初依頼は納涼系?
初依頼は納涼系?


●始まる戦い
 『F.i.V.E.』の会議室。
 そこに集められたのは、『F.i.V.E.』所属の覚者達。彼らはついに、戦いの時が来たことを悟る。
「それでは、ブリーフィングを始めますね」
 メンバー達の前に立って口を開いたのは、久方 真由美(nCL2000003)。「儚の因子」を持つ夢見3兄弟の長女だ。彼女は、妖が動き出したのだと覚者達に告げる。
「これを見ていただけますか? ……あらっ?」
 彼女はモニターにとある映像を映し出そうとするが……出ない。機械音痴な真由美はスタッフの助けを得て、現場となる場所の映像を映し出す。
 奈良県某所。
 とある寺の管理している墓場だ。規模としてはごく普通の墓地で、1周歩くのに10分あれば十分と言ったところか。
「ここで、妖の事件が起こるのですが……。そうですね、皆さん、目を閉じていただいてもよろしいですか?」
 それまで、真由美に呆れていた覚者達だったが、真面目な顔で頼む彼女の頼みに、戸惑いながらも瞳を閉じる。
 突然、覚者達は頭の中で流れ始める映像を見て、彼らは表情を一変させた。

 映像が始まったのは、宵の口。
 先程、映像資料として見た墓地の空中に、突如として紫のもやがかった何かが現れた。
 現れた妖の数は4体。もやはゆっくりと人の顔のような形を象る。そいつらはゆらゆらと宙を漂っていたかと思うと、親族や先祖の墓参りに訪れていた檀家の人々を見つけ、一直線に飛んでいく。
 墓場はすぐに阿鼻叫喚の声に包まれた。
 人々は妖に取りつかれ、あるいは呪われ、次々に力尽きていく。
 妖達が満面の笑みを浮かべて、凄惨な状況になった墓場から飛び立つところで映像が終わった。

「……いかがでしょうか」
 ふうと息をつく真由美。覚者達は彼女の力の一端を見て、口をぽかんと開く。
 これが夢見の力。真由美は『送心』の力を使って、自分の見た未来視の映像を覚者達へと送ったのだ。
 真由美は13の時、夢見に目覚めたそうだ。思春期の大切な時期に、彼女はこんな映像を常日頃から見ていたというのか。覚者として目覚めたメンバー達とて苦しい思いをしている者も多いが、これはなかなかに理解しがたいものだとどよめく。
「話、続けていいでしょうか?」
 その真由美の声で、覚者達の声が止む。それを確認し、彼女は話を続ける。
「現れる怨霊は、心霊系の妖と断定されました」
 心霊系、それは半実体化した思念や怨霊のようなものの総称だ。物理攻撃はあまりあてにならない為、特殊攻撃、術式などで攻める必要があるだろう。
 真由美は再び墓地の映像を流そうとするが、やはり流し方が分からず、スタッフの力を借りる。その際、再び覚者達から笑いが起きることはなかった。
「墓場には4体の妖が確認されています。夜中であれば、檀家の人々もいませんから、安心して討伐に当たることはできそうです……が」
 時期が時期だけに。夜の墓場巡りは、さながら肝試しのよう。納涼系バトルとなりそうだ。
「以上です。皆さんのご活躍を期待していますね」
 彼女はそう言って、ブリーフィングを終了したのだった。


■シナリオ詳細
種別:β
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.全ての妖の討伐
2.なし
3.なし
 初めましての方も、どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
 「アラタナル」でもSTを務めさせていただくことになりました。以後、よろしくお願いいたします。
 βシナリオに参戦させていただきます。
 初依頼は納涼系となりました。皆様、覚者の手で討伐を願います。
 以下、補足です。

●敵
 心霊系 ランク1×4体
 怨霊です。地上1~2メートルの間をふわふわと浮いています。
・取りつく……特近単・鈍化(速度マイナス、回避マイナス)の効果あり。
・呪い……特遠複・幸い、妖のランクが低い為にBSはありませんが、威力は高めです。

●状況
 とある寺の脇にある墓場に、妖は現れます。
 真由美の事前説明により、覚者の皆様は夜この墓場を訪れていると想定してください。
 墓場は生前と墓石が立ち並ぶ、ごく普通の墓場です。墓石の数は100程。多少は歩いて探す必要があるでしょう。
 被害が大きくとも失敗にはなりませんが、罰当たりな振る舞いは程々に。

 それでは、アラタナル初シナリオ、楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:0枚
(4モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
0LP[+予約0LP]
参加人数
8/8
公開日
2015年08月16日

■メイン参加者 8人■

『たぶん探偵』
三上・千常(CL2000688)
『アスチルベ』
古賀 一二三(CL2001045)
『相棒捜索中』
瑛月・秋葉(CL2000181)
『ぬばたまの約束』
檜山 樹香(CL2000141)
『FLIP⁂FLAP』
花蔭 ヤヒロ(CL2000316)

●肝試し風味の依頼
 闇の中に並ぶ死者の墓標の数々。
 そこには、何やらおどろおどろしい雰囲気が漂う。霊感があると自称する者なら、背筋に寒気を覚えたかもしれない。
 その墓場を訪れたのは、『F.i.V.E.』の覚者達だ。
「本当真っ暗やし静かやな……敵さん以外の霊とか出てきたりしてー」
「絶対出る、確実に出るわ、この雰囲気! 今すぐ帰りたい!」
 『相棒捜索中』瑛月・秋葉(CL2000181) が何気に呟くと、『アスチルベ』古賀 一二三(CL2001045) は思わず震え、叫んでしまう。乙女チックな彼女、もとい、彼は闇の中に並ぶ墓石に、そして、墓場が出す独特の雰囲気に怯えてしまっている。
「出会ったら気絶しそうよぉ……」
「あ、古賀君、むっちゃ怖がってるー?」
 そんな一二三の様子を、秋葉はにやにやして見ていた。
「任務達成第一やけど、任務なかったら完全に肝試しやなぁ」
 別にこの状況を楽しんでいるわけではないと主張していた秋葉だったが。彼の顔はニヤけっぱなしだ。
「……すまん、少しデマ言った」
「うう……」
 一二三は少しだけ嗚咽を漏らすも、何とか考えを切り替えようと試みる。
「それにしても、1人じゃなくて本当に良かったわぁ~! 仲間がいるだけで心強いわよね!」
 後ろを見れば、同じ依頼に臨む仲間達がいる。
「実戦なんて初めてだ」
 中学生の『FLIP⁂FLAP』花蔭 ヤヒロ(CL2000316) はこの依頼へ臨むに当たり、色々な武器を持つクラスメイトの姿を見て、焦りを感じたヤヒロは修行したのだという。
 色々な人と屋上で話をして、ヤヒロが武器に選んだのはスコップ。そして、せんじょー師匠こと、『たぶん探偵』三上・千常(CL2000688) から棒術を勧められ、頑張って使えるようにしたそうだ。
 その千常が手にするのは錫杖。少林寺拳法錫杖で戦おうと考えている。
 他のメンバー達も、墓場の雰囲気にまるで臆してはいない。
 最年少、鎧姿のオルティアーナ・ダクリロゼ(CL2000726) は毅然とした態度を崩さないし、『サイレントスクリーム』玖瀬 璃音(CL2000519) はこの一帯の地図を広げて平然と対策を練っていた。地図は『F.i.V.E.』スタッフを通して予め入手していたようである。
「初陣なんだし、少しでも有利な条件で戦いたいからね」
「うむ、覚者として初めての仕事、じゃのぅ」
 『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141) も瑠音と一緒になり、墓場の情報を確認しつつ打ち合わせを行う。
「広場のような場所があればよいが、少しでも広い通路や十字路でもよいかの」
 いくつか合流地点を決めておくことで、スムーズに妖へと対処を図りたいメンバー達だ。
「肝試しみたぁなもんじゃのぉ」
 『放浪人』遊馬 虎太郎(CL2000166) に至っては、浴衣姿。別に依頼に合わせたわけではないのだろうが、この場にある意味もっともなじんでいる男かもしれない。
「お墓は、故人やご先祖様に思いを馳せ、祈る場じゃよ。無粋な妖は打ち払わねばなるまいて」
 樹香もそうだが、他のメンバー達は割と落ち着いた態度で依頼に臨んでいるようだ。
「皆、しっかりしとるなぁ……僕もきばらんと」
「身に着けたシュギョーの成果、いっぱいこと発揮するぞー、おー!」
 年長の秋葉は、そんな年下のメンバーを尻目に、足を引っ張るわけにはいかないと意気込むと、ヤヒロが大きな声を上げた。
「それから、夜の墓場なんてこわくないぞー! うおー、こわくないんだからなー!」
「例え出たとしても、こっちは8人も居るわけだから向こうがビビるわよ!?」
 ヤヒロに合わせ、一二三もそう意気込むのだが。
 ガサガサ。
「……ッキャー!!」
 近場起こる物音に、一二三は絶叫してしまう。
「で、でで、でたー!! あぁ……、風で木が揺れただけね……」
 吹き付けた一陣の風が木の葉を揺らす。ヤヒロはそれが分かると、思わずほっと息を漏らすのだった。

●墓場の探索
「さて、早速だが」
 千常が皆へと告げる。8人の覚者を2班に分けて、妖の捜索を行おうと提案する。それに同意したメンバー達は早速班分けを行った。
 こちらはBチーム。オルティアーナ、樹香、ヤヒロ、虎太郎という面々だ。彼らはAチームと分かれ、墓場に足を踏み入れていく。
「一般人に被害が出る前に、確実に妖を倒さねばな」
 盾となるべく、前に出たオルティアーナを先頭にして4人は歩く。
 その際、オルティアーナは守護使役のタマにともしびを使ってもらい、光源を確保していた。
 ヤヒロもカンテラに火を灯す。樹香も夜の墓場だからと、手にする懐中電灯で正面を照らしていたのだが。
「……何故か肝試し感が増えたような気がするのぅ」
「こ、こわくないんだからなー!」
 余計、肝試しの雰囲気が出てしまったが為に、ヤヒロは思わず足を震わせてしまう。
 索敵方法について、さほどよい案は出なかったBチームメンバー達だったが、できる限り周囲への警戒を強める。
 もし、敵が現れたなら、戦うスペースが十分にある合流地点まで敵をおびき寄せたいと樹香は考える。ここは安らかに人々が眠る墓場。それをむやみに荒らしたくはない。
 すぐさま持ち寄った笛を吹くことができるようにと用意し、Bチームは妖の捜索を続けるのである。

 こちらはAチーム。秋葉、璃音、千常、一二三の4人だ。
 彼らはBチームとは別ルートから墓場へと入る。千常はヘッドライト、秋葉、一二三が懐中電灯、璃音はマグライトと、各自で光源を用意し、足元にも気を払いながら妖の姿を探す。
「ピピちゃん、今回も力貸したって」
 さらに、仲間の盾となるべく立つ秋葉が、守護使役のピピちゃんこと、ピピストレッロに依頼すると、一行は静かな墓場において足音を立てることなく移動を行う。
 その上で超直観を使って敵の出現に気を払う秋葉に、一二三は全力ですがりつこうとする。
「皆、その置いて行かないでね? もうちょっとくっついてもイイ?」
 時折悲鳴を上げる一二三。ゆらりと物陰が動くのに過敏に反応するが、それは、仏花が風に揺られていただけだったりする。
 すっかり肝試しモードの一二三の様子にくすくすと笑いながらも、璃音は警戒は怠らない。第六感を研ぎ澄ますことで彼は敵の出現に備える。
 それに加えて、守護使役ばずそーに周辺偵察をお願いしていた。
 敵は突然現れると踏んでいた璃音。ただ、彼のその読みは間違っていなかった。
「…………!」
 瑠音は付近の墓に何か違和感を覚える。妙に寒気を覚えるメンバー達。辺りを見回せば、そばの墓の真上にふわふわと浮かぶ紫色のもや。間違いなくこれが心霊系の妖だ。
「千常さん、合図を!」
「了解、ちと耳塞いでいてくれ」
 千常は仲間達に促すと、甲高い笛の音を墓場に響かせた。他のメンバー達は、音が止むとすぐに迎撃体制へと移る。
 とはいえ、ここは戦うには狭い。通路状で2人が幅をとるのがやっとといったところか。
 ならばと、メンバー達は妖を誘い出しつつ、合流予定地点へと敵の誘導を図った。
 聞こえてくる笛の音。
 それを聞き取ったBチームメンバーは即座に動き出す。
 速やかに移動したメンバー達は仲間が対する妖の姿を確認し、すでに戦いが始まる中へと介入していく。
「さあ、戦闘開始だ」
 覚醒したオルティアーナは左腕を大きな盾に変え、仲間を守る為にそれを妖へと突き出すのである。

●妖を挟み撃ち!
 妖を発見したAチームは下がりながら、うまく敵を合流地点へとおびき寄せる。そこは十字路。墓が密集する墓地の中でもかなり広い場所だ。
「全員怪我なく退治出来たら、万々歳やね」
 秋葉は予定の場所に到着し、くるりと反転して追ってくる敵を待つ。
 メンバー達も戦う状況が整ったと、妖の迎撃に当たる。
(荒事は好きじゃないけど、おれの能力は前衛向きだからね)
 うめき声を上げて近寄ってくる妖。それを目にした璃音は、自身の力を覚醒させながら考える。この力を行使するのに抵抗がないわけではない。ただ、妖と戦って悲劇を止められるのは自分達、覚者だけなのだと。
(覚悟なら済ませてきたよ)
 醒の炎で能力を底上げした瑠音は、ストームスレイヤーに炎の力をのせて怨霊へと立ち向かい、間近の敵へと振るう。
「さあ、始めましょうか! 気合入れすぎて、周り壊さないようにね!」
 一二三はたどり着いてすぐ、その場のメンバーに対して清廉香を使う。漂う香りが、メンバーの治癒力を高めていく。
 さらに彼は錬覇法を使うことで、己の力を高めようとする。戦いに臨む一二三の顔からは怯えの色が消えていた。
 その覚者の頭上から、妖が追ってくる。
「来るぞ!」
 仲間のマークが行き届かない敵へ、千常が張り付く。敵は口を開き、怨嗟の声を上げ始めた。
 とはいえ、敵の能力は高くない。確かに精神に痛みを感じるメンバー達だが、耐えられぬ痛みではない。
 千常は敵の攻撃の隙を突き、錫杖を振るう。ふわりと漂うように浮かぶその心霊系の妖にただ武器を叩き付けただけでは効果が薄い。だから、彼は特殊な力を篭めて錫杖を叩き付けていたのだ。怨念はその一撃に、奇妙な呻き声を上げる。
 同じく覚醒したことで両腕を大きくさせた秋場が、因子の力を使ってその耐久力を高める。
 秋場は周囲を見回す。その十字路は確かに広いが、角に並ぶ墓もある。外からはやや距離があるが、それでも、墓の外へと敵が出ないとも限らない。
 墓への被害を最小限に、かつ、墓の外には出ず敵も出させないと彼は考えていた。
「相手になるで、掛かってこんかい」
 秋葉はふわふわと浮く妖2体へ言い放つと、そいつらは秋葉に取りつこうとその体にのしかかるように攻めたててきた。
 程なく駆けつけるBチーム。
 到着してすぐに樹香は妖の姿を捉え、種を投げ飛ばす。それは急激に成長して怨霊の体を断たんとする。
 ヤヒロが己の力を高めている間の出来事。そいつはもはや妖として、存在を維持できなくなり、あっさりと姿を消していった。
 土を鎧のようにして纏ったオルティアーナがそこで前に出る。
「お前らの呪いも体も、すべて受け止めてやろう」
 オルティアーナは皆の盾となるべく、その身を張って怨霊どもの攻撃を受け止めるのだった。

●予知を現実のものとしない為に
 夜の墓場に響く呻き声。
 怨霊達は、盲目的に近場の人間……覚者へと襲い掛かる。
 取り付こうとする怨霊の体を、オルティアーナは盾で受け止め続けていた。
 オルティアーナが前線を支えてくれる間に、敵の殲滅を図る樹香はまたも種を飛ばす。
 樹香の脳裏に、祖母の戦いが過ぎる。戦いをこの目で見た経験があっても、戦うこと自体は初めて。樹香はルーキーなのだ。
「油断などはせぬ。力があるなどと慢心もせぬ」
 今の全力を持って、樹香は妖へと相対する。
 ヤヒロも戦いとなれば、勇ましく戦う。その手から発生させた小さな雷雲から、怨霊達へと雷が落とされた。
 勇ましく戦っているのは、一二三も同じ。
「これは少し痛いわよ、棘一閃!」
 彼女の投げつけた種は鋭い棘を生やし、怨霊の体を切り裂く。
「ちぃーっとばかしおいたが過ぎるで~。悪い子にはお仕置きや」
 真由美によって見せられたのは、一般人がこの妖達の餌食となる光景。秋葉はそれを思い返しながらも、地面から隆起させた槍で貫く。
 叫び声を上げて消え失せる敵。振り返った秋葉はさわやかに笑った。

 妖達に連携などはない。所詮はランク1程度の力しか持たない敵だ。
 もちろん、それでも一般人からすれば脅威。下手すれば覚者とて深手を負いかねないが、メンバー達の連携は明らかに妖を上回っている。
 オルティアーナは飛び回る敵の様子を常に窺う。極力、お墓に被害がないようにと考え、冷静に判断して動いていたのだ。
 その上で敵の攻撃を受け止め続けていたが、守りを固めたオルティアーナは、易々とは崩れない。隙を見て彼女はステッキを怨霊へと叩きつける。無表情ながらもその顔がやや赤らんでいるのは、ステッキを武器として使うのにやや抵抗があり、恥ずかしがっているからだろう。
 雷を敵に2度放ったヤヒロは、スコップを手にする。
「血迷った悪霊は、スコップで上からたたいて地面にかえしてやる!」
 ヤヒロは大きくスコップを振りかぶった。
「悪霊退散!」
 見事に炸裂したスコップ。敵を叩きつける音は響かなかったが、怨霊が悶えているところを見ると、効果は抜群だったらしい。
 そこにすかさず、千常が地面から鋭く伸びた槍を突き出し、怨霊の体を真下から穿つ。その衝撃に耐えられなかったのか、その妖は霧散するように消えていった。
 残る妖はただひたすら覚者に近づき、取り付こうとしてくる。
(真由美の悲しい予知を覆す。それがおれ達が彼女に出来るせめてもの手向け)
 瑠音は逃げることすらない敵に全力で己の力を叩き込む。
「紅蓮の炎よ、災いの嵐を断て!」
 燃え上がる炎は、怨霊の体を焼き焦がす。
 耳をつんざくような叫びを上げた怨霊は、そのまま消滅してしまったのだった。

●初依頼を終えて
 その場から妖が消え失せたのを確認した一行。
 妖が全て消え失せた墓場は、再び静けさを取り戻していた。
「初任務、お疲れ様」
 瑠音はミッション遂行完了だと、仲間達と勝利のハイタッチを交わす。
「しかしこの妖、何か前世で心残りとか恨みとかあったんかなぁ」
「妖も、なにか思うことがあったのかしらね」
 秋葉と一二三が思う。もはや今となっては分からぬことだが……。
 その後、覚者達は墓場がやや荒れてしまったことを気にし、できる範囲で墓石を元の位置に戻し、整える。オルティアーナも1つずつ墓を綺麗に手入れと掃除を行っていたようだ。
 ある程度、墓場を元の形に戻したメンバー達。秋葉が鎮魂の為にと拝んでいた。
「ごめんなさいね、騒いじゃって……これで許してね?」
 一二三もその墓の前で手を合わせていた。ここに埋葬された人達が静かに眠ることができるようにと、強く強く祈りを捧げる。
「元が誰だったのかは知らんが、ゆっくり眠れや」
 墓場には、無縁仏も合祀されている。千常は清酒で供養を行っていたようだ。
「さ、全部片付いたし、一刻も早く帰りましょう!」
 妖は倒したが、墓場に漂う雰囲気が払拭されたわけではない。幽霊が出るからと怖がる一二三の願いに、メンバー達は墓場を後にする。
 こうして終えた初依頼。境内を出た千常は、ぷかりと煙草の煙を吹かすのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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