プラモデル戦記 ビルドファイティング!
●そこは幻想の箱庭
爆風吹きすさぶ山岳を戦車が進む。
10式戦車、通称ヒトマル。砲撃が炎と煙を纏って弧を描く。
対するは二足歩行型戦闘用ロボット兵器ギャンガルだ!
ビームシールドで砲弾を受け止めると、型から抜いたビームサーベルを繰り出した。
激しい衝撃をうけ、爆発をおこす戦車。
ギャンガルが見上げれば、そこには無数の米軍式戦闘ヘリ!
GAU-8アヴェンジャーの集中砲火!
なすすべもなく爆炎に呑まれるギャンガルの姿!
「ぬああああああああああ負けたああああああああ!」
大型ショーケースを前に、少年は頭をかきむしってのけぞった。
ケースの中にはパーツがばらけたギャンガルのプラモデル。
『まったく、おぬしはカタシロの気持ちになれておらんのじゃ。そんなことではワシの力を使いこなすことはできんぞ!』
ケースの上にのっかったSDサイズのプラモデルが喋った。
プラモデルが喋ったくらいで驚いていては現代日本を生きちゃあいけねえ。小学三年生になるこの少年にとってはネコがニャーとなくくらいに普通のことだ。
ここはある廃神社の境内。日夜少年たちが集まってはこの古妖『付喪神』を通じてプラモデルバトルに興じているのだ。
ちなみに、爆発や硝煙は子供の想像力による補完である。わりかし分かりやすいように古妖が幻術を使っているフシもあるが、子供は白線の外をマグマに見立てるくらい余裕でするのでその辺は心配無用。
ここは付喪神を中心とした子供たちの楽園となっていた。
そこへ……!
「よおっ邪魔するぜ」
大柄な中高生たちがやってきた。
「見ろよ、ホントにプラモが喋ってるぜ」
「ガキどもにはもったいねえな。よこせ!」
「だめだよ!」
手を伸ばした中学生に、少年たちは必死の抵抗を見せた。
とはいえ相手は天より高く聳え立つという高校生だ。
いつ押しのけられてもおかしくない。
「こ、ここはプラモバトルの場所なんだ。か、勝手なことはゆるさないぞ!」
精一杯の勇気を出した少年だが、中高生たちは鼻で笑うだけだ。
「粋がってやがるぜ、にいちゃんどうする?」
「フン……相手の土俵というわけか。いいだろう」
高校生の兄貴分が学ランを広げると、懐から一体のプラモデルが現われた。
アニメに出てくるような人型兵器のプラモデル。それもラスボス級に強そうな機体だ。
「こいつで勝負してやる。負けたらそのオモチャをよこしな」
「くっ……!」
勝負を受け、勝つしかない。
それは状況的な部分を差し引いても、男の意地として引けないのだ。
挑まれた勝負を逃げて得られた安寧など、なんの価値があろうか。
すると中学生たちが次々にプラモを取り出し、ニヤリと笑った。
「勿論俺たちも参加するぜ。味方を連れてくるなら今のうちだ。ヘッヘッヘ!」
プラモくらいしか友達のいなかった少年は絶望した。
だが、絶望するのはまだ早い!
この世界に希望があるように。
この世界に夢があるように。
いまこの瞬間に、ある夢見からすべての話を聞いて駆けつけた八人の覚者たちが――現われたのだ!
爆風吹きすさぶ山岳を戦車が進む。
10式戦車、通称ヒトマル。砲撃が炎と煙を纏って弧を描く。
対するは二足歩行型戦闘用ロボット兵器ギャンガルだ!
ビームシールドで砲弾を受け止めると、型から抜いたビームサーベルを繰り出した。
激しい衝撃をうけ、爆発をおこす戦車。
ギャンガルが見上げれば、そこには無数の米軍式戦闘ヘリ!
GAU-8アヴェンジャーの集中砲火!
なすすべもなく爆炎に呑まれるギャンガルの姿!
「ぬああああああああああ負けたああああああああ!」
大型ショーケースを前に、少年は頭をかきむしってのけぞった。
ケースの中にはパーツがばらけたギャンガルのプラモデル。
『まったく、おぬしはカタシロの気持ちになれておらんのじゃ。そんなことではワシの力を使いこなすことはできんぞ!』
ケースの上にのっかったSDサイズのプラモデルが喋った。
プラモデルが喋ったくらいで驚いていては現代日本を生きちゃあいけねえ。小学三年生になるこの少年にとってはネコがニャーとなくくらいに普通のことだ。
ここはある廃神社の境内。日夜少年たちが集まってはこの古妖『付喪神』を通じてプラモデルバトルに興じているのだ。
ちなみに、爆発や硝煙は子供の想像力による補完である。わりかし分かりやすいように古妖が幻術を使っているフシもあるが、子供は白線の外をマグマに見立てるくらい余裕でするのでその辺は心配無用。
ここは付喪神を中心とした子供たちの楽園となっていた。
そこへ……!
「よおっ邪魔するぜ」
大柄な中高生たちがやってきた。
「見ろよ、ホントにプラモが喋ってるぜ」
「ガキどもにはもったいねえな。よこせ!」
「だめだよ!」
手を伸ばした中学生に、少年たちは必死の抵抗を見せた。
とはいえ相手は天より高く聳え立つという高校生だ。
いつ押しのけられてもおかしくない。
「こ、ここはプラモバトルの場所なんだ。か、勝手なことはゆるさないぞ!」
精一杯の勇気を出した少年だが、中高生たちは鼻で笑うだけだ。
「粋がってやがるぜ、にいちゃんどうする?」
「フン……相手の土俵というわけか。いいだろう」
高校生の兄貴分が学ランを広げると、懐から一体のプラモデルが現われた。
アニメに出てくるような人型兵器のプラモデル。それもラスボス級に強そうな機体だ。
「こいつで勝負してやる。負けたらそのオモチャをよこしな」
「くっ……!」
勝負を受け、勝つしかない。
それは状況的な部分を差し引いても、男の意地として引けないのだ。
挑まれた勝負を逃げて得られた安寧など、なんの価値があろうか。
すると中学生たちが次々にプラモを取り出し、ニヤリと笑った。
「勿論俺たちも参加するぜ。味方を連れてくるなら今のうちだ。ヘッヘッヘ!」
プラモくらいしか友達のいなかった少年は絶望した。
だが、絶望するのはまだ早い!
この世界に希望があるように。
この世界に夢があるように。
いまこの瞬間に、ある夢見からすべての話を聞いて駆けつけた八人の覚者たちが――現われたのだ!

■シナリオ詳細
■成功条件
1.プラモバトルに勝つ!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
あなたは夢見からかなり事前に話を聞き、入念な準備のもとこのプラモバトルに急遽少年側チームとして参加します。
少年は戦力になるプラモを持っていませんので、頼りになるのは皆さんだけです。
プラモバトルについて簡単に説明しましょう。
この古妖付喪神は、ほかの付喪神連中と違って自分の意識を別の物品に憑依させる能力をもちます。
これを技能スキル『パペットマスター』といいます。
スキル発動時は任意の対象一体に意識を憑依させ、自在に動作させることができます。
(本来は物理的に可能な動作のみです。飛んだりビーム撃ったりは古妖付喪神が幻術やワイヤーを巧みに使って箱の中限定で再現しています。仮に同じ能力を獲得してもビームは出ませんのでご安心ください)
普段はタンスの裏に落ちたハンガーをとったり、ネコの集会をじっと観察したりするときに使います。
その際肉体は無防備になりますが、プラモバトルにダイレクトアタックは禁止。安心ですね。
今回は付喪神から一時的にこのスキルを借りてバトルに参加します。
次にプラモについて説明しましょう。
使用できるプラモは大体なんでもアリですが、基本的には戦車か人型ロボに限られます。人型ロボお勧め。
市販のものをそのまま利用してもいいですが、自由な発想と(ファイヴの)匠の技術で様々な改造を施すことが出来ます。
君だけのオリジナル機体を作ってプラモバトルに参加しよう!
(※けど版権ネタは避けたい! とても避けたい!)
続いて、敵チームの紹介です。
●中高生チームの使うプラモデル
・デビルギャンガル(ボス)
巨大なボディと大量の触手によって凄まじい破壊力と耐久力をもちます。巨大な薙ぎ払いビーム兵器が凶悪です。
・ビッグゼット
通常の人型ロボの二倍ほどある巨大なロボ。
パンチやキックがそれだけで高威力。胸からミサイルも撃つぞ!
・ブラットショルダー×2
通称鉄の棺桶と呼ばれる渋い人型ロボです。
足がキャタピラシューズになっていて機動力がとっても高いのです。バルカン砲を武器に戦います。
・トランスフォームヘリ×2
人型と戦闘ヘリの両方に変形できるロボです。
市販のプラモには変形機能はありませんが、自由な発想によって自作しました。
・スティングレイ軽戦車×2
びゅんびゅん走りバンバン撃つ戦車です。
これ以上の説明は中高生には必要ないでしょう。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/8
4/8
公開日
2016年08月28日
2016年08月28日
■メイン参加者 4人■

●絶望の中の希望
少年が悲しみに膝をつきかけた時、彼は現われた。
「そこまでだぜ!」
神社の屋根に立ち、陽光を背にして現われる鯨塚 百(CL2000332)。
「夢みたいな遊び場を独占しようって悪い奴は、オイラが相手になってやる!」
中高生たちは彼を見上げて一瞬ひるむような様子を見せたが、相手が小学生だと悟ってすぐに調子を取り戻した。
「ヘッ、小学生一人増えた所でなんだってんだ。中高生の力を思い知らせてやるぜ」
「ほう……」
穏やかなバイオリンソロをバックに、神社の石段を上がってくる者がいた。
カルメン第一幕、恋は野の鳥。あまりに有名な曲調に思わず振り返ると、一輪のバラを手にした『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)が現われる。
「小学生を中高生の力で屈服させるか……いいさ、なら見せてやろう。シャレにならない大人の力ってやつをな!」
懐良が手を振ると、大きな木箱がすぐそばに現われる。
と同時に、腕組みした『サイレントファイア』松原・華怜(CL2000441)と木箱に腰掛けた『花屋の装甲擲弾兵』田場 義高(CL2001151)が現われた。
突然の大人の介入にたじろぐ中学生たち。
「ど、どうする。大人が入ってきたら……」
「うろたえるな」
高校生の男は学帽を被り直した。
「ケンさん……」
「日頃から仕事に追われる大人のビルドスキルなどたかが知れている。素組みのロボプラを取り出していい気になるのがオチだ。奴らのプラモも奪ってやるまで」
「そ、そうか……よし!」
リーダーの高校生ケンの扇動に勢いづいた中学生たちは素早くプラモを取り出し、クリアケースジオラマの横に立った。
対する懐良たちもクリアケースの前に立つ。
屋根から飛び降りた百は、ケースを挟んで向かい合うように立つと人型ロボのプラモデルを取り出した。
後ろでぎゅっと拳を握りしめる少年を振り返り、不敵に笑う。
「はじめようぜ! ロボプラバトルだ!」
●夢の結晶
専用カタパルトにセットされた百のプラモは往年の初代ギャンガルのスペシャルハイグレード版をベースに武者シリーズのメッキパーツをふんだんに使用したロボプラモである。
黄金の鎧武者を彷彿とさせるが徒手空拳。
「鯨塚百――出撃だぜ!」
一方で、それぞれにロボプラを取り出す義高と華怜。
義高の機体はブルーカラーの小柄なボディ。全体的に丸みを帯びた姿をしているが、両手にはそれぞれビームアックスと六連装シールドガトリングが装備されている。
「田場義高――出るぞ」
対して華怜の機体は原作でも多く登場した量産機をベースにしたモデルで、装甲を大きく減らしたスリムで鋭敏なフォルムが印象的だ。しかしフッドパーツとバックパックはボディと打って変わって巨大なものを使用していた。武装は二本分のカートリッジマガジンをつけたマシンガン。高機動高火力が窺える機体である。
「松原華怜――出撃します」
SDロボプラの付喪神はこくりと頷き、腕を振り上げた。
「スピリットオン――ロボプラバトル、スタンダップ!」
「「GO!!」」
三機が一斉に出撃。市街地をイメージしたジオラマの中へと飛び出していく。
対する中高生チームはヘリと戦車、小型機と超大型機というかなり極端な編成である。
「さあ見せて貰うか、大人のロボプラバトルというものを――」
「ちょっと待ちな!」
フィールドに響き渡る。
懐良の声である。
見上げるとそこには、巨大なロボプラが浮かんでいた。
目を剥く中学生たち。
「あ、あれは……!」
「オレが用意したのはギャンガルシリーズの中でも最も巨大なラスボス機体! 素組みだけでも三万はくだらない品だぜ! 刮目せよ中高生、これが大人の力ってやつだ!」
深紅に塗られた巨大機体が両手から極太のビームを乱射。
それに対してデビルギャンガルが割り込んだ。
無数の触手からビームを乱射し、空中で相殺させる。
「デカいのはオレに任せろ! 札束で殴られる痛みを思い知らせてやる!」
懐良は心の中でレバーを握りしめ、デビルギャンガルへと突撃していく。
そんな戦いに割り込めばただでは済まない。
中学生たちは互いに顔を見合わせ、百たちへと狙いを定めた。
「ヨウヘイ! まずはあのもろそうな量産機からだ!」
「へへ、ズタボロにしてやろうぜヨシカズ!」
スティングレイ戦車が凄まじいスピードで走り始めた。当然のように足回りを改造したその戦車は機銃射撃で牽制を開始。
対する華怜機は脚部と背部のブースターを起動。アフターバーナーをふかせて加速すると銃撃の中をジグザグにかいくぐった。
戦車の側面をとると両腰のマシンガンを乱射。
直撃をうけた戦車が激しい爆発を起こして横転した。
「ヨウヘイ! この野郎……!」
華怜機の上をとるトランスフォームヘリ。
二台がかりで激しい機関銃による射撃を加えていく。
咄嗟に飛び退いた華怜だが、弾のあたった機関銃が激しく加熱。緊急パージの直後に爆発した。
「いいぞユウスケ!」
ヘリの一台が変形して着地。ビル群に挟まれた直線道路にて、二人は向かい合った。
「へへ、武器は無くなったよな。降参してプラモくれるなら許してもいいぞ」
「騙すようで悪いですが」
華怜は胸の隠しホルスターからビームサーベルのグリップパーツを取り出すと、胸の前で垂直に構えた。
すると天空から戦闘機が出現。華怜機の頭上で三つのウィングパーツを分離するとそれらが連結。クリアパーツによって作られた『巨大な刀身』がグリップと接続され激しいエネルギーフィールドを生み出した。
「ザンバーサーベル……こちらの方が、好みです」
「ならそいつも頂くだけだ!」
機関銃を乱射するトランスフォームヘリ。
対して華怜機はザンバーサーベルを盾にする形で突撃。
「イエロ、アドベントモード起動!」
戦闘機が華怜のバックパックと換装されるその途端、とてつもない加速によって華怜機が周囲の空間を歪めて走った。
抵抗などする暇も無い。
トランスフォームヘリを腰部分で切断すると、三回のターンを挟んでブレーキ。停止した華怜機の後ろでトランスフォームヘリは爆発した。
「ユウスケ!? 大人があんな機体作れるわけねえだろ! ズルじゃねえのか! 反則だ!」
「反則なのはおまえたちだ!」
百がビルの上から出現。
戦車の砲撃を両腕の装甲でガードしながら飛び降りると、左手と足の甲から展開式ブレードを展開。
「くらえええええっ!」
自らを回転させた百の乱れ斬りが炸裂し、戦車が爆発。
低空飛行をかけながら射撃を繰り出すヘリ。
が、しかし、ビルの間から飛び出してきた義高の機体がビームアックスによってヘリを切断した。
「うわあっ!?」
爆発するヘリ。
ビルと地面を破壊する勢いで着地した義高の機体に対し、小刻みな射撃が加えられた。
即座に飛び退く義高。
「ブラットショルダーか!」
「ヨシカズたちの仇は僕がとるよ」
「ツバサ! いいぞやっちまえ!」
ビルの間を巧みに移動するブラッドショルダー。
義高機はガトリング砲で応戦するが、ビルが遮蔽物になってまるで有効だが与えられない。
どころか死角に回り込んでちまちまとしたバースト射撃を加えてくるせいで翻弄されてしまう。
「高い機動力に翻弄されて手も足も出ない……かな」
「フッ」
義高は自らの頭を、そして義高機もまた自らの頭をぐっとなで上げた。
「翻弄されるんじゃない。するんだよ」
ビルの窓ガラスにうつる義高機の背中。そこには元からあったいくつかのパーツが消えていた。
「まさか――!?」
ブラッドショルダーが振り返るとそこには、ビームビットが浮かんでいた。
「しまった!」
コックピットを打ち抜かれ、爆発炎上するブラッドショルダー。
「ツバサ! ちくしょう……!」
突撃を仕掛けてくるもう一台のブラッドショルダー。
義高の機関銃射撃とビームビットによる死角攻撃。
しかしブラッドショルダーはそれらをたくみに回避した。
「ビットがあることが分かればこの程度――」
「いや、分かっても避けられねえさ」
十字路にさしかかった、その時。
更に二基のビームビットが出現した。
「なっ――!?」
文字通りの十字砲火。
爆発しバラバラに飛び散っていくレッドショルダー。
ため息をついてビームビットを収納する義高……だが、危険を察知して即座にダッシュ。
すぐ横のビルが崩壊し、ビッグゼットが飛び込んできたのだ。
道路をまるごと粉砕する勢いでパンチを繰り出し、距離をとった義高機にミサイルアタックをしかけてくる。
対抗してガトリング砲撃をしかけるが、ビッグゼットの装甲に弾かれるばかりだ。
「すげえ火力だ、しかも隙だらけの癖してやたらと硬え!」
「ならオイラの出番だ!」
背後から飛びかかる百機。
左手とつま先によるビームブレード格闘をしかけるが装甲をひっかく程度のダメージしか与えられない。
「無駄無駄。僕のビッグゼットは三重のプラモ装甲で出来てるんだ。簡単には破れないぞ!」
「だったら……!」
百機がビッグゼットの胸に掌底を当てた――その瞬間。
「インパクトッ!」
右手から放たれた鋭い杭がビッグゼットの装甲を貫いて放たれた。
「なっ……馬鹿な!?」
爆発を起こし、崩れ落ちるビッグゼット。
振り返ると、懐良の巨大プラモがデビルギャンガルと衝突し、激しい爆発を起こしていた。
「か、懐良いいいいいいいいい!」
無数の爆発が集まり、巨大な光の中に飲み込まれる。
崩壊した空とビル群。やがてロケーションは、広大な宇宙空間へとチェンジした。
「俺のデビルギャンガルと相打ちを狙うとは、見上げた精神だ。大人とはいえ万単位の出費は惜しいだろうに」
「フッ。偉い人がポケットから出してくれたからな……だが、相打ちじゃないぜ!」
懐良が爆発する巨大プラモの中から現われた。
否、美少女フィギュアが現われた。
「プラモデルと美少女フィギュアの融合。メカ少女……自由な発想をくれたみんな、サンキュー!」
懐良機あらためヨシ子ちゃんはウィンクと共に横ピース。
「いいかこいつはただの美少女フィギュアじゃない。パンツの食い込みは勿論装甲をパージした際の全裸表現すら躊躇せず――」
「おいやめろやめろ!」
わざわざ脱ごうとした懐良機が百機に羽交い締めにされた。
そこへ、付喪神の声が響き渡った。
「ゲームセットだ! 見事な魂の憑依であったぞ!」
●明日に続くバトル
自慢のプラモを破壊され、がっくりと落ち込む中高生たち。
彼らは捨て台詞を吐いて神社から一目散に逃げていった。
そのなかで高校生のケンだけが、去り際に一度だけ振り向いて言った。
「お前たちなら、あの舞台に立てるかもしれんな」
「何だと……?」
「フ、いずれ分かる。運命が交わるその時に」
高校生は華怜のイエロをちらりと見てから、学帽を被りなおし、静かに去って行った。
プラモの箱を差し出す百。
「壊れたならまた作ればいい。一緒に組み立てようぜ、ロボプラを」
少年はそれを受け取って、うるんだ目をごしごしとこすった。
腕組みして見守る華怜や義高。フィギュアを下からガン見する懐良。
そんな光景を、付喪神は頷きながら見つめていた。
「おぬしたちなら……あるいは……ううむ……」
運命のギアが、回り出す。
少年が悲しみに膝をつきかけた時、彼は現われた。
「そこまでだぜ!」
神社の屋根に立ち、陽光を背にして現われる鯨塚 百(CL2000332)。
「夢みたいな遊び場を独占しようって悪い奴は、オイラが相手になってやる!」
中高生たちは彼を見上げて一瞬ひるむような様子を見せたが、相手が小学生だと悟ってすぐに調子を取り戻した。
「ヘッ、小学生一人増えた所でなんだってんだ。中高生の力を思い知らせてやるぜ」
「ほう……」
穏やかなバイオリンソロをバックに、神社の石段を上がってくる者がいた。
カルメン第一幕、恋は野の鳥。あまりに有名な曲調に思わず振り返ると、一輪のバラを手にした『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)が現われる。
「小学生を中高生の力で屈服させるか……いいさ、なら見せてやろう。シャレにならない大人の力ってやつをな!」
懐良が手を振ると、大きな木箱がすぐそばに現われる。
と同時に、腕組みした『サイレントファイア』松原・華怜(CL2000441)と木箱に腰掛けた『花屋の装甲擲弾兵』田場 義高(CL2001151)が現われた。
突然の大人の介入にたじろぐ中学生たち。
「ど、どうする。大人が入ってきたら……」
「うろたえるな」
高校生の男は学帽を被り直した。
「ケンさん……」
「日頃から仕事に追われる大人のビルドスキルなどたかが知れている。素組みのロボプラを取り出していい気になるのがオチだ。奴らのプラモも奪ってやるまで」
「そ、そうか……よし!」
リーダーの高校生ケンの扇動に勢いづいた中学生たちは素早くプラモを取り出し、クリアケースジオラマの横に立った。
対する懐良たちもクリアケースの前に立つ。
屋根から飛び降りた百は、ケースを挟んで向かい合うように立つと人型ロボのプラモデルを取り出した。
後ろでぎゅっと拳を握りしめる少年を振り返り、不敵に笑う。
「はじめようぜ! ロボプラバトルだ!」
●夢の結晶
専用カタパルトにセットされた百のプラモは往年の初代ギャンガルのスペシャルハイグレード版をベースに武者シリーズのメッキパーツをふんだんに使用したロボプラモである。
黄金の鎧武者を彷彿とさせるが徒手空拳。
「鯨塚百――出撃だぜ!」
一方で、それぞれにロボプラを取り出す義高と華怜。
義高の機体はブルーカラーの小柄なボディ。全体的に丸みを帯びた姿をしているが、両手にはそれぞれビームアックスと六連装シールドガトリングが装備されている。
「田場義高――出るぞ」
対して華怜の機体は原作でも多く登場した量産機をベースにしたモデルで、装甲を大きく減らしたスリムで鋭敏なフォルムが印象的だ。しかしフッドパーツとバックパックはボディと打って変わって巨大なものを使用していた。武装は二本分のカートリッジマガジンをつけたマシンガン。高機動高火力が窺える機体である。
「松原華怜――出撃します」
SDロボプラの付喪神はこくりと頷き、腕を振り上げた。
「スピリットオン――ロボプラバトル、スタンダップ!」
「「GO!!」」
三機が一斉に出撃。市街地をイメージしたジオラマの中へと飛び出していく。
対する中高生チームはヘリと戦車、小型機と超大型機というかなり極端な編成である。
「さあ見せて貰うか、大人のロボプラバトルというものを――」
「ちょっと待ちな!」
フィールドに響き渡る。
懐良の声である。
見上げるとそこには、巨大なロボプラが浮かんでいた。
目を剥く中学生たち。
「あ、あれは……!」
「オレが用意したのはギャンガルシリーズの中でも最も巨大なラスボス機体! 素組みだけでも三万はくだらない品だぜ! 刮目せよ中高生、これが大人の力ってやつだ!」
深紅に塗られた巨大機体が両手から極太のビームを乱射。
それに対してデビルギャンガルが割り込んだ。
無数の触手からビームを乱射し、空中で相殺させる。
「デカいのはオレに任せろ! 札束で殴られる痛みを思い知らせてやる!」
懐良は心の中でレバーを握りしめ、デビルギャンガルへと突撃していく。
そんな戦いに割り込めばただでは済まない。
中学生たちは互いに顔を見合わせ、百たちへと狙いを定めた。
「ヨウヘイ! まずはあのもろそうな量産機からだ!」
「へへ、ズタボロにしてやろうぜヨシカズ!」
スティングレイ戦車が凄まじいスピードで走り始めた。当然のように足回りを改造したその戦車は機銃射撃で牽制を開始。
対する華怜機は脚部と背部のブースターを起動。アフターバーナーをふかせて加速すると銃撃の中をジグザグにかいくぐった。
戦車の側面をとると両腰のマシンガンを乱射。
直撃をうけた戦車が激しい爆発を起こして横転した。
「ヨウヘイ! この野郎……!」
華怜機の上をとるトランスフォームヘリ。
二台がかりで激しい機関銃による射撃を加えていく。
咄嗟に飛び退いた華怜だが、弾のあたった機関銃が激しく加熱。緊急パージの直後に爆発した。
「いいぞユウスケ!」
ヘリの一台が変形して着地。ビル群に挟まれた直線道路にて、二人は向かい合った。
「へへ、武器は無くなったよな。降参してプラモくれるなら許してもいいぞ」
「騙すようで悪いですが」
華怜は胸の隠しホルスターからビームサーベルのグリップパーツを取り出すと、胸の前で垂直に構えた。
すると天空から戦闘機が出現。華怜機の頭上で三つのウィングパーツを分離するとそれらが連結。クリアパーツによって作られた『巨大な刀身』がグリップと接続され激しいエネルギーフィールドを生み出した。
「ザンバーサーベル……こちらの方が、好みです」
「ならそいつも頂くだけだ!」
機関銃を乱射するトランスフォームヘリ。
対して華怜機はザンバーサーベルを盾にする形で突撃。
「イエロ、アドベントモード起動!」
戦闘機が華怜のバックパックと換装されるその途端、とてつもない加速によって華怜機が周囲の空間を歪めて走った。
抵抗などする暇も無い。
トランスフォームヘリを腰部分で切断すると、三回のターンを挟んでブレーキ。停止した華怜機の後ろでトランスフォームヘリは爆発した。
「ユウスケ!? 大人があんな機体作れるわけねえだろ! ズルじゃねえのか! 反則だ!」
「反則なのはおまえたちだ!」
百がビルの上から出現。
戦車の砲撃を両腕の装甲でガードしながら飛び降りると、左手と足の甲から展開式ブレードを展開。
「くらえええええっ!」
自らを回転させた百の乱れ斬りが炸裂し、戦車が爆発。
低空飛行をかけながら射撃を繰り出すヘリ。
が、しかし、ビルの間から飛び出してきた義高の機体がビームアックスによってヘリを切断した。
「うわあっ!?」
爆発するヘリ。
ビルと地面を破壊する勢いで着地した義高の機体に対し、小刻みな射撃が加えられた。
即座に飛び退く義高。
「ブラットショルダーか!」
「ヨシカズたちの仇は僕がとるよ」
「ツバサ! いいぞやっちまえ!」
ビルの間を巧みに移動するブラッドショルダー。
義高機はガトリング砲で応戦するが、ビルが遮蔽物になってまるで有効だが与えられない。
どころか死角に回り込んでちまちまとしたバースト射撃を加えてくるせいで翻弄されてしまう。
「高い機動力に翻弄されて手も足も出ない……かな」
「フッ」
義高は自らの頭を、そして義高機もまた自らの頭をぐっとなで上げた。
「翻弄されるんじゃない。するんだよ」
ビルの窓ガラスにうつる義高機の背中。そこには元からあったいくつかのパーツが消えていた。
「まさか――!?」
ブラッドショルダーが振り返るとそこには、ビームビットが浮かんでいた。
「しまった!」
コックピットを打ち抜かれ、爆発炎上するブラッドショルダー。
「ツバサ! ちくしょう……!」
突撃を仕掛けてくるもう一台のブラッドショルダー。
義高の機関銃射撃とビームビットによる死角攻撃。
しかしブラッドショルダーはそれらをたくみに回避した。
「ビットがあることが分かればこの程度――」
「いや、分かっても避けられねえさ」
十字路にさしかかった、その時。
更に二基のビームビットが出現した。
「なっ――!?」
文字通りの十字砲火。
爆発しバラバラに飛び散っていくレッドショルダー。
ため息をついてビームビットを収納する義高……だが、危険を察知して即座にダッシュ。
すぐ横のビルが崩壊し、ビッグゼットが飛び込んできたのだ。
道路をまるごと粉砕する勢いでパンチを繰り出し、距離をとった義高機にミサイルアタックをしかけてくる。
対抗してガトリング砲撃をしかけるが、ビッグゼットの装甲に弾かれるばかりだ。
「すげえ火力だ、しかも隙だらけの癖してやたらと硬え!」
「ならオイラの出番だ!」
背後から飛びかかる百機。
左手とつま先によるビームブレード格闘をしかけるが装甲をひっかく程度のダメージしか与えられない。
「無駄無駄。僕のビッグゼットは三重のプラモ装甲で出来てるんだ。簡単には破れないぞ!」
「だったら……!」
百機がビッグゼットの胸に掌底を当てた――その瞬間。
「インパクトッ!」
右手から放たれた鋭い杭がビッグゼットの装甲を貫いて放たれた。
「なっ……馬鹿な!?」
爆発を起こし、崩れ落ちるビッグゼット。
振り返ると、懐良の巨大プラモがデビルギャンガルと衝突し、激しい爆発を起こしていた。
「か、懐良いいいいいいいいい!」
無数の爆発が集まり、巨大な光の中に飲み込まれる。
崩壊した空とビル群。やがてロケーションは、広大な宇宙空間へとチェンジした。
「俺のデビルギャンガルと相打ちを狙うとは、見上げた精神だ。大人とはいえ万単位の出費は惜しいだろうに」
「フッ。偉い人がポケットから出してくれたからな……だが、相打ちじゃないぜ!」
懐良が爆発する巨大プラモの中から現われた。
否、美少女フィギュアが現われた。
「プラモデルと美少女フィギュアの融合。メカ少女……自由な発想をくれたみんな、サンキュー!」
懐良機あらためヨシ子ちゃんはウィンクと共に横ピース。
「いいかこいつはただの美少女フィギュアじゃない。パンツの食い込みは勿論装甲をパージした際の全裸表現すら躊躇せず――」
「おいやめろやめろ!」
わざわざ脱ごうとした懐良機が百機に羽交い締めにされた。
そこへ、付喪神の声が響き渡った。
「ゲームセットだ! 見事な魂の憑依であったぞ!」
●明日に続くバトル
自慢のプラモを破壊され、がっくりと落ち込む中高生たち。
彼らは捨て台詞を吐いて神社から一目散に逃げていった。
そのなかで高校生のケンだけが、去り際に一度だけ振り向いて言った。
「お前たちなら、あの舞台に立てるかもしれんな」
「何だと……?」
「フ、いずれ分かる。運命が交わるその時に」
高校生は華怜のイエロをちらりと見てから、学帽を被りなおし、静かに去って行った。
プラモの箱を差し出す百。
「壊れたならまた作ればいい。一緒に組み立てようぜ、ロボプラを」
少年はそれを受け取って、うるんだ目をごしごしとこすった。
腕組みして見守る華怜や義高。フィギュアを下からガン見する懐良。
そんな光景を、付喪神は頷きながら見つめていた。
「おぬしたちなら……あるいは……ううむ……」
運命のギアが、回り出す。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
