モフモフひよことトゲトゲひよこ
●ただし全長3メートル
廃墟化したゴルフ場。広大な芝の上に、ヒヨコちゃんが歩いていた。
もふもふ毛皮によちよちあんよの、黄色くまあるいヒヨコちゃんである。
つぶらな瞳をぱちくりしながら、青いお空を眺めていた。
ただし全長3メートル。
その名も、ジャイアントひよこMである。
「ぴーっ!」
廃墟化したゴルフ場。広大な芝生の上に、ヒヨコちゃんが歩いていた。
トゲトゲ毛皮に屈強な脚力。木陰から現われた野生動物を人間を間違えたのか、腹部から全身から槍のように硬質化した毛を発射した。
こんなものを食らったら野生動物などひとたまりも無い。
槍による出血と、そこから回ったであろう神秘性の毒によって三秒と立たずに絶命したのだ。
しかもこのヒヨコ、全長が3メートルもある。
その名も、ジャイアントひよこTである。
「ギーッ!」
●どちらを選ぶかあなた次第
久方 真由美(nCL2000003)は二枚の資料をボードに貼り付けた。
「ある廃ゴルフ場に、二体の妖が出現しました。案件としては一件扱いなのですが、出現ヤードに距離があるので今回はチームを二つに分けて対応してください。同じ動物系妖でランクは1~2ですが、特徴が大きく異なりますし、それぞれ別々に当たるのがよいでしょう」
二つはジャイアントひよこと仮称されているが、細かくMタイプとTタイプに分かれる。
Mタイプは全身を柔らかい毛皮で包んだランク1妖だ。
ひたすらもふもふする毛皮で相手をもふもふし、和みすぎて色々忘れて最終的にはなんやかんやあって死んだりするという妖だ。非覚者相手なら固定ダメージの体当たりやつっつきで通用するが、覚者相手だとどうだろう。
Tタイプは打って変わって、全身槍のような毛皮でできたランク2妖だ。
トゲによる防御もさることながらトゲを飛ばす攻撃は殺傷力が高い。これによって野生動物も即座に殺してしまうというが、覚者相手だとそうはいくまい。
「まずは事前に担当を割り振ってからご相談ください。では、お気をつけて」
廃墟化したゴルフ場。広大な芝の上に、ヒヨコちゃんが歩いていた。
もふもふ毛皮によちよちあんよの、黄色くまあるいヒヨコちゃんである。
つぶらな瞳をぱちくりしながら、青いお空を眺めていた。
ただし全長3メートル。
その名も、ジャイアントひよこMである。
「ぴーっ!」
廃墟化したゴルフ場。広大な芝生の上に、ヒヨコちゃんが歩いていた。
トゲトゲ毛皮に屈強な脚力。木陰から現われた野生動物を人間を間違えたのか、腹部から全身から槍のように硬質化した毛を発射した。
こんなものを食らったら野生動物などひとたまりも無い。
槍による出血と、そこから回ったであろう神秘性の毒によって三秒と立たずに絶命したのだ。
しかもこのヒヨコ、全長が3メートルもある。
その名も、ジャイアントひよこTである。
「ギーッ!」
●どちらを選ぶかあなた次第
久方 真由美(nCL2000003)は二枚の資料をボードに貼り付けた。
「ある廃ゴルフ場に、二体の妖が出現しました。案件としては一件扱いなのですが、出現ヤードに距離があるので今回はチームを二つに分けて対応してください。同じ動物系妖でランクは1~2ですが、特徴が大きく異なりますし、それぞれ別々に当たるのがよいでしょう」
二つはジャイアントひよこと仮称されているが、細かくMタイプとTタイプに分かれる。
Mタイプは全身を柔らかい毛皮で包んだランク1妖だ。
ひたすらもふもふする毛皮で相手をもふもふし、和みすぎて色々忘れて最終的にはなんやかんやあって死んだりするという妖だ。非覚者相手なら固定ダメージの体当たりやつっつきで通用するが、覚者相手だとどうだろう。
Tタイプは打って変わって、全身槍のような毛皮でできたランク2妖だ。
トゲによる防御もさることながらトゲを飛ばす攻撃は殺傷力が高い。これによって野生動物も即座に殺してしまうというが、覚者相手だとそうはいくまい。
「まずは事前に担当を割り振ってからご相談ください。では、お気をつけて」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.両妖の撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
細かいスペックはこんな感じ。
・タイプM(もふもふ)
体力が若干高い。毛皮が柔らかい。目がつぶら。
体当たりやつっつき:固定ダメージ5。文字通り体当たりやつっついて攻撃します。
きゅうけい:主な攻撃方法はこちらです。その場にぺたんと座って眠り始めます。その姿を見た者は撫でたり埋もれたりしたい欲求にかられます。すごくかられます。ですが暖かさゆえにめっちゃ水分を失うので、最低でも30秒に一回は水分補給を必要とします。癒しの霧とかでもOKです。
・タイプT(とげとげ)
攻撃力が高い。毛皮がトゲ。こわい。
常時【カウンター】【反射】の属性がついています。
トゲ発射:遠単バージョンと遠列バージョンあり。
特に上手なヘイト操作が行なえた場合は遠単バージョンを優先します。
また、トゲを受けるさいのプレイング補正で回避と防御にボーナスがつきます。
人数の割り振り比率は偏っても構いません。多分なんとかなります。『こっち行きたい』くらいの気持ちで選んでください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/9
8/9
公開日
2016年08月13日
2016年08月13日
■メイン参加者 8人■

●トゲトゲひよこ よけるぞパート
「ぴぴーっ!」
巨大なヒヨコが高く叫けぶや否や、お腹の毛を逆立ててびしびしと飛ばしてきた。
「やんちゃなヒヨコね。性格がそのまま反映されたのかしら」
姫神 桃(CL2001376)は飛来したトゲをドラップラー効果をおこしながら左右に回避しにかかるが、さすがに広範囲にぶっ放してるだけあって避けきれないトゲも多いようだ。
「私もヒヨッコだけどね――」
眼前一メートルまで迫ったトゲの群れに、桃の時間がスローモーションになる。
袖の間から滑り出したクナイを握り、超高速で危険な軌道をまっさきに薙ぎ払う。
「ヒヨッコなりに、意地があるのよ!」
ギリギリ生まれた隙間に身体をねじ込み、すりぬけるように回避する桃。
回避のついでにクナイを投擲。ヒヨコの足下に刺さったクナイを中心に雑草が激しく生え広がり、ヒヨコの身体に巻き付いていく。
じゃまそうにぶちぶちするヒヨコ。
「今じゃっ!」
『天狗の娘』鞍馬・翔子(CL2001349)が野球ボール大の植物塊を握り、バッと片足を掲げた。
「自信過剰なヒヨコに、自然と人生の厳しさを教えるのも天狗の役目!」
ぴかーっとなんかのエフェクトがほとばしる中、翔子はおもむろに植物塊を投擲した。
シンカー回転をかけてヒヨコへ迫る植物塊ってかボール。
「人里で暴れたらどうなるか、その幼い脳みそに教えてやろう!」
「ピピッ!?」
ちっちゃい腕で薙ぎ払おうとしたヒヨコだが、ボールが目の前で炸裂。
まき散らされたトゲトゲに驚いてひっくりかえった。
「しかし、なんという哀れな姿だ。かわいがられるべきヒヨコがあのような姿では、愛を知らずに育ったに違いない」
「そう考えると、なんだか可哀想に見えてくるわね……」
「ピピッ!」
気を取り直して立ち上がるピヨコ。再び毛皮を逆立て、トゲトゲ発射のポーズをとった。
「避けるのは難しくないけど、できれば的を絞りたいところね」
「オレにいい考えがある」
消防車のおじさんみたいなこと言いながら鹿ノ島・遥(CL2000227)がビニール袋を掲げた。
「それは……」
「Lチキ」
「えっ」
「Lチキ」
袋からフライドチキンを取り出し、ついでにゆで卵も取り出す。
それを両手に持ち、左右交互に食いしん坊食いしはじめる遥。
「うっめー! ニワトリのお肉と卵ちょーうめー!」
半眼になる桃と翔子。
「そんなミエミエの挑発にひっかかるわけ……」
「ピピーッ!」
ヒヨコが遥めがけてトゲトゲ集中放火。
「効いとる!」
「ぎゃああああああああああ!」
穴だらけになってふわふわ飛んでいくビニール袋。
軽くサボテンみたくなる遥。
「がっ、作戦は成功だぜ! 空手の基本、カウンターパンチをくらえっ!」
遥は刺さったとげとげをそのままに、激しい回し蹴りや突きの動作でトゲトゲをお返しした。
「空手……」
「空手だろ!」
「わーっ、すごいね! 空手って、飛び道具にもなるんだよね!」
『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が天使みてーな笑顔で言った。
「そう言ってくれるのはきせきだけだよ……」
「でも」
きせきは抱っこしていた刀をすらーっと抜いて、刀身の表裏にヒヨコと自分を反射させた。
「ぼくも頑張って、トゲトゲと戦うね。おにくをそぎおとせばいいんだよね!」
「そういうこと言いだすのもきせきだけだよ……」
「でも気をつけようね! ぼく聞いたんだけど、ニワトリって首を切ってもしばらく走ってるんだよ」
「わかった、わかったか早く行け! 俺が引きつけるから!」
遥が唐揚げクン取り出して口いっぱいに頬張り始めた。
「あーっ、おまえのおかーさんまじうめー!」
「ぴぴーっ!」
遥とトゲトゲキャッチボールを始める中、きせきはヒヨコへ突撃した。
「いくよー」
にっこり笑って、ヒヨコの腕部分をざっくり切り落とした。
血を吹き出して絶叫するヒヨコ。
「ほら見て、腕を切ってもまだ動いてるでしょ」
指をさして天使みてーな顔で笑うきせき。
翔子と桃は真顔でそれを眺めていた。
「のう、あの子って……」
「言わないで。考えないようにしてるから」
●モフモフひよこ もふるぞパート
ちょっと離れた場所でトゲトゲひよこが激しくバトってる間。
「ぴぴーっ! ぴーっ!」
もふもふしたヒヨコが野原をてくてく走り回っていた。
背負っていたウォーターサーバーを下ろす岩倉・盾護(CL2000549)。
「もふもふ、危ない?」
「た、たしかに危険ね……」
三島 椿(CL2000061)が両手をわなわなさせていた。
「こんな暑い日に大きなヒヨコにもふもふしたら熱中症の危険があるのよ……でももふもふしたい、したいわね。たとえばあの首にまたがって、後頭部に抱きついたまま走らせたらっと……」
もう頭がやられちゃったのかなって具合に妄想の世界にトリップしかけた。
ふるふると首を振る椿。
「ダメよ、これは依頼。妖を倒すパターンの依頼! ちゃんと倒すのよ、できるわ椿、自分を信じるのよ……」
「…………」
完全に自分との戦いになってる椿を、盾護はただだまーって見守った。
こういうときに突っ込みを入れてあげる彼では無い。
だって成人男性が二人もいるのだから、きっとなんとかしてくれる。
そう思って振り返る……と。
「俺は! 待っていたー! こんな依頼を、待っていたー!」
諸肌脱ぎどころか上半身を青空に晒して、『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)が魂の叫びをあげていた。
その横で眼鏡を高速でちゃきちゃきやり続ける『覚悟の事務員』田中 倖(CL2001407)。
「本来なら僕が危険なほうへ行かなければいけないのは重々承知していますが未来ある少年少女たちが自らトゲトゲ退治に出ると言ったのですから信頼して送り出すのもまた事務員である私の役目であり自主性のめを摘み取るなどあってはならな――」
斜め下の虚空に向けてずっと何かいいわけをしていた。誰にだろう。自分にだろうか。
とかやってると頭を抱えてのけぞり出すゲイル。
「俺は知っている。ひよこさんを妖化から救うには愛情をもって接するのがコツだということを! つまり、もふもふスキンシップは必要な手順なのだ! やったああああああ! もふもふだあああああああ!」
途中から普段の渋いダンディキャラを捨てて走り出すゲイルである。
盾護はというと。
「…………」
やっぱり黙って大人たちを見守った。
「水分補給、大事、聞いた」
紙コップを取り出すと、ウォーターサーバーからスポーツドリンクを注ぎ始めた。
自分と戦ってる人は一旦スルーする派。盾護である。
あ、まだバトルパート入ってませんけど次行きますね。
●トゲトゲひよこ たおすぞパート
もふもふ担当たちが自分との戦いに苦戦する中。
「あのね、ぼくファ○チキだと辛いやつが一番好きなんだー」
きせきが積み上げたフライドチキンをむしゃむしゃ食べるという行為に出ていた。
「ピピーッ!」
短気なのか、簡単に煽られて襲いかかるトゲトゲひよこ。
腕をかばいながら地団駄を踏むと、お腹のトゲトゲをきせきめがけて集中発射した。
「むむっ!」
チキンくわえたまま刀を抜くきせき。
「むむむ、むむむむっ!」
二本の刀をそれぞれ防御の型で構えると、くるくる回転しながら飛来するトゲトゲを凪ぐように落としていく。
きせき的には中国の歴史アクション映画なんかによく出てくる大量の矢を青竜刀でばしばし薙ぎ払うやつをやりたかったらしいが、口にチキンくわえてるのでなんか違うものになっていた。
たまに避けきれないのが刺さって痛いからってペットボトルのお茶(樹の雫)をぐびぐびやってるし。
顔を見合わせる遥と桃。
「あれ、あのままでいいの?」
「いいんだ! それより――」
「お腹の所ね、任せて!」
桃はクナイを目くらまし用に投擲すると、向かって逆側に走りながら破眼光を乱射。
いい感じに当たってヒヨコがうぐうぐ言ってる隙をついて急速に接近した。
地面に刺さっているクナイを前転しながら抜くと、お腹の毛をざくざくと剃るように斬っていく。
「翔子(さん?)がトゲトゲを刺して置いてくれたおかげで再生が遅れてるみたい。いい感じに毛刈りできるわ! チャンスよ!」
「いや一押しだ! クチバシ叩くぞ! 俺は下から!」
「なら私は上からね!」
桃をうっとうしそうに振り払うヒヨコのばたばたをジャンプで回避し、頭上からフォールアタックを仕掛ける桃。
一方で遥が低姿勢のまま走って接近。スライディングとアッパーカットを組み合わせた動きでヒヨコを殴りつけた。
「ぴぎゅ!?」
くちばしが激しくサンドされ一瞬だが身動きがとれなくなるヒヨコ。
そこへ、きせきが強引に滑り込み腹を思い切りかっさばいていった。
「ぴぎゃー!?」
血を吹いてぶっ倒れるヒヨコ。
やがて全てのトゲトゲが抜け落ち、光に包まれたヒヨコは……。
●もふもふヒヨコ もふれよパート
読者諸兄はお気づきだろうか。トゲトゲ担当から翔子が忽然と消えていることに。
そう、彼女は『あとは三人に任せて大丈夫そうじゃな』つってもふもふ担当へと移動していたのだ。
離れた場所とはいえ同じ土地なので、ちょっと走ればまあ間に合わない距離では無い。
「もふもふ相手に苦戦しておるやもしれん。ここは一つ加勢してや……ろ……う……?」
走る足をよわめ、最後には立ち尽くす翔子。
彼女の目の前に広がった光景とは。
「可愛い。可愛いわ。眠いのね。いいのよ眠って……ああ、こんなベッドがあったらいいのに」
うとうとするもふもふヒヨコのお腹に抱きついてほおずりする椿。
「こんな可愛い生物、もふらずにはいられない。人間として必然。必然の……うーん……」
腕に抱きついてほっぺやお腹をこねこねするゲイル。
「そうあれは小学生のころでした。親に連れられた家では幼い従妹が大きなテディベアに身体を埋めて満足そうにしていたのが羨ましくて……ああ、十年越しに念願が叶った気分です。発現して本当によかった……」
ヒヨコの背中に覆い被さるように抱きついたままなんかもごもごと昔語りをし続ける倖。
みんな完全に魅力にやられていた。
「……これは」
「もふもふ」
盾護がウォーターサーバーからドリンクを注いで、翔子に差し出した。
「暑い。水分補給、助ける」
「う、うむ」
受け取ってぐびぐび飲み干す。
「っと、こうしている場合ではない。思わず触ってしまいたくなりそうな魅力は感じるが……うん、ちょっとだけ」
攻撃は後からでもよかろうとばかりに、翔子はヒヨコに近づいてみた。
一度翔子を見るヒヨコだが、眠気が勝ったのか再びうとうとし始める。
そーっと手を伸ばし、首の辺りに埋めてみた。
スースーという寝息のような、ゆっくりとした呼吸のリズムで喉やお腹が動いている。
それになんだか暖かい。
冬場にこんな毛布があればなあと思わせる肌触りと暖かさだった。
いや、冬場といわず今すぐ眠ってみては?
ベッドの代わりにこれを部屋に置いて、疲れて帰ってきたら真っ先にヒヨコへダイブ。
ころころこねこねしながら疲れを癒やすという寸法である。
これは売れる。
――とか思った所で慌てて首を振った。
「あぶない! うっかり家へ持って帰るところだったぞ。皆もいつまでこうしておるのだ、盾護!」
「水、かける」
ウォーターサーバーの蓋を開いた盾護は、完全にやられちゃったゲイルたちにバシャーっと水をぶっかけた。
「ハッ! 私は一体!」
空っぽのペットボトル(ワンタッチで蓋開くやつを使用)を抱っこしていた倖ががばっと身体を起こした。
「皆さん! そろそろ尺もわずか。一斉攻撃の時間では!?」
「いや、あと千文字くらいはもふもふできるはずだ」
「子供みたいなこと言わないのよ」
やだもんもふもふして癒やされるんだもんみたいなテンションでいるゲイル51歳児をひっぺがす椿。
「心を強く持たなきゃ。そう、紫雨からラーニングした龍心の使いどころよ」
「紫雨もヒヨコの誘惑に利用されるとはついぞ想像せんだろうに」
「一斉攻撃だ、いくぞ!」
ゲイルはバッと扇子を広げると、水気を練り上げてヒヨコへ解き放った。
「あんなに可愛い生き物を攻撃しなければならないとは……発現したこの身が憎いですっ」
垂れた両耳を手で押さえ、できるだけ目をそらした倖が念弾をべしべし乱射した。
そろそろ出番なのかなといった具合に棘一閃を投げつけ始める翔子。
椿も一緒になってエアブリットを連射した。
十字砲火、というか文字通り四方からべしべし砲撃されて混乱するヒヨコ。
「ぴぴーっ!?」
やけになって突撃をしかけるも、盾護がそれを受け止めた。
「もふもふ……」
盾護は一度目を瞑ると、ぎゅっとヒヨコを抱きしめた。
抱きしめたというか、圧力でヒヨコを押しつぶしにかかった。
「ビビーッ!?」
「ちょっとまってそれすごくえぐい」
「あっち、むく。平気」
「あーやめてやめてやめてくださいそれうわー!」
耳を塞いで目を瞑る倖たちをよそに、盾護はヒヨコをぎゅってした(きわめて柔らかい表現を用いています)。
「ぴぴー」
もふもふしたヒヨコが野原を歩いている。
ゲイルはそれを拾い上げると、『今度こそこの子は俺が育てる』と言わんばかりに抱きしめた。
そこへ遥ときせき、そして桃もやってくる。
「あら、ヒヨコちゃんは元通りになったのね」
桃の手の中にはヒヨコちゃん。やんちゃな性格なのかたびたび脱走しようとするが、それをしっかり抱っこしていた。
「この子は私が世話するわ。好きで妖になったわけじゃないものね」
「そうですね。もふらせてもらえたお礼に、今度はぬくぬく過ごさせるのです」
うんうんと頷く倖たち。
その後ろできせきが『最終的にはチキンになるんだよね?』的なことを言いかけてそっと翔子に口を塞がれていた。
夏場にしては涼しい風が野原を撫でていく。
彼らはある意味真逆の思い出と感触を胸に、ゴルフ場をあとにした。
「ぴぴーっ!」
巨大なヒヨコが高く叫けぶや否や、お腹の毛を逆立ててびしびしと飛ばしてきた。
「やんちゃなヒヨコね。性格がそのまま反映されたのかしら」
姫神 桃(CL2001376)は飛来したトゲをドラップラー効果をおこしながら左右に回避しにかかるが、さすがに広範囲にぶっ放してるだけあって避けきれないトゲも多いようだ。
「私もヒヨッコだけどね――」
眼前一メートルまで迫ったトゲの群れに、桃の時間がスローモーションになる。
袖の間から滑り出したクナイを握り、超高速で危険な軌道をまっさきに薙ぎ払う。
「ヒヨッコなりに、意地があるのよ!」
ギリギリ生まれた隙間に身体をねじ込み、すりぬけるように回避する桃。
回避のついでにクナイを投擲。ヒヨコの足下に刺さったクナイを中心に雑草が激しく生え広がり、ヒヨコの身体に巻き付いていく。
じゃまそうにぶちぶちするヒヨコ。
「今じゃっ!」
『天狗の娘』鞍馬・翔子(CL2001349)が野球ボール大の植物塊を握り、バッと片足を掲げた。
「自信過剰なヒヨコに、自然と人生の厳しさを教えるのも天狗の役目!」
ぴかーっとなんかのエフェクトがほとばしる中、翔子はおもむろに植物塊を投擲した。
シンカー回転をかけてヒヨコへ迫る植物塊ってかボール。
「人里で暴れたらどうなるか、その幼い脳みそに教えてやろう!」
「ピピッ!?」
ちっちゃい腕で薙ぎ払おうとしたヒヨコだが、ボールが目の前で炸裂。
まき散らされたトゲトゲに驚いてひっくりかえった。
「しかし、なんという哀れな姿だ。かわいがられるべきヒヨコがあのような姿では、愛を知らずに育ったに違いない」
「そう考えると、なんだか可哀想に見えてくるわね……」
「ピピッ!」
気を取り直して立ち上がるピヨコ。再び毛皮を逆立て、トゲトゲ発射のポーズをとった。
「避けるのは難しくないけど、できれば的を絞りたいところね」
「オレにいい考えがある」
消防車のおじさんみたいなこと言いながら鹿ノ島・遥(CL2000227)がビニール袋を掲げた。
「それは……」
「Lチキ」
「えっ」
「Lチキ」
袋からフライドチキンを取り出し、ついでにゆで卵も取り出す。
それを両手に持ち、左右交互に食いしん坊食いしはじめる遥。
「うっめー! ニワトリのお肉と卵ちょーうめー!」
半眼になる桃と翔子。
「そんなミエミエの挑発にひっかかるわけ……」
「ピピーッ!」
ヒヨコが遥めがけてトゲトゲ集中放火。
「効いとる!」
「ぎゃああああああああああ!」
穴だらけになってふわふわ飛んでいくビニール袋。
軽くサボテンみたくなる遥。
「がっ、作戦は成功だぜ! 空手の基本、カウンターパンチをくらえっ!」
遥は刺さったとげとげをそのままに、激しい回し蹴りや突きの動作でトゲトゲをお返しした。
「空手……」
「空手だろ!」
「わーっ、すごいね! 空手って、飛び道具にもなるんだよね!」
『鬼籍あるいは奇跡』御影・きせき(CL2001110)が天使みてーな笑顔で言った。
「そう言ってくれるのはきせきだけだよ……」
「でも」
きせきは抱っこしていた刀をすらーっと抜いて、刀身の表裏にヒヨコと自分を反射させた。
「ぼくも頑張って、トゲトゲと戦うね。おにくをそぎおとせばいいんだよね!」
「そういうこと言いだすのもきせきだけだよ……」
「でも気をつけようね! ぼく聞いたんだけど、ニワトリって首を切ってもしばらく走ってるんだよ」
「わかった、わかったか早く行け! 俺が引きつけるから!」
遥が唐揚げクン取り出して口いっぱいに頬張り始めた。
「あーっ、おまえのおかーさんまじうめー!」
「ぴぴーっ!」
遥とトゲトゲキャッチボールを始める中、きせきはヒヨコへ突撃した。
「いくよー」
にっこり笑って、ヒヨコの腕部分をざっくり切り落とした。
血を吹き出して絶叫するヒヨコ。
「ほら見て、腕を切ってもまだ動いてるでしょ」
指をさして天使みてーな顔で笑うきせき。
翔子と桃は真顔でそれを眺めていた。
「のう、あの子って……」
「言わないで。考えないようにしてるから」
●モフモフひよこ もふるぞパート
ちょっと離れた場所でトゲトゲひよこが激しくバトってる間。
「ぴぴーっ! ぴーっ!」
もふもふしたヒヨコが野原をてくてく走り回っていた。
背負っていたウォーターサーバーを下ろす岩倉・盾護(CL2000549)。
「もふもふ、危ない?」
「た、たしかに危険ね……」
三島 椿(CL2000061)が両手をわなわなさせていた。
「こんな暑い日に大きなヒヨコにもふもふしたら熱中症の危険があるのよ……でももふもふしたい、したいわね。たとえばあの首にまたがって、後頭部に抱きついたまま走らせたらっと……」
もう頭がやられちゃったのかなって具合に妄想の世界にトリップしかけた。
ふるふると首を振る椿。
「ダメよ、これは依頼。妖を倒すパターンの依頼! ちゃんと倒すのよ、できるわ椿、自分を信じるのよ……」
「…………」
完全に自分との戦いになってる椿を、盾護はただだまーって見守った。
こういうときに突っ込みを入れてあげる彼では無い。
だって成人男性が二人もいるのだから、きっとなんとかしてくれる。
そう思って振り返る……と。
「俺は! 待っていたー! こんな依頼を、待っていたー!」
諸肌脱ぎどころか上半身を青空に晒して、『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)が魂の叫びをあげていた。
その横で眼鏡を高速でちゃきちゃきやり続ける『覚悟の事務員』田中 倖(CL2001407)。
「本来なら僕が危険なほうへ行かなければいけないのは重々承知していますが未来ある少年少女たちが自らトゲトゲ退治に出ると言ったのですから信頼して送り出すのもまた事務員である私の役目であり自主性のめを摘み取るなどあってはならな――」
斜め下の虚空に向けてずっと何かいいわけをしていた。誰にだろう。自分にだろうか。
とかやってると頭を抱えてのけぞり出すゲイル。
「俺は知っている。ひよこさんを妖化から救うには愛情をもって接するのがコツだということを! つまり、もふもふスキンシップは必要な手順なのだ! やったああああああ! もふもふだあああああああ!」
途中から普段の渋いダンディキャラを捨てて走り出すゲイルである。
盾護はというと。
「…………」
やっぱり黙って大人たちを見守った。
「水分補給、大事、聞いた」
紙コップを取り出すと、ウォーターサーバーからスポーツドリンクを注ぎ始めた。
自分と戦ってる人は一旦スルーする派。盾護である。
あ、まだバトルパート入ってませんけど次行きますね。
●トゲトゲひよこ たおすぞパート
もふもふ担当たちが自分との戦いに苦戦する中。
「あのね、ぼくファ○チキだと辛いやつが一番好きなんだー」
きせきが積み上げたフライドチキンをむしゃむしゃ食べるという行為に出ていた。
「ピピーッ!」
短気なのか、簡単に煽られて襲いかかるトゲトゲひよこ。
腕をかばいながら地団駄を踏むと、お腹のトゲトゲをきせきめがけて集中発射した。
「むむっ!」
チキンくわえたまま刀を抜くきせき。
「むむむ、むむむむっ!」
二本の刀をそれぞれ防御の型で構えると、くるくる回転しながら飛来するトゲトゲを凪ぐように落としていく。
きせき的には中国の歴史アクション映画なんかによく出てくる大量の矢を青竜刀でばしばし薙ぎ払うやつをやりたかったらしいが、口にチキンくわえてるのでなんか違うものになっていた。
たまに避けきれないのが刺さって痛いからってペットボトルのお茶(樹の雫)をぐびぐびやってるし。
顔を見合わせる遥と桃。
「あれ、あのままでいいの?」
「いいんだ! それより――」
「お腹の所ね、任せて!」
桃はクナイを目くらまし用に投擲すると、向かって逆側に走りながら破眼光を乱射。
いい感じに当たってヒヨコがうぐうぐ言ってる隙をついて急速に接近した。
地面に刺さっているクナイを前転しながら抜くと、お腹の毛をざくざくと剃るように斬っていく。
「翔子(さん?)がトゲトゲを刺して置いてくれたおかげで再生が遅れてるみたい。いい感じに毛刈りできるわ! チャンスよ!」
「いや一押しだ! クチバシ叩くぞ! 俺は下から!」
「なら私は上からね!」
桃をうっとうしそうに振り払うヒヨコのばたばたをジャンプで回避し、頭上からフォールアタックを仕掛ける桃。
一方で遥が低姿勢のまま走って接近。スライディングとアッパーカットを組み合わせた動きでヒヨコを殴りつけた。
「ぴぎゅ!?」
くちばしが激しくサンドされ一瞬だが身動きがとれなくなるヒヨコ。
そこへ、きせきが強引に滑り込み腹を思い切りかっさばいていった。
「ぴぎゃー!?」
血を吹いてぶっ倒れるヒヨコ。
やがて全てのトゲトゲが抜け落ち、光に包まれたヒヨコは……。
●もふもふヒヨコ もふれよパート
読者諸兄はお気づきだろうか。トゲトゲ担当から翔子が忽然と消えていることに。
そう、彼女は『あとは三人に任せて大丈夫そうじゃな』つってもふもふ担当へと移動していたのだ。
離れた場所とはいえ同じ土地なので、ちょっと走ればまあ間に合わない距離では無い。
「もふもふ相手に苦戦しておるやもしれん。ここは一つ加勢してや……ろ……う……?」
走る足をよわめ、最後には立ち尽くす翔子。
彼女の目の前に広がった光景とは。
「可愛い。可愛いわ。眠いのね。いいのよ眠って……ああ、こんなベッドがあったらいいのに」
うとうとするもふもふヒヨコのお腹に抱きついてほおずりする椿。
「こんな可愛い生物、もふらずにはいられない。人間として必然。必然の……うーん……」
腕に抱きついてほっぺやお腹をこねこねするゲイル。
「そうあれは小学生のころでした。親に連れられた家では幼い従妹が大きなテディベアに身体を埋めて満足そうにしていたのが羨ましくて……ああ、十年越しに念願が叶った気分です。発現して本当によかった……」
ヒヨコの背中に覆い被さるように抱きついたままなんかもごもごと昔語りをし続ける倖。
みんな完全に魅力にやられていた。
「……これは」
「もふもふ」
盾護がウォーターサーバーからドリンクを注いで、翔子に差し出した。
「暑い。水分補給、助ける」
「う、うむ」
受け取ってぐびぐび飲み干す。
「っと、こうしている場合ではない。思わず触ってしまいたくなりそうな魅力は感じるが……うん、ちょっとだけ」
攻撃は後からでもよかろうとばかりに、翔子はヒヨコに近づいてみた。
一度翔子を見るヒヨコだが、眠気が勝ったのか再びうとうとし始める。
そーっと手を伸ばし、首の辺りに埋めてみた。
スースーという寝息のような、ゆっくりとした呼吸のリズムで喉やお腹が動いている。
それになんだか暖かい。
冬場にこんな毛布があればなあと思わせる肌触りと暖かさだった。
いや、冬場といわず今すぐ眠ってみては?
ベッドの代わりにこれを部屋に置いて、疲れて帰ってきたら真っ先にヒヨコへダイブ。
ころころこねこねしながら疲れを癒やすという寸法である。
これは売れる。
――とか思った所で慌てて首を振った。
「あぶない! うっかり家へ持って帰るところだったぞ。皆もいつまでこうしておるのだ、盾護!」
「水、かける」
ウォーターサーバーの蓋を開いた盾護は、完全にやられちゃったゲイルたちにバシャーっと水をぶっかけた。
「ハッ! 私は一体!」
空っぽのペットボトル(ワンタッチで蓋開くやつを使用)を抱っこしていた倖ががばっと身体を起こした。
「皆さん! そろそろ尺もわずか。一斉攻撃の時間では!?」
「いや、あと千文字くらいはもふもふできるはずだ」
「子供みたいなこと言わないのよ」
やだもんもふもふして癒やされるんだもんみたいなテンションでいるゲイル51歳児をひっぺがす椿。
「心を強く持たなきゃ。そう、紫雨からラーニングした龍心の使いどころよ」
「紫雨もヒヨコの誘惑に利用されるとはついぞ想像せんだろうに」
「一斉攻撃だ、いくぞ!」
ゲイルはバッと扇子を広げると、水気を練り上げてヒヨコへ解き放った。
「あんなに可愛い生き物を攻撃しなければならないとは……発現したこの身が憎いですっ」
垂れた両耳を手で押さえ、できるだけ目をそらした倖が念弾をべしべし乱射した。
そろそろ出番なのかなといった具合に棘一閃を投げつけ始める翔子。
椿も一緒になってエアブリットを連射した。
十字砲火、というか文字通り四方からべしべし砲撃されて混乱するヒヨコ。
「ぴぴーっ!?」
やけになって突撃をしかけるも、盾護がそれを受け止めた。
「もふもふ……」
盾護は一度目を瞑ると、ぎゅっとヒヨコを抱きしめた。
抱きしめたというか、圧力でヒヨコを押しつぶしにかかった。
「ビビーッ!?」
「ちょっとまってそれすごくえぐい」
「あっち、むく。平気」
「あーやめてやめてやめてくださいそれうわー!」
耳を塞いで目を瞑る倖たちをよそに、盾護はヒヨコをぎゅってした(きわめて柔らかい表現を用いています)。
「ぴぴー」
もふもふしたヒヨコが野原を歩いている。
ゲイルはそれを拾い上げると、『今度こそこの子は俺が育てる』と言わんばかりに抱きしめた。
そこへ遥ときせき、そして桃もやってくる。
「あら、ヒヨコちゃんは元通りになったのね」
桃の手の中にはヒヨコちゃん。やんちゃな性格なのかたびたび脱走しようとするが、それをしっかり抱っこしていた。
「この子は私が世話するわ。好きで妖になったわけじゃないものね」
「そうですね。もふらせてもらえたお礼に、今度はぬくぬく過ごさせるのです」
うんうんと頷く倖たち。
その後ろできせきが『最終的にはチキンになるんだよね?』的なことを言いかけてそっと翔子に口を塞がれていた。
夏場にしては涼しい風が野原を撫でていく。
彼らはある意味真逆の思い出と感触を胸に、ゴルフ場をあとにした。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
