【地下闘技】タッグマッチで魅了せよ
●
ツー・ユェン。彼はAAAに所属するスパイだ。違法に開かれた地下闘技場に潜入し、その裏で糸を引いているであろう団体もろとも検挙するべく証拠集めを進めている。
だがそのためには、ボスに近づけるだけの功績が必要だった。
功績とは、彼のスカウトしたファイターが闘技場で高い収益をあげることに他ならない。
「前回はよく戦ってくれた。仲間同士だとバレないようにだろう? 全力で破壊しあってくれたおかげで俺の嘘も通しやすかったぜ。お前たちはそれぞれ借金のカタにとられたり戦争後遺症で狂ったり宗教にハマったりとまあ、闘技場でバトらなきゃ死ぬような連中として通してある。多少おかしなことを口走っても周りは気にしないだろう」
そこでだ、とユェンは吸っていた煙草を灰皿に置いた。
「今度闘技場に初デビューとなるわけだが、こいつは一見の客に向けたお披露目も兼ねている。まずはタッグマッチを見せてやってくれとのお達しだ」
わざわざタッグを組ませるのは、彼らを制御可能な人間かどうか知りたがっているという要素も見え隠れしているが、さして気にする必要は無いだろう。
「一番気にするべきは客の盛り上がりだ。ハメ技や一方的なマウントは嫌われる傾向があるから、できるだけ客ウケを狙った試合展開を作ってみてくれ。ただし出来レースに見えないようにも気をつけろよ。ここでコケたら次が無いからな……おっと」
ユェンは時計を見ると、煙草を消してきびすを返した。
「じゃあ、俺はお偉方のご機嫌を取ってくる。くれぐれも頼んだぜ!」
ツー・ユェン。彼はAAAに所属するスパイだ。違法に開かれた地下闘技場に潜入し、その裏で糸を引いているであろう団体もろとも検挙するべく証拠集めを進めている。
だがそのためには、ボスに近づけるだけの功績が必要だった。
功績とは、彼のスカウトしたファイターが闘技場で高い収益をあげることに他ならない。
「前回はよく戦ってくれた。仲間同士だとバレないようにだろう? 全力で破壊しあってくれたおかげで俺の嘘も通しやすかったぜ。お前たちはそれぞれ借金のカタにとられたり戦争後遺症で狂ったり宗教にハマったりとまあ、闘技場でバトらなきゃ死ぬような連中として通してある。多少おかしなことを口走っても周りは気にしないだろう」
そこでだ、とユェンは吸っていた煙草を灰皿に置いた。
「今度闘技場に初デビューとなるわけだが、こいつは一見の客に向けたお披露目も兼ねている。まずはタッグマッチを見せてやってくれとのお達しだ」
わざわざタッグを組ませるのは、彼らを制御可能な人間かどうか知りたがっているという要素も見え隠れしているが、さして気にする必要は無いだろう。
「一番気にするべきは客の盛り上がりだ。ハメ技や一方的なマウントは嫌われる傾向があるから、できるだけ客ウケを狙った試合展開を作ってみてくれ。ただし出来レースに見えないようにも気をつけろよ。ここでコケたら次が無いからな……おっと」
ユェンは時計を見ると、煙草を消してきびすを返した。
「じゃあ、俺はお偉方のご機嫌を取ってくる。くれぐれも頼んだぜ!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.タッグマッチを行ない、観客を盛り上げる
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
皆さんは客たちへのお披露目とすべく、タッグマッチを行ないます。
参加者全8人と仮定して、4組作って2試合を行なうことになるでしょう。
タッグの組み方はお任せしますが、はじめは『こいつと戦いたいから』くらいの動機で構いません。
●成功条件の補足
タッグマッチは既に組まれていますので、全四試合中一試合でもウケればOKとなっております。(具体的には地下闘技場のボスが満足します)
完全成功のコツは、それぞれの試合テイストをあえて変えていくことで広い客層にアピールしていくこと、だそうです。
●シチュエーションデータ
闘技場のステージは四方と天井を鉄格子で囲まれたサイコロ型のステージです。
周囲をコロッセオ式に観客席が囲んでおり、反応は逐一わかるようになっています。
●ボーナス要素
試合中、観客がどれだけ盛り上がったかによって皆さんのファイターとしての価値が上がります。価値が上がると重宝され、今後のシナリオ展開が良い方向に進んでいきます。
この盛り上げ方は大体三通りあります。
シナリオを組んで巧みな出来レースを行なう物語タイプ。これは演技がバレると途端にブーイングが来るので苦手な人は避けましょう。対戦カードも大体いつも通りになります。
ガチでバトルしてとにかく勝利に拘る覇道タイプ。ある意味制御しやすいので次からどんどん強い相手を当てる形で運用されます。
観客への直接的なアピールやウケを狙った技の使用で盛り上げるパフォーマータイプ。奇をてらった人が多いので、結果として同じようなタイプのファイターと当たることが多くなるでしょう。
この三つから好きなタイプを選んでみてください。勿論オリジナルの方法を試して貰っても構いません。
●悪名要素
地下闘技場でのしあがるという都合上、悪名ポイントがつきやすくなります。
悪名ポイントを増やしたくない場合は変装や仮面覆面で対応できますのでEXスキルに『○○で身分を隠します』といった感じで書いてください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年09月29日
2016年09月29日
■メイン参加者 8人■

●汚泥のような栄光を、安酒のような幸福を
人々は興奮を求めている。
闘争と刺激を求めている。
特殊な金網で覆われた四角形のリングを取り囲み、人々は待っている。
法規を超えた欲望が、そこには渦巻いていた。
「お集まりの皆さん。ここでニューフェイスのお披露目です! 今回はなんと一気に八人! しかも達人クラスの超大物たちです。掛け金の準備はよろしいですか? ではご覧頂きましょう――!」
リングに光りが満ちていく。
興奮が注がれていく。
リングへの階段を上がり、歓声の中央へと立つ『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)。
普段から着崩した和服を更に崩して、前列の観客へとウィンクした。
その横に並ぶ、巫女装束の『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。
「チーム『ドキドキ和装女子』! ご覧ください、ラウンドガールじゃありませんよ。お色気むんむんの美女たちだ! その実力は――!?」
「お、おいろけ……」
般若の面で顔を隠した祇澄は実況者のあおりに軽く引いていた。
「私には、無理ですから」
「神室ちゃんは充分お色気むんむんだと思うわよん」
襟を軽く引っ張ってみる輪廻。
慌てて直す祇澄に、観客がどっと沸いた。
「対するは希代の美少年コンビ! チーム『矛盾』!」
入場コールと同時に、光り輝く『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が螺旋をえがくように飛行しながら下りてきた。それもセーラーブラウスに半ズボンというウケの良すぎるコスチュームである。
ワイヤーアクションのような不可思議さに思わず身を乗り出す観客たち。
そんなきせきが着地したのは、フルフェイスヘルメットとアーマーで身を覆った岩倉・盾護(CL2000549)の頭上であった。
『それは違うだろう』という動作できせきをおろす盾護。
観客たちは一連のやりとりの中で、彼らをパフォーマンス専門のファイターだと認識した。
多くのパフォーマーは実力が乏しいために観客を笑わせたり色気を振りまいたりして楽しませる者で構成されている。
プロレス出身者からすると遺憾なことだが、地下闘技場がそれだけ派手な戦闘演出に寄っているという側面の現われでもあった。
「それでは――試合開始!」
ゴングが鳴り響くと同時に、祇澄と盾護は自らを複雑な術式で固めはじめた。
よってぶつかり合うのは輪廻ときせきだ。
容赦なく抜刀し、きせきの首めがけて高速スイングをしかける輪廻。
彼女のとろんとした雰囲気から、人間を一度に何十人も殺せそうな動きが出たことに観客たちがどよめく――が、それ以上にどよめいたのはきせきがオモチャのようにカラフルなスティックでその斬撃を跳ね上げたことだった。
動きに対応している。
実力はほぼ互角。
輪廻はそのままきせきの周りを遊ぶように回りながら、連続で即死級の斬撃を打ち込んでいく。
対するきせきは両手に持ったスティックを器用に振り回し、彼女の斬撃をはねのけていった。更に隙を突くようにして負けないくらいの高速打撃を叩き込んでいく。
この場は違法な賭博場であるがゆえ、写真はもちろん動画撮影は勿論禁止。しかし普通の人間がそうそう目にすることの無い高度なバトルに観客たちが釘付けになった。
実力のごまかしなどとんでもない。達人級の腕前だ。
しばらくして、盾護と祇澄がそれぞれの相手へとぶつかっていく。
四人が複雑に交差するように、祇澄はきせきへ、盾護は輪廻へと飛びかかる。
それぞれの打撃や斬撃をいとも簡単にはねのける二人の姿に、めまぐるしく連続するサーカスのような芸術性が生まれていた。
そんな中、きせきの打撃を双刀ではねのけて、祇澄が盾護の元へと飛びかかった。
「お覚悟を」
刀を真っ赤にヒートアップさせ、盾護のボディへ叩き付ける。
盾護は激しく吹き飛ばされ、纏っていた因子の鎧がはげ落ちた。
「見ろ! 装甲をはぎ取ったぞ!」
観客が立ち上がって叫んだ。なるほど、このレベルの技は見たこともないか。
祇澄はこの場のレベルを直感的に悟った。
金網から跳ね返って落ちてくる盾護に、連続で斬撃を浴びせにかかる祇澄。
「ひと ふた み よ いつ む なな や ここのたり――ふるべ ゆらゆらと ふるべ」
斬撃をうけ、盾護はどてんと仰向けに倒れた。
わざとらしく足を上げた動作に、観客はこれが出来レースなのか高度な決闘なのかが分からなくなっていく。
そんな盾護を抱えおこし、頭を撫でてやるきせき。
盾護は頷くと、きせきをまるごと抱え上げた。
不可思議な行動に構える祇澄――に対して盾護は、おもむろにきせきを投擲した。
「――!?」
突拍子も無い行動に、祇澄の防御がわずかに緩む。そこへきせきが思い切り体当たりをしかけた。もつれあってごろごろ転がっていく二人。
「積極的ねん」
輪廻は刀を鞘に収め、放り捨てる。
更に和服の下に手を入れると、するするとショーツを脱ぎ去った。
突然の行動に、きせきも盾護も、そして観客も息を呑む。
ショーツを投げ捨てると、輪廻は蹴り技の構えで手招きした。
当然足を上げるので、すり鉢状の観客席からはともかく寝転んだきせきからは内側が丸見えになるのだが……。
「だめです」
祇澄がパッときせきの両目を手で塞いだ。
一方で盾護は輪廻へ突撃。
彼のタックルを宙返りでかわし、後頭部を蹴りつけていく輪廻。
着地と共に胸を僅かに開いて風を送り入れる。
観客席から異様な歓声が沸き起こった。
「ほらほら、お客さんの期待に応えるための大チャンスよん」
一方こちらはVIP席。
ユェンは闘技場のボスの後ろに立って、共に試合の様子を眺めていた。
「どうでしょうボス、とんでもねえ試合になったでしょう?」
「確かに……あんな逸材はそういねえ。どこから引き抜いてきた」
「教えられません。俺の独自ルートってやつですよ」
ヘラヘラと笑ってみせるユェンに、ボスは上機嫌だ。
試合中特に目を引くのは輪廻と盾護だった。
自らの色気を理解し、その上で目を引きながら派手なバトルを演出できる輪廻。一方で彼女の狙いを的確に読み取り、時にさりげなく時にわざとらしくハプニングを引き起こしていく盾護の振る舞いは、無口ながら完璧な仕事ぶりと言えた。
「あいつらは賞金制にしないほうが儲かるな。パフォーマンス枠にあいつらを入れられるか」
「言って聞かせますよ。期待しててください」
ユェンは興奮して応えた……ように見せかけて、見えない所で強くガッツポーズをした。
試合は大方の予想通りと言うべきか、押され続けた盾護が偶然を装って輪廻の服を引っ張り、胸が露わになった輪廻が手でそれを隠した隙にきせきと盾護によるクロスアタックが炸裂する……といったサービス満点の締め方で勝敗がついた。
とはいえ彼らに関しては、勝敗などはじめから関係なかっただろう。
●血にまみれた快楽を、罪にまみれた悦楽を
パフォーマーがあれだけの試合を見せつけたことで、会場はまるでできあがりきった宴会場と化していた。
これだけの刺激を受けた人間は、よほどの興奮では満足しない。
そんな状況にありながら、葦原 赤貴(CL2001019)は冷静に通路を進んでいた。
フードを深く被り、目元や口元を隠していく。
隣では『エビルハンド』鹿ノ島・遥(CL2000227)が般若風の覆面と空手着で自らを包んでいる。
「名前出さなくて良かったのか、せっきー」
「売りたいのはチーム名だ。オレだけ売れても仕方ない」
そう言いながら、会場入りする前にユェンから言われたことを思い出していた。
『赤貴、お前チームの名を売りたいんだってな。それならとっておきの舞台がある。けど……それにはボスの声が必要だ。まずはエキシビジョンで力を見せつけろ。強ければ強い程いい。意味はわかるな?』
会場は既に煮立っている。
ステージにあがった『子狐丸』御白 小唄(CL2001173)は、その雰囲気に圧倒されかけた。
「大丈夫だぜ、子狐丸! 俺たち正義の味方チームだろ?」
『魔法少女ブレイズ』天楼院・聖華(CL2000348)がぽんと肩を叩いてくる。
「チーム『INVERSE』をやっつけようぜ!」
「う、はい……」
僕もINVERSEなんだけどな、と思ったけど黙っておく小唄である。
やがて赤貴たちがステージへ上がってくる。
聖華は早速刀を抜いて身構えた。
「やい、INVERSE! 正義の味方、魔法少女ブレイズと子狐丸が相手だぜ!」
二刀流の魔法少女コスチュームというのが珍しいのだろう。観客の反応は少しばかり特殊だ。
それにステージ上にいるのは四人とも十代前半の子供ばかりだ。
血みどろの地下闘技場には、ある意味似つかわしくない顔ぶれだろう。
しかし。
「リングノ、上デハ、強サノミガ、正義ヨ!」
拳をガンと打ち合わせる遥――いやエビルハンドの迫力に、大の大人までもが息を呑んだ。
「――!」
小唄、もとい子狐丸は拳法の構えをとると、エビルハンドめがけて突撃した。
「コシャクナ……キエエエエエエエエエ!」
正拳突き。
それだけで空気が爆ぜ、まるで大砲でも撃ったかのように後ろの金網が歪んだ。
一方の小唄は横っ飛びにパンチを回避。エビルハンドの側面に回り込むと、素早く足払いを仕掛け――る寸前、地面が急速に隆起。吹き飛ばされる。
赤貴、リングネーム『レッドアイ』の起こした術式攻撃だ。
だが布石は充分に巻いた。聖華は金網を走るようにリング側面ギリギリを走ると、柄ビルハンドへと斬りかかった。
「くらえ!」
「ヌウン!」
翳した腕で斬撃を受けて、体勢も崩さない遥。
どころか飛び込んできた聖華めがけてパンチを叩き込んだ。
複雑に回転しながら吹き飛び、金網にめり込む聖華。
レッドアイは剣を大きく振り込むと、エネルギーを乗せて二人へと発射した。
「「うわああッ!」」
一方こちらはボスのVIP席。
「うひゃあ、魔法少女や! 魔法少女やんなあオトン!」
眼鏡をかけた女子高生が強化ガラスにはりついていた。
「さっきのキラキラするコといい逸材揃いや! オトン、あのこらウチにくれへん!?」
「……だそうだが?」
ボスから視線をパスされ、ユェンは困り顔をしていた。
「お嬢にというと……『アリーナ』ですかい? あそこのファイターは少女だけってキマリじゃねえですか。ブレイズはともかくあの――」
「二人ともカワイーわぁ、な、な、ええやろ!? ユェンも『サロン』に入れたるから」
「ハイッ、喜んでェ!」
ユェンは超イイ笑顔で親指を立てた。
さて、試合の様子に戻ろう。
「ウオオオオオオオオオッ!」
レッドアイは子狐丸の足を掴んで放り投げると、空中に向けて激しいエネルギーの束を解き放った。
貫かれ、どさりと落ちる子狐丸。
「うう……っ」
立ち上がりなら観客の様子を探る。
ふしぎと会場は静かだ。
子供がとてつもない破壊力をぶつけ合っているさまに、戦慄しているのだろう。
エビルハンドとレッドアイはそれぞれ、こちらを追い詰めるかのようにじりじりと歩を進めてきている。
違法な賭博場であるがゆえか、善悪の基準はこの金網一枚でフィルタリングされているようだ。戦っているのが女子供であろうとも、どちらに正義があろうとも、戦いを見たいという欲望によって全てが覆されているのだ。
だがその反面。
観客が一発逆転を求めている。そんな風に、肌で感じることもできた。
「……」
「……」
ブレイズと子狐丸はアイコンタクトをとり、むくりと立ち上がる。
対してグッと深く身構えるエビルハンドとレッドアイ。
そして、隙丸出しでなぐりかかってきた。
「今だ!」
ブレイズの斬撃と子狐丸の蹴りが交差し、相手を一度にはねのける。
二人は素早くターンをかけ、再び交差。
エビルハンドとレッドアイを空中に浮かせると、正面にそれぞれ立った。
せーのと小声で呟くと、勢いよく、そして強烈に殴りつけた。
「グアッ!?」
「ギョエーッ!」
吹き飛び、金網を軽く破壊しながらステージ下へと転がり落ちていくエビルハンドたち。
小唄は深く深く息をついた。
鳴り響くゴング。
爆発したようにあがる歓声。
闘技場の未来が、少しずつ動き出そうとしていた。
●それぞれのフィールド
試合を終え、ファイトマネーを持って現われたユェン。
彼はメンバーを別々に集め、それぞれに『次』の話を持ちかけた。
「個人戦、ですか……」
祇澄に札束を渡し、ユェンは頷いた。
「この闘技場でのスタンダードだ。ファイターは一対一で戦い、勝利すれば『賞金』か『昇格』のどちらかを選べる」
「昇格、すると……」
「そうだ。VIPだらけのバトルに呼ばれることになる。金さえあればなんでもできると思ってるクソ野郎たちを一気に検挙するチャンスってわけだ。あんたのバトルは華があるし何より鋭い。勝ち進むにはぴったりの人材だと思うぜ」
背を向け、最後に。
「試合の手はずは整えておく。あとはアンタが出るかどうかだ」
控え室で着替えを終えた輪廻と盾護を、ユェンはディナーに誘った。
隠れ家的な料亭に通されると、そこにはユェンの他にもう一人女性が座っている。
輪廻とは別の形で色っぽい女性だ。
「来てくれてあんがと。試合見たよ。ゾクゾクしちゃった。アンタ、ショーってもんを分かってる」
「お上手ねん」
「……」
早く本題を、という顔をする盾護に、女は片眉を上げた。
「次の試合、犯罪組織の幹部連中が見に来んの。アンタらが試合をメチャクチャ盛り上げて観客全員引きつける。でもってアタシが連中が持ってる犯罪の証拠を盗む。で、連中はしょっ引かれる」
「……」
これはどういうことだという顔をする盾護に、ユェンが補足を始めた。
「連中は違法な薬物を売買してる組織だ。規模は小さいが慎重で、証拠を全く掴ませない。こいつは……」
「CIA」
「嘘をつけ」
「じゃあFBI」
「ここは日本だ」
「ナンでもいいでしょ。サツのたぐい」
女は首を傾げ、輪廻と盾護を品定めするように見つめた。
「話はカンタン。アンタらがメッチャうまく戦えば、この町から犯罪が一個消える」
きせきと聖華がファミレスに拉致られた。
「なんでも好きなもの喰ってくれ!」
「ほんとか!」
「わーい!」
オムライスとかハンバーグとか注文をつけまくった後、クリームソーダを挟んでユェンはあるパンフレットを取り出した。
「なあ、クリーンな闘技場に興味はないか」
「くりーん?」
「俺らは『アリーナ』と呼んでる。ボスの娘が運営する闘技場だ。ここでは全員が学生服を着て、素手で戦うことになってる。お嬢も二人を気に入ってたし、二人にはピッタリだと思うんだよなあ」
「ほんと?」
「やったな、そういうバトルも楽しそうだぜ!」
「だろう!? じゃあ早速この制服に着替えて約束の場所に来てくれよ」
「「うん!」」
ユェンは二人に『セーラー服』を渡して、大人の顔で虚空を眺めた。
ハンバーグやオムライスが運ばれてくる。
パンフレットには『少女専門のバトルアリーナ』と書かれていた。
「えっと」
「いい制服だろ? 着替えたいよな」
「ぼく……」
「着替えるよな?」
小唄のそばに、遥と赤貴が座っている。
その向かいには、ユェンが立っていた。
「お疲れ。いい勝負だった。刺激的で、観客も沸いてた。けど……なんか物足りないんじゃないのか?」
「……」
「ボスは『INVERSE』に目をつけた。チーム戦の誘いだよ。けど気をつけろよ」
ユェンは札束を小唄へ放り投げてから、重いトーンで言った。
「チーム戦は賞金もデカい。それに名を売ってのし上がりたい連中であふれてる。油断したら殺されるぜ」
「……」
「誘いはした。逃げたって誰も責めない。あとは『やる』か『やらない』かを決めるだけだ。話し合っとけ」
そこまで言って、控え室を出て行くユェン。
赤貴は顔を上げ、小唄と遥の顔を見た。
三人の気持ちは……。
人々は興奮を求めている。
闘争と刺激を求めている。
特殊な金網で覆われた四角形のリングを取り囲み、人々は待っている。
法規を超えた欲望が、そこには渦巻いていた。
「お集まりの皆さん。ここでニューフェイスのお披露目です! 今回はなんと一気に八人! しかも達人クラスの超大物たちです。掛け金の準備はよろしいですか? ではご覧頂きましょう――!」
リングに光りが満ちていく。
興奮が注がれていく。
リングへの階段を上がり、歓声の中央へと立つ『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)。
普段から着崩した和服を更に崩して、前列の観客へとウィンクした。
その横に並ぶ、巫女装束の『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。
「チーム『ドキドキ和装女子』! ご覧ください、ラウンドガールじゃありませんよ。お色気むんむんの美女たちだ! その実力は――!?」
「お、おいろけ……」
般若の面で顔を隠した祇澄は実況者のあおりに軽く引いていた。
「私には、無理ですから」
「神室ちゃんは充分お色気むんむんだと思うわよん」
襟を軽く引っ張ってみる輪廻。
慌てて直す祇澄に、観客がどっと沸いた。
「対するは希代の美少年コンビ! チーム『矛盾』!」
入場コールと同時に、光り輝く『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が螺旋をえがくように飛行しながら下りてきた。それもセーラーブラウスに半ズボンというウケの良すぎるコスチュームである。
ワイヤーアクションのような不可思議さに思わず身を乗り出す観客たち。
そんなきせきが着地したのは、フルフェイスヘルメットとアーマーで身を覆った岩倉・盾護(CL2000549)の頭上であった。
『それは違うだろう』という動作できせきをおろす盾護。
観客たちは一連のやりとりの中で、彼らをパフォーマンス専門のファイターだと認識した。
多くのパフォーマーは実力が乏しいために観客を笑わせたり色気を振りまいたりして楽しませる者で構成されている。
プロレス出身者からすると遺憾なことだが、地下闘技場がそれだけ派手な戦闘演出に寄っているという側面の現われでもあった。
「それでは――試合開始!」
ゴングが鳴り響くと同時に、祇澄と盾護は自らを複雑な術式で固めはじめた。
よってぶつかり合うのは輪廻ときせきだ。
容赦なく抜刀し、きせきの首めがけて高速スイングをしかける輪廻。
彼女のとろんとした雰囲気から、人間を一度に何十人も殺せそうな動きが出たことに観客たちがどよめく――が、それ以上にどよめいたのはきせきがオモチャのようにカラフルなスティックでその斬撃を跳ね上げたことだった。
動きに対応している。
実力はほぼ互角。
輪廻はそのままきせきの周りを遊ぶように回りながら、連続で即死級の斬撃を打ち込んでいく。
対するきせきは両手に持ったスティックを器用に振り回し、彼女の斬撃をはねのけていった。更に隙を突くようにして負けないくらいの高速打撃を叩き込んでいく。
この場は違法な賭博場であるがゆえ、写真はもちろん動画撮影は勿論禁止。しかし普通の人間がそうそう目にすることの無い高度なバトルに観客たちが釘付けになった。
実力のごまかしなどとんでもない。達人級の腕前だ。
しばらくして、盾護と祇澄がそれぞれの相手へとぶつかっていく。
四人が複雑に交差するように、祇澄はきせきへ、盾護は輪廻へと飛びかかる。
それぞれの打撃や斬撃をいとも簡単にはねのける二人の姿に、めまぐるしく連続するサーカスのような芸術性が生まれていた。
そんな中、きせきの打撃を双刀ではねのけて、祇澄が盾護の元へと飛びかかった。
「お覚悟を」
刀を真っ赤にヒートアップさせ、盾護のボディへ叩き付ける。
盾護は激しく吹き飛ばされ、纏っていた因子の鎧がはげ落ちた。
「見ろ! 装甲をはぎ取ったぞ!」
観客が立ち上がって叫んだ。なるほど、このレベルの技は見たこともないか。
祇澄はこの場のレベルを直感的に悟った。
金網から跳ね返って落ちてくる盾護に、連続で斬撃を浴びせにかかる祇澄。
「ひと ふた み よ いつ む なな や ここのたり――ふるべ ゆらゆらと ふるべ」
斬撃をうけ、盾護はどてんと仰向けに倒れた。
わざとらしく足を上げた動作に、観客はこれが出来レースなのか高度な決闘なのかが分からなくなっていく。
そんな盾護を抱えおこし、頭を撫でてやるきせき。
盾護は頷くと、きせきをまるごと抱え上げた。
不可思議な行動に構える祇澄――に対して盾護は、おもむろにきせきを投擲した。
「――!?」
突拍子も無い行動に、祇澄の防御がわずかに緩む。そこへきせきが思い切り体当たりをしかけた。もつれあってごろごろ転がっていく二人。
「積極的ねん」
輪廻は刀を鞘に収め、放り捨てる。
更に和服の下に手を入れると、するするとショーツを脱ぎ去った。
突然の行動に、きせきも盾護も、そして観客も息を呑む。
ショーツを投げ捨てると、輪廻は蹴り技の構えで手招きした。
当然足を上げるので、すり鉢状の観客席からはともかく寝転んだきせきからは内側が丸見えになるのだが……。
「だめです」
祇澄がパッときせきの両目を手で塞いだ。
一方で盾護は輪廻へ突撃。
彼のタックルを宙返りでかわし、後頭部を蹴りつけていく輪廻。
着地と共に胸を僅かに開いて風を送り入れる。
観客席から異様な歓声が沸き起こった。
「ほらほら、お客さんの期待に応えるための大チャンスよん」
一方こちらはVIP席。
ユェンは闘技場のボスの後ろに立って、共に試合の様子を眺めていた。
「どうでしょうボス、とんでもねえ試合になったでしょう?」
「確かに……あんな逸材はそういねえ。どこから引き抜いてきた」
「教えられません。俺の独自ルートってやつですよ」
ヘラヘラと笑ってみせるユェンに、ボスは上機嫌だ。
試合中特に目を引くのは輪廻と盾護だった。
自らの色気を理解し、その上で目を引きながら派手なバトルを演出できる輪廻。一方で彼女の狙いを的確に読み取り、時にさりげなく時にわざとらしくハプニングを引き起こしていく盾護の振る舞いは、無口ながら完璧な仕事ぶりと言えた。
「あいつらは賞金制にしないほうが儲かるな。パフォーマンス枠にあいつらを入れられるか」
「言って聞かせますよ。期待しててください」
ユェンは興奮して応えた……ように見せかけて、見えない所で強くガッツポーズをした。
試合は大方の予想通りと言うべきか、押され続けた盾護が偶然を装って輪廻の服を引っ張り、胸が露わになった輪廻が手でそれを隠した隙にきせきと盾護によるクロスアタックが炸裂する……といったサービス満点の締め方で勝敗がついた。
とはいえ彼らに関しては、勝敗などはじめから関係なかっただろう。
●血にまみれた快楽を、罪にまみれた悦楽を
パフォーマーがあれだけの試合を見せつけたことで、会場はまるでできあがりきった宴会場と化していた。
これだけの刺激を受けた人間は、よほどの興奮では満足しない。
そんな状況にありながら、葦原 赤貴(CL2001019)は冷静に通路を進んでいた。
フードを深く被り、目元や口元を隠していく。
隣では『エビルハンド』鹿ノ島・遥(CL2000227)が般若風の覆面と空手着で自らを包んでいる。
「名前出さなくて良かったのか、せっきー」
「売りたいのはチーム名だ。オレだけ売れても仕方ない」
そう言いながら、会場入りする前にユェンから言われたことを思い出していた。
『赤貴、お前チームの名を売りたいんだってな。それならとっておきの舞台がある。けど……それにはボスの声が必要だ。まずはエキシビジョンで力を見せつけろ。強ければ強い程いい。意味はわかるな?』
会場は既に煮立っている。
ステージにあがった『子狐丸』御白 小唄(CL2001173)は、その雰囲気に圧倒されかけた。
「大丈夫だぜ、子狐丸! 俺たち正義の味方チームだろ?」
『魔法少女ブレイズ』天楼院・聖華(CL2000348)がぽんと肩を叩いてくる。
「チーム『INVERSE』をやっつけようぜ!」
「う、はい……」
僕もINVERSEなんだけどな、と思ったけど黙っておく小唄である。
やがて赤貴たちがステージへ上がってくる。
聖華は早速刀を抜いて身構えた。
「やい、INVERSE! 正義の味方、魔法少女ブレイズと子狐丸が相手だぜ!」
二刀流の魔法少女コスチュームというのが珍しいのだろう。観客の反応は少しばかり特殊だ。
それにステージ上にいるのは四人とも十代前半の子供ばかりだ。
血みどろの地下闘技場には、ある意味似つかわしくない顔ぶれだろう。
しかし。
「リングノ、上デハ、強サノミガ、正義ヨ!」
拳をガンと打ち合わせる遥――いやエビルハンドの迫力に、大の大人までもが息を呑んだ。
「――!」
小唄、もとい子狐丸は拳法の構えをとると、エビルハンドめがけて突撃した。
「コシャクナ……キエエエエエエエエエ!」
正拳突き。
それだけで空気が爆ぜ、まるで大砲でも撃ったかのように後ろの金網が歪んだ。
一方の小唄は横っ飛びにパンチを回避。エビルハンドの側面に回り込むと、素早く足払いを仕掛け――る寸前、地面が急速に隆起。吹き飛ばされる。
赤貴、リングネーム『レッドアイ』の起こした術式攻撃だ。
だが布石は充分に巻いた。聖華は金網を走るようにリング側面ギリギリを走ると、柄ビルハンドへと斬りかかった。
「くらえ!」
「ヌウン!」
翳した腕で斬撃を受けて、体勢も崩さない遥。
どころか飛び込んできた聖華めがけてパンチを叩き込んだ。
複雑に回転しながら吹き飛び、金網にめり込む聖華。
レッドアイは剣を大きく振り込むと、エネルギーを乗せて二人へと発射した。
「「うわああッ!」」
一方こちらはボスのVIP席。
「うひゃあ、魔法少女や! 魔法少女やんなあオトン!」
眼鏡をかけた女子高生が強化ガラスにはりついていた。
「さっきのキラキラするコといい逸材揃いや! オトン、あのこらウチにくれへん!?」
「……だそうだが?」
ボスから視線をパスされ、ユェンは困り顔をしていた。
「お嬢にというと……『アリーナ』ですかい? あそこのファイターは少女だけってキマリじゃねえですか。ブレイズはともかくあの――」
「二人ともカワイーわぁ、な、な、ええやろ!? ユェンも『サロン』に入れたるから」
「ハイッ、喜んでェ!」
ユェンは超イイ笑顔で親指を立てた。
さて、試合の様子に戻ろう。
「ウオオオオオオオオオッ!」
レッドアイは子狐丸の足を掴んで放り投げると、空中に向けて激しいエネルギーの束を解き放った。
貫かれ、どさりと落ちる子狐丸。
「うう……っ」
立ち上がりなら観客の様子を探る。
ふしぎと会場は静かだ。
子供がとてつもない破壊力をぶつけ合っているさまに、戦慄しているのだろう。
エビルハンドとレッドアイはそれぞれ、こちらを追い詰めるかのようにじりじりと歩を進めてきている。
違法な賭博場であるがゆえか、善悪の基準はこの金網一枚でフィルタリングされているようだ。戦っているのが女子供であろうとも、どちらに正義があろうとも、戦いを見たいという欲望によって全てが覆されているのだ。
だがその反面。
観客が一発逆転を求めている。そんな風に、肌で感じることもできた。
「……」
「……」
ブレイズと子狐丸はアイコンタクトをとり、むくりと立ち上がる。
対してグッと深く身構えるエビルハンドとレッドアイ。
そして、隙丸出しでなぐりかかってきた。
「今だ!」
ブレイズの斬撃と子狐丸の蹴りが交差し、相手を一度にはねのける。
二人は素早くターンをかけ、再び交差。
エビルハンドとレッドアイを空中に浮かせると、正面にそれぞれ立った。
せーのと小声で呟くと、勢いよく、そして強烈に殴りつけた。
「グアッ!?」
「ギョエーッ!」
吹き飛び、金網を軽く破壊しながらステージ下へと転がり落ちていくエビルハンドたち。
小唄は深く深く息をついた。
鳴り響くゴング。
爆発したようにあがる歓声。
闘技場の未来が、少しずつ動き出そうとしていた。
●それぞれのフィールド
試合を終え、ファイトマネーを持って現われたユェン。
彼はメンバーを別々に集め、それぞれに『次』の話を持ちかけた。
「個人戦、ですか……」
祇澄に札束を渡し、ユェンは頷いた。
「この闘技場でのスタンダードだ。ファイターは一対一で戦い、勝利すれば『賞金』か『昇格』のどちらかを選べる」
「昇格、すると……」
「そうだ。VIPだらけのバトルに呼ばれることになる。金さえあればなんでもできると思ってるクソ野郎たちを一気に検挙するチャンスってわけだ。あんたのバトルは華があるし何より鋭い。勝ち進むにはぴったりの人材だと思うぜ」
背を向け、最後に。
「試合の手はずは整えておく。あとはアンタが出るかどうかだ」
控え室で着替えを終えた輪廻と盾護を、ユェンはディナーに誘った。
隠れ家的な料亭に通されると、そこにはユェンの他にもう一人女性が座っている。
輪廻とは別の形で色っぽい女性だ。
「来てくれてあんがと。試合見たよ。ゾクゾクしちゃった。アンタ、ショーってもんを分かってる」
「お上手ねん」
「……」
早く本題を、という顔をする盾護に、女は片眉を上げた。
「次の試合、犯罪組織の幹部連中が見に来んの。アンタらが試合をメチャクチャ盛り上げて観客全員引きつける。でもってアタシが連中が持ってる犯罪の証拠を盗む。で、連中はしょっ引かれる」
「……」
これはどういうことだという顔をする盾護に、ユェンが補足を始めた。
「連中は違法な薬物を売買してる組織だ。規模は小さいが慎重で、証拠を全く掴ませない。こいつは……」
「CIA」
「嘘をつけ」
「じゃあFBI」
「ここは日本だ」
「ナンでもいいでしょ。サツのたぐい」
女は首を傾げ、輪廻と盾護を品定めするように見つめた。
「話はカンタン。アンタらがメッチャうまく戦えば、この町から犯罪が一個消える」
きせきと聖華がファミレスに拉致られた。
「なんでも好きなもの喰ってくれ!」
「ほんとか!」
「わーい!」
オムライスとかハンバーグとか注文をつけまくった後、クリームソーダを挟んでユェンはあるパンフレットを取り出した。
「なあ、クリーンな闘技場に興味はないか」
「くりーん?」
「俺らは『アリーナ』と呼んでる。ボスの娘が運営する闘技場だ。ここでは全員が学生服を着て、素手で戦うことになってる。お嬢も二人を気に入ってたし、二人にはピッタリだと思うんだよなあ」
「ほんと?」
「やったな、そういうバトルも楽しそうだぜ!」
「だろう!? じゃあ早速この制服に着替えて約束の場所に来てくれよ」
「「うん!」」
ユェンは二人に『セーラー服』を渡して、大人の顔で虚空を眺めた。
ハンバーグやオムライスが運ばれてくる。
パンフレットには『少女専門のバトルアリーナ』と書かれていた。
「えっと」
「いい制服だろ? 着替えたいよな」
「ぼく……」
「着替えるよな?」
小唄のそばに、遥と赤貴が座っている。
その向かいには、ユェンが立っていた。
「お疲れ。いい勝負だった。刺激的で、観客も沸いてた。けど……なんか物足りないんじゃないのか?」
「……」
「ボスは『INVERSE』に目をつけた。チーム戦の誘いだよ。けど気をつけろよ」
ユェンは札束を小唄へ放り投げてから、重いトーンで言った。
「チーム戦は賞金もデカい。それに名を売ってのし上がりたい連中であふれてる。油断したら殺されるぜ」
「……」
「誘いはした。逃げたって誰も責めない。あとは『やる』か『やらない』かを決めるだけだ。話し合っとけ」
そこまで言って、控え室を出て行くユェン。
赤貴は顔を上げ、小唄と遥の顔を見た。
三人の気持ちは……。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
あとがき
お疲れ様でした。今回の結果次回への布石が撒かれました。
まだ勧誘の段階なので、次回参加者が入れ替わった場合は『メンバーの交代』として登録します。
お疲れ様でした。今回の結果次回への布石が撒かれました。
まだ勧誘の段階なので、次回参加者が入れ替わった場合は『メンバーの交代』として登録します。
