≪嘘夢語≫覚醒恋愛シミュレーションゲーム☆らぶたなる!
●ファイヴのあの子を攻略する依頼
突然だが恋愛シミュレーションゲームである!
ファイヴのあの子あの人あのおっさんが私立ラブタナ学園の世界観に軽くマッチした感じで登場するあのゲーム、らぶたなるが発売されるぞ!
勿論きみは攻略対象キャラだ!
勿論きみは攻略対象キャラだ!
もっかい言うが、攻略対象キャラだ!
おまえが攻略されるんだよ!
突然だが恋愛シミュレーションゲームである!
ファイヴのあの子あの人あのおっさんが私立ラブタナ学園の世界観に軽くマッチした感じで登場するあのゲーム、らぶたなるが発売されるぞ!
勿論きみは攻略対象キャラだ!
勿論きみは攻略対象キャラだ!
もっかい言うが、攻略対象キャラだ!
おまえが攻略されるんだよ!

■シナリオ詳細
■成功条件
1.攻略キャラに立候補したPCを1人以上攻略する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
こまけーことはなんとかするから好き放題遊んでください。
●攻略対象と主人公キャラ
この依頼に参加した皆さんは『攻略対象』と『主人公』に分かれていただきます。
比率は5:1でも3:3でも構いません。複数主人公制もアリだと思うし。せいべつ? とか? わたし気にしないし?
振り分けが終わったらメタ相談タイム終了です。
早速ヤっていきましょう。
攻略対象キャラの皆さんは相談中、ゲーム中に表示される『こうすると私を攻略できるよ☆』みたいなヒントを書き込みまくってアプローチしましょう。
主人公キャラは腕立て伏せとかしていてください。
●私立ラブタナ学園
高校の筈なのに学園って表記するのは大人の事情ゆえです。うるさいとこはうるさいんだそういうの。
学園は生徒の自主自立をモットーにしたなんでもありの設定をしています。生徒会が実験を握るタイプのとこです。
攻略対象キャラは恋愛ゲームのキャラになったらこんな風になるなあという設定や攻略ポイントなんかをプレイングに書く遊びに興じてください。
主人公キャラはどの攻略対象を攻略するか、どんな風に攻略するか妄想しながらプレイングを爆発させてください。
一応成功条件としては1人以上攻略となっていますが、できれば全員攻略してあげましょう。
フルコンプって大事なことだと思うし。
コンプCGとかあると思うし。
あとは、多少矛盾や食い違いがあっても私がなんとかします。かかってこい。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年04月17日
2017年04月17日
■メイン参加者 6人■

●主人公選択
プレイする主人公を選択してください
→ 『狗吠』時任・千陽(CL2000014)
『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)
●ジャックルート
「あれも人間の場所、あれも人間の場所、あれも……ちがうか。あれはちがう」
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)は町の景色を眺めて目を細めた。
後ろから吹いた風が、彼の赤毛だけをさらっていこうとする。
まるで嫌がるように握った手すりは屋上のもので、彼は今も手すりの向こう側にいた。
「綺麗でしょう」
声をかけられて、ジャックはどこかつまらなそうに振り返った。
学校は嫌いだ。
人間がいるから嫌いだ。
ばっちゃが怒るから辞めてないけど、嫌いだ。
けど……。
屋上から見える景色だけは、ちょっとだけ好きだった。綺麗だから、好きだった。
同じものを同じように好きな人。
それだけで、ジャックにとっては話をするのに充分だった。
充分だったが……。
「人間ごときが、この俺に話しかけるとはずいぶん強気だな!」
話し方をまるで勉強してこなかった彼である。
振り向きざまに滅多なことを言われたが、しかし相手は表情一つ変えなかった。
千陽は小さく咳払いだけをして、ジャックに三歩だけ歩み寄る。
「好きです」
「!?」
「俺も、この景色が好きです」
顔を赤くしてそっぽをむくジャック。
千陽はほんのりと笑って、話を続けた。
「俺に、君の話を聞かせていただけませんか」
「えっと……お前古妖好き? 血、くれる?」
「良き隣人だと。そして自分の血でよろしければ、いくらでも」
●シルフィアルート
『おっぱい天使』シルフィア・カレード(CL2000215)は保健室の先生である。
もはや存在そのものがどこか青春の偶像と化しているが、シルフィアはそんな中でもどこか浮き立った存在だった。
保健室の扉を開ければ、最初に香ってくるのは消毒液のつんとした臭いでなく、ふんわりと落ち着く花の香りがする。
アロマオイルを蒸した加湿器から、ゼラニウムの香りがひろがっているのだ。
この保健室は一昔前に存在していた『カウンセリングルーム』を兼ねていて、特に理由が無くても来ても良いということになっていた。
それゆえ時折生徒が訪れては奇妙なコミュニティを作ったり端で本を読んでいたりと自由に過ごしているのだが、今日は偶然にも誰も訪れてはいなかった。
そこへやってきた第一号が、千陽である。
「あら、いらっしゃい。よく来るわね」
「ここは落ち着きますから」
言われるでも無く椅子に座り、対してシルフィアは言われるでも無くビスケットの箱を開いた。保存食としても用いられるビスケットだが、この場所では紅茶のお供に出てくることもよくあった。
「あなたのようなかたがいるので、この学園は清浄に保たれているのでしょうね」
「そんなんじゃないわよ」
いれた紅茶を千陽に出して、向かいに腰掛けるシルフィア。
「今日はどうしたの? 学生生活に疲れちゃった?」
「いえ……」
千陽は咳払いをひとつだけして、ティーカップを置いた。
「あなたも、疲れているのではと思いまして」
●鈴鹿ルート
「ふはははは! この学園を救いたければ我を攻略してみるがいいの! ぐ、ぐたいてきには……あいのせりふをいうといいの」
途中からごにょごにょ言い始めた『愛求独眼鬼/パンツハンター』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)。
廊下を歩いて自己アピールをしてみたはいいが、生徒たちは恐い子が来たとばかりにそそくさと教室へと逃げ込んでいった。
なんでだろう。すれ違いざまにパンツはぎ取ったからかな。軽く百人くらい連続で。
「おかしいの。不純異性交遊の自由化をはかったのに、誰も私に手を出さないの……」
両手で頭を抱え、鈴鹿はブナーみたいな声を上げてのけぞった。
「これじゃあ乱れた学生生活が送れないの! このままじゃパンツハントに青春をついやしてしまうの! みだらな石油王とかあらわれないかなー!」
のけぞりが行き過ぎて軽く首ブリッジみたくなった辺りで、上下逆さの千陽が目に入った。
「…………」
「…………」
「…………」
「……魔王生徒会長さまにおいては今日もご機嫌麗しく」
「おうなの」
あ、姿勢変えないんだ。という顔はせずただ咳払いだけをして、千陽は半歩だけ歩み寄った。
「君の治世は学生たちに楽しみを与えてくれています。かくいう俺もこんなに慌ただしい毎日がすきですよ」
「お、おうなの」
鈴鹿は首ブリッジのまま、腕を組んでふんすと胸を張った。はった?
●桜ルート
さて、ここに来て急ではあるが時任千陽について話そう。
私立ラブタナ学園の二年生。ブレザー制服に着られている感じがするとは本人の弁である。
日頃保健室と屋上をローテし魔王生徒会長に会えば敬服するという彼持ち前の人当たりの良さがゆえに着々フラグらしき者を建設してきたが、ここで歯車が大いに狂った。
狂ったというかぶっ壊れたと言った方が正確やもしれぬ。
「今日、お弁当を作ってきたの」
にっこりと笑って包みを解く『”狂気”に応ずる者』春野 桜(CL2000257)。学園の近くをよく通るお姉さんである。
ベンチで二人横に並び、散りゆく桜を眺めながらお弁当を解く様には正統派の何かがあった。
あったが。
「ねえ、どこ見てるの」
「いえ……ただ前を見ていただけですが」
「前を通った女を見たわよね」
お弁当についていたフォークを逆手で握ると、千陽の右手めがけて振り下ろした。
ズン、と人差し指と中指の間を縫うように突き刺さるフォーク。
「こっちを見て」
「はい……」
「こっちだけを見てて」
「はい……」
「眼球に反射した別の女を見たら殺すからね」
「はい……はい!?」
なぜこうなったのか。
なぜこうなってしまったのか。
出会い頭、『満開の桜を見るとあなたのことを思い出します』と声をかけ、デートに誘ったのが始まりだった。いや、デートというか一緒に桜を見て歩こうと言っただけなのにあれよあれよというまになつき、気づけば彼女らしい地位に居座り、気づけば家に通い、気づけば教室の窓からこちらを覗いていて、気づけば自宅のポストに入っていた筈の手紙を(封切り状態で)手渡してくるようになり、気付けば自分の携帯電話に謎の監視アプリがインストールされているという日々である。
デートやお宅訪問は日常的に行なうがそれ以外が非日常的すぎて、千陽はみるみる彼女に縛られていった。
「今日もいい天気ね」
「は、はい……」
「今他の女のこと考えた?」
「考えていません!」
「道を歩く女を見た!」
「しょ、小学生ですよ!」
「いずれ大人の女になる! 私のどこがいけないの!? 言ってよ、なおすから!」
爪楊枝を暗刺握り(グーにした人差し指と中指の間に挟み親指で根元を固定する握り方。人の眼球をひとつきにするさいに用いられる)で振りかざす桜を見よ。
「まだ他の女を見てる!」
「あ、あれは切裂さんといって知り合いの」
「いずれ大人の女になる!」
「なりますか!?」
千陽はこれまで築いてきたフラグの一切を強制的にへし折られ、まるで蟻地獄にでも沈むように桜ルートへと引き釣り込まれていったのだった。
ハッピーエンドである。
誰がなんと言おうとも。
●二週目の主人公選択
プレイする主人公を選択してください
『狗吠』時任・千陽(CL2000014)
→ 『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)
●二週目ジャックルート
まえはよく通ってくれていた男が来なくなった。
やっぱり人間ってこうなのかなと思ったが、そこに悪魔的ヤンデレ女の影があったことを彼は知らない。
というわけで今日も今日とて授業をさぼって屋上から町を眺めるタイムである。
大体の学校ってえやつは屋上が封鎖されていて場合によっちゃソーラーパネルが並んでいるもんだけどこのラブタナ学園は特殊な時空にあるので屋上の出入りは自由なのである。
自由なので、時折知らない人が現われる。
「そんな所にいると、危ないよ」
急に話しかけてきた誰かに、ジャックは慌てて振り返った。
前もいったかもしんないけど手すりの外側に立っているので慌てただけで軽く死にそうになるのだが、すばやく平静を取り戻した。別に初めてのことじゃないし。
「なにか、困ってることがあるなら……」
何かを勘違いされていたが、ジャックは意図を察すること無くぶんぶん首を振った。
「いらない!」
「えっ」
秋人が手に持っていたあんパンをガン見しながら言った。
「べつに……いらないし……」
「ほしいの?」
「そんなんじゃないし……」
「……はい」
半分こにして差し出されて、ジャックは顔を背けた。
「俺は騙されないぞ! 人間は悪い奴だからな! ……けど、もらってやるし。なんかのむ?」
新たなフラグが建設された瞬間である。
●二週目シルフィアルート
「あら、いらっしゃい。最近よく来るわね」
パチュリーの爽やかな香りが広がる保健室で、ティーカップ片手にシルフィアが振り返る。
「うん、つい……」
「切裂さんは元気にしてた?」
言わずと出されたお茶をうけて、秋人は向かいに腰掛ける。
乾パンが封切りされて並べられていた。お茶請けのようだ。
「最近は、よく屋上にいるみたいだね」
「そう、学校になじんでくれてるのかしら」
休み時間になるとふらりと保健室を訪れ、シルフィアの人柄に癒やされている秋人である。
思春期の男子ならもっと他に癒やされそうな部位がありそうなものだが、秋人はそのへん綺麗な男の子だった。
しかるに。
シルフィアとの間にはきわめて常識的な関係性が維持されていた。
「先生は、恋愛とかしないの?」
「そうねえ……あいにくと忙しくて。けど、おもしろい子となら楽しく過ごせそうかな」
どこか困ったような言い方をするシルフィアに、『そうか、いい人が見つかるといいね』と言ってしまえる秋人である。
現在の秋人にとって、シルフィアはたんに保健室の先生である。
シルフィアが『登校する不登校児』ことジャックを心配して、それを察した秋人がジャックのことを話すというのが最近のトレンドであった。
とはいえ。
「そんなに保健室に通っても、なにもないわよ?」
「いや、うん……」
秋人は紅茶を手にとって、深く息をついた。
「話していると癒やされるんだ。もっと、仲良くなれたらいいな」
フラグが建設された、ような気がする瞬間であった。
●二週目鈴鹿ルート
さて、流れから何となく察している方もおられようか?
鈴白秋人。学園の外で見かける春野桜に母性を感じて惹かれるも思いっきり千陽になつく彼女を見て『お幸せに』とか呟いた彼は今は空前のフリー男子である。
そんな彼が脅威に思っているのが、学園の魔王生徒会長(何度も言ってたけどなんだろうこの肩書き)だった。
「ふははー! この学園を救いたければ我を攻略してみるがいいの! 具体的には……愛の台詞を所望するの」
当の鈴鹿はコレを割と広く言って回っているようで、言えば言うほど人が遠ざかっていくという悲しいサイクルに陥っていた。
このままでは本当に学園のパンツをはぎ取るだけの人になってしまう。
それは鈴鹿的にも学園的にも困る話だった。いやパンツは俄然はぎ取るけども。
「ここは、俺が行くしかない」
そんな中で立ち上がったのは秋人だった。
廊下を練りあるく鈴鹿をガッと捕まえると、そのまま優しく抱きしめた。
「君が寂しいときは、そばにいていつでも抱きしめてあげるね」
「わわわ私はそんな安い女じゃ無いの! でも、まあ……付き合ってあげなくもないの」
目をそらしてほっぺを膨らませる鈴鹿の顔アップをご想像頂きたい。
お金が取れそうな絵である。
「あと知りたいことがあったら教えてあげなくもないの」
「それは、別に……」
ジャックやシルフィアとのフラグを建設はしたが育てはしない秋人である。
そんな気持ちを知ってか知らずか、鈴鹿は『よしよし分かってるの』とか言って秋人に抱きついた。
体格差からして秋人が鈴鹿を抱きかかえる感じになるが、それはそれでよしである。
あとプレイングに『攻略すると称号「ロリコン」付与』って書いてあげるけどどうしよう。いる?
「もう恋人が手に入ったから欲しいものはないの。エンディングまでいっちょくせんなの」
すすめーとばかりに指をさす鈴鹿。
走り出す秋人。
拍手で送り出す生徒たち。
ハッピーエンドである。
誰がなんと言おうとも。
……そして、三週目の選択画面が現われる。
次こそ、目指せハーレムエンド。
プレイする主人公を選択してください
→ 『狗吠』時任・千陽(CL2000014)
『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)
●ジャックルート
「あれも人間の場所、あれも人間の場所、あれも……ちがうか。あれはちがう」
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)は町の景色を眺めて目を細めた。
後ろから吹いた風が、彼の赤毛だけをさらっていこうとする。
まるで嫌がるように握った手すりは屋上のもので、彼は今も手すりの向こう側にいた。
「綺麗でしょう」
声をかけられて、ジャックはどこかつまらなそうに振り返った。
学校は嫌いだ。
人間がいるから嫌いだ。
ばっちゃが怒るから辞めてないけど、嫌いだ。
けど……。
屋上から見える景色だけは、ちょっとだけ好きだった。綺麗だから、好きだった。
同じものを同じように好きな人。
それだけで、ジャックにとっては話をするのに充分だった。
充分だったが……。
「人間ごときが、この俺に話しかけるとはずいぶん強気だな!」
話し方をまるで勉強してこなかった彼である。
振り向きざまに滅多なことを言われたが、しかし相手は表情一つ変えなかった。
千陽は小さく咳払いだけをして、ジャックに三歩だけ歩み寄る。
「好きです」
「!?」
「俺も、この景色が好きです」
顔を赤くしてそっぽをむくジャック。
千陽はほんのりと笑って、話を続けた。
「俺に、君の話を聞かせていただけませんか」
「えっと……お前古妖好き? 血、くれる?」
「良き隣人だと。そして自分の血でよろしければ、いくらでも」
●シルフィアルート
『おっぱい天使』シルフィア・カレード(CL2000215)は保健室の先生である。
もはや存在そのものがどこか青春の偶像と化しているが、シルフィアはそんな中でもどこか浮き立った存在だった。
保健室の扉を開ければ、最初に香ってくるのは消毒液のつんとした臭いでなく、ふんわりと落ち着く花の香りがする。
アロマオイルを蒸した加湿器から、ゼラニウムの香りがひろがっているのだ。
この保健室は一昔前に存在していた『カウンセリングルーム』を兼ねていて、特に理由が無くても来ても良いということになっていた。
それゆえ時折生徒が訪れては奇妙なコミュニティを作ったり端で本を読んでいたりと自由に過ごしているのだが、今日は偶然にも誰も訪れてはいなかった。
そこへやってきた第一号が、千陽である。
「あら、いらっしゃい。よく来るわね」
「ここは落ち着きますから」
言われるでも無く椅子に座り、対してシルフィアは言われるでも無くビスケットの箱を開いた。保存食としても用いられるビスケットだが、この場所では紅茶のお供に出てくることもよくあった。
「あなたのようなかたがいるので、この学園は清浄に保たれているのでしょうね」
「そんなんじゃないわよ」
いれた紅茶を千陽に出して、向かいに腰掛けるシルフィア。
「今日はどうしたの? 学生生活に疲れちゃった?」
「いえ……」
千陽は咳払いをひとつだけして、ティーカップを置いた。
「あなたも、疲れているのではと思いまして」
●鈴鹿ルート
「ふはははは! この学園を救いたければ我を攻略してみるがいいの! ぐ、ぐたいてきには……あいのせりふをいうといいの」
途中からごにょごにょ言い始めた『愛求独眼鬼/パンツハンター』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)。
廊下を歩いて自己アピールをしてみたはいいが、生徒たちは恐い子が来たとばかりにそそくさと教室へと逃げ込んでいった。
なんでだろう。すれ違いざまにパンツはぎ取ったからかな。軽く百人くらい連続で。
「おかしいの。不純異性交遊の自由化をはかったのに、誰も私に手を出さないの……」
両手で頭を抱え、鈴鹿はブナーみたいな声を上げてのけぞった。
「これじゃあ乱れた学生生活が送れないの! このままじゃパンツハントに青春をついやしてしまうの! みだらな石油王とかあらわれないかなー!」
のけぞりが行き過ぎて軽く首ブリッジみたくなった辺りで、上下逆さの千陽が目に入った。
「…………」
「…………」
「…………」
「……魔王生徒会長さまにおいては今日もご機嫌麗しく」
「おうなの」
あ、姿勢変えないんだ。という顔はせずただ咳払いだけをして、千陽は半歩だけ歩み寄った。
「君の治世は学生たちに楽しみを与えてくれています。かくいう俺もこんなに慌ただしい毎日がすきですよ」
「お、おうなの」
鈴鹿は首ブリッジのまま、腕を組んでふんすと胸を張った。はった?
●桜ルート
さて、ここに来て急ではあるが時任千陽について話そう。
私立ラブタナ学園の二年生。ブレザー制服に着られている感じがするとは本人の弁である。
日頃保健室と屋上をローテし魔王生徒会長に会えば敬服するという彼持ち前の人当たりの良さがゆえに着々フラグらしき者を建設してきたが、ここで歯車が大いに狂った。
狂ったというかぶっ壊れたと言った方が正確やもしれぬ。
「今日、お弁当を作ってきたの」
にっこりと笑って包みを解く『”狂気”に応ずる者』春野 桜(CL2000257)。学園の近くをよく通るお姉さんである。
ベンチで二人横に並び、散りゆく桜を眺めながらお弁当を解く様には正統派の何かがあった。
あったが。
「ねえ、どこ見てるの」
「いえ……ただ前を見ていただけですが」
「前を通った女を見たわよね」
お弁当についていたフォークを逆手で握ると、千陽の右手めがけて振り下ろした。
ズン、と人差し指と中指の間を縫うように突き刺さるフォーク。
「こっちを見て」
「はい……」
「こっちだけを見てて」
「はい……」
「眼球に反射した別の女を見たら殺すからね」
「はい……はい!?」
なぜこうなったのか。
なぜこうなってしまったのか。
出会い頭、『満開の桜を見るとあなたのことを思い出します』と声をかけ、デートに誘ったのが始まりだった。いや、デートというか一緒に桜を見て歩こうと言っただけなのにあれよあれよというまになつき、気づけば彼女らしい地位に居座り、気づけば家に通い、気づけば教室の窓からこちらを覗いていて、気づけば自宅のポストに入っていた筈の手紙を(封切り状態で)手渡してくるようになり、気付けば自分の携帯電話に謎の監視アプリがインストールされているという日々である。
デートやお宅訪問は日常的に行なうがそれ以外が非日常的すぎて、千陽はみるみる彼女に縛られていった。
「今日もいい天気ね」
「は、はい……」
「今他の女のこと考えた?」
「考えていません!」
「道を歩く女を見た!」
「しょ、小学生ですよ!」
「いずれ大人の女になる! 私のどこがいけないの!? 言ってよ、なおすから!」
爪楊枝を暗刺握り(グーにした人差し指と中指の間に挟み親指で根元を固定する握り方。人の眼球をひとつきにするさいに用いられる)で振りかざす桜を見よ。
「まだ他の女を見てる!」
「あ、あれは切裂さんといって知り合いの」
「いずれ大人の女になる!」
「なりますか!?」
千陽はこれまで築いてきたフラグの一切を強制的にへし折られ、まるで蟻地獄にでも沈むように桜ルートへと引き釣り込まれていったのだった。
ハッピーエンドである。
誰がなんと言おうとも。
●二週目の主人公選択
プレイする主人公を選択してください
『狗吠』時任・千陽(CL2000014)
→ 『秘心伝心』鈴白 秋人(CL2000565)
●二週目ジャックルート
まえはよく通ってくれていた男が来なくなった。
やっぱり人間ってこうなのかなと思ったが、そこに悪魔的ヤンデレ女の影があったことを彼は知らない。
というわけで今日も今日とて授業をさぼって屋上から町を眺めるタイムである。
大体の学校ってえやつは屋上が封鎖されていて場合によっちゃソーラーパネルが並んでいるもんだけどこのラブタナ学園は特殊な時空にあるので屋上の出入りは自由なのである。
自由なので、時折知らない人が現われる。
「そんな所にいると、危ないよ」
急に話しかけてきた誰かに、ジャックは慌てて振り返った。
前もいったかもしんないけど手すりの外側に立っているので慌てただけで軽く死にそうになるのだが、すばやく平静を取り戻した。別に初めてのことじゃないし。
「なにか、困ってることがあるなら……」
何かを勘違いされていたが、ジャックは意図を察すること無くぶんぶん首を振った。
「いらない!」
「えっ」
秋人が手に持っていたあんパンをガン見しながら言った。
「べつに……いらないし……」
「ほしいの?」
「そんなんじゃないし……」
「……はい」
半分こにして差し出されて、ジャックは顔を背けた。
「俺は騙されないぞ! 人間は悪い奴だからな! ……けど、もらってやるし。なんかのむ?」
新たなフラグが建設された瞬間である。
●二週目シルフィアルート
「あら、いらっしゃい。最近よく来るわね」
パチュリーの爽やかな香りが広がる保健室で、ティーカップ片手にシルフィアが振り返る。
「うん、つい……」
「切裂さんは元気にしてた?」
言わずと出されたお茶をうけて、秋人は向かいに腰掛ける。
乾パンが封切りされて並べられていた。お茶請けのようだ。
「最近は、よく屋上にいるみたいだね」
「そう、学校になじんでくれてるのかしら」
休み時間になるとふらりと保健室を訪れ、シルフィアの人柄に癒やされている秋人である。
思春期の男子ならもっと他に癒やされそうな部位がありそうなものだが、秋人はそのへん綺麗な男の子だった。
しかるに。
シルフィアとの間にはきわめて常識的な関係性が維持されていた。
「先生は、恋愛とかしないの?」
「そうねえ……あいにくと忙しくて。けど、おもしろい子となら楽しく過ごせそうかな」
どこか困ったような言い方をするシルフィアに、『そうか、いい人が見つかるといいね』と言ってしまえる秋人である。
現在の秋人にとって、シルフィアはたんに保健室の先生である。
シルフィアが『登校する不登校児』ことジャックを心配して、それを察した秋人がジャックのことを話すというのが最近のトレンドであった。
とはいえ。
「そんなに保健室に通っても、なにもないわよ?」
「いや、うん……」
秋人は紅茶を手にとって、深く息をついた。
「話していると癒やされるんだ。もっと、仲良くなれたらいいな」
フラグが建設された、ような気がする瞬間であった。
●二週目鈴鹿ルート
さて、流れから何となく察している方もおられようか?
鈴白秋人。学園の外で見かける春野桜に母性を感じて惹かれるも思いっきり千陽になつく彼女を見て『お幸せに』とか呟いた彼は今は空前のフリー男子である。
そんな彼が脅威に思っているのが、学園の魔王生徒会長(何度も言ってたけどなんだろうこの肩書き)だった。
「ふははー! この学園を救いたければ我を攻略してみるがいいの! 具体的には……愛の台詞を所望するの」
当の鈴鹿はコレを割と広く言って回っているようで、言えば言うほど人が遠ざかっていくという悲しいサイクルに陥っていた。
このままでは本当に学園のパンツをはぎ取るだけの人になってしまう。
それは鈴鹿的にも学園的にも困る話だった。いやパンツは俄然はぎ取るけども。
「ここは、俺が行くしかない」
そんな中で立ち上がったのは秋人だった。
廊下を練りあるく鈴鹿をガッと捕まえると、そのまま優しく抱きしめた。
「君が寂しいときは、そばにいていつでも抱きしめてあげるね」
「わわわ私はそんな安い女じゃ無いの! でも、まあ……付き合ってあげなくもないの」
目をそらしてほっぺを膨らませる鈴鹿の顔アップをご想像頂きたい。
お金が取れそうな絵である。
「あと知りたいことがあったら教えてあげなくもないの」
「それは、別に……」
ジャックやシルフィアとのフラグを建設はしたが育てはしない秋人である。
そんな気持ちを知ってか知らずか、鈴鹿は『よしよし分かってるの』とか言って秋人に抱きついた。
体格差からして秋人が鈴鹿を抱きかかえる感じになるが、それはそれでよしである。
あとプレイングに『攻略すると称号「ロリコン」付与』って書いてあげるけどどうしよう。いる?
「もう恋人が手に入ったから欲しいものはないの。エンディングまでいっちょくせんなの」
すすめーとばかりに指をさす鈴鹿。
走り出す秋人。
拍手で送り出す生徒たち。
ハッピーエンドである。
誰がなんと言おうとも。
……そして、三週目の選択画面が現われる。
次こそ、目指せハーレムエンド。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
