豚野郎を口汚くののしる依頼
●脳内でお姉さん声優のボイスをあてて想像しよう。はいワンツースリー!
「この豚野郎が」
ファイヴの会議室。久方 真由美(nCL2000003)が優しい声でそう言った。
「日本語を喋っちゃだめでしょう? 豚野郎は豚野郎らしく、ちゃんと鳴き方があるでしょう? ほら、ほらあ……」
誰もが沈黙する中、目をカッと見開く真由美。
「嘶けェッ!」
以上。
夢見の真由美さんはカンペを閉じると、皆ににっこりとほほえみかけた。
「このように、『M男の喜ぶ台詞集』を詳しい方から頂いて来ました。
今度の古妖にはこれが有効になるでしょう」
今回の趣旨を、おわかり頂けただろうか。
●ドM野郎を罵ると有利になる依頼
古い歓楽街には様々な妄執が渦巻いている。
苦しい社会を生き抜くために自らの欲望を発散したい者であふれているからだ。
その中には勿論、自らをネガティブな形で受け入れ、マイナスな形で強く深く接してくれる相手を求める者も当然少なくない。しかも高い地位の者ほど多いようで、高級層の区画に行けば行くほどSMクラブは増えていく。
そんな場所だからだろう。
妖怪(古妖)『豚野郎』が現われたのだ。
「発生ポイントは高級SMクラブ『蜜色館』です。
首から上が豚の姿をしている人型の古妖で、相手を見つけ次第肉体を激しく加熱しながら対人的な破壊活動……要するに攻撃行動を起こします」
この肉体の加熱は社会のストレスやフラストレーションを象徴しており、ターンが経過すればするほど激しく加熱するという。
突入時点で既にかなりの時間放置されているので、一度マックスヒートしていると考えるべきかもしれない。
だがそのヒートを解消する手がある。
「この古妖『豚野郎』はSMクラブに通う豚野郎たちの豚のような精神にから生まれているだけあって、ドSなののしりによってヒートを解消することができるとされています。
豚野郎を口汚くののしりながら、安全に無理をせず戦ってくださいね」
「この豚野郎が」
ファイヴの会議室。久方 真由美(nCL2000003)が優しい声でそう言った。
「日本語を喋っちゃだめでしょう? 豚野郎は豚野郎らしく、ちゃんと鳴き方があるでしょう? ほら、ほらあ……」
誰もが沈黙する中、目をカッと見開く真由美。
「嘶けェッ!」
以上。
夢見の真由美さんはカンペを閉じると、皆ににっこりとほほえみかけた。
「このように、『M男の喜ぶ台詞集』を詳しい方から頂いて来ました。
今度の古妖にはこれが有効になるでしょう」
今回の趣旨を、おわかり頂けただろうか。
●ドM野郎を罵ると有利になる依頼
古い歓楽街には様々な妄執が渦巻いている。
苦しい社会を生き抜くために自らの欲望を発散したい者であふれているからだ。
その中には勿論、自らをネガティブな形で受け入れ、マイナスな形で強く深く接してくれる相手を求める者も当然少なくない。しかも高い地位の者ほど多いようで、高級層の区画に行けば行くほどSMクラブは増えていく。
そんな場所だからだろう。
妖怪(古妖)『豚野郎』が現われたのだ。
「発生ポイントは高級SMクラブ『蜜色館』です。
首から上が豚の姿をしている人型の古妖で、相手を見つけ次第肉体を激しく加熱しながら対人的な破壊活動……要するに攻撃行動を起こします」
この肉体の加熱は社会のストレスやフラストレーションを象徴しており、ターンが経過すればするほど激しく加熱するという。
突入時点で既にかなりの時間放置されているので、一度マックスヒートしていると考えるべきかもしれない。
だがそのヒートを解消する手がある。
「この古妖『豚野郎』はSMクラブに通う豚野郎たちの豚のような精神にから生まれているだけあって、ドSなののしりによってヒートを解消することができるとされています。
豚野郎を口汚くののしりながら、安全に無理をせず戦ってくださいね」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.豚野郎を消滅させる
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
間違えました、八重紅です。
●シチュエーションデータ
高級SMクラブ。上流階級用の施設で、奥まってはいるが広々とした地下施設。
高級感があり、入り口のシャンデリアやガラス細工といった調度品と歩き心地のよいカーペットがしかれている。
豚野郎はその性質ゆえかそれぞれの個室に引っ込んでおり、(見所的かつ合理的な都合によって)手分けして当たることになるでしょう。
一人用個室が3~5部屋。
集団用の広い個室が1部屋あります。
「私は個室じゃないとドSさを発揮できない」という人もいると思うから、配分にあわせて豚野郎を配置しましょう。というかします。
●キャラクターデータ
豚野郎、6体。
首から上が豚みたくなった人型古妖です。言語能力はありますが喋る機会がありません。
男女両タイプいるそうですが、相手にあわせてチェンジします。
毎ターンヒートゲージが上がって戦闘能力が強化されますが、ドSなののしりによってヒートが解消され、場合によっては行動不能状態にもなります。
本来の趣旨から外れるのサクッと説明しますが、『豚野郎』は名を変え形を変え古来から日本歓楽街のあちこちに現われた妖怪(古妖)です。
今回はフラストレーションやなんかが元になっているので攻撃的ですが、基本的に人間的感情でできているので接し方を誤らなければ危険はありません。
●ののしりについて
アラタナルの過酷な世界を生き抜くプロ覚者の皆様には、もうSがただ弱い者いじめしてる人じゃないってのは周知の事実だと思うし、ただ一方的な悪口を言ってるだけのののしりはとてもレベルが低いってことも学校で習ったんじゃないかなって思います。脳内の神様がそう言っています。
なんだかんだで社会の苦しみや重圧から生まれた妖怪ですので、相手に寄り添ったようなののしり方をすると効果的にヒートを解消できるでしょう。
真由美さんからメモを貰うことができるので、自身のない人は『メモを読みます』とプレイングに書いて頂ければちゃんとご案内いたします。あなたのキャラが扇情的なドSとなります。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年09月18日
2016年09月18日
■メイン参加者 6人■

●獣がれ俺らの豚と
とあるSMクラブに発生した古妖『豚野郎』。
それは日本社会に蔓延するフラストレーションの化身である。
サービス残業を強いられる会社員。板挟みのような指示におびえる日々。部下の前で器の大きさを求められる上司や、接待合戦の日々。安く買いたたかれる技術や、限界まで買いたたけと要求される担当者。
行き場の無いフラストレーションは町にたまっていく。
だがそれでも生きていけるのは、誰かがそれをかすめ取るように喰っているからだとされている。
豚野郎。
社会の苦しみを一身に背負って生まれたこの妖怪たちの未来に待つのは破滅か、救済か。
●『凡愚の仮面』成瀬 基(CL2001216)
更衣室でジャケットを脱ぎながら、基は後悔していた。
ここへ来るときに渡された『豚野郎が喜ぶサディスティックトーク・男性編』とかいうものを開いてみたが、もうなんか内容がすごいことになっていた。語彙力が死ぬくらいすごいことになっていた。
「どうしよう、どうしてこんな依頼に来ちゃったのかな僕……」
両手で顔を覆う。
「僕は超のつく草食系男子だよ。仮にも警察官だよ。なんでこんな未知の風俗店みたいな場所に……」
と言いつつ、顔を上げる。
覆う前とは打って変わって、目にはナイフのような光が籠もっていた。
「でも、負った責任は果たす」
順番待ちみたいなテンションを終え、ブリーフ一丁で個室の扉を開ける豚野郎。
彼を待っていたのは、椅子の上で足を組み、肘置きに頬杖をつく基だった。
いや、基様だった。
暴力的な衝動に駆られて走り出そうとする豚野郎を、基は顎を上げるだけで止めた。
「誰が動いていいって?」
帽子掛けからとった軍帽を斜めに被ると、基は薄く笑った。
嗜虐的なその視線に、豚野郎は本能的に腰を折った。
人はいつも守るものを持つ。ゆえに屈することは許されない。
しかし今この場所に限って言えば、万人が屈することを許されているのだ。
ぽたぽたと流れる涎や汗を、目だけを動かして示す基。
「こんなに床を汚して」
「ブヒィ……」
「掃除、しなよ」
慌てて周囲を見回すが、掃除道具などこの部屋にはない。
手でぬぐえと?
それともまさか――。
「ホラ、床に頭をつけて」
基は立ち上がり、豚野郎の頭を掴んだ。地面へと押しつける。
「手伝ってあげるからさ」
自らの体液がしたたった床を舐めさせられるなど。
社会一般ではまず遭遇しない屈辱。
そんなことを考える間もなく、基は豚野郎の後頭部を靴底で押した。
憎しみもない相手の後頭部を自らの靴で強く踏むことなど、経験することなどあろうか。
それだけの相手が人生の中に生まれようか。
この瞬間、基と豚野郎の間にきわめて特殊な関係性が生まれたように、思えた。
縁の黒い眼鏡を包むように掴み、そっと押し上げる基。
「お前」
何も言うまでも無く、豚野郎は基の前に屈服した。
深く頷き、壁際の馬鞭を手に取る。
「いいよ、今回はトクベツだ」
強く。
高く。
基の激情が振り上がる。
●『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)
薄い桃色の照明が照らす個室の中で、ミュエル19歳は腕組みしていた。
いや、この際だから正確に述べよう。
ミュエル19歳がえらく露出の高い革のボンテージを身に纏い、三角木馬と手錠つきの椅子に挟まれて自分の腰やあばらの露出部分をせめて数センチでも隠すようにと手を組んで覆っていた。地味にこの前の水着写真と同じポーズだった。
控えめに言って犯罪だった。
「ここにくれば……度胸、つくんだよね……?」
とか酒飲まされて持ち帰られる上京大学生みたいなこと言い出すから余計にヤバかった。
そこへ『ウィーッス』みたいなテンションで入ってくる豚野郎。
今更なことだが、社会のフラストレーションを集積した彼ら豚野郎は様々な人間の姿をしている。ミュエルの部屋にやってきたのはえらく贅肉の多いぶくぶくとした四~五十代ほどの男性だった。
控えめに言って犯罪だった。
「…………」
「えっと」
豚野郎がミュエルに期待の目線を送ってくるが、状況自体がどうかしているせいでミュエルはどうしていいかわからない様子だった。
まずは事前に貰ったメモを開く。無数にある単語の中でなんとか口にできそうなワードを選択してみる。
「この、豚野郎……」
探り探りの発音に、豚野郎がキレた。
壁を叩いて立ち上がり、地面を踏みならしながら抗議の意志をぶつけてくる。
その際も顔つきが変わらないというかなりアレな光景にミュエルの混乱はピークに達した。
「あ、ご、ごめんなさい……悪口じゃなくて、そ、その……」
若者が社会を経験する最初の場は主にアルバイトとされているが、そうした場には一定確率でこんな状況が生まれる。
ひたすら怒りだけをぶつけてくる客とそれにおびえる店員という構図だ。なまじ暴力や暴言を浴びせてこないので本当にどうしたらいいか分からないのだ。
が、率直な話。
「きもちわるい」
と店員側が呟いてしまうことはごくまれである。
あらゆるものが終わる。
が、しかし。
かつてない『なにか』が始まっていた。
全ての憑きものが落ちたような様子でたたずむ豚野郎と、完全に引いているミュエル。
メモを見る。
褒め罵りプレイとか優しい束縛とか高度なことが書かれていたが、理解できるミュエルではない。
「ひ、ひざまづいて靴……うわ」
メモを投げ捨てる。
足にしがみついてくる豚野郎。
「や、やめ――っ」
この日、明石ミュエルは『赤の他人に靴を舐められる』という体験をした。
控えめに言って、犯罪である。
●『”狂気”に応ずる者』春野 桜(CL2000257)
メモをぱらぱらとめくり、桜は興味なさそうに放り投げた。
「理解できない世界ね。自身ないわ」
代わりに取り出した包丁をくるくると手の中でもてあそびながら、桜はいつものテンションに戻った。
「殺しましょう。よく分からないから」
桜が立ち上がるのと、個室のドアが開くのは同時だった。
「ブヒィ!」
個室に飛び込み、目に付いた桜へ掴みかかろうと駆け寄ってくる豚野郎。
よほど嫌なことがあったのだろうか。涎を散らしながら伸ばした彼の両手を、桜は一瞬にしてロープで拘束。軸足を蹴飛ばすと、豚野郎は無様に顔から転倒した。
起き上がれないよう、靴の踵で尻を踏みつける桜。
「フラストレーションがたまるのは仕方が無いとして、それを赤の他人に向けるなんてクズね」
足を十センチほど上げてから、また踏みつける。
ポケットから茶色い瓶を取り出すと、開いて少しずつ傾ける。
豚野郎の後頭部に一滴ずつこぼれた液体が強烈な酸性臭を伴って肉を焼いていった。
「おまけにののしられて喜ぶなんて、変態にも程があるわ。クズ。変態。救いようのない豚」
言葉を句切るたびに瓶を強く方向けていき、最後には瓶ごと豚野郎へと叩き付けた。
「豚にすら無礼だわ。謝りなさいよ。早く、早く早く早く早く謝りなさいよ」
後頭部をわしづかみにして、地面に幾度も叩き付けていく。
「生きててごめんなさいって、床を汚してごめんなさいって謝りなさい。謝って死になさい。私のために死になさいよ!」
完全に突っ伏した豚野郎。
顔側面の床に、桜は包丁を突き立てた。
「良かったわね。一つだけ人の役に立てて、良かったわね?」
桜は馬鞭を壁からもぎとると、強く振りかざした。
「嘶きなさい。変態に相応しく人でも豚でもない醜い声をあげて、尻を踏まれて死ぬまで啼きなさい」
鞭を乱暴に叩き付けながら、桜は狂ったように笑い始めた。
醜い鳴き声と笑い声が部屋の中で混ざり合う。
およそ誰も踏み込むことの出来ないような、この世界からも隔絶されたような空間が、そこにはあった。
憎しみと、憎しみ。
逃避と、逃避。
喜びと、喜び。
いびつな立体パズルのように組み合わさった二人の感情は、永遠に近い数百秒の中に閉じこもった。
●『意識の高いドM覚者』佐戸・悟(CL2001371)
「さあ、来いよ」
悟は背を丸め、わずかに乗り出すようにして相手を両手でもって挑発した。
ブリーフ一枚の豚野郎と、ブリーフ一枚の悟。
全く同じ条件の中、互いに違いをにらみ合う。
「来いよ豚野郎!」
佐戸悟はドM野郎である。
「どこを狙っている」
腹に叩き付けられた鉄パイプを押さえつけながら、悟は目を見開いた。
「……急所を外しただろうが!」
佐戸悟は、意識の高いドM野郎である。
豚野郎を一度突き飛ばし、両腕を広げるように構える。
「殺しに来いよ! その醜い顔をみっともなくさらして俺を攻撃しろよ! 醜い豚声で鳴いてみろ! ほら!」
「ブヒィ!」
拳を握りしめた豚野郎が悟の顔面を殴りつける。
「もっとだ!」
「ブヒィ!」
平手が悟の横面を叩く。
「何を遠慮してんだ! ここ、だろうが!」
落ちた鉄パイプを豚野郎に再び持たせ、自らの脳天を指さした。
「不満を俺にぶちまけろ! 俺は死なない!」
「ブ……ヒィ!」
直撃。
血を流して倒れる悟を、豚野郎は息を荒げながら見下ろしていた。
「きいたぜ」
むくりと起き上がる。
「だが足りねえ……」
「ブヒィ!?」
立ち上がってゆっくりと歩み寄ってくる悟に恐怖したかのように、豚野郎は必死で鉄パイプを叩き付けた。
側頭部に直撃するも、倒れもせずじりじりと歩み寄ってくる悟。
「てめぇの憤りはそんなもんか? ふざけるなよ豚野郎! そんな覚悟で挑戦するつもりだったのか! ふざけるな! ふざけるなよォ!?」
血まみれの手で豚野郎の顔面を鷲づかみにすると、思い切り突き飛ばす。
拘束椅子へ座らされる豚野郎。
立ち上がれないように額に鉄パイプを押しつけながら、悟は目を見開いた。
「苦痛を悦べ! 生きてることを享受しろ! そんな覚悟もなしに、、このドブクソ豚野郎が!」
鉄パイプで滅多打ちにしながら、悟は大量の血を吐き出した。
つばの混じった血を床に吐き捨て、鉄パイプを放り投げる。
「かつての俺を出してしまった。これでは満足のいく受けとは……言えんな」
口元を手首でぬぐい、悟は部屋を出た。
●『白い人』由比 久永(CL2000540)
各個室からとんでもない声が聞こえてくる。
女子の悲鳴やら狂笑やら、怒り狂った男の声やらなにやらだ。
なんだこの空間は。
久永は額に手を当て、弱ったように椅子にもたれかかった。
「なにゆえ余はこんな場所に……いや、これも仕事だ。えすえむはよく分からぬが、勉強もしたし大丈夫だろう。大丈夫だ……」
自分に言い聞かせるようにしながら、久永はゆっくりと立ち上がる。
個室のドアを開けて入ってくる豚野郎――に、久永はおもむろに扇子の底を押しつけた。
激しい電流に意味不明な声を上げてけいれんする豚野郎。
その場に崩れ落ちた所で、足を掴んで引きずっていった。
壁に固定された鎖手錠をあえて片足にだけ嵌めると、数歩下がって椅子に座った。
足を組み、扇子を開いて自らを仰ぎ始める。
「面妖な古妖もいたものだな。豚の頭に人の身体、そのうえどえむとは……」
まあよく考えたらこういう妖怪結構居るな、とは思った。
モテないブスの憎しみが足だけ10メートルくらい長いブスとなって現われ、結果風俗店の窓からじーっと覗くだけの嫌がらせをするやつとか。こんなのが江戸時代から既にメジャーだったくらいだから古妖もどうかしている。
まこと世はままならぬ。
「とはいえ、まったくもって気味の悪い……近づくでないぞ、無礼者。余を誰と心得る」
メモを開く。
ふむふむと頷いて、閉じた。
「それにしても豚野郎とはな。豚はああ見えて知的で綺麗好きな生き物だぞ。しかも食べると美味しいときた。そなたとは似ても似つかぬなあ」
愚劣で醜悪、という言葉は使わない。
ましてクソとかいわない。
久永は全然意識していないが、結構ハマったSMの言葉責めスタイルである。
「謝れ、全国の豚さんに」
長い棒で豚野郎の腹をつつくと、久永は足を組み替えた。
「さて、最後くらいは望みを叶えてやってもいいが……打ち抜かれるのと痺れるのは、どちらがいい」
希望を聞く気がまるでないという顔で、久永は言った。
●エルフィリア・ハイランド(CL2000613)
集団プレイ用の部屋で、エルフィリアは退屈していた。
なんか皆示し合わせたように個室に入っていくもんだから、集団プレイ用だっつってんのに使っているのがエルフィリアだけなのだ。
これではだだっ広い個室である。
「まあ、でも、やるからには……よね。別に本職サンじゃあないけど」
パチンと指を鳴らすと、エルフィリアのコスチュームがボンテージに変わった。
既に豚野郎はスタンバイしている。
そんな彼の顎を指で撫でるようにすると、目線を合わせてかがみ込んだ。
「あらあら、こんなに熱くなっちゃって。さぞかし嫌なことがあったのね」
興奮気味の豚野郎。
応じるように指が頬をなで始める。
「いいわ、アタシが忘れさせてあげる」
エルフィリアはサディスティックに笑うと、豚野郎の頬を強く平手で叩いた。
鞭がしなり、床を叩いた。
馬鞭でなく、扱いの難しい牛追い鞭である。
はじける音が広い部屋を反響し、どこか孤独でどこか自由な空気がエルフィリアたちの間に生まれていく。
「マッサージから始めましょうか。つらいのは、ここ?」
エルフィリアの鞭が豚野郎の腰を打つ。
低くうめく豚野郎。
「それとも、ここ?」
エルフィリアの鞭が豚野郎の尻を打つ。
低くうめく豚野郎。
SMはサドマゾの略で、世間一般には単純に暴力の受け与えで喜ぶ異常者とみられている。仕方の無い事実だが、それが古来から現代にかけて根強く存在しているゆえんは、人間がどうしても持っている支配欲と非支配欲がSMの本来のありかただからだ。
一説にはスレイブアンドマスターの頭文字とも言われるSMの、それは最も重要な要素である。
「気持ちいい?」
思いやらねば鞭は打てぬ。
愛がなければ苦痛は注げぬ。
あらゆるものを選択しなければならないこの世界で、人は命令を待っている。
あらゆるものが自らを脅かすこの世界で、人は信頼を求めている。
その最終到達系のひとつが、今エルフィリアと豚野郎の間に存在する関係なのだ。
「ヒィ……ヒィ……」
荒い息をする豚野郎。身体は鞭の跡が無数に残っているが、人間であれば明日にでも消えているような傷だった。
(そうよ。鞭を打つのも踏みつけるのも、非支配欲を満たしてあげるためのもの。目的と手段をはき違えてはいけないわ。これはとても、崇高な交わり……)
靴の裏を翳し、豚野郎にほほえみかける。
「おなめなさい」
「ヒィ……ヒィ……」
首をねじり、なんとか舌を伸ばそうとする豚野郎。
絶妙な位置にある靴にうまく舌がとどかず、手で靴を掴もうとする豚野郎――を、エルフィリアは容赦なく蹴りつけた。
「おなめなさい」
頭をヒールで踏みつけ、再び靴底を翳す。
豚野郎は幸福の光を放ちながら、エルフィリアの靴底へ必死に舌を伸ばした。
この後、古妖『豚野郎』は蓄積したフラストレーションを解消し、輝く空へと消えていった。
だがきっと、これが全ての終わりではないだろう。
日本社会は今この瞬間にも誰かを犠牲にして回っている。
その苦しみは軋みとなって人の心を壊してしまうだろう。
だがあるときふと、不思議と気持ちが軽くなることがる。
……それはきっと、豚野郎があなたの苦しみを浚っていった時なのだ。
とあるSMクラブに発生した古妖『豚野郎』。
それは日本社会に蔓延するフラストレーションの化身である。
サービス残業を強いられる会社員。板挟みのような指示におびえる日々。部下の前で器の大きさを求められる上司や、接待合戦の日々。安く買いたたかれる技術や、限界まで買いたたけと要求される担当者。
行き場の無いフラストレーションは町にたまっていく。
だがそれでも生きていけるのは、誰かがそれをかすめ取るように喰っているからだとされている。
豚野郎。
社会の苦しみを一身に背負って生まれたこの妖怪たちの未来に待つのは破滅か、救済か。
●『凡愚の仮面』成瀬 基(CL2001216)
更衣室でジャケットを脱ぎながら、基は後悔していた。
ここへ来るときに渡された『豚野郎が喜ぶサディスティックトーク・男性編』とかいうものを開いてみたが、もうなんか内容がすごいことになっていた。語彙力が死ぬくらいすごいことになっていた。
「どうしよう、どうしてこんな依頼に来ちゃったのかな僕……」
両手で顔を覆う。
「僕は超のつく草食系男子だよ。仮にも警察官だよ。なんでこんな未知の風俗店みたいな場所に……」
と言いつつ、顔を上げる。
覆う前とは打って変わって、目にはナイフのような光が籠もっていた。
「でも、負った責任は果たす」
順番待ちみたいなテンションを終え、ブリーフ一丁で個室の扉を開ける豚野郎。
彼を待っていたのは、椅子の上で足を組み、肘置きに頬杖をつく基だった。
いや、基様だった。
暴力的な衝動に駆られて走り出そうとする豚野郎を、基は顎を上げるだけで止めた。
「誰が動いていいって?」
帽子掛けからとった軍帽を斜めに被ると、基は薄く笑った。
嗜虐的なその視線に、豚野郎は本能的に腰を折った。
人はいつも守るものを持つ。ゆえに屈することは許されない。
しかし今この場所に限って言えば、万人が屈することを許されているのだ。
ぽたぽたと流れる涎や汗を、目だけを動かして示す基。
「こんなに床を汚して」
「ブヒィ……」
「掃除、しなよ」
慌てて周囲を見回すが、掃除道具などこの部屋にはない。
手でぬぐえと?
それともまさか――。
「ホラ、床に頭をつけて」
基は立ち上がり、豚野郎の頭を掴んだ。地面へと押しつける。
「手伝ってあげるからさ」
自らの体液がしたたった床を舐めさせられるなど。
社会一般ではまず遭遇しない屈辱。
そんなことを考える間もなく、基は豚野郎の後頭部を靴底で押した。
憎しみもない相手の後頭部を自らの靴で強く踏むことなど、経験することなどあろうか。
それだけの相手が人生の中に生まれようか。
この瞬間、基と豚野郎の間にきわめて特殊な関係性が生まれたように、思えた。
縁の黒い眼鏡を包むように掴み、そっと押し上げる基。
「お前」
何も言うまでも無く、豚野郎は基の前に屈服した。
深く頷き、壁際の馬鞭を手に取る。
「いいよ、今回はトクベツだ」
強く。
高く。
基の激情が振り上がる。
●『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)
薄い桃色の照明が照らす個室の中で、ミュエル19歳は腕組みしていた。
いや、この際だから正確に述べよう。
ミュエル19歳がえらく露出の高い革のボンテージを身に纏い、三角木馬と手錠つきの椅子に挟まれて自分の腰やあばらの露出部分をせめて数センチでも隠すようにと手を組んで覆っていた。地味にこの前の水着写真と同じポーズだった。
控えめに言って犯罪だった。
「ここにくれば……度胸、つくんだよね……?」
とか酒飲まされて持ち帰られる上京大学生みたいなこと言い出すから余計にヤバかった。
そこへ『ウィーッス』みたいなテンションで入ってくる豚野郎。
今更なことだが、社会のフラストレーションを集積した彼ら豚野郎は様々な人間の姿をしている。ミュエルの部屋にやってきたのはえらく贅肉の多いぶくぶくとした四~五十代ほどの男性だった。
控えめに言って犯罪だった。
「…………」
「えっと」
豚野郎がミュエルに期待の目線を送ってくるが、状況自体がどうかしているせいでミュエルはどうしていいかわからない様子だった。
まずは事前に貰ったメモを開く。無数にある単語の中でなんとか口にできそうなワードを選択してみる。
「この、豚野郎……」
探り探りの発音に、豚野郎がキレた。
壁を叩いて立ち上がり、地面を踏みならしながら抗議の意志をぶつけてくる。
その際も顔つきが変わらないというかなりアレな光景にミュエルの混乱はピークに達した。
「あ、ご、ごめんなさい……悪口じゃなくて、そ、その……」
若者が社会を経験する最初の場は主にアルバイトとされているが、そうした場には一定確率でこんな状況が生まれる。
ひたすら怒りだけをぶつけてくる客とそれにおびえる店員という構図だ。なまじ暴力や暴言を浴びせてこないので本当にどうしたらいいか分からないのだ。
が、率直な話。
「きもちわるい」
と店員側が呟いてしまうことはごくまれである。
あらゆるものが終わる。
が、しかし。
かつてない『なにか』が始まっていた。
全ての憑きものが落ちたような様子でたたずむ豚野郎と、完全に引いているミュエル。
メモを見る。
褒め罵りプレイとか優しい束縛とか高度なことが書かれていたが、理解できるミュエルではない。
「ひ、ひざまづいて靴……うわ」
メモを投げ捨てる。
足にしがみついてくる豚野郎。
「や、やめ――っ」
この日、明石ミュエルは『赤の他人に靴を舐められる』という体験をした。
控えめに言って、犯罪である。
●『”狂気”に応ずる者』春野 桜(CL2000257)
メモをぱらぱらとめくり、桜は興味なさそうに放り投げた。
「理解できない世界ね。自身ないわ」
代わりに取り出した包丁をくるくると手の中でもてあそびながら、桜はいつものテンションに戻った。
「殺しましょう。よく分からないから」
桜が立ち上がるのと、個室のドアが開くのは同時だった。
「ブヒィ!」
個室に飛び込み、目に付いた桜へ掴みかかろうと駆け寄ってくる豚野郎。
よほど嫌なことがあったのだろうか。涎を散らしながら伸ばした彼の両手を、桜は一瞬にしてロープで拘束。軸足を蹴飛ばすと、豚野郎は無様に顔から転倒した。
起き上がれないよう、靴の踵で尻を踏みつける桜。
「フラストレーションがたまるのは仕方が無いとして、それを赤の他人に向けるなんてクズね」
足を十センチほど上げてから、また踏みつける。
ポケットから茶色い瓶を取り出すと、開いて少しずつ傾ける。
豚野郎の後頭部に一滴ずつこぼれた液体が強烈な酸性臭を伴って肉を焼いていった。
「おまけにののしられて喜ぶなんて、変態にも程があるわ。クズ。変態。救いようのない豚」
言葉を句切るたびに瓶を強く方向けていき、最後には瓶ごと豚野郎へと叩き付けた。
「豚にすら無礼だわ。謝りなさいよ。早く、早く早く早く早く謝りなさいよ」
後頭部をわしづかみにして、地面に幾度も叩き付けていく。
「生きててごめんなさいって、床を汚してごめんなさいって謝りなさい。謝って死になさい。私のために死になさいよ!」
完全に突っ伏した豚野郎。
顔側面の床に、桜は包丁を突き立てた。
「良かったわね。一つだけ人の役に立てて、良かったわね?」
桜は馬鞭を壁からもぎとると、強く振りかざした。
「嘶きなさい。変態に相応しく人でも豚でもない醜い声をあげて、尻を踏まれて死ぬまで啼きなさい」
鞭を乱暴に叩き付けながら、桜は狂ったように笑い始めた。
醜い鳴き声と笑い声が部屋の中で混ざり合う。
およそ誰も踏み込むことの出来ないような、この世界からも隔絶されたような空間が、そこにはあった。
憎しみと、憎しみ。
逃避と、逃避。
喜びと、喜び。
いびつな立体パズルのように組み合わさった二人の感情は、永遠に近い数百秒の中に閉じこもった。
●『意識の高いドM覚者』佐戸・悟(CL2001371)
「さあ、来いよ」
悟は背を丸め、わずかに乗り出すようにして相手を両手でもって挑発した。
ブリーフ一枚の豚野郎と、ブリーフ一枚の悟。
全く同じ条件の中、互いに違いをにらみ合う。
「来いよ豚野郎!」
佐戸悟はドM野郎である。
「どこを狙っている」
腹に叩き付けられた鉄パイプを押さえつけながら、悟は目を見開いた。
「……急所を外しただろうが!」
佐戸悟は、意識の高いドM野郎である。
豚野郎を一度突き飛ばし、両腕を広げるように構える。
「殺しに来いよ! その醜い顔をみっともなくさらして俺を攻撃しろよ! 醜い豚声で鳴いてみろ! ほら!」
「ブヒィ!」
拳を握りしめた豚野郎が悟の顔面を殴りつける。
「もっとだ!」
「ブヒィ!」
平手が悟の横面を叩く。
「何を遠慮してんだ! ここ、だろうが!」
落ちた鉄パイプを豚野郎に再び持たせ、自らの脳天を指さした。
「不満を俺にぶちまけろ! 俺は死なない!」
「ブ……ヒィ!」
直撃。
血を流して倒れる悟を、豚野郎は息を荒げながら見下ろしていた。
「きいたぜ」
むくりと起き上がる。
「だが足りねえ……」
「ブヒィ!?」
立ち上がってゆっくりと歩み寄ってくる悟に恐怖したかのように、豚野郎は必死で鉄パイプを叩き付けた。
側頭部に直撃するも、倒れもせずじりじりと歩み寄ってくる悟。
「てめぇの憤りはそんなもんか? ふざけるなよ豚野郎! そんな覚悟で挑戦するつもりだったのか! ふざけるな! ふざけるなよォ!?」
血まみれの手で豚野郎の顔面を鷲づかみにすると、思い切り突き飛ばす。
拘束椅子へ座らされる豚野郎。
立ち上がれないように額に鉄パイプを押しつけながら、悟は目を見開いた。
「苦痛を悦べ! 生きてることを享受しろ! そんな覚悟もなしに、、このドブクソ豚野郎が!」
鉄パイプで滅多打ちにしながら、悟は大量の血を吐き出した。
つばの混じった血を床に吐き捨て、鉄パイプを放り投げる。
「かつての俺を出してしまった。これでは満足のいく受けとは……言えんな」
口元を手首でぬぐい、悟は部屋を出た。
●『白い人』由比 久永(CL2000540)
各個室からとんでもない声が聞こえてくる。
女子の悲鳴やら狂笑やら、怒り狂った男の声やらなにやらだ。
なんだこの空間は。
久永は額に手を当て、弱ったように椅子にもたれかかった。
「なにゆえ余はこんな場所に……いや、これも仕事だ。えすえむはよく分からぬが、勉強もしたし大丈夫だろう。大丈夫だ……」
自分に言い聞かせるようにしながら、久永はゆっくりと立ち上がる。
個室のドアを開けて入ってくる豚野郎――に、久永はおもむろに扇子の底を押しつけた。
激しい電流に意味不明な声を上げてけいれんする豚野郎。
その場に崩れ落ちた所で、足を掴んで引きずっていった。
壁に固定された鎖手錠をあえて片足にだけ嵌めると、数歩下がって椅子に座った。
足を組み、扇子を開いて自らを仰ぎ始める。
「面妖な古妖もいたものだな。豚の頭に人の身体、そのうえどえむとは……」
まあよく考えたらこういう妖怪結構居るな、とは思った。
モテないブスの憎しみが足だけ10メートルくらい長いブスとなって現われ、結果風俗店の窓からじーっと覗くだけの嫌がらせをするやつとか。こんなのが江戸時代から既にメジャーだったくらいだから古妖もどうかしている。
まこと世はままならぬ。
「とはいえ、まったくもって気味の悪い……近づくでないぞ、無礼者。余を誰と心得る」
メモを開く。
ふむふむと頷いて、閉じた。
「それにしても豚野郎とはな。豚はああ見えて知的で綺麗好きな生き物だぞ。しかも食べると美味しいときた。そなたとは似ても似つかぬなあ」
愚劣で醜悪、という言葉は使わない。
ましてクソとかいわない。
久永は全然意識していないが、結構ハマったSMの言葉責めスタイルである。
「謝れ、全国の豚さんに」
長い棒で豚野郎の腹をつつくと、久永は足を組み替えた。
「さて、最後くらいは望みを叶えてやってもいいが……打ち抜かれるのと痺れるのは、どちらがいい」
希望を聞く気がまるでないという顔で、久永は言った。
●エルフィリア・ハイランド(CL2000613)
集団プレイ用の部屋で、エルフィリアは退屈していた。
なんか皆示し合わせたように個室に入っていくもんだから、集団プレイ用だっつってんのに使っているのがエルフィリアだけなのだ。
これではだだっ広い個室である。
「まあ、でも、やるからには……よね。別に本職サンじゃあないけど」
パチンと指を鳴らすと、エルフィリアのコスチュームがボンテージに変わった。
既に豚野郎はスタンバイしている。
そんな彼の顎を指で撫でるようにすると、目線を合わせてかがみ込んだ。
「あらあら、こんなに熱くなっちゃって。さぞかし嫌なことがあったのね」
興奮気味の豚野郎。
応じるように指が頬をなで始める。
「いいわ、アタシが忘れさせてあげる」
エルフィリアはサディスティックに笑うと、豚野郎の頬を強く平手で叩いた。
鞭がしなり、床を叩いた。
馬鞭でなく、扱いの難しい牛追い鞭である。
はじける音が広い部屋を反響し、どこか孤独でどこか自由な空気がエルフィリアたちの間に生まれていく。
「マッサージから始めましょうか。つらいのは、ここ?」
エルフィリアの鞭が豚野郎の腰を打つ。
低くうめく豚野郎。
「それとも、ここ?」
エルフィリアの鞭が豚野郎の尻を打つ。
低くうめく豚野郎。
SMはサドマゾの略で、世間一般には単純に暴力の受け与えで喜ぶ異常者とみられている。仕方の無い事実だが、それが古来から現代にかけて根強く存在しているゆえんは、人間がどうしても持っている支配欲と非支配欲がSMの本来のありかただからだ。
一説にはスレイブアンドマスターの頭文字とも言われるSMの、それは最も重要な要素である。
「気持ちいい?」
思いやらねば鞭は打てぬ。
愛がなければ苦痛は注げぬ。
あらゆるものを選択しなければならないこの世界で、人は命令を待っている。
あらゆるものが自らを脅かすこの世界で、人は信頼を求めている。
その最終到達系のひとつが、今エルフィリアと豚野郎の間に存在する関係なのだ。
「ヒィ……ヒィ……」
荒い息をする豚野郎。身体は鞭の跡が無数に残っているが、人間であれば明日にでも消えているような傷だった。
(そうよ。鞭を打つのも踏みつけるのも、非支配欲を満たしてあげるためのもの。目的と手段をはき違えてはいけないわ。これはとても、崇高な交わり……)
靴の裏を翳し、豚野郎にほほえみかける。
「おなめなさい」
「ヒィ……ヒィ……」
首をねじり、なんとか舌を伸ばそうとする豚野郎。
絶妙な位置にある靴にうまく舌がとどかず、手で靴を掴もうとする豚野郎――を、エルフィリアは容赦なく蹴りつけた。
「おなめなさい」
頭をヒールで踏みつけ、再び靴底を翳す。
豚野郎は幸福の光を放ちながら、エルフィリアの靴底へ必死に舌を伸ばした。
この後、古妖『豚野郎』は蓄積したフラストレーションを解消し、輝く空へと消えていった。
だがきっと、これが全ての終わりではないだろう。
日本社会は今この瞬間にも誰かを犠牲にして回っている。
その苦しみは軋みとなって人の心を壊してしまうだろう。
だがあるときふと、不思議と気持ちが軽くなることがる。
……それはきっと、豚野郎があなたの苦しみを浚っていった時なのだ。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
特殊成果
なし
