≪友ヶ島騒乱≫海からの巨大クラゲ
≪友ヶ島騒乱≫海からの巨大クラゲ



 友ヶ島では近年の観光客のマナーの悪さ、海から打ち上げられたゴミの山の影響か磁場が悪くなり妖化現象が頻繁に起こりはじめ、観光客を呼べる状況でなくなってしまっていた。
「なんだ、あれ……?」
「クラゲ、だよな?」
 友ヶ島の船着場。
 この島への入口であり。桟橋のすぐ近くには、泳ぐのに適した浜辺もある。釣りでもしようと竿を手にしていた人々は海面に浮かぶそれを指差して、顔を見合わせた。
 通常では考えられない大きさのクラゲたち。
 人間大のそれらが波に揺られて、水柱をたてる。
 巨大な毒針を備えたクラゲたちは、今にも陸地に上がってきそうだった。
 

「友ヶ島で妖化現象が発生し、FiVEに問題解決の依頼がきました」
 真由美(nCL2000003)が、覚者達に説明を始める。
 目の前のスクリーンには友ヶ島の地図が映し出されている。
「皆さんに頼みたいのは、船着場付近の海岸に発生した巨大クラゲの駆除です」
 船着場では、ここ最近、何度か巨大クラゲの目撃が報告されている。
 妖化した危険な存在を、観光地に放置しておくわけにはいかない。ましてや、ここは島の大切な出入口だ。
「船着場で見張っていれば、巨大クラゲたちはいずれ現れるはずです。そこで駆除してください」
 問題の船着場で待機して、敵を待ち構えることになる。
 巨大クラゲ達はどこからともなく海から現れ、船着場近くの浜辺に上がって来ようとする動きをみせるだろう。
「ただ、全ての敵が陸に上がってくるとは限りません。水中戦になれば、こちらが不利になりかねないので注意してください」
 また、一挙に全数が押し寄せてくるわけではない。
 敵が来襲しては戦って、その後はまた待機して次の敵を待つ……ということが予想される。朝から晩まで長丁場の仕事になりそうだ。
「皆さん、どうかお気をつけて。友ヶ島をまた元の平和な島に戻してください」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:睦月師走
■成功条件
1.妖の撃退
2.なし
3.なし
 今回は、友ヶ島に関するシナリオになります。

●巨大クラゲ
 ランク1の生物系妖。
 全部でニ十体。

(主な攻撃手段)
 ・触手[攻撃] A:物近単
 ・毒針[攻撃] A:特近単 【毒】

●船着場
 友ヶ島の出入口。
 桟橋がかかっており、近くに浜辺があり、釣りや遊泳を楽しめる場所でもあります。
 巨大クラゲ達は、海から現れて浜辺へと上陸してくるものもいれば、海にとどまるものもおり。また、単体や集団で不規則にやってきます。戦闘に関しては、連戦になることもあれば、時間が空くこともあります。
 今回のシナリオで海に入って戦う場合は、特定の場合を除き覚者達は各ステータスにペナルティが発生するものとします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
10/10
公開日
2016年08月27日

■メイン参加者 10人■



「天国だぁ!」
 夏の孤島。
 『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)が吼える。
「防御の硬い服装の八重ちゃんが肌色だぁ
 瑛太ちゃんも何かに目覚めそうになるなぁ
 きせきちゃんも、あんな子が男の子の訳あるか
 椿ちゃん大天使だろ、浜辺に舞い降りた大天使だろ
 美久ちゃん女の子なのに上半身裸で大丈夫??
 椿花ちゃんも、……香月の目線が痛い止めておこう
 時雨ちゃんも委員長的な普段とのギャップがはぁーん」
 女性陣(+α)の姿に目を奪われ。
 今にも、昇天しかねない勢いだ。
「えっちなのはいけないと思いますよ、切裂のお兄さん?」
 痛覚を遮断。ハイバランサーで足元確認をしていた『Overdrive』片桐・美久(CL2001026)は、水着の上にパーカーを羽織っていた。萌袖なのが愛らしい。
「ジャックくん、どうしたのー? ぼく女の子じゃないよ?? 暑くて疲れちゃってるのかな??」
 水着姿の『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が、ジャックを覗きこんでくる。他にも三島 椿(CL2000061)は黒系の動きやすい、けれど露出が過ぎない感じの水着。十河 瑛太(CL2000437)は水着の上から病院着を被っていた。
「うっ……ときちかぁ!! 俺、もう駄目かも。水着という超薄型防水衣服だと俺の男の子な部分が限界なのが隠し切れへん!」
「はい、大丈夫です。まだ戦闘に入っていないので怪我もしていませんしダメじゃないです。切裂、あとお願いですから隠しきってくださいおちついてください紳士的対応を求めます」
 『狗吠』時任・千陽(CL2000014)は、スポーツ飲料やゼリー飲料をクーラーボックスに。休憩場所として簡易キャンプを設置した。
「備えあれば憂いなしといいます。準備は大切です。ええ」
「パラソル立てて準備万全っす。万全っすよ?」
 赤パーカーに白のワンピースタイプの水着の水端 時雨(CL2000345)が、バーベキューセットを取り出す。ありったけの飲み物と食材を持ってきている。
「水際での仕事だから、皆水着……ってのは分からなくもないか」
 『第二種接近遭遇』香月 凜音(CL2000495)は、パーカーに黒系の水着だ。日焼け対策はしておく。怠ると酷い目に合う。
「あ、凜音ちゃん、椿花にも日焼け止めー!」
「あ? はいはい。後ろ向け」
 『天衣無縫』神楽坂 椿花(CL2000059)も水着である。凜音は、日焼け止めを渡しつつ、椿花の手の届かない背中に塗ってやる。
「日焼け自体は良いけど、日焼けした後のヒリヒリが嫌なんだぞ……この前もそれで大変だったんだぞ……」
 思わず身震いする椿花。
 それを凜音は他の面々と何となく見比べる。
「ふふ、濡れちゃいますから水着で着ましたが。なんだか新鮮で面白いですね?」
 微笑を浮かべる『深緑』十夜 八重(CL2000122)をはじめ、美人揃いの水着姿。
 そんな眩しい面々に囲まれている、この状況。
(女子連中の水着姿はまぁ……いいもんだよな。目の保養)
 椿花いるから、まぁ口に出すのはやめておくけれども。
(絶対、椿花はー!?って言い出すだろうしな……可愛い部類には入ると思うが女子か?っていうとなぁ……お子様というか子犬というか、そんなやつの方が近いんだよな)
 なかなか複雑だ。
 そんな胸中を知る由もない椿花はというと。
「んー……とりあえず、妖が出るまでは船着場で待ってるんだよね……? 椿花、お父さんから色々借りてきたんだぞ!」
 次々と借りてきたものを出す。
「キャンプ用の椅子・テーブルとパラソル、後ドリンクやお菓子にお弁当も持って来たんだぞ! お弁当は、お母さんが皆で食べてねって作ってくれたんだぞ!」 
「ふふ、いろいろ用意して椿花さんはしっかりものですね」
「敵が来てない時は、皆でお菓子を食べたりして待つんだぞ!」
「懐中電灯も用意して夜に備えますね。数が多いですし長期戦になっても困りますから」
 手を貸す八重に、お菓子を差し出す椿花。
 覚者達は拠点を作り上げ、長い一日に各々備えるのだった。


「へー、もうちょっとキレイだと思ってたけど案外、汚ねーのな。あっちのは……何だ? ブワッブワのビニールみてーなのが海に浮いてんぞ。アレがクラゲか?」
 最初に異変に気付いたのは瑛太である。
 海のゴミに混じった、半透明の物体。常識から外れた大きさのクラゲ達だった。
「クラゲは食えるぞ。中華料理とかに和え物で出るんだぜ」
 一気呵成。
 醒の炎で底上げして、瑛太は陸に揚がって来たクラゲを飛燕でぶった斬る。一番に前に出た。
「まずは浜辺に上陸しているクラゲの妖達から倒した方が良さそうね」
 椿の水龍牙が、横に並んだクラゲを薙ぎ倒す。
 生成された水竜が豪快に牙を剥く姿は、気温を下げる効果があるように思えた。
「夏! 海! クラゲ……前に、椿花もクラゲに刺された事あったけど……もう刺されたくないんだぞ……皆が海で安心して泳げるように、頑張ってクラゲ退治するんだぞ!」
 椿花が身体能力を上げ、地烈で跳ね上がるような二連撃を打ち放つ。クラゲ達は思わぬ攻撃に右往左往を重ね、驚いたようにゆるゆると反撃してくる。
「カウント。いー、ある、すりー、ふぉー、ふぃあー、ぜくす……20体相手だから気を抜かないように頑張らないといけないっすね」
 時雨は癒しの滴で味方を癒し。
 敵の数を確認する。今、来ているのは六体。良い具合に、全部が陸へと踏み入れて来ている。
「海月なんて海でぷかぷか浮いてりゃいいだろ? 何でこっちに敵対するんだよ……」
 錬覇法を使ってから、凜音は後衛にて皆の回復に努める。
 毒針を使う相手に対し、深想水でリカバーも行って戦列を支える。
「びりびりのお返しだよー!」
 きせきは、おもむろに双刀を構える。
 刹那の斬撃が触手を両断。怪物は傷とともに、痺れを受ける。
(一気に倒したら触手が女の子擦ってくれないじゃん)
 ジャックは回復中心に……同時に支障にならないくらいに身を屈めたりして女の子見護っていた。瞬間記憶まで使用するのを怠らない。
「生憎、殴るしかしらない残念な僕ですが、足りない分は気合で補いますよ!」
 萌袖捲りつつ。
 深緑鞭で敵を打ちつけていくのは美久だ。事前に確認した通り、足元を取られる心配はない。何度も植物の鞭を繰り出すこと幾許か……妖の一体が力尽きたように、その巨大な身体が萎む。
「まずは、一体ですか」
 クラゲを倒した数を、千陽はきちんとカウント。
 蔵王・戒で防御を固め、無頼漢で気を放出する。するとプレッシャーがかかった、クラゲ達は減速。
「あまり動かないでくださいね?」
 そこに、八重はエアブリッドを炸裂させた。
 弱っている個体からしっかりとどめを刺す。圧縮された空気の塊をまともに受けたクラゲは、その威力に耐え切れず破裂した。
 

「第一陣が終わったっすね」
 時雨が海辺を見回す。
 覚者達以外立っている者はいない。
「ちゃんと数メモしないといけないっすね。大体何匹位きたかで何陣来るか予測できそうっすかね? 出来たらいいんだけど……」
「海月の数、俺も数えとくわ」
 複数人で数えていた方が間違いがないだろうしな。
 と、凜音も敵の数を把握しておく。八重は守護使役のていさつで空最大10メートルから見回した。
「漏れがあってもいけませんしね?」
「朝から晩まで見張ってなきゃなんて、めんどくさいねー。一気にぜんぶ来ればいいのに!!」
 きせきは暑さで失った水分を補給するように飲み物に口をつける。
 他の者も、休めるうちに休んでおく。こういうときにものを言うのは、何と言っても体力だ。
「皆さん、妖です」
 双眼鏡で海の向こうを覗いていた千陽が、戦闘の準備をするように伝える。
 といっても、視界にとらえたのは一匹のみだが。
「気合いれていくわっ」
 椿がエアブリットで先制する。
 力を込めた一撃が風を巻いて、熱風を揺らした。ジャックが第三の眼から光を放ち、美久が木行の技を発動させた。
「砂浜だけど、ハイバランサーがあるからこける事は無いんだぞ!」 
「すっ転びたくねーし攻撃スカるのもイヤだしな」
 椿花と瑛太は優れたバランス感覚を発揮して、一足飛びに駆ける。
 剣戟の嵐が吹き荒れ、クラゲはなます斬りにする。
(あ、一応椿花もクラゲの数数えておくんだぞ……こっそり数えて、皆の数と確認するんだぞ)
 気が付けば妖が何分割したか分からぬ態。
 他に敵がいないと見て取ってから、覚者達はまた待機する。
「お肉焼くっすよー。あ、敵が来たら焦げないようにしないと……。食事中にこない事を祈るっすよ」
「長くなりそうですしお弁当も用意しました。おにぎりやサンドイッチ、片手でも食べやすいものですね。何時現れるか判りませんし。ふふ、具は色々ありますからお好みのものをどうぞ召し上がれ」
 バーベキューの肉や、彩り豊かなお弁当は食欲をそそった。待機中は、それらを摘んで胃袋へと補給する。
 何とも牧歌的な光景だが、敵が姿を見せれば打って変わって臨戦態勢に入る。
 その繰り返しだ。
「巨大なクラゲが押し寄せてくるのも厄介ですが、長丁場になるのもまた厄介な話です」
 千陽はそう評し、次々と押し寄せる妖達を撃退したものである。
 面倒なのは、海から出てこようとしないクラゲだ。千陽自身、幾度となく海に入る。
「火炎弾を突っ込んで、様子を見るぜ!」
 瑛太が拳大の炎を投げ放つ。
 海面が光って爆音と水柱が上がる。この衝撃に、あぶり出されるクラゲ達は待ち構えていた仲間が対処する。しかし、あくまでも海中にとどまる相手に対しては――
「絶対に全部やっつけるんだもん、水の中で動きづらいかもとか気にしないよ!」
 きせきは海へと身を躍り出す。
 陸上と違って身体が思うように動かず。敵の触手の直撃を喰らうが、それでも勢いを殺さず。潜ったクラゲの足を掴み、刀身を一閃。
「逃がさないわ」
 たまらず海面に顔を出した妖を、支障のない高度で飛行した椿と八重が狙い撃った。
「あちー」
 戦闘中も待機中も。
 暑さが苦手な凜音は、この言葉を何度繰り返したか分からない。仕事だから仕方がないが、夏の日差しはできれば避けたいところだった。
「あ」
 そんな熱気にあてられか。
 不意にジャックは、つまづく。バランスを崩したダイブの先には八重がいて――
(ひ、触っちゃった……!)
 柔らかな感触を指先がとらえる。
 次の瞬間、物凄い勢いで慌ててばっと離れた。
「ご、っごめん!!」
「あら? ふふ、躓いてきたぐらいで怒りませんから。事故みたいなものですしね?」
 いいこいいこ。
 相手の頭をよしよしと、八重は気にした様子もなく撫でた。
(くそぅ。俺はちきんだ!)
 予想外の展開で、何とも言えぬ敗北感を味わうことになったジャックだった。
 

「暗くなってきたねー」
 陽が次第に傾いていく。きせきは発光して、周りを照らした。淡い光を帯びた水着姿は、本人の意図せぬところで可愛らしさを引き立てた。
「また、クラゲが出てきたっすよ。人間サイズのクラゲって何かあれっすね。ロートルな映画の火星人って感じっすね」
 光に引き寄せられたように。
 敵が集まってきたのを、時雨は眺望する。
「一度にいっぱいきても大丈夫だもん! かかってこいよー!」
 一番に飛びかかったのは、きせきだ。
 クラゲの数は、今までの戦いの中で最多だった。近くの一体へとまずは、刀を走らせる。
「一、二、三……全部出揃ったか」
 凛音が癒しの霧を使いながら、打倒したのと合わせて全数を確認する。触手を妖しく動かし、クラゲ達はこちらへと群れ掛かってくる。
「なんだかひんやりして、独特な感じね。それに痛いわ」
 巨大クラゲの触手が襲いかかる。その肌触りに椿はぞっと鳥肌を立てる。気持ち悪くて薄氷で即攻撃し返した。
「……っ! 痛みはあまり感じないとはいえ、気持ち悪いです」
 美久の腕も焼けただれるように腫れ始める。
 ひりひりと嫌な音が聞こえてくるかのようだった。他の面々も、触手の猛攻に四苦八苦させられる。
「……違うだろ」
 ただ、その中。
 俯いたジャックは、ぽつりと呟いた。
「お前たちの触手ってのは、女の子の肌を傷つける為のモンじゃネェだろ!」
 ばっと。
 顔を上げて、敵を指差す。
「女の子の肌をねっとり、舐め上げるように触れつつ蹂躙するのがァ触手のォ本当の使い方だろォ!」
 それは魂の咆哮。
 敵だけでなく、味方までもが、彼の方を思わずまじまじと見やる。
「えっ」
 元気なのは良い事よね、と思う方である椿でさえ固まってしまい。
 それにも構わず、ジャックは高らかに、舞台俳優さながらに両手を振りかざし。渾身の力を全霊で振り絞った。
「これ以上、道を間違えるっつーんなら、消え去れェエ!!」
 雄叫びが海に木霊する。
 火の波が、猛々しく音を立てて。ビックウェーブが、妖達を蹴散らす。烈火の海が悉く地上を焼く。
「ええと終わったのかしら?」
「何かよくわからなくなってしまいましたが、僕は女子だったんでしょうか? ……あ、いけない、本題を見失う所でしたね! クラゲさんはきっちりと退治……え、触手?? 何のお話ですか?」
 全員が首を傾げ、事態を飲み込むのにいくらかの時間を要した。
 客観的な事実としては、辺りはもうもうと炎に包まれて。敵がこんがりと焼かれて、強かなダメージを負ったということだ……色々なことをさておいてだが。
「ふふ、向かってきてくださるなら、力を入れる必要もないですしね?」
 好機を逃さず。
 八重は笑いながら、霞返しでカウンターを仕掛けた。のんびりしつつ傷はしっかりと抉る。
「慈悲はない。怖くないですよ」
 傷付いたクラゲ達は、何とか迎撃しようとして。
 逆にその傷を深めてしまうといった具合であった。半透明の身体が、ぞくぞくと倒れていく。
「水生生物に氷って相性どうなんっすかね?」
 などと疑問を抱きながら。
 時雨が放った水礫が、一体のクラゲに命中。その個体は永遠に沈黙する。
「触手?とかよくわかんないけど、とにかく捕まったら危ないんだね! わかった!」
 エネミースキャンをして、相手を見定め。
 前衛に出て、きせきの地烈が相手にトドメをさす。その勢いに押されて、クラゲ達は雪崩をうって海へと逃げ出した。
「椿花あんまり遠距離得意じゃないから……」
 追撃した火炎弾が、逃げたクラゲの一つを燃やす。
 続いて瑛太は水中散歩で海へと駆ける。千陽が蒼鋼壁でサポートし、射撃で連携を図り。更に美久が、棘一閃を放ち水上の敵を狙う。
(息継ぎだけ忘れないようにしねーと)
 仲間の弾を受けたクラゲの動きが、その動きを止め。
 瑛太の射程圏に入る。水中でも抵抗を受けず、軽やかな二連撃には充分な力が乗り……最後の妖は海の藻屑となって消えた。


「とりあえずひと段落ね」
 みんなお疲れ様と、椿が潤しの雨で皆を回復させる。
 戦闘後、妖の何体かは普通のクラゲに戻って息絶えていた。
「確か、おっさんが斬って塩漬けにすれば食えるみてーな事を言ってたな。近くにクラゲ入りアイスとか売ってたりしねーの?」
「これでクラゲさんは全部でしょうか? 最近はクラゲを使ったアイスがあるそうですよ! 生憎僕は食べたことはありませんが……アイスなら、ちょっと興味ありますね! あとやっぱり僕は男子でしたね!」
 美久がパーカー脱ぎ捨て、皆も一息つく。
 少しでも磁場の乱れが収まればとゴミの清掃をしてから、千陽は釣りへのスポットへと向かった。
「太公望を気取るわけではありませんが、静かな場所での釣りはいいものだ。のんびりできるし疲れもとれる。ですから、切裂。お願いですから静かにしてください」
「ヌシ釣ったるでぇ! この海の、ヌシ、釣ったるでぇ!! よし来い! 召炎――ッえ、うるさい!?」
 いつの間にか隣にはジャックがいて。 
 笑顔でMAXテンションだった。
「魚が逃げるんです。アジとかカンパチが逃げるんです」
「クジラ、いないだと……!」
 がーん。
 分かりやすくショックを受け。その後は静かに釣り糸を見守ることしばし。
 ……さて。
「なっ、ときちか! もっと良い釣り場所があるんやで?」
「はあ」
 気を取り直したジャックに連れてこられた先。
 そこは――皆が準備をしていたサプライズの誕生日パーティの会場!
「内緒で企画したんだぜ! オメデト、俺の友達!」
「千陽さん、お誕生日おめでとうー! プレゼント用意したんだよ。葉脈のしおり! 千陽さん本読むの好きって紡さんから聞いたから、ちょうどいいかなって!」
「お誕生日、おめでとうございます! あ、これ、音だけのものなので……浜辺は汚しませんよ!」
「終わるまで内緒にしてたんだぞ、アッハハ!」
「時任さんハッピバースデー」
「ふふ、時任さん好かれてますね?」
「千陽、誕生日おめでとうなんだぞ! 椿花と一緒の八月誕生日!」
「誕生日おめでとう。いくつになるんだ?」
「誕生日おめでとう時任さん。いつもお世話になっているから、良かったら使ってもらえると嬉しいわ」
 仲間達がクラッカーで出迎える。
 そこからは、クラゲの入りのアイスを作ったり。釣った魚を焼いたり。夜遅くまで盛り上がった。笑い声はいつまでも続く。
「素敵なサプライズパーティね」
「本当……サプライズでした」
 椿が笑いかけると、千陽はプレゼントされた紅茶と蜂蜜の瓶を掲げる。
(凜音ちゃん、椿花の誕生日もお祝いしてくれるのかなぁ……?)
 凛音を、椿花はふと見つめた。
 妖の脅威が去り、平和が訪れた海辺で一緒に戯れながら。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

 無事、クラゲを倒し終える結果となりました。
 妖を倒しただけでなく、サプライズパーティまであるのはSTとしても意外でした。皆さんの気持ちがこもったプレイングだったと思います。それでは、ご参加ありがとうございました。




 
ここはミラーサイトです