ゲレンデで思いっきり滑りましょう!
●雪降るスキー場で思いっきり遊びたいっ!
今年は特に寒い。
関東ではすでに雪が降ったという。雪が降ったとあれば、遊びたいに行きたいと考えるのは、F.i.V.E.のメンバーが京都に住んでいるからだろうか。
「皆さん、スキーの経験はおありでしょうか?」
考古学研究所内で覚者数人の姿を見かけた『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)が声をかける。覚者達の状況はそれぞれといったところだったが、なぜと誰かが静音へと聞き返した。
「ちょっと羽根を伸ばしてきなさいと、真由美さんにお暇を頂きまして……」
学業と家事、F.i.V.E.の事務の手伝いと忙しない日々を送る彼女を見ていた、久方・真由美(nCL2000003)が静音へと旅行にでも出かけてくるよう提案してくれたらしい。
その際、菜花・けい(nCL2000118)がスキーというものをやってみたいという提案があり、スキー場へと行き先が決定したのだが。
「折角ですから、皆さんと一緒に遊びに行きたいのですわ」
予定しているのは、長野県のスキー場。ゲレンデにはすでに雪が積もっており、すでにスキーを楽しむことができるという。
スキー場では、やはり気持ちよく滑走したいもの。パートナーやチームメンバーらと楽しく、難易度の高いコースにチャレンジしてみるのもいいものだ。
……とはいえ、スキーの経験がある者は存分に滑ることが出来るだろうが、南国育ちのメンバーなど、スキー経験がないという者も少なくないだろう。そういったメンバーには、現地でインストラクターが付いてくれるのだという。
「スキーに自信がおありでしたら、一緒に行かれる方にお教えするのもよいかもしれませんわね」
一緒に行ったスキー初心者の仲間へとスキーのイロハを教えることで、仲間との絆を確かめ合うのもいいものだ。
滑れない者が多いチームであれば、敢えて麓で遊ぶのもいいかもしれない。滑るのに邪魔にならない場所であれば、雪合戦などを楽しむことも可能だ。
珍しくそわそわしている静音。出発予定日が待ち遠しいようだ。
「それでは、楽しみにしていますわ」
彼女はにっこりと微笑み、その場を去っていったのだった。
今年は特に寒い。
関東ではすでに雪が降ったという。雪が降ったとあれば、遊びたいに行きたいと考えるのは、F.i.V.E.のメンバーが京都に住んでいるからだろうか。
「皆さん、スキーの経験はおありでしょうか?」
考古学研究所内で覚者数人の姿を見かけた『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)が声をかける。覚者達の状況はそれぞれといったところだったが、なぜと誰かが静音へと聞き返した。
「ちょっと羽根を伸ばしてきなさいと、真由美さんにお暇を頂きまして……」
学業と家事、F.i.V.E.の事務の手伝いと忙しない日々を送る彼女を見ていた、久方・真由美(nCL2000003)が静音へと旅行にでも出かけてくるよう提案してくれたらしい。
その際、菜花・けい(nCL2000118)がスキーというものをやってみたいという提案があり、スキー場へと行き先が決定したのだが。
「折角ですから、皆さんと一緒に遊びに行きたいのですわ」
予定しているのは、長野県のスキー場。ゲレンデにはすでに雪が積もっており、すでにスキーを楽しむことができるという。
スキー場では、やはり気持ちよく滑走したいもの。パートナーやチームメンバーらと楽しく、難易度の高いコースにチャレンジしてみるのもいいものだ。
……とはいえ、スキーの経験がある者は存分に滑ることが出来るだろうが、南国育ちのメンバーなど、スキー経験がないという者も少なくないだろう。そういったメンバーには、現地でインストラクターが付いてくれるのだという。
「スキーに自信がおありでしたら、一緒に行かれる方にお教えするのもよいかもしれませんわね」
一緒に行ったスキー初心者の仲間へとスキーのイロハを教えることで、仲間との絆を確かめ合うのもいいものだ。
滑れない者が多いチームであれば、敢えて麓で遊ぶのもいいかもしれない。滑るのに邪魔にならない場所であれば、雪合戦などを楽しむことも可能だ。
珍しくそわそわしている静音。出発予定日が待ち遠しいようだ。
「それでは、楽しみにしていますわ」
彼女はにっこりと微笑み、その場を去っていったのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.思いっきりスキー場で遊ぶ!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
色々と忙しい毎日。
あれやこれやと依頼も飛び交って大変な状況ですが、
覚者だって遊びたいっ!
そうだ、ゲレンデに行こう!!
●参加方法
以下のシチュエーションから1つ選んでください。
あちらこちらの状況を想定するよりは、
1つに絞ってプレイングを手がけていただくことをお勧めします。
また、どなたかとご一緒に参加でしたら、
団体名、お名前、ID、
呼び方がありましたら幸いです。
※基本的な状況
雪が降っています。
吹雪いてはおりませんので、視界は悪くありません。
また、スキー用品一式は持ち込みも可能ですし、
レンタルも可能です。
1.スキーで滑る
思いっきり滑ってみてください。
誰かと一緒でもいいですし、
ここぞと自らのテクニックを見せ付けてもいいでしょう。
リフトで上がる様子などもこちらでどうぞ。
リフトは2人乗りですので、
2人きりの世界をしばし堪能できます。
2.スキーの講習
ぜんぜん滑れないという方は、
現地のインストラクターがついてくれます。
要望にお答えした人をお呼び出来ます。
また、団体参加やペアなどで参加の場合、
上手な方が教えることも出来ます。
手取り足取り教えていただければと思います。
または、これを機会に滑れるように頑張って下さい!
3.ソリで滑る、雪で遊ぶ、etc…
スキーはやっぱり苦手という方や、
低いところでソリなどで遊びたいという方へ。
麓であれば、雪合戦などで遊ぶことも可能ですよ。
●NPC
河澄・静音と菜花・けいがお邪魔します。
お誘いがありましたら、出来る範囲で応じさせていただきます。
静音は運動神経がそこそこあり、
スキーは人並みに滑れます。
けいはスキーにチャレンジしてみるようです。
経験はありませんので、基本から教わる予定です。
それでは、よろしくお願いいたします!
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
23/50
23/50
公開日
2016年12月15日
2016年12月15日
■メイン参加者 23人■

●折角のスキーに来たのだから……
長野県の某スキー場。
そこには、束の間の休日を楽しむF.i.V.E.の覚者達の姿があった。
斜面を見てみれば、すでに颯爽とスノーボードに乗って滑り降りる禊の姿がある。
「スキーなんて、いつぶりだろう!」
彼は他の仲間と一緒に遊ぶことも考えていたが、相当久しぶりだったらしく、昂ぶる気持ちを抑えられなかったらしい。折角だから思いっきり滑りたいと、1人で滑る。
とはいえ、彼は上級者というわけではない。スピードはそれなりで安全を気がけて滑る。周りには覚者だけでなく、一般客もいるのだ。
近場では、珍しく着物姿ではなく、スキーウェアを着た静音が滑っている。
「気持ちいいですわね……!」
「雪だー! いっぱい滑るぞー!」
静音も、禊も、個々で雪山を思う存分堪能していたようだ。
「同じウェアの色違いー!?」
「流石相棒、趣味が合うねー?」
翔と紡は、色違いウェアという互いの格好に笑い合ってしまう。
「そんな事より、スノボ! 早く上の方行こうぜー」
持ち前の運動能力もあって、翔は2度の経験でコツを掴み、滑れるようになったらしい。
(年下の頼れる相棒は上手みたいだから、大人しく教えてもら……)
翔が紡を急かすが、スノボ初体験の紡は思いっきりこけてしまう。
「あれ、もしかして、スノボ初めて? なんだ、早く言えよ」
「……スキーなら、出来るのに」
笑って手を差し出す翔。それに、紡は口を尖らせる。
「じゃあ、今からスキー借りるか?」
大人なはずなのにとケラケラ笑う翔のおでこを、紡は半ば八つ当たり気味にごちん。
おでこを真っ赤にしつつも、翔は目を輝かせていてそわそわしていて。
「1回だけ! 上から滑ってきてもいいかなー」
「きゅーけーしてるから、いっておいでー」
上級者向けのコースに興味を持つ翔。それについていけない紡は、笑って彼を送り出すことにする。
(いつまで、翔は子供でいてくれるかなぁー……)
嬉しそうにリフトに向かった翔を送り出した紡は、宿に戻ることにした……のだが。
「……しまった、一人で戻れるのか、ボク……」
そう口走った矢先にコケしまい、紡はしょんぼりとしてしまうのであった。
スキー初心者のいのりはけいと一緒に、何やら熱血系でやや暑苦しさすら覚えるインストラクターから教わることとなっていた。
2人は早速、スキー板をハの字にしてそろそろと滑ってみる。
「難しいのじゃ……っ」
基礎体力の低いけいは苦戦している様子。思いっきりこけた彼に鋭く視線を走らせたインストラクターは、丁寧に指導する。
いのりも滑るうちに、両足が広がってしまって……。
「助けて下さいませー!」
叫びながら転がったいのりは、雪に埋もれてしまう。
「最初は皆こんなもの、けい様には負けませんわ!」
恥ずかしさに顔を赤くしつつも、彼女は気を取り直す。
「その気合やよし! 特訓だ!」
「もちろんですわ!」
うんうん頷くインストラクターに応じ、いのりは気合を入れていた。
長い2人乗りのリフトに、緑と赤のウェアが並ぶ。
「先輩はウェアとっても似合ってますね!」
緑は小唄。背の小さい彼は子供用のスキーウェアに袖を通す。大きな狐の尻尾はウェアに入れると窮屈な為、外に出せるよう加工している。
「小唄さんも似合ってますよ。とても可愛らしいです」
赤いウェアのクーも、犬の尻尾を外に出していた。
寒さの為か、小唄は思わずクーに擦り寄っていく。
「えへへ、こうしてくっついているだけでなんとなく暖かい気になります」
そんな小唄がすごく可愛らしく、微笑ましくて。
ただ、揺れる尻尾が手に当たって気になるクーは、お返しにとちょっとだけくすぐって悪戯する。
「ひゃっ!? や、止めてください!?」
それに身を捩じらせた小唄はリフトから落ちそうになり、クーにしがみつこうとする。
一方でクーは思わず抱きしめ返し、2人は抱き合う格好に。
「あ、いや、ごめんなさい」
クーは近づく小唄の顔に動悸を抑えることが出来なくて。
小唄もまた、その心地良さに甘えていた。リフトが頂上に着かなければいいのに。そんなことを考えながら。
「寒いですし、もう暫しこのままで居ますか?」
腕の中の小さな体はとても温かくて。それにクーは顔を綻ばせ、尻尾を大きく振ってしまう。
(拒否されても、逃しませんから)
もう少しだけ、彼を独り占めしたいから。
リフトで上がった頂上には、1組の男女の姿があった。
きっかけは、懐良の「スキーは得意かい?」という問い。声をかけられた志穂も軽いノリで答えてはいたのだが。
「勝ってもあれだ、負けた方に褒められるだけだが。……自信がないって言うなら、避けてもいいがね!」
言葉巧みに懐良は志穂を誘い、スキーでの競争を持ちかけたのだ。
懐良としては、狙ったり叶ったりな状況。彼は予め、コースについて下調べしており、自らは滑りやすいコースを、おねーさんこと志穂は難所に追い込む算段だ。
(戦いとは、戦う事前準備が八割なのさー!)
勝利を確信し、懐良は滑り始めたのだが……。
「これでも、身体は鍛えてるからね。ボクサーのバランス感覚、見せてあげる」
あれほど挑発されては黙っておれぬと、志穂も大人気なく超視力とハイバランサーを駆使し、難所だろうがすいすいと滑っていく。
「んんん? あれ。なにその足腰のバネとか」
軽やかに急な坂を滑走する志穂は、非常に楽しそうだ。
「足りない準備は、おねーさんのこと調べだったーーーー!?」
勝敗は兵家の常。懐良はそれを思い知る。
先にゴールしてガッツポーズする志穂に、懐良は素直に負けを認める。遅れてゴールに着いた彼は、志穂の頭を撫で始めた。
「おねーさんはスゴイなあ、よしよし」
「あんまり女の子を撫でちゃ駄目だよ」
褒められるのにくすぐったさを覚える志穂だったが、同時に、子供扱いされているのに気づいて顔を顰めてしまっていた。
再び、頂上に目を向けると。
「スキーなんて、学生の時に貯金して行ったっきりだなぁ」
基はスキーウェア一式に身を包み、彩吹と共にリフトで坂の頂上に到着していた。
真っ白な雪景色。彩吹はそれにわくわくしてしまっていて。
「基さん、どちらが先に下まで行けるか、競争しませんか?」
「ふふ。お手柔らかにね」
どれほどの腕かお手並み拝見と、彩吹は好戦的な笑みで勝負を持ちかける。2人はそのまま、コースを滑走し始めた。
一方、麓近くでは、基の妻の舞と、澄香が一緒に滑っていた。
「私、スキーって、ボーゲンしかできないんですけど……」
よろよろとスローペースで滑る澄香。舞もまたほとんど経験がないらしく、滑ってもいまいち楽しめない様子。
そんなの澄香、舞の前に、凄い勢いで疾走してくる2人組がいた。
「何か凄く上手い人が二人……あれ? こっち来る?」
かなりのスピードを出していたが、その2人は唖然とする彼女達の前で見事に停止してみせた。ゴーグルを上げれば、それは見知った顔で。
「怖くないのかしら……って、彩吹ちゃん!? 基さんも!?」
ポカーンとする澄香。しかし、舞はちょっとむくれて近場の雪を掴む。
「もう、基君の馬鹿! 自分だけ楽しんで! 雪玉ぶつけてやる! そのまま雪に埋もれて、雪だるまになっちゃえ!」
「ごめんごめん……僕が悪かった。分かったよ」
拗ねた妻を、基はなんとかなだめようとする。
彩吹はご主人をとってしまったと申し訳なさを感じ、ならばと、ぽかーんとしたままの澄香に狙いを定めた。
「澄香、一緒に上に行こうよ。山の上から滑った方が絶対楽しい!」
「え、え、え? 彩吹ちゃん!? 私、上の方で滑るの無理ですってばー!?」
リフトすら面倒と彩吹が翼を羽ばたかせたので、澄香も飛行してついて行く。
一方で、地上の成瀬夫婦は。
「あう……悪いと思ってるなら、私にスキー教えてよね」
「じゃあ、舞。一緒にリフト乗ってさ、上行って滑ろ?」
申し訳なさを感じる基が舞の手を引き、リフトへと乗る。2人はそこで、飛行した彩吹と澄香に気づいた。
宙を行く2人も、お似合いの夫婦に気づいて手を振る。
「ふふ、ラブラブですね?」
しかし、リフトでは、夫婦一緒に座る状況を見られたことに、舞が照れくささを覚えてしまって。
「は、恥ずかしい!」
どーん。
「え、ちょ、バランス崩っ……! 落ちるー! ぎゃー!」
顔を真っ赤にした妻を気遣う基は突き飛ばされ、リフトから真っ逆さまに落ちていく。
「……って、あう」
夫を突き飛ばした舞に格好良さを感じ、彩吹は笑顔で拍手する。
「だだ、大丈夫ですか!?」
雪の中、突き刺さるように落ちた基を心配し、澄香は助けようと急いでそちらへと飛んでいくのだった。
●麓で楽しい一時を……
ジャックは那由多を連れ、一面の銀世界を見回す。
「寒い! けど、白いな! 白銀の景色ってやつ!」
「わぁぁ……」
見慣れない景色に、那由多はしばし言葉をなくしてしまう。これだけ沢山の雪を見るのは生まれて初めてだったらしく、瞳を丸くしてはしゃぎ始める。
「猫はこたつで丸くなるんじゃないんだな」
そんな猫の獣憑である彼女を眺めつつ、ジャックは何かを思いつく。
「雪だるま作ろうぜ、ねこみみと、うさみみの!」
「もちろん、ええよ。作ろ!」
那由多とジャックを模した雪だるま作成の為、2人は早速雪玉を転がし始める。ジャックが大きい胴体、那由多が頭担当だ。
せっせせっせと雪玉を転がす2人。そこで、ジャックはこっそりと小さな雪玉を那由多の服の中へ……。
「ちょ、ちょっと何するん?! 冷たいっ!!」
「うはは、那由多! 冷たいやろ」
意地悪く笑うジャックの背中へ、那由多は反撃の雪玉を大盛りで服の中へとお返しする。
「ひゃっこい? お返し! これで、おあいこや♪」
「ひっぎぃいい!!? ちぇ、やりやがったな!」
ジャックは思いっきり那由多へと飛びつき、一緒に雪にダイブする。
「あはははは!」
笑うジャック。しかし、那由多の頬に零れ落ちた一筋の涙が雪に落ちたのに気づき、ジャックは真面目な顔で彼女の手を握る。
「大丈夫、死なないよ、那由多。ちゃんとお前んとこ帰るから」
2人がこの場にいるのは、那由多が覚者として戦うジャックの命を心配したからだ。
「――必ず護るよ、君の居る世界を」
「…………うん」
那由多はその冷たい指先をギュッと握り返す。頬に落ちてくる雪の優しさを感じながら。
スキー初心者のたまきは、奏空から教わっていた。
アクティブな叔父さんに色々教わったという奏空は、スキーだってお手の物。白と青色のスキーウェアに身を包む彼は、ゴーグルを額上部に移動させてから、たまきへと声をかける。
「さ、たまきちゃん。俺と一緒に練習しよう」
「宜しくお願いしますね! 奏空先生!」
ゲレンデ効果で、イケメン度アップ間違いなしと意気込む奏空。
しかし、スキー板を思うように動かせないたまきに奏空の姿を見る余裕はなく、四苦八苦していた様子。
とはいえ、そこは経験者の奏空。彼は丁寧に滑り方を教えると、たまきは少しずつコツを飲み込んでいく。
「どうですか……? 奏空先生!」
「うん、そうそう! たまきちゃん上手になって来たね!」
頬があったかくなっていた奏空は、もはや寒さなど感じないくらいに体が火照って……。
「げふうっ!」
そのとき、どこからか飛んできた雪玉が見事に奏空へとクリーンヒット。
(リア充だからか!?)
あまりに幸せな奏空は笑顔を浮かべたまま、雪の中に崩れ落ちる。
「はわわわわ……!!」
スキー板を外したたまきが慌てて駆け寄り、彼をソリに乗せて救護室を目指していた。
飛んできた雪玉については、少しだけ時間を遡る。
数刻前、麓では10代の子供達が集まっていた。
「諸君、私は戦いが好きだ。……以下略!」
淡々と語るかと思いきや、遥は思いっきり捲くし立て始めた。
「んでさ、雪があるわけじゃん。雪で、戦いっつったら、もうやることは一つじゃん? 雪合戦だーー!!」
気合を入れているのは、遥だけではない。燃え上がるきせきは、ダッフルコートともこもこマフラーに耳あてを身につけ、完全防備で戦いに臨む。
「いつも遊んでる友達も今日初めて遊ぶ子も、誰だって手加減しないよー!」
「やったりますよ。ぜんいん、このみうのえじきにしてくれるう!!!」
叫ぶ御羽などはすぐに覚醒し、臨戦態勢に入っていた。
「ゆきがっせーん! 皆、寒いのに元気だよねぇ☆」
こたつでのんびりテレビ視聴を好むことこだが、その目はやる気だ。
「ルールは簡単! 参加者の証である赤いリボンを着けたヤツに、雪球をぶつけろ! ぶつけろ! ぶつけまくれ!!」
遥が言うように、赤いリボンをつけた参戦メンバー達。バトルロワイヤル形式での雪合戦の開幕である。
「きせきに遥、ことこ! 行くぜー!」
ヤマトは男性メインを相手にする様子。しかし、さりげにターゲットになっていることこには加減こそあれど、遠慮なく雪玉を放り投げていた。
「雪玉をせっせと作る……何てめんどくさい事はしないのです。何のための飛行か!」
そのことこはバケツで雪をすくい、上空へと飛んでばさーっと参加メンバーにバケツの中身をぶちまけていく。
問題は、飛行中に狙われると一溜まりもないことか。
「かよわいあいどる☆を狙うなんてとんでもない! でしょ? で、しょ……」
しかし、躊躇なくヤマトから飛ぶ雪玉に、ことこはあえなく沈んでいく。
「ふっ、餓鬼どもが。この私に勝てると思って?」
覚醒して口調が変わる御羽は、手持ちのバスケットへと雪玉を目いっぱい詰め込み、不気味な笑いと共に投げ飛ばす。しかしながら、悲しいかな運動神経の悪い彼女の雪玉は誰にも当たらない。
対して、戦場を活発に動く遥。彼はハイバランサーを使って雪の上でも全力疾走し、超直感で周囲の状況把握を行う徹底っぷり。
「フッ、これは勝ったな……」
立っている者は全て敵と、男女構わず彼は雪玉を顔面目掛けて乱舞していく。
「くっ、やってくれるわね!! 子供には優しくしなさいよね!!」
なんとか抵抗していた御羽だったが、疲れたのか覚醒が解けてしまう。
「ふえええ、みうにもげんかいというものがあるのです」
猫かぶりする彼女は、一時避難と木陰に駆け込んでいく。
「これは、仲間を作るのがいいっす」
時雨は最初から、誰かと共闘を考えていたようだ。
しかし、遥は聞く耳持たない様子だし、ことこは頭上から雪を降らせてきている。御羽は避難してしまったし、ヤマトは共闘するにも一筋縄ではいかなさそうだ。
そうなると、きせき辺りが打倒だろうか。時雨はきせきの姿を探す。
そのきせきは手袋のまま、雪玉を作っていたのだが……。
「手袋が湿ってきちゃって、手が冷たくなっちゃう! うわー、逆効果だったかも!」
時雨は頼りになりそうなメンバーを求め、物陰から遠巻きにこちらを眺めているありすに注目する。
寒いのが苦手なありすはしっかりと防寒具を着込み、雪合戦の模様を観戦していたのだ。
(何でこんな寒い時期に、外で遊ぼうって思うのかしら……)
ありすの視線はヤマトを追っていた。みんなと楽しそうにする彼がありすにはちょっとだけ気に食わない様子。
(そういえば、ヤマトと初めて出かけたのも雪遊びだっけ)
寒さに身を震わせているたありすへ、突然、雪玉が命中する。
「ちょ、ちょっと、アタシは参加しないって……。きゃっ!?」
服に命中したのは、ヤマトが投げた雪玉だ。
「ほらほら、遊ぼうぜ!」
初めて会ったときのことを思い出しつつ、ヤマトは、彼女を誘おうとしたのだが、思った以上にありすは怒りに燃えていて。
「良いわ、相手になってあげようじゃない」
ありすはむんずと掴んだ雪を、思いっきりぶん投げ始める。時雨はそれを受けてしまい、ありすを仲間に引き込むことを断念していたようだ。
それに反撃をするヤマト。飛び交う雪玉の中、徐々にメンバー達が本気を出し始めて。
「関係ない人巻き込んじゃったらごめんね!」
きせきはちっちゃい雪玉を周囲にとばす。これが別所に炸裂するのは、今は脇に置いといて。
本気を出すきせきを頼りにしつつ、時雨もまたベストを尽くして雪玉を投げ飛ばす。
ここぞと、木陰で作った雪の大玉を、御羽が持ち上げようとするのだが。
「おっきいたま、もてないのです!!」
彼女は持ち上げようとした自らの大玉を、頭から浴びてしまう。
「ことこのすのーあたっくー!」
宙を羽ばたくことこは雪を降らせようとして、手が滑ってしまい……。
「ごめん、バケツごと落としたー! よけてー!」
落としたバケツを被って悔しがる遥の様子に、皆大笑いしてしまうのだった。
その近くで、スキーの練習をしていたいのりとけい。
インストラクターが雪玉を防いでくれる中、けいはふらふらとしながらも一応形になり、いのりもまたなんとか滑れるようになっていたようだ。
「やりましたわ!」
いのりはインストラクターと抱き合い、大いに喜んでいた。
また、流れ弾を喰らった奏空は、救護室で幸せそうに気を失ったままである。
「奏空さん! しっかり……! しっかりして下さい……!」
呼びかけるたまきはその安らかな寝顔を見て、一言。
「……私がずっと傍に居ますね!」
男冥利に尽きる一言だったろうが、今の奏空の耳には届かないようだった。
雪合戦会場に視線を戻せば、バトルロワイヤルも終わっていたようだった。
文句なしに勝利したありすは、雪を払って元の場所に戻って温まっていた。
「あーりす。大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ、もう……」
そこへ、翼を広げたのは、覚醒したヤマトだ。
「ありす寒がりだから、翼で包んだら温まるかなって」
少しだけドキッとしたありす。見えないのをいいことに、彼女はそのままヤマトの体へと抱きつく。
(……あったかい。何だか、落ち着く……)
そんなに寒かったのかとヤマトは考えつつ、しばし煩悶していた。
(だ、抱き返していいのか!?)
彼はぎこちない所作で、ありすを抱きしめる。
その腕の中は、すごく温かくて、嬉しくて。……ずっと離したくない。
互いの感触を感じる2人。降り積もる雪が、彼らを祝福しているようにも見えた。
長野県の某スキー場。
そこには、束の間の休日を楽しむF.i.V.E.の覚者達の姿があった。
斜面を見てみれば、すでに颯爽とスノーボードに乗って滑り降りる禊の姿がある。
「スキーなんて、いつぶりだろう!」
彼は他の仲間と一緒に遊ぶことも考えていたが、相当久しぶりだったらしく、昂ぶる気持ちを抑えられなかったらしい。折角だから思いっきり滑りたいと、1人で滑る。
とはいえ、彼は上級者というわけではない。スピードはそれなりで安全を気がけて滑る。周りには覚者だけでなく、一般客もいるのだ。
近場では、珍しく着物姿ではなく、スキーウェアを着た静音が滑っている。
「気持ちいいですわね……!」
「雪だー! いっぱい滑るぞー!」
静音も、禊も、個々で雪山を思う存分堪能していたようだ。
「同じウェアの色違いー!?」
「流石相棒、趣味が合うねー?」
翔と紡は、色違いウェアという互いの格好に笑い合ってしまう。
「そんな事より、スノボ! 早く上の方行こうぜー」
持ち前の運動能力もあって、翔は2度の経験でコツを掴み、滑れるようになったらしい。
(年下の頼れる相棒は上手みたいだから、大人しく教えてもら……)
翔が紡を急かすが、スノボ初体験の紡は思いっきりこけてしまう。
「あれ、もしかして、スノボ初めて? なんだ、早く言えよ」
「……スキーなら、出来るのに」
笑って手を差し出す翔。それに、紡は口を尖らせる。
「じゃあ、今からスキー借りるか?」
大人なはずなのにとケラケラ笑う翔のおでこを、紡は半ば八つ当たり気味にごちん。
おでこを真っ赤にしつつも、翔は目を輝かせていてそわそわしていて。
「1回だけ! 上から滑ってきてもいいかなー」
「きゅーけーしてるから、いっておいでー」
上級者向けのコースに興味を持つ翔。それについていけない紡は、笑って彼を送り出すことにする。
(いつまで、翔は子供でいてくれるかなぁー……)
嬉しそうにリフトに向かった翔を送り出した紡は、宿に戻ることにした……のだが。
「……しまった、一人で戻れるのか、ボク……」
そう口走った矢先にコケしまい、紡はしょんぼりとしてしまうのであった。
スキー初心者のいのりはけいと一緒に、何やら熱血系でやや暑苦しさすら覚えるインストラクターから教わることとなっていた。
2人は早速、スキー板をハの字にしてそろそろと滑ってみる。
「難しいのじゃ……っ」
基礎体力の低いけいは苦戦している様子。思いっきりこけた彼に鋭く視線を走らせたインストラクターは、丁寧に指導する。
いのりも滑るうちに、両足が広がってしまって……。
「助けて下さいませー!」
叫びながら転がったいのりは、雪に埋もれてしまう。
「最初は皆こんなもの、けい様には負けませんわ!」
恥ずかしさに顔を赤くしつつも、彼女は気を取り直す。
「その気合やよし! 特訓だ!」
「もちろんですわ!」
うんうん頷くインストラクターに応じ、いのりは気合を入れていた。
長い2人乗りのリフトに、緑と赤のウェアが並ぶ。
「先輩はウェアとっても似合ってますね!」
緑は小唄。背の小さい彼は子供用のスキーウェアに袖を通す。大きな狐の尻尾はウェアに入れると窮屈な為、外に出せるよう加工している。
「小唄さんも似合ってますよ。とても可愛らしいです」
赤いウェアのクーも、犬の尻尾を外に出していた。
寒さの為か、小唄は思わずクーに擦り寄っていく。
「えへへ、こうしてくっついているだけでなんとなく暖かい気になります」
そんな小唄がすごく可愛らしく、微笑ましくて。
ただ、揺れる尻尾が手に当たって気になるクーは、お返しにとちょっとだけくすぐって悪戯する。
「ひゃっ!? や、止めてください!?」
それに身を捩じらせた小唄はリフトから落ちそうになり、クーにしがみつこうとする。
一方でクーは思わず抱きしめ返し、2人は抱き合う格好に。
「あ、いや、ごめんなさい」
クーは近づく小唄の顔に動悸を抑えることが出来なくて。
小唄もまた、その心地良さに甘えていた。リフトが頂上に着かなければいいのに。そんなことを考えながら。
「寒いですし、もう暫しこのままで居ますか?」
腕の中の小さな体はとても温かくて。それにクーは顔を綻ばせ、尻尾を大きく振ってしまう。
(拒否されても、逃しませんから)
もう少しだけ、彼を独り占めしたいから。
リフトで上がった頂上には、1組の男女の姿があった。
きっかけは、懐良の「スキーは得意かい?」という問い。声をかけられた志穂も軽いノリで答えてはいたのだが。
「勝ってもあれだ、負けた方に褒められるだけだが。……自信がないって言うなら、避けてもいいがね!」
言葉巧みに懐良は志穂を誘い、スキーでの競争を持ちかけたのだ。
懐良としては、狙ったり叶ったりな状況。彼は予め、コースについて下調べしており、自らは滑りやすいコースを、おねーさんこと志穂は難所に追い込む算段だ。
(戦いとは、戦う事前準備が八割なのさー!)
勝利を確信し、懐良は滑り始めたのだが……。
「これでも、身体は鍛えてるからね。ボクサーのバランス感覚、見せてあげる」
あれほど挑発されては黙っておれぬと、志穂も大人気なく超視力とハイバランサーを駆使し、難所だろうがすいすいと滑っていく。
「んんん? あれ。なにその足腰のバネとか」
軽やかに急な坂を滑走する志穂は、非常に楽しそうだ。
「足りない準備は、おねーさんのこと調べだったーーーー!?」
勝敗は兵家の常。懐良はそれを思い知る。
先にゴールしてガッツポーズする志穂に、懐良は素直に負けを認める。遅れてゴールに着いた彼は、志穂の頭を撫で始めた。
「おねーさんはスゴイなあ、よしよし」
「あんまり女の子を撫でちゃ駄目だよ」
褒められるのにくすぐったさを覚える志穂だったが、同時に、子供扱いされているのに気づいて顔を顰めてしまっていた。
再び、頂上に目を向けると。
「スキーなんて、学生の時に貯金して行ったっきりだなぁ」
基はスキーウェア一式に身を包み、彩吹と共にリフトで坂の頂上に到着していた。
真っ白な雪景色。彩吹はそれにわくわくしてしまっていて。
「基さん、どちらが先に下まで行けるか、競争しませんか?」
「ふふ。お手柔らかにね」
どれほどの腕かお手並み拝見と、彩吹は好戦的な笑みで勝負を持ちかける。2人はそのまま、コースを滑走し始めた。
一方、麓近くでは、基の妻の舞と、澄香が一緒に滑っていた。
「私、スキーって、ボーゲンしかできないんですけど……」
よろよろとスローペースで滑る澄香。舞もまたほとんど経験がないらしく、滑ってもいまいち楽しめない様子。
そんなの澄香、舞の前に、凄い勢いで疾走してくる2人組がいた。
「何か凄く上手い人が二人……あれ? こっち来る?」
かなりのスピードを出していたが、その2人は唖然とする彼女達の前で見事に停止してみせた。ゴーグルを上げれば、それは見知った顔で。
「怖くないのかしら……って、彩吹ちゃん!? 基さんも!?」
ポカーンとする澄香。しかし、舞はちょっとむくれて近場の雪を掴む。
「もう、基君の馬鹿! 自分だけ楽しんで! 雪玉ぶつけてやる! そのまま雪に埋もれて、雪だるまになっちゃえ!」
「ごめんごめん……僕が悪かった。分かったよ」
拗ねた妻を、基はなんとかなだめようとする。
彩吹はご主人をとってしまったと申し訳なさを感じ、ならばと、ぽかーんとしたままの澄香に狙いを定めた。
「澄香、一緒に上に行こうよ。山の上から滑った方が絶対楽しい!」
「え、え、え? 彩吹ちゃん!? 私、上の方で滑るの無理ですってばー!?」
リフトすら面倒と彩吹が翼を羽ばたかせたので、澄香も飛行してついて行く。
一方で、地上の成瀬夫婦は。
「あう……悪いと思ってるなら、私にスキー教えてよね」
「じゃあ、舞。一緒にリフト乗ってさ、上行って滑ろ?」
申し訳なさを感じる基が舞の手を引き、リフトへと乗る。2人はそこで、飛行した彩吹と澄香に気づいた。
宙を行く2人も、お似合いの夫婦に気づいて手を振る。
「ふふ、ラブラブですね?」
しかし、リフトでは、夫婦一緒に座る状況を見られたことに、舞が照れくささを覚えてしまって。
「は、恥ずかしい!」
どーん。
「え、ちょ、バランス崩っ……! 落ちるー! ぎゃー!」
顔を真っ赤にした妻を気遣う基は突き飛ばされ、リフトから真っ逆さまに落ちていく。
「……って、あう」
夫を突き飛ばした舞に格好良さを感じ、彩吹は笑顔で拍手する。
「だだ、大丈夫ですか!?」
雪の中、突き刺さるように落ちた基を心配し、澄香は助けようと急いでそちらへと飛んでいくのだった。
●麓で楽しい一時を……
ジャックは那由多を連れ、一面の銀世界を見回す。
「寒い! けど、白いな! 白銀の景色ってやつ!」
「わぁぁ……」
見慣れない景色に、那由多はしばし言葉をなくしてしまう。これだけ沢山の雪を見るのは生まれて初めてだったらしく、瞳を丸くしてはしゃぎ始める。
「猫はこたつで丸くなるんじゃないんだな」
そんな猫の獣憑である彼女を眺めつつ、ジャックは何かを思いつく。
「雪だるま作ろうぜ、ねこみみと、うさみみの!」
「もちろん、ええよ。作ろ!」
那由多とジャックを模した雪だるま作成の為、2人は早速雪玉を転がし始める。ジャックが大きい胴体、那由多が頭担当だ。
せっせせっせと雪玉を転がす2人。そこで、ジャックはこっそりと小さな雪玉を那由多の服の中へ……。
「ちょ、ちょっと何するん?! 冷たいっ!!」
「うはは、那由多! 冷たいやろ」
意地悪く笑うジャックの背中へ、那由多は反撃の雪玉を大盛りで服の中へとお返しする。
「ひゃっこい? お返し! これで、おあいこや♪」
「ひっぎぃいい!!? ちぇ、やりやがったな!」
ジャックは思いっきり那由多へと飛びつき、一緒に雪にダイブする。
「あはははは!」
笑うジャック。しかし、那由多の頬に零れ落ちた一筋の涙が雪に落ちたのに気づき、ジャックは真面目な顔で彼女の手を握る。
「大丈夫、死なないよ、那由多。ちゃんとお前んとこ帰るから」
2人がこの場にいるのは、那由多が覚者として戦うジャックの命を心配したからだ。
「――必ず護るよ、君の居る世界を」
「…………うん」
那由多はその冷たい指先をギュッと握り返す。頬に落ちてくる雪の優しさを感じながら。
スキー初心者のたまきは、奏空から教わっていた。
アクティブな叔父さんに色々教わったという奏空は、スキーだってお手の物。白と青色のスキーウェアに身を包む彼は、ゴーグルを額上部に移動させてから、たまきへと声をかける。
「さ、たまきちゃん。俺と一緒に練習しよう」
「宜しくお願いしますね! 奏空先生!」
ゲレンデ効果で、イケメン度アップ間違いなしと意気込む奏空。
しかし、スキー板を思うように動かせないたまきに奏空の姿を見る余裕はなく、四苦八苦していた様子。
とはいえ、そこは経験者の奏空。彼は丁寧に滑り方を教えると、たまきは少しずつコツを飲み込んでいく。
「どうですか……? 奏空先生!」
「うん、そうそう! たまきちゃん上手になって来たね!」
頬があったかくなっていた奏空は、もはや寒さなど感じないくらいに体が火照って……。
「げふうっ!」
そのとき、どこからか飛んできた雪玉が見事に奏空へとクリーンヒット。
(リア充だからか!?)
あまりに幸せな奏空は笑顔を浮かべたまま、雪の中に崩れ落ちる。
「はわわわわ……!!」
スキー板を外したたまきが慌てて駆け寄り、彼をソリに乗せて救護室を目指していた。
飛んできた雪玉については、少しだけ時間を遡る。
数刻前、麓では10代の子供達が集まっていた。
「諸君、私は戦いが好きだ。……以下略!」
淡々と語るかと思いきや、遥は思いっきり捲くし立て始めた。
「んでさ、雪があるわけじゃん。雪で、戦いっつったら、もうやることは一つじゃん? 雪合戦だーー!!」
気合を入れているのは、遥だけではない。燃え上がるきせきは、ダッフルコートともこもこマフラーに耳あてを身につけ、完全防備で戦いに臨む。
「いつも遊んでる友達も今日初めて遊ぶ子も、誰だって手加減しないよー!」
「やったりますよ。ぜんいん、このみうのえじきにしてくれるう!!!」
叫ぶ御羽などはすぐに覚醒し、臨戦態勢に入っていた。
「ゆきがっせーん! 皆、寒いのに元気だよねぇ☆」
こたつでのんびりテレビ視聴を好むことこだが、その目はやる気だ。
「ルールは簡単! 参加者の証である赤いリボンを着けたヤツに、雪球をぶつけろ! ぶつけろ! ぶつけまくれ!!」
遥が言うように、赤いリボンをつけた参戦メンバー達。バトルロワイヤル形式での雪合戦の開幕である。
「きせきに遥、ことこ! 行くぜー!」
ヤマトは男性メインを相手にする様子。しかし、さりげにターゲットになっていることこには加減こそあれど、遠慮なく雪玉を放り投げていた。
「雪玉をせっせと作る……何てめんどくさい事はしないのです。何のための飛行か!」
そのことこはバケツで雪をすくい、上空へと飛んでばさーっと参加メンバーにバケツの中身をぶちまけていく。
問題は、飛行中に狙われると一溜まりもないことか。
「かよわいあいどる☆を狙うなんてとんでもない! でしょ? で、しょ……」
しかし、躊躇なくヤマトから飛ぶ雪玉に、ことこはあえなく沈んでいく。
「ふっ、餓鬼どもが。この私に勝てると思って?」
覚醒して口調が変わる御羽は、手持ちのバスケットへと雪玉を目いっぱい詰め込み、不気味な笑いと共に投げ飛ばす。しかしながら、悲しいかな運動神経の悪い彼女の雪玉は誰にも当たらない。
対して、戦場を活発に動く遥。彼はハイバランサーを使って雪の上でも全力疾走し、超直感で周囲の状況把握を行う徹底っぷり。
「フッ、これは勝ったな……」
立っている者は全て敵と、男女構わず彼は雪玉を顔面目掛けて乱舞していく。
「くっ、やってくれるわね!! 子供には優しくしなさいよね!!」
なんとか抵抗していた御羽だったが、疲れたのか覚醒が解けてしまう。
「ふえええ、みうにもげんかいというものがあるのです」
猫かぶりする彼女は、一時避難と木陰に駆け込んでいく。
「これは、仲間を作るのがいいっす」
時雨は最初から、誰かと共闘を考えていたようだ。
しかし、遥は聞く耳持たない様子だし、ことこは頭上から雪を降らせてきている。御羽は避難してしまったし、ヤマトは共闘するにも一筋縄ではいかなさそうだ。
そうなると、きせき辺りが打倒だろうか。時雨はきせきの姿を探す。
そのきせきは手袋のまま、雪玉を作っていたのだが……。
「手袋が湿ってきちゃって、手が冷たくなっちゃう! うわー、逆効果だったかも!」
時雨は頼りになりそうなメンバーを求め、物陰から遠巻きにこちらを眺めているありすに注目する。
寒いのが苦手なありすはしっかりと防寒具を着込み、雪合戦の模様を観戦していたのだ。
(何でこんな寒い時期に、外で遊ぼうって思うのかしら……)
ありすの視線はヤマトを追っていた。みんなと楽しそうにする彼がありすにはちょっとだけ気に食わない様子。
(そういえば、ヤマトと初めて出かけたのも雪遊びだっけ)
寒さに身を震わせているたありすへ、突然、雪玉が命中する。
「ちょ、ちょっと、アタシは参加しないって……。きゃっ!?」
服に命中したのは、ヤマトが投げた雪玉だ。
「ほらほら、遊ぼうぜ!」
初めて会ったときのことを思い出しつつ、ヤマトは、彼女を誘おうとしたのだが、思った以上にありすは怒りに燃えていて。
「良いわ、相手になってあげようじゃない」
ありすはむんずと掴んだ雪を、思いっきりぶん投げ始める。時雨はそれを受けてしまい、ありすを仲間に引き込むことを断念していたようだ。
それに反撃をするヤマト。飛び交う雪玉の中、徐々にメンバー達が本気を出し始めて。
「関係ない人巻き込んじゃったらごめんね!」
きせきはちっちゃい雪玉を周囲にとばす。これが別所に炸裂するのは、今は脇に置いといて。
本気を出すきせきを頼りにしつつ、時雨もまたベストを尽くして雪玉を投げ飛ばす。
ここぞと、木陰で作った雪の大玉を、御羽が持ち上げようとするのだが。
「おっきいたま、もてないのです!!」
彼女は持ち上げようとした自らの大玉を、頭から浴びてしまう。
「ことこのすのーあたっくー!」
宙を羽ばたくことこは雪を降らせようとして、手が滑ってしまい……。
「ごめん、バケツごと落としたー! よけてー!」
落としたバケツを被って悔しがる遥の様子に、皆大笑いしてしまうのだった。
その近くで、スキーの練習をしていたいのりとけい。
インストラクターが雪玉を防いでくれる中、けいはふらふらとしながらも一応形になり、いのりもまたなんとか滑れるようになっていたようだ。
「やりましたわ!」
いのりはインストラクターと抱き合い、大いに喜んでいた。
また、流れ弾を喰らった奏空は、救護室で幸せそうに気を失ったままである。
「奏空さん! しっかり……! しっかりして下さい……!」
呼びかけるたまきはその安らかな寝顔を見て、一言。
「……私がずっと傍に居ますね!」
男冥利に尽きる一言だったろうが、今の奏空の耳には届かないようだった。
雪合戦会場に視線を戻せば、バトルロワイヤルも終わっていたようだった。
文句なしに勝利したありすは、雪を払って元の場所に戻って温まっていた。
「あーりす。大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ、もう……」
そこへ、翼を広げたのは、覚醒したヤマトだ。
「ありす寒がりだから、翼で包んだら温まるかなって」
少しだけドキッとしたありす。見えないのをいいことに、彼女はそのままヤマトの体へと抱きつく。
(……あったかい。何だか、落ち着く……)
そんなに寒かったのかとヤマトは考えつつ、しばし煩悶していた。
(だ、抱き返していいのか!?)
彼はぎこちない所作で、ありすを抱きしめる。
その腕の中は、すごく温かくて、嬉しくて。……ずっと離したくない。
互いの感触を感じる2人。降り積もる雪が、彼らを祝福しているようにも見えた。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『雪結晶のキーホルダー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

■あとがき■
皆様の思い出の一助となれましたなら、
とても嬉しいです。
参加していただき、
本当にありがとうございました!!
とても嬉しいです。
参加していただき、
本当にありがとうございました!!
