったゲイルですが、京極 千晶(CL2001131)は特に気にせず、普段通りのテンションで夢を楽しむことにした様子。そんな溢れかえる萌古妖には『勇往邁進エレキガール』焔陰 凛(CL2000119)も、めろめろになったようで――彼女はそわそわと、今なお着々と増え続けている古妖たちを見て、手を伸ばそうとしていました。
「ええんか? もふってええんか? こんな可愛いもん思う存分もふれるなんて、興奮して鼻血でそうやで!」
愛らしい古妖を愛でる凛の姿は、さぞ絵になることでしょうが、鼻血を噴いてもふるとなると絵を描くひとも困ってしまいそうです。そんな彼女の豊かな胸の谷間目掛け、早速ケサランパサランが飛び込んできて――くすぐったさに耐えつつも、凛はもふもふの感触を楽しんでいるようでした。
「てあかん毛玉くすぐったい、てかやばいやばい――って、あかん! 董十郎さんがどっかの一族の映画みたいなポーズになっとるー」
身をよじらせる凛の視界に、不意に飛び込んできたもの――それは、すねこすりの群れから突き出た二本の足です。もみくちゃにされている内に服が脱げたのでしょうか、ふんどし一丁でぴくりとも動かないそれは、『銀閃華』帯刀 董十郎(nCL2000096)の成れの果てのようでした。
「……いぬが、」
「ストップ! それ以上は駄目よ!」
思わず何かを言いかけた千晶に、『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)が待ったを掛けます。直接名前を出すのは色々問題があると、御菓子は教育者として生徒を導こうとしたのでした。ちなみにこのポーズは元々、見立て殺人を表していると、ワンポイント知識を添えるのも音楽教諭の務めです。
「董十郎さん……すねこすりに転ばされた後、帰らぬ姿に……惜しい人を亡くしてしまったわ……」
墓標のように立つ二本の足を遠い目で見つめる大和は、どうか安らかに――と祈りを捧げます。しかし、2秒後には「それはそれとして」と、温泉かっぱ達の方に意識を傾けたようでした。
「いやまぁ、すねこすりの群れから足二本だけ出してる姿っていうのは、確かに愉快なんだが……」
それでもゲイルは、笑っていいのか哀しんでいいのか分からない表情でぽりぽり頭を掻いていましたが――そもそもは、董十郎の嘘から生まれた夢なのです。彼がもふもふ出来ないのは勿体無いとも思うのでした。
――けれど、もふっている内に数が減ってくれば、董十郎も身動き出来るようになるかもしれません。そんな訳でゲイルは誓うのです。
「何はともあれ、夢から覚めるまで全力で、もふもふを楽しむとしよう」
●乙女無双
「考えてる暇はない、とにかくもふるで!」
取り敢えず気合で鼻血を出さないようにした凛は、先ず温泉かっぱ達をターゲットにします。へいへいへいと勇ましく挑発を行いながら、彼女は彼らと拳で語り合おうとするのでした。
「相撲すんで相撲。どんどん来いや!」
「かっぱ!」「かぱー」「かっぱ……」
SUMOU、とかっぱのDNAに深く刻まれた言葉に反応し、温泉かっぱ達は電車道の如く突き進んできます。そんな彼らとがっぷり四つに組み合った後、凛はぽーんとどんどん投げ飛ばしていきました。
「かーっぱー……!」
「ああもう相変わらず可愛いなぁ。飛んでく様も可愛すぎるやろ」
ひゅるるると綺麗な放物線を描いて、彼方へ飛んでいく温泉かっぱ。しかし彼らの表情は、相撲勝負をした満足感に満ちており――ああ、本当に一匹くらいお持ち帰りしたいなぁと凛は思うのでした。
「……ってこれ、もふって無いんやないか? いや皆相撲好きやから、これがかっぱの幸せなんや」
――と、誰かに突っ込まれる前に自分で突っ込んでおいた彼女は、心を鬼にして温泉かっぱの幸せの為に奮闘します。そんな訳でメルヘンワールドの一角では、かっぱを千切っては投げると言う無双シーンが展開されていましたが、お陰で満足した温泉かっぱは丁度いい数に落ち着いてきました。
「ふー、いい汗かいたわ……って、だから谷間に入ってくんなって」
ようやく一息吐いた凛ですが、その間にもケサランパサランが胸元に飛び込んできます。ひょいと毛玉を摘まみだすと、つぶらな瞳と目が合って――「もきゅ」と鳴いた彼を、取り敢えずもふってみる凛なのでした。
(う……極上の手触りで、こら癖になりそうやな)
ふわっと優しい感触は、夢の中に居るのに更に夢心地になるようで、どんどん増えていく毛玉を凛は片っ端から、もふもふもふもふしていきます。
「こら気持ちええ。ええけどおっつかーん! せやから谷間に入って来たらあかんて!」
――わたしは『にゃんこキラー』といわれた女。そう呟き、ちょっぴりニヒルに微笑む御菓子でしたが、次の瞬間にはくわっと目を見開いて絶叫していました。
「もふもふを見て萌えないわけないじゃないっ!! しかも今回は合法的にもふれるんでしょう? ちょっとタガ外しても、羽目外しても、リミッター解除してもいいのよね!?」
取り敢えず、非合法にもふるとはどんな状況なのかとか、リミッター解除すればどうなるのとか色々聞きたいことはありますが、彼女の勢いは止まりません。
「どっぴかれたりしないのよね!? 先生としての威厳はなくさないでくれるのよね!? ね!?」
――これでは「既にどっぴかれています」とは言えない状況です。やはり生徒の見本となることを求められる教職とは、日々多大なストレスを抱え込むものなのでしょうか。御菓子先生、あなた疲れてるのよ――そんな幻聴が聞こえてくるかのようです。
(ううん、どんな時も冷静沈着に……自分の立場をわきまえて……でも)
目の前に繰り広げられているのは、もふもふなのです。理性と言う名の良心で自分を抑えきれるだろうか? いや、ないっ!! 反語表現すら交えて力説する御菓子です。己の中の獣が目覚める気配を感じた彼女は、薄れゆく意識の中で悟りました――もうわたしは、わたしを制御できないのだと。
「……ふひひ」
――教育上好ましくない笑い声が、御菓子の唇から零れました。俯く彼女の表情ははっきりしませんが、きっとその瞳は、獲物を見つけた肉食獣の如く輝いている筈です。
「くふふ、あの毛並みに顔を埋めたら、どれだけ気持ちいいかなぁ♪ あの毛並みでほほを撫でれたら、わたしどうなっちゃうんだろう」
じゅるっ、と舌なめずりする音まで聞こえて来て、その尋常ならざる様子に、足元の毛玉やすねこすりが危険を察知してぷるぷる震えています。
「……あの毛並みを撫で繰り回せるなら、何を捨ててもいい!!」
がばりと顔を上げた御菓子の目は、ギラギラと怪しく光っており――彼女はそのまま両手を合わせながら、何処かで見たことのある格好で勢いよく、もふもふの群れにダイブしました。
「うへへ~~~っ! もふもふちゅぁぁぁ~~~んっ」
●モフリストの神髄
――遠くのもふ一角で、鬼気迫る勢いの絶叫が響いてきた様子に「モルッ!」とモルがびっくりしました。しかし、ぷにぷにほっぺで驚くその姿もチャーミングだと、大和は和やかにもふもふタイムを満喫しています。
「それにしても、かぱちゃん……大量にいるわね」
大和が向かった先でも温泉かっぱが「かぱかぱ」と鳴いていましたが、彼女の超視力はこれが全て同一個体――度々F.i.V.E.の皆にお世話になった、ちまっこいかっぱのかぱちゃんだと見抜いていたのでした。
「お皿の形、瞳の大きさ、毛並み、相撲の時の古傷……」
真剣に見つめる大和のまなざしの前には「かっぱの毛並み?」と突っ込むのも野暮と言うもの。これは自分の願望がそうさせたのか――そう考えた大和ですが、こうなればやる事はひとつです。
「でも大丈夫よ。全員順番になでなで、ぎゅっとしてあげるわ。喧嘩しないで並んでね?」
「かっぱ!」
そうすると、かぱちゃん達は礼儀正しく並んで、大和とのスキンスップをどきどきしながら待つことになりました。元が同じかぱちゃん――普通の温泉かっぱよりも一回りちいさく、ちょっぴり気弱な性格をしているので、順番を巡って揉めたりはしていないようです。
「ふふ、いい子達ね」
「あ、かぱちゃんがいっぱいいる!」
と、かぱちゃんとハグをしている大和の姿を見つけた千晶は、其処に居るのがかぱちゃんだらけだと知って瞳を輝かせました。愛を込めながら、傍に居る子達をなでなでもふもふしていた彼女ですが、沢山のかぱちゃんに囲まれるのも素敵だなぁと思ったのです。
「あら、千晶さんも一緒にやる? かぱちゃんはみんなお行儀がいい、良い子ばかりよ」
「ひゃっはー! かわいいかぱちゃん達は愛をこめてもふもふしちゃうよー!」
そんな訳で早速大和の隣に並んだ千晶は、ひしっと抱き着いてくるかぱちゃんをなでなで――そうしている内に、廃校で出会ったケサランパサランや悪戯っ子の三毛猫又など、懐かしい顔ぶれの古妖たちも集まってきました。
「元気そうで安心したわ、もちろん覚えているわよ。毛もつやつやで美人さんね」
もきゅーと幸せそうな毛玉を優しく撫でると、猫又も撫でて欲しそうにぷにぷにボディをすりすりしてきます。が――「うへへへへへ!」と遠くから聞こえてきた絶叫に、彼は青ざめて逃げ出していき、後には不思議そうに顔を見合わせる大和と千晶が居たのでした。
「何をするかって? そんなのもふもふに決まっているだろう!」
一方のゲイルは、お菓子の木の下で至福のもふもふタイムです。白毛玉のケサランパラサンを数匹着流しの懐に入れて、しっとりした肌ざわりの温泉かっぱを抱っこ。すねをこすりたそうにしているすねこすりを頭に乗せた後は、モルモル鳴いているモルに頬ずりをします。
「おお、小さい虎さんや狼さんの古妖まで……!」
虎は白虎、狼は山犬でしょうか。どうやらちっちゃい子供たちのようで、にくきゅうを突き出して戯れたがっているようですね。そんな彼らも、ゲイルは纏めてもふもふ――ふわもこアニマルは正義だと、しみじみ実感している様子です。
(身動き取れなくなるくらい、もみくちゃにされるのもそれはそれで捨てがたいのだがな)
だがしかし! とゲイルは主張しました。自分はもふもふしたいのだと! やはりこう、撫でられたりとかして気持ち良さそうにしているふわもこは、天使だと思うのです。
(そして、力加減には充分気をつけなければ)
――そう、彼らに嫌な思いをさせてしまってはモフリストの名折れなのです。そう決意したゲイルの表情は、何処までも晴れやかなものでした。
●嘘みたいな夢の終わり
こうして皆のもふもふ愛により、うじゃうじゃいた古妖たちは満足して丁度いい数に――次第に余裕も生まれて来て、じっくりもふもふタイムへと移ります。
「あら、かぱちゃんズの皆、列の整理を手伝ってくれたのね」
大和にもふられるのを待っていた古妖たちも落ち着いて、どうやら彼らをかぱちゃん達が誘導してくれていたようです。待ち時間の為に椅子やドリンクまで置いてあって、かぱちゃんの心遣いが伝わりますね。
「本当にいい子達ね。ありがとう、助かったわ」
そう言って頭をなでなでした大和に向かい、かぱちゃんは「かぱ!」と誇らしげに胸を張ったのでした。
「小梅たんも楽しんでいるか?」
――そしてゲイルは、守護使役の小梅にももふもふを楽しんで貰おうと、お菓子の家へ。ころころ転がりながらすねこすりとじゃれ合う姿は、思っていた通りに可愛らしく――すねこすりが、小梅のすねが見つからずにおろおろしている姿もまた良しなのです。
「一緒にお菓子を食べるのもいいかもしれん……ほら、小梅たん」
お菓子の屋根のビスケットを剥がして、ゲイルは小梅と半分こ。そうこうしている間に、凛がすねこすりの標的になり、くすぐったそうにしつつもふっています。
「あれやな。御馳走も食べ過ぎると飽きるってやつやろか。けどやっぱり可愛い~! ひたすらもふってもふってもふりまくるで!」
と、贅沢な悩みを呟きつつ、もふもふ天国に浸る凛なのでした。
――そうして四月一日の夢は、静かに終わりを告げていきます。むにゃむにゃとくすぐったそうに身をよじらせて眠る凛は、最後までもふもふを堪能できたのでしょうか。彼女の唇からは、こんな寝言が聞こえてきたのでした。
「……て、だから毛玉……谷間に、入ってくるな……って……」
