弾けるっ! 裂けるっ! イケナイ??
●ちょっと!
オレンジ色に染まる空と高校の校舎に水気が減った風が吹き抜ける。
元気な声、楽しそうな声が響く校門の傍らに生えている木の枝に1匹の古妖。
「何よ! 『ころもがえ』ってヤツのせいで露出が減ったじゃないのっ!」
と、尻尾を真っ直ぐに立て、後ろ足でどすどすと地団駄を踏む大きなイタチ。
「しかも、何よ! これ見よがしに体にピッチリなシャツにブレザーなんて邪道よ!」
このイタチ、古妖のクセに詳しすぎて「中に小さいおっさんが入っているのでは?」と疑ってしまう。
「あーもー、この苛立ち! ぶつけてやるのよ!」
イタチは木の枝を後ろ足で蹴り、音も立てず前足から地面に着地し高校の校門に向かって駆け出した。
男子生徒達が門から出ようとした瞬間、突然の突風に驚き男子生徒達は思わず腕で顔をガードする。
「ぶっ! スッゲー風だったな! 少し涼しく感じたけど、それを通り過ぎてさみぃーって……お前、半裸になってやんのーっ!」
と、男子生徒は同級生に指をさして笑い声を上げる。
「いや、お前も半裸じゃん……」
「え……いやーん!」
笑っていた男子生徒から笑顔が消え、カバンを両腕で抱え悲鳴を上げた。
(捗るっ!)
その光景を見た大きなイタチは親指(?)を立てると、男子生徒達は何故か同級生と抱き合う幻を見せられた。
「……俺、ノンケ! ノンケだから!」
男子生徒の叫びはむなしく風にかき消されたのであった。
●F.i.V.E.
「皆さん、お集りいただきありがとうございます」
久方 真由美(nCL2000003)は会議室に集まったアナタ達に微笑んだ。
「あの……その……とある高校で男子生徒の制服を切り裂いたり、女子生徒のボタンを弾いたり……その……イケナイ妄想の幻を見せる古妖が出ると高校から報告がありました」
少し恥ずかしそうに真由美は説明する。
え? 何で男子生徒の制服は切り裂くのに女子生徒の制服は切り裂かないの!? と会議室に居るアナタ達は騒めいた。
「と、兎に角、その古妖の悪戯を止めて下さい! 高校の制服はこちらで用意しておりますので皆さんの吉報をお待ちしております」
真由美は、半ば強引に制服が入った箱をアナタに渡して会議室から出て行った。
オレンジ色に染まる空と高校の校舎に水気が減った風が吹き抜ける。
元気な声、楽しそうな声が響く校門の傍らに生えている木の枝に1匹の古妖。
「何よ! 『ころもがえ』ってヤツのせいで露出が減ったじゃないのっ!」
と、尻尾を真っ直ぐに立て、後ろ足でどすどすと地団駄を踏む大きなイタチ。
「しかも、何よ! これ見よがしに体にピッチリなシャツにブレザーなんて邪道よ!」
このイタチ、古妖のクセに詳しすぎて「中に小さいおっさんが入っているのでは?」と疑ってしまう。
「あーもー、この苛立ち! ぶつけてやるのよ!」
イタチは木の枝を後ろ足で蹴り、音も立てず前足から地面に着地し高校の校門に向かって駆け出した。
男子生徒達が門から出ようとした瞬間、突然の突風に驚き男子生徒達は思わず腕で顔をガードする。
「ぶっ! スッゲー風だったな! 少し涼しく感じたけど、それを通り過ぎてさみぃーって……お前、半裸になってやんのーっ!」
と、男子生徒は同級生に指をさして笑い声を上げる。
「いや、お前も半裸じゃん……」
「え……いやーん!」
笑っていた男子生徒から笑顔が消え、カバンを両腕で抱え悲鳴を上げた。
(捗るっ!)
その光景を見た大きなイタチは親指(?)を立てると、男子生徒達は何故か同級生と抱き合う幻を見せられた。
「……俺、ノンケ! ノンケだから!」
男子生徒の叫びはむなしく風にかき消されたのであった。
●F.i.V.E.
「皆さん、お集りいただきありがとうございます」
久方 真由美(nCL2000003)は会議室に集まったアナタ達に微笑んだ。
「あの……その……とある高校で男子生徒の制服を切り裂いたり、女子生徒のボタンを弾いたり……その……イケナイ妄想の幻を見せる古妖が出ると高校から報告がありました」
少し恥ずかしそうに真由美は説明する。
え? 何で男子生徒の制服は切り裂くのに女子生徒の制服は切り裂かないの!? と会議室に居るアナタ達は騒めいた。
「と、兎に角、その古妖の悪戯を止めて下さい! 高校の制服はこちらで用意しておりますので皆さんの吉報をお待ちしております」
真由美は、半ば強引に制服が入った箱をアナタに渡して会議室から出て行った。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖『サクミ』を戦闘不能にさせる。
2.生徒の避難、護衛をする。
3.なし
2.生徒の避難、護衛をする。
3.なし
2本目は真面目なギャグシナリオをお届けします。
男性のみが半裸にさせられます! 胸が大きい女性はワイシャツのボタンをパーンと飛ばされます!
【お願い】
イケナイ妄想に関して使用されたくない方は、プレイングに「妄想不可」と記載してください。
異性なら「妄想異性可」、同性なら「妄想同性可」、「ええい! 何でもきやがれー!」という方は「全妄想可」とプレイングで意思表示をお願いします。
相手を指定したい方は、相手様から許可を得て書いてください。
●場所
とある高校の校門
時刻は夕方
●一般人
休日なので部活をしてる生徒しか居ません。
●F.i.V.E.から支給品
とある高校の冬制服(ブレザー)
●敵
古妖
サクミ(1体)
大きなイタチ、冬制服を着た男子生徒の制服を切り裂いたり、サイズの合わない制服を着た胸が大きい女子生徒のボタンを弾くイタズラをする。
胸の大きな女性には厳しく、半裸の男性には優しくイケナイ妄想が展開されます。
・攻撃方法
1、疾風(特遠列)『大きな風を起こして対象を切り裂く』
2、つむじ風(特遠単)『小さな風を起こして対象を切り裂く』
3、自作薬(近単)『傷口に薬を塗ってキズを癒す』
4、嗚呼、妄想(全)『サクミのイケナイ妄想が幻となって現れます』
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年10月20日
2016年10月20日
■メイン参加者 8人■

●なぜ?
説明を聞き終えた覚者達は、互いの胸を見合っている者や『サクミ』に対して興味を持っている者もいた。
「オ、オォ? 男の子を脱がせて、女の子の服のボタンを飛ばす古妖デスカ? 何故そんな事をスルノカ解りマセンネ……好きな人のなら当然ソノ……見たいデスケド……何故無差別ナノデショウ?」
その豊満な胸という名の凶器を持つ女性『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)が疑問を口にした。
それを言ってはイケナイ! 全国の半裸フェチ方や、ただボタンを弾かせてニヤニヤする方が熱く語り始める処だ。
「デモ! トニカク止めないとデスネ!」
と、意気込むとリーネの胸が揺れた。
(女性にイタズラをする古妖。ぜひお友達になりたい)
と、『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)は思った。
一言で表せば『ロマン』、冬の制服でガードされている寂しさで長袖のシャツが伸び隙間から見える桃源郷は最高。
しかも、ボタンが飛ぶなんて話を聞いてみなさい! あるんですよ? 見えるんですよ?
(それに男と男の約束……果たして見せる!!)
唯一の男ジャックは、制服に袖を通すとカバンの中にカメラがある事を確認する。
盗撮ダメ! 絶対!
(制服を裂いたりボタンを飛ばすだけなら然程有害ではないと思うのです。ですが……)
『迷い猫』柳 燐花(CL2000695) は胸にサラシを巻きながら思う。
「困る人がいる以上放置するわけには……ですね」
身長は低いが、ショートヘアなので男子制服を着た燐花はパッと見ると成長期が遅れた少年だ。
「えぇぇ……古妖さんって……本当に、色々なのが、いるんだね……。と、とにかく……生徒たちの、主に気持ちの面が心配、だよね……」
制服に着替えた『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)は、困惑しながらも生徒達の精神面を心配する。
「実は私!サクミさんの欲する所がちょっと詳しく分からないのですよね! 男の子VS男の子なインモラルバトルが好きって事で良いのか! それとも女の子の胸もそれはそれで好きなのか! それともボタン弾きは単に嫌がらせのみなのか! 気になりますねー! でも! 分かんないです!」
覚醒状態の『雨後雨後ガール』筍 治子(CL2000135)は、『サクミ』がしている行為を「なんのためにしているのか?」の思い付く限りの事を口にする。
分からなくて良い、それは特殊な人達の青春であり見るだけで癒されるモノだ。
「後それより覚醒状態だと27歳の身体になる私が制服着るとコスプレにも程がある事の方が大問題ですね! うわキツッ!!」
と、治子は鏡に映る自分を見て口元を両手で押さえた。
大丈夫! そういうの好きな方も世の中にはいるんです。
「陰陽師として悪い古妖は懲らしめないとね! カマイタチの仲間だろうけど、ぼっちなの? だから色々こじらせたのかな……」
と、唯一普通に心配しているのは『インヤンガールのヤンの方』葛葉・あかり(CL2000714)。
あかりは、サイズが小さくて合わない制服を着ているためアチラコチラの布がキツそうだ。
「はぁ……」
眉をひそめため息を吐くのは『中学生』菊坂 結鹿(CL2000432)。
正直に言うと「古妖お前もか……」という思いで一杯です」
制服姿の仲間を眺めながら呟く。
どうしてボタンを弾くイタズラをするの?
どうしてイケナイ妄想をみせるの?
脳内は疑問だらけ、悟った者が理解出来る趣味の領域だからまだ中学生の結鹿には理解出来ない。
「ネェ……バカナノ……」
結鹿は、大人になっても小学生の様なイタズラを女性にする男を見た様な気持で言う。
●嗚呼、これが腐った世界
そして、覚者達は被害にあっている高校の校門に着いた。
日が傾き、運動部の掛け声等が校外まで響く中は青春真っ最中。
(心の友よ、任せておきなこの俺に)
と、ジャックは友人の顔を浮かべながら隣に居る燐花を見る。
「結構苦しいですねこれ」
燐花は胸に手を当てる。
「いやーん! 何? カップル? かっわいー!」
突如現れたサクミは、ジャックを頭の先から足の先まで舐める様に丸い瞳で見つめる。
「お前がサクミ?」
「おあら~私の事知っているの~?」
と、ジャックの問いに頬を赤らめながらサクミは答える。
「ここから出ていくことはできんか? 皆、困っているんだ」
「『僕』もそう思います。誰かを困らせたりするのは良くないです」
ジャックの後ろに隠れつつも燐花は、少年っぽい声を作りながら頷く。
「うーん、でもね。これが趣味ってヤツで生きがいなのよねぇ……無くなったら死んじゃうのよ」
サクミは2人に背を向けどこか寂し気な表情で空を見上げた。
「で、でもな……」
ジャックが何か言おうとした瞬間、空間が歪み桃色に縁どられた幻が現れる。
『べ、別に、見過ごせないから……助けただんだよっ!』
幻のジャックはそう言うと、幻の燐花に背を向けた。
『で、でも……いつも、助けてくれる理由にはならないよ?』
幻の燐花は幻のジャックの手を取り自分の頬に添える。
『お前……』
『君になら何されても良い……』
『……っ!』
幻のジャックは幻の燐花を抱きしめると、本物のジャックと燐花は両手で顔を覆い頬を赤らめた。
「さっいこう!」
と、満足気にサクミが言うと幻は消えたが、ジャックと燐花の記憶に黒歴史を残して……。
「燐花には、手ェ出すんじゃねえ」
ジャックは声を震わせながら燐花を庇う。
「友情最高っ! それを愛にさせてあげるわっ!」
サクミは大喜びでジャック達の服を切り裂くが、予想外の事が起きてしまった。
「上半身はいい、下半身は有料や」
と、青ざめた表情でジャックが言う中で、サクミはそれよりも燐花の胸が膨らんでいたからだ。
「お、おんなっ……」
ふらり、とよろめくサクミ。
「『僕』、身体は女性ですが、心は男性なんです……」
燐花はバレた時の為に用意しておいて台詞を言う。
「それはそれで……」
クサミさん、鼻血が垂れてますよ。ついでに脳内で物語を紡がないでください。
(うひょー)
半裸の燐花を見て興奮する健全な青少年ジャックは、カメラを取り出し撮ろうとする、が。
(俺だって男だ、誘惑はある。だが燐花という友人たちが大変な事になってる。認めよう下心しかない! けど、俺の中の正義感が……駄目だと言ってるような……)
ジャックはカメラを持つ手を緩めるとガシャと音を立ててカメラは地面に落ちた。
(く、くそ、すまない、友よ)
膝から崩れ落ちるジャック。
「お、お、俺はチキンだああああああああ!!」
と、地面に両手を着きながらジャックは叫んだ。
心から謝罪を込めて友人には届かない叫びを。
「まだまだ、お子様ね」
と、言ってサクミは風のように消えた。
「切裂さん。カメラ落としましたよ?」
燐花は親切心でジャックのカメラを拾う。
「俺から離れるなよ」
そう言ってジャックは自分の上着を燐花に掛けてる。
「あ! 切裂さんのお姿を撮ればいいのですね」
内心お通夜状態のジャックに向かって燐花はカメラのレンズを向ける。
「大丈夫です。カメラに詳しい方のおかげで、多少は腕に自信がありまして」
と、言って燐花の手で無慈悲にシャッターは押される。
「オイ、何撮ってんだ!?」
シャッター音に気付いたジャックは、素早く燐花の手からカメラを取る。
カメラのメモリーを見ると、半裸の自分が写っていた。
こうしてジャックの黒歴史が一枚(物理的にな意味で)増えたのであった。
「むー、この制服、ちょっと胸がキツイデスネ……」
と、リーネは自分の胸元に視線を向ける。
サクミ無しでもボタンが弾けそうな胸元、すれ違う男子生徒達はニヤニヤし鼻の下を伸ばしながらチラチラと胸を見る。
「ム? どうしましたミュエルちゃん?」
リーネは胸に手を当てて落ち込むミュエルの顔を覗き込んだ。
「な、なんでもありません! 被害を食い止めなきゃ、ね……!」
ミュエルは、ぱっと笑顔になり放送室へと向かう。
「ココのようデスネ」
『放送室』と書かれたプレートがドアの上に付いているのを見て、リーネはドアノブに手を掛けるが。
ガッチャン、と重たい感触、2人は顔を見合わせてこれは鍵が掛かっている。
「職員室へ行くしかありませんね……」
「こんな事もあろうかと鍵は借りてタデス」
リーネは『放送室』と書かれた札が付いた鍵をミュエルに見せた。
カチャ、と軽快な音がしドアノブを回すと、ドアは開き部屋の大半は機材で埋まっているやや狭い放送室に入る。
「みんなに向けて話すの、苦手だから……」
ミュエルは機材を眺めるが細かい使い方は分からないが、スイッチ等の下に『チャイム音』等が書かれているシールが貼られていた。
「任されたデス」
リーネはマイクに口を近付け、声色変化で貫禄のある先生の声をイメージしつつ発声練習をする。
「準備は出来ましたよ……」
ミュエルがボタンを押すと『ぴんぽんぱんぽーん』と音が校内に鳴り響く。
『あーあー、校内に古妖が現れたので生徒の皆さんは避難してクダサイ』
貫禄のある声、なのに何処かイントネーションがおかしい放送に生徒達は戸惑いの声を上げる。
「あんな口調の先生いた?」
「うーん、知らないなぁ」
「でも、アノ変なのが来たっぽいね」
と、生徒たちが騒めく中、あかりは生徒達に向かって叫ぶ。
「校門に妖が出たぞー! 離れてくださーい!」
生徒達は、あかりの後ろに現れたサクミを見て顔から血の気が引いていく。
それに気が付き直ぐに纏霧をサクミに纏わせる。
「けしからん、よ!」
弱体されてもサクミは気にしない、気にするのはただ一つ弾けそうなボタンを弾く事。
「させないよっ!」
あかりは拳をサクミに向かって振るが、くるんと小さな体を丸めて頭上に飛び後方に猫の様に着地した。
「わっ!」
気付くと、あかりの制服のボタンが弾け飛んだ。
だが、彼女は制服の下にランニング用のアンダーアウェアを着込んでいるので恥ずかしくはない。
「む、その肉まんワケなさいよ!」
堂々としているあかりを見てサクミは、尻尾をピーンと伸ばし顔を茹でたこの様に赤くしながら胸を指す。
「どうしてそんな悪戯するのかな?」
目線の高さを合わせて話しかけるあかりを見て、サクミは怒りと悲しみが混じり合い丸い瞳から涙が流れる。
「ごめんなさい」
「うわぁぁぁぁん! 貴女は同志じゃないわぁぁぁぁ!」
あかりが謝ると、サクミは運動着の生徒には見向きもせずに走り去った。
「えっと……生徒の皆さんは、校舎内に避難をしてくれるかな?」
困惑するあかりは、部活中の生徒達に指示を出すと皆は直ぐに校舎に向かって駆け出した。
「えっと……服の、ボタン……みんなみたいに、弾けたりしなくて……ラッキーなのか、悲しいのかって感じ……」
目の前でリーネのボタンが弾け飛ぶが、ミュエルは無傷という良いのか悪いのか複雑な気持ちだ。
「やぁ~ん」
ボタンを飛ばされた結鹿は両手で胸元を押さえ、屈むとポケットからピンを取り出し前を閉める。
「キャーン☆」
治子(覚醒姿年齢にじゅーななさい)は、大人向けのゲームの様な可愛くなおかつちょっぴり色っぽい声で言う。
「無傷なのに、心が抉られたような……不思議な悲しみ……なんか……なんだろう、この気持ち……。恥ずかしい思い、しなくて済んだのに……すごく、精神的ダメージを受けた気がする……」
ミュエルは自分の絶壁に手を当て首を傾げる。
「ひんにゅーはステータス!」
そんな思いとは知らずにサクミは、仁王立ちで満足気な表情でサムズアップする。
「許さない……絶対に、許さない……!! アタシの心の傷のぶんだけ、痛めつけてやる……!!」
精神的な意味で止めを刺されたミュエルは、ゆらりとサクミに睨みつけると棘散舞の種を飛ばす。
「ちょ、ちょっと! それ危ないと思うのよ!」
サクミは風を起こして必死に防ごうとする。
「急々如律令! 雷雲よ、あの者に罰を与えたまえ!」
背後からあかりの召雷が放たれ、サクミの体に雷が落ちる。
「あばばばば! こんな事するなら、もう一つの世界にごあんなーい」
と、サクミがくるりと回る。
周囲に居る覚者の視界が歪み幻のあかりとミュエルが見えた。
『あかりさん、あの……その……』
幻のミュエルは頬を赤らめ、両手で持っている手紙を指先でふにふにと弄りながらチラチラと幻のあかりを見る。
『どうしたのかな? 明石様』
『す、好きです……』
と、言って幻のミュエルは手紙を幻のあかりに差し出す。
『ふふ、こんな素敵なお姉さんに告白されるとは思わなかったよ』
不敵な笑みを浮かべ幻のあかりは、幻のミュエルからの手紙に手を伸ばすが、通り過ぎて手首を掴み引き寄せる。
『あ、あの……』
『ボクは、それをまっていたんだ』
と、言って幻のあかりは幻のミュエルの髪に口付ける。
『知らないあかりさんを……教えてくれるよね……?』
幻のミュエルは頬を赤らめ、上目遣いで幻のあかりを見つめる。
(あれは幻……あれは幻……あぁ、姉様)
そんな幻を打ち消すかのようにあかりは、脳内で大好きな姉を思い浮かべて回避する。
「ひやぁぁ~。こういうのを中学生に見せちゃいけないんですぅ」
結鹿は両手で顔を覆うが、指の隙間からばっちり幻を見ていた。
(いまのうち!)
覚者達が幻に気を取られている間にサクミは、音を立てないようにその場から逃げた。
「……え、これで終わりです?」
幻から直ぐに開放された治子は、逃げていくサクミの後を気付かれないように追いかけた。
「いた!」
『紅戀』酒々井 数多(CL2000149) が木陰に隠れているサクミに駆け寄った。
「なによっ!」
不機嫌な顔でサクミは数多の制服のボタンを弾く、が。
「水着だからはずかしくないもん!」
と、笑顔で言ってポーズを取る数多は、平手飛燕でサクミの頬をパシパシッと往復ビンタの様に叩く。
「さっちゃんのばかぁああああああああああ!!」
頬を叩かれたサクミは両前足で頬に手を当て項垂れた。。
「ねえ、ねえ!! あなたすごい力をもってるのよ? 空想を創造する! 天才的な力! それこそが数々の作家が夢見たドリームワールド! でもね、さっちゃん、それ妄想ですませていいの? ノンケが嫌がるのを見るのも楽しい、けど本質はそこじゃない。俺はホモじゃねえ、でも嫌がりながらもその気もなくはないという葛藤!」
数多の熱い言葉にサクミはハッとした表情で顔を上げる。
「そう! そこなのよ! 『俺はノンケなのに……何でアイツが気になるんだよ!』そんな展開よ!」
「流石、さっちゃん!」
2人はガシッと手を握り熱い抱擁を交わした。
「いい? 私には恋鎖といって、その気にさせちゃうスキルがあるの」
「そ、そんなモノが!」
数多の話を聞いてサクミは両前足で口元を押さえる。
「私が貴方にこのスキルを伝授してあげる。貴方の妄想が形になるわ! 貴方の「嗚呼、妄想」と「恋鎖」で新しいスキルがつくれると思わない? こんな親和性のあるスキルなんて絶対ないわ!」
「中途半端! 中途半端ですよサクミさん! もっとセクハラとかするべきですよ!! まだまだいけますって! 頑張りましょうよ!! 私応援します!」
そんな2人の間に治子が現れ何故か応援をする。
「やってみるわ!」
数多の話に乗ったサクミは、通りすがりの男子生徒に『嗚呼、妄想』で幻を展開する。
そして、数多が恋鎖を発動させた。
「うわっ! 何、すっげー気持ち悪い!」
「うん……女の子とかが良かったわ……」
とても嫌そうな表情で男子生徒は顔を見合わせて言う。
「あぁ、それでも最高っ!」
捗って幸せ、そんな表情でサクミは男子生徒に敬礼をする。
「似たようなスキルだからラーニング出来ないわ……」
と、言って数多は肩を落とす。
●めでたしめでたし?
「本当にこういう事件が多くて困ります……わたし、そういう担当じゃないんです……」
色んな意味で疲れた結鹿は肩で息をしている。
「無事終えマシタ…ネ……エ!?」
サクミを説得成功した話を聞いてリーネは安堵のため息を吐く、が。
全員集合しているのでモチロン、唯一の男性が居るわけで……。
「ワー! コッチ見ちゃ駄目デース!! エッチ! エッチデース!!」
「ちょっ、オイ!」
リーネのB.O.T.がジャックに放たれた。
「無罪……だ」
地面に倒れ、色んな姿の女性に囲まれたジャックはさぞかし幸せであろう。
「切裂さん……見た……よね……? 色々、見た……よね……?」
此処には無慈悲な女性しか居ないのか? とジャックは思いながら、ミュエルの酷い言葉で胸が痛む。
数多と仲良くなったサクミ。
「さっちゃん! 貴方と私は同志よ! 世界を塗り替えにいきましょう」
「そうね! 数多!」
と、意気投合する2人。
「妄想は自由ですが、服に悪戯は駄目ですよ?」
と、燐花が2人にクギを刺す。
「服は人類が生み出した文化の極致! 裸体という素材に様々な属性を与える必要不可欠のスパイスにしてトッピングだよ。服という要素は大量の情報を内包し、その人物の印象に大きな影響を与える。制服をただ脱がすだけでなく、もっと広い世の中に存在する魅力的な服を理解しそして妄想を高め、他者を巻きまずとも完結する世界を構築すべきだよ!」
あかりの力強い主張にサクミも「それはそれで萌える、かも」とごくりと生唾を飲んだ。
説明を聞き終えた覚者達は、互いの胸を見合っている者や『サクミ』に対して興味を持っている者もいた。
「オ、オォ? 男の子を脱がせて、女の子の服のボタンを飛ばす古妖デスカ? 何故そんな事をスルノカ解りマセンネ……好きな人のなら当然ソノ……見たいデスケド……何故無差別ナノデショウ?」
その豊満な胸という名の凶器を持つ女性『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)が疑問を口にした。
それを言ってはイケナイ! 全国の半裸フェチ方や、ただボタンを弾かせてニヤニヤする方が熱く語り始める処だ。
「デモ! トニカク止めないとデスネ!」
と、意気込むとリーネの胸が揺れた。
(女性にイタズラをする古妖。ぜひお友達になりたい)
と、『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)は思った。
一言で表せば『ロマン』、冬の制服でガードされている寂しさで長袖のシャツが伸び隙間から見える桃源郷は最高。
しかも、ボタンが飛ぶなんて話を聞いてみなさい! あるんですよ? 見えるんですよ?
(それに男と男の約束……果たして見せる!!)
唯一の男ジャックは、制服に袖を通すとカバンの中にカメラがある事を確認する。
盗撮ダメ! 絶対!
(制服を裂いたりボタンを飛ばすだけなら然程有害ではないと思うのです。ですが……)
『迷い猫』柳 燐花(CL2000695) は胸にサラシを巻きながら思う。
「困る人がいる以上放置するわけには……ですね」
身長は低いが、ショートヘアなので男子制服を着た燐花はパッと見ると成長期が遅れた少年だ。
「えぇぇ……古妖さんって……本当に、色々なのが、いるんだね……。と、とにかく……生徒たちの、主に気持ちの面が心配、だよね……」
制服に着替えた『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)は、困惑しながらも生徒達の精神面を心配する。
「実は私!サクミさんの欲する所がちょっと詳しく分からないのですよね! 男の子VS男の子なインモラルバトルが好きって事で良いのか! それとも女の子の胸もそれはそれで好きなのか! それともボタン弾きは単に嫌がらせのみなのか! 気になりますねー! でも! 分かんないです!」
覚醒状態の『雨後雨後ガール』筍 治子(CL2000135)は、『サクミ』がしている行為を「なんのためにしているのか?」の思い付く限りの事を口にする。
分からなくて良い、それは特殊な人達の青春であり見るだけで癒されるモノだ。
「後それより覚醒状態だと27歳の身体になる私が制服着るとコスプレにも程がある事の方が大問題ですね! うわキツッ!!」
と、治子は鏡に映る自分を見て口元を両手で押さえた。
大丈夫! そういうの好きな方も世の中にはいるんです。
「陰陽師として悪い古妖は懲らしめないとね! カマイタチの仲間だろうけど、ぼっちなの? だから色々こじらせたのかな……」
と、唯一普通に心配しているのは『インヤンガールのヤンの方』葛葉・あかり(CL2000714)。
あかりは、サイズが小さくて合わない制服を着ているためアチラコチラの布がキツそうだ。
「はぁ……」
眉をひそめため息を吐くのは『中学生』菊坂 結鹿(CL2000432)。
正直に言うと「古妖お前もか……」という思いで一杯です」
制服姿の仲間を眺めながら呟く。
どうしてボタンを弾くイタズラをするの?
どうしてイケナイ妄想をみせるの?
脳内は疑問だらけ、悟った者が理解出来る趣味の領域だからまだ中学生の結鹿には理解出来ない。
「ネェ……バカナノ……」
結鹿は、大人になっても小学生の様なイタズラを女性にする男を見た様な気持で言う。
●嗚呼、これが腐った世界
そして、覚者達は被害にあっている高校の校門に着いた。
日が傾き、運動部の掛け声等が校外まで響く中は青春真っ最中。
(心の友よ、任せておきなこの俺に)
と、ジャックは友人の顔を浮かべながら隣に居る燐花を見る。
「結構苦しいですねこれ」
燐花は胸に手を当てる。
「いやーん! 何? カップル? かっわいー!」
突如現れたサクミは、ジャックを頭の先から足の先まで舐める様に丸い瞳で見つめる。
「お前がサクミ?」
「おあら~私の事知っているの~?」
と、ジャックの問いに頬を赤らめながらサクミは答える。
「ここから出ていくことはできんか? 皆、困っているんだ」
「『僕』もそう思います。誰かを困らせたりするのは良くないです」
ジャックの後ろに隠れつつも燐花は、少年っぽい声を作りながら頷く。
「うーん、でもね。これが趣味ってヤツで生きがいなのよねぇ……無くなったら死んじゃうのよ」
サクミは2人に背を向けどこか寂し気な表情で空を見上げた。
「で、でもな……」
ジャックが何か言おうとした瞬間、空間が歪み桃色に縁どられた幻が現れる。
『べ、別に、見過ごせないから……助けただんだよっ!』
幻のジャックはそう言うと、幻の燐花に背を向けた。
『で、でも……いつも、助けてくれる理由にはならないよ?』
幻の燐花は幻のジャックの手を取り自分の頬に添える。
『お前……』
『君になら何されても良い……』
『……っ!』
幻のジャックは幻の燐花を抱きしめると、本物のジャックと燐花は両手で顔を覆い頬を赤らめた。
「さっいこう!」
と、満足気にサクミが言うと幻は消えたが、ジャックと燐花の記憶に黒歴史を残して……。
「燐花には、手ェ出すんじゃねえ」
ジャックは声を震わせながら燐花を庇う。
「友情最高っ! それを愛にさせてあげるわっ!」
サクミは大喜びでジャック達の服を切り裂くが、予想外の事が起きてしまった。
「上半身はいい、下半身は有料や」
と、青ざめた表情でジャックが言う中で、サクミはそれよりも燐花の胸が膨らんでいたからだ。
「お、おんなっ……」
ふらり、とよろめくサクミ。
「『僕』、身体は女性ですが、心は男性なんです……」
燐花はバレた時の為に用意しておいて台詞を言う。
「それはそれで……」
クサミさん、鼻血が垂れてますよ。ついでに脳内で物語を紡がないでください。
(うひょー)
半裸の燐花を見て興奮する健全な青少年ジャックは、カメラを取り出し撮ろうとする、が。
(俺だって男だ、誘惑はある。だが燐花という友人たちが大変な事になってる。認めよう下心しかない! けど、俺の中の正義感が……駄目だと言ってるような……)
ジャックはカメラを持つ手を緩めるとガシャと音を立ててカメラは地面に落ちた。
(く、くそ、すまない、友よ)
膝から崩れ落ちるジャック。
「お、お、俺はチキンだああああああああ!!」
と、地面に両手を着きながらジャックは叫んだ。
心から謝罪を込めて友人には届かない叫びを。
「まだまだ、お子様ね」
と、言ってサクミは風のように消えた。
「切裂さん。カメラ落としましたよ?」
燐花は親切心でジャックのカメラを拾う。
「俺から離れるなよ」
そう言ってジャックは自分の上着を燐花に掛けてる。
「あ! 切裂さんのお姿を撮ればいいのですね」
内心お通夜状態のジャックに向かって燐花はカメラのレンズを向ける。
「大丈夫です。カメラに詳しい方のおかげで、多少は腕に自信がありまして」
と、言って燐花の手で無慈悲にシャッターは押される。
「オイ、何撮ってんだ!?」
シャッター音に気付いたジャックは、素早く燐花の手からカメラを取る。
カメラのメモリーを見ると、半裸の自分が写っていた。
こうしてジャックの黒歴史が一枚(物理的にな意味で)増えたのであった。
「むー、この制服、ちょっと胸がキツイデスネ……」
と、リーネは自分の胸元に視線を向ける。
サクミ無しでもボタンが弾けそうな胸元、すれ違う男子生徒達はニヤニヤし鼻の下を伸ばしながらチラチラと胸を見る。
「ム? どうしましたミュエルちゃん?」
リーネは胸に手を当てて落ち込むミュエルの顔を覗き込んだ。
「な、なんでもありません! 被害を食い止めなきゃ、ね……!」
ミュエルは、ぱっと笑顔になり放送室へと向かう。
「ココのようデスネ」
『放送室』と書かれたプレートがドアの上に付いているのを見て、リーネはドアノブに手を掛けるが。
ガッチャン、と重たい感触、2人は顔を見合わせてこれは鍵が掛かっている。
「職員室へ行くしかありませんね……」
「こんな事もあろうかと鍵は借りてタデス」
リーネは『放送室』と書かれた札が付いた鍵をミュエルに見せた。
カチャ、と軽快な音がしドアノブを回すと、ドアは開き部屋の大半は機材で埋まっているやや狭い放送室に入る。
「みんなに向けて話すの、苦手だから……」
ミュエルは機材を眺めるが細かい使い方は分からないが、スイッチ等の下に『チャイム音』等が書かれているシールが貼られていた。
「任されたデス」
リーネはマイクに口を近付け、声色変化で貫禄のある先生の声をイメージしつつ発声練習をする。
「準備は出来ましたよ……」
ミュエルがボタンを押すと『ぴんぽんぱんぽーん』と音が校内に鳴り響く。
『あーあー、校内に古妖が現れたので生徒の皆さんは避難してクダサイ』
貫禄のある声、なのに何処かイントネーションがおかしい放送に生徒達は戸惑いの声を上げる。
「あんな口調の先生いた?」
「うーん、知らないなぁ」
「でも、アノ変なのが来たっぽいね」
と、生徒たちが騒めく中、あかりは生徒達に向かって叫ぶ。
「校門に妖が出たぞー! 離れてくださーい!」
生徒達は、あかりの後ろに現れたサクミを見て顔から血の気が引いていく。
それに気が付き直ぐに纏霧をサクミに纏わせる。
「けしからん、よ!」
弱体されてもサクミは気にしない、気にするのはただ一つ弾けそうなボタンを弾く事。
「させないよっ!」
あかりは拳をサクミに向かって振るが、くるんと小さな体を丸めて頭上に飛び後方に猫の様に着地した。
「わっ!」
気付くと、あかりの制服のボタンが弾け飛んだ。
だが、彼女は制服の下にランニング用のアンダーアウェアを着込んでいるので恥ずかしくはない。
「む、その肉まんワケなさいよ!」
堂々としているあかりを見てサクミは、尻尾をピーンと伸ばし顔を茹でたこの様に赤くしながら胸を指す。
「どうしてそんな悪戯するのかな?」
目線の高さを合わせて話しかけるあかりを見て、サクミは怒りと悲しみが混じり合い丸い瞳から涙が流れる。
「ごめんなさい」
「うわぁぁぁぁん! 貴女は同志じゃないわぁぁぁぁ!」
あかりが謝ると、サクミは運動着の生徒には見向きもせずに走り去った。
「えっと……生徒の皆さんは、校舎内に避難をしてくれるかな?」
困惑するあかりは、部活中の生徒達に指示を出すと皆は直ぐに校舎に向かって駆け出した。
「えっと……服の、ボタン……みんなみたいに、弾けたりしなくて……ラッキーなのか、悲しいのかって感じ……」
目の前でリーネのボタンが弾け飛ぶが、ミュエルは無傷という良いのか悪いのか複雑な気持ちだ。
「やぁ~ん」
ボタンを飛ばされた結鹿は両手で胸元を押さえ、屈むとポケットからピンを取り出し前を閉める。
「キャーン☆」
治子(覚醒姿年齢にじゅーななさい)は、大人向けのゲームの様な可愛くなおかつちょっぴり色っぽい声で言う。
「無傷なのに、心が抉られたような……不思議な悲しみ……なんか……なんだろう、この気持ち……。恥ずかしい思い、しなくて済んだのに……すごく、精神的ダメージを受けた気がする……」
ミュエルは自分の絶壁に手を当て首を傾げる。
「ひんにゅーはステータス!」
そんな思いとは知らずにサクミは、仁王立ちで満足気な表情でサムズアップする。
「許さない……絶対に、許さない……!! アタシの心の傷のぶんだけ、痛めつけてやる……!!」
精神的な意味で止めを刺されたミュエルは、ゆらりとサクミに睨みつけると棘散舞の種を飛ばす。
「ちょ、ちょっと! それ危ないと思うのよ!」
サクミは風を起こして必死に防ごうとする。
「急々如律令! 雷雲よ、あの者に罰を与えたまえ!」
背後からあかりの召雷が放たれ、サクミの体に雷が落ちる。
「あばばばば! こんな事するなら、もう一つの世界にごあんなーい」
と、サクミがくるりと回る。
周囲に居る覚者の視界が歪み幻のあかりとミュエルが見えた。
『あかりさん、あの……その……』
幻のミュエルは頬を赤らめ、両手で持っている手紙を指先でふにふにと弄りながらチラチラと幻のあかりを見る。
『どうしたのかな? 明石様』
『す、好きです……』
と、言って幻のミュエルは手紙を幻のあかりに差し出す。
『ふふ、こんな素敵なお姉さんに告白されるとは思わなかったよ』
不敵な笑みを浮かべ幻のあかりは、幻のミュエルからの手紙に手を伸ばすが、通り過ぎて手首を掴み引き寄せる。
『あ、あの……』
『ボクは、それをまっていたんだ』
と、言って幻のあかりは幻のミュエルの髪に口付ける。
『知らないあかりさんを……教えてくれるよね……?』
幻のミュエルは頬を赤らめ、上目遣いで幻のあかりを見つめる。
(あれは幻……あれは幻……あぁ、姉様)
そんな幻を打ち消すかのようにあかりは、脳内で大好きな姉を思い浮かべて回避する。
「ひやぁぁ~。こういうのを中学生に見せちゃいけないんですぅ」
結鹿は両手で顔を覆うが、指の隙間からばっちり幻を見ていた。
(いまのうち!)
覚者達が幻に気を取られている間にサクミは、音を立てないようにその場から逃げた。
「……え、これで終わりです?」
幻から直ぐに開放された治子は、逃げていくサクミの後を気付かれないように追いかけた。
「いた!」
『紅戀』酒々井 数多(CL2000149) が木陰に隠れているサクミに駆け寄った。
「なによっ!」
不機嫌な顔でサクミは数多の制服のボタンを弾く、が。
「水着だからはずかしくないもん!」
と、笑顔で言ってポーズを取る数多は、平手飛燕でサクミの頬をパシパシッと往復ビンタの様に叩く。
「さっちゃんのばかぁああああああああああ!!」
頬を叩かれたサクミは両前足で頬に手を当て項垂れた。。
「ねえ、ねえ!! あなたすごい力をもってるのよ? 空想を創造する! 天才的な力! それこそが数々の作家が夢見たドリームワールド! でもね、さっちゃん、それ妄想ですませていいの? ノンケが嫌がるのを見るのも楽しい、けど本質はそこじゃない。俺はホモじゃねえ、でも嫌がりながらもその気もなくはないという葛藤!」
数多の熱い言葉にサクミはハッとした表情で顔を上げる。
「そう! そこなのよ! 『俺はノンケなのに……何でアイツが気になるんだよ!』そんな展開よ!」
「流石、さっちゃん!」
2人はガシッと手を握り熱い抱擁を交わした。
「いい? 私には恋鎖といって、その気にさせちゃうスキルがあるの」
「そ、そんなモノが!」
数多の話を聞いてサクミは両前足で口元を押さえる。
「私が貴方にこのスキルを伝授してあげる。貴方の妄想が形になるわ! 貴方の「嗚呼、妄想」と「恋鎖」で新しいスキルがつくれると思わない? こんな親和性のあるスキルなんて絶対ないわ!」
「中途半端! 中途半端ですよサクミさん! もっとセクハラとかするべきですよ!! まだまだいけますって! 頑張りましょうよ!! 私応援します!」
そんな2人の間に治子が現れ何故か応援をする。
「やってみるわ!」
数多の話に乗ったサクミは、通りすがりの男子生徒に『嗚呼、妄想』で幻を展開する。
そして、数多が恋鎖を発動させた。
「うわっ! 何、すっげー気持ち悪い!」
「うん……女の子とかが良かったわ……」
とても嫌そうな表情で男子生徒は顔を見合わせて言う。
「あぁ、それでも最高っ!」
捗って幸せ、そんな表情でサクミは男子生徒に敬礼をする。
「似たようなスキルだからラーニング出来ないわ……」
と、言って数多は肩を落とす。
●めでたしめでたし?
「本当にこういう事件が多くて困ります……わたし、そういう担当じゃないんです……」
色んな意味で疲れた結鹿は肩で息をしている。
「無事終えマシタ…ネ……エ!?」
サクミを説得成功した話を聞いてリーネは安堵のため息を吐く、が。
全員集合しているのでモチロン、唯一の男性が居るわけで……。
「ワー! コッチ見ちゃ駄目デース!! エッチ! エッチデース!!」
「ちょっ、オイ!」
リーネのB.O.T.がジャックに放たれた。
「無罪……だ」
地面に倒れ、色んな姿の女性に囲まれたジャックはさぞかし幸せであろう。
「切裂さん……見た……よね……? 色々、見た……よね……?」
此処には無慈悲な女性しか居ないのか? とジャックは思いながら、ミュエルの酷い言葉で胸が痛む。
数多と仲良くなったサクミ。
「さっちゃん! 貴方と私は同志よ! 世界を塗り替えにいきましょう」
「そうね! 数多!」
と、意気投合する2人。
「妄想は自由ですが、服に悪戯は駄目ですよ?」
と、燐花が2人にクギを刺す。
「服は人類が生み出した文化の極致! 裸体という素材に様々な属性を与える必要不可欠のスパイスにしてトッピングだよ。服という要素は大量の情報を内包し、その人物の印象に大きな影響を与える。制服をただ脱がすだけでなく、もっと広い世の中に存在する魅力的な服を理解しそして妄想を高め、他者を巻きまずとも完結する世界を構築すべきだよ!」
あかりの力強い主張にサクミも「それはそれで萌える、かも」とごくりと生唾を飲んだ。

■あとがき■
2本目のシナリオに参加していただきありがとうございます。
1本目がシリアスに対しこちらはコミカルにしましたが、如何だったでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。
1本目がシリアスに対しこちらはコミカルにしましたが、如何だったでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。
