【地下闘技】M1:地下闘技場に潜入せよ
●いと輝かしきアンダーカレス
巨大なシャンデリアに照らされて、無数の人々が歓声を上げている。
彼らが囲むは鉄格子の檻。それも幅10mはあろうかという巨大な檻だ。
檻の中には二人の男。
ホッケーマスクに斧を携えた半裸の男が、斧に術式の炎を纏わせて殴りかかる。
対するは顔の半分が機械と化した細身の男。彼は手のひらから氣力の弾を発射すると、相手の手首に命中させた。
一瞬遅れる振り込みが、巨大な隙に変わっていく。
相手の懐に潜り込み、脇腹へと強烈な蹴り。
更に拳のラッシュ。
極めつけにはズボンのベルトに挟んだ拳銃を腹につきつけ、めいっぱいに乱射した。
ぐらりとよろめくホッケーマスクの男。
勝利を確信して一歩引いた機械男の顔面を掴むと、一息に振り上げた。
頭上で上下反転する相手の顔を、見開いた目がにらむ。
次の瞬間、機械男は顔面から鉄格子に激突。
ひしゃげた顔をそのままにずるずると崩れ落ちた。
「勝者、ミスタージェイ!」
鳴り響くゴングの音と共に、より激しい歓声が会場を包み込んだ。
立ち上がって叫ぶ者、チケットを切り裂いて呻く者。
一喜一憂の群衆である。
そんな群衆を、一段高い場所から見下ろす者がいた。
下着姿の美女をはべらせ、ウィスキーグラスを傾ける肥満体の男だ。
「ユェン、お前のファイターが負けたな」
「ちょっと待ってくれ旦那。相手が熟練の覚者だなんて聞いてないぜ」
後ろから割り込むあごひげと帽子の男。
彼はツー・ユェン。今回『秘密の味方』となる男である。
「倍率だって相手の方がずっと上だ。こんな勝負で勝てるわけがねえ」
「なら次に勝てばいいだろう」
「あいつはもう戦えねえよ。死んでるか、病院行きかさ!」
帽子を脱いで頭をがりがりとかくユェン。
「なあ旦那、ファイターを見つけてくんのもラクじゃないんですぜ」
「だが見つけてくるのが貴様の仕事だ」
「じゃあいいファイターを見つけてきたら……」
「分かってる。望み通りボスに会わせてやる」
うっとうしそうに手を振る肥満の男。
ユェンは苦笑いした。
「頼みますぜ。俺ぁ小物で終わるつもりはねえんだ」
念を押すように言うが、肥満の男は手を振るばかりだ。
もう行けというジェスチャーだろう。
ユェンは背を向け、その場を立ち去った。
立ち去りながら……その目つきを恐ろしく鋭いものに変える。
「今は調子に乗ってな。いずれ、ボスもろともサツに突きだしてやるからよ」
彼はツー・ユェン。
AAAに所属する潜入工作員……つまり、スパイである。
●ファイターとなれ
中 恭介(nCL2000002)は報告書を片手に、ファイヴの会議室に立っていた。
「――というように、闇賭博場『アンダーカレス』では闇カジノと平行して覚者を戦わせて勝敗を賭けるという悪質な行為を続けている。説明は以上だ。質問のある者は?」
しんと静まる会議室の中で、小さく手が上がった。
戦いの好きそうな覚者だ。
なげかけたのは、『それが自分になんの関係が?』というような質問だ。
いかにも皮肉交じりの質問に、アタリは不敵に笑って返した。
「皆には、闇闘技場のファイターとなってのし上がってもらいたい。潜入しているAAAの工作員はその功績によってボスと謁見し、確実な証拠を掴む。全ての証拠を掴み、関係者全員を警察に突き出すというのが最終目的だ。皆の力は、そこへ至るまでにどうしても必要になる……それも、最も重要な要素としてな」
偽造IDのサンプルを翳すアタリ。
「まずは入門試験だ。皆はユェンのスカウトしたファイターとして、覚醒状態でお互いに戦って貰う。審査員が見るのはファイターとしての戦闘力……ではなく、個性だ。ファイヴには個性豊かなファイターが豊富にいる。自分の個性を出し切って戦えば、相手はその実力を買ってくるだろう。一人一人見てきた俺だ、保証してもいい」
必要な資料を渡し、アタリは最後にこうしめくくった。
「これは悪の地下組織をこらしめる絶好の機会だ。くれぐれもファイヴやAAAの関係者であることは秘密にしてくれ。頼んだぞ」
巨大なシャンデリアに照らされて、無数の人々が歓声を上げている。
彼らが囲むは鉄格子の檻。それも幅10mはあろうかという巨大な檻だ。
檻の中には二人の男。
ホッケーマスクに斧を携えた半裸の男が、斧に術式の炎を纏わせて殴りかかる。
対するは顔の半分が機械と化した細身の男。彼は手のひらから氣力の弾を発射すると、相手の手首に命中させた。
一瞬遅れる振り込みが、巨大な隙に変わっていく。
相手の懐に潜り込み、脇腹へと強烈な蹴り。
更に拳のラッシュ。
極めつけにはズボンのベルトに挟んだ拳銃を腹につきつけ、めいっぱいに乱射した。
ぐらりとよろめくホッケーマスクの男。
勝利を確信して一歩引いた機械男の顔面を掴むと、一息に振り上げた。
頭上で上下反転する相手の顔を、見開いた目がにらむ。
次の瞬間、機械男は顔面から鉄格子に激突。
ひしゃげた顔をそのままにずるずると崩れ落ちた。
「勝者、ミスタージェイ!」
鳴り響くゴングの音と共に、より激しい歓声が会場を包み込んだ。
立ち上がって叫ぶ者、チケットを切り裂いて呻く者。
一喜一憂の群衆である。
そんな群衆を、一段高い場所から見下ろす者がいた。
下着姿の美女をはべらせ、ウィスキーグラスを傾ける肥満体の男だ。
「ユェン、お前のファイターが負けたな」
「ちょっと待ってくれ旦那。相手が熟練の覚者だなんて聞いてないぜ」
後ろから割り込むあごひげと帽子の男。
彼はツー・ユェン。今回『秘密の味方』となる男である。
「倍率だって相手の方がずっと上だ。こんな勝負で勝てるわけがねえ」
「なら次に勝てばいいだろう」
「あいつはもう戦えねえよ。死んでるか、病院行きかさ!」
帽子を脱いで頭をがりがりとかくユェン。
「なあ旦那、ファイターを見つけてくんのもラクじゃないんですぜ」
「だが見つけてくるのが貴様の仕事だ」
「じゃあいいファイターを見つけてきたら……」
「分かってる。望み通りボスに会わせてやる」
うっとうしそうに手を振る肥満の男。
ユェンは苦笑いした。
「頼みますぜ。俺ぁ小物で終わるつもりはねえんだ」
念を押すように言うが、肥満の男は手を振るばかりだ。
もう行けというジェスチャーだろう。
ユェンは背を向け、その場を立ち去った。
立ち去りながら……その目つきを恐ろしく鋭いものに変える。
「今は調子に乗ってな。いずれ、ボスもろともサツに突きだしてやるからよ」
彼はツー・ユェン。
AAAに所属する潜入工作員……つまり、スパイである。
●ファイターとなれ
中 恭介(nCL2000002)は報告書を片手に、ファイヴの会議室に立っていた。
「――というように、闇賭博場『アンダーカレス』では闇カジノと平行して覚者を戦わせて勝敗を賭けるという悪質な行為を続けている。説明は以上だ。質問のある者は?」
しんと静まる会議室の中で、小さく手が上がった。
戦いの好きそうな覚者だ。
なげかけたのは、『それが自分になんの関係が?』というような質問だ。
いかにも皮肉交じりの質問に、アタリは不敵に笑って返した。
「皆には、闇闘技場のファイターとなってのし上がってもらいたい。潜入しているAAAの工作員はその功績によってボスと謁見し、確実な証拠を掴む。全ての証拠を掴み、関係者全員を警察に突き出すというのが最終目的だ。皆の力は、そこへ至るまでにどうしても必要になる……それも、最も重要な要素としてな」
偽造IDのサンプルを翳すアタリ。
「まずは入門試験だ。皆はユェンのスカウトしたファイターとして、覚醒状態でお互いに戦って貰う。審査員が見るのはファイターとしての戦闘力……ではなく、個性だ。ファイヴには個性豊かなファイターが豊富にいる。自分の個性を出し切って戦えば、相手はその実力を買ってくるだろう。一人一人見てきた俺だ、保証してもいい」
必要な資料を渡し、アタリは最後にこうしめくくった。
「これは悪の地下組織をこらしめる絶好の機会だ。くれぐれもファイヴやAAAの関係者であることは秘密にしてくれ。頼んだぞ」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.バトルスタイルを見せつける
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
4~5回構成で月イチペースを予定しています。
今回の趣旨は入門試験。
皆さんは2人組を作ってガチのバトルを行ないます。
テストなのでこの際命数復活は必要ありませんが、どうしても拘りのある場合は使って頂いても一向に構いません。
参加者によってレベルに差があるとは思いますが、相手はあくまでショービジネス。別に強けりゃいいというわけではありません。
近いレベル帯の相手と戦って見せればいいアピールになるでしょう。
また、スペックとしての強さではなく個性の強さを見ているフシがあります。
ここもショービジネスならではの視点で、個性的なファイターほど好まれます。それが地下闘技場とはかけ離れたリリカルなキャラクターでも、かえって人気が出たりするものです。
調査や証拠の獲得は全面的にユェンが担当しています。(たまに工作を頼まれることもあるかもしれませんが)皆さんはファイターとしての実力を高めていってください。
●シチュエーションデータ
場所は夜の埠頭。コンテナが沢山積まれた場所に集められ、戦闘風景を見せます。
照明はちゃんとあるので心配はいりません。
●悪名要素
地下闘技場でのしあがるという都合上、悪名ポイントがつきやすくなります。
悪名ポイントを増やしたくない場合は変装や仮面覆面で対応できますのでEXスキルに『○○で身分を隠します』といった感じで書いてください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年09月02日
2016年09月02日
■メイン参加者 8人■

●エビルハンドVS子狐丸
「キエエエエエエエエエエエ!」
大跳躍したエビルハンドは振り上げた手刀にエネルギーを集中。
バク転で回避した子狐丸のコンマ三秒前に立っていた地面が粉砕。
放射状に走るヒビが更に割れ、アスファルト片が吹き上がる。
子狐丸は地面に両手をついて連続バク転。
拳を両脇に溜めるように構えたエビルハンドが腰だめに構える。
「セイッ!」
地面を強く踏みつけると、地面と平行にジャンプダッシュ。
コンテナの側面に両足をついた子狐丸は対抗するように水平ジャンプ。
両腕をクロスさせたタックルを仕掛けるが、エビルハンドはそんな小唄の顔面めがけて突きを放った。
「ハアッ!」
ただのストレートパンチではない。左手を発射台、右腕をジェットにみたてた正統派の突きである。
常人であれば頭蓋骨が陥没するほどの勢いで放たれたパンチを、子狐丸は身体をひねって強制回避。
よけきれなかった肩へのインパクトが全身へと響き、子狐丸の左腕の骨が根元から複雑に砕けた。
スピンしながらアスファルトをバウンド。
あえてブレーキすることなく地面を突いて大きくバウンドした。
駆け込んでくるエビルハンドの三段ローキックを右腕フックパンチと膝蹴りだけで打ち弾く子狐丸。
右腕を限界まで引き絞るエビルハンド。必殺の一撃までコンマ五秒。
子狐丸は野球捕手のように両手を組んで拳の衝撃を和らげる――とみせかけて拳を跳び箱式に乗り越えて更に滞空。
がしりと両足でエビルハンドの頭を挟むと、目を見開いて拳に力を漲らせた。
顔面めがけて連続ラッシュ。防御のしようが無いラッシュに身体がよろめくエビルハンド。
子狐丸が祈るように組んだ両手を振り上げた。
ハンマーアタック――の直前に身体が上下に反転した。後頭部が地面に激突する。
エビルハンドが飛び込みをかけたのだ。
思わず脱力した子狐丸のマウントをとると、エビルハンドはアピールするように両腕を振り上げた。
「シネエエエエエエエエエエ!」
パンチ。
振動によりアスファルトが陥没。
パンチ。
衝撃によりアスファルトが爆発。
パンチ。
波動によりアスファルトがクレーター化。
ぐったりと力尽きた子狐丸を残して立ち上がり、エビルハンドはフシュウと熱い息を吐きだした。
「オンナコドモトテ、ヨウシャセヌ!」
ここは夜の埠頭コンテナ置き場。
違法賭博による闘技場の運営スタッフや物好きな上客が集まり、新しくスカウトしてきたファイターの品定めをしていた。
あごひげと帽子の男ユェンが、肥満体の男の煙草に火をつける。
「どうです旦那。レアモノでしょう?」
「戦争の申し子『子狐丸』。殺人カラテマシーン『エビルハンド』か……で、どこまでがキャラ作りなんだ?」
「そりゃあ企業秘密でさぁ」
肩をすくめて笑うユェンに、肥満体の男はぐふぐふと笑った。
「今日はカスばかりで不作だと思ったが、どうやら収穫があったようだ。メインはこれだけだろう?」
「いえいえ、今回は出世を駆けた大放出なもんでして」
ユェンは小物めいただらしない笑顔を浮かべる裏で、狡猾に状況を分析していた。
鹿ノ島・遥(CL2000227)。
『牛若丸』御白 小唄(CL2001173)。
『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。
岩倉・盾護(CL2000549)。
『正義のヒーロー』天楼院・聖華(CL2000348)。
『星護の騎士』天堂・フィオナ(CL2001421)。
『白焔凶刃』諏訪 刀嗣(CL2000002)。
葦原 赤貴(CL2001019)。
……八人とも非常に優秀なファイターだ。
(内心ダメモトだったが、こいつは想像以上だ。希望が見えてきたぜ)
「次をご覧ください。リングネームはまだつけてませんが、なかなかのモンですよ」
東西のコンテナが開かれる。
現われたのは般若の仮面をつけた巫女装束と、全身をタクティカルアーマーに包んだ長身の男である。
「……」
黙って両腕でガード姿勢をとる鎧男。腕にガントレット式のシールドを装備しているようだが、全体的な印象はほっそりとしたものだ。
対して。
「いざ、尋常に――参ります」
刀を抜いた巫女はゆらりゆらりと左右に歩をとりながら幻惑的な動きをし始めた。
タイプの異なる防御型だ。
肥満体の男が『これは見物だぞ』と言って顎を上げた。
彼の煙草から灰が落ちるその刹那。
先に動いたのは巫女の方だった。
まずは脇の下から切り上げるような斬撃。
腕で受け止める鎧男。
途端、腕をクロスさせた巫女がもう一本の刀をアテンドから抜くと首めがけて切りつけた。
それもまた腕で防御する鎧男。
拮抗かと思われたその時、鎧男は巫女の両腕を掴んでぐっと力を込めた。
思わず巫女の足が浮く。
浮かせた勢いのまま鎧男は自身をスピン。
砲丸投げ選手よろしく強引にスイングをかけつづけ、腕が引きちぎれそうになったその瞬間に手を離した。
コンテナめがけて吹き飛ぶ巫女。空中で身をひねって仰向けになると、コンテナを両足で蹴りつけた。はげしくへこむコンテナ。
巫女、跳躍。
鎧男は両腕でもってガード姿勢。腕のシールドを起点にしてエネルギー障壁が二重に展開した。
スポットライトに重なった巫女は双刀を翼のように広げた。
完全防御姿勢で迎え撃つ鎧男――に、真正面から突撃。
一秒間に十回に及ぶ高速斬撃が襲うが、鎧男はエネルギー障壁によってそれらを次々に反射。
大ぶりの払いで刀をそれぞれ跳ね上げると、今度は巫女のボディを掴んで持ち上げた。
強引なバックドロップ。
ホールドをわざと外したせいで、頭からアスファルトに叩き付けられた巫女はワンバウンド――の直後に上下反転したまま斬撃。
体勢を戻す途中だった鎧男は転倒。
地面を転がりながらお互いに離脱。互いに立ち上がった時には、巫女の身体から薄く蒸気が吹き上がっていた。
弧を描くように回り込みをかける巫女。
油断なく軸回転する鎧男に斬撃。
同じように腕で受けるが、エネルギー障壁が刀と接触した瞬間に爆発、崩壊。ガード姿勢のまま鎧男が僅かにのけぞる。
そのタイミングを狙って、刀の柄でヘルメットの眉間を打ち抜いた。
三メートルほど吹き飛び、仰向けに倒れる鎧男。
巫女はあらく息を整えつつ歩み寄ると、刀を納めて手を出した。
「大丈夫、でしたか」
戦いを終えた祇澄や盾護はそれぞれコンテナで待機させられる。ユェンが気を利かせて仲間しか居ないコンテナを用意してくれていた。
そこでは。
「オッス、おつかれ!」
遥がスポーツドリンクを頭から被っていた。
「ひゃー、きもちいー! いつもと違うスタイルって疲れるけど楽しいな!」
「僕は気が気じゃなかったよ。殺されるかと思った……」
ちびちびと水をのむ小唄。
身体は修復しているが、精神が傷ついたままなのだろう。わずかに震える手を見つめた。
「僕はまだ……」
ぎゅっと手を握り、何かを自分に言い聞かせる小唄。
そんな彼に、盾護は何も言わずに帽子を被り尚した。
声をかけあぐねた祇澄の肩をぽんと叩いて行く聖華とフィオナ。
「バトンタッチだ!」
「しっかりアピールしてくるぞ!」
二人はそれぞれ仮装用の衣装を手にしていた。
「やあ、私を踊ってくれたまえ。お嬢さん?」
仮面にマントというコスチュームで剣を抜く怪盗騎士ガーウェイン。
「世間をさわがす怪盗め。正義の魔法少女がつかまえてやるぜ!」
赤い魔法少女風コスチュームで刀を抜く魔法少女ブレイズ。
肥満体の男が『物語式か』と呟いた。ショーバトルに多く見る形式で、物語を設定して戦いに感情移入させる手法をさす。
「素人がすぐ実力を誤魔化すために使うテだ。大丈夫なんだろうな」
「いやあ参ったなあ、えへへ」
ユェンは愛想笑いを浮かべつつ、内心ではほくそ笑んでいた。
彼女たちが設定を盛っているのは子供なりの『ごっこ遊び感』からだ。実力不足ゆえではない。
それになにより――。
「正々堂々、燃やしていくぞ!」
ガーウェインは靴から小さな炎の翼をはやした。
一歩で最高速度に乗ったガーウェイン。まるで地面を滑るように走り、西洋剣で横薙ぐようなスイングを繰り出す。
それを刀の鞘で受け流すブレイズ。
斬撃をいなされたガーウェインは即座にターンアンドダッシュ。ブレイズは背後から迫る彼女に対し前後反転。ひるがえるフリルスカート。
刀を抜くと白い光を解き放った。
「行くぜ、イグニッションスタイル!」
ガーウェイン駆け抜け斬撃が接触する一瞬前に踏み込んで刀を叩き込む。
「マジカルスラッシュ!」
「――!?」
咄嗟に身体をのけぞらせて回避するガーウェイン。
空振りした刀の衝撃が後方のコンテナを真っ二つにして崩壊させた。
驚きに目を見開くガーウェインだが、空振りの勢いをそのまま乗せて繰り出したブレイズの回し蹴りが直撃した。
「マジカルシャイニングウィーザードッ!」
後方縦回転しながら飛び、地面を複雑に転がりながらコンテナにぶつかるガーウェイン。
「痛かった、かも。だが……まだまだ!」
むくりと立ち上がるガーウェイン。真正面からの突撃。
対してブレイズは二刀流ではねのける構えだ。
振り込んだ剣と剣が衝突。ダッシュの軌道のそれたガーウェインはクイックターンで再び斬撃。それも振り返りからの斬撃で軌道を強制変更。からのクイックターンアタック。からの逆手振りによる軌道変更。からのクイック、からの打ち上げからの膝蹴り、柄受け、頭突きと頭突き、飛び退き斬撃、はねのけ、足払い、とびのき、突き上げ、腕挟みからの腕ひしぎ、に対してのフリーフォールアタック。
めまぐるしい攻防の末、地面に叩き付けられたのはブレイズのほうだった。身体がバウンドし、三角帽子が吹き飛んでいく。
「もう一回だ!」
無防備になったブレイズへ、フィオナ渾身の斬撃。
咄嗟に防御をかけたブレイズだが、地面が吹き飛ぶほどの衝撃である。
バウンドがもう一度増え、ブレイズの身体が地面を転がることになった。
「おい、ユェン」
「へえ旦那」
愛想笑いのユェンに、肥満体の男は真面目な顔をして言った。
「てめえをボスに会わせてやる」
「……本当ですかい?」
「ただし。収益を上げてからだ。今見た六人だけでも稼ぎが見込める。今後もこういう連中をスカウトしてくれるんなら、テメェを格上げする価値があるだろう」
ワインボトルを傾け、残りを飲み干す。
「こんだけの出来高だ。残りの二人はナシでもいいが?」
「おいオッサン。そりゃどういう意味だ」
刀嗣が刀をがりがりと引きずりながら現われた。
声を張り上げる。
「お集まりのミナサマガタよお、お前ら運がいいぜ。俺様は必ずや闘技場の頂点すらも突き抜けて、世界の頂点にたつ剣士になる。そんな俺の男坂を見られるんだ、泣いて喜べ! 俺様は櫻火真陰流の諏訪刀嗣さまだ!」
ゆっくりと観客たちを見て、次に上司へと振り返るユェン。
肥満体の男は空のワインボトルを放り投げた。
割れて砕け散るガラス片。
「櫻火真陰流か。知らねえ流派じゃねえな。どれ、何回殺したら死ぬか確かめてみるか?」
立ち上がろうとする彼を制するように。赤貴がわざと足音をたてながら姿を見せた。
剣を取り出し、地面に突き立てる。
「葦原赤貴だ。殺(や)らせてもらう」
「上等――ガッカリさせんなよアシハラァ!」
殺し合いにゴングは無い。
刀嗣はおもむろに刀をぶん投げると赤貴めがけて走った。
突然の投擲。素早く腕でガードするが、腕を刀が貫いていく。
「チッ……!」
思わず漏れる舌打ち。剣を振って衝撃を飛ばすが刀嗣はワンステップで回避。回避した所へ術式を発動。アスファルトの地面が急激に隆起して刀嗣を跳ね上げるが、刀嗣は構わず叫んだ。
「来い――!」
刀嗣の手を引き合うように刀が飛び、刀嗣の手の中に収まる。空中で一回転すると、強引なまでの斬撃を叩き込んだ。
剣の腹で受け止める赤貴。受け止めのワンクッションを挟んでから掌底。激しく吹き飛んだ刀嗣がコンテナの壁にめり込む。
距離を詰め、更に術式発動。
コンテナの地面が複雑に隆起して無数の金属片が突き立って刀嗣の身体にめり込んでいく。
ぐったりした刀嗣。
トドメのタイミングだ――が、ここで飛びかかるような愚を犯す赤貴ではない。気迫の弾を指弾で発射。血まみれの顔で目を見開いた刀嗣が腕を犠牲にして槍の折から離脱。飛来した弾を刀でたたき落とす。
「機転が利くじゃねえか。けどなあ、タイマンで負けるわけにゃいかねえんだよ!」
またも正面からの突撃だ。
赤貴は地面を次々に隆起。
ジグザグなダッシュで避ける刀嗣。
が、これは赤貴にとって想定内だ。避けさせて進路を狭め、更に剣でフェイントを入れて姿勢を狭め、一気に急所へ本命の掌底を叩き込むのだ。防御の薄い刀嗣はこれで落とせるだろう。
横一文字に剣を振り込む。かがむには低い位置だ。身軽な刀嗣は飛ぶはず――と思った矢先、刀嗣の腕が切断されて飛んでいった。
目を見開く赤貴。
「コイツで……!」
刀嗣は彼の脇をすり抜け、背後に立ち止まっていた。
腕単体が地面に落ち、赤貴の首筋から激しく血が吹き上がる。
ぐらつく頭でなんとか振り返ろうとした赤貴の背中を、刀嗣は全力で切りつけた。
「終わりだ」
崩れ落ちる赤貴。
刀嗣もぎらりと笑い、そのままうつ伏せに崩れ落ちた。
ぱちん、ぱちん。ゆっくりと拍手をする肥満体の男。
「いいだろう。八人全員、エントリーを認めよう。次に行なわれる試合までに仕上げておけ。そうだな、一見にもインパクトのある連中だ……豪華にタッグマッチでどうだ」
「へえ、喜んで」
ユェンは深く頭を下げて、そして心の中で刀嗣たちに感謝した。
「キエエエエエエエエエエエ!」
大跳躍したエビルハンドは振り上げた手刀にエネルギーを集中。
バク転で回避した子狐丸のコンマ三秒前に立っていた地面が粉砕。
放射状に走るヒビが更に割れ、アスファルト片が吹き上がる。
子狐丸は地面に両手をついて連続バク転。
拳を両脇に溜めるように構えたエビルハンドが腰だめに構える。
「セイッ!」
地面を強く踏みつけると、地面と平行にジャンプダッシュ。
コンテナの側面に両足をついた子狐丸は対抗するように水平ジャンプ。
両腕をクロスさせたタックルを仕掛けるが、エビルハンドはそんな小唄の顔面めがけて突きを放った。
「ハアッ!」
ただのストレートパンチではない。左手を発射台、右腕をジェットにみたてた正統派の突きである。
常人であれば頭蓋骨が陥没するほどの勢いで放たれたパンチを、子狐丸は身体をひねって強制回避。
よけきれなかった肩へのインパクトが全身へと響き、子狐丸の左腕の骨が根元から複雑に砕けた。
スピンしながらアスファルトをバウンド。
あえてブレーキすることなく地面を突いて大きくバウンドした。
駆け込んでくるエビルハンドの三段ローキックを右腕フックパンチと膝蹴りだけで打ち弾く子狐丸。
右腕を限界まで引き絞るエビルハンド。必殺の一撃までコンマ五秒。
子狐丸は野球捕手のように両手を組んで拳の衝撃を和らげる――とみせかけて拳を跳び箱式に乗り越えて更に滞空。
がしりと両足でエビルハンドの頭を挟むと、目を見開いて拳に力を漲らせた。
顔面めがけて連続ラッシュ。防御のしようが無いラッシュに身体がよろめくエビルハンド。
子狐丸が祈るように組んだ両手を振り上げた。
ハンマーアタック――の直前に身体が上下に反転した。後頭部が地面に激突する。
エビルハンドが飛び込みをかけたのだ。
思わず脱力した子狐丸のマウントをとると、エビルハンドはアピールするように両腕を振り上げた。
「シネエエエエエエエエエエ!」
パンチ。
振動によりアスファルトが陥没。
パンチ。
衝撃によりアスファルトが爆発。
パンチ。
波動によりアスファルトがクレーター化。
ぐったりと力尽きた子狐丸を残して立ち上がり、エビルハンドはフシュウと熱い息を吐きだした。
「オンナコドモトテ、ヨウシャセヌ!」
ここは夜の埠頭コンテナ置き場。
違法賭博による闘技場の運営スタッフや物好きな上客が集まり、新しくスカウトしてきたファイターの品定めをしていた。
あごひげと帽子の男ユェンが、肥満体の男の煙草に火をつける。
「どうです旦那。レアモノでしょう?」
「戦争の申し子『子狐丸』。殺人カラテマシーン『エビルハンド』か……で、どこまでがキャラ作りなんだ?」
「そりゃあ企業秘密でさぁ」
肩をすくめて笑うユェンに、肥満体の男はぐふぐふと笑った。
「今日はカスばかりで不作だと思ったが、どうやら収穫があったようだ。メインはこれだけだろう?」
「いえいえ、今回は出世を駆けた大放出なもんでして」
ユェンは小物めいただらしない笑顔を浮かべる裏で、狡猾に状況を分析していた。
鹿ノ島・遥(CL2000227)。
『牛若丸』御白 小唄(CL2001173)。
『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)。
岩倉・盾護(CL2000549)。
『正義のヒーロー』天楼院・聖華(CL2000348)。
『星護の騎士』天堂・フィオナ(CL2001421)。
『白焔凶刃』諏訪 刀嗣(CL2000002)。
葦原 赤貴(CL2001019)。
……八人とも非常に優秀なファイターだ。
(内心ダメモトだったが、こいつは想像以上だ。希望が見えてきたぜ)
「次をご覧ください。リングネームはまだつけてませんが、なかなかのモンですよ」
東西のコンテナが開かれる。
現われたのは般若の仮面をつけた巫女装束と、全身をタクティカルアーマーに包んだ長身の男である。
「……」
黙って両腕でガード姿勢をとる鎧男。腕にガントレット式のシールドを装備しているようだが、全体的な印象はほっそりとしたものだ。
対して。
「いざ、尋常に――参ります」
刀を抜いた巫女はゆらりゆらりと左右に歩をとりながら幻惑的な動きをし始めた。
タイプの異なる防御型だ。
肥満体の男が『これは見物だぞ』と言って顎を上げた。
彼の煙草から灰が落ちるその刹那。
先に動いたのは巫女の方だった。
まずは脇の下から切り上げるような斬撃。
腕で受け止める鎧男。
途端、腕をクロスさせた巫女がもう一本の刀をアテンドから抜くと首めがけて切りつけた。
それもまた腕で防御する鎧男。
拮抗かと思われたその時、鎧男は巫女の両腕を掴んでぐっと力を込めた。
思わず巫女の足が浮く。
浮かせた勢いのまま鎧男は自身をスピン。
砲丸投げ選手よろしく強引にスイングをかけつづけ、腕が引きちぎれそうになったその瞬間に手を離した。
コンテナめがけて吹き飛ぶ巫女。空中で身をひねって仰向けになると、コンテナを両足で蹴りつけた。はげしくへこむコンテナ。
巫女、跳躍。
鎧男は両腕でもってガード姿勢。腕のシールドを起点にしてエネルギー障壁が二重に展開した。
スポットライトに重なった巫女は双刀を翼のように広げた。
完全防御姿勢で迎え撃つ鎧男――に、真正面から突撃。
一秒間に十回に及ぶ高速斬撃が襲うが、鎧男はエネルギー障壁によってそれらを次々に反射。
大ぶりの払いで刀をそれぞれ跳ね上げると、今度は巫女のボディを掴んで持ち上げた。
強引なバックドロップ。
ホールドをわざと外したせいで、頭からアスファルトに叩き付けられた巫女はワンバウンド――の直後に上下反転したまま斬撃。
体勢を戻す途中だった鎧男は転倒。
地面を転がりながらお互いに離脱。互いに立ち上がった時には、巫女の身体から薄く蒸気が吹き上がっていた。
弧を描くように回り込みをかける巫女。
油断なく軸回転する鎧男に斬撃。
同じように腕で受けるが、エネルギー障壁が刀と接触した瞬間に爆発、崩壊。ガード姿勢のまま鎧男が僅かにのけぞる。
そのタイミングを狙って、刀の柄でヘルメットの眉間を打ち抜いた。
三メートルほど吹き飛び、仰向けに倒れる鎧男。
巫女はあらく息を整えつつ歩み寄ると、刀を納めて手を出した。
「大丈夫、でしたか」
戦いを終えた祇澄や盾護はそれぞれコンテナで待機させられる。ユェンが気を利かせて仲間しか居ないコンテナを用意してくれていた。
そこでは。
「オッス、おつかれ!」
遥がスポーツドリンクを頭から被っていた。
「ひゃー、きもちいー! いつもと違うスタイルって疲れるけど楽しいな!」
「僕は気が気じゃなかったよ。殺されるかと思った……」
ちびちびと水をのむ小唄。
身体は修復しているが、精神が傷ついたままなのだろう。わずかに震える手を見つめた。
「僕はまだ……」
ぎゅっと手を握り、何かを自分に言い聞かせる小唄。
そんな彼に、盾護は何も言わずに帽子を被り尚した。
声をかけあぐねた祇澄の肩をぽんと叩いて行く聖華とフィオナ。
「バトンタッチだ!」
「しっかりアピールしてくるぞ!」
二人はそれぞれ仮装用の衣装を手にしていた。
「やあ、私を踊ってくれたまえ。お嬢さん?」
仮面にマントというコスチュームで剣を抜く怪盗騎士ガーウェイン。
「世間をさわがす怪盗め。正義の魔法少女がつかまえてやるぜ!」
赤い魔法少女風コスチュームで刀を抜く魔法少女ブレイズ。
肥満体の男が『物語式か』と呟いた。ショーバトルに多く見る形式で、物語を設定して戦いに感情移入させる手法をさす。
「素人がすぐ実力を誤魔化すために使うテだ。大丈夫なんだろうな」
「いやあ参ったなあ、えへへ」
ユェンは愛想笑いを浮かべつつ、内心ではほくそ笑んでいた。
彼女たちが設定を盛っているのは子供なりの『ごっこ遊び感』からだ。実力不足ゆえではない。
それになにより――。
「正々堂々、燃やしていくぞ!」
ガーウェインは靴から小さな炎の翼をはやした。
一歩で最高速度に乗ったガーウェイン。まるで地面を滑るように走り、西洋剣で横薙ぐようなスイングを繰り出す。
それを刀の鞘で受け流すブレイズ。
斬撃をいなされたガーウェインは即座にターンアンドダッシュ。ブレイズは背後から迫る彼女に対し前後反転。ひるがえるフリルスカート。
刀を抜くと白い光を解き放った。
「行くぜ、イグニッションスタイル!」
ガーウェイン駆け抜け斬撃が接触する一瞬前に踏み込んで刀を叩き込む。
「マジカルスラッシュ!」
「――!?」
咄嗟に身体をのけぞらせて回避するガーウェイン。
空振りした刀の衝撃が後方のコンテナを真っ二つにして崩壊させた。
驚きに目を見開くガーウェインだが、空振りの勢いをそのまま乗せて繰り出したブレイズの回し蹴りが直撃した。
「マジカルシャイニングウィーザードッ!」
後方縦回転しながら飛び、地面を複雑に転がりながらコンテナにぶつかるガーウェイン。
「痛かった、かも。だが……まだまだ!」
むくりと立ち上がるガーウェイン。真正面からの突撃。
対してブレイズは二刀流ではねのける構えだ。
振り込んだ剣と剣が衝突。ダッシュの軌道のそれたガーウェインはクイックターンで再び斬撃。それも振り返りからの斬撃で軌道を強制変更。からのクイックターンアタック。からの逆手振りによる軌道変更。からのクイック、からの打ち上げからの膝蹴り、柄受け、頭突きと頭突き、飛び退き斬撃、はねのけ、足払い、とびのき、突き上げ、腕挟みからの腕ひしぎ、に対してのフリーフォールアタック。
めまぐるしい攻防の末、地面に叩き付けられたのはブレイズのほうだった。身体がバウンドし、三角帽子が吹き飛んでいく。
「もう一回だ!」
無防備になったブレイズへ、フィオナ渾身の斬撃。
咄嗟に防御をかけたブレイズだが、地面が吹き飛ぶほどの衝撃である。
バウンドがもう一度増え、ブレイズの身体が地面を転がることになった。
「おい、ユェン」
「へえ旦那」
愛想笑いのユェンに、肥満体の男は真面目な顔をして言った。
「てめえをボスに会わせてやる」
「……本当ですかい?」
「ただし。収益を上げてからだ。今見た六人だけでも稼ぎが見込める。今後もこういう連中をスカウトしてくれるんなら、テメェを格上げする価値があるだろう」
ワインボトルを傾け、残りを飲み干す。
「こんだけの出来高だ。残りの二人はナシでもいいが?」
「おいオッサン。そりゃどういう意味だ」
刀嗣が刀をがりがりと引きずりながら現われた。
声を張り上げる。
「お集まりのミナサマガタよお、お前ら運がいいぜ。俺様は必ずや闘技場の頂点すらも突き抜けて、世界の頂点にたつ剣士になる。そんな俺の男坂を見られるんだ、泣いて喜べ! 俺様は櫻火真陰流の諏訪刀嗣さまだ!」
ゆっくりと観客たちを見て、次に上司へと振り返るユェン。
肥満体の男は空のワインボトルを放り投げた。
割れて砕け散るガラス片。
「櫻火真陰流か。知らねえ流派じゃねえな。どれ、何回殺したら死ぬか確かめてみるか?」
立ち上がろうとする彼を制するように。赤貴がわざと足音をたてながら姿を見せた。
剣を取り出し、地面に突き立てる。
「葦原赤貴だ。殺(や)らせてもらう」
「上等――ガッカリさせんなよアシハラァ!」
殺し合いにゴングは無い。
刀嗣はおもむろに刀をぶん投げると赤貴めがけて走った。
突然の投擲。素早く腕でガードするが、腕を刀が貫いていく。
「チッ……!」
思わず漏れる舌打ち。剣を振って衝撃を飛ばすが刀嗣はワンステップで回避。回避した所へ術式を発動。アスファルトの地面が急激に隆起して刀嗣を跳ね上げるが、刀嗣は構わず叫んだ。
「来い――!」
刀嗣の手を引き合うように刀が飛び、刀嗣の手の中に収まる。空中で一回転すると、強引なまでの斬撃を叩き込んだ。
剣の腹で受け止める赤貴。受け止めのワンクッションを挟んでから掌底。激しく吹き飛んだ刀嗣がコンテナの壁にめり込む。
距離を詰め、更に術式発動。
コンテナの地面が複雑に隆起して無数の金属片が突き立って刀嗣の身体にめり込んでいく。
ぐったりした刀嗣。
トドメのタイミングだ――が、ここで飛びかかるような愚を犯す赤貴ではない。気迫の弾を指弾で発射。血まみれの顔で目を見開いた刀嗣が腕を犠牲にして槍の折から離脱。飛来した弾を刀でたたき落とす。
「機転が利くじゃねえか。けどなあ、タイマンで負けるわけにゃいかねえんだよ!」
またも正面からの突撃だ。
赤貴は地面を次々に隆起。
ジグザグなダッシュで避ける刀嗣。
が、これは赤貴にとって想定内だ。避けさせて進路を狭め、更に剣でフェイントを入れて姿勢を狭め、一気に急所へ本命の掌底を叩き込むのだ。防御の薄い刀嗣はこれで落とせるだろう。
横一文字に剣を振り込む。かがむには低い位置だ。身軽な刀嗣は飛ぶはず――と思った矢先、刀嗣の腕が切断されて飛んでいった。
目を見開く赤貴。
「コイツで……!」
刀嗣は彼の脇をすり抜け、背後に立ち止まっていた。
腕単体が地面に落ち、赤貴の首筋から激しく血が吹き上がる。
ぐらつく頭でなんとか振り返ろうとした赤貴の背中を、刀嗣は全力で切りつけた。
「終わりだ」
崩れ落ちる赤貴。
刀嗣もぎらりと笑い、そのままうつ伏せに崩れ落ちた。
ぱちん、ぱちん。ゆっくりと拍手をする肥満体の男。
「いいだろう。八人全員、エントリーを認めよう。次に行なわれる試合までに仕上げておけ。そうだな、一見にもインパクトのある連中だ……豪華にタッグマッチでどうだ」
「へえ、喜んで」
ユェンは深く頭を下げて、そして心の中で刀嗣たちに感謝した。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
『エビルハンド』
取得者:鹿ノ島・遥(CL2000227)
『魔法少女ブレイズ』
取得者:天楼院・聖華(CL2000348)
『子狐丸』
取得者:御白 小唄(CL2001173)
『怪盗騎士ガーウェイン』
取得者:天堂・フィオナ(CL2001421)
取得者:鹿ノ島・遥(CL2000227)
『魔法少女ブレイズ』
取得者:天楼院・聖華(CL2000348)
『子狐丸』
取得者:御白 小唄(CL2001173)
『怪盗騎士ガーウェイン』
取得者:天堂・フィオナ(CL2001421)
特殊成果
なし
