泳げるようになれるかのう……?
●けいからの頼み
京都府内のとある屋内プール施設。
そこは以前、妖が現れたことがあり、『F.i.V.E.』の覚者達も訪れたことのあるプールだ。
その際は、巻き込まれてこのプールにやってきた『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)だったが、今回、彼は覚者達へとお願いがあると覚者達に神妙な顔をして頭を下げてきた。
「実は皆に頼みがあるのじゃ」
また、妖の討伐依頼かと覚者は構えている。その場には、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)の姿もあったが、彼女はなぜかあらあらと笑ってしまっていたようだ。
というのは、今回の頼みは妖討伐ではない。
「うち、ここに来てから、夢見の力だけに頼っている気がしていての」
けいも色々と悩みを抱えているようで。
自身の持つ力が、隔者達からも狙われる強力な力であることは、彼も重々承知している。
夢見の力はさておき。『F.i.V.E.』に来るまで、ほとんど教育らしい教育を受けず、子供らしく駆け回ることもしてこなかったけい。勉強は『F.i.V.E.』に来てから、遅れを取り戻すようにやってはいるが、如何せん、体育だけは彼の苦手科目である。
「このままでは、何かあったとき、自分の身すらも守れないのじゃ……」
だからといって、何かしたいスポーツがあるのかと言われると、正直困ってしまうのがけいの現状である。
まずは、基礎体力をつけたいとけいは考え、ちょっとしたランニングを始めていたようで。……ほぼ、散歩同然ではあるが。
「それで、水泳も合わせてどうでしょうと提案したのですよ」
口を出す静音はけいの願いを聞いて、看護役として参加しにきていたのだ。何かあったら、彼女がストップをかけることになっている。
「皆には、泳ぎ方を教えてほしいのじゃ……」
とは言うものの、けい本人は浮かない顔。気が進まないと顔に書いてある。
それもそのはず。前回プールに来た際は、子供用プールですらもびくびくしながら、目を思いっきり瞑って石拾いしていたのだ。
そんな水に苦手意識を持つ彼だから、泳ぐことを教えるにしても、本当に初歩の初歩、水に触れることから始めることとなるだろう。
また、体力を見つつ彼を休ませることとなる。その間は、目いっぱい遊んでもいいだろう。
「そんなわけですので、今日はよろしくお願いいたします」
「よ、よろしゅう……な」
静音に促されて改めて頭を下げるけいだが、彼はずっと、不安そうな表情を浮かべていたのだった。
京都府内のとある屋内プール施設。
そこは以前、妖が現れたことがあり、『F.i.V.E.』の覚者達も訪れたことのあるプールだ。
その際は、巻き込まれてこのプールにやってきた『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)だったが、今回、彼は覚者達へとお願いがあると覚者達に神妙な顔をして頭を下げてきた。
「実は皆に頼みがあるのじゃ」
また、妖の討伐依頼かと覚者は構えている。その場には、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)の姿もあったが、彼女はなぜかあらあらと笑ってしまっていたようだ。
というのは、今回の頼みは妖討伐ではない。
「うち、ここに来てから、夢見の力だけに頼っている気がしていての」
けいも色々と悩みを抱えているようで。
自身の持つ力が、隔者達からも狙われる強力な力であることは、彼も重々承知している。
夢見の力はさておき。『F.i.V.E.』に来るまで、ほとんど教育らしい教育を受けず、子供らしく駆け回ることもしてこなかったけい。勉強は『F.i.V.E.』に来てから、遅れを取り戻すようにやってはいるが、如何せん、体育だけは彼の苦手科目である。
「このままでは、何かあったとき、自分の身すらも守れないのじゃ……」
だからといって、何かしたいスポーツがあるのかと言われると、正直困ってしまうのがけいの現状である。
まずは、基礎体力をつけたいとけいは考え、ちょっとしたランニングを始めていたようで。……ほぼ、散歩同然ではあるが。
「それで、水泳も合わせてどうでしょうと提案したのですよ」
口を出す静音はけいの願いを聞いて、看護役として参加しにきていたのだ。何かあったら、彼女がストップをかけることになっている。
「皆には、泳ぎ方を教えてほしいのじゃ……」
とは言うものの、けい本人は浮かない顔。気が進まないと顔に書いてある。
それもそのはず。前回プールに来た際は、子供用プールですらもびくびくしながら、目を思いっきり瞑って石拾いしていたのだ。
そんな水に苦手意識を持つ彼だから、泳ぐことを教えるにしても、本当に初歩の初歩、水に触れることから始めることとなるだろう。
また、体力を見つつ彼を休ませることとなる。その間は、目いっぱい遊んでもいいだろう。
「そんなわけですので、今日はよろしくお願いいたします」
「よ、よろしゅう……な」
静音に促されて改めて頭を下げるけいだが、彼はずっと、不安そうな表情を浮かべていたのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.けいに水泳指導をする。
2.プールを思いっきり楽しむ。
3.なし
2.プールを思いっきり楽しむ。
3.なし
けいに水泳指導をお願いします。
●参加方法
前半は水泳指導。後半は思いっきり遊びましょう。
無理をさせない程度に、けいに指導を願います。
あまり無茶なことをさせると、けいが水泳を嫌になる可能性があるので、
程々にさせてあげてレベルアップできればと思います。
●場所
とある温水プール。複合施設のうちの1つです。
25メートル、8レーンあるプールと子供用プール、
流れるプールが設置されております。
●NPC
以下、2名が参加します。
・菜花・けい(nCL2000118)
紺のスクール水着着用の上、泳ぐのにチャレンジです。
覚者の皆様の指導の元、ちょっとでも泳げるように慣れればと思っています。
ただ、身体能力は小学生の平均以下なので、
その辺りを配慮の上で指導願います。
基本、指導時以外はプールサイドで休むことになります。
着せたい水着がありましたら、どうぞ。お色直しをして着てくれます。
・河澄・静音(nCL2000059)
参戦します。彼女なりにけいを気遣っているようです。
静音は普通に泳ぐことはできます。
けいが危ないと思ったら、
彼女が止めに入ってきますので、予めご了承ください。
けいがプールサイドにいれば、遊ぶ際に誘うことが出来ます。
それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/8
4/8
公開日
2016年08月16日
2016年08月16日
■メイン参加者 4人■

●楽しみ半分不安半分
京都府内のプール施設。
『泳げるようになりたい』。そんな『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)の依頼を受け、忙しい中、4人の覚者が集まる。
ライム色のチューブトップビキニに身を包む茨田・凜(CL2000438)は、大きく背伸びをする。
「久しぶりに、なっちゃんとプールで遊べるんよ♪」
以前、妖討伐の際、凜はこのプールにやってきており、その時もけいがいた。当時は冬で温水プールだったから、半年も経ったと実感させる。時が経つのは早いものだ。
「こちらのバスケットですか? こちらは皆さんの分のお弁当です。よければ、後で食べてくださいね」
スクール水着姿の『中学生』菊坂 結鹿(CL2000432)は、バスケットを用意していた。その中には、手軽に食べられるお昼ごはんを詰めてきている。
「はい、ありがとうございます」
にこやかに笑う、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)。
その隣には、スクール水着姿のけいがいた。この場で唯一の男性であるのだが、どう見ても男の子に見えないのが不思議である。
「今回は静音さんともご一緒できるし、凛は超楽しみなんよ」
その2人に近づく凜。彼女が手にしていたのは、ブリキのミニ金魚。それに気づいたけいは、凜と半年前の思い出を語り合っていたようだ。
「うふふ、こんな役得な依頼があって良いのかしら。これはじっくりと堪能しなくてはね」
赤のビキニを着て、グラマラスな体を見せ付けるのは、『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)だ。ちょっと刺激の強い衣装にけいは思わず頬を赤らめ、目を背けていたようである。
それでも、エメレンツィアは恥ずかしがるけいを含め、参加メンバーの水着姿をまじまじと見つめる。
(うふふ……。みんなの水着も合わせて、ホントに眼福だわ♪)
しかし、そんなまったりモードな中、露出低めの競泳用水着を纏った『スポーティ探偵』華神 悠乃(CL2000231)が登場する。
総合格闘の競技選手にして、スポーツクラブオーナーという悠乃。まさに、今回の依頼にはうってつけのプロの登場だ。
「よろしい、ならば特訓だ!」
とはいえ、悠乃の言う特訓はビシバシと無闇に厳しくすることでなく、あくまでも特別な訓練のことだ。
しかしながら、それに恐怖を覚えていたのか、震え出すけい。果たして彼はどこまで泳げるようになるだろうか。
●水に慣れるのじゃ
さて、ほとんど水に入ったことすらないけいを、覚者達は子供用プールへと連れて行く。
「いきなり泳ぐのは難しいですから、まずは 水に慣れるといいと思います」
「そうだね、水への恐怖心を制御可能になるだけで、やれることの幅を一気に増やせるからね」
結鹿が出した提案するのに、皆頷く。悠乃がその理由を語り、子供用プールに入るようけいに促す。
「う、うむ……」
恐る恐る足を踏み出すけいと一緒に、結鹿がプールへと入る。
「泳げなきゃ死ぬというわけではないですけど……」
この先、好きな人と2人でプールや海に遊びに来た時、相手が溺れたとしても助けてあげられない。
「できないよりは、できたほうがいいのではないかと思いますよ」
結鹿はけいが溺れないようにと手を繋ぎ、彼を支えようと立ち回る。
「無理強いはしないわ。安全に行きましょう」
メンバー達はとりあえず、プールの壁際に沿って水の中を歩くようけいに指示した。それに頷く彼は、一歩、また一歩と歩き始める。
(水中ウォーキングもエクササイズになるくらいだしね)
エメレンツィアも水の中に入ってけいのそばにつき、いざというときに支えられるようにと備えていた。体力もそうだが、けいは筋力も並みの小学生以下ときている。転ぶ危険も大きく、何かあったらすぐに抱き起こそうとエメレンツィアは考えていた。
実際、けいの足取りは頼りない。それでも、彼はなんとか歩こうと頑張っていたようだ。
「なっちゃん、ガンバなんよ」
縁伝いに歩くけいを、凜はプールサイドから応援を行う。
同じく、応援組の静音。何かあったら、彼女が宙を飛んでけいを助けにいく手はずとなっている。とはいえ、現状であれば、問題はなさそうだ。
「菜花さん、頑張ってくださいね」
静音も凜に合わせて声援を送っていた。それに、応えるけいはなんとか頑張ろうと歩く。
「ゆっくりでいいからね」
悠乃は焦らせることもなく、ゆっくり、ゆっくりと歩かせる。
そばに付く結鹿、そして、凜も水の中へと入り、応援を続けていた。
端から端、角に付けばまた端を目指す。そうして、プールを1周して歩く。
さらに、縁のないプールの中央をゆっくりと歩ききった彼に、凜は拍手を送って思いっきり抱きつく。
(何かちょっと、保護者とかお姉ちゃんとかみたいな感じになれて、嬉しいんよ)
弟のようなその姿に、凜はお姉さんらしく振る舞い、彼の頭を優しく撫でるのだった。
●遊びましょ!(うちは休憩なのじゃ)
けいの体力を慮り、覚者達は一旦休憩にする。
「どうぞ、召し上がってくださいね」
メンバー達は結鹿が作ってきた弁当を口にする。栄養補給だって、とても大切なことだ。
食事を済ませたメンバー数人は、プールに入って遊び始める。
「シズネは泳げるのよね?」
「はい、人並みには」
一緒に大人用プールに入ったエメレンツィアが静音に尋ねる。肯定の言葉が帰ってくると、エメレンツィアは遠慮なく彼女の顔めがけて水鉄砲を飛ばしてみせた。
「きゃっ」
「うふふ、油断大敵よ? ほら、シズネも泳ぎましょう」
「うちも混ぜてほしいんよ」
それに、凜も加わり、ワイワイと楽しいひと時を過ごす。
悠乃はその間、体力がなくなって横になっていたけいを気遣う。休んでいる間、彼の休憩の妨げにならない程度に、悠乃は色々とけいの状態について聞いていた。
まずは、今やっている運動の状態。散歩などで歩くところからスタートしている状態で、体力づくりというには程遠い状態のようだ。
次に、食べ物の好き嫌い。これは体力づくりの中で重要になることもある。けいは肉料理はやや敬遠気味な上で小食だが、食べないというレベルで嫌いなものはないようだ。なお、好きなものはケーキらしい。
さらに、運動以外にやってみたいことはないかと、悠乃が尋ねると。
「うち、今は色々やってみたいのじゃ」
彼には『F.i.V.E.』に来るまで虐げられ、拘束されていた過去がある。仲間に守られ、彼にも色々と興味が生まれた。夢中になるものを、今は模索中とのことである。
「何かができるようになると、それは他の何かに繋がるの。だから、積み上げは凄く大切」
きょとんとして、けいは悠乃の主張に耳を傾ける。焦っても取りこぼしてしまうと、取り戻すのは大変ではある。ただ、小さなものでも、ゆっくり丁寧に磨き上げていくのは、意外と楽しいものなのだ、と。
「楽しめば楽しむほど、世界は繋がって、輝くんだよ」
「そうかのう……」
自身の可能性に疑問を抱くけい。
そんな彼を含め、教え子が笑顔で伸びてくれるのならば、これほど嬉しいことはないと悠乃は考えていた。
そこで、凜がけいに近づき、浮き輪を渡す。
「一緒に遊ぶんよ」
彼女は休憩中でも、プールで浮かんで一緒に遊べると考えたのだ。
ただ、けいは礼を言いつつも、ゆっくりと立ち上がって。
「嬉しいけど、うちはもう少しだけ頑張るのじゃ」
けいは立ち上がり、次のステップに挑みたいと覚者達へと主張する。
その姿に微笑むエメレンツィア。
(「もう、ホント可愛いわ。……連れて帰りたいくらい」)
惜しむらくは、けいに他の水着の用意がなかったこと。彼のお色直しがないことを、彼女は残念がっていたようだ。
その愛らしさにギュッと抱きしめたくなるのを我慢しつつも、エメレンツィアはさらに続く練習に付き合うのである。
●もうちょっとだけ練習なのじゃ
再び、子供用プールに戻った面々。
「水に浮くことができるようになれば、泳ぐこともできると思うので、まず目標は浮くことができるようになるってどうでしょう?」
結鹿がそんな提案をするが、まだまだけいは水に慣れたとは言いがたい状況。結鹿の主張するラインは、目標といったレベルでも若干高いかもしれない。
「うーん、現状だと、ヘルパー付きで普通のプールに入るところまでかなー」
悠乃がそう意見を出す。慣れないことをするのには、体力的な負担もそうだが、精神的なものに起因するところが大きい。今は少しずつ進んでいく他なさそうだ。
「歩くのに慣れたら、今度は顔をつける練習かしら」
エメレンツィアがそんな提案をする。以前プールに来たときも、けいは思いっきり目を瞑っていた。
「顔をつけるのが苦手な人は、ちゃんと苦手な理由があるものよ。目に水が入るのが嫌だったりとか、耳や鼻だったり、ね」
こくりと頷くけい。それでも、恐怖が上回るのか、恐る恐る顔を水につけていく。さすがに、目を開けるのには抵抗があるようだ。
それでも、ちょっとずつ、けいを水に慣らしていく覚者達。できるならもう1ステップと考えたが、けいはそれだけでぐったりとしてしまう。
「ここまで……かな」
そこで、悠乃がストップをかけたことで、プールサイドで見ていた静音もホッと安堵の息を漏らしていたようだ。
「理想はね、楽しく遊んでいて、気づいたらできるようになっていた、くらいの感じ」
指導者はその消耗に気づいてあげなければならないと、悠乃は考える。
さすがに、元々体力がないけいは疲労困憊。今日はこの辺りでお開きとなりそうだ。
それでも、凜も、エメレンツィアも、結鹿も、そして、悠乃も。少年の成長に目を細めていた。
「帰る前に、記念写真とか撮るんよ」
その前にと、凜がカメラを所持して笑う。メンバー達は代わる代わる、写真を撮ってゆく。
「また遊びましょうね」
けいの水着を堪能し、彼と触れ合うことができたことに満足していたエメレンツィアがけいの頭を撫でる。
「ありがと、なのじゃ……」
ちょっとだけ休憩してから、彼は自力で帰りたいと主張する。だが、結局は帰りがけにおんぶした静音の背で寝てしまったようだった。
京都府内のプール施設。
『泳げるようになりたい』。そんな『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)の依頼を受け、忙しい中、4人の覚者が集まる。
ライム色のチューブトップビキニに身を包む茨田・凜(CL2000438)は、大きく背伸びをする。
「久しぶりに、なっちゃんとプールで遊べるんよ♪」
以前、妖討伐の際、凜はこのプールにやってきており、その時もけいがいた。当時は冬で温水プールだったから、半年も経ったと実感させる。時が経つのは早いものだ。
「こちらのバスケットですか? こちらは皆さんの分のお弁当です。よければ、後で食べてくださいね」
スクール水着姿の『中学生』菊坂 結鹿(CL2000432)は、バスケットを用意していた。その中には、手軽に食べられるお昼ごはんを詰めてきている。
「はい、ありがとうございます」
にこやかに笑う、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)。
その隣には、スクール水着姿のけいがいた。この場で唯一の男性であるのだが、どう見ても男の子に見えないのが不思議である。
「今回は静音さんともご一緒できるし、凛は超楽しみなんよ」
その2人に近づく凜。彼女が手にしていたのは、ブリキのミニ金魚。それに気づいたけいは、凜と半年前の思い出を語り合っていたようだ。
「うふふ、こんな役得な依頼があって良いのかしら。これはじっくりと堪能しなくてはね」
赤のビキニを着て、グラマラスな体を見せ付けるのは、『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)だ。ちょっと刺激の強い衣装にけいは思わず頬を赤らめ、目を背けていたようである。
それでも、エメレンツィアは恥ずかしがるけいを含め、参加メンバーの水着姿をまじまじと見つめる。
(うふふ……。みんなの水着も合わせて、ホントに眼福だわ♪)
しかし、そんなまったりモードな中、露出低めの競泳用水着を纏った『スポーティ探偵』華神 悠乃(CL2000231)が登場する。
総合格闘の競技選手にして、スポーツクラブオーナーという悠乃。まさに、今回の依頼にはうってつけのプロの登場だ。
「よろしい、ならば特訓だ!」
とはいえ、悠乃の言う特訓はビシバシと無闇に厳しくすることでなく、あくまでも特別な訓練のことだ。
しかしながら、それに恐怖を覚えていたのか、震え出すけい。果たして彼はどこまで泳げるようになるだろうか。
●水に慣れるのじゃ
さて、ほとんど水に入ったことすらないけいを、覚者達は子供用プールへと連れて行く。
「いきなり泳ぐのは難しいですから、まずは 水に慣れるといいと思います」
「そうだね、水への恐怖心を制御可能になるだけで、やれることの幅を一気に増やせるからね」
結鹿が出した提案するのに、皆頷く。悠乃がその理由を語り、子供用プールに入るようけいに促す。
「う、うむ……」
恐る恐る足を踏み出すけいと一緒に、結鹿がプールへと入る。
「泳げなきゃ死ぬというわけではないですけど……」
この先、好きな人と2人でプールや海に遊びに来た時、相手が溺れたとしても助けてあげられない。
「できないよりは、できたほうがいいのではないかと思いますよ」
結鹿はけいが溺れないようにと手を繋ぎ、彼を支えようと立ち回る。
「無理強いはしないわ。安全に行きましょう」
メンバー達はとりあえず、プールの壁際に沿って水の中を歩くようけいに指示した。それに頷く彼は、一歩、また一歩と歩き始める。
(水中ウォーキングもエクササイズになるくらいだしね)
エメレンツィアも水の中に入ってけいのそばにつき、いざというときに支えられるようにと備えていた。体力もそうだが、けいは筋力も並みの小学生以下ときている。転ぶ危険も大きく、何かあったらすぐに抱き起こそうとエメレンツィアは考えていた。
実際、けいの足取りは頼りない。それでも、彼はなんとか歩こうと頑張っていたようだ。
「なっちゃん、ガンバなんよ」
縁伝いに歩くけいを、凜はプールサイドから応援を行う。
同じく、応援組の静音。何かあったら、彼女が宙を飛んでけいを助けにいく手はずとなっている。とはいえ、現状であれば、問題はなさそうだ。
「菜花さん、頑張ってくださいね」
静音も凜に合わせて声援を送っていた。それに、応えるけいはなんとか頑張ろうと歩く。
「ゆっくりでいいからね」
悠乃は焦らせることもなく、ゆっくり、ゆっくりと歩かせる。
そばに付く結鹿、そして、凜も水の中へと入り、応援を続けていた。
端から端、角に付けばまた端を目指す。そうして、プールを1周して歩く。
さらに、縁のないプールの中央をゆっくりと歩ききった彼に、凜は拍手を送って思いっきり抱きつく。
(何かちょっと、保護者とかお姉ちゃんとかみたいな感じになれて、嬉しいんよ)
弟のようなその姿に、凜はお姉さんらしく振る舞い、彼の頭を優しく撫でるのだった。
●遊びましょ!(うちは休憩なのじゃ)
けいの体力を慮り、覚者達は一旦休憩にする。
「どうぞ、召し上がってくださいね」
メンバー達は結鹿が作ってきた弁当を口にする。栄養補給だって、とても大切なことだ。
食事を済ませたメンバー数人は、プールに入って遊び始める。
「シズネは泳げるのよね?」
「はい、人並みには」
一緒に大人用プールに入ったエメレンツィアが静音に尋ねる。肯定の言葉が帰ってくると、エメレンツィアは遠慮なく彼女の顔めがけて水鉄砲を飛ばしてみせた。
「きゃっ」
「うふふ、油断大敵よ? ほら、シズネも泳ぎましょう」
「うちも混ぜてほしいんよ」
それに、凜も加わり、ワイワイと楽しいひと時を過ごす。
悠乃はその間、体力がなくなって横になっていたけいを気遣う。休んでいる間、彼の休憩の妨げにならない程度に、悠乃は色々とけいの状態について聞いていた。
まずは、今やっている運動の状態。散歩などで歩くところからスタートしている状態で、体力づくりというには程遠い状態のようだ。
次に、食べ物の好き嫌い。これは体力づくりの中で重要になることもある。けいは肉料理はやや敬遠気味な上で小食だが、食べないというレベルで嫌いなものはないようだ。なお、好きなものはケーキらしい。
さらに、運動以外にやってみたいことはないかと、悠乃が尋ねると。
「うち、今は色々やってみたいのじゃ」
彼には『F.i.V.E.』に来るまで虐げられ、拘束されていた過去がある。仲間に守られ、彼にも色々と興味が生まれた。夢中になるものを、今は模索中とのことである。
「何かができるようになると、それは他の何かに繋がるの。だから、積み上げは凄く大切」
きょとんとして、けいは悠乃の主張に耳を傾ける。焦っても取りこぼしてしまうと、取り戻すのは大変ではある。ただ、小さなものでも、ゆっくり丁寧に磨き上げていくのは、意外と楽しいものなのだ、と。
「楽しめば楽しむほど、世界は繋がって、輝くんだよ」
「そうかのう……」
自身の可能性に疑問を抱くけい。
そんな彼を含め、教え子が笑顔で伸びてくれるのならば、これほど嬉しいことはないと悠乃は考えていた。
そこで、凜がけいに近づき、浮き輪を渡す。
「一緒に遊ぶんよ」
彼女は休憩中でも、プールで浮かんで一緒に遊べると考えたのだ。
ただ、けいは礼を言いつつも、ゆっくりと立ち上がって。
「嬉しいけど、うちはもう少しだけ頑張るのじゃ」
けいは立ち上がり、次のステップに挑みたいと覚者達へと主張する。
その姿に微笑むエメレンツィア。
(「もう、ホント可愛いわ。……連れて帰りたいくらい」)
惜しむらくは、けいに他の水着の用意がなかったこと。彼のお色直しがないことを、彼女は残念がっていたようだ。
その愛らしさにギュッと抱きしめたくなるのを我慢しつつも、エメレンツィアはさらに続く練習に付き合うのである。
●もうちょっとだけ練習なのじゃ
再び、子供用プールに戻った面々。
「水に浮くことができるようになれば、泳ぐこともできると思うので、まず目標は浮くことができるようになるってどうでしょう?」
結鹿がそんな提案をするが、まだまだけいは水に慣れたとは言いがたい状況。結鹿の主張するラインは、目標といったレベルでも若干高いかもしれない。
「うーん、現状だと、ヘルパー付きで普通のプールに入るところまでかなー」
悠乃がそう意見を出す。慣れないことをするのには、体力的な負担もそうだが、精神的なものに起因するところが大きい。今は少しずつ進んでいく他なさそうだ。
「歩くのに慣れたら、今度は顔をつける練習かしら」
エメレンツィアがそんな提案をする。以前プールに来たときも、けいは思いっきり目を瞑っていた。
「顔をつけるのが苦手な人は、ちゃんと苦手な理由があるものよ。目に水が入るのが嫌だったりとか、耳や鼻だったり、ね」
こくりと頷くけい。それでも、恐怖が上回るのか、恐る恐る顔を水につけていく。さすがに、目を開けるのには抵抗があるようだ。
それでも、ちょっとずつ、けいを水に慣らしていく覚者達。できるならもう1ステップと考えたが、けいはそれだけでぐったりとしてしまう。
「ここまで……かな」
そこで、悠乃がストップをかけたことで、プールサイドで見ていた静音もホッと安堵の息を漏らしていたようだ。
「理想はね、楽しく遊んでいて、気づいたらできるようになっていた、くらいの感じ」
指導者はその消耗に気づいてあげなければならないと、悠乃は考える。
さすがに、元々体力がないけいは疲労困憊。今日はこの辺りでお開きとなりそうだ。
それでも、凜も、エメレンツィアも、結鹿も、そして、悠乃も。少年の成長に目を細めていた。
「帰る前に、記念写真とか撮るんよ」
その前にと、凜がカメラを所持して笑う。メンバー達は代わる代わる、写真を撮ってゆく。
「また遊びましょうね」
けいの水着を堪能し、彼と触れ合うことができたことに満足していたエメレンツィアがけいの頭を撫でる。
「ありがと、なのじゃ……」
ちょっとだけ休憩してから、彼は自力で帰りたいと主張する。だが、結局は帰りがけにおんぶした静音の背で寝てしまったようだった。

■あとがき■
リプレイ、公開です。
けいの体力づくりはまだまだといったところですね。
MVPは
基礎的な練習メニューや、
体力のことを細かく気にかけていただいたあなたへ。
参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!
けいの体力づくりはまだまだといったところですね。
MVPは
基礎的な練習メニューや、
体力のことを細かく気にかけていただいたあなたへ。
参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!
