<南瓜夜行>鵺の鳴く夜
ハロウィン。
本来は秋の収穫を祝い悪霊を追い出すケルトの祭りだが、巡り巡って今では仮装行列のようになっている。
悪霊に見つからないようにするための仮装なのだが、別に悪霊を倒してしまっても構わないのだろう? とばかりにヒーローヒロインの仮装も多い。
さて、そんな仮装の中に古妖が混じっていることもある。人に似た古妖は、この時期人間の仮装を装って――変な言葉だがそれはともかく――町に交じっている。本番前の練習と言ってしまえば、多少奇異な目で見られるが素通りされるらしい。
問題は、古妖の中には人にいたずらするものもいるわけで……。
仮装した人々の間を縫うように、夜の街を寅柄の黒いロングコートを纏った男が歩いてゆく。
街灯の下を通り抜ける度、コートの裾や袖口からは黒煙が立ち昇っていった。
蛇の如くうねりながら次から次へと街灯に巻きついていく黒煙は、街灯の灯りを包み込む。
途端、バチン! と灯りが消えた。
男が軽やかに街を歩いて行けば行く程、街灯は明かりを失う。
己が歩いて来た通りを振り返り、男は肩を揺らし笑った。
暗き翼で羽ばたいて、男はふわり街灯の上へと降り立つ。
「ああ、人間。貴様達はどれ程強くなっただろう」
笑い声は奇声へと変わり、不気味な鳴き声へと変わってゆく。
ヒョーヒョー!
ヒョーヒョー!
それはトラツグミに似た、けれども大層気味の悪い声。
通りにいる仮装した人々は――大人達はどよめき、子供達は怯え泣いた。
不気味な声が、闇の街に響き渡っていた。
「お願いです。古妖『鵺』の悪戯で怖がる人々の不安を、どうか取り除いてあげて下さい」
久方 真由美(nCL2000003)はそう言って、覚者達を見回す。
「怖い夜を、まるでハロウィンの催しの1つのように出来れば、不安は消えるのではないかと思うんですよ」
その為には仮装は必須です、と真由美が指を振った。
「そしてもう1つ。必ず作って欲しいのが、ジャック・オー・ランタンです」
仮装行列と、手作りのカボチャランタン。
「消えた街灯の下に置いたり、木の枝の上に置いたり。そうしたら不気味な夜はきっと、幻想的で素敵な夜に変わります」
子供達にお菓子を配ったり。
ダンスをしながら歩いたり。
楽器が出来る方は、不気味な鳴き声に負けない演奏をしたり。
ジャック・オー・ランタンだけではなく、他の明りを用意してみたり。
「後は、何があるかしら……」
小首を傾げてから、真由美はふふっと笑った。
「後は、皆さんにお任せします」
目的は、怯える一般人達の不安を取り除く事。
楽しませる事が出来れば、最高じゃありませんか。
「皆さんも楽しめられたら、尚更に」
――きっと、鵺も尻尾を丸めて退散するのじゃないかしら。
真由美はいつもの微笑みを浮かべ、覚者達を見送った。
本来は秋の収穫を祝い悪霊を追い出すケルトの祭りだが、巡り巡って今では仮装行列のようになっている。
悪霊に見つからないようにするための仮装なのだが、別に悪霊を倒してしまっても構わないのだろう? とばかりにヒーローヒロインの仮装も多い。
さて、そんな仮装の中に古妖が混じっていることもある。人に似た古妖は、この時期人間の仮装を装って――変な言葉だがそれはともかく――町に交じっている。本番前の練習と言ってしまえば、多少奇異な目で見られるが素通りされるらしい。
問題は、古妖の中には人にいたずらするものもいるわけで……。
仮装した人々の間を縫うように、夜の街を寅柄の黒いロングコートを纏った男が歩いてゆく。
街灯の下を通り抜ける度、コートの裾や袖口からは黒煙が立ち昇っていった。
蛇の如くうねりながら次から次へと街灯に巻きついていく黒煙は、街灯の灯りを包み込む。
途端、バチン! と灯りが消えた。
男が軽やかに街を歩いて行けば行く程、街灯は明かりを失う。
己が歩いて来た通りを振り返り、男は肩を揺らし笑った。
暗き翼で羽ばたいて、男はふわり街灯の上へと降り立つ。
「ああ、人間。貴様達はどれ程強くなっただろう」
笑い声は奇声へと変わり、不気味な鳴き声へと変わってゆく。
ヒョーヒョー!
ヒョーヒョー!
それはトラツグミに似た、けれども大層気味の悪い声。
通りにいる仮装した人々は――大人達はどよめき、子供達は怯え泣いた。
不気味な声が、闇の街に響き渡っていた。
「お願いです。古妖『鵺』の悪戯で怖がる人々の不安を、どうか取り除いてあげて下さい」
久方 真由美(nCL2000003)はそう言って、覚者達を見回す。
「怖い夜を、まるでハロウィンの催しの1つのように出来れば、不安は消えるのではないかと思うんですよ」
その為には仮装は必須です、と真由美が指を振った。
「そしてもう1つ。必ず作って欲しいのが、ジャック・オー・ランタンです」
仮装行列と、手作りのカボチャランタン。
「消えた街灯の下に置いたり、木の枝の上に置いたり。そうしたら不気味な夜はきっと、幻想的で素敵な夜に変わります」
子供達にお菓子を配ったり。
ダンスをしながら歩いたり。
楽器が出来る方は、不気味な鳴き声に負けない演奏をしたり。
ジャック・オー・ランタンだけではなく、他の明りを用意してみたり。
「後は、何があるかしら……」
小首を傾げてから、真由美はふふっと笑った。
「後は、皆さんにお任せします」
目的は、怯える一般人達の不安を取り除く事。
楽しませる事が出来れば、最高じゃありませんか。
「皆さんも楽しめられたら、尚更に」
――きっと、鵺も尻尾を丸めて退散するのじゃないかしら。
真由美はいつもの微笑みを浮かべ、覚者達を見送った。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.仮装行列をする
2.手作りのジャック・オー・ランタンで街に明りを灯す
3.街の人達を楽しませる
2.手作りのジャック・オー・ランタンで街に明りを灯す
3.街の人達を楽しませる
仮装した事はありません。
ので、仮装の楽しみは、皆様とNPC達に委ねます。
●場所と目的
とある街の大通り。
左右の街灯が消えて、真っ暗になっています。
怯える人々を楽しませる為、そして自分達の為、全力で楽しんで下さい。
●ジャック・オー・ランタン
それぞれ手作りした物を持ち込んで下さい。
表情など、どんな物を作ったのか、プレイングにお書き下さい。
●所持品
今回は、自身の所持しているアイテム以外でも、持ち込んで頂けます。
街の人々を楽しませられるような物を、ご持参下さい。
(但し、あまりに大き過ぎる物、大量過ぎる物、は不可です。ご自身が持てる程度の物でお願いします)
●仮装
それぞれ仮装してご参加下さい。
●鵺(古妖)
人の姿に化け、街灯の上で闇に紛れ、人々が怯える様を見ています。
街の人々が楽しむ姿を見れば、つまらなそうに去って行きます。
●相沢 悟
魔女の仮装をしています。履き慣れぬドレスの裾を踏んでコケないかと心配中。
ジャック・オー・ランタンは、ギザギザ口で笑っているものを作ってきました。
街の人達に渡すようにと、クッキーを用意しています。
お声かけあれば、喜んでご一緒させて頂きます。
●宮下 刹那
吸血鬼の仮装をしています。療養中の妹の永久があまりに喜んだので困惑中。
口の端から流れる血の痕は永久が描いたもの。ガタガタなのは、笑いながら描いたから。
ジャック・オー・ランタンの顔は、△を3つ刳り抜いただけの物。実は少し不器用なのかもしれない。
街の人達に渡すようにと、飴玉を用意しています。
何かございましたら、お声かけ下さいませ。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
以上です。
それでは、皆様とご縁があります事、楽しみにしております。
佳きハロウィンの夜となりますように。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
9/∞
9/∞
公開日
2016年11月13日
2016年11月13日
■メイン参加者 9人■

「結構サマになってるじゃない。まあ、天狗っぽいけど」
小首を傾げるようにして、鈴駆・ありすは黒袈裟に黒羽根姿の弁慶を見遣る。
「ありすの仮装も似合ってるな。すごく可愛い!」
誘ったのは、黒崎 ヤマトの方。
一緒してくれた事が嬉しくて。何度も可愛いと言いたくなるありすの雪女姿に、寒がりなありすが雪女っていうのも面白いな、とヤマトは相好を崩す。
アタシのは良いのよ、とありすは赤いマフラーを口元へと上げた。
(正直寒いし。こんな季節に生足とかホント正気の沙汰じゃないし)
雪の結晶模様。白い着物の短い裾を見下ろして、微かに身震いする。
「それじゃ、やるか!」
ヤマトが携えるは、七種の武器ではないけれど。
多様なメロディを奏でてくれる無敵のギター。
「ええ、早く始めちゃいましょう。じっとしていると寒いわ」
その言葉に肩を揺らして、「手は塞がってるけど、代わりにこうしたら寒くないぞ」と背中同士を触れさせた。
「ありすが一緒に歌ってくれるなら、いつもより張り切ってくな!」
ギターを叩いてリズムを取って。
ワン・ツー・スリー! と始まった演奏に、ありすが大きく息を吸った。
行列の先頭を飾る、即席ハロウィンライブ。
□が3つだけあるのっぺり顔と笑い顔のジャックオーランタンに照らされて、ギターの音色に合わせたありすの歌声が辺りに響いた。
「今宵は楽しいハロウィンパーティーよ。さあ、みんなで盛り上がっていきましょう!」
「暗い気分を吹き飛ばして楽しもうぜ!」
「向こうが暗くするなら、こっちは明るくで対抗よね」
光るシンセサイザーTシャツにマント、魔女帽子に光る靴、と全身をコーディネートした向日葵 御菓子は、光るブレスレットや箒に加工したライトセーバーも用意して、準備万端。
「どうかな? 一応、魔女っ子になってると思うんだけど……」
マントを広げながらの御菓子に、隣に立つ菊坂 結鹿は、姉が用意してくれた衣装に戸惑い顔。
「えっと、これって……」
不思議そうに首を傾げていれば、御菓子が笑った。
「エレキギターTシャツよ。楽器違いで私とお揃い。セッションしましょ♪」
「え? 音が出せるTシャツ!?」
そんなものが――と驚き指を滑らせてみれば、エレキギターの音が鳴る。
「わぁ、ほんとに音が出ます」
でしょでしょ? と御菓子がウィンクひとつ。
「たしかに周りが暗くなったら、音がした方が笑えそうですよね。しかもこれでもかって光って自己主張してますよ」
笑った結鹿に、御菓子もTシャツのシンセサイザーを軽やかに鳴らした。
「視覚だけでなく、聴覚からも笑わしてあげるわ。暗闇なんて気にならないくらいにね」
「これなら暗闇も演出ってごまかせますね。――でも、光と音が目立って、魔女っ子って気づいてもらえるかなぁ……?」
普段からあまり前面に出ない結鹿の手を引き、ステップ踏んで。
「ほ~ら、恥ずかしがらないの」
御菓子の楽しげな様子に後押しされて、みんなが笑って楽しめるよう……そう願い、結鹿も演奏し笑顔で練り歩いた。
(むぅ……暗闇は人の心に不安を増幅させるというからな、なんとかしないといかんな)
田場 義高は、通りの人々を見回す。
――とりあえず体を張って、わらかすとしようか。
己の頭へとワセリンを塗りたくり、スパンコールを散らして懐中電灯を照射すれば――。
ライトを浴びて、輝く頭。
真っ先に喜んだのは、男の子達。
(まぁ……児戯に等しいが、このばかばかしさこそがこういうときには笑えるんだよな)
指差し笑う子供達を止める大人達をも煽るように、声を張った。
「弾幕薄いよ! なにやってんの!」
手持ちの懐中電灯を渡し、もっと照らそうぜと笑う。
「言っとくが、俺は剃ってんだっ!」
ハゲだハゲだ、と顔を輝かせる子供達にちょっぴり泣きたくなりながら、そこは男だ。顔は笑っておいた。
「街の明かりが消えると結構暗いもんなんだね」
タキシードの吸血鬼姿で暗視を使う工藤・奏空は、街に明かりを灯す。
ジャックオーランタンは勿論、アロマキャンドルにも灯りをともして行列しながら置いていった。
ふと、振り返る。
(いつも街の明かりに慣れてしまっている俺達だけど。こうして素朴な灯りに照らされた街ってすごい幻想的だね)
本物の火の、暖かさ。
きっと街の皆も同じように思ってくれる――そう感じていた。
そうして視界に入ったのは、ギザギザ口の南瓜を置く友達の姿。
「あれ? 相沢君……?」
振り返った相沢悟は、「あっ」と奏空を見て笑顔を浮かべる。
「工藤さ――」
駆け寄って来ようとして黒いドレスの裾を踏み、ベチャッ、と地面に突っ伏した。
顔を起こした悟の前に、「大丈夫?」としゃがむ。
「魔女の仮装にしたんだ。ってなんで魔女にしたのさ」
「……お母さんが女の子も欲しかったって言ってたの、思い出して」
もごもごと鼻を押さえる悟に、手を差し出した。
「歩きにくそうだね。……エスコートって奴、する?」
くすくす笑いながら手を引き立ち上がらせれば、「ふっ」と横を通り過ぎる誰かの気配。
見れば、もう1人の吸血鬼の背中があった。
「今、笑ってなかった?」
「笑ってた」
2人でこそりと囁き合って、悟が「刹那さーん」と大声をあげた。
「見て見てー! 僕のカレシー!」
ギュウ、と奏空の腕に両手でしがみつく。
「えぇぇ~! 相沢君!?」
驚いた奏空だが、それ以上に振り返った青年が驚いている。
ギョッとしたようなその顔に、悪戯成功と一緒に笑って。
その後は2人でお菓子を配り歩いた。
ヒョーヒョー!
頭上から聞こえる鳴き声に、シンプルな黒いワンピースに羽飾りのカチューシャで黒鳥に仮装した如月・彩吹が夜空を見上げる。
「……歌の下手な鳥がいるなぁ」
眉間に僅か、皺を寄せて。
それは率直な感想。
怯え泣いている女の子を見つけて、仮装行列の中から抜け出す。
「Trick or Treat! 今から『特別』のハロウィンをしよう。――大丈夫 電気が消えたって怖くないよ」
笑顔で告げて、持参したジャック・オー・ランタンに火を灯した。
暖かなオレンジ色の灯火が内から照らすのは――目も口もギザギザの、ホラー感満載な南瓜の顔。
きゃっ、と小さく、女の子が声を洩らす。
「なんだ。悪戯っ子なのか、君は」
聞こえた声に顔を廻らせば、宮下 刹那が隣に屈んだ。
困ったように、肩を竦める。
「……一応、真剣に作ってみたんだけど」
料理下手な為に切り口が歪になっただけ、と言った彩吹の指は、ランタン作りでつけた傷で包帯と絆創膏だらけになっていた。
「悪戯っ子じゃなく不器用か」
そんな青年の南瓜を見れは、△を3つ刳り抜いただけのもの。
――……私と、大差ないじゃないか。
その感想は、黙っておく事にして。
女の子へと鮮やかな笑顔を向けた。
「暗い中見るロウソクの灯りってわくわくしない? 今からキャンドルナイトだよ」
やっと笑った女の子に、竹灯籠を渡して。
持てるだけ持ってきたその暖かな灯を、怖がっている子供達を中心に渡していった。
「ハッピーハロウィンです! 大丈夫ですよー、怖くないですよー?」
赤ずきんに扮した御白 小唄は、肘から下げたバスケットから、お菓子を取り出し子供達に配っていく。
笑ってくれたら嬉しくて、思わず持参したジャック・オ・ランタンと同じ優しい笑みが零れていた。
「がおー」
突如聞こえた声に振り返れば、狼の仮装をしたクー・ルルーヴが襲い掛かるフリをしている。
おばあさんの寝間着を来て、2本の前足を頭上に上げて。
食べちゃうゾー! とでも聞こえてきそうなその様子に、「逃げて! 赤ずきんちゃん逃げて!」と子供達から声があがった。
ひゃぁ!? と悲鳴をあげて、赤ずきんはすたこら逃げ出す。
「悪戯はダメですー!!」
逃げながらも、小唄はお菓子を配り続けていた。
一通り駆けて気が付けば、街灯の灯りが視界に入る。
皆の努力で、鵺が逃げたらしい様子に振り返った。
「先輩、終わりまし……わぷっ!?」
「がおーっ」
聞こえたのは、狼の鳴き声と。
「では、トリック・オア・トリート?」
耳元で囁く声。
「え、えっと……」
しどろもどろの小唄に、クーは答える隙など与えてあげない。
ちゅっ、と。
腕の中に捕らえたままで、彼のおでこに口づけた。
気恥ずかしさに照れたクーの前には、小唄の驚く顔がある。
「悪戯成功、ですね」
初めて見るクーのはにかんだ笑顔からは、目を逸らせられなくて。
「もう1回しましょうか?」
少しの勇気と共に問いかけられれば、可愛い狐の耳が熱を持った。
ハロウィンを、言い訳に。
そっとおでこに、もう1度――。
小首を傾げるようにして、鈴駆・ありすは黒袈裟に黒羽根姿の弁慶を見遣る。
「ありすの仮装も似合ってるな。すごく可愛い!」
誘ったのは、黒崎 ヤマトの方。
一緒してくれた事が嬉しくて。何度も可愛いと言いたくなるありすの雪女姿に、寒がりなありすが雪女っていうのも面白いな、とヤマトは相好を崩す。
アタシのは良いのよ、とありすは赤いマフラーを口元へと上げた。
(正直寒いし。こんな季節に生足とかホント正気の沙汰じゃないし)
雪の結晶模様。白い着物の短い裾を見下ろして、微かに身震いする。
「それじゃ、やるか!」
ヤマトが携えるは、七種の武器ではないけれど。
多様なメロディを奏でてくれる無敵のギター。
「ええ、早く始めちゃいましょう。じっとしていると寒いわ」
その言葉に肩を揺らして、「手は塞がってるけど、代わりにこうしたら寒くないぞ」と背中同士を触れさせた。
「ありすが一緒に歌ってくれるなら、いつもより張り切ってくな!」
ギターを叩いてリズムを取って。
ワン・ツー・スリー! と始まった演奏に、ありすが大きく息を吸った。
行列の先頭を飾る、即席ハロウィンライブ。
□が3つだけあるのっぺり顔と笑い顔のジャックオーランタンに照らされて、ギターの音色に合わせたありすの歌声が辺りに響いた。
「今宵は楽しいハロウィンパーティーよ。さあ、みんなで盛り上がっていきましょう!」
「暗い気分を吹き飛ばして楽しもうぜ!」
「向こうが暗くするなら、こっちは明るくで対抗よね」
光るシンセサイザーTシャツにマント、魔女帽子に光る靴、と全身をコーディネートした向日葵 御菓子は、光るブレスレットや箒に加工したライトセーバーも用意して、準備万端。
「どうかな? 一応、魔女っ子になってると思うんだけど……」
マントを広げながらの御菓子に、隣に立つ菊坂 結鹿は、姉が用意してくれた衣装に戸惑い顔。
「えっと、これって……」
不思議そうに首を傾げていれば、御菓子が笑った。
「エレキギターTシャツよ。楽器違いで私とお揃い。セッションしましょ♪」
「え? 音が出せるTシャツ!?」
そんなものが――と驚き指を滑らせてみれば、エレキギターの音が鳴る。
「わぁ、ほんとに音が出ます」
でしょでしょ? と御菓子がウィンクひとつ。
「たしかに周りが暗くなったら、音がした方が笑えそうですよね。しかもこれでもかって光って自己主張してますよ」
笑った結鹿に、御菓子もTシャツのシンセサイザーを軽やかに鳴らした。
「視覚だけでなく、聴覚からも笑わしてあげるわ。暗闇なんて気にならないくらいにね」
「これなら暗闇も演出ってごまかせますね。――でも、光と音が目立って、魔女っ子って気づいてもらえるかなぁ……?」
普段からあまり前面に出ない結鹿の手を引き、ステップ踏んで。
「ほ~ら、恥ずかしがらないの」
御菓子の楽しげな様子に後押しされて、みんなが笑って楽しめるよう……そう願い、結鹿も演奏し笑顔で練り歩いた。
(むぅ……暗闇は人の心に不安を増幅させるというからな、なんとかしないといかんな)
田場 義高は、通りの人々を見回す。
――とりあえず体を張って、わらかすとしようか。
己の頭へとワセリンを塗りたくり、スパンコールを散らして懐中電灯を照射すれば――。
ライトを浴びて、輝く頭。
真っ先に喜んだのは、男の子達。
(まぁ……児戯に等しいが、このばかばかしさこそがこういうときには笑えるんだよな)
指差し笑う子供達を止める大人達をも煽るように、声を張った。
「弾幕薄いよ! なにやってんの!」
手持ちの懐中電灯を渡し、もっと照らそうぜと笑う。
「言っとくが、俺は剃ってんだっ!」
ハゲだハゲだ、と顔を輝かせる子供達にちょっぴり泣きたくなりながら、そこは男だ。顔は笑っておいた。
「街の明かりが消えると結構暗いもんなんだね」
タキシードの吸血鬼姿で暗視を使う工藤・奏空は、街に明かりを灯す。
ジャックオーランタンは勿論、アロマキャンドルにも灯りをともして行列しながら置いていった。
ふと、振り返る。
(いつも街の明かりに慣れてしまっている俺達だけど。こうして素朴な灯りに照らされた街ってすごい幻想的だね)
本物の火の、暖かさ。
きっと街の皆も同じように思ってくれる――そう感じていた。
そうして視界に入ったのは、ギザギザ口の南瓜を置く友達の姿。
「あれ? 相沢君……?」
振り返った相沢悟は、「あっ」と奏空を見て笑顔を浮かべる。
「工藤さ――」
駆け寄って来ようとして黒いドレスの裾を踏み、ベチャッ、と地面に突っ伏した。
顔を起こした悟の前に、「大丈夫?」としゃがむ。
「魔女の仮装にしたんだ。ってなんで魔女にしたのさ」
「……お母さんが女の子も欲しかったって言ってたの、思い出して」
もごもごと鼻を押さえる悟に、手を差し出した。
「歩きにくそうだね。……エスコートって奴、する?」
くすくす笑いながら手を引き立ち上がらせれば、「ふっ」と横を通り過ぎる誰かの気配。
見れば、もう1人の吸血鬼の背中があった。
「今、笑ってなかった?」
「笑ってた」
2人でこそりと囁き合って、悟が「刹那さーん」と大声をあげた。
「見て見てー! 僕のカレシー!」
ギュウ、と奏空の腕に両手でしがみつく。
「えぇぇ~! 相沢君!?」
驚いた奏空だが、それ以上に振り返った青年が驚いている。
ギョッとしたようなその顔に、悪戯成功と一緒に笑って。
その後は2人でお菓子を配り歩いた。
ヒョーヒョー!
頭上から聞こえる鳴き声に、シンプルな黒いワンピースに羽飾りのカチューシャで黒鳥に仮装した如月・彩吹が夜空を見上げる。
「……歌の下手な鳥がいるなぁ」
眉間に僅か、皺を寄せて。
それは率直な感想。
怯え泣いている女の子を見つけて、仮装行列の中から抜け出す。
「Trick or Treat! 今から『特別』のハロウィンをしよう。――大丈夫 電気が消えたって怖くないよ」
笑顔で告げて、持参したジャック・オー・ランタンに火を灯した。
暖かなオレンジ色の灯火が内から照らすのは――目も口もギザギザの、ホラー感満載な南瓜の顔。
きゃっ、と小さく、女の子が声を洩らす。
「なんだ。悪戯っ子なのか、君は」
聞こえた声に顔を廻らせば、宮下 刹那が隣に屈んだ。
困ったように、肩を竦める。
「……一応、真剣に作ってみたんだけど」
料理下手な為に切り口が歪になっただけ、と言った彩吹の指は、ランタン作りでつけた傷で包帯と絆創膏だらけになっていた。
「悪戯っ子じゃなく不器用か」
そんな青年の南瓜を見れは、△を3つ刳り抜いただけのもの。
――……私と、大差ないじゃないか。
その感想は、黙っておく事にして。
女の子へと鮮やかな笑顔を向けた。
「暗い中見るロウソクの灯りってわくわくしない? 今からキャンドルナイトだよ」
やっと笑った女の子に、竹灯籠を渡して。
持てるだけ持ってきたその暖かな灯を、怖がっている子供達を中心に渡していった。
「ハッピーハロウィンです! 大丈夫ですよー、怖くないですよー?」
赤ずきんに扮した御白 小唄は、肘から下げたバスケットから、お菓子を取り出し子供達に配っていく。
笑ってくれたら嬉しくて、思わず持参したジャック・オ・ランタンと同じ優しい笑みが零れていた。
「がおー」
突如聞こえた声に振り返れば、狼の仮装をしたクー・ルルーヴが襲い掛かるフリをしている。
おばあさんの寝間着を来て、2本の前足を頭上に上げて。
食べちゃうゾー! とでも聞こえてきそうなその様子に、「逃げて! 赤ずきんちゃん逃げて!」と子供達から声があがった。
ひゃぁ!? と悲鳴をあげて、赤ずきんはすたこら逃げ出す。
「悪戯はダメですー!!」
逃げながらも、小唄はお菓子を配り続けていた。
一通り駆けて気が付けば、街灯の灯りが視界に入る。
皆の努力で、鵺が逃げたらしい様子に振り返った。
「先輩、終わりまし……わぷっ!?」
「がおーっ」
聞こえたのは、狼の鳴き声と。
「では、トリック・オア・トリート?」
耳元で囁く声。
「え、えっと……」
しどろもどろの小唄に、クーは答える隙など与えてあげない。
ちゅっ、と。
腕の中に捕らえたままで、彼のおでこに口づけた。
気恥ずかしさに照れたクーの前には、小唄の驚く顔がある。
「悪戯成功、ですね」
初めて見るクーのはにかんだ笑顔からは、目を逸らせられなくて。
「もう1回しましょうか?」
少しの勇気と共に問いかけられれば、可愛い狐の耳が熱を持った。
ハロウィンを、言い訳に。
そっとおでこに、もう1度――。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『淡雪の歌姫』
取得者:鈴駆・ありす(CL2001269)
『可憐な優志』
取得者:御白 小唄(CL2001173)
『弦操りの強者』
取得者:黒崎 ヤマト(CL2001083)
『傷だらけの天士』
取得者:如月・彩吹(CL2001525)
『蘭麝の紳士』
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
取得者:鈴駆・ありす(CL2001269)
『可憐な優志』
取得者:御白 小唄(CL2001173)
『弦操りの強者』
取得者:黒崎 ヤマト(CL2001083)
『傷だらけの天士』
取得者:如月・彩吹(CL2001525)
『蘭麝の紳士』
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
特殊成果
『ハロウィンチョコ詰め合わせ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

■あとがき■
ご参加有難うございました。
楽しい夜となった事に、街の人達からのお礼が添えられております。
そして真由美がOPで「必ず作って欲しい」と伝えておりましたジャック・オー・ランタンをご用意下さった方には、街の人達からの称号も発行させて頂きました。
少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
楽しい夜となった事に、街の人達からのお礼が添えられております。
そして真由美がOPで「必ず作って欲しい」と伝えておりましたジャック・オー・ランタンをご用意下さった方には、街の人達からの称号も発行させて頂きました。
少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
