<ヒノマル戦争>敦賀中継基地制圧作戦
<ヒノマル戦争>敦賀中継基地制圧作戦



「現在ファイヴはヒノマル陸軍との戦争状態にある。FH協定によって一般人に被害はでないが、その分拠点制圧戦は決戦において重要な役割をもつだろう。今回制圧に向かって貰うのは『敦賀中継基地』だ」

 敦賀は貿易によって栄えた町である。それだけに海路を通じての京都襲撃にもってこいの施設が存在している。
「敦賀赤レンガ倉庫は知っているか? 横浜が有名だが、同じような施設が敦賀にもあるんだ。ヒノマル陸軍はこの倉庫の実質的運営権をダミーカンパニーによって獲得し、地下に兵器貯蔵庫を持っている」
 この倉庫は第二次世界大戦前から存在し、当時秘密裏に行なわれていた魔術や錬金術、妖術や霊能力を用いた実験兵器の保管場所でもあったという。
 以前戦った淀カズヒトの使用していた『黒屍』や高槻フタジの使用した『禍津桜花』などの禁忌兵器が保存されている。
「ファイヴとの決戦となればこれら禁忌兵器を使用することも考えられる。一部は既に持ち出されているかもしれない。だが今のうちに制圧すれば、それ以上の持ち出しを封じることができるだろう。念のため言っておくが、協定により兵器の鹵獲は禁止されている。制圧に成功した場合は倉庫を封鎖する予定だ」

 ここに配備されるヒノマル陸軍側のチームは第二覚醒隊。
 久米ヒサシをはじめとする覚者チームである。
「彼らはヒノマル陸軍で開発された特殊オフロードバイクを持ち込んでいる。
 勿論ただのバイクじゃない。戦闘中ほぼ無敵の耐久性と柔軟な動作、そして高い機動力をもっている。普通に戦うのは不利になるだろうが、しかし……」
「またせたなっ!」
 声と共に現われたのは、手のひらサイズの妖精さんだった。
 ピクシー。その他複数の名前をもつこの古妖は、ファイヴの覚者たちと深い絆を結んだ妖精族の末裔である。
 どこに現われたのかって、窓の外をふんわり飛んで現われた。
 窓の外に身を乗り出してみると、外にはずらりと人数分の『木馬』が並んでいる。
 咳払いと共に解説するアタリ。
「あれは古妖『無限樹』が生み出した樹木のゴーレムだ。攻撃力を持たない代わりに耐久力と機動力にスペックを絞って作られた特別製だと聞いている。そのため六体しか作れなかったようだが……」
「こいつがあれば悪い奴に対抗できるんだろっ? やっちゃうぜー! ぴくしー活殺自在剣をみせちゃうぜー!」
 ピクシーは割り箸を両手に持つと、ぶんぶん降り回してアピールした。
「さあいこう! みんなと繋いだこの絆、むげんのぱわーに変えちゃうぜー!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.戦闘に勝利する
2.なし
3.なし
 これはシーズンシナリオ<ヒノマル戦争>の一部です。
 戦闘の勝敗によって拠点制圧の是非が決定します。

●シチュエーションデータ
 敦賀湾ムゼウム公園で戦闘を行ないます。赤レンガ倉庫もまあまあの広さなのですが、バイクで走り回るほどの広さがないせいです。
 ここは芝とタイルで整えられた半円形の広場です。
 手すり越しでダイレクトに海に面しています。

●エネミーデータ
 前回戦闘時に取得したスキャンデータと、使用されたスキルを明記します
・『第二覚醒隊隊長』久米ヒサシ:木現。装剣したアサルトライフルを装備。
 →非薬・鈴蘭
・『第二覚醒隊』畑:火彩。アサルトライフル装備
・『第二覚醒隊』前田:土獣。ショットガン装備
・『第二覚醒隊』エリク:天暦。アサルトライフル装備
 →雷獣
・『第二覚醒隊』ウルト:水翼。拳銃装備。
 →水龍牙
 全員ドライブテクニカをスロット。

 以下推察情報。
 騎乗兵器の扱いに長けたチーム。
 全員射撃系体術を取得。
 隊員は覚者一人前の戦力だが、久米だけ二人前に強い。
 機動力が高いためブロックがきわめて難しい。こちらも同等の機動力を得ているので、実質は敵味方全員前衛状態とみてよい。
 戦闘スタイルは主に……
 久米が正面切って敵陣をかき乱し、畑と前田が囲い込むように集中砲火を仕掛け、エリクとウルトでもう一段囲い込んで列攻撃で挟んでいくという三重の陣形を組みます。
 前回、こちらがイルカさんの特性をちょっぴり利用した以外は特徴的な戦術をとっていなかったので、特別な対策は講じていないものと思われます。
 また、戦力比で自分たちの負けが確定した段階で降参、撤退します。

 同じ理由でファイヴ側も撤退条件を設定できます。
 設定しない場合は最後の一人が倒れるまで殴りかかります。勿論命数もどっかんどっかん減ります。

●味方戦力?
・木馬ゴーレム
 耐久力の凄まじく高い樹木ゴーレムです。これに騎乗して戦闘ができます。(あえて騎乗しなくても構いません)
 敵のバイクと同等のスピードを確保できるので、戦闘がそれはもうがんがん入り乱れる形になります。
・ピクシー
 妖精さんです。なんでか戦場まで出てきました。キラキラする粉をまいて応援する係です(味方の自然治癒力+5)。あとたまに余計なリアクションをします。

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・補足ルール1
 EXプレイングにてこちらからの攻撃アクションを投票できます。
 ヒノマル陸軍のもっている施設や侵攻に必要なルートの中で、『攻撃したい場所を一つだけ』EXプレイングに書いて送ってください。
 対象は『現在判明しているが制圧できていない拠点』か『まだ見つけていない捜索中の拠点』となります。捜索中の拠点を指定した場合、発見し次第攻撃可能となります。
 『3票以上』ある対象を票が多い順に中恭介が採用していきます。
 票が固まらなかった場合全て無効扱いとなり、中恭介が適当に選びます。
 投票は本戦争期間中ずっと有効です。
 また、対象拠点はシナリオの成果に応じて発見できることがあります。

・補足ルール2
 以前の依頼で判明した主要敵の能力が事前情報に反映されています。

・補足ルール3
 性質上『FH協定』をこちらから一方的に破棄することが可能です。
 ただしそのためには『依頼参加者全員』の承認を必要とします。
 協定を破棄した場合、互いに無秩序状態になり、捕虜の獲得や兵器の鹵獲、リンチによる完全殺害が可能になる反面、民間人や協力団体にも多大な被害が出ます。

※エネミースキャンについての追加ルール(当依頼限定)
 ターンを消費してスキャンに集中したり、敵の能力を深く推察したり、調査する部分を限定したり、数人で分担したりといったプレイングがあるとスキャンの判定にボーナスをかけます。

・FH協定
 ファイヴとヒノマル陸軍の間に交わされた戦争上の協定です。
 戦闘に関係の無い民間人に被害を出したくないファイヴ。
 兵器製造など戦争の準備を邪魔されたくないヒノマル陸軍。
 双方の条件を満たすものとして、戦争におけるルール、つまり協定を結んでいます。
 双方『ほぼ同格』の総合戦闘力を持ったチームを編成し、民間人に直接的被害の出ない場所で戦闘を行なうこと。
 またファイヴが所属覚者を長期拘束できないため、ヒノマル側・ファイヴ側双方どちらが敗北した場合でも捕虜獲得や兵器鹵獲をせず、撤退を許すこと。
 こうしたチーム戦で互いに要所を制圧・もしくは奪還し、来たるべき決戦の日に両者同時に拠点を襲撃・及び防衛し合うものである。
 互いにルールの曲解や、逆手に取った悪用はしないことで合意しています。
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状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2016年12月12日

■メイン参加者 6人■

『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『研究所職員』
紅崎・誡女(CL2000750)
『ちみっこ』
皐月 奈南(CL2001483)

●赤レンガ倉庫の見える海
「こんにちは久米ちゃん! ナナンだよ!」
「ようナナンちゃん、元気にしてたか!」
 眼鏡を外した久米と『ちみっこ』皐月 奈南(CL2001483)がぱちーんとハイタッチした。
「また正々堂々勝負なのだ!」
「望むところだぜ、なあ皆!」
「「ウーッス!!」」
 後ろにひかえていた前田たちが盛り上がっている。
 『願いの翼』天野 澄香(CL2000194)はそんな光景を眺めながら、無限樹の木馬ゴーレムをそっと撫でた。
「第二覚醒隊……ですか」
 前々から思っていたことだが、日本を代表するレベルの『悪者』のイメージからは随分浮いた連中のようにも思う。悪者とはもっと言葉の通じないモンキーめいた連中であるべきなのだが、よくよく考えたらそれはもう人間ではない。妖のたぐいである。
「人を相手にするというのは、こういうことなのかも知れませんね」
 木馬に跨がり、気を引き締める。
「さあ、ヒナちゃん。木馬さん。力を貸してくださいね」

 公園の外周をなぞるように木馬を走らせる赤坂・仁(CL2000426)。
「通常の馬に近いが、きわめて賢くて振動が弱い。これがゴーレムというものか」
「『こうも便利だと、つい有用性という考え方をしてしまいますね』」
 仁の隣に木馬を寄せて、『研究所職員』紅崎・誡女(CL2000750)はちらりと振り返った。
 こうした疑似生命を生み出す力は、もともとピクシーという古妖によるものだという。
 今は喪われた力だというが……。

 『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)と『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が並んでピクシーと会話をしていた。
「ヒナちゃんも、無限樹さんも……力を貸してくれて、ありがと」
「ふわりんが応援してくれるって聞いて、私もつい来ちゃいました。お馬さんも、頼もしいですね」
「そーだろーともー」
 無駄に胸を張って見せるピクシー。葉っぱで作った鎧めいたものを装備しているが、戦闘ができるようには見えない。だって槍が猫じゃらしだし。
 そんな姿を見て、ミュエルは胸の辺りを軽く掴んだ。
「戦争になったら、この力も、他の国の人を傷付けるために使われちゃうかもって、考えると……」
「大丈夫ですよ。そのために私たちが戦ってるんですから」
 澄香が木馬に乗って横へ並ぶ。ラーラも同じように並び、にっこりと笑いあった。
 遠くから声をかけてくる久米。
「おおい、妖精ちゃんたち。そろそろ始めようぜ! 日が暮れちまう!」
 バイクのアクセルハンドルをひねって、唸らせる久米たち第二覚醒隊。
 ミュエルたちもまた木馬の手綱を掴んで引き、ぶるんと木馬を唸らせた。
「戦闘――開始!」

●騎馬戦
 肉体限界をもたない木馬の加速は、馬のそれを大きく上回る。
 三秒足らずで風を超えたミュエルは身を低くし、守護使役の口から花弁をいっぱいに掴み取った。
 術式を込めて解き放つと、まるで花吹雪のように敵陣へと毒を帯びた花弁が散っていく。
 その中をまっすぐに駆け抜けてくる久米。
 装剣小銃を槍のように構えると、ミュエルめがけて突撃。
「……っ!」
 ギリギリのところで手綱を引き、カーブ。
 逆方向にカーブした久米とすれ違うように、そして僅かにぶつかり合う。
 久米は車体を大きく傾けながら細かくターンすると、隊員にハンドサインを送った。
 親指を立てて返す隊員たち。
 前田や畑は大きく散開すると、ミュエルたちを覆うような陣形を取り始めた。
「木馬さん、あの人の横につけてください!」
 ラーラは木馬を加速させるとウルトと併走。
 手を翳し、魔方陣を生成。その周囲を回るように小さな魔方陣群を大量に発生させると、おきまりの呪文を唱えた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を。イオ・ブルチャーレ!」
 対してウルトも拳銃を向けて水の術式を発動。
 ラーラとウルトの間で炎と水の弾が大量に交差していく。
 そんなラーラの上を飛び越える奈南。
「改造くんの出番なのだ!」
「やらせませんよー」
 前田が対抗するようにウルトの上を飛び越えてくる。
 ショットガンを棍棒の用に構えた前田とホッケースティックを同じく棍棒のように構えた奈南が空中で交差。
 互いの打撃を弾き合い、着地しつつターン。
 交差とターンを幾度も繰り返してぶつかり合っていく。

 角所で小規模なぶつかり合いが起き始めている。
 誡女は外周をぐるぐると回って迷霧や演舞・清爽でのサポートを行ないながら敵の動きを注視していた。
 五行配置的になんとなーく回復能力を持っていそうなウルトから集中攻撃する作戦をとったファイヴチームに対して、第二覚醒隊は個別にぶつかっていくことで動きを牽制するという作戦に出たようだ。
 ウルトを守るためというよりは、純粋な実力勝負を考えているようである。
 回復概念のあるテレビゲームをやり慣れているとつい回復担当から倒さなきゃと考えがちだが、その戦術にも長所と短所がちゃんとある。
 相手の特徴をとらえてそれに合った戦術を立てないと、定石を踏んだつもりで足を滑らせることになるだろう。それはさながらオート操作にしたCPUが敗北する様に似ている。
「『第二覚醒隊の趣旨はおそらく、機動力を活かした特務部隊。戦闘力の高い久米さんを中心として、互いに技能を補助しあうようにバランスをとっているはず……』」
 となると、どんな状況でも一定の成果を上げられるスキル配分が成されている筈。誰かが倒れたら総崩れという限定的なものではないだろう。
 逆に言えば弱点が無いチームとも言える。
 同時に、戦闘において特出した強みのないチームとも言えた。
「『技能スキルを多く取得した結果、攻撃スキルが非常に限定的。戦闘への適正はそこそこ……といった所ですか』」

 誡女の読み通りと言うべきか、澄香や仁もそれぞれ別のメンバーとぶつかり合っていた。
「こいつめっちゃしつこいぞ! バリアはれバリア!」
「そんなのないですって!」
 澄香はタロットカードを翳して術を発動。光のゲートが開き、種子の弾幕が放たれた。
 対して畑がアサルトライフルから術式性の炎弾を乱射。
 互いの弾幕が交わされ、ピクシーはあわあわ言いながら澄香の翼に隠れた。
「足止めをくっているようだな。援護する」
 仁が木馬から上体を固定。機関銃を構えると、畑へ狙いをつける。
 と同時に割り込んでくるエリク。
 眼鏡をぎらりと光らせると、アサルトライフルから術式性電撃弾を乱射。弾幕を張ってくる。
「いけません――!」
 澄香は急いで別のカードを翳して回復空間を展開。澄香や仁をミストが覆っていく。


 第二覚醒隊の戦術でひとつ述べていないことがあった。
 バラバラに動いて相手を牽制する作戦をとっているが、全員の損傷を平均化するためにかたびたびメンバーを入れ替えて牽制していた。
 現在誡女についてるのはウルトだ。木馬を走らせる誡女の真後ろにぴったりとついて、進路を絞るような牽制射撃を繰り返してくる。
 このまま好きにさせるわけには行かない。誡女は一か八か、特殊義腕にエネルギーを集中。
 回復用のフィールドを最大展開しながら木馬をわざと停止させた。
 弾幕をもろに浴びることになるが、回復で軽減できる。その間にウルトをやり過ごしたのだ。
 ここぞとばかりに木馬をウルトのバイクに叩き付けていく仁。
 バランスを崩したのはむしろ仁の方だったが、進行方向を大きく絞ることが出来る。
 仁は落馬しつつも機関銃を乱射。
 ウルトの進行方向を完全に限定していく。
「行ったぞ」
 仁が限定させた進行方向とはつまり、海側である。
「いくよぉー! 落ちちゃえ!」
 ホッケースティックを大きく振り込み、衝撃の波を起こす奈南。
 衝撃はウルトにぶつかり、衝撃で撥ねられたバイクが柵に激突。
 乗っていたウルトはそのまま海へと転落した。
 そこへ、衝撃をかいくぐった畑と前田がしつこい射撃を加えながら奈南へと突撃。
 前田が車体ごとぶつかっていき、奈南はゴーレムから放り出された。正面衝突の衝撃である。前田も例外なくバイクから放り出され、二人まとめて地面をごろごろと転がっていく。
 そんな二人の横を通り抜けていく澄香と久米。
 澄香は馬を一度停止させると、海側へ向けて走り出す合図を出した。
「チキンレースを仕掛けるつもりですね」
「にわとりさんで競争するの?」
 うつぶせで顔を上げる奈南に、前田が眼鏡をあげて説明し始めた。
「直訳すると『臆病者競争』です。バイク乗りが海に向かって全力で走ってブレーキをかけて、どこまでギリギリで止められるかを勝負するというものです」
「でも、澄香ちゃん翼があるよね」
「ええ。見るからに罠ですね。前回『やられて』いる久米さんがそれを見落とすはずがないです。けど……」
 久米はギラリと笑うと、澄香と同じく海へバイクを向け、エンジンをふかして見せた。
 それに気づいたピクシーがコインを掴み、回転させながら空へ投げる。
 放物線を描き、地面をコインが跳ねたその瞬間。澄香と久米は同時に海へと走り始めた。
 全速力。
 澄香は一切ブレーキをかけない。当然だ。彼女には翼がある。
 木馬を掴んで飛び上がる澄香。
 一方で久米はバイクを捨てて横っ飛びに離脱。
 銃を澄香へ向けて棘散舞を乱射した。
 こうなってしまうと木馬を抱えている澄香が圧倒的に不利である。
 澄香は木馬もろとも海へと落下した。
「奇策に頼りすぎだぜ! つっても、海に落ちれば戦闘不能ってわけでもねんだ。お互いシロートじゃねえしな! おっとやべえ!」
 すぐそばをラーラの木馬が猛スピードでかすめていった。
 飛び退いてかわす久米。反対側から更に攻め込むミュエル。
 が、久米は振り向きざまに棘散舞を射撃。ミュエルの額に直撃する。
「ミュエルさん……!」
 ラーラはターンをかけながらも火焔連弾を発動。久米に弾幕を加えていく。
 炎に包まれる久米。
 馬から転げ落ちるミュエル――が、ぱっちりと目を開いた。
 グーにした両手を突き出し、手を開く。
 手の中から放られた胡桃が久米の眼前で炸裂。
 大きくのけぞり、久米はひっくり返った。
「偶然……じゃねえ、確信した目だった」
 鼻をさすって起き上がる久米。
 ミュエルは地面にぶつけた頭をさすってむくりと身体を起こした。
「なるほど」
 バイクを止めたエリクが久米と見比べて呟いた。
「彼女の自然治癒力が、通常の倍ほどあります。清廉珀香の補助を受けていますから、恐らくは……」
「戦術負けしていたってことか。しんどいねえ、こいつは」
 尻をはたいて立ち、久米はミュエルに手差し出した。
 迷いながらも手を掴み、立ち上がるミュエル。
 木馬ゴーレム(地味に水に浮く)を抱えて海から上がってきた澄香も、どうやら戦闘が終了したらしいことを状況から察した。髪の毛の中からぽこんと顔をだすピクシー。
「なにこれ、勝ったの? 負けたの? 『覚えてろー!』って言わないの?」
「しっ、大事な所なんですから」
 ピクシーの口を指で塞ぐ澄香。
 仁や誡女たちが見守る中で、久米は眼鏡を着用し、すっと落ち着いた表情になった。
 そして懐から細長いプラスチック製の名刺カードを取り出し、ミュエルに差し出す。
「今度は我々のホームグラウンドで戦いましょう。オフィス街を想定した訓練場です。我々の技術の限りを尽くしてお相手しましょう」
 ミュエルはそれを受け取り、ラーラや奈南たちの顔を見た。
 そして暫く頷きあってから……。
「はい」
 とだけ、応えた。

 ――拠点『敦賀中継基地』の制圧に成功しました!
 ――新拠点『技術訓練場』を発見しました!

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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