<五麟祭>桃太郎! なんやかんやで! 鬼退治!
●昔々あるところに
桃太郎――
備中国、鬼ノ城を根城とする温羅(おんら)を犬飼健、佐々森彦、留玉臣の三名の家来と共に討ち、その祟りを封じるために温羅の首を吉備津神社に封じた吉備津彦命。その伝説をモチーフにした童話である。
ざっくり内容を説明すると、桃から生まれた桃太郎は村で暴虐を尽くす鬼に怒りを感じ、犬、猿、雉を家来にして鬼が島に乗り込み鬼を退治する、というものだ。日本人なら誰もが知っているであろう童話であり、勧善懲悪の見本ともいえよう。
それゆえ創作のモチーフになることも多く、五麟祭のような学園祭の演劇のプログラムには入っていることもある。
――まあそのままやっては面白くないからと、多少のアレンジはされるのだが……。
●TOP画像は待ち受ける鬼という事で。
『桃太郎! なんやかんやで! 鬼退治!』
台本に書かれたのはこの一文だけであった。配役や進攻、セリフなど全くない。
桃太郎が何人いても構わない。イヌサルキジもいてもいなくてもいい。鬼の数は言うまでもない。兎に角『桃太郎が鬼ヶ島に向かって鬼と戦う』以外の流れが全くない。結末以外はオールアドリブ。否、結末すらアドリブともいえる。
舞台裏に集められたのは、五麟祭を楽しんでいたFiVEの覚者達だ。適当に捕まえられた彼らはそんなぶっつけ本番な即興劇を前に困惑するが、すでに開幕のブザーが鳴っていた。客席からの拍手も聞こえる。待ったなしの状況だ。
カオスな桃太郎(?)が、今始まる――
桃太郎――
備中国、鬼ノ城を根城とする温羅(おんら)を犬飼健、佐々森彦、留玉臣の三名の家来と共に討ち、その祟りを封じるために温羅の首を吉備津神社に封じた吉備津彦命。その伝説をモチーフにした童話である。
ざっくり内容を説明すると、桃から生まれた桃太郎は村で暴虐を尽くす鬼に怒りを感じ、犬、猿、雉を家来にして鬼が島に乗り込み鬼を退治する、というものだ。日本人なら誰もが知っているであろう童話であり、勧善懲悪の見本ともいえよう。
それゆえ創作のモチーフになることも多く、五麟祭のような学園祭の演劇のプログラムには入っていることもある。
――まあそのままやっては面白くないからと、多少のアレンジはされるのだが……。
●TOP画像は待ち受ける鬼という事で。
『桃太郎! なんやかんやで! 鬼退治!』
台本に書かれたのはこの一文だけであった。配役や進攻、セリフなど全くない。
桃太郎が何人いても構わない。イヌサルキジもいてもいなくてもいい。鬼の数は言うまでもない。兎に角『桃太郎が鬼ヶ島に向かって鬼と戦う』以外の流れが全くない。結末以外はオールアドリブ。否、結末すらアドリブともいえる。
舞台裏に集められたのは、五麟祭を楽しんでいたFiVEの覚者達だ。適当に捕まえられた彼らはそんなぶっつけ本番な即興劇を前に困惑するが、すでに開幕のブザーが鳴っていた。客席からの拍手も聞こえる。待ったなしの状況だ。
カオスな桃太郎(?)が、今始まる――
■シナリオ詳細
■成功条件
1.与えられた役を頑張る。抽象的すぎる? 頑張れ!
2.劇を中断させない。投げっぱなしすぎる? なんとかなる!
3.劇を終了させる。オチはどうするって? 野となれ花となれだ!
2.劇を中断させない。投げっぱなしすぎる? なんとかなる!
3.劇を終了させる。オチはどうするって? 野となれ花となれだ!
五麟祭。今回はカオスにいってみましょう。
●説明ッ!
なんやかんやあって『桃太郎』の舞台に立たされた(強制)貴方。とにかく場を繋いでください。観客は次の展開を心待ちにしています。五麟祭の空気を冷まさない為にも、ここで頑張るのも覚者の使命です(酷い)。
衣装などはたくさんあります。幸運なことに全員桃太郎でも問題ないほどに。スポットや音楽などの演出も十分です。一般的な演劇の演出なら大丈夫でしょう。
演出的なスキルや技能などの使用は可能ですが、器物や人物を傷つける行為は禁止です。
主だった桃太郎の配役をあげておきます。プレイング冒頭、もしくはEXプレイングに配役を記載してください。配役が欠けていても、物語は進みます。ええ、演出家(どくどくST)が何とかして進めます。
下記にある以外の役をやっても問題ありません。いきなり【孫悟空】が出てきて一同が西に向かっても、もうどうにでもなれです。
【桃太郎】
【おじいさん】
【おばあさん】
【鬼】
【犬】
【猿】
【雉】
●NPC
『気炎万丈』榊原・源蔵(nCL2000050)
『安土村の蜘蛛少年』安土・八起(nCL2000134)
皆さん同様強引に連れてこられました。NPCは絡まれなければ基本空気です。
配役は源蔵が【おじいさん】で、八起が【鬼】になります。
●場所情報
五麟学園体育館。かなり大きいです。それこそ全員舞台に出てきても問題ないほどに。
観客席には学園関係者をはじめ、いろいろな人が来ています。貴方の知り合いがいるかもしれません。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
10/∞
10/∞
公開日
2016年10月24日
2016年10月24日
■メイン参加者 10人■
●
『ナレーションは私、七海 灯でお送りします』
幕開け前の【ナレーション】である。拍手の合間に灯は台本を見直し……あまりの白さに頭を抱えた。本当に何も書いてない。こうなればワーズ・ワースで誤魔化そう。上手く話を納得させるのも『説得』だ。ギャグシナリオだから許される拡大解釈である。
『昔々あるところにおじいさんとおばあさんが――』
「セクハラ撲滅!」
「うぎゃー!」
開幕直後、【おばあさん】役の秋の刀が振るわれ、おじいさんがばっさり切られた。
『――いましたが、おばあさんが浮気とセクハラを繰り返すおじいさんを切り裂きました。おばあさんはそのまま川に洗濯に――』
「――ち、ジジイが死んで稼ぎが減っちまったね。ちょいと狩りに出かけるか」
そのまま刀を持ったまま外に出る秋。巨大な鶏やトカゲのようなものを狩りながら、大きな川にやってくる。
『おばあさんが川を見ると、川から大きな桃が流れてきます。おばあさんはそれを――』
「チェストー!」
『――その場で一刀両断。その中には玉のような赤ん坊が入っていました』
「オレの名前は桃太郎だぜ!」
「ザ! モモタロウ! 私! まさかりかついで鬼が島を目指すわよ! イエァ!」
「オイラは、桃太郎だぜ。百(もも)だけにな!」
翔、数多、百の三人が二つに割れた桃から転がり出る。三人の【桃太郎】はそれぞれポーズを決めて客席にアピールした。
『桃から生まれた子供達は自分から桃太郎を名乗り、すくすくと……元から大きく育っていました。
その頃村には鬼が暴れて、村人たちは大変困っていました。このことに怒りを感じた桃太郎たちは、鬼退治の為に立ち上がります』
「私があと二十歳若ければ一緒に付いてったのにさね……鬼の奴等を皆殺しにしてお宝を取ってくるさね。なあに、悪いのは鬼共、私等が正義さね」
そんなおばあさんのセリフを受けて、桃太郎は旅立った。
●
「黍団子職人の朝は早い」
場面転換後、林檎が滝に打たれていた。ちなみに喋っているのは【黍団子職人】の林檎本人である。
「まずは神聖な黍団子を作るには身を清める為、朝三時には滝行。一時間それを行った後はいなきびを、米を研ぐ様に洗い、一時間くらい水に浸けておく」
喋りながら団子を作っていく林檎。
「塩、水、後、ちょっと相手を魅了しちゃう系オクスリを加え、加熱した後、十分くらいそのまま蒸らします」
「「「おい」」」
ツッコミを入れる三人の桃太郎。はい、舞台に居ました。それを気にすることなく林檎は完成した黍団子を献上するように桃太郎たちに差し出した。
「お納めください、桃太郎。鬼退治頑張ってくれ」
『こうして黍団子を手に入れた桃太郎は、鬼が島に向かいます。
その途中で、犬と出会います』
「黍団子くらえや!」
「もごっ!」
いきなり犬に飛びかかった数多。その手には黍団子。それを軍服を着た【犬】の千陽の口にねじ込んだ。
「はい、きびだんご食べました! 貴方は私の部下です!」
「は? いえあの酒々井嬢はゴリ……いえ、猿役ではないんですか?」
「誠心誠意私に尽くせ! わかったら言葉の前と後ろにアイマム! をつけろ!」
「アイマム!」
『無事に犬を配下に出来た桃太郎達。そして次は雉に出会います』
「ねぇ、本、読んでちゃ……あ、ダメ、りょーかい」
腰に羽が生えた【雉】の紡は、本が読めずふてくされていた。そんな雉に翔が迫る。
「ゲット用のボール……じゃなくてきび団子。狙いを定めて……」
黍団子を握りしめ、投擲の構えを取る翔。片足を大きく振り上げて、振りぬくように右腕を振り下ろす。人差し指と中指でスナップを利かし、投擲の瞬間に団子に回転を加えた。
「いけっ! きびだんご!」
「使い方間違ってない、それ!?」
飛んできた黍団子をキャッチする紡。そのままそれを口に運んだ。モグモグとそれを噛みしめる。
「食べた! それ食べたら一緒に鬼退治するけーやくした事になるんだからな! 雉ゲットだぜ!」
「……えー?」
「よし! けーやく成立したから釣り行こうぜ! 魚釣って焼いて食おうぜ!」
「ボクが釣るの?」
「そう言えば臓物ってどうやってとるんだ? 紡、知ってる?」
「捌いてくれるんじゃないの?」
「まあ何とかなるか! 行くぞー!」
「え? 鬼退治は? ねえいいの?」
そのまま翔と紡は釣竿をもって舞台外に下がっていった。しばしの沈黙ののち、ナレーションが流れる。
『釣りに行った桃太郎と雉。彼らはその後カメと出会い、竜宮城へと行くのでした』
「よっし! 次は猿だな!」
『あ、【猿】役はいなかったのでこれで代用してください』
次は自分の番だと気合を入れる百に、灯が猿のぬいぐるみを投げて渡す。それを受け取った百は、この盛り上がりをどこにもっていこうか、暫し佇んでいた。
●
『そして鬼ヶ島に到着した桃太郎一行。その前に立ちふさがる【鬼】達が』
「ふふふ……桃太郎とその一行、待っていましたよ。我が妖術を食らうがいい!」
【鬼】の一人であるテュールがクールに腕を組み、出迎える。その手には複雑な文様が書かれた陰陽術の札。それを桃太郎たちに見せつけるように揺らす。
「我が名は鬼姫『鈴鹿』! よく来た桃太郎一行! 歓迎しようではないか、盛大にな!」
そして同じく【鬼】の鈴鹿が腰に手を当てて寛大に桃太郎の襲来を受け入れる。だが負けるつもりはないと態度で示し、不敵に笑う。そして不敵に箪笥から縞々の虎パンツを取り出し、
「我が鬼印のパンツ、好みの物を言ってみよ! ここまで来た褒美にそれを授けよう!」
「「「「って何故パンツ!?」」」」
桃太郎ズと犬、そして同じ鬼のテュールがツッコミを入れた。
「鬼のパンツ買いに来たわけじゃないの!? じゃあ何しに来たの!」
「あ、すみません。物語上退治しに来ました」
申し訳なさそうに告げる千陽の言葉に、ショックを受ける鈴鹿。
「ひどい! ただ私達は人間に迫害され食うものにも困って仕方なく始めた追剥して得たパンツを売るだけの生活をしてただけなのに!」
「僕らそんな設定だったの!?」
「こうなったら徹底交戦なの! やっておしまい、テュールお兄さんと八起お兄さん! そして……ヒャッハー! パンツ寄越すの!」
テュールのツッコミをガン無視して号令を出す鈴鹿。テュールと、そして余りのカオスっぷりに口がはさめなかった八起が桃太郎に襲い掛かる。
「オイラに挑もうなんて百年早いぜ! 突きなら得意なんだぜ!」
鬼を相手に突技中心に立ち回る百。
「ねえ、敵同士がこう、戦いを経てなんかいい感じになるとかあるわよね? チカ君、百君、テュール君、八起君!」
突如数多が目をキラキラさせて拳を握る。妄想に浸るような気の抜けた顔なのに、一部の隙を見逃さぬ修羅のような瞳。その空気を察した千陽がハッと気づく。
「っ!? 恋鎖を使う気ですね、マム!」
「皆いい感じになっちゃえ! れん――」
「男の人は逃げてください!」
「さもぎゅむぐむぐー!?」
千陽に口元を押さえられた数多は、そのまま千陽と共に舞台外に退場した。
『……えーと……犬と桃太郎が逃げた?』
「ふははは。見たかこれが陰陽『裏切りの術』!」
我に返ったテュールが場を繋いだ。突っ込み役マジあざっす。
「しまった、剣を落とされた……!」
八起に剣を落とされる百。だが百は臆することなく両手を祈るようなポーズに構えなおす。そのまま両手の人差し指を立てて、八起の背後に回り込んだ。
「オイラにはこれが残ってる! カンチョー!」
「ぐふぅ!」
倒れる八起。百はそのままのポーズで不敵に笑みを決めた。
「ふ、突くのは得意だと言ったろう。こうなったらこれで鬼ヶ島を制圧してやる!」
「やられてたまるか! 徹底抗戦だ!」
「パンツを守るために!」
残った鬼のテュールと鈴鹿が手をあげて抗戦の意を示す。
「やべぇ! 女子にカンチョーはできない!? ……くっ、オイラの負けだ!」
鈴鹿を前に両手を床について、降伏する百。
『……えーと……桃太郎が全滅……?』
困惑する灯。鬼もどうしたものかと顔を見合わせ、
「…………あー……ぐわぁ、禁術を使った反動の心臓発作が!? 死なば諸共だ自爆装置を!」
「え? あー。鬼ヶ島が破壊される!」
沈黙が落ちた部隊をどうにかするためにティールがアドリブをかます。崩れゆく鬼ヶ島。その中で鈴鹿が哄笑し、散り際のセリフを言い放つ。
「くく、今回は負けを認めるの……だが人間が横暴を続ける限り私達みたいな存在はまた現れるの……!」
崩壊する鬼ヶ島。そして――
●
「ああ、愛しい桃太郎」
崩れ落ちた鬼ヶ島に【黍団子職人&鬼娘】の林檎が祈るように立ち尽くす。
「貴方に一目ぼれしたのですが、私は鬼娘。これは愛しい貴方の為に同族を裏切った報いなのですね」
髑髏を手にして、林檎は舞台の上で泣き崩れた。そのまま降りる幕。
『こうして桃太郎と鬼達は共倒れとなり、一人残された鬼娘は愛する桃太郎の骸を抱えて消えていきました。
これが後に五麟市七丁目の会蘭寺に祀られている鬼子母神となるのでした』
無理やりしめるナレーション。声にはもうどうにでもなれ感が籠っていた。
観客の反応はブーイングと余りのカオスを称える拍手で真っ二つに分かれた。
あと劇の責任者は夕方ごろに捕まって、えらく責め立てられたそうな。
めでたしめでたし。
『ナレーションは私、七海 灯でお送りします』
幕開け前の【ナレーション】である。拍手の合間に灯は台本を見直し……あまりの白さに頭を抱えた。本当に何も書いてない。こうなればワーズ・ワースで誤魔化そう。上手く話を納得させるのも『説得』だ。ギャグシナリオだから許される拡大解釈である。
『昔々あるところにおじいさんとおばあさんが――』
「セクハラ撲滅!」
「うぎゃー!」
開幕直後、【おばあさん】役の秋の刀が振るわれ、おじいさんがばっさり切られた。
『――いましたが、おばあさんが浮気とセクハラを繰り返すおじいさんを切り裂きました。おばあさんはそのまま川に洗濯に――』
「――ち、ジジイが死んで稼ぎが減っちまったね。ちょいと狩りに出かけるか」
そのまま刀を持ったまま外に出る秋。巨大な鶏やトカゲのようなものを狩りながら、大きな川にやってくる。
『おばあさんが川を見ると、川から大きな桃が流れてきます。おばあさんはそれを――』
「チェストー!」
『――その場で一刀両断。その中には玉のような赤ん坊が入っていました』
「オレの名前は桃太郎だぜ!」
「ザ! モモタロウ! 私! まさかりかついで鬼が島を目指すわよ! イエァ!」
「オイラは、桃太郎だぜ。百(もも)だけにな!」
翔、数多、百の三人が二つに割れた桃から転がり出る。三人の【桃太郎】はそれぞれポーズを決めて客席にアピールした。
『桃から生まれた子供達は自分から桃太郎を名乗り、すくすくと……元から大きく育っていました。
その頃村には鬼が暴れて、村人たちは大変困っていました。このことに怒りを感じた桃太郎たちは、鬼退治の為に立ち上がります』
「私があと二十歳若ければ一緒に付いてったのにさね……鬼の奴等を皆殺しにしてお宝を取ってくるさね。なあに、悪いのは鬼共、私等が正義さね」
そんなおばあさんのセリフを受けて、桃太郎は旅立った。
●
「黍団子職人の朝は早い」
場面転換後、林檎が滝に打たれていた。ちなみに喋っているのは【黍団子職人】の林檎本人である。
「まずは神聖な黍団子を作るには身を清める為、朝三時には滝行。一時間それを行った後はいなきびを、米を研ぐ様に洗い、一時間くらい水に浸けておく」
喋りながら団子を作っていく林檎。
「塩、水、後、ちょっと相手を魅了しちゃう系オクスリを加え、加熱した後、十分くらいそのまま蒸らします」
「「「おい」」」
ツッコミを入れる三人の桃太郎。はい、舞台に居ました。それを気にすることなく林檎は完成した黍団子を献上するように桃太郎たちに差し出した。
「お納めください、桃太郎。鬼退治頑張ってくれ」
『こうして黍団子を手に入れた桃太郎は、鬼が島に向かいます。
その途中で、犬と出会います』
「黍団子くらえや!」
「もごっ!」
いきなり犬に飛びかかった数多。その手には黍団子。それを軍服を着た【犬】の千陽の口にねじ込んだ。
「はい、きびだんご食べました! 貴方は私の部下です!」
「は? いえあの酒々井嬢はゴリ……いえ、猿役ではないんですか?」
「誠心誠意私に尽くせ! わかったら言葉の前と後ろにアイマム! をつけろ!」
「アイマム!」
『無事に犬を配下に出来た桃太郎達。そして次は雉に出会います』
「ねぇ、本、読んでちゃ……あ、ダメ、りょーかい」
腰に羽が生えた【雉】の紡は、本が読めずふてくされていた。そんな雉に翔が迫る。
「ゲット用のボール……じゃなくてきび団子。狙いを定めて……」
黍団子を握りしめ、投擲の構えを取る翔。片足を大きく振り上げて、振りぬくように右腕を振り下ろす。人差し指と中指でスナップを利かし、投擲の瞬間に団子に回転を加えた。
「いけっ! きびだんご!」
「使い方間違ってない、それ!?」
飛んできた黍団子をキャッチする紡。そのままそれを口に運んだ。モグモグとそれを噛みしめる。
「食べた! それ食べたら一緒に鬼退治するけーやくした事になるんだからな! 雉ゲットだぜ!」
「……えー?」
「よし! けーやく成立したから釣り行こうぜ! 魚釣って焼いて食おうぜ!」
「ボクが釣るの?」
「そう言えば臓物ってどうやってとるんだ? 紡、知ってる?」
「捌いてくれるんじゃないの?」
「まあ何とかなるか! 行くぞー!」
「え? 鬼退治は? ねえいいの?」
そのまま翔と紡は釣竿をもって舞台外に下がっていった。しばしの沈黙ののち、ナレーションが流れる。
『釣りに行った桃太郎と雉。彼らはその後カメと出会い、竜宮城へと行くのでした』
「よっし! 次は猿だな!」
『あ、【猿】役はいなかったのでこれで代用してください』
次は自分の番だと気合を入れる百に、灯が猿のぬいぐるみを投げて渡す。それを受け取った百は、この盛り上がりをどこにもっていこうか、暫し佇んでいた。
●
『そして鬼ヶ島に到着した桃太郎一行。その前に立ちふさがる【鬼】達が』
「ふふふ……桃太郎とその一行、待っていましたよ。我が妖術を食らうがいい!」
【鬼】の一人であるテュールがクールに腕を組み、出迎える。その手には複雑な文様が書かれた陰陽術の札。それを桃太郎たちに見せつけるように揺らす。
「我が名は鬼姫『鈴鹿』! よく来た桃太郎一行! 歓迎しようではないか、盛大にな!」
そして同じく【鬼】の鈴鹿が腰に手を当てて寛大に桃太郎の襲来を受け入れる。だが負けるつもりはないと態度で示し、不敵に笑う。そして不敵に箪笥から縞々の虎パンツを取り出し、
「我が鬼印のパンツ、好みの物を言ってみよ! ここまで来た褒美にそれを授けよう!」
「「「「って何故パンツ!?」」」」
桃太郎ズと犬、そして同じ鬼のテュールがツッコミを入れた。
「鬼のパンツ買いに来たわけじゃないの!? じゃあ何しに来たの!」
「あ、すみません。物語上退治しに来ました」
申し訳なさそうに告げる千陽の言葉に、ショックを受ける鈴鹿。
「ひどい! ただ私達は人間に迫害され食うものにも困って仕方なく始めた追剥して得たパンツを売るだけの生活をしてただけなのに!」
「僕らそんな設定だったの!?」
「こうなったら徹底交戦なの! やっておしまい、テュールお兄さんと八起お兄さん! そして……ヒャッハー! パンツ寄越すの!」
テュールのツッコミをガン無視して号令を出す鈴鹿。テュールと、そして余りのカオスっぷりに口がはさめなかった八起が桃太郎に襲い掛かる。
「オイラに挑もうなんて百年早いぜ! 突きなら得意なんだぜ!」
鬼を相手に突技中心に立ち回る百。
「ねえ、敵同士がこう、戦いを経てなんかいい感じになるとかあるわよね? チカ君、百君、テュール君、八起君!」
突如数多が目をキラキラさせて拳を握る。妄想に浸るような気の抜けた顔なのに、一部の隙を見逃さぬ修羅のような瞳。その空気を察した千陽がハッと気づく。
「っ!? 恋鎖を使う気ですね、マム!」
「皆いい感じになっちゃえ! れん――」
「男の人は逃げてください!」
「さもぎゅむぐむぐー!?」
千陽に口元を押さえられた数多は、そのまま千陽と共に舞台外に退場した。
『……えーと……犬と桃太郎が逃げた?』
「ふははは。見たかこれが陰陽『裏切りの術』!」
我に返ったテュールが場を繋いだ。突っ込み役マジあざっす。
「しまった、剣を落とされた……!」
八起に剣を落とされる百。だが百は臆することなく両手を祈るようなポーズに構えなおす。そのまま両手の人差し指を立てて、八起の背後に回り込んだ。
「オイラにはこれが残ってる! カンチョー!」
「ぐふぅ!」
倒れる八起。百はそのままのポーズで不敵に笑みを決めた。
「ふ、突くのは得意だと言ったろう。こうなったらこれで鬼ヶ島を制圧してやる!」
「やられてたまるか! 徹底抗戦だ!」
「パンツを守るために!」
残った鬼のテュールと鈴鹿が手をあげて抗戦の意を示す。
「やべぇ! 女子にカンチョーはできない!? ……くっ、オイラの負けだ!」
鈴鹿を前に両手を床について、降伏する百。
『……えーと……桃太郎が全滅……?』
困惑する灯。鬼もどうしたものかと顔を見合わせ、
「…………あー……ぐわぁ、禁術を使った反動の心臓発作が!? 死なば諸共だ自爆装置を!」
「え? あー。鬼ヶ島が破壊される!」
沈黙が落ちた部隊をどうにかするためにティールがアドリブをかます。崩れゆく鬼ヶ島。その中で鈴鹿が哄笑し、散り際のセリフを言い放つ。
「くく、今回は負けを認めるの……だが人間が横暴を続ける限り私達みたいな存在はまた現れるの……!」
崩壊する鬼ヶ島。そして――
●
「ああ、愛しい桃太郎」
崩れ落ちた鬼ヶ島に【黍団子職人&鬼娘】の林檎が祈るように立ち尽くす。
「貴方に一目ぼれしたのですが、私は鬼娘。これは愛しい貴方の為に同族を裏切った報いなのですね」
髑髏を手にして、林檎は舞台の上で泣き崩れた。そのまま降りる幕。
『こうして桃太郎と鬼達は共倒れとなり、一人残された鬼娘は愛する桃太郎の骸を抱えて消えていきました。
これが後に五麟市七丁目の会蘭寺に祀られている鬼子母神となるのでした』
無理やりしめるナレーション。声にはもうどうにでもなれ感が籠っていた。
観客の反応はブーイングと余りのカオスを称える拍手で真っ二つに分かれた。
あと劇の責任者は夕方ごろに捕まって、えらく責め立てられたそうな。
めでたしめでたし。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
スタッフロール
桃太郎:成瀬 翔 酒々井 数多 鯨塚 百
雉:麻弓紡
犬:時任・千陽
猿:お人形(398円)
鬼:瀬織津・鈴鹿 天羽・テュール 安土 八起
おじいさん:榊原 源蔵
おばあさん:矢萩・秋
黍団子職人&鬼娘:毒島・林檎
ナレーション:七海 灯
桃太郎:成瀬 翔 酒々井 数多 鯨塚 百
雉:麻弓紡
犬:時任・千陽
猿:お人形(398円)
鬼:瀬織津・鈴鹿 天羽・テュール 安土 八起
おじいさん:榊原 源蔵
おばあさん:矢萩・秋
黍団子職人&鬼娘:毒島・林檎
ナレーション:七海 灯








