【地下闘技】それぞれのステージへ
●
少女限定ステゴロバトルを開催するバトルアリーナ。
犯罪組織を検挙すべく計画された最高のパフォーマンスバトル。
チームの名を上げるために繰り広げられる熾烈なチームバトル。
そして、VIPの集まる試合へ勝ち上がるために行なわれる個人戦。
それぞれの切符を手にしたファイターたちには、次なる舞台が開かれていた。
「勿論参加するかどうかはお前が決めてくれ。ホントはこんな危険なことに女子供を巻き込みたくはねえが……俺はあんたに託すしかない。だから、決めるのはあんただ」
少女限定ステゴロバトルを開催するバトルアリーナ。
犯罪組織を検挙すべく計画された最高のパフォーマンスバトル。
チームの名を上げるために繰り広げられる熾烈なチームバトル。
そして、VIPの集まる試合へ勝ち上がるために行なわれる個人戦。
それぞれの切符を手にしたファイターたちには、次なる舞台が開かれていた。
「勿論参加するかどうかはお前が決めてくれ。ホントはこんな危険なことに女子供を巻き込みたくはねえが……俺はあんたに託すしかない。だから、決めるのはあんただ」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.勝利条件のうち2つ以上を達成する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
以下の四試合のうち、勝利条件を2つ以上達成すれば成功判定となります。
仮に失敗判定になってもシリーズは続くので、スコアアタックのつもりでお考えください。
・『アリーナ』でのバトルに勝利する
少女限定ステゴロバトル。二人分の枠が用意され、それぞれの個人戦が行なわれます。
その試合に一回でも勝利すればクリアとなります。
・チームバトルに勝利する
チーム対チームの集団戦が行なわれます。人数は少ない方に合わせますが、今現在3対3を想定しています。これに勝利すればクリアとなります。
・ショーバトルで長時間引きつける
闘技場では勝敗とは関係ないパフォーマンス枠が存在します。
このPC対PCで個人戦をして、観客全員を引きつけるような演出をし続けてください。最低でも一分(6ターン)引きつけることができればクリアとなります。
・個人戦に勝利しよう
闘技場のスタンダード。個人戦で勝ち上がります。まずは最初の敵に勝つところからです。勝利すればクリアとなります。
●メンバーの配置について
シリーズシナリオには優先参加枠がありますが、同じメンバーが枠マックスまでそろうとは限りません。
そのため、どの試合に誰がでても一応はOKとします。
しかし前回の段階でユェンが適正をみて勧誘しているので、その通りに配置するのがベターでしょう。
【各試合の補足】
●アリーナバトル
少女限定のステゴロバトルです。
参加者は少女限定(女装OK)。武装は素手ですが、システム的には装備したままで構いませんし、補助数値を乗せたまま『武器をあえて持たずに戦う』というスタイルをみなとっています。
形式は一対一の個人戦。NPCと対戦します。
選手を長く使う目的で命数復活のコールは無効となります。
参加した場合の相手選手は以下の二人が候補に挙がっています。
・第一試合
長拳使いのエリモ。
リーチの長いパンチやキックで相手を牽制しつづけるバトルスタイル。
パワーもかなりのもの。
・第二試合
アメリカン空手のキャノピー
海外伝播の過程で派手な動きが多くなった空手で戦います。
飛び跳ねたり回ったりポーズしたりといった動作が多く、そのくせ破壊力は高い。
●チームバトル
チームVSチームの集団戦を行ないます。
命数復活アリ。攻撃手段はなんでもアリ。最悪死んでもいいという狂ったバトルルールです。相手を全員戦闘不能にするか降参させるかで勝利となります。
相手チームはインラインスケートとホッケースティックを武器にしたカラーギャング『ブルースター』。
連携攻撃と高速機動を得意とし、気力を弾にして放つ体術がウリです。
●パフォーマンスバトル
PC対PCの個人戦です。勝敗よりも見栄えが重視されます。
観客が釘付けになるような演出を立て続けに行ない、60秒以上もたせましょう。
途中で観客が飽きてしまったり、がっかりしてしまうと失敗してしまうおそれがあります。
●個人戦
勝てば賞金か昇格を選べる個人戦です。
なんでもあり。命数復活アリ。最悪死亡もアリ。降参すればリタイア。
・第一試合
ジャグラーのJナイフ。
ナイフによるジャグリングで隙の無いバトルを行ないます。
投げナイフや無限ナイフサークルなどトリッキーな技が多いですが、堅実にさばき続ければ必ず隙が生まれるでしょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年11月04日
2016年11月04日
■メイン参加者 8人■

●
歓声が響くステージ。
賭けバトルの合間に開かれるこのステージは観客を喜ばせるために存在しているショーだ。
参加者には等しくギャランティーが入る代わりに、ウケが悪いと見なされたら即座に下ろされる。生き残りを賭けるという意味では、他のバトルと何も変わらない。
舞い散る火花をかき分けて現われるは岩倉・盾護(CL2000549)。
背後の電光掲示板に『お前を八つ裂きにしてやる』と表示された。
盾護の注文と違うが、これもステージというもの。
日頃あまり使わない巨大な処刑斧を軽々と持ち上げては振り回してみせる。
対するは『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)。
艶やかな和服を幾重にか纏った嫌に動きづらそうな衣装をまとい、キャットウォークでステージへと上がってくる。
「はぁい、みんなの輪廻さんよん! よろしくねん♪」
右へ左へ投げキスのアピール。
観客たちは独特の笑い声を上げた。
客席から様子を見ていたユェンが頷いた。
「この時点で、客はこれから何が起こるか予想がつく。期待をする。期待と予想にどう応えるか気になって注目する。いいぞ……お前たちは最高のエンターテイナーだ」
輪廻が抜いたのはいわゆる護刀。全長が短く、綺麗な飾りつけがふんだんにされたいわゆる美術品だ。
しかも、組紐で固定された鞘を抜くこと無く、ちらちらと盾護に向けて翳している。
「どうしたのん? かかってきていいのよん♪」
あからさまな挑発行為に、盾護は斧を横一文字にスイング。
人影が腰の部分で真っ二つに切り裂かれる――と思いきや、輪廻は宙返りをかけて盾護の頭上を飛び越えていた。斬られたのは彼女の上着だ。
振り向いて、今度は上段から斧を振り下ろす盾護。
輪廻の胸元を切り裂いていく――と思いきや、紙一重で避けていた輪廻の服だけがスパンと斬れて落ちていく。
あまりの神業、そして流れるような露出、そしてなにより輪廻の艶やかで美しい肌色に観客が沸いた。
「上々だ。行け」
「あいよ」
客席からそっとフィーが立った頃、輪廻は下着姿のまま舞い踊っていた。
縦横無尽に振り回す盾護の斧を、まるでポールダンスのように搦めてはかわしていく。
これまで大胆に服が切り裂かれていたのを目の当たりにした客たちは『次』を期待して盾護の斧に集中してしまうが、その上で見せられる輪廻の軽やかな舞いについ見とれてしまう。そんな状況が暫く続いた。
だがそれも永遠ではない。興奮は熱とおなじで冷めるものだ。
だから、ほどよく冷めた頃合いを見計らって輪廻はブラのホックに指をかけた。
「皆おまちかね、サービスタイムに、ハンデタイムよん♪」
ピンと指を弾くと、ブラのホックが金具ごと外れて客席へと飛んでいった。
しかし肝心な部分を見せること無く、片手で胸をかくして観客にアピールする輪廻。
裏切られた予想と応えられた期待。この二つが合わさった時、観客は沸く。熱の波が一度下がったその時だからこそ、巨大な津波となって彼らを飲み込んだ。
ここからが肝心だ。
輪廻はウィンク。
盾護はわざと獣のようにうなりをあげ、輪廻めがけて突撃した。
それまで新体操の如く飛び回っていた彼女とて、刀と胸で両手がふさがってはまともに避けられない。
迎え撃つしか無いが、彼女の手元にあるのはただの美術品だ。
美女を痛めつけて終わる安っぽいパターンかも。観客の一部がそう思った。
その時である。
組紐を口でくわえ、解く。
むき出しになった刀身は液体のように揺らめき、伸び、しなり、鞭のごとく盾護を打ち払った。
突撃の勢いを殺され、転倒しかかる盾護。
それを、輪廻はそれこそ新体操のリボン競技さながらに流体刀を振り回し、盾護にぐるぐると巻き付けた。
ぐるぐる巻きになって転倒した盾護を、素足でやんわりと踏みつける輪廻。
電光掲示板に、『降参だ』の文字が表示された。
観客が立ち上がって拍手をした。
まるで永遠のように、拍手は続いた。
ステージを下り、控え室へと入る輪廻。
そこではフィーが足を組んで座っていた。手にはブリーフケースがひとつ。
「仕事チョー楽だった。アンタ最高」
「ありがとねん♪ でも、盾護ちゃんの協力があってのことよん。あと――コレ」
護刀を鞘に収め、フィーに投げる。
フィーはそれをキャッチしてくるりと回すと、再び輪廻に投げ返した。
「あげる。チップ代わり。アンタのショー見てマジで濡れちゃった」
舌なめずりするフィーに、輪廻は苦笑に似た笑みを浮かべた。
●
歓声が響くステージ。
戦う技能だけでのし上がる、ここは獣のステージ。
武器あり術式あり殺しありの違法きわまりないこの空間は、戦場の中にぽつんと生まれるあの空気に似ていた。
修羅。
修羅になれる、あの場所だ。
『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)はいつもの巫女装束で、どこからともなく抜き身の刀を二振、同時に取り出した。
煌々トライがおりる。
相手はJナイフ。サングラスにステージ衣装のかわった男だ。
果物ナイフでお手玉をして、まるで遊んでいるかのようだ。
だが、油断はできない。『この場』に上がって、『自分』にぶつけられた選手だ。
楽勝など、させてはくれまい。これはそういうステージなのだから。
「参ります」
ゴングと共に術式を発動。
刀にエネルギーフィールドをはり、飛んできた真っ白なナイフを打ち返す。
が、ナイフに隠れるように二本のナイフが祇澄の胸や腹に突き刺さった。
真っ黒なナイフだ。
聞いたことがある。影手裏剣というクナイ術だ。一発目を囮にして二発三発のクナイを打ち込むという。
最悪刃に毒が塗られていると考えるべきだろう。
Jナイフは指に挟んだ無数のナイフを明後日の方向に投げた。
まさか鉄格子に反射させるつもりでは。一歩間違えば観客席に――と思ったその瞬間、全てのナイフが軌道を変えて祇澄へと迫る。
その場から走りながら次なる術式を発動。巫女装束を石の鱗で埋めていく。
ナイフが次々と刺さる。致命傷は逃れたが、さすがにつらい。
懐から取り出した瓶を封切りすると、それを肩から浴びる。傷口が溶けるように修復されていった。
それを見て舌打ちする様子を見せるJナイフ。どうやら祇澄は彼にとって相性が悪いようだ。
なら、その隙をつくまで。
「意外と、やりますね。でも――!」
開幕二発で分かった。Jナイフはナイフ投げによって相手を幻惑し致命傷をつくという、いわゆるクリティカル特化型のファイターだ。
恐れて引いたり、闇雲に暴れたりすればひっくり返される。
しかし必ずできる隙を狙えば。
慌ててナイフを投擲してくる。
投擲直後――を狙うのは素人だ。誰だってそう思う。相手だって分かってる。
だから本当の隙は……。
「チイッ!」
あえて刀で防御しようとした祇澄を見て、ナイフの軌道を変化。こっそり別の所に刺していたナイフをワイヤーで引き戻して祇澄の背後を狙う。
背中に突き刺さるナイフ。
だがその瞬間が、最大の隙だ。
ネタを使えば、次のネタまでラグがある。
「そこです!」
ダメージに屈することなく突撃。
すれ違いざまに切りつけ、反転して更に切りつけ、もう一回転してふた振り同時に切りつけた。
「がはっ!?」
Jナイフは血を吹き上げ、ステージをバウンドしながら転がっていく。
戦闘不能。それを確認したレフリーが、祇澄の勝利を宣言した。
「まだ、一戦目。このまま、上へ、上へ……」
●
『使命を持った少年』御白 小唄(CL2001173)と葦原 赤貴(CL2001019)は控え室のベンチに座っていた。
向かいでは今回から加わった『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)が鼻歌交じりに刀の手入れをしている。
「より強いチームだと表明できる」
「今回はみんなと一緒に戦えるから、僕は楽しみです!」
赤貴と小唄の視線が数多に注がれるが、数多は小首を傾げて言った。
「死ぬ? いいじゃない、やっちゃいましょ」
「あんたらが味方でよかったよ」
ユェンは苦笑して、扉に手をかけた。
「さあ、ショータイムだ。ぶち殺してこい」
スポットライトに照らされて、数多がアイドルオーラ全開でステージイン。
「チーム『INVERSE』! 櫻火真陰流美少女ファイター酒々井数多。全員まとめて散華なさい! ブルスコーだっけ? ふぁーびーの泣き声みたいなチーム名ね!」
早速の挑発に、ブルースターの一人が歩み出た。
「あんだと? てめぇらこそ……なんて言ったらいいんだろアニキ」
「ホップ、馬鹿なこと言ってんじゃねえ!」
中央の男が、先の男のヘルメットをホッケースティックで殴りつけた。
奥の大柄な男がジェスチャーを交えて語り出す。
「えっと、ハンバーガーみたいな名前だって言いたいんじゃないかな」
「カール、余計なこと言ってんじゃねえ!」
大柄な男も殴りつけると、中央の男は中指を立てた。
「ファッキンビッチだこの野郎。ぶち殺してやる」
「こっちもそのつもりだ。いいな、小唄。火力を集中、一人ずつ落とす」
「うん、はい……!」
今回は三人全員がアタッカーだ。相手の連携に対応できるか否かが鍵になる。
『それでは試合――スタート!』
ゴングの音と当時にブルースターは全く別々の方向へと走り出した。
インラインスケートをまるで肉体の一部のように扱っている。よく見れば覚醒部位の一部だった。
「まとめて落とせるなら、その方が早い」
妖刀を振りかざすと、渾身の烈空波を放った。
三人ひと薙ぎ――かと思いきや、当たったのは一人だけ。大柄なカールだ。図太くカスタマイズされたスティックでガードしてそのまま突っ込んでくる。
残り二人は両側面に回り込み、赤貴たちを取り囲むフォームをとっていた。
カールのタックルを受けて吹き飛ばされる赤貴。
「ちょこまか動いて、めんどくさいのよ!」
数多の疾風双斬。
カールを起点に少なくとも二人は巻き込んだつもりだったが、ホップとアニキ(仮称)は先程と同じように回り込んで範囲を逃れていた。
直後、三人から気力で練ったディスクが乱射され、赤貴たちはまとめて集中砲火に晒された。
「機動力で攻撃対象を分散させるとは……」
「え、これって有効な作戦なの?」
「おそらく……」
下手に一人で飛び出せば集中攻撃の的になる。三人が違いをフォローしあっているせいでどこかへ集中攻撃をしかけようにも必ず取り囲まれることになる。
相談不足が徒になったか。戦法の奇抜さはともかく、もう少し練り込めば見えた特徴だったかもしれない。
「だが、ここで負けるわけにはいかない。そうだな」
「分かってます。即席ですけど、合わせてください!」
小唄は虚空から特殊なガントレットを取り出すと、それぞれの腕にはめ込んだ。
「敵の力なんて、ほんとは使いたくないですけど……ここは力だけの世界。ねじ伏せるための、力!」
踏み出す小唄。ホップがスティックを利用した急カーブでタックルを仕掛けてくる。
包囲網に戻すつもりだろうがそうはいかない。相手を掴んで無理矢理持ち上げると。
「ショット!」
両腕からチップを放出。ホップを上空高くへと放り投げた。
「何だぁっ!」
「上だと……!?」
落ちてきたホップを、激しい掌底で打ち上げる赤貴。
骨のへし折れる音とホップの断末魔が腕を通して響く。
「ホップぅ!」
カールが突撃をかけてくる。
破れかぶれのタックルだ。攻撃直後の小唄に直撃し、小唄は外側の硬いフェンスに激突した。
「お前ら、ゆるさない!」
カールがスティックを振り上げて反転――した瞬間を狙って数多は刀を突っ込んだ。
心臓部をひとつき。
「降参するなら今のうちよ。なんて、手加減とかわかんないのよ、私!」
蹴り飛ばし、刀を引き抜く。
数多の気分は、そこへ至ってもなお冷めていた。
燃えない。震えない。まるで味の無いガムだ。
自分はおかしくなってしまったのか。
そんな考えすら、浮かぶ余裕が今はあった。
「ホップ、カール……てめえら」
アニキはスティックの柄を捻ると、先端からスパイクを露出させた。
「一人くらい死ぬ覚悟はできてんだろうなあ!」
「当然だ」
赤貴の刀とスティックがぶつかり合う。赤貴の手から離れて飛んでいく刀。
しかし赤貴は構わず掌底の型をとると、相手の胸に押し当てた。
自らの頭にスティックが叩き込まれるのも気にせず、全力を叩き込む。
「自分だけが死なないなんて、幻想だ」
相手の身体を突き抜けるエネルギーが、血と肉となって飛び散っていく。
赤貴は頭からだくだくと血を流し、膝を突いた。
回転した刀がすぐそばの床へ突き刺さる。
勝利のゴングが、鳴り響く。
控え室に戻った三人は、それぞれの傷を治療しながらも『次』のことを考えていた。
「連携の打ち合わせ不足。相手の分析不足だ」
「そお? 赤貴君はちゃんと分析できてたじゃない」
「全員……とまで言わなくとも、もっと詰められたはずだ。今回は、手癖で勝ったようなものだ」
「ん……」
特に怪我の酷い小唄が、うとうととした顔で自分の手を見た。
「悪を、倒すために……」
もっと力がいる。腕力や脚力なんてレベルじゃない。頭も、人も、全部いる。
●
「無理だよ! 僕男の子なんだよ? こんな下着つけられないよ!」
「文句ゆーんやない! スパッツ禁止や! おら脱げぇ!」
「わーん! たすけてー!」
『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が少女に犯されていた。
失礼、噛みました。
少女に脱がされていた。
あんま変わらんが。
「…………」
『Queue』クー・ルルーヴ(CL2000403)は『そういうものなんだなあ』という顔で状況を見守るばかりで、きせきはどんどんミニスカセーラー服の美少女に変えられていた。
少女の名はカツミ。裏闘技場を仕切るボス、の娘である。
比較的表側に存在する『アリーナ』で覚者どうしのキャットファイトショーを運営している。
「そっちのメイドさん。魔法少女ちゃんがおらんのは残念やけど、あんたにも期待しとるで! きばってや!」
「かしこまりました。では、試合がありますので」
すたすたと行っちゃうクー。背後で聞こえるきせきの悲鳴を、あえてスルーした。
一般的なスポーツ競技場だ。すり鉢状の客席と、開放的なステージ。
客への防護策か、透明な壁で囲まれている。
「……あんたが新入りか」
長拳使いのエリモ。セーラー服の似合わなさがハンパない女である。
対してクーはセーラー服にいつものエプロンを重ねる独特な風体で着こなしていた。
「初めまして。遠慮無く行かせて貰います」
「当然」
即座に蹴りが入る。異様にリーチの長い蹴りだ――が、クーはそれを蹴りで対抗。
「あかん、リーチ差が歴戦や!」
VIP席から身を乗り出したカツミの考えとは裏腹に、クーはエリモの足に自らの足を引っかけ、更に自らの身体を大きく捻って回転させることでエリモを転倒させた。
「な、なんやあの技!」
クーは転倒したエリモからバックステップで距離を取り、指でくいくいと挑発した。
暫く経って、きせき。
泣く泣くミニスカセーラー服(ツインテールのおとなしめな美少女風味byカツミ)に着替えてステージを覗くと……。
爆発的な歓声が響いてきた。
拳のラッシュを腕のガードでしのぎ、口の端から血を流したクーがいた。
まるで暴風雨に立ち向かうように歩をすすめ、パンチラッシュの内側に身体をねじ込むクー。
対するエリモは足を痛めてか片膝立ちから動けない。
「終わりにしましょう」
襟首を掴むクー。
目を見開き、同じく襟首を掴むエリモ。
二人の頭突きがぶつかり合い、一瞬空間がゆわんと凪いだ。
崩れ落ちたのは、エリモの方だった。
深々と血まみれの頭を下げ、戻っていくクー。
きせきとすれ違う瞬間、肩に手を置いて言った。
「みな、強敵です。よい経験になりますよ」
「……う、うん」
『次は期待の新人、シルベチカちゃんだー!』
「「イエーッ!」」
「キラキラするやつやってー!」
「かーわいー!」
それどころじゃない。と、きせきは思った。
尺が足りない。シルベチカちゃんの美少女的バトルシーンの大半は次回の予告に回すとして、最初に結果を述べておこう。
アメリカン空手のキャノピーは、ひたっすら楽しそうに飛んだり跳ねたりを繰り返してきせきを翻弄し、スカートとウィッグを気にするきせきとは対照的な身軽さで圧倒。
きせきは持ち前のタフさで持ちこたえたが、最終的に判定負けとなった。
「ふう、でもこれでもうシルベチカにならなくてもい――」
「おつかれさん! 次の試合も頼むで!」
カツミに肩をがしりと掴まれるきせき。
二度見するきせき。
「えっでも」
「うちトーナメント制やないよ。試合沢山組むショータイプやねん」
「え、じゃあ」
「次はギャル風でいってみよか!」
きせきは膝から崩れ落ちた。
それはもう見事な崩れっぷりだった。
歓声が響くステージ。
賭けバトルの合間に開かれるこのステージは観客を喜ばせるために存在しているショーだ。
参加者には等しくギャランティーが入る代わりに、ウケが悪いと見なされたら即座に下ろされる。生き残りを賭けるという意味では、他のバトルと何も変わらない。
舞い散る火花をかき分けて現われるは岩倉・盾護(CL2000549)。
背後の電光掲示板に『お前を八つ裂きにしてやる』と表示された。
盾護の注文と違うが、これもステージというもの。
日頃あまり使わない巨大な処刑斧を軽々と持ち上げては振り回してみせる。
対するは『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)。
艶やかな和服を幾重にか纏った嫌に動きづらそうな衣装をまとい、キャットウォークでステージへと上がってくる。
「はぁい、みんなの輪廻さんよん! よろしくねん♪」
右へ左へ投げキスのアピール。
観客たちは独特の笑い声を上げた。
客席から様子を見ていたユェンが頷いた。
「この時点で、客はこれから何が起こるか予想がつく。期待をする。期待と予想にどう応えるか気になって注目する。いいぞ……お前たちは最高のエンターテイナーだ」
輪廻が抜いたのはいわゆる護刀。全長が短く、綺麗な飾りつけがふんだんにされたいわゆる美術品だ。
しかも、組紐で固定された鞘を抜くこと無く、ちらちらと盾護に向けて翳している。
「どうしたのん? かかってきていいのよん♪」
あからさまな挑発行為に、盾護は斧を横一文字にスイング。
人影が腰の部分で真っ二つに切り裂かれる――と思いきや、輪廻は宙返りをかけて盾護の頭上を飛び越えていた。斬られたのは彼女の上着だ。
振り向いて、今度は上段から斧を振り下ろす盾護。
輪廻の胸元を切り裂いていく――と思いきや、紙一重で避けていた輪廻の服だけがスパンと斬れて落ちていく。
あまりの神業、そして流れるような露出、そしてなにより輪廻の艶やかで美しい肌色に観客が沸いた。
「上々だ。行け」
「あいよ」
客席からそっとフィーが立った頃、輪廻は下着姿のまま舞い踊っていた。
縦横無尽に振り回す盾護の斧を、まるでポールダンスのように搦めてはかわしていく。
これまで大胆に服が切り裂かれていたのを目の当たりにした客たちは『次』を期待して盾護の斧に集中してしまうが、その上で見せられる輪廻の軽やかな舞いについ見とれてしまう。そんな状況が暫く続いた。
だがそれも永遠ではない。興奮は熱とおなじで冷めるものだ。
だから、ほどよく冷めた頃合いを見計らって輪廻はブラのホックに指をかけた。
「皆おまちかね、サービスタイムに、ハンデタイムよん♪」
ピンと指を弾くと、ブラのホックが金具ごと外れて客席へと飛んでいった。
しかし肝心な部分を見せること無く、片手で胸をかくして観客にアピールする輪廻。
裏切られた予想と応えられた期待。この二つが合わさった時、観客は沸く。熱の波が一度下がったその時だからこそ、巨大な津波となって彼らを飲み込んだ。
ここからが肝心だ。
輪廻はウィンク。
盾護はわざと獣のようにうなりをあげ、輪廻めがけて突撃した。
それまで新体操の如く飛び回っていた彼女とて、刀と胸で両手がふさがってはまともに避けられない。
迎え撃つしか無いが、彼女の手元にあるのはただの美術品だ。
美女を痛めつけて終わる安っぽいパターンかも。観客の一部がそう思った。
その時である。
組紐を口でくわえ、解く。
むき出しになった刀身は液体のように揺らめき、伸び、しなり、鞭のごとく盾護を打ち払った。
突撃の勢いを殺され、転倒しかかる盾護。
それを、輪廻はそれこそ新体操のリボン競技さながらに流体刀を振り回し、盾護にぐるぐると巻き付けた。
ぐるぐる巻きになって転倒した盾護を、素足でやんわりと踏みつける輪廻。
電光掲示板に、『降参だ』の文字が表示された。
観客が立ち上がって拍手をした。
まるで永遠のように、拍手は続いた。
ステージを下り、控え室へと入る輪廻。
そこではフィーが足を組んで座っていた。手にはブリーフケースがひとつ。
「仕事チョー楽だった。アンタ最高」
「ありがとねん♪ でも、盾護ちゃんの協力があってのことよん。あと――コレ」
護刀を鞘に収め、フィーに投げる。
フィーはそれをキャッチしてくるりと回すと、再び輪廻に投げ返した。
「あげる。チップ代わり。アンタのショー見てマジで濡れちゃった」
舌なめずりするフィーに、輪廻は苦笑に似た笑みを浮かべた。
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歓声が響くステージ。
戦う技能だけでのし上がる、ここは獣のステージ。
武器あり術式あり殺しありの違法きわまりないこの空間は、戦場の中にぽつんと生まれるあの空気に似ていた。
修羅。
修羅になれる、あの場所だ。
『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)はいつもの巫女装束で、どこからともなく抜き身の刀を二振、同時に取り出した。
煌々トライがおりる。
相手はJナイフ。サングラスにステージ衣装のかわった男だ。
果物ナイフでお手玉をして、まるで遊んでいるかのようだ。
だが、油断はできない。『この場』に上がって、『自分』にぶつけられた選手だ。
楽勝など、させてはくれまい。これはそういうステージなのだから。
「参ります」
ゴングと共に術式を発動。
刀にエネルギーフィールドをはり、飛んできた真っ白なナイフを打ち返す。
が、ナイフに隠れるように二本のナイフが祇澄の胸や腹に突き刺さった。
真っ黒なナイフだ。
聞いたことがある。影手裏剣というクナイ術だ。一発目を囮にして二発三発のクナイを打ち込むという。
最悪刃に毒が塗られていると考えるべきだろう。
Jナイフは指に挟んだ無数のナイフを明後日の方向に投げた。
まさか鉄格子に反射させるつもりでは。一歩間違えば観客席に――と思ったその瞬間、全てのナイフが軌道を変えて祇澄へと迫る。
その場から走りながら次なる術式を発動。巫女装束を石の鱗で埋めていく。
ナイフが次々と刺さる。致命傷は逃れたが、さすがにつらい。
懐から取り出した瓶を封切りすると、それを肩から浴びる。傷口が溶けるように修復されていった。
それを見て舌打ちする様子を見せるJナイフ。どうやら祇澄は彼にとって相性が悪いようだ。
なら、その隙をつくまで。
「意外と、やりますね。でも――!」
開幕二発で分かった。Jナイフはナイフ投げによって相手を幻惑し致命傷をつくという、いわゆるクリティカル特化型のファイターだ。
恐れて引いたり、闇雲に暴れたりすればひっくり返される。
しかし必ずできる隙を狙えば。
慌ててナイフを投擲してくる。
投擲直後――を狙うのは素人だ。誰だってそう思う。相手だって分かってる。
だから本当の隙は……。
「チイッ!」
あえて刀で防御しようとした祇澄を見て、ナイフの軌道を変化。こっそり別の所に刺していたナイフをワイヤーで引き戻して祇澄の背後を狙う。
背中に突き刺さるナイフ。
だがその瞬間が、最大の隙だ。
ネタを使えば、次のネタまでラグがある。
「そこです!」
ダメージに屈することなく突撃。
すれ違いざまに切りつけ、反転して更に切りつけ、もう一回転してふた振り同時に切りつけた。
「がはっ!?」
Jナイフは血を吹き上げ、ステージをバウンドしながら転がっていく。
戦闘不能。それを確認したレフリーが、祇澄の勝利を宣言した。
「まだ、一戦目。このまま、上へ、上へ……」
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『使命を持った少年』御白 小唄(CL2001173)と葦原 赤貴(CL2001019)は控え室のベンチに座っていた。
向かいでは今回から加わった『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)が鼻歌交じりに刀の手入れをしている。
「より強いチームだと表明できる」
「今回はみんなと一緒に戦えるから、僕は楽しみです!」
赤貴と小唄の視線が数多に注がれるが、数多は小首を傾げて言った。
「死ぬ? いいじゃない、やっちゃいましょ」
「あんたらが味方でよかったよ」
ユェンは苦笑して、扉に手をかけた。
「さあ、ショータイムだ。ぶち殺してこい」
スポットライトに照らされて、数多がアイドルオーラ全開でステージイン。
「チーム『INVERSE』! 櫻火真陰流美少女ファイター酒々井数多。全員まとめて散華なさい! ブルスコーだっけ? ふぁーびーの泣き声みたいなチーム名ね!」
早速の挑発に、ブルースターの一人が歩み出た。
「あんだと? てめぇらこそ……なんて言ったらいいんだろアニキ」
「ホップ、馬鹿なこと言ってんじゃねえ!」
中央の男が、先の男のヘルメットをホッケースティックで殴りつけた。
奥の大柄な男がジェスチャーを交えて語り出す。
「えっと、ハンバーガーみたいな名前だって言いたいんじゃないかな」
「カール、余計なこと言ってんじゃねえ!」
大柄な男も殴りつけると、中央の男は中指を立てた。
「ファッキンビッチだこの野郎。ぶち殺してやる」
「こっちもそのつもりだ。いいな、小唄。火力を集中、一人ずつ落とす」
「うん、はい……!」
今回は三人全員がアタッカーだ。相手の連携に対応できるか否かが鍵になる。
『それでは試合――スタート!』
ゴングの音と当時にブルースターは全く別々の方向へと走り出した。
インラインスケートをまるで肉体の一部のように扱っている。よく見れば覚醒部位の一部だった。
「まとめて落とせるなら、その方が早い」
妖刀を振りかざすと、渾身の烈空波を放った。
三人ひと薙ぎ――かと思いきや、当たったのは一人だけ。大柄なカールだ。図太くカスタマイズされたスティックでガードしてそのまま突っ込んでくる。
残り二人は両側面に回り込み、赤貴たちを取り囲むフォームをとっていた。
カールのタックルを受けて吹き飛ばされる赤貴。
「ちょこまか動いて、めんどくさいのよ!」
数多の疾風双斬。
カールを起点に少なくとも二人は巻き込んだつもりだったが、ホップとアニキ(仮称)は先程と同じように回り込んで範囲を逃れていた。
直後、三人から気力で練ったディスクが乱射され、赤貴たちはまとめて集中砲火に晒された。
「機動力で攻撃対象を分散させるとは……」
「え、これって有効な作戦なの?」
「おそらく……」
下手に一人で飛び出せば集中攻撃の的になる。三人が違いをフォローしあっているせいでどこかへ集中攻撃をしかけようにも必ず取り囲まれることになる。
相談不足が徒になったか。戦法の奇抜さはともかく、もう少し練り込めば見えた特徴だったかもしれない。
「だが、ここで負けるわけにはいかない。そうだな」
「分かってます。即席ですけど、合わせてください!」
小唄は虚空から特殊なガントレットを取り出すと、それぞれの腕にはめ込んだ。
「敵の力なんて、ほんとは使いたくないですけど……ここは力だけの世界。ねじ伏せるための、力!」
踏み出す小唄。ホップがスティックを利用した急カーブでタックルを仕掛けてくる。
包囲網に戻すつもりだろうがそうはいかない。相手を掴んで無理矢理持ち上げると。
「ショット!」
両腕からチップを放出。ホップを上空高くへと放り投げた。
「何だぁっ!」
「上だと……!?」
落ちてきたホップを、激しい掌底で打ち上げる赤貴。
骨のへし折れる音とホップの断末魔が腕を通して響く。
「ホップぅ!」
カールが突撃をかけてくる。
破れかぶれのタックルだ。攻撃直後の小唄に直撃し、小唄は外側の硬いフェンスに激突した。
「お前ら、ゆるさない!」
カールがスティックを振り上げて反転――した瞬間を狙って数多は刀を突っ込んだ。
心臓部をひとつき。
「降参するなら今のうちよ。なんて、手加減とかわかんないのよ、私!」
蹴り飛ばし、刀を引き抜く。
数多の気分は、そこへ至ってもなお冷めていた。
燃えない。震えない。まるで味の無いガムだ。
自分はおかしくなってしまったのか。
そんな考えすら、浮かぶ余裕が今はあった。
「ホップ、カール……てめえら」
アニキはスティックの柄を捻ると、先端からスパイクを露出させた。
「一人くらい死ぬ覚悟はできてんだろうなあ!」
「当然だ」
赤貴の刀とスティックがぶつかり合う。赤貴の手から離れて飛んでいく刀。
しかし赤貴は構わず掌底の型をとると、相手の胸に押し当てた。
自らの頭にスティックが叩き込まれるのも気にせず、全力を叩き込む。
「自分だけが死なないなんて、幻想だ」
相手の身体を突き抜けるエネルギーが、血と肉となって飛び散っていく。
赤貴は頭からだくだくと血を流し、膝を突いた。
回転した刀がすぐそばの床へ突き刺さる。
勝利のゴングが、鳴り響く。
控え室に戻った三人は、それぞれの傷を治療しながらも『次』のことを考えていた。
「連携の打ち合わせ不足。相手の分析不足だ」
「そお? 赤貴君はちゃんと分析できてたじゃない」
「全員……とまで言わなくとも、もっと詰められたはずだ。今回は、手癖で勝ったようなものだ」
「ん……」
特に怪我の酷い小唄が、うとうととした顔で自分の手を見た。
「悪を、倒すために……」
もっと力がいる。腕力や脚力なんてレベルじゃない。頭も、人も、全部いる。
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「無理だよ! 僕男の子なんだよ? こんな下着つけられないよ!」
「文句ゆーんやない! スパッツ禁止や! おら脱げぇ!」
「わーん! たすけてー!」
『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が少女に犯されていた。
失礼、噛みました。
少女に脱がされていた。
あんま変わらんが。
「…………」
『Queue』クー・ルルーヴ(CL2000403)は『そういうものなんだなあ』という顔で状況を見守るばかりで、きせきはどんどんミニスカセーラー服の美少女に変えられていた。
少女の名はカツミ。裏闘技場を仕切るボス、の娘である。
比較的表側に存在する『アリーナ』で覚者どうしのキャットファイトショーを運営している。
「そっちのメイドさん。魔法少女ちゃんがおらんのは残念やけど、あんたにも期待しとるで! きばってや!」
「かしこまりました。では、試合がありますので」
すたすたと行っちゃうクー。背後で聞こえるきせきの悲鳴を、あえてスルーした。
一般的なスポーツ競技場だ。すり鉢状の客席と、開放的なステージ。
客への防護策か、透明な壁で囲まれている。
「……あんたが新入りか」
長拳使いのエリモ。セーラー服の似合わなさがハンパない女である。
対してクーはセーラー服にいつものエプロンを重ねる独特な風体で着こなしていた。
「初めまして。遠慮無く行かせて貰います」
「当然」
即座に蹴りが入る。異様にリーチの長い蹴りだ――が、クーはそれを蹴りで対抗。
「あかん、リーチ差が歴戦や!」
VIP席から身を乗り出したカツミの考えとは裏腹に、クーはエリモの足に自らの足を引っかけ、更に自らの身体を大きく捻って回転させることでエリモを転倒させた。
「な、なんやあの技!」
クーは転倒したエリモからバックステップで距離を取り、指でくいくいと挑発した。
暫く経って、きせき。
泣く泣くミニスカセーラー服(ツインテールのおとなしめな美少女風味byカツミ)に着替えてステージを覗くと……。
爆発的な歓声が響いてきた。
拳のラッシュを腕のガードでしのぎ、口の端から血を流したクーがいた。
まるで暴風雨に立ち向かうように歩をすすめ、パンチラッシュの内側に身体をねじ込むクー。
対するエリモは足を痛めてか片膝立ちから動けない。
「終わりにしましょう」
襟首を掴むクー。
目を見開き、同じく襟首を掴むエリモ。
二人の頭突きがぶつかり合い、一瞬空間がゆわんと凪いだ。
崩れ落ちたのは、エリモの方だった。
深々と血まみれの頭を下げ、戻っていくクー。
きせきとすれ違う瞬間、肩に手を置いて言った。
「みな、強敵です。よい経験になりますよ」
「……う、うん」
『次は期待の新人、シルベチカちゃんだー!』
「「イエーッ!」」
「キラキラするやつやってー!」
「かーわいー!」
それどころじゃない。と、きせきは思った。
尺が足りない。シルベチカちゃんの美少女的バトルシーンの大半は次回の予告に回すとして、最初に結果を述べておこう。
アメリカン空手のキャノピーは、ひたっすら楽しそうに飛んだり跳ねたりを繰り返してきせきを翻弄し、スカートとウィッグを気にするきせきとは対照的な身軽さで圧倒。
きせきは持ち前のタフさで持ちこたえたが、最終的に判定負けとなった。
「ふう、でもこれでもうシルベチカにならなくてもい――」
「おつかれさん! 次の試合も頼むで!」
カツミに肩をがしりと掴まれるきせき。
二度見するきせき。
「えっでも」
「うちトーナメント制やないよ。試合沢山組むショータイプやねん」
「え、じゃあ」
「次はギャル風でいってみよか!」
きせきは膝から崩れ落ちた。
それはもう見事な崩れっぷりだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『シルベチカ変身セット』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御影・きせき(CL2001110)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御影・きせき(CL2001110)

■あとがき■
レアドロップ!
取得アイテム:廓舞床
取得者:魂行 輪廻(CL2000534)
取得アイテム:廓舞床
取得者:魂行 輪廻(CL2000534)
