白狐泡沫憂語
●狐たちの憂鬱
――其処は伏見、稲荷神を祀る聖なる地。千本鳥居をくぐった先、ひとの立ち入ること無き古びた社には、夢幻のような白狐が静かに佇んでいた。
秋の柔らかな木漏れ日が、絵画のような濃淡を作り出す森――紅葉の季節を迎えた木々の葉は、やがて静かに色づいていくのだろう。鮮やかな古都の風景は、訪れるものの目を楽しませるけれど、その白狐――古妖である狐神の表情は、心なしか浮かない様子だった。
(……なあ、やっぱり悩みごととかがあるんじゃないかな。最近考え込んでいるような素振りを、よくされているし)
と、狐神の邪魔をしないよう、少し離れた場所の茂みでひそひそと相談を行うのは三匹の狐子たち。彼らもまた純白の毛並みを持つ立派な古妖であり、まだまだ子供ではあるけれど、精一杯狐神にお仕えしているのだ。
(もしかしたら……僕たちがまた悪戯しないか、心配してるのかも)
(ぐっ、それは去年の話でしょ! あれからあたし達だって、ちゃんと伏見稲荷の遣いとしての自覚を持って頑張ってるんだし!)
何処かのんびりした様子で尻尾を揺らす狐へ、毛を逆立てて掴みかかる狐は女の子なのだろう。しかし彼女は、ぷんすかと怒りつつも――そう言えば、と呟き狐耳をぺたんと伏せる。
(あたし達を心配させないように、気丈に振る舞われている感じはするわよね。何か、こう……本当は助けが必要なのに、あたし達じゃ力になれない、みたいな)
――しかも力を借りて良いのか、本人も迷っているような感じがして。そうなると、何かあったのですかと自分たちが詰め寄っては、却って気を遣わせるだけだろう。
(オレらじゃ駄目かー……なら、誰かに頼むか?)
何気なくぽつりと零した狐子の一言に、残りのふたりはそれだとばかりに目を輝かせた。伏見稲荷からの依頼を引き受けてくれて、何度か厄介事を解決してくれた人間と言えば――。
「「「F.i.V.E.!!」」」
●狐子からの相談
――F.i.V.E.に持ち込まれた、伏見稲荷からの依頼。それは彼の地を見守る狐神――からのものでは無く、彼女に仕える狐子たちからのものだった。
「実はさ、狐神さまの様子が最近おかしくて……何か悩みごとがあるみたいなんだ」
思い切って相談事を打ち明けた狐子はケンと言い、彼らは浮かない様子の主を心配しているようだ。表面上は何でもない風を装って、自分たちには心配を掛けないようにしているようだが、辛そうなのは明らかで。それなのに力になれないのが、とても歯がゆいのだと言う。
「でも、狐神さまから信頼されてるみんななら、話相手にもなれると思う……」
マイペースに頷く狐子――ハクは続けた。何度も助けてくれたF.i.V.E.の皆ならば、狐神も頼りに出来ると判断し、悩みを打ち明けてくれるのではないかと。しかしいきなり本題に入る訳にもいかないので、さりげなく彼女の話し相手になって、悩みを聞き出して欲しい。
「出来るなら、それを解決できたらいいんだけど……みんなが話を聞いてくれるだけで、狐神さまは安心できると思う……」
「あ、それとね……狐神さまは稲荷から離れられなくて、寂しい思いをされていらっしゃると思うの! だからその……外の話とか、お土産とかを見せてあげると、すごく喜ばれるんじゃないかしら!」
最後につんとお澄ましをして、背伸びをした様子で胸を張る狐子はコン。自分たちも外に出られないから、面白い話を聞きたい――なんて気持ちをひた隠しにしつつ、丁度伏見稲荷も秋祭りの屋台で賑わっているし、そっちで楽しんだ様子を教えてくれるだけで、大分気も紛れるのでないかと彼女は言った。
「何だか、お元気がないせいか、最近お姿まで霞んで見えるような気がして――」
その存在が、ふっと消えてしまわないか心配なのだとコンは項垂れる。しかし皆と話が出来れば、良い気分転換になるだろう。あまり質問攻めにして困らせるとなっては本末転倒だが、狐神自身について尋ねてみるのも良いかもしれない。
「それじゃあ、どうかどうかよろしくお願いするわね! あ……それと」
そうして最後にコンがふと、ある夜に狐神の呟きを聞いたのだと付け足した。その意味はよく分からなかったけれど、彼女は恋い焦がれるような、哀切な響きさえ滲ませてこう言ったと言う。
――自分はいつか、ひとつに戻りたい、と。
――其処は伏見、稲荷神を祀る聖なる地。千本鳥居をくぐった先、ひとの立ち入ること無き古びた社には、夢幻のような白狐が静かに佇んでいた。
秋の柔らかな木漏れ日が、絵画のような濃淡を作り出す森――紅葉の季節を迎えた木々の葉は、やがて静かに色づいていくのだろう。鮮やかな古都の風景は、訪れるものの目を楽しませるけれど、その白狐――古妖である狐神の表情は、心なしか浮かない様子だった。
(……なあ、やっぱり悩みごととかがあるんじゃないかな。最近考え込んでいるような素振りを、よくされているし)
と、狐神の邪魔をしないよう、少し離れた場所の茂みでひそひそと相談を行うのは三匹の狐子たち。彼らもまた純白の毛並みを持つ立派な古妖であり、まだまだ子供ではあるけれど、精一杯狐神にお仕えしているのだ。
(もしかしたら……僕たちがまた悪戯しないか、心配してるのかも)
(ぐっ、それは去年の話でしょ! あれからあたし達だって、ちゃんと伏見稲荷の遣いとしての自覚を持って頑張ってるんだし!)
何処かのんびりした様子で尻尾を揺らす狐へ、毛を逆立てて掴みかかる狐は女の子なのだろう。しかし彼女は、ぷんすかと怒りつつも――そう言えば、と呟き狐耳をぺたんと伏せる。
(あたし達を心配させないように、気丈に振る舞われている感じはするわよね。何か、こう……本当は助けが必要なのに、あたし達じゃ力になれない、みたいな)
――しかも力を借りて良いのか、本人も迷っているような感じがして。そうなると、何かあったのですかと自分たちが詰め寄っては、却って気を遣わせるだけだろう。
(オレらじゃ駄目かー……なら、誰かに頼むか?)
何気なくぽつりと零した狐子の一言に、残りのふたりはそれだとばかりに目を輝かせた。伏見稲荷からの依頼を引き受けてくれて、何度か厄介事を解決してくれた人間と言えば――。
「「「F.i.V.E.!!」」」
●狐子からの相談
――F.i.V.E.に持ち込まれた、伏見稲荷からの依頼。それは彼の地を見守る狐神――からのものでは無く、彼女に仕える狐子たちからのものだった。
「実はさ、狐神さまの様子が最近おかしくて……何か悩みごとがあるみたいなんだ」
思い切って相談事を打ち明けた狐子はケンと言い、彼らは浮かない様子の主を心配しているようだ。表面上は何でもない風を装って、自分たちには心配を掛けないようにしているようだが、辛そうなのは明らかで。それなのに力になれないのが、とても歯がゆいのだと言う。
「でも、狐神さまから信頼されてるみんななら、話相手にもなれると思う……」
マイペースに頷く狐子――ハクは続けた。何度も助けてくれたF.i.V.E.の皆ならば、狐神も頼りに出来ると判断し、悩みを打ち明けてくれるのではないかと。しかしいきなり本題に入る訳にもいかないので、さりげなく彼女の話し相手になって、悩みを聞き出して欲しい。
「出来るなら、それを解決できたらいいんだけど……みんなが話を聞いてくれるだけで、狐神さまは安心できると思う……」
「あ、それとね……狐神さまは稲荷から離れられなくて、寂しい思いをされていらっしゃると思うの! だからその……外の話とか、お土産とかを見せてあげると、すごく喜ばれるんじゃないかしら!」
最後につんとお澄ましをして、背伸びをした様子で胸を張る狐子はコン。自分たちも外に出られないから、面白い話を聞きたい――なんて気持ちをひた隠しにしつつ、丁度伏見稲荷も秋祭りの屋台で賑わっているし、そっちで楽しんだ様子を教えてくれるだけで、大分気も紛れるのでないかと彼女は言った。
「何だか、お元気がないせいか、最近お姿まで霞んで見えるような気がして――」
その存在が、ふっと消えてしまわないか心配なのだとコンは項垂れる。しかし皆と話が出来れば、良い気分転換になるだろう。あまり質問攻めにして困らせるとなっては本末転倒だが、狐神自身について尋ねてみるのも良いかもしれない。
「それじゃあ、どうかどうかよろしくお願いするわね! あ……それと」
そうして最後にコンがふと、ある夜に狐神の呟きを聞いたのだと付け足した。その意味はよく分からなかったけれど、彼女は恋い焦がれるような、哀切な響きさえ滲ませてこう言ったと言う。
――自分はいつか、ひとつに戻りたい、と。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.狐神の相談相手になり、彼女の悩みを聞き出す
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
●こんな事ができます
【1】狐神の話し相手になる
何やら悩みごとがあるらしい狐神さまとお話をします。軽い世間話や外の世界の様子、お土産などを見せても喜ぶと思います。答えられる範囲でなら、簡単な質問にも答えてくれます(が、分からないことは勿論ありますし、質問責めにして本来の目的を忘れないように注意しましょう)。
【2】伏見稲荷の屋台を楽しむ
丁度秋祭りの屋台が、稲荷には出ているようです。そちらを楽しんで下界の様子を伝えるのもお勧めです(リプレイでは屋台を楽しむシーンが描写され、その様子を後で教えてあげたと言う扱いになります)。
食べ物の屋台から雑貨に玩具、金魚すくいや射的などの遊びまで色々あります。
※どちらか一つ選んで番号を記入してください。ちなみに時刻は昼~夕方頃となります。皆さんが祭りや会話を十分楽しめば、狐神は元気を貰って悩みを打ち明けます。
●古妖・狐神(きつねがみ)
齢数百年を超える雌の古妖。見かけは普通の白狐だが、なぜか存在がおぼろげで儚い様子。伏見稲荷から離れる事が出来ません。最近悩み事があるようですが、自分でもどうするべきかと迷っているようです。
●古妖・狐子(きつねご)×3
狐神に仕える、子狐の姿をした古妖。人間の子供の姿にも化けられます。以前F.i.V.E.の覚者にお世話になったことがあり、今回狐神の件で力を貸して貰えたらと思っているようです。
※ケン(やんちゃな男の子)、ハク(マイペースな男の子)、コン(勝気な女の子)の三人組。お誘いがあればお祭りの案内役を買って出ます。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
狐神さまとじっくりお話したい方も、お祭りを楽しみたい方も。狐子たちと遊んでくださる方も、折角ですので伏見稲荷での休日を楽しんでください。それではよろしくお願いします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
29/∞
29/∞
公開日
2016年10月20日
2016年10月20日
■メイン参加者 29人■

●君と巡る屋台
休日の伏見稲荷は参拝客で賑わっていた。丁度秋祭りの時期なのだろう――参道には幾つも屋台が立ち並び、美味しそうな匂いがそこかしこから漂って、道行くひとびとの足を止めている。
(ちょっと冷えてきたけど、手を繋いでると温かいな)
ありすの手を取って祭りへ繰り出したヤマトは、のんびりと屋台巡りを楽しむことにした。口に出すのは照れくさくて、思いは胸に秘めたままだったけれど――彼女の歩幅に合わせて歩いていると、ふと個性的な屋台が目に飛び込んでくる。
「お、焼きだんごも美味しそうだし、たいやきパフェも面白そうだな! 食べてみるか?」
「……じゃあ、両方食べましょ」
食い意地が張っているわけじゃなくて、選びきれないだけと釘を刺しつつ、ありすが先ず手に取ったのはたいやきパフェ。生クリームが溢れているのがシュールだけど、餡子との相性は凄く良い。幸せそうな様子で、続いて焼きだんごも頬張るありすの横顔に、つい見惚れてしまったヤマトだったけれど――。
「……何見てるのよ。どうって、そりゃ美味しいけど」
あまり見られると恥ずかしくて、ありすはついぶっきらぼうを装い甘味を一口。しかしその頬はほんのり緩み、自分の口についたクリームにも気づかずにいるヤマトへ、ありすはそっと囁いた。
「今日はありがと……また出かけましょうね」
――休日を楽しむのも勿論だけど、今回の稲荷訪問には目的がある。何やらふさぎ込んだ様子の狐神へ、外の出来事を伝える任務も兼ねているのだ。
「とりあえず祭で遊んで、それを報告すればいいんだろ。楽勝じゃんっ! ……って、ん?」
そんな訳で早速遊ぼうとした翔だったが、一緒にやって来た紡の姿に瞳をぱちくり――秋らしいコーデで決めた彼のような彼女が、スカートを穿いていることに驚いているようだ。
「翔、こゆ恰好見たことなかったっけ……?」
「おんな?? いや、男だって思ってた訳でもねーんだけど……」
性別は余り考えたことがなかったと、難しい顔で悩む翔だったが――どっちだって紡は紡なのだと納得した。そうして彼女の手を引っ張って、食べる前に遊ぼうと射的の店へと飛び込んでいく。
「お、射的? ボク、上手いよ?」
年上の威厳を見せつけるべく、競争をする紡はつい熱くなったりもして。屋台の戦利品を抱え、その間も繋がれたままの翔の手の大きさに、紡は少しだけ驚いていた。
(子供子供と思ってたけど、そうも言ってられないんだなぁ……)
――紡と遊ぶのはすげー楽しい。そう言って笑う翔と約束を交わすべく、彼女は童歌を口ずさみながら小指を絡ませる。
「また一緒に遊ぼうな! 約束!」
出店で売っていた、狐のお面――ちょっと目に留まったそれが素敵だと微笑み、那由多は八重の肩をちょいちょいと突いた。
「伏見稲荷やし、狐さんになった気持ちで」
「ふふ、なんだか目尻のあたりが優しげで、那由多さんに似合いそうです」
お揃いの面を買ったふたりは、斜めにお面をつけて狐気分になって。指で狐の形を作った那由多がコンコンと鳴けば、八重もコンっと狐を作って鳴き返す。そうして気が付けばふたりは、どちらともなくクスクスと笑っていた。
「那由多さんのコンって可愛らしいですよ?」
「そ、そんな風に言われると、顔から火ぃ出そうです……」
影絵の狐さんもそう言っていると――地面に落ちた狐の影絵を動かす八重は、那由多の影にそっと、触れるような口づけをする。真っ赤になった友人の姿は、つい可愛がりたくなるほど愛らしいけれど――ふと戯れから我に返った八重は、少し慌てた様子で指を離した。
「……なんて、ちょっと恥ずかしいですね?」
「ううん、恥ずかしがる八重さんも珍しくて……たまには、ええと思いますよ?」
一方、フィオナに誘われて祭りへとやってきた頼蔵は、困ったものだと呟きつつも何処か楽しそうで――彼女の着けた髪飾りを見て、良いなとしみじみ頷いた。
「うん、凄く素敵だよな! ……似合うかな?」
「ふむ。まぁ私が選んだのだから当然か」
――ふたりが歩くのは夕暮れ時。夕焼けの赤は偶に怖くなるけれど、今日のはただ綺麗だと語るフィオナは何処か儚い。その、まるで夕陽に溶けてしまいそうな姿も少しだけ、僅かに悪くないとも思った頼蔵は、頭を振ってその考えを追い払った。
「と、色々あるなあ。どの屋台から行こうか?」
「そうだな、祭りの遊戯はどれも刹那的な愉しみがあるが。薦めるとすれば、心技体、全てを行使する――」
「型抜きだな!」
そんな訳で、全力で型を抜こうと挑戦したフィオナだったが、2枚3枚10枚――失敗した型が次々に量産されていき、見た目より難しいと顔をしかめる。
「はっはっは、実に不器用だな君は。刮目して見給え、この芸術的なまでの完成、ど……」
と、余裕たっぷりの頼蔵も其処まで。悪戦苦闘する彼を何時しかフィオナは応援していて、やっぱり彼と一緒だと楽しいなと笑った。
(お誘いするか少し迷ったけど、誘って良かった)
――しかし、何故迷ったのだろう。その理由は最後まで分からなかった。
●狐子たちといっしょ
今回のお誘い、いや依頼主である狐子たち――彼らも皆のお手伝いをしようと張り切っているようだ。その中のひとり、マイペースなハクの案内を受けて、学園中等部の皆は食べ歩きに繰り出す。
「ハクさん、ですか。柳と申します。案内ありがとうございます」
心なしかそわそわしているハクへ、丁寧にお礼を述べるのは燐花。一方の奈那美は彼の尻尾に触ってみたいと思っているようで、それに気付いたハクが「ふかふか、する?」と尾を揺らした。
「じゃあ、ハクくんのおすすめを聞いたりしながら色々買ってみようか」
――そんな訳で色々な屋台を覗いてみるも、どれも美味しそうな食べ物ばかりで目移りしてしまう。其処で燐花が、皆で分け合いっこはどうかと提案するものの――同年代の子と遊ぶ機会があまりないらしく、恥ずかしそうな声で謝る。
「その、おかしなことをしていなければいいのですが……」
「分け合いっこいいですね。ふっ、放課後の食べ歩き感で楽しいのですっ」
しかし浅葱は、遊ぶのにおかしいも何もないと言って笑い、彼女からたこ焼きを勧められたきせきも、熱々の具に悪戦苦闘しながら親指を立てた。
「お祭りなんだから楽しいのが一番だよ! だから燐花ちゃんも、何か気になる屋台とかあったら言ってね!」
と、奈那美は屋台で食べ歩きをするのは初めてらしく、少し浮足立ちつつもりんごあめを買って。変なことはありませんと燐花の口に、そっと飴を差し入れした。
「そういう事を気にする燐花さんは、とてもかわいらしく思いますよ。……はい、あーん」
「あっ、油揚げの屋台とかないですかっ。お狐なところですしっ」
そうしている内に浅葱はきつねうどんの屋台を見つけ、油揚げをハクに一口――一緒に狐気分を味わっている。わあ、ときせきが歓声を上げた店先には、狐の飴細工が並んでいるようだ。
「これ、狐神さまのお土産にいいんじゃないかな!」
彼女へは硝子細工のような飴を、自分たちには狐の絵の金太郎飴を。奈那美は綿あめをお土産にすることに決めたようで、別れ際に燐花がハクへ、金平糖の入った巾着を手渡した。
「よかったら狐神さまへ。どうか元気になられますように」
狐子たちに案内をお願いし、禊は色々なお店を冷やかそうと軽やかに歩く。お目当ては食べ物屋さん――狐神へのお土産も買えるし、話すネタになるのではと思ってのことだ。
(ふむ、何か悩みがあるらしいけど、それは狐子たちには知られてほしくない内容、っていう可能性もあるよね)
それでも折角話をするのなら、彼らからの方がお祭りの様子を楽しく聞けるような気がする――そう思った禊は、先ずのんびり賑やかな時間を楽しもうと狐子たちの手を引く。
「せっかくのハレの日。狐神さんに、幸せを分けてあげよう?」
「ふふ、久しぶりね。前に会った時もお祭りがあったわね。なんだか懐かしいわ」
久しぶりー、と狐子のケンと再会したエメレンツィアは、彼とハイタッチを決めて。あの時は狐神からお守りを頼まれたと、懐かしく目を細めた。
「……今度はあの時の逆なのね。でも大丈夫よ。私たちF.i.V.E.が必ず狐神様の力になるから」
「姉ちゃん……」
力強く自分の手を握ってくれたエメレンツィアへ、ケンは縋るようなまなざしを送る。あなた達まで落ち込んでいたら、狐神様だって心配しちゃうと微笑んで、彼女は一緒に遊ぼうと狐子の髪を撫でた。
「楽しい姿を見せてあげれば、狐神様も安心するわよ。私たちに任せて、ね?」
「……うん! オレもまた、姉ちゃんと遊びたい!」
――迷子になったら困るから。そう言ってハクの手を引く数多は、初詣の様子を思い出してぽつりと問いかけてみる。
「あんた、ゴリラ好きなの?」
「……うん。ゴリラ、かっこいい。お姉ちゃんもかっこいいよ」
それはもしや、遠回しにゴリラのようだと言っているのかと数多は思ったが、ちみっこ相手に怒鳴るわけにもいくまい。
「ゴリラはいいわよね。強いし黒いし太いし逞しいし。……ハク君もゴリラ目指しなさいよ」
と、何やら意味深にゴリラの素晴らしさを説く彼女だったが、その時ふと見かけた射的の店にゴリラのぬいぐるみを発見して足を向ける。
「あれ、いいわよね。よし……!」
上手い人の動きを盗み見して、早速数多は射的に挑戦――何処からか聞こえて来た「ウッホ、ウッホホ」と言う謎の雄叫びの後押しもあって、見事ぬいぐるみをゲットした。
「はい、あげるわ……ってべつに、あんたのためにとったんじゃないけど。私のほうがお姉さんだし、お姉さんってことちゃんとわかってもらわないと困るし!」
――が、数多の叫びも何処へやら。ハクはマイペースに、ゴリラのぬいぐるみを抱きしめてウホウホ言っていたのだった。
「コンちゃん、久しぶり。お姉ちゃんのこと覚えてるかな?」
そして狐子のコンと向き合っているのは、クレープを手にした御菓子。去年の秋祭りでも御馳走になったお菓子を懐かしそうに眺めて、コンは照れ臭そうにこくりと頷く。
「お、美味しいお菓子はみんなを幸せにする……のよね?」
「うんうん、コンちゃんも狐神さまの為にがんばってる。わたしはがんばる子の味方なの」
クレープ屋台のベンチに腰掛けて、御菓子は優しくコンの話を聞いた。狐神への想いにコンの願い、それからとりとめのない雑談なども。そうしている内にコンの気持ちもほぐれてきたようで、頃合いを見て御菓子は思い切って彼女に声をかける。
「ね? 狐神さまにお土産買って、正直に狐神さまの想いや願いを訊いてみない? やっぱりね、声に出さない想いは伝わりにくいものだから……ね?」
食べ物の他に、雑貨や玩具――金魚すくいや射的の店を回りながら、御菓子はコンと一緒に狐神へのお土産を選んでいった。そうしてコンは最後に、ずっと一緒に回ってくれた御菓子へありがとうを伝える。
「ふふ、何度でも言うけど、わたしはがんばる子の味方なの」
●狐神との語らい
朱塗りの鳥居を幾つも抜けた先――現と幻が混じり合う稲荷の社で、狐神は儚げに佇んでいた。此方を訪ねに来てくれたF.i.V.E.の覚者たちの姿に、彼女は良く来てくれたと喜んでいるようだ。
「今日は宜しくお願い致します。こちらは奏空さんと、彼のお母様に教えて頂いて、一緒に作ったものなのですが……」
先ず、狐神と初めて会う奏空を紹介してから、たまきは手作りの五目稲荷を彼女の前に差し出す。ふたりで作った差し入れを、喜んでくれるかなと緊張しながら――奏空が思い出すのは両親の様子だった。
(学校の友達だよって説明したけど、絶対バレてる……っ。俺がたまきちゃんの事好きだって……っ)
手を握るのが精一杯なふたりだけど、お茶を飲みつつ談笑する姿を見た狐神は、彼らの仲睦まじい様子を微笑ましく見守っている。
「ふむ……そなた達の温かな想いが、伝わってくるようじゃ」
狐神が稲荷寿司にそっと触れると、触れた先から食物は、さらさらと宙に溶けて消えていった。どうやら存在のおぼろげな彼女は、食物に触れることで食事を行うらしい。古妖の神秘を目の当たりにしつつ、続いて元気よく自己紹介をするのは奈南だった。
「狐神ちゃん! 初めまして! ナナンだよぉ! 宜しくねぇ!」
この場所から離れられない狐神の為に、外の事をいっぱいお話しよう――そう決めた奈南は依頼で行った妖精の国について、身振りを交えて面白そうに説明をする。
「ナナン達のお仕事は、妖ちゃんの退治もあるんだけど……でもねぇ、沢山、沢山楽しい事もあるのだ!」
海に住むイルカは妖精の国にも居て、自分たちと変わらない生活をしていた。そうして皆と一緒にイルカレースを楽しんだ体験を、狐神は興味深そうに聞いている。
「世界には不思議で面白い事が、いーっぱいあるみたい!」
こんにちは、と穏やかに挨拶をする壱縷は、自分で良ければ話し相手になれればと微笑んだ。
「あ、狐神様は歌は好きですか? 私は歌を歌うものでして」
自分にとって歌はかけがえのないもので、一つ一つの言葉を歌と言う素敵な手段で、沢山伝えられることに喜びを感じる。そう伝える壱縷はうつくしくも誇らしく、ひとの想いに触れることは狐神にとっても良い刺激になったようだ。
「狐神様の心に残っている思い出など……もし、よろしければ聞いてみたいです」
「そうじゃのう……今まで色々なことがあったが、今の……狐子たちとのひと時が、儂にとってかけがえのないものになっているのだと思う」
「ところでアンタ……つがいはいねえのか?」
と、母親のような慈しむまなざしで吐息を零す狐神へ、ぽつりと疑問を投げかけたのは誘輔だった。思わず瞳を瞬きさせる狐神だが、いや――と誘輔は言葉を続ける。
「狐子がアンタのガキなら、当然旦那がいるんじゃねーかって邪推してさ」
しかしその問いに、狐神は苦笑しつつ首を振って――狐子は自分の子供ではなく、あくまで自分に仕えてくれている者たちなのだと説明した。
「ふふ……まさかいきなり、伴侶が居るのかと尋ねられるとはのう」
面白そうにくすくすと微笑んでいる辺り、特定の相手は居ないのかもしれない。ならばと誘輔は気を取り直して、手土産として持って来た風景写真を広げていく。
「アンタはこっから動けねーみてーだから、気分転換にこーゆーのはどうかって思ってさ」
そうして最後に、彼は困りごとがあったら言ってくれとさりげなく申し出た。別嬪は笑顔でなんぼだろ――そう告げた誘輔に、狐神は慣れた様子で微笑んでみせたのだった。
「あ、それじゃ狐神様には親兄弟とかは、いらっしゃらないのでしょうか」
それでも狐子ちゃん達が居れば賑やかですよね、そう言ってくすっと笑う澄香は、彼らの為に一肌脱ごうと決めたようだ。話を聞くだけでも気持ちが晴れることを願い、澄香はおいなりさんを差し入れついでに世間話をする。
「もうすっかり秋ですね。秋って物寂しい感じもしますけど……私はこの時期に両親を亡くしたもので、そう感じるのかもしれないですね」
――けれど、周りの人たちが家族同然に良くしてくれるから、ほんとに少しだけ。そうして朗らかに振舞う澄香の姿を見て、狐神は良い縁に恵まれたようじゃなと優しく尾を揺らした。
「親兄弟、か……そう呼べるかは分からぬが、儂にも近しい存在は居るのじゃ。だが――」
顔を伏せて溜息を吐く狐神は、心の裡に抱えたものを吐き出して良いのか迷っているようだ。そのまま口ごもった彼女の元へ、義高はとっておきの酒とつまみを持って近づいていく。
「何を悩んでいるかはわからねぇが、子どもたちを心配させちゃ、親失格だぜ」
血の繋がりは無いにせよ、彼女たちは親子のような関係を築いていると思った義高は、酒でも飲んで色々なものをギュッと絞って飲み込んじまおうと腰を下ろした。
――つまみの卵巾着をぱくつきながら、御猪口に注がれた酒がゆっくりと減っていく。そうして暫く無言で酒を酌み交わした後、義高は彼方を見遣りながら独り言のように呟いた。
「どうだい? 胸のつかえは取れたかい? 取れてなきゃ、俺でよければそのつかえ全部吐き出しちまえよ」
向こうも答えなど求めてはいないだろう、だから義高は無言で狐神の杯に酒を注ぐ。そうじゃな、と頷く彼女に言うでもなく、義高は杯を傾けて溜息を吐き出した。
「子どもってのはいつの間にか成長して、あっという間に手から離れちまうものなのかもな……」
●その名はキュウビ
(狐神さま、何か悩みごとがあるらしいけど……どうしたんだろう)
皆から外の話を聞いたり、世間話をしたりして大分表情が和らいできたとは言え――時折考え込む素振りを見せている狐神に、様子を見守る亮平は心配そうな顔をしていた。
「あ、さつま芋、嫌いでしたか……!?」
もしやお土産に作って来た、さつま芋入りの稲荷寿司が苦手だったのかとオロオロする亮平だが、そんなことは無いと狐神は首を振る。
(狐神さまは、ここから離れられないんだよね……)
その場に留まり、願い続けることの辛さを打ち明けられたことのある亮平にとって、彼女の境遇は他人事とは思えなかった。だから――もふもふしたいと言う気持ちを自重しつつ、彼は思い切って尋ねてみる。
「俺達は……あなたの願いを叶えるお手伝いをする事ができますか?」
――貴方様は、数百年何を思い今まで在られたのか。もし話を聞ければ、何かが変わるかもしれない――変われるかもしれないと少女は思った。
数百年の時を生きる感覚は、やはりひとの身である少女には分からない。ただ、たかだか十数年で生きるのが辛いと口にした少女には――『たかだか十数年』だからこそ辛く、悩んでいるのだろうと狐神は言った。時間の密度はそれ程までに濃く、恐らく目に見える世界も自分とでは、全く様相を異にしているのだろうと。
「初めまして、あんたが狐神さま? ちょっと耳貸してもらっても良い?」
其処で声を掛けた梛は、直球勝負に出ることにしたようだ。狐神が沈みがちだから狐子や皆が心配して、今日こうして集まったこと。だから皆の為に、不安な事や相談したい事があるなら教えて欲しいのだと。
「あんたが嫌なら、無理に聞かないよ。でも」
どんな悩みかは分からないけれど、一人で抱えても答えは出ないのなら――誰かと分かち合うのも良いと梛は訴える。
「色々と直球で悪いな、狐子たちには俺がばらしたの言わないでくれると有難いかな。……それだけ」
発現してからずっと狐神様とお話してみたかった――その願いが叶った小唄は先ず、彼女が力を貸してくれたことで、自分は狐の獣憑として目覚めることが出来たのだとお礼を言った。
「すぐの時はどうしようって思いましたけど、今は発現出来たことに本当に感謝しています」
そうならなかったら小唄は、皆と会うことも色んな経験をすることもなかっただろう。こうしてお礼が言えたことを喜びながらも――小唄の瞳は真摯な光を宿して、狐神をひたと見据えていた。
「……狐神様、何か、お悩みなんですか? 僕じゃまだまだ未熟だと思いますけど、良かったら話してくれませんか?」
――F.i.V.E.に依頼をしてから一年が過ぎた。絆を深め、小唄のように狐の特徴を持つ覚者も現れて、託した勾玉も確実に使いこなせているようだ。
「僕もいわば狐子です、狐神様の力になりたいんです! みんな心配していますよ!」
だから、心の奥底に仕舞っておいた願いを、彼らに託しても良いだろうか――尋ねてきてくれた覚者たちに向かい、狐神は己の正体について静かに語り始めたのだった。
「キュウビ、と呼ばれる存在……そなた達で言うところの古妖がおった。九つの尾を持つ妖狐の伝承は、ひとの間でも語り継がれているようじゃな」
美女に化けて権力者の寵愛を受け、世の中を混乱に陥れた話などが有名だが――あれは全くの作り話と言う訳では無い。キュウビとは力を持った狐九体の集合体であり、その中で一番力を持った狐が他の八尾を統制していたのだそうだ。
「……儂はその狐の内の一体で、今は尾を切り離されて力を封印されている状態なのじゃ」
――狐神を含め、他の狐たちも封印されて現在は眠りについているようだ。しかし、かつて支配権を握っていた狐は、九尾の中で最も邪悪で狡猾な性格をしており、人にとって害を為す存在だったのだと言う。
「儂も、その毒気にあてられておったのかも知れぬ。だが、こうして力を失ったことでそれも薄れ、今は儂に仕えてくれる狐子たちも居る……このまま穏やかに暮らしていくのも悪くないと思った」
しかし自分はそれで良いと言え、他の狐たちの中には力を取り戻し、再び暴虐の限りを尽くそうと思っているものも居るだろう。封印の力は薄れてきており、このままではまた悲劇が繰り返されてしまう。
「だから、儂は……ひとつになり、善なるものとしてのキュウビとなりたい。邪悪なものとしてのキュウビの復活を、防ぎたいのじゃ」
そして、力を取り戻す役目を、いつの日かF.i.V.E.に行ってもらえたらと。今までも彼らを導いていたが、その願望は確信に変わりつつあると狐神は言った。
「今日は、儂や狐子たちの相手をしてくれて有難う。お陰で、儂の決意も固まった」
――狐神から打ち明けられた悩みは深刻なものだったが、自分たちの力を今必要としているのならと少女は思う。
「……手を差し伸べたい。生きて来た時間は違えど『今』を共に生きているのですから」
休日の伏見稲荷は参拝客で賑わっていた。丁度秋祭りの時期なのだろう――参道には幾つも屋台が立ち並び、美味しそうな匂いがそこかしこから漂って、道行くひとびとの足を止めている。
(ちょっと冷えてきたけど、手を繋いでると温かいな)
ありすの手を取って祭りへ繰り出したヤマトは、のんびりと屋台巡りを楽しむことにした。口に出すのは照れくさくて、思いは胸に秘めたままだったけれど――彼女の歩幅に合わせて歩いていると、ふと個性的な屋台が目に飛び込んでくる。
「お、焼きだんごも美味しそうだし、たいやきパフェも面白そうだな! 食べてみるか?」
「……じゃあ、両方食べましょ」
食い意地が張っているわけじゃなくて、選びきれないだけと釘を刺しつつ、ありすが先ず手に取ったのはたいやきパフェ。生クリームが溢れているのがシュールだけど、餡子との相性は凄く良い。幸せそうな様子で、続いて焼きだんごも頬張るありすの横顔に、つい見惚れてしまったヤマトだったけれど――。
「……何見てるのよ。どうって、そりゃ美味しいけど」
あまり見られると恥ずかしくて、ありすはついぶっきらぼうを装い甘味を一口。しかしその頬はほんのり緩み、自分の口についたクリームにも気づかずにいるヤマトへ、ありすはそっと囁いた。
「今日はありがと……また出かけましょうね」
――休日を楽しむのも勿論だけど、今回の稲荷訪問には目的がある。何やらふさぎ込んだ様子の狐神へ、外の出来事を伝える任務も兼ねているのだ。
「とりあえず祭で遊んで、それを報告すればいいんだろ。楽勝じゃんっ! ……って、ん?」
そんな訳で早速遊ぼうとした翔だったが、一緒にやって来た紡の姿に瞳をぱちくり――秋らしいコーデで決めた彼のような彼女が、スカートを穿いていることに驚いているようだ。
「翔、こゆ恰好見たことなかったっけ……?」
「おんな?? いや、男だって思ってた訳でもねーんだけど……」
性別は余り考えたことがなかったと、難しい顔で悩む翔だったが――どっちだって紡は紡なのだと納得した。そうして彼女の手を引っ張って、食べる前に遊ぼうと射的の店へと飛び込んでいく。
「お、射的? ボク、上手いよ?」
年上の威厳を見せつけるべく、競争をする紡はつい熱くなったりもして。屋台の戦利品を抱え、その間も繋がれたままの翔の手の大きさに、紡は少しだけ驚いていた。
(子供子供と思ってたけど、そうも言ってられないんだなぁ……)
――紡と遊ぶのはすげー楽しい。そう言って笑う翔と約束を交わすべく、彼女は童歌を口ずさみながら小指を絡ませる。
「また一緒に遊ぼうな! 約束!」
出店で売っていた、狐のお面――ちょっと目に留まったそれが素敵だと微笑み、那由多は八重の肩をちょいちょいと突いた。
「伏見稲荷やし、狐さんになった気持ちで」
「ふふ、なんだか目尻のあたりが優しげで、那由多さんに似合いそうです」
お揃いの面を買ったふたりは、斜めにお面をつけて狐気分になって。指で狐の形を作った那由多がコンコンと鳴けば、八重もコンっと狐を作って鳴き返す。そうして気が付けばふたりは、どちらともなくクスクスと笑っていた。
「那由多さんのコンって可愛らしいですよ?」
「そ、そんな風に言われると、顔から火ぃ出そうです……」
影絵の狐さんもそう言っていると――地面に落ちた狐の影絵を動かす八重は、那由多の影にそっと、触れるような口づけをする。真っ赤になった友人の姿は、つい可愛がりたくなるほど愛らしいけれど――ふと戯れから我に返った八重は、少し慌てた様子で指を離した。
「……なんて、ちょっと恥ずかしいですね?」
「ううん、恥ずかしがる八重さんも珍しくて……たまには、ええと思いますよ?」
一方、フィオナに誘われて祭りへとやってきた頼蔵は、困ったものだと呟きつつも何処か楽しそうで――彼女の着けた髪飾りを見て、良いなとしみじみ頷いた。
「うん、凄く素敵だよな! ……似合うかな?」
「ふむ。まぁ私が選んだのだから当然か」
――ふたりが歩くのは夕暮れ時。夕焼けの赤は偶に怖くなるけれど、今日のはただ綺麗だと語るフィオナは何処か儚い。その、まるで夕陽に溶けてしまいそうな姿も少しだけ、僅かに悪くないとも思った頼蔵は、頭を振ってその考えを追い払った。
「と、色々あるなあ。どの屋台から行こうか?」
「そうだな、祭りの遊戯はどれも刹那的な愉しみがあるが。薦めるとすれば、心技体、全てを行使する――」
「型抜きだな!」
そんな訳で、全力で型を抜こうと挑戦したフィオナだったが、2枚3枚10枚――失敗した型が次々に量産されていき、見た目より難しいと顔をしかめる。
「はっはっは、実に不器用だな君は。刮目して見給え、この芸術的なまでの完成、ど……」
と、余裕たっぷりの頼蔵も其処まで。悪戦苦闘する彼を何時しかフィオナは応援していて、やっぱり彼と一緒だと楽しいなと笑った。
(お誘いするか少し迷ったけど、誘って良かった)
――しかし、何故迷ったのだろう。その理由は最後まで分からなかった。
●狐子たちといっしょ
今回のお誘い、いや依頼主である狐子たち――彼らも皆のお手伝いをしようと張り切っているようだ。その中のひとり、マイペースなハクの案内を受けて、学園中等部の皆は食べ歩きに繰り出す。
「ハクさん、ですか。柳と申します。案内ありがとうございます」
心なしかそわそわしているハクへ、丁寧にお礼を述べるのは燐花。一方の奈那美は彼の尻尾に触ってみたいと思っているようで、それに気付いたハクが「ふかふか、する?」と尾を揺らした。
「じゃあ、ハクくんのおすすめを聞いたりしながら色々買ってみようか」
――そんな訳で色々な屋台を覗いてみるも、どれも美味しそうな食べ物ばかりで目移りしてしまう。其処で燐花が、皆で分け合いっこはどうかと提案するものの――同年代の子と遊ぶ機会があまりないらしく、恥ずかしそうな声で謝る。
「その、おかしなことをしていなければいいのですが……」
「分け合いっこいいですね。ふっ、放課後の食べ歩き感で楽しいのですっ」
しかし浅葱は、遊ぶのにおかしいも何もないと言って笑い、彼女からたこ焼きを勧められたきせきも、熱々の具に悪戦苦闘しながら親指を立てた。
「お祭りなんだから楽しいのが一番だよ! だから燐花ちゃんも、何か気になる屋台とかあったら言ってね!」
と、奈那美は屋台で食べ歩きをするのは初めてらしく、少し浮足立ちつつもりんごあめを買って。変なことはありませんと燐花の口に、そっと飴を差し入れした。
「そういう事を気にする燐花さんは、とてもかわいらしく思いますよ。……はい、あーん」
「あっ、油揚げの屋台とかないですかっ。お狐なところですしっ」
そうしている内に浅葱はきつねうどんの屋台を見つけ、油揚げをハクに一口――一緒に狐気分を味わっている。わあ、ときせきが歓声を上げた店先には、狐の飴細工が並んでいるようだ。
「これ、狐神さまのお土産にいいんじゃないかな!」
彼女へは硝子細工のような飴を、自分たちには狐の絵の金太郎飴を。奈那美は綿あめをお土産にすることに決めたようで、別れ際に燐花がハクへ、金平糖の入った巾着を手渡した。
「よかったら狐神さまへ。どうか元気になられますように」
狐子たちに案内をお願いし、禊は色々なお店を冷やかそうと軽やかに歩く。お目当ては食べ物屋さん――狐神へのお土産も買えるし、話すネタになるのではと思ってのことだ。
(ふむ、何か悩みがあるらしいけど、それは狐子たちには知られてほしくない内容、っていう可能性もあるよね)
それでも折角話をするのなら、彼らからの方がお祭りの様子を楽しく聞けるような気がする――そう思った禊は、先ずのんびり賑やかな時間を楽しもうと狐子たちの手を引く。
「せっかくのハレの日。狐神さんに、幸せを分けてあげよう?」
「ふふ、久しぶりね。前に会った時もお祭りがあったわね。なんだか懐かしいわ」
久しぶりー、と狐子のケンと再会したエメレンツィアは、彼とハイタッチを決めて。あの時は狐神からお守りを頼まれたと、懐かしく目を細めた。
「……今度はあの時の逆なのね。でも大丈夫よ。私たちF.i.V.E.が必ず狐神様の力になるから」
「姉ちゃん……」
力強く自分の手を握ってくれたエメレンツィアへ、ケンは縋るようなまなざしを送る。あなた達まで落ち込んでいたら、狐神様だって心配しちゃうと微笑んで、彼女は一緒に遊ぼうと狐子の髪を撫でた。
「楽しい姿を見せてあげれば、狐神様も安心するわよ。私たちに任せて、ね?」
「……うん! オレもまた、姉ちゃんと遊びたい!」
――迷子になったら困るから。そう言ってハクの手を引く数多は、初詣の様子を思い出してぽつりと問いかけてみる。
「あんた、ゴリラ好きなの?」
「……うん。ゴリラ、かっこいい。お姉ちゃんもかっこいいよ」
それはもしや、遠回しにゴリラのようだと言っているのかと数多は思ったが、ちみっこ相手に怒鳴るわけにもいくまい。
「ゴリラはいいわよね。強いし黒いし太いし逞しいし。……ハク君もゴリラ目指しなさいよ」
と、何やら意味深にゴリラの素晴らしさを説く彼女だったが、その時ふと見かけた射的の店にゴリラのぬいぐるみを発見して足を向ける。
「あれ、いいわよね。よし……!」
上手い人の動きを盗み見して、早速数多は射的に挑戦――何処からか聞こえて来た「ウッホ、ウッホホ」と言う謎の雄叫びの後押しもあって、見事ぬいぐるみをゲットした。
「はい、あげるわ……ってべつに、あんたのためにとったんじゃないけど。私のほうがお姉さんだし、お姉さんってことちゃんとわかってもらわないと困るし!」
――が、数多の叫びも何処へやら。ハクはマイペースに、ゴリラのぬいぐるみを抱きしめてウホウホ言っていたのだった。
「コンちゃん、久しぶり。お姉ちゃんのこと覚えてるかな?」
そして狐子のコンと向き合っているのは、クレープを手にした御菓子。去年の秋祭りでも御馳走になったお菓子を懐かしそうに眺めて、コンは照れ臭そうにこくりと頷く。
「お、美味しいお菓子はみんなを幸せにする……のよね?」
「うんうん、コンちゃんも狐神さまの為にがんばってる。わたしはがんばる子の味方なの」
クレープ屋台のベンチに腰掛けて、御菓子は優しくコンの話を聞いた。狐神への想いにコンの願い、それからとりとめのない雑談なども。そうしている内にコンの気持ちもほぐれてきたようで、頃合いを見て御菓子は思い切って彼女に声をかける。
「ね? 狐神さまにお土産買って、正直に狐神さまの想いや願いを訊いてみない? やっぱりね、声に出さない想いは伝わりにくいものだから……ね?」
食べ物の他に、雑貨や玩具――金魚すくいや射的の店を回りながら、御菓子はコンと一緒に狐神へのお土産を選んでいった。そうしてコンは最後に、ずっと一緒に回ってくれた御菓子へありがとうを伝える。
「ふふ、何度でも言うけど、わたしはがんばる子の味方なの」
●狐神との語らい
朱塗りの鳥居を幾つも抜けた先――現と幻が混じり合う稲荷の社で、狐神は儚げに佇んでいた。此方を訪ねに来てくれたF.i.V.E.の覚者たちの姿に、彼女は良く来てくれたと喜んでいるようだ。
「今日は宜しくお願い致します。こちらは奏空さんと、彼のお母様に教えて頂いて、一緒に作ったものなのですが……」
先ず、狐神と初めて会う奏空を紹介してから、たまきは手作りの五目稲荷を彼女の前に差し出す。ふたりで作った差し入れを、喜んでくれるかなと緊張しながら――奏空が思い出すのは両親の様子だった。
(学校の友達だよって説明したけど、絶対バレてる……っ。俺がたまきちゃんの事好きだって……っ)
手を握るのが精一杯なふたりだけど、お茶を飲みつつ談笑する姿を見た狐神は、彼らの仲睦まじい様子を微笑ましく見守っている。
「ふむ……そなた達の温かな想いが、伝わってくるようじゃ」
狐神が稲荷寿司にそっと触れると、触れた先から食物は、さらさらと宙に溶けて消えていった。どうやら存在のおぼろげな彼女は、食物に触れることで食事を行うらしい。古妖の神秘を目の当たりにしつつ、続いて元気よく自己紹介をするのは奈南だった。
「狐神ちゃん! 初めまして! ナナンだよぉ! 宜しくねぇ!」
この場所から離れられない狐神の為に、外の事をいっぱいお話しよう――そう決めた奈南は依頼で行った妖精の国について、身振りを交えて面白そうに説明をする。
「ナナン達のお仕事は、妖ちゃんの退治もあるんだけど……でもねぇ、沢山、沢山楽しい事もあるのだ!」
海に住むイルカは妖精の国にも居て、自分たちと変わらない生活をしていた。そうして皆と一緒にイルカレースを楽しんだ体験を、狐神は興味深そうに聞いている。
「世界には不思議で面白い事が、いーっぱいあるみたい!」
こんにちは、と穏やかに挨拶をする壱縷は、自分で良ければ話し相手になれればと微笑んだ。
「あ、狐神様は歌は好きですか? 私は歌を歌うものでして」
自分にとって歌はかけがえのないもので、一つ一つの言葉を歌と言う素敵な手段で、沢山伝えられることに喜びを感じる。そう伝える壱縷はうつくしくも誇らしく、ひとの想いに触れることは狐神にとっても良い刺激になったようだ。
「狐神様の心に残っている思い出など……もし、よろしければ聞いてみたいです」
「そうじゃのう……今まで色々なことがあったが、今の……狐子たちとのひと時が、儂にとってかけがえのないものになっているのだと思う」
「ところでアンタ……つがいはいねえのか?」
と、母親のような慈しむまなざしで吐息を零す狐神へ、ぽつりと疑問を投げかけたのは誘輔だった。思わず瞳を瞬きさせる狐神だが、いや――と誘輔は言葉を続ける。
「狐子がアンタのガキなら、当然旦那がいるんじゃねーかって邪推してさ」
しかしその問いに、狐神は苦笑しつつ首を振って――狐子は自分の子供ではなく、あくまで自分に仕えてくれている者たちなのだと説明した。
「ふふ……まさかいきなり、伴侶が居るのかと尋ねられるとはのう」
面白そうにくすくすと微笑んでいる辺り、特定の相手は居ないのかもしれない。ならばと誘輔は気を取り直して、手土産として持って来た風景写真を広げていく。
「アンタはこっから動けねーみてーだから、気分転換にこーゆーのはどうかって思ってさ」
そうして最後に、彼は困りごとがあったら言ってくれとさりげなく申し出た。別嬪は笑顔でなんぼだろ――そう告げた誘輔に、狐神は慣れた様子で微笑んでみせたのだった。
「あ、それじゃ狐神様には親兄弟とかは、いらっしゃらないのでしょうか」
それでも狐子ちゃん達が居れば賑やかですよね、そう言ってくすっと笑う澄香は、彼らの為に一肌脱ごうと決めたようだ。話を聞くだけでも気持ちが晴れることを願い、澄香はおいなりさんを差し入れついでに世間話をする。
「もうすっかり秋ですね。秋って物寂しい感じもしますけど……私はこの時期に両親を亡くしたもので、そう感じるのかもしれないですね」
――けれど、周りの人たちが家族同然に良くしてくれるから、ほんとに少しだけ。そうして朗らかに振舞う澄香の姿を見て、狐神は良い縁に恵まれたようじゃなと優しく尾を揺らした。
「親兄弟、か……そう呼べるかは分からぬが、儂にも近しい存在は居るのじゃ。だが――」
顔を伏せて溜息を吐く狐神は、心の裡に抱えたものを吐き出して良いのか迷っているようだ。そのまま口ごもった彼女の元へ、義高はとっておきの酒とつまみを持って近づいていく。
「何を悩んでいるかはわからねぇが、子どもたちを心配させちゃ、親失格だぜ」
血の繋がりは無いにせよ、彼女たちは親子のような関係を築いていると思った義高は、酒でも飲んで色々なものをギュッと絞って飲み込んじまおうと腰を下ろした。
――つまみの卵巾着をぱくつきながら、御猪口に注がれた酒がゆっくりと減っていく。そうして暫く無言で酒を酌み交わした後、義高は彼方を見遣りながら独り言のように呟いた。
「どうだい? 胸のつかえは取れたかい? 取れてなきゃ、俺でよければそのつかえ全部吐き出しちまえよ」
向こうも答えなど求めてはいないだろう、だから義高は無言で狐神の杯に酒を注ぐ。そうじゃな、と頷く彼女に言うでもなく、義高は杯を傾けて溜息を吐き出した。
「子どもってのはいつの間にか成長して、あっという間に手から離れちまうものなのかもな……」
●その名はキュウビ
(狐神さま、何か悩みごとがあるらしいけど……どうしたんだろう)
皆から外の話を聞いたり、世間話をしたりして大分表情が和らいできたとは言え――時折考え込む素振りを見せている狐神に、様子を見守る亮平は心配そうな顔をしていた。
「あ、さつま芋、嫌いでしたか……!?」
もしやお土産に作って来た、さつま芋入りの稲荷寿司が苦手だったのかとオロオロする亮平だが、そんなことは無いと狐神は首を振る。
(狐神さまは、ここから離れられないんだよね……)
その場に留まり、願い続けることの辛さを打ち明けられたことのある亮平にとって、彼女の境遇は他人事とは思えなかった。だから――もふもふしたいと言う気持ちを自重しつつ、彼は思い切って尋ねてみる。
「俺達は……あなたの願いを叶えるお手伝いをする事ができますか?」
――貴方様は、数百年何を思い今まで在られたのか。もし話を聞ければ、何かが変わるかもしれない――変われるかもしれないと少女は思った。
数百年の時を生きる感覚は、やはりひとの身である少女には分からない。ただ、たかだか十数年で生きるのが辛いと口にした少女には――『たかだか十数年』だからこそ辛く、悩んでいるのだろうと狐神は言った。時間の密度はそれ程までに濃く、恐らく目に見える世界も自分とでは、全く様相を異にしているのだろうと。
「初めまして、あんたが狐神さま? ちょっと耳貸してもらっても良い?」
其処で声を掛けた梛は、直球勝負に出ることにしたようだ。狐神が沈みがちだから狐子や皆が心配して、今日こうして集まったこと。だから皆の為に、不安な事や相談したい事があるなら教えて欲しいのだと。
「あんたが嫌なら、無理に聞かないよ。でも」
どんな悩みかは分からないけれど、一人で抱えても答えは出ないのなら――誰かと分かち合うのも良いと梛は訴える。
「色々と直球で悪いな、狐子たちには俺がばらしたの言わないでくれると有難いかな。……それだけ」
発現してからずっと狐神様とお話してみたかった――その願いが叶った小唄は先ず、彼女が力を貸してくれたことで、自分は狐の獣憑として目覚めることが出来たのだとお礼を言った。
「すぐの時はどうしようって思いましたけど、今は発現出来たことに本当に感謝しています」
そうならなかったら小唄は、皆と会うことも色んな経験をすることもなかっただろう。こうしてお礼が言えたことを喜びながらも――小唄の瞳は真摯な光を宿して、狐神をひたと見据えていた。
「……狐神様、何か、お悩みなんですか? 僕じゃまだまだ未熟だと思いますけど、良かったら話してくれませんか?」
――F.i.V.E.に依頼をしてから一年が過ぎた。絆を深め、小唄のように狐の特徴を持つ覚者も現れて、託した勾玉も確実に使いこなせているようだ。
「僕もいわば狐子です、狐神様の力になりたいんです! みんな心配していますよ!」
だから、心の奥底に仕舞っておいた願いを、彼らに託しても良いだろうか――尋ねてきてくれた覚者たちに向かい、狐神は己の正体について静かに語り始めたのだった。
「キュウビ、と呼ばれる存在……そなた達で言うところの古妖がおった。九つの尾を持つ妖狐の伝承は、ひとの間でも語り継がれているようじゃな」
美女に化けて権力者の寵愛を受け、世の中を混乱に陥れた話などが有名だが――あれは全くの作り話と言う訳では無い。キュウビとは力を持った狐九体の集合体であり、その中で一番力を持った狐が他の八尾を統制していたのだそうだ。
「……儂はその狐の内の一体で、今は尾を切り離されて力を封印されている状態なのじゃ」
――狐神を含め、他の狐たちも封印されて現在は眠りについているようだ。しかし、かつて支配権を握っていた狐は、九尾の中で最も邪悪で狡猾な性格をしており、人にとって害を為す存在だったのだと言う。
「儂も、その毒気にあてられておったのかも知れぬ。だが、こうして力を失ったことでそれも薄れ、今は儂に仕えてくれる狐子たちも居る……このまま穏やかに暮らしていくのも悪くないと思った」
しかし自分はそれで良いと言え、他の狐たちの中には力を取り戻し、再び暴虐の限りを尽くそうと思っているものも居るだろう。封印の力は薄れてきており、このままではまた悲劇が繰り返されてしまう。
「だから、儂は……ひとつになり、善なるものとしてのキュウビとなりたい。邪悪なものとしてのキュウビの復活を、防ぎたいのじゃ」
そして、力を取り戻す役目を、いつの日かF.i.V.E.に行ってもらえたらと。今までも彼らを導いていたが、その願望は確信に変わりつつあると狐神は言った。
「今日は、儂や狐子たちの相手をしてくれて有難う。お陰で、儂の決意も固まった」
――狐神から打ち明けられた悩みは深刻なものだったが、自分たちの力を今必要としているのならと少女は思う。
「……手を差し伸べたい。生きて来た時間は違えど『今』を共に生きているのですから」
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
