夏休杯、五麟学園バトルロワイヤル大会!
夏休杯、五麟学園バトルロワイヤル大会!


●戦って強くなれ!
 皆、いつも依頼に参加してくれてありがとう。
 ファイヴはこの一年多くの敵と戦い、多くの謎に立ち向かってきた。
 結果、発足当初に比べて格段に強い戦闘力と技術力を獲得した。
 この成長はきっとこれからも続き、今までの様々な不可能を可能にしていくことだろう。
 また最近では因子の再構成技術の確立や弐式スキルの普及によって、戦闘スタイルが変化した者も少なくないはずだ。
 このまま実戦に出るのもいいが、模擬戦で一度肩慣らしをするというのもいいだろう。

 そこで、今回は五麟大学の地下闘技場でバトルロワイヤル大会を開くことにした。
 模擬戦ルールを用い、全員で戦い最後に残る一人を決めるというイベントだ。
 優勝者と準優勝者には賞品としてオーダーメイドの神具をプレゼントしよう!
 ふるって参加してくれ!


■シナリオ詳細
種別:イベント
難易度:楽
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.バトルロワイヤルに選手として参加する
2.なし
3.なし
●バトルロワイヤルのルール
 五麟大学の地下に作られた闘技場で行なわれる模擬戦試合です。
 途中離脱や途中参加は不可。最後の一人になるまで戦います。
 このシナリオではセミオートルールと模擬戦ルールが適用されます。

・セミオートルール
 キャラクターはその場において適切なスキルとポジショニングを自動で使用します。
 そのためプレイングに細かい戦闘アルゴリズムを書く必要がありません。
 プレイングに使用したいスキル、ないしは特別に愛着のある装備を書き込むことで指向性をもたせることができます。
 また、バトルスタイルへの拘りや武器の拘りをプレイングに書くことで、乱数判定を上方補正できます。

・模擬戦ルール
 命数を使用せず、戦闘不能になったらリタイア扱いとなります。
 そのため重軽傷を負うこと無く、命数減少も起きません。

●優勝賞品
 今大会の優勝者と準優勝者にはスーパー公務員アタリマンから専用武器をプレゼントします。アタリマンの自腹で。
 EXプレイングにベースアイテム、名前(希望があれば)、設定(希望があれば)を書き込んでください。
 希望がない場合は研究室の人たちが勝手に考えて作りますので、『おまかせ』と書いて頂いても結構です。

●その他補足事項
・チームを組みたいPCがいる場合はフルネームとIDを『ユアワ・ナビ子(nCL2000122)』のようにプレイング冒頭に記入してください。記入がないとはぐれるおそれがあります。
・裏方や観客の枠はありません。そういった場合は白紙扱いになるおそれがあります。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
(4モルげっと♪)
相談日数
10日
参加費
50LP
参加人数
34/50
公開日
2016年09月02日

■メイン参加者 34人■

『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『天使の卵』
栗落花 渚(CL2001360)
『使命を持った少年』
御白 小唄(CL2001173)
『サイレントファイア』
松原・華怜(CL2000441)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『希望を照らす灯』
七海 灯(CL2000579)
『見守り続ける者』
魂行 輪廻(CL2000534)
『雷麒麟』
天明 両慈(CL2000603)
『正義のヒーロー』
天楼院・聖華(CL2000348)
『天を舞う雷電の鳳』
麻弓 紡(CL2000623)
『月々紅花』
環 大和(CL2000477)
『ハルモニアの幻想旗衛』
守衛野 鈴鳴(CL2000222)
『偽弱者(はすらー)』
橡・槐(CL2000732)
『想い重ねて』
蘇我島 燐花(CL2000695)

●覚者バトルロワイヤル
 五麟大学地下闘技場。中央のステージからせり上がり式に現われたククル ミラノ(CL2001142)が、りずみかるに腕を回し始める。
「れ・でぃ・い――」
 最後に両腕を掲げ、マイクに向かって叫んだ。
「ふぁいっ!」
 途端、会場のいたるところで爆発と激流、電撃や暴風が荒れ狂い、たったコンマ三秒で大乱戦状態へと発展した。
 これは全員対全員のバトルロワイヤル。全てが敵で全てが味方だ。生き残る知恵と運、生き抜く力と技が試される。
 その姿、さながら生存競争の如く。
「そんな現場にことこちゃん参上! いぇあ!」
 ウィンクひとつでポーズをとる楠瀬 ことこ(CL2000498)。
 誰かから乱射された弾丸をのけぞってかわすと、後ろで複数の相手と渡り合っている榊原 時雨(CL2000418)にブリッジ姿勢で顔を向けた。
「時雨ぴょんが槍ぶんまわしてくれてるから私はのんびりお茶でも」
「そらうちも頑張るけど、流れ弾あたっても知らんからな」
「もー、そんなこと言って私がいないとダメなんだからっ☆」
 時雨。やかましいわという顔でスルー。
 なぜならゆーてる場合じゃないからだ。
 トンファーでガードを固めた松原・華怜(CL2000441)が時雨へと突撃していく。
「経験豊富な人ばかりですが、私が経験をつむには絶好の機会。よろしくおねがいします!」
 時雨の繰り出した石突スイングをトンファーでガード。響く衝撃をなんとかこらえて懐へ潜り込むと、時雨の胸元めがけて跳び蹴りを放った。
 対応している暇はあまりない。
 そこへ天楼院・聖華(CL2000348)がおもむろに飛び込んだからである。
「新たな武器をえてニュー聖華ただいま参上だぜ! 勝って夏休みの宿題を免除させてやるぜー!」
 時雨の死角を狙った二刀流での高速斬撃。
 こればっかりはまともにくらうワケにはいかない。時雨は身体ごと反転させると、聖華の剣が届くギリギリ前に穂先によるスイングショットを叩き込んだ。
 飛びかかる途中で打撃をくらった聖華は一度上下反転するも器用に転がって着地。すぐそばにいた華怜に接近しすぎて蹴り技と二刀流による攻防戦へともつれ込んでいった。
 これはラッキーとばかりに離脱しようとする時雨――の頬をかすめるエアブリット。
 振り返ると、ことこがテヘペロポーズをしていた。
「ちょっ、頼むからうちには当てんといてな!?」
「ごめーんねっ☆ できる範囲でがんば――ひゃむん!?」
 テヘペロポーズのまま打撃をくらい、きりもみ回転しながら吹っ飛んでいくことこ。
「ことこさん!?」
 吹き飛ばしたのは守衛野 鈴鳴(CL2000222)だ。身体の回転をそのままロッドの遠心力に乗せた打撃である。
 着目すべきはそのロッドが戦旗であるという所か。
「花壇のお世話や、学園のお掃除や、ちょっぴり恥ずかしい水着……いっぱい満喫した夏休み。こんな日々を守れる強さに、手が届きそうなんです」
 一拍子のリズムを踵で取り始める鈴鳴。
 一方の時雨は同タイプの登場にゆだんなく構える。
「だから、遠慮無く行きます!」
 鈴鳴の突撃。突きによって牽制するか。否、従来通りに遠心力で押しのける時だ。
 時雨のスイング――と同じ速度で時雨の外周1メートルの範囲をくるくるスピンしながら回り込む鈴鳴。きわめて特殊なステップである。この特徴は高速の回り込みとそして、遠心力の確保。
 加えて時雨に予想外だったのは、鈴鳴の攻撃方法である。
「インパクト!」
 肉体への接触と同時に、鈴鳴は薄氷術式を発動させた。
「そのスタイルで射撃戦やと――!?」
 時雨はたちまち、氷ともやのなかに呑まれた。

 前回のバトルロワイヤル大会は2月バレンタイン杯。それから約半年が経過した今。ファイヴ覚者の戦い方には新たな変化が生まれていた。
 全体会優勝者の納屋 タヱ子(CL2000019)がその一例である。
「今度は純粋な訓練として……行きます!」
 戦巫女之祝詞、蔵王・戒、紫鋼塞、蒼炎の導による四重ブースト。おじさんこうなるって分かってたから事前に確認とってきたけど、因体術の各枠に一つまでとされる補助スキルには未開スキル枠というのがあって蒼炎の導はその枠に分類される。つまり今ファイヴは四重までのブーストが可能なのだ。
 その増量効果、物理防御155・特殊防御125、加えて反射・カウンター・自然治癒15アップ。
 最終的なスペックは物理防御500台超、特殊防御350超である。
 前大会では防御の強さが生き残りを分けた分、さらなる防御への傾倒で周囲からもかなり警戒されているタヱ子……だが、勿論弱点もある。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 ファイヴにおける特殊攻撃特化型、ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)である。錬覇法から放たれる火焔連弾は威力500をゆうに越える二連撃。防御の代わりに回避を殺しているタヱ子にとっては完全な天敵であった。
 ラーラもラーラでガチ思考だ。タヱ子を残して置いたら絶対厄介なことになると分かっている分逃がしはしない。
「んっ……!」
 潤沢な体力がそれはもうめりめりと削れていく中、さらなる驚異が現われた。
「私の攻撃は、重いわよ?」
 どこからともなく現われた巨大な激流がタヱ子やその周囲の覚者たちを押し流していく。
 やんわりと飛行する、三島 椿(CL2000061)によるものだ。
 普段後衛から術式回復を行なっている彼女ではあるが、その回復力を火力に回せば当然のように大ダメージが見込める。
 が、タヱ子の真の天敵は彼女たちではなかった。
 回避補正の削減による穴。つまり100%ヒットによる追加効果やバッドステータスである。
 田中 倖(CL2001407)は艶舞・寂夜を振りまいて、回避の弱い面々を片っ端から行動不能にしていった。
「僕だって、やればできる男なんです……!」
 次なる課題は状態異常対策か。うつらうつらと膝を突くタヱ子。
 その一方で、残された椿たちは直近の脅威であるお互いに目標をシフトさせた。
 魔導書の封印を解くラーラ。
 弓に氷の矢をつがえる椿。
 眼鏡をチャッと外す倖。
「「いざ――!」」
 次の瞬間、彼女たちは炎と氷、そして無数のエネルギーブリットの嵐に包まれた。

 徐々に特化型の強みが先鋭化し、逆に弱点もまた明確になっている。それゆえの相性問題が顕著となり、より高度なカウンタープレイが要求される時代が到来しつつあった。
 そんな中、ここでも相性問題が発生していた!
「女の人とはあたりたくないけど……模擬戦だし、手加減はしません! やるなら楽しくです!」
 御白 小唄(CL2001173)。地面に手をついての高速ダッシュからのハイスピードジャンプ。激しい前転から繰り出されるキックはそう簡単によけることはできない。
 が、しかし!
「必殺――」
 華神 悠乃(CL2000231)はジャージのファスナーを上から下へ豪快に引き下げると、服の上からブラのホックをパチンと外した。
「バストバースト!」
「!?」
 せつめいしよう。
 思春期真っ盛りでえっちなことに頭が理解できない小唄きゅん13歳にとって悠乃は完全なる大人の女性なのだ。そんな女性が目の前でおっぱいふくらませたらそれはもう大混乱なのだ! ――が。
 ぷしゅんといって悠乃の胸がしぼんだ。
「……」
「……」
「あ、えっと……」
 逆に目の前で女性のおっぱいがしぼんだ時の混乱っぷりは、人生屈指のものである。
「ねむれ」
 背後に回り込み、手刀スタンガンを叩き込む天明 両慈(CL2000603)。
「やはり、恋人に前線を任せるのは心配だな。……ん、どうした!? 胸がえぐれているぞ。怪我をしたのか!?」
「えっと、その……」
 せつめいしようか。
 両慈は悠乃にとってできたばかりの彼氏である。そんな彼におっぱいしぼみましたと言いづらい乙女心があるのだ!
「不安なのか? 大丈夫だ。俺とて一人で戦えるほど打たれ強くないが……悠乃の存在が心身共に支えてくれる」
「両慈さん……」
「両慈ィ……」
 ぬぅっと二人の間から現われるリーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。
「リーネか。大丈夫か、目から血が出ているぞ」
「心の大量出血デスヨオオオオオオ!」
 せつめいしてもいい?
 リーネはファイヴ発足当時から両慈に片思いをし続け軽く生き霊みたくなっていたが先日はれて先を越されるという大事件によりジェラシーの神が宿ったのだ。
 キッと悠乃に振り返るリーネ。
「恋では負けマシタガ、この大会では負けマセンヨォ!」
 防御ガン積みフォームで悠乃たちに襲いかかるリーネ。
 リーネの防御は土と水のパッシブ強化スキルによって高――あっ文字数が。

「かりんちゃんバトル心得その1!」
 小指を立ててウィンクする国生 かりん(CL2001391)。
 今現在壮絶な射撃戦の真っ最中である。
 周囲を無数の毒針と電撃が飛び交い、その中をとにかくダッシュでかいくぐっている。
 反撃に炎弾を乱射。
「とりま火炎連弾! で、その2!」
 人差し指も立てる。
「近寄らないで戦う! 申し訳ないけど本日のかりんちゃんはお障りNG、ゴメンネ! で、その3!」
 親指も立てると、両手で組んで拳銃のように構えた。
「火力ヤバそうな奴から潰す!」
「――!!」
 かりんの放った大口径フレイムシュートを、丸めたノートでたたき落とす明石 ミュエル(CL2000172)。
 踵のホイールをローラースケートの要領で転がして加速すると、かりんと併走しながら小さな栗のようなものを無数に投擲。かりんの眼前で次々にイガグリへと変化していく。
「獅子に挑む毒蜂を卑怯と罵るのは不自然だ。それも戦いなのだから……って、天狗さんの言葉……。自分らしく、戦うよ……っ」
 チューリップの球根を握りしめ、ツルを高速展開。カーブをかけてかりんとの距離をつめにかかると、鞭を超音速で放った。
 かりんはそれをスライディングで回避。
 そんな二人の頭上に無数の護符が輪状に旋回。リングの中央で起こしたスパークを収束し、彼女たちへと電撃を落とした。
「久しぶりの戦いだから、身体がなまっているわね」
 環 大和(CL2000477)は札に小さく口づけてから、頭上へと投げた。
 大和の術によって編隊を組んだカードビットが無数の輪をつくって砲撃を開始。
 対してミュエルは両手いっぱいに栗を掴んでばらまき、かりんは地面に術弾を撃ち込んでファイアウェイブを引き起こす。
 全ての術がぶつかり合い、閃光と爆発が混じり合う。
 そして生まれた煙を――、かりんとミュエルが突き破った。
「オラァ!」
 ミュエルの顔面に叩き込まれるパンチ。
 クロスして、かりんの叩き込まれるミュエルの拳
 互いにのけぞった所に飛びかかる大和。
 強引なまでの膝蹴りがミュエルの側頭部へと直撃した。
「おー、まさかのリアルファイト。キャットファイトですねえ……」
 ポテチぽりぽりしながら様子をうかがう橡・槐(CL2000732)。
 全体会同様、試合中はとにかく逃げに徹した彼女ではあるが、そうしながらも槐は巧みに集団心理を操作、変容させていた。
 乱戦は基本、ターゲットから外れることが生き残るコツだ。しかし裏を返せば誰が誰を狙うか全く分からない状態になれば自動的に自滅していく。それが協力者であれば尚のことだ。
 槐はその弱点をつき、乱舞・雪月花によって場を混乱に陥れていた。恐ろしいまでの命中補正によって。
「ふふふ、所詮は夏休みなどという行事でまろびでたキッズども。毎日が夏休みである自宅警備委員(ヒッキー)の力をみせてやるのですよ。貴様らは八月三十二日の存在を祈り、願い、果たせぬままおちていくといいのです!」

 さて。
 年々変わる乱戦模様がある一方で、いつも変わらないものがある。
「チーム? ふん、馬鹿と組む気は無いな」
 手からスパークを放ちながら、背筋を伸ばして歩み寄る赤祢 維摩(CL2000884)。
「だよねー。永遠の宿敵みたいなモンだし」
 一方で背を丸め、ハンドポケットで歩み寄る四月一日 四月二日(CL2000588)。
「赤祢くんに勝てりゃあなんでもイイ!」
 突如スピードアップ。
 まるで手品のように取り出した剣で突きを繰り出す四月二日。それを維摩は二重強化した手刀ではねのけた。
 がしりと首をわしづかみにする維摩。
「なんの対策もしていないと思ったのか馬鹿め」
「バカバカうるせえけど、余裕こいてて大丈夫?」
 剣をあえて手放し、維摩の首を掴む四月二日。
 二人は同時に目を見開き、この後の全てを察した。
「終わりだ!」
「ぶっとべ!」
 互いの首を掴んだまま、二人は放てる限りの全ての電撃を浴びせ合った。

 宿敵と向き合う者。乱戦に飛び込む者。そのおこぼれを狙う者。
 牙をもたぬ者は生きていけぬ乱戦場。
 そんな中、かつてのチームを解散して向き合う二人の男女がいた。
 水蓮寺 静護(CL2000471)。
 天城 聖(CL2001170)。
「セーゴをこの手でぶっ潰す! もちろん殺す勢いで!」
「いいだろう……俺も、殺すつもりで戦おう」
 刀から激しい冷気を発しながら、深く構える静護。
 対して聖は錫杖を砲撃体勢で構えつつバックジャンプ。翼を使って水平飛行しながら雷獣を乱射した。
 突撃の姿勢をとっていた静護は咄嗟に回避。その場で右へ左へ電撃を避けるも、聖との距離は一向に縮まらない。
「どーせ刀使っての近接戦だろーからさー。これで攻めあぐね――」
 キン、という耳鳴りと共に聖の頬をなにかがかすった。
 水を超高速で打ち出したものだと気づいた時には頬から血が流れている。
 よく見れば、静護は突き技に似た奇妙な準備姿勢から小刻みに水の術式を放っていた。ウォーターカッターの存在しかり、高圧力で打ち出した水は凶器となる。
「長い付き合いだ。何をするかくらいはわかる」
「セーゴ……ふーん」
 ぺろりと流れた血を舐めると、聖は杖を地面に叩き付けた。
「だったら、先に死んだ方が負けだよねー!」
 地面を割って吹き上がるエネルギースパイク。更に上空へ吹き上がった火山灰のような物体が炸裂し、静護へと降り注ぐ。
 対して静護は刀を地面に突き立て、激流の渦を呼び出していく。
 二人を中心に、大地が大きく揺らぎ始めた。

「遥、きせき……」
 工藤・奏空(CL2000955)は刀を抜き、髪を黄金色に染め上げた。
「俺のしばばねをこえてゆけ!」
「しばばね……だと?」
 腕にぐるぐると帯を巻き付け、最後にツインおっぱいを握りしめる鹿ノ島・遥(CL2000227)。
「しばばね……どういう漢字を書くんだ……」
「僕知ってるよ!」
 刀を抜き、目を真っ赤に染め上げる御影・きせき(CL2001110)。
「死体って意味だよね!」
「そうだ!」
「そうか!」
 この学力をどっかに置いて来ちゃった中高生たちは、夏休みラストスパートだってつーのに宿題放り投げてバトルをめいっぱい楽しんでいた。
 『勉強よりツエー奴と戦う方が大事だゾ!』とか言い出す戦闘民族を彷彿とさせる彼らのバトルが今始まる。
 奏空は速攻できせきに接近――しようとした途端に大量の捕縛蔓に足を取られる。転倒をギリギリで回避した奏空に回し蹴りを叩き込む遥。
「ぐっ――!?」
 頭部に直撃。吹き飛ぶ奏空。
「さあソラ、きせき! 盛り上がっていこうぜ!」
「三人なら最強だけど、一人なら僕が一番だもん!」
 着地直後の遥に斬りかかるきせき。狙いは首筋。頸動脈だ。
「ふんっ!」
 遥はツインおっぱいを引き絞り、間のチェーンでガード。更に巻き込んで固定するときせきのエルボーを打ち込んだ。
 そうこうしている遥の後ろにいつの間にか舞い戻っていた奏空が片足を振り上げた。
 ドアを蹴破るようなインパクトキック。遥ときせきは一緒になって吹き飛ばされ、地面をごろごろと転がった。
 追撃に走ろうとする奏空――だが、彼の足にはいつの間にか遥の帯が巻き付いていた。
 遥を蹴飛ばした反動をうけて転倒。きせきが飛び込み、奏空は即座に防御の姿勢をとった。
 高速斬撃が奏空の急所を狙いまくるなか、必死に刀の筋を弾く奏空。
 そこへジャンピング瓦割りチョップで乱入する遥。
 きせき、奏空、そして遥の目がぎらりとまばゆく輝いた。

 槐が目をつけた通りにタッグチームは驚異になる。だからこその混乱付与であり、だからこそこいつ放って置いたらえらいことになると察したタッグチームたちがこぞって槐をリタイアさせたわけだが、おかげで随分と消耗してしまった。
 今はそうして残ったタッグチーム同士が生き残りをかけたぶつかり合いに発展している状態である。乱戦では多くがタッグチームによる挟み撃ちを避けるので、順当なぶつかり方と言ったところだろう。
「いきますよっ」
「よろしくお願いします」
 月歌 浅葱(CL2000915)のダッシュパンチを、柳 燐花(CL2000695)は素早いサイドステップで回避。死角から繰り出した掌底が浅葱の脇腹を狙うが、強引に身体を捻って拳を入れる浅葱。衝撃が無理矢理殺され、波動となって二人の後ろ髪を乱していく。
 スピードとパワーの勝負だ。
 そこへ乱入する姫神 桃(CL2001376)。
 クナイを両手に握って高速回転をかける桃へ即座に反応。高速バックスェーで距離をとる。
 流れるような連携で飛び込みパンチを繰り出す浅葱――だが、途中でびくりとのけぞった。
 魂行 輪廻(CL2000534)が眼前にわざと刀を突っ込んだからだ。
 咄嗟に回避行動にはいる浅葱だが、その動きを利用して輪廻は素早く足払い。転倒した浅葱をキャッチして、桃が輪廻から距離をとった。
「あらん、息ピッタリねん♪」
 輪廻はしなを作ると、おもむろに刀を振り上げ、あろうことかぶん投げてきた。
 横回転しながら飛んでくる刀の回避方法は大体伏せだ。浅葱はかがみ、桃は飛び越える。
 そうして宙に浮いた桃の鼻先三センチの位置に輪廻の顔が接近した。
 咄嗟に攻撃。輪廻の肩に指捻撃が直撃する。
 しかし輪廻は妖艶に笑い、桃顎を指先でくいっと上げた。
 その動作だけで桃は激しく回転。
 地面に後頭部を強打した。
 一方の輪廻はいつのまにか桃をよけて浅葱へ接近。
 浅葱は意を決して桃に合図を送った。
「こうなったらっ」
 浅葱はカウンター覚悟で輪廻を殴りつけ、空中に浮かせた。直撃した筈なのに手首があらぬ方向へ折れている。が、それでいい。
「桃さんっ!」
「まかせて!」
 宙に浮いた無防備な輪廻をあえて無視し、浅葱のそばへと駆け寄る桃。
「奥の手ですっ!」
「乗ったわ!」
 二人の目がキラリと光り、浅葱は桃をバズーカ的なフォームで担ぎ上げた。
「あの、乗るってそういう意味じゃ――」
「桃さんミサイルッ!」
 そして全力で投擲。
「っっあああああさああああああぎいいいいいいいいい!」
 こうなっては仕方ない。桃は自らをミサイル弾頭に見立てて構えた。
 狙いは、着地と同時に身構えた輪廻だ。
 衝突。
 ダメージはお互い様だ。
 共倒れになった二人とは別に、浅葱と燐花がぶつかり合うパンチと掌底の正面衝突。
 打ち勝ったのは、ギリギリで燐花だった。
 吹き飛んでいく浅葱を確認して、小さく息をつく。
 だがそれが隙となった。
 横から突っ込んできたプリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)が、ハンマーを思い切り振り上げていた。
 回避しようとするが一瞬遅い。激しい蒸気とスマイルを噴き出しながら繰り出したゴルフスイングによって燐花は宙へと跳ね上げられた。
「ツム姫ー、いったよー」
「んー」
 ハイジャンプからの飛行によって高く飛び上がった麻弓 紡(CL2000623)が空中でクーンシルッピを構えた。杖状のスリングショットだ。空圧弾をゴムにかけ、狙い済まして発射。
 回避しきれなかった燐花の身体を打ち抜いていく。
「ふ……」
 イケメンを意識して前髪をかきあげるプリンス。
「余のインフレブリンガーで国貨と化した民をツム姫が空から打ち落とす王家の必殺コンビネーション……『王家エッセンシャル』と名付けようね」
「えっせんしゃる……」
「潤いが違うよ。ダメージケアとかすごいから。明日から振り返るたびにスローモーションで髪ふわーってなるから。あ、ノリトよろしく」
 はいはいといった様子で紡は杖を掲げ、くーるくーると大気をかき混ぜるように踊り始めた。
 コンディショナーのCMを意識して髪をふぁさーってやるプリンス。
 そんな彼の足下で、突如として爆発がおこった。

 バトルロワイヤルは激戦を極めた。
 高火力アタッカーがダメージをばらまき、高性能ジャマーが耐久力を奪い、お互いほぼ丸裸の状態で殴り合うような状態が勃発する中で、今回生き残る秘訣になったのはまさしく運だった。
 戦闘力こそトップチームにやや劣るが終盤で根性での這い上がりを見せた天堂・フィオナ(CL2001421)。
「正々堂々、ノブリスオブリージュを果たすぞ!」
 潤沢な回復力と物理攻撃力に物を言わせて乱戦をくぐり抜けた栗落花 渚(CL2001360)。
「私が倒れたら皆を守れないもん。気合い入れていくよ!」
 高速回避と連続技によるヒットアウンドアウェイでしのぎきった七海 灯(CL2000579)。
「どこまで行けるか、挑戦させていただきます」
 試合の行方は、この三人の乱戦によって決まろうとしている。
 まず仕掛けたのは渚からだ。メタルケースから無数の空注射器を取り出すと、両手に握って同時投擲。
 フィオナは降りかかる注射器の群れを避けること無くダッシュ。
 一方の灯は注射器と注射器の間にある数十センチの隙間をジグザグに駆け抜けていった。
 挟み撃ち――かと思いきや、灯の鎖分銅がフィオナへ向けて放たれる。
 肩に直撃。
 のけぞったフィオナに急接近すると、灯は彼女の足首側面を草刈り鎌で切り裂いた。
 足首から血を吹き出し、転倒するフィオナ。
 そのまま駆け抜けて離脱しようとする灯だが、渚がそれを許さなかった。
 おもむろに飛びかかり、手に握ったメタルケースで殴りかかる。
 大きさの割に凄まじく重い渚のケースが風を潰す音をたてて灯に迫った。
 回避――は間に合わない。
 鎖鎌を引き絞って受け止め、衝撃をできるだけ殺しにかかる。
 が、強引に振り込まれたケースによって灯は大きく吹き飛んだ。
 追撃のチャンスだ。注射器を掴んで駆け寄る。
 が、それは灯のチャンスでもあった。
 急所を狙って繰り出した注射器を素早く掴み取る灯。反動でぐるるると巻き付いた分銅が腕をへし折らんばかりに圧迫。渚が脱力した所で鎌を分離させ、灯は超高速の斬撃を繰り出した。
 渚は自己回復でしのぎにかかるが、灯の連続攻撃とのレースには勝てなかった。ゆっくりと膝を突き、その場に崩れ落ちる。
 息をつき、振り返る灯。
「優勝……ではないようですね。まだ」
「そうだ」
 足からだくだくと血を流しながら、フィオナが無理矢理立ち上がった。
「まだ、立っているぞ」
 満身創痍。あと一撃で倒れるであろう瀕死の体力でありながら、フィオナは両足をしっかりと地面につけ、剣を掲げて叫んだ。
「私は立っているぞ! トモシビ・ナナミ!」
「――ッ!」
 灯は、気合いと根性で立ち上がった相手をないがしろにできるような女ではない。
 であると同時に、全力攻撃をもって敬意にかえる女だ。
「全身全霊をもって、お応えします……フィオナさん!」
 フィオナに出来るのは立ち上がったことだけだ。
 それだけだ。
 だが、灯は鎖分銅を解き放った。鎖が彼女の身体にぐるぐると巻き付いていく。歯を食いしばる彼女に、灯は全速全開の斬撃を繰り出した。
 フイオナの周囲を星形に五度すれ違い、鎌を振り抜いた姿勢のまま停止する。
 今度こそ崩れ落ちたフィオナを背にしたまま、灯は瞑目した。

 夏休杯バトルロワイヤル、試合終了。
 準優勝――天堂フィオナ!
 優勝――七海灯!

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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