ピーチボーイ伝説
ピーチボーイ伝説


●ピーチボーイ伝説
「秋が近づいてきましたね。紅葉はまだまだ先の話ですが、少し足を伸ばして岡山まで出かけてみませんか?」
 五燐大学が擁する考古学研究所の一角で久方 真由美(nCL2000003)と並んでビラを配る男がいた。
 男が覚者であることは腰のあたりの翼で容易に判別がつくのだが、ファイヴの関係者にしてはこれまで施設内で姿を見かけたことがなかった。
「もしよかったら少し話をきいてください」
 貴方は差し出されたビラに目を落とす。
 ――と、それはイベントの企画書だった。
 『ピーチボーイ伝説』というタイトルの下に、家来を連れた桃太郎の絵とイベント会場の簡単な地図が載っている。
 貴方は説明文を読み飛ばして、ビラの一番下へ目を進めていった。


  企画、薫風社
  担当、保坂 環(ほさか たまき)


 貴方の視線が止まった先をみて、男が笑いかけてきた。
「僕は薫風社所属のトラベルライター兼カメラマン、保坂 環(nCL2000076)と申します。薫風社は旅行冊子やグルメ本を中心に企画発行している編集プロダクションで……」
 はあ、と気のぬけた相槌をする貴方。
 真由美が横からヒョッコリ割り込んできた。
「『Teku teku』っていう本、知らない? ちょっとおしゃれな装丁で、可愛いイラストや綺麗な写真がたくさん載っているディープな旅行書よ」
 ここは通行の邪魔になるからと、真由美と環はさりげなく貴方を建物の脇へ誘導していく。
 しかし、書籍の編集プロダクションがなぜ旅行の企画を?
「実は……」
 雲が太陽を隠し、ふたりの顔から笑顔を消し去った。

●妖パズル
 場所は岡山市、吉備津神社近辺。
 夜になると犬、雉、サルの胴像が、きびだんごを求めて歩きまわっているという。赤ら顔の酔っ払いが数人、三匹に「だんごをよこせ」と絡まれたらしい。
 目撃者は少なく、その目撃者もそろって事件当日は泥酔しており、いささか信ぴょう性に欠ける話ではあった。
「岡山に地酒の取材に行っていてね。その話を地元の酒蔵で聞いたんだ。いまはたんなる噂話にすぎないけど、誰かがケガをしてからでは遅いから。僕が妖退治の話を預かった」
 環は三体の像を見て回り、討伐の必要性はないと判断した。
 一連の事件はどうやら古妖、豆狸(まめたぬき)のイタズラらしく、『覚者』がきびだんごを供えてやれば満足して帰りそうだったからだ。
「ただちょっとだけ面倒でね。桃太郎が家来にした順番に銅像を回ってきびだんごを供えないとダメなんだ。話が違うって怒ってしまう」
 おまけに、豆狸たちの妖気をうけた周辺の土地まで変化しているらしい。
 覚者にしか見えないマス目が地面に刻まれ、パネル化しているのだという。
 本当に面倒くさい話だ。
 要は酒のつまみを集めるついでに遊んで欲しいのだろう。
「覚者が歩くことで土地に染み込んだ豆狸たちの妖気が少しずつ弱まる。だからできるだけ多くの覚者が銅像にきびだんごを供えつつ、すべてのマスを通らないといけない」
 簡単じゃないか、という貴方に、真由美が首を横へ振った。
「マスは二度通っちゃいけないの。二度目に入ると、どこからともなく筋肉ムキムキの鬼が現れて担ぎ上げられ、スタート地点へ連れ戻されてしまうそうよ」
 なぜそのことが分かったのかというと――
「僕がやれちゃったからさ」
 環が苦笑いする。
「おかげで一度もきびだんごを銅像に備えることができなかった」
 扱いは手荒だが、鬼(たぶん豆狸)から特に危害を加えることはなかったという。
「もう、みんなの力を借りるしかないって思ってね。急遽、京都に戻ってこの企画をファイヴに持ち込んだというわけさ」
 そう言うことなら、と貴方はビラに書かれた説明文を読みだした。


■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:和泉 あきね
■成功条件
1.豆狸のパズルにチャレンジ、日没までに土地の浄化を終わらせる
2.なし
3.なし
●ルール
覚者たちは各自、きびだんごを3つもって1Aからスタート。
同じマスを2度通ることなく豆狸が化ける銅像にだんごを『桃太郎が家来にした順』に供えて回り、最後に6Fにある吉備津神社にたどり着かなくてはならない。
ゴールまでに何度曲がったかを、プレイングに記入。
道筋は何通りかあるが、最短でゴールした人(チーム)にはいいことがあるかも。
鬼にスタート地点へ連れ戻されても、日没まで何度でもチャレンジ可。
なお、久方 真由美はイベント不参加なので、当日探さないように。

●場所と時間
・昼~夕方にかけて。
・豆狸のパズルフィールド
 縦6マス(数字)、横6マス(アルファベット)で区切られている。
 ・1A……スタート。駅前ロータリー。
 ・1B~1F……花咲く並木道
 ・2A~2F……町屋通り。喫茶店や土産物屋が軒を連ねる。
 ・3A~3C……町屋通り。喫茶店や土産物屋が軒を連ねる。
 ・3D……犬の像(このマスには入れません)
 ・3E~3F……公園。鬼(たぶん豆狸)たちが木蔭で酒盛りしているかも。
 ・4A……ベストジーニスト・コンテスト会場。飛び入り参加OK。
 ・4B……サルの像(このマスには入れません)
 ・4C~4F……地酒が試飲できる酒蔵が並ぶ。豆狸が隠れている?
 ・5A~5F……ギャラリーが多く集まる芸術通り。貸衣装と人力車あり。
 ・6A、6B……美味しいうどんが食べられる店とカレーが食べられる店がある。
 ・6C……雉の像(このマスには入れません)
 ・6D~6E……参道
 ・6F……ゴール。吉備津神社

※!パズルフィールドの地形や景観は、実際の地形や景観と異なります!

●その他
日没までに誰か一人でも三体すべての銅像にお供えをして回り、吉備津神社にたどり着ければOKです。
むっきむきの鬼たちにムホホ、ムホホと担がれてスタート地点に戻されても、ペナルティはありませんのでご安心を。日没まで何度もチャレンジできます。
夜になると銅像が動きだすのでパズルが成立しません。そうなったらまた翌日……まあ、環が責任を持ってなんとかするでしょう。たぶん。
土地が浄化されると、三体の銅像に化けた豆狸も鬼(豆狸)たちも満足してどこかへ帰っていきます。
時間はたっぷりある(はず)ので、途中途中で観光をお楽しみください。

●お土産ありマス
・参加者全員に「桃もる太郎ストラップ」が配布されます。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記願います。グループ参加の場合、参加者全員が【グループ名】をプレイング冒頭につけてください。記載する事で個別のフルネームとIDを書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。

●書式例
【薫風社】(※!おひとりさまの場合は必要なし!)
・曲がった回数、20回(※!グループの場合は代表者一名が記入でOK!)
・桃太郎の恰好をして2Dのマスで犬に、4Aのマスでサルに、5Cのマスで雉にきびだんごを備え、最後に吉備津神社へ。
・4C~4Fにある酒蔵は全部訪ねて試飲する(※!未成年の飲酒は描写しません!)
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
50LP
参加人数
7/∞
公開日
2015年09月20日

■メイン参加者 7人■

『絶対的超越者』
轟牙龍炎・超越(CL2001161)
『ゆるゆるふああ』
鼎 飛鳥(CL2000093)
『五麟マラソン優勝者』
奥州 一悟(CL2000076)
『未知なる食材への探究者』
佐々山・深雪(CL2000667)

●9月某日
「ええ天気やなぁ」
 気持ちよさげに背伸びするのは桃太郎に扮した光邑 研吾である。お年を召した桃太郎さんであるが、竜の鱗でできた陣羽織が勇ましい。
「よっしゃ、気合入れて行こうぜ」
 犬の仮装――犬耳が生えた凛々しい若侍に扮した奥州 一悟が、研吾特製の荷車を引いて歩きだした。
 荷台にはほぼ球体の子ザルがかぶりつく巨大な桃、もとい、桃に扮した鼎 飛鳥が乗っている。飛鳥がかぶる桃も研吾の手作りだ。
「いちごのそれ、ただの獣付きの人なのよ」
「違う! これは大和が擬人化したらこうなるっていう仮装だ」
 大和というのは一悟の守護使役だ。急に名前を呼ばれたので、目をぱちくりさせている。
「ウフフ。みんなの守護使役もちょっとずつ衣装のデザインに取り入れているのヨ」
 衣裳を作ったのは雉役の光邑 リサだ。エメラルドグリーンの着物に黒と焦げ茶の縞柄の羽織を肩からかけている。頭に雉のオスを模した小さな帽子を乗せ、蔦の絡んだ木の丈を手にしている。
「コロンちゃんだけお猿さんになってもらったケド」
 発泡スチロールの桃にかぶりついているのは飛鳥の守護使役、ころんが扮したサルだった。
 一行はわいわい賑やかにお喋りしつつ、ハギが紅紫色の小さな蝶形花を咲かせる道を東へ歩いて行く。
「あ、ここで終わり。ドンつきや。ここで南に曲がって……」
 リサは研吾の手描きの地図を広げた。
「途中で酒蔵によって、吉備津神社の手前まで行くのネ?」 
「あすかは蔵の中に隠れている豆狸さんを探して遊ぶのよ」
 いじめんなよ、と一悟。
 飛鳥は桃の中に顔を引っ込めて、聞こえないふりをした。
「もも~もも~もももももも、桃☆太郎♪ 桃太郎さんは桃から生まれたモモり~ん♪ なのよ~♪」
「アスカちゃんは歌がお上手ネ」
 こんな歌、あったっけ?
 一悟は首をひねりながら荷車を引く手に力を込めた。

●「鬼」伝説爆誕?
 轟牙龍炎・超越はのちに伝説となる出来事の第一歩目を踏み出した。
 超越が纏う熱いオーラに気圧されて、秋風が渦を巻いて引き返す。手のひらのきびだんごが、危険物に見えてしまうのは気のせいだろうか。や、気のせいなんだけど。
 超越にはプランがあった。古妖のイタズラを止めるのはもとより、岡山観光を命いっぱい楽しみたい。
(まずは犬にお供えなっしー。それからべストジーニスト・コンテストに出場するなっしー)
 なにゆえ語尾が某なしの妖精さん?
 犬の像がプルプル震えてブレていたが細かいことは気にしない。
 その後、超越はコンテストでヒャッハーしまくりで優勝し、金のトロフィーを金棒のごとく携えながらカレーうどんを喰らい、体を激しく振ってうどんを消化しつつ赤ら顔で雉の像と猿の像に団子を供えた。
 供え物の順番が違うが、クレームをつける勇豆狸はいなかった。
 人力車の上でヒャッハーしすぎて同じ道を通った時も、飛び出していく猛豆狸はいなかった。

●うどん&かれー
(きびだんご、これって食べちゃっていいの?)
 岡山の銘菓きびだんごは普通に売られているよ。お土産にいいよ。と鬼に扮した豆狸が木の陰から囁いた。
 古妖の声が聞こえたかは定かではないが、佐々山・深雪はちょっと思案してからきびだんごを口に入れた。ほんのりと甘く、懐かしい味が広がる。
(美味しいけど……もう少し刺激が欲しいな)
 パズルを解く前に、まずは脳に送るエネルギーの補給だ。
「さっきからすっごくボクのおなかを刺激する香りが漂ってきてるからねっ」
「うんうん、ミラノのおなかはくうふくのあき!!」
「いつの間に?!」
 ククル ミラノは驚く深雪を横目に、ビッと指を立てた腕を空に向けた。
「まずはうどんっ」
「いや、カレーでしょう」
 うどん、カレー、うどん、カレー、うどん、カレーうどん……。
 ふたりの頭の上で、豆狸ならぬ豆電球がピカッと光った。
「じゃあ、うどんでこばらをみたして、かれーをたべる! それから――」
「和風だしのうどんに中辛のカレーをかけた絶品カレーうどんをもう一杯!」
「でざーとにきびだんごもあるのでかんぺき!」
 この発言にショックを受けた鬼豆狸が、あんぐりと口を開けてわなないた。ひどい。どんなけ食べる気、太るよあんたたち?!
 結局、深雪とミラノは鬼豆狸たちの存在には気づかず、まっすぐ南下してうどんとカレーを食べに行った。
「ふぅ~~おなかいっぱい! そういえばなにしにきたんだっけ……?」
「あ、パズル……はまかせた! ミラノ頑張って!」
 ミラノはだめ、と言うや深雪の腕を取って店外へ。
 北へ向かって歩き始めたとたんに鬼が登場し、うほほうほほと担がれながらふたりは駅前ロータリーに戻った。

●夕焼け小焼けで
 公園でリサお手製のお弁当を広げ、研吾は酒蔵で購入した地酒を飲んでいた。
 一悟はおにぎりと鳥のから揚げをほおばり、飛鳥はジュースとやはり手作りのポテトチップスをころんと分け合っている。
「こっちへいらっしゃいナ。一緒に楽しみまショウ」
 リサが鬼の豆狸たちを手招きした。
 盛り上がること二時間。
「そろそろ行こか。そや、ついでに犬の像にきびだんごを……みんなもお供えしてや」
 その後、順調に道を進んで猿、雉にだんごを供えて回った。
 一行は途中でお土産を購入する事も忘れなかった。
 ゴールである吉備津神社に着く頃には、荷台で寝息を立てる飛鳥の横いっぱいに戦利品の土産物がたんと積まれていた。
「おーい」
「おーい!」
「お~い♪」
 超越、深雪、ミラノの三人が連れ立って鳥居をくぐって社にやってきた。
 保坂 環が出迎える。
「お疲れさまでした。皆さんのおかげで豆狸たちも満足したようです。はい。参加賞のお土産。ここだけのオリジナルですよ」
 桃もる太郎ストラップを手渡された覚者たちは、最後に揃って参拝。
 これから熾烈を極めていくであろう他組織との戦いを乗り越えて、神秘を解明する力と加護を願った。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『桃もる太郎ストラップ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員



■あとがき■

ご参加ありがとうございました。
ご参加してくださったみなさんに、イベントアイテム「桃もる太郎ストラップ」を配布させていただきます。
宜しくお納めください。
なお、角を曲がる最小回数は16回でした。

またのご参加、お待ちしております。




 
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