流しそうめんを飛ばすしかない!
●ていうか飛んでる!
「夏ですねえおじいさん」
「夏だねえおばあさん」
老夫婦がお家の屋上でのーんびりしてい――るおじいさんの顔面にそうめんがスパーキング!
「おじいさ――ぎゃっぶ!?」
振り向いたおばあさんの顔面にもそうめんがスパーキング!
続いて大量のそうめんが老夫婦にスパーキング!
「これは妖被害によって長年流しそうめんを怠ってきた人類への、古妖からのむくいなのです……」
夢見の話を聞いて、文鳥 つらら(nCL2000051)は手をグーにしてぷるぷるしていた。
なんでプルプルしてるかって、ここ数日氷を舐めて生きているからである。
「うわあああああああ! なんで飛ばしちゃうんですか! 食べればいいのに! 食べればいいのに! 今すぐめんつゆとお箸を持って行って食べればいいのに!」
「落ち着いてっ、食べていいから! そのつもりだから!」
夢見に背中をよーしよーしって撫でられてフーフーいいながら落ち着くつらら。
「す……すみません。とりみだしちゃって……」
「うん。この古妖はそうめんが妖怪化したもので、長年流しそうめんが行なわれていないことに怒ってどこからともなく高速で流しそうめんを飛ばすんだよ。おいしいそうめんを」
「うわああああああああああああああああああああ!」
味を想像しちゃったのか、つららはお腹をぐーぐー鳴らしながら床を転がった。
「町がそうめんまみれになる悲劇を回避するためにも、このそうめんをキャッチして食べてあげなくちゃいけないんだよ。そう、皆の手で……!」
「夏ですねえおじいさん」
「夏だねえおばあさん」
老夫婦がお家の屋上でのーんびりしてい――るおじいさんの顔面にそうめんがスパーキング!
「おじいさ――ぎゃっぶ!?」
振り向いたおばあさんの顔面にもそうめんがスパーキング!
続いて大量のそうめんが老夫婦にスパーキング!
「これは妖被害によって長年流しそうめんを怠ってきた人類への、古妖からのむくいなのです……」
夢見の話を聞いて、文鳥 つらら(nCL2000051)は手をグーにしてぷるぷるしていた。
なんでプルプルしてるかって、ここ数日氷を舐めて生きているからである。
「うわあああああああ! なんで飛ばしちゃうんですか! 食べればいいのに! 食べればいいのに! 今すぐめんつゆとお箸を持って行って食べればいいのに!」
「落ち着いてっ、食べていいから! そのつもりだから!」
夢見に背中をよーしよーしって撫でられてフーフーいいながら落ち着くつらら。
「す……すみません。とりみだしちゃって……」
「うん。この古妖はそうめんが妖怪化したもので、長年流しそうめんが行なわれていないことに怒ってどこからともなく高速で流しそうめんを飛ばすんだよ。おいしいそうめんを」
「うわああああああああああああああああああああ!」
味を想像しちゃったのか、つららはお腹をぐーぐー鳴らしながら床を転がった。
「町がそうめんまみれになる悲劇を回避するためにも、このそうめんをキャッチして食べてあげなくちゃいけないんだよ。そう、皆の手で……!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.そうめんをたべる!
2.そうめんをたべる!
3.そうめんをたべりゅううううううううううううううううう!
2.そうめんをたべる!
3.そうめんをたべりゅううううううううううううううううう!
ロケーションとか色々説明しましょーね。
場所は老夫婦の住んでる家の屋上です。
めんつゆとかお箸とか、なんならネギとかショウガとかも用意してくれる親切な老夫婦が住んでいます。たよりましょう。
全員配置についたら作戦開始です。
飛んでくるそうめんをあの手この手でキャッチしまくってください。
ただし流しそうめん感をかろうじて残すためにお箸でキャッチしなくてはなりません。シートを広げたりザルを使ったりしたら何でか知らんけど突き抜けていくそうです。すげえなそうめん妖怪。
ちなみに足下に落ちたら氷の如く溶けて消えます。落ちたそうめんはそうめんじゃ無いっていうルールのようです。
一定時間の間ある程度のそうめんをキャッチして美味しく食べきることができれば、古妖は満足してこの奇行をやめるらしいよ。
あとキャッチできなかったそうめんはアパートに住む田中太郎45歳独身(知らない人)の部屋になだれ込んで部屋をそうめんまみれにするらしいよ。それは消えないんだね。嫌がらせかな。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/9
6/9
公開日
2016年08月18日
2016年08月18日
■メイン参加者 6人■

●はぐれ軍師純情派
デーレッデーデーレッデー(例のBGM)
オレは天才軍師『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)。九人枠に五人しかいない依頼を見つけて出発直前に飛び込んだらそこは空飛ぶそうめんを食う依頼だった。
そこでオレは考えた。
「そうめんを食うならば、キモはめんつゆだろう」
だがオレはすぐに壁にぶつかることになった。
そう、そうめんに合うツユとは何かという命題だ。
今まで視聴者諸兄はそうめんを食うときそばつゆやうどんつゆを使っていい加減に食っていたはずだ。
だが、本当にそれでいいのか?
蕎麦には蕎麦、うどんにはうどんのつゆがあるように。
「そうめんにはそうめんのツユがあるはずだ!」
オレは走った。
西にそうめん屋があると聞けば食べに行き、東にながしそうめんがあると聞けばやりに行き、正味映像にして5分間に及ぶオレダッシュシーンを挟んだ所で、オレはついに発見したのだ。
「なにしてんのアンタ」
『燃焼系ギャル』国生 かりん(CL2001391)は腕を組んで見下ろしていた。
膝を突いてぜーぜー言ってる懐良。
息も絶え絶えにポカリボトルを取り出した。
「さ、さがしに……」
「なにを」
ボトルの中身をあえて頭から浴びてさわやかに首を振る懐良。
「愛を」
「目的変わってんじゃねーか!」
バケツをひっくりかえすかりん。
「ってゆーかよくあんな時間で書けたなそのプレ! アタシプレの大半を愚痴と暴言で埋めるので精一杯だよ!」
「それはそれでどうかと思う。埋めりゃあいいってもんじゃないぞ」
「しるかー!」
再びバケツをひっくりかえすかりん。
「大体なんで開始300文字をかっさってんの。最終的に手に持ってんのポカリだし」
「そうめんのつゆは蕎麦やうどんと同じものが最適だということに」
「知ってる!」
ばけつをひっくりかえすかりん。
「ちょ、やめて。用意したお水こぼすのやめて」
つぎたすたびにバケツがひっくりかえっていくので、『スポーティ探偵』華神 悠乃(CL2000231)が慌ててバケツをガードした。
屋上設備は雨が降っても普通に端の溝から流れていくのでこぼれること自体は問題ないが、後々なんやかんやで使おうとしていたバケツをかえされちゃあたまらん悠乃である。
そんな悠乃のところへお盆もってやってくる老夫婦。
悠乃は立ち上がって頭を下げた。
「このたびは場所をお貸し頂いてどうも」
いえいいんですよみたいなテンションで手を振る老夫婦。
ビニール袋持ってきた鯨塚 百(CL2000332)と『中学生』菊坂 結鹿(CL2000432)がやってきた。
「あれ、悠乃なにしてんの?」
「うんちょっとね」
かがんで覗き込んでみると、悠乃が脚立を順番に並べて塩化ビニールパイプを通していた。
なんかの配管かな、と思う百は流しそうめんを軽く都市伝説だと思ってる子である。
そうめんを流してまで食べようって人はそうそういない今時の世の中で、11歳男子がながしそうめんを知らないのはごく普通の流れであった。
たとえるなら携帯ゲーム機における通信ケーブル(最新機種にも実はある)の存在くらいに。
……って言ってて、この日本には割と通信ケーブルが普及してそうだなと思った今日である。
さておき。
「オイラ、流しそうめんってしたことないんだ。それが飛んでたら、ちゃんと取れるかな?」
「わあしも、飛ばしそうめん初めてです」
「そっかあ」
飛ばしそうめんを二回以上経験した人はついぞいないだろうなと悠乃は思ったが、女子中学生の話にはとりあえずうんうんと頷いてあげる大人の悠乃である。
「わー、私はおそうめんが初めてですー」
その横で軽くおかしなことをいう文鳥 つらら(nCL2000051)。
ひやむぎとそうめんの違いもよくわかんなくなってきた昨今なので、比較的安価なひやむぎに流れがちなご家庭も少なくなかろう。
「しかし、そうめんの妖怪とは……」
なんやかんやの準備を終えてやってきた『覚悟の事務員』田中 倖(CL2001407)が、空を見上げて眼鏡を指で押し上げた。
「にわかには信じがたいですが、お鍋や卵の古妖も確認されているそうですし……いや、だとしてもにわかには信じがたいですね」
用意したお椀とつゆのボトルをそれぞれ台に置くと、倖はビシッと配置についた。
「では早速、飛ばしそうめんと参りましょう」
●スポーティ探偵物語
「私にいい考えがある」
なんか不安になる台詞と共に悠乃が取り出したるは二つのバケツ(新品)。
片方を塩ビ滑り台の下側に置き、もう一方を上側から流して見せた時に、百が拳を握って身を乗り出した。
「そうか! そうめんが流しそうめん不足に怒ってるなら……!」
「流しそうめんにすればいい」
悠乃はニヤリと笑って滑り台に水を流し始めた。
吸い込まれるようにひょいひょいレールに飛び込んでいく流しそうめん。
その一番上ン所で全部かさらっていくかりん。
「……」
ひたすら飲むようにそうめん食っていくかりんの台詞をあえての準コピペでお届けしようと思う。
「……流しソーメンってのはねェ、社会の縮図なのだよ。ソーメンは金、竹ン中の水は経済の流れ、でもって食うヤツは上に行くほどエライ人でね。最近じゃちっとは景気良くなったーなんて言ってるケドもさー。実際そんな実感無いでしょ? 特にそこの設定上はホームレスやってる芸風のヤツとか。ソーメンと社会は一緒なのさ! ちっとばかり流れてくる金が増えたところで。こーして上の方にいえるエラーイ人達が竹筒に箸突き立ててソーメン全部掻っ攫っちまうんだよ! テメーら貧乏人のコトなんざ知ったことか! 自分が一番カワイイんだよ! ヒャーッハッハッハッハ! 無力な底辺は無様に飢え死ね!!」
「悪いやつだなー」
ゆうても口に直で流し込めるわけでもないのでガンガンに取りこぼしていくわけで、それを百は丁寧にとっていた。
老夫婦にふりかえる百。
「この異変はオイラたちが解決するから、心配しなくていいぜ! あ、ショウガもらっていかな」
そうめんすくって、めんつゆにつけて、すする。
日本人がひたっすらやってきたこの動作を、百はひたすら繰り返していた。
今日は折角人数も少ないからもうちょっと語るが、そうめんっていう食べ物が夏場にひたすら普及する大きな理由はその『すすりやすさ』にある。
体力が落ちて食欲もあんまりないって時に割とするする食べられるのだ。
味付けも(商品によるが)、食塩と水と小麦粉を練って作るという工程上非常に味が素朴でちょっぴり食欲もそそるという具合に出来ている。
そういう意味では『ほそいうどん』であり、懐良の話ではないがうどんつゆがよくあうように出来ている。
強いて言うならかみ切りやすく総合的な表面積が多いことから、味は薄めで甘みやや強めくらいが理想だ。もしいちから作っているなら醤油を減らしてみりんを増やすくらいが丁度いいだろうか。
さておき、百はさっそく人生初の流しそうめんをエンジョイしていた。
おいおい悠乃のクールなアイデアによってこの依頼はただのエンドレス流しそうめんになっちまうのかいなっちまわないのかいどっちなんだい――ならない!
「皆さん大変です、見てください!」
流しそうめんは基本、上から流して下で受け取り、受けきれなかったらまた流すという作りになっている。
なので下にはざるが設置されているのだが、ざるを回収しようとした倖の手から、そうめんが空の彼方へと飛び立っていったでは無いか。そう、まるで次なる流しそうめんの地を求めるかの如く。っていうかその先にあるのは田中さんちだけども。
「くっ、狩り狂ったながしそうめんの主よ……ひとたび流されたとて、その怒りは沈まれぬか……!」
倖が急にキャラじゃねえことを言って膝をついた。
金ローでもものけのひめでも見たんだろうか。
「うろたえるなぁ!」
懐良がお箸を翳した。
「通過ルートが狭まったと考えろ。たとえザルから拡散したとしても、勝利は揺るがない」
「勝利とは……」
「フッ、知れたこと。食における勝利とはすなわち満足と満腹。あくまでお箸ですくい取ってこその流しそうめんなれば……至るべき道はひとつしかあるまい!」
懐良は腕をクロスすると、両手にお箸をそれぞれ持った。
眼鏡そのものを発光させる倖。
「そ、それは……! 古来より伝わる禁断の奥義、宮本武蔵持ち……!」
「否……坂上懐良持ちと呼べ! ひかえおろう!」
「ハハァーッ!」
ひれふる倖。
胸を張って高笑いする懐良。
その光景を眺め、何だろうこの人たちって顔をする結鹿。
「途中から時代劇みたいなしゃべり方になってるのは、なんで……」
「真田丸みたんじゃねーかな」
「でも、お箸を両手に持ったら、めんつゆにつけられないですよね」
ぽつりと呟いた結鹿の言葉に、倖の眼鏡が粉砕した。
「な、なんと!?」
「えいっ、えいっ」
それを無視して屋上の前ギリギリの所で翼パタパタさせながらそうめん取ろうと必死になるつらら。
かりんが誰もアタシの前を走らせねえみたいなテンションで襟を引っ張っていた。
「こらホームレス芸人! 飛ぶの反則だろォーッ!」
「反則じゃないですー! あっあっ、でもとれない! おはしちゃんともてないっ!」
「箸の持ち方へったくそじゃんアンタ!」
「……」
あっちはあっちで賑やかだなあという目で見る結鹿。
女子中学生のわりにやけに達観したまなざしである。
あとあのぶんだとつららに全部そうめん持ってかれる心配ないな、とも思った。
「でもちょっと可哀想ですね。つららさん、あれだと食べられないんじゃ……」
「うろたえるなぁ!」
両腕を頭上高く掲げ、手首部分でクロスさせてお箸を上向きに開くというもうなにがなんだか分からないポーズで懐良が唱えた。
塩ビレーンからひょいひょいそうめんをつまみ上げながら振り返る悠乃と結鹿。
「えっなにそのポーズ」
「気に入ったのかな」
「聞けい!」
懐良は一旦つららに『ほーらこっちおいでー、美味しいご飯をあげるよー』と言って手招きした。
わーいごはーんとか言いながらぱたぱた飛んでいくつらら。
「二刀流(坂上懐良持ち)故にめんつゆにつけることのできない俺。お箸の持ち方へったくそが故そうめんをつかみ取れないつらら。この二つが導き出す最適解とは……これだァ!」
ワン。
ツー。
スリー。
のリズムでめんつゆのお椀を持ったつららを前に立たせ、懐良は千手観音かなってくらいの動きで飛散するそうめんを両手の箸で次々にキャッチ。
流れるようにめんつゆに一旦ひたすと、そのまま『あーん』したつららの口にぽんぽん放り込んでいった。
「これはぁ……!?」
倖の眼鏡が逆再生で修復された。あとクリアになった。
「余すこと無くキャッチされたそうめんを余すこと無くつららさんが食べることで、そうめん妖怪も満足、つららさんも満腹、懐良さんも点数が稼げて満足、ついでに田中氏の部屋もそうめんまみれにならないという最適解! 坂上懐良さん、やはり天才か……!」
「フハハハハハ!」
テンションマックスで千手観音しまくる懐良。
それを見ていた百がふとつぶやいた。
「でもあれ、懐良は食べれてないんじゃねえ?」
「いいんだよ。本人は楽しんでるから」
平和にそうめんすくう悠乃。
「流しそうめんっていうのはさ、美味しいだけじゃなくて、楽しく食べることに意味があるんだよ、たぶん。ほら見なよ」
振り返ると、子供たちが楽しそうにしているさまを見て老夫婦も微笑ましくそうめんをすすっていた。
すっくと立ち上がる悠乃。
「さてと、そろそろ味を変えていこうかな。いんげん作ってきたけど、食べる?」
「いんげんって作れるもんなのか?」
「土から作ったわけじゃないけどね。育てたの」
刻んだインゲン豆に大葉や海苔といった薬味をくわえた専用のつゆを作っていく悠乃。
ほえーと見ていた百も、はたと気づいてビニール袋からツナ缶を取り出した。
「そうめんってするっとしてるだろ? だからこういうのが意外と合うんだよなー」
ツナの肉はそうめんに不足しがちなタンパク質を補ってくれるだけで無く、出た油によってめんのなめらかさを強化してくれる。
こればっかりだと飽きてしまうし一度いれると変えようが無いが、手軽さも含めて終盤のメニューとしてはかなりお勧めできるのだ。
「なんだか、心配すること無かったかもしれませんね」
結鹿はほっと胸をなで下ろすと、悠乃のつゆを分けて貰ってそうめんすくいを再開した。
「しっかし喉渇いて来ちゃうよな。お腹も冷えて来ちゃうし、暖かい飲み物とか……」
「あっ、それなら」
結鹿がポットからホットの麦茶を注ぎ始めた。
夏ばてには麦茶が最適と言われるが、ホットにすることでより身体になじみやすく冷えすぎを予防できるのだ。
カフェインも(直接成分分析したわけではないが)ほぼ無いのでがぶ飲みしても健康に害は無い。
「おっ、さんきゅ! けどこんな風に食べてマナーとか悪くならねーかな。そうめん妖怪、おこらねえ?」
「食べ方は文化によってそれぞれですから。けれど人や食に感謝しつつ、残さず食べるのが本当のマナーなんですよ。きっとそうめんさんも喜ぶでしょう」
「これはまた、子供たちに教えられてしまいましたね」
額をぺちんと叩いて苦笑する倖。
「ではお返しと言ってはなんですが、お箸の持ち方を教えて差し上げましょう。いつでも美味しく便利に使えますよ」
倖が百に箸の使い方を教え始めた。
「へえ、案外簡単にできるんだな。ところでそのつゆなんだ? いいにおい」
「カレーめんつゆです。そちらも美味しそうですね……どうでしょう、交換しては」
「いいな!」
こうして、突発的におこった屋上飛ばしそうめん大会は楽しく平和に進み、最後はみんなでお片付けをして幕を閉じた。
もうそうめんが空を飛ぶことは、なくなったという。
デーレッデーデーレッデー(例のBGM)
オレは天才軍師『侵掠如火』坂上 懐良(CL2000523)。九人枠に五人しかいない依頼を見つけて出発直前に飛び込んだらそこは空飛ぶそうめんを食う依頼だった。
そこでオレは考えた。
「そうめんを食うならば、キモはめんつゆだろう」
だがオレはすぐに壁にぶつかることになった。
そう、そうめんに合うツユとは何かという命題だ。
今まで視聴者諸兄はそうめんを食うときそばつゆやうどんつゆを使っていい加減に食っていたはずだ。
だが、本当にそれでいいのか?
蕎麦には蕎麦、うどんにはうどんのつゆがあるように。
「そうめんにはそうめんのツユがあるはずだ!」
オレは走った。
西にそうめん屋があると聞けば食べに行き、東にながしそうめんがあると聞けばやりに行き、正味映像にして5分間に及ぶオレダッシュシーンを挟んだ所で、オレはついに発見したのだ。
「なにしてんのアンタ」
『燃焼系ギャル』国生 かりん(CL2001391)は腕を組んで見下ろしていた。
膝を突いてぜーぜー言ってる懐良。
息も絶え絶えにポカリボトルを取り出した。
「さ、さがしに……」
「なにを」
ボトルの中身をあえて頭から浴びてさわやかに首を振る懐良。
「愛を」
「目的変わってんじゃねーか!」
バケツをひっくりかえすかりん。
「ってゆーかよくあんな時間で書けたなそのプレ! アタシプレの大半を愚痴と暴言で埋めるので精一杯だよ!」
「それはそれでどうかと思う。埋めりゃあいいってもんじゃないぞ」
「しるかー!」
再びバケツをひっくりかえすかりん。
「大体なんで開始300文字をかっさってんの。最終的に手に持ってんのポカリだし」
「そうめんのつゆは蕎麦やうどんと同じものが最適だということに」
「知ってる!」
ばけつをひっくりかえすかりん。
「ちょ、やめて。用意したお水こぼすのやめて」
つぎたすたびにバケツがひっくりかえっていくので、『スポーティ探偵』華神 悠乃(CL2000231)が慌ててバケツをガードした。
屋上設備は雨が降っても普通に端の溝から流れていくのでこぼれること自体は問題ないが、後々なんやかんやで使おうとしていたバケツをかえされちゃあたまらん悠乃である。
そんな悠乃のところへお盆もってやってくる老夫婦。
悠乃は立ち上がって頭を下げた。
「このたびは場所をお貸し頂いてどうも」
いえいいんですよみたいなテンションで手を振る老夫婦。
ビニール袋持ってきた鯨塚 百(CL2000332)と『中学生』菊坂 結鹿(CL2000432)がやってきた。
「あれ、悠乃なにしてんの?」
「うんちょっとね」
かがんで覗き込んでみると、悠乃が脚立を順番に並べて塩化ビニールパイプを通していた。
なんかの配管かな、と思う百は流しそうめんを軽く都市伝説だと思ってる子である。
そうめんを流してまで食べようって人はそうそういない今時の世の中で、11歳男子がながしそうめんを知らないのはごく普通の流れであった。
たとえるなら携帯ゲーム機における通信ケーブル(最新機種にも実はある)の存在くらいに。
……って言ってて、この日本には割と通信ケーブルが普及してそうだなと思った今日である。
さておき。
「オイラ、流しそうめんってしたことないんだ。それが飛んでたら、ちゃんと取れるかな?」
「わあしも、飛ばしそうめん初めてです」
「そっかあ」
飛ばしそうめんを二回以上経験した人はついぞいないだろうなと悠乃は思ったが、女子中学生の話にはとりあえずうんうんと頷いてあげる大人の悠乃である。
「わー、私はおそうめんが初めてですー」
その横で軽くおかしなことをいう文鳥 つらら(nCL2000051)。
ひやむぎとそうめんの違いもよくわかんなくなってきた昨今なので、比較的安価なひやむぎに流れがちなご家庭も少なくなかろう。
「しかし、そうめんの妖怪とは……」
なんやかんやの準備を終えてやってきた『覚悟の事務員』田中 倖(CL2001407)が、空を見上げて眼鏡を指で押し上げた。
「にわかには信じがたいですが、お鍋や卵の古妖も確認されているそうですし……いや、だとしてもにわかには信じがたいですね」
用意したお椀とつゆのボトルをそれぞれ台に置くと、倖はビシッと配置についた。
「では早速、飛ばしそうめんと参りましょう」
●スポーティ探偵物語
「私にいい考えがある」
なんか不安になる台詞と共に悠乃が取り出したるは二つのバケツ(新品)。
片方を塩ビ滑り台の下側に置き、もう一方を上側から流して見せた時に、百が拳を握って身を乗り出した。
「そうか! そうめんが流しそうめん不足に怒ってるなら……!」
「流しそうめんにすればいい」
悠乃はニヤリと笑って滑り台に水を流し始めた。
吸い込まれるようにひょいひょいレールに飛び込んでいく流しそうめん。
その一番上ン所で全部かさらっていくかりん。
「……」
ひたすら飲むようにそうめん食っていくかりんの台詞をあえての準コピペでお届けしようと思う。
「……流しソーメンってのはねェ、社会の縮図なのだよ。ソーメンは金、竹ン中の水は経済の流れ、でもって食うヤツは上に行くほどエライ人でね。最近じゃちっとは景気良くなったーなんて言ってるケドもさー。実際そんな実感無いでしょ? 特にそこの設定上はホームレスやってる芸風のヤツとか。ソーメンと社会は一緒なのさ! ちっとばかり流れてくる金が増えたところで。こーして上の方にいえるエラーイ人達が竹筒に箸突き立ててソーメン全部掻っ攫っちまうんだよ! テメーら貧乏人のコトなんざ知ったことか! 自分が一番カワイイんだよ! ヒャーッハッハッハッハ! 無力な底辺は無様に飢え死ね!!」
「悪いやつだなー」
ゆうても口に直で流し込めるわけでもないのでガンガンに取りこぼしていくわけで、それを百は丁寧にとっていた。
老夫婦にふりかえる百。
「この異変はオイラたちが解決するから、心配しなくていいぜ! あ、ショウガもらっていかな」
そうめんすくって、めんつゆにつけて、すする。
日本人がひたっすらやってきたこの動作を、百はひたすら繰り返していた。
今日は折角人数も少ないからもうちょっと語るが、そうめんっていう食べ物が夏場にひたすら普及する大きな理由はその『すすりやすさ』にある。
体力が落ちて食欲もあんまりないって時に割とするする食べられるのだ。
味付けも(商品によるが)、食塩と水と小麦粉を練って作るという工程上非常に味が素朴でちょっぴり食欲もそそるという具合に出来ている。
そういう意味では『ほそいうどん』であり、懐良の話ではないがうどんつゆがよくあうように出来ている。
強いて言うならかみ切りやすく総合的な表面積が多いことから、味は薄めで甘みやや強めくらいが理想だ。もしいちから作っているなら醤油を減らしてみりんを増やすくらいが丁度いいだろうか。
さておき、百はさっそく人生初の流しそうめんをエンジョイしていた。
おいおい悠乃のクールなアイデアによってこの依頼はただのエンドレス流しそうめんになっちまうのかいなっちまわないのかいどっちなんだい――ならない!
「皆さん大変です、見てください!」
流しそうめんは基本、上から流して下で受け取り、受けきれなかったらまた流すという作りになっている。
なので下にはざるが設置されているのだが、ざるを回収しようとした倖の手から、そうめんが空の彼方へと飛び立っていったでは無いか。そう、まるで次なる流しそうめんの地を求めるかの如く。っていうかその先にあるのは田中さんちだけども。
「くっ、狩り狂ったながしそうめんの主よ……ひとたび流されたとて、その怒りは沈まれぬか……!」
倖が急にキャラじゃねえことを言って膝をついた。
金ローでもものけのひめでも見たんだろうか。
「うろたえるなぁ!」
懐良がお箸を翳した。
「通過ルートが狭まったと考えろ。たとえザルから拡散したとしても、勝利は揺るがない」
「勝利とは……」
「フッ、知れたこと。食における勝利とはすなわち満足と満腹。あくまでお箸ですくい取ってこその流しそうめんなれば……至るべき道はひとつしかあるまい!」
懐良は腕をクロスすると、両手にお箸をそれぞれ持った。
眼鏡そのものを発光させる倖。
「そ、それは……! 古来より伝わる禁断の奥義、宮本武蔵持ち……!」
「否……坂上懐良持ちと呼べ! ひかえおろう!」
「ハハァーッ!」
ひれふる倖。
胸を張って高笑いする懐良。
その光景を眺め、何だろうこの人たちって顔をする結鹿。
「途中から時代劇みたいなしゃべり方になってるのは、なんで……」
「真田丸みたんじゃねーかな」
「でも、お箸を両手に持ったら、めんつゆにつけられないですよね」
ぽつりと呟いた結鹿の言葉に、倖の眼鏡が粉砕した。
「な、なんと!?」
「えいっ、えいっ」
それを無視して屋上の前ギリギリの所で翼パタパタさせながらそうめん取ろうと必死になるつらら。
かりんが誰もアタシの前を走らせねえみたいなテンションで襟を引っ張っていた。
「こらホームレス芸人! 飛ぶの反則だろォーッ!」
「反則じゃないですー! あっあっ、でもとれない! おはしちゃんともてないっ!」
「箸の持ち方へったくそじゃんアンタ!」
「……」
あっちはあっちで賑やかだなあという目で見る結鹿。
女子中学生のわりにやけに達観したまなざしである。
あとあのぶんだとつららに全部そうめん持ってかれる心配ないな、とも思った。
「でもちょっと可哀想ですね。つららさん、あれだと食べられないんじゃ……」
「うろたえるなぁ!」
両腕を頭上高く掲げ、手首部分でクロスさせてお箸を上向きに開くというもうなにがなんだか分からないポーズで懐良が唱えた。
塩ビレーンからひょいひょいそうめんをつまみ上げながら振り返る悠乃と結鹿。
「えっなにそのポーズ」
「気に入ったのかな」
「聞けい!」
懐良は一旦つららに『ほーらこっちおいでー、美味しいご飯をあげるよー』と言って手招きした。
わーいごはーんとか言いながらぱたぱた飛んでいくつらら。
「二刀流(坂上懐良持ち)故にめんつゆにつけることのできない俺。お箸の持ち方へったくそが故そうめんをつかみ取れないつらら。この二つが導き出す最適解とは……これだァ!」
ワン。
ツー。
スリー。
のリズムでめんつゆのお椀を持ったつららを前に立たせ、懐良は千手観音かなってくらいの動きで飛散するそうめんを両手の箸で次々にキャッチ。
流れるようにめんつゆに一旦ひたすと、そのまま『あーん』したつららの口にぽんぽん放り込んでいった。
「これはぁ……!?」
倖の眼鏡が逆再生で修復された。あとクリアになった。
「余すこと無くキャッチされたそうめんを余すこと無くつららさんが食べることで、そうめん妖怪も満足、つららさんも満腹、懐良さんも点数が稼げて満足、ついでに田中氏の部屋もそうめんまみれにならないという最適解! 坂上懐良さん、やはり天才か……!」
「フハハハハハ!」
テンションマックスで千手観音しまくる懐良。
それを見ていた百がふとつぶやいた。
「でもあれ、懐良は食べれてないんじゃねえ?」
「いいんだよ。本人は楽しんでるから」
平和にそうめんすくう悠乃。
「流しそうめんっていうのはさ、美味しいだけじゃなくて、楽しく食べることに意味があるんだよ、たぶん。ほら見なよ」
振り返ると、子供たちが楽しそうにしているさまを見て老夫婦も微笑ましくそうめんをすすっていた。
すっくと立ち上がる悠乃。
「さてと、そろそろ味を変えていこうかな。いんげん作ってきたけど、食べる?」
「いんげんって作れるもんなのか?」
「土から作ったわけじゃないけどね。育てたの」
刻んだインゲン豆に大葉や海苔といった薬味をくわえた専用のつゆを作っていく悠乃。
ほえーと見ていた百も、はたと気づいてビニール袋からツナ缶を取り出した。
「そうめんってするっとしてるだろ? だからこういうのが意外と合うんだよなー」
ツナの肉はそうめんに不足しがちなタンパク質を補ってくれるだけで無く、出た油によってめんのなめらかさを強化してくれる。
こればっかりだと飽きてしまうし一度いれると変えようが無いが、手軽さも含めて終盤のメニューとしてはかなりお勧めできるのだ。
「なんだか、心配すること無かったかもしれませんね」
結鹿はほっと胸をなで下ろすと、悠乃のつゆを分けて貰ってそうめんすくいを再開した。
「しっかし喉渇いて来ちゃうよな。お腹も冷えて来ちゃうし、暖かい飲み物とか……」
「あっ、それなら」
結鹿がポットからホットの麦茶を注ぎ始めた。
夏ばてには麦茶が最適と言われるが、ホットにすることでより身体になじみやすく冷えすぎを予防できるのだ。
カフェインも(直接成分分析したわけではないが)ほぼ無いのでがぶ飲みしても健康に害は無い。
「おっ、さんきゅ! けどこんな風に食べてマナーとか悪くならねーかな。そうめん妖怪、おこらねえ?」
「食べ方は文化によってそれぞれですから。けれど人や食に感謝しつつ、残さず食べるのが本当のマナーなんですよ。きっとそうめんさんも喜ぶでしょう」
「これはまた、子供たちに教えられてしまいましたね」
額をぺちんと叩いて苦笑する倖。
「ではお返しと言ってはなんですが、お箸の持ち方を教えて差し上げましょう。いつでも美味しく便利に使えますよ」
倖が百に箸の使い方を教え始めた。
「へえ、案外簡単にできるんだな。ところでそのつゆなんだ? いいにおい」
「カレーめんつゆです。そちらも美味しそうですね……どうでしょう、交換しては」
「いいな!」
こうして、突発的におこった屋上飛ばしそうめん大会は楽しく平和に進み、最後はみんなでお片付けをして幕を閉じた。
もうそうめんが空を飛ぶことは、なくなったという。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
