≪FiVE村外伝≫豆腐専門店を営業するんだゾ!
●機材が買えるように……
ここはFiVE村。別名、マックス村。
村に住む古妖も少しずつ増えてきた。それもあり、豆腐店『一つ目豆腐』は概ね盛況である。
その店主、一つ目小僧はせっせせっせと働いていた。
時にいたずらをするのはご愛嬌だが、基本的には村人と良好関係を気づく彼は豆腐を作りながら、忙しくも楽しい日々を過ごしている。
しかしながら、村には未だ最低限のインフラ設備しかなく、機材を買うお金も残念ながらない。その為、一つ目は忙しなくほぼ手作業で豆腐を作り出している。
「もうダメなんだゾ……」
一つしかない目をくるくる回し彼はぱったりと倒れてしまう。いくら長く生きていても、子供の姿で働く彼の姿はなんとも忍びないものがある。
「さすがに、どうにかしたいのう……」
村長はそれを見て、どうしたものかと頭を悩ませるのである。
そうして、呼び出された『F.i.V.E.』の覚者達。
「実はの、一つ目の負担を減らす為に設備を買ってあげたくての」
なるほどと集まったメンバーは頷く。この場に一つ目はいない。過労で今日はひとまずお休みである。家の大きさの都合もあり、メンバーは代わる代わる一つ目を見舞う。
「いらっしゃい、だゾ……」
折角『F.i.V.E.』メンバーがやってきているのだから、のんびりしてもいられないと、起き上がろうとする一つ目。出会ったばかりのときはいたずらだけをしていたのに、この数ヶ月で芽生えた職人魂に、覚者達も舌を巻いてしまう。
一つ目を寝かせつけ、覚者達は村長を含めて改めて話を再開する。設備を増築させたくとも、村はまだまだ資金繰りが厳しい。
「それで、ふぁいう゛さんに協力を頼みたいのじゃ」
とはいえ、この村は自給自足で成り立っている。そこで、一つ目が元気になったら、彼の豆腐を使った料理店を一時的に出店で振舞うことで、村以外の元に食べてもらい、設備の為の資金も得ようということである。
「すまんが、美味い料理のアイディアを出して、料理を作ってはくれんかの?」
自給自足はどうしたと思うが。きちんと分け前はもらえるらしいので、メンバー達も納得することにする。
さて、ある程度話は固まったが。豆腐で何を作るかが問題だ。豆腐専門店とはいえ。一つ目の豆腐が美味しいのは誰もが認めている。
だからこそ、これをどう料理するか。それは覚者達に掛かっている。メニューの提案。そして、実際の調理。直接、店の売りになる部分だ。
実際の客応対や回転は接客係の力量の部分だろう。ここで、どの客層を呼び込むことができるか左右する。好感を抱かせれば、期間内に更なる客を呼び込める可能性もあるだろう。
さらに、現場で買出し、雑務担当となる者は仲間達を下支えすることとなる。彼が如何に動くかで、他メンバーの負担が軽くなるかが変わるはずだ。
それらも踏まえ、覚者達は担当を決め、一つ目の回復を待つ。豆腐専門店を営むのに、期待や不安、様々な感慨を抱きながら。
ここはFiVE村。別名、マックス村。
村に住む古妖も少しずつ増えてきた。それもあり、豆腐店『一つ目豆腐』は概ね盛況である。
その店主、一つ目小僧はせっせせっせと働いていた。
時にいたずらをするのはご愛嬌だが、基本的には村人と良好関係を気づく彼は豆腐を作りながら、忙しくも楽しい日々を過ごしている。
しかしながら、村には未だ最低限のインフラ設備しかなく、機材を買うお金も残念ながらない。その為、一つ目は忙しなくほぼ手作業で豆腐を作り出している。
「もうダメなんだゾ……」
一つしかない目をくるくる回し彼はぱったりと倒れてしまう。いくら長く生きていても、子供の姿で働く彼の姿はなんとも忍びないものがある。
「さすがに、どうにかしたいのう……」
村長はそれを見て、どうしたものかと頭を悩ませるのである。
そうして、呼び出された『F.i.V.E.』の覚者達。
「実はの、一つ目の負担を減らす為に設備を買ってあげたくての」
なるほどと集まったメンバーは頷く。この場に一つ目はいない。過労で今日はひとまずお休みである。家の大きさの都合もあり、メンバーは代わる代わる一つ目を見舞う。
「いらっしゃい、だゾ……」
折角『F.i.V.E.』メンバーがやってきているのだから、のんびりしてもいられないと、起き上がろうとする一つ目。出会ったばかりのときはいたずらだけをしていたのに、この数ヶ月で芽生えた職人魂に、覚者達も舌を巻いてしまう。
一つ目を寝かせつけ、覚者達は村長を含めて改めて話を再開する。設備を増築させたくとも、村はまだまだ資金繰りが厳しい。
「それで、ふぁいう゛さんに協力を頼みたいのじゃ」
とはいえ、この村は自給自足で成り立っている。そこで、一つ目が元気になったら、彼の豆腐を使った料理店を一時的に出店で振舞うことで、村以外の元に食べてもらい、設備の為の資金も得ようということである。
「すまんが、美味い料理のアイディアを出して、料理を作ってはくれんかの?」
自給自足はどうしたと思うが。きちんと分け前はもらえるらしいので、メンバー達も納得することにする。
さて、ある程度話は固まったが。豆腐で何を作るかが問題だ。豆腐専門店とはいえ。一つ目の豆腐が美味しいのは誰もが認めている。
だからこそ、これをどう料理するか。それは覚者達に掛かっている。メニューの提案。そして、実際の調理。直接、店の売りになる部分だ。
実際の客応対や回転は接客係の力量の部分だろう。ここで、どの客層を呼び込むことができるか左右する。好感を抱かせれば、期間内に更なる客を呼び込める可能性もあるだろう。
さらに、現場で買出し、雑務担当となる者は仲間達を下支えすることとなる。彼が如何に動くかで、他メンバーの負担が軽くなるかが変わるはずだ。
それらも踏まえ、覚者達は担当を決め、一つ目の回復を待つ。豆腐専門店を営むのに、期待や不安、様々な感慨を抱きながら。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.豆腐料理専門の出店で料理を提供する。
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
FiVE村で頑張っている一つ目小僧ですが、
彼の負担が大きい状況にあるようです。
彼の為にも、豆腐専門の出店を成功させていただきますよう願います。
●参加方法
OPから2日後、
一つ目が元気になったタイミングから3日間、
出店を行う形です。
夏休みの平日、場所は五麟市の市街地、
駐車場を借りて営業を行う形です。
以下の役回りを1つ選んでください。
ある程度の記述があれば、
無難に営業をすることは可能ですが、
うまく運営するには、
ある程度仲間内で話し合った上で
適材適所かつ、バランスの取れた人員の配置が必要です。
1.厨房係
豆腐料理を列挙してください。
幅があればあるほど、客層は広がります。
その中で、豆腐料理を実際作ってください。
こういう料理を作るというプレイングがあり、
美味しそうに思える内容であればこそ、売り上げは上がります。
一つの料理にこだわりを持つ形の方がプラスに働く可能性が高いです。
なお、豆腐の量に限りがありますので、
なくなり次第その日の営業は終了します。
他ポジションとは異なり、
料理専門で動くこととなります。
2.買出し、雑用係
参加したいけれど、調理は苦手だからなーという方へ。
豆腐とある程度の調味料、調理器具はあれど、
様々な料理を作るとなれば、材料が必要です。
調理を行う人からしっかりと何が欲しいかを聞きだし、
買出しを願います。
漏れなどあれば、料理に影響する可能性が高いので、
この出店で縁の下の力持ちとなるポジションです。
買出し専門の人が1人2人いれば、
その分、料理専門の方の負担(主にプレイング)が楽になるでしょう。
帰ってきたら、
皿洗い、食材の下ごしらえなどの仕事が待っています。
3も併用可能ですが、
リプレイでの登場は買い出し、雑用部分がメインとなります。
3.接客係
基本的に配膳、客応対、レジなどの担当です。
愛想良く接客、無駄のない動き、
オーダーを受けて効率よくメモなど、
立ち回りを重要視する必要があります。
如何に客を捌くかが大切です。
場合によっては買出し、雑用を行うこともありますが、
基本は接客がメインでの描写となります。
●NPC
一つ目小僧は、この出店に直接は参加しません。
村で提供用の豆腐を手作業で作っております。
それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/8
6/8
公開日
2016年08月04日
2016年08月04日
■メイン参加者 6人■

●一つ目の為にも……!
京都府五麟市。
この地のとある駐車場で、『F.i.V.E.』の覚者達による出店が営業されることとなっている。
「今回はお店で人手が足りない様だったので、少しでもお手伝いが出来たらいいな……と思って、参加してみました」
事前に話を聞いていた『夢猫』ウル・イング(CL2001378)が仲間達へと挨拶をする。お祭り気分なら、いつもとは少しだけ違う自分になれる。そんな気がして、彼は参加を決めていた。
「初めての接客業で、緊張しているけど……。何とか凜さんや皆さんと協力して、最後まで頑張りたいと、思います……」
やる気を見せるウルに、メンバー達は笑顔で挨拶を交わす。
ところで、ここに来る前、メンバー達は一度『F.i.V.E.』村へと立ち寄り、体調を戻して豆腐を作っている一つ目と会って来ていた。
「ふふ、あの一つ目小僧がこんなに成長するなんて。それなら、私達も全力で力にならないとね」
『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)はせっせと豆腐を作る一つ目の姿を思い返して笑う。
「一つ目小僧さん、初めてお会いしたのですが、一生懸命美味しいお豆腐を作ってると聞いていたので、一生懸命応援したいですね」
その彼から、今日1日分の客に提供する豆腐を託されている。『願いの翼』天野 澄香(CL2000194)は料理を頑張ると張り切っていた。
「村の人口も増えて、豆腐も好評のようだけど、一つ目だけだと確かに負担がでかいな」
先日会いに行った際、一つ目の見舞いを行った亮平。その姿を見て思う。
豆腐屋を一つ目が営むに至った経緯には、『BCM店長』阿久津 亮平(CL2000328)が賛同したこともある。だからこそ、彼は設備の資金作りにも力になれるようにと参加していたのだ。
集まるメンバー達は、早速開店準備に取り掛かる。朝も早くに集まっていたが、昼のオープンを目指して行動を開始したのだった。
●仕込みに開店準備!
さて、駐車場に設置された出店内で、開店準備を始めるメンバー達。
ポリバケツのような大きな容器へと沈められた豆腐の塊に、茨田・凜(CL2000438)は視線を落とす。
「豆腐ってヘルシーだから、凜も大好きなんよ」
凜はメンバーが予定している豆腐料理のメニューを見て、自身のレパートリーを増やせそうだと考えていたようだ。
「このお豆腐、もしかしたら冷や奴が一番美味しいかもですね」
少し豆腐を味見してみた澄香の口に、ほんのりと口に甘さが残る。
今回、調理に当たるのは、その澄香と亮平だ。
2人が豆腐の仕込みを進める間、彼らから託された食材をメモに取り、鈴白 秋人(CL2000565)が買出しへと出かける。
彼らの用意するメニューは5品ずつ、合わせて10品。豆腐メインの料理とはいえ、これだけの品数があれば、食材はそれ以外にも必要になる。
亮平が頼んだ食材は、『パン粉、片栗粉、鰹節、バーガー用のバンズ、玉ねぎ、卵、小ねぎ、枝豆、人参、大根、レタス、トマト、串』。彼はそれを秋人に託し、豆腐の水切りを始めていた。
同じく、澄香。冷やす必要のあるデザートから仕込みを始める。
澄香が買出し係の秋人に託したのは、『クリームチーズ、ゼラチン、ホットケーキミックス、アイス、ヨーグルト氷、メープルシロップにバター、それに、ジュース各種』。デザート係を請け負う澄香はさらに、砂糖を頼んでいた。
「お砂糖は、糖質0の甘味料をお願いしますね」
お豆腐は栄養があって低カロリー、ダイエット中の人にも強い味方。澄香はそれを活かし、低カロリーのデザートメニューを考えていた。
(一応、頭にも買う物を忘れずに入れておくけど)
念の為にと買い物メモを受け取った秋人は、近場の24時間営業のスーパーへと韋駄天足を使ってダッシュしていく。
他のメンバーはというと。
エメレンツィアは販売の為の戦略を練る。彼女はこの店を今回限りにするつもりはなく、長く続けられるような店作りをと収支なども踏まえ、電卓を叩きつつ考えていたのだ。
「良いものを作れば勝手に売れるなんて、夢物語は存在しないわ」
料理を作る2人の腕を疑うわけではない。しかしながら、立地は駐車場とさほどよろしくない。名前を出すにしても、マックス村はまだネームバリューにもならない。
「……『F.i.V.E.』の名を借りないといけないかしら」
エメレンツィアはしばし座ったまま、唸りこんでいた。
客席、イートインスペースを造っていたのはウルだ。建てたテントの中で長椅子と長机を並べ、ファストフード店のように客の流れができるようレイアウトする。こうすることで、接客係となる自分達の負担を軽くする狙いだ。
「確かに、全てのお皿を下げたり、品物をお客様へと届ける時に、零してしまったりする事が無くなるかも知れませんよね」
配置を終え、ウルはうんうんと頷く。
そこで、ダッシュで帰って来た秋人。沢山の食材を抱えていた彼だが、食材を痛めないようにとの注意を忘れない。
「暑い中、買い物ありがとう」
汗を垂らす彼をねぎらい、亮平がはちみつレモンソーダを差し出すと、秋人は汗を拭いつつ受け取った飲み物で喉を潤していた。
●一つ目豆腐料理店オープン!
「『F.i.V.E.』提携マックス村提供の豆腐を使った豆腐料理店、仮オープン、と」
昼前になる頃、開店準備が整った。
「さあ、一つ目豆腐店、新たな出だしよ。張り切っていきましょう!」
エメレンツィアが改めてそう仲間へと呼びかけると、全員が気合を入れ直す。そして、並んでいた客を店内へ誘導を始めた。
メインで接客に当たるのは、凜とウルだ。2人は浴衣姿で応対する。豆腐店ということで和風をイメージしていた。
「少しお祭りみたいな感じもして、いいかな……って……」
ひらひらふわふわの帯に、子供用浴衣を着ていたウル。凜も「バッチリOKなんよ」とウインクする。
まずはメイン料理。こちらは亮平担当だ。
メニューは、田楽は串に刺し、味噌を塗った『豆腐田楽』。
滑らかなクリーム状にした豆腐を玉ねぎと混ぜ、俵型にして揚げた『豆腐のクリームコロッケ』。
豆腐、卵、玉ねぎ、枝豆、人参を混ぜてこんがり焼いた『豆腐ハンバーグ』。
豆腐に片栗粉をまぶして揚げ、つゆをかけて、小葱と鰹節と大根おろしをのせた『揚げ出し豆腐』。
そして、豆腐ハンバーグにスライストマト、レタスをバンズに挟んだ『豆腐バーガー』。以上の5品だ。
大きすぎたり、持ちにくかったりしないようにと、亮平は包み紙や容器に収まる大きさになるようにと気がけ、料理を仕上げていた。
並んでいた客を着席させ、凜が元気いっぱいの笑顔でオーダーを聞く。親子を応対した際、彼女は手持ちのお菓子を差し出し、子供を喜ばせていた。
(凜は子どもが大好き。凜も早くママになりたいんよ)
にっこりと笑う彼女の顔は、営業スマイルだけではないようだ。
予め、開店前に出来ていた列でとっていた注文を、凜は厨房の2人へと伝達する。イートインスペースを動きやすいよう配慮していたおかげで、彼女もスムーズに店内を動くことができていたようだ。
ウルもまた、接客に当たる。凜のサブポジションのような立ち位置で、小まめな掃除、そして、レジ打ちを行ったり、追加オーダーを聞いていたりしていた。
それでも、接客が初めてとあって自信を持てないウルは、凜へと積極的に質問を行う。
「元気いっぱいの笑顔で応対しなきゃ、ダメなんよ」
「オドオドしてちゃ、ダメですよね……!」
ウルは「むん!」と気合を入れていたようだ。
厨房で亮平と澄香が忙しなく調理に当たる中、使用済みの調理器具や、客に振舞った料理の後処理を行っていたのは、エメレンツィアだ。
夏場とはいえ、水仕事となれば冷たい水。水の心でその冷たさを気にすることなく彼女は作業に当たる。
「ふふ、こっちもやる事は一杯よ。ホントにね」
作業としては苦手なエメレンツィア。皿などを割らないようにと注意が必要な部分はあったが、慣れない作業を楽しんでもいたようだ。
秋人も淡々と皿洗いをこなす。
接客もこなす彼は紺の甚平を着ていた。ただ、接客は程々にしていた彼は、放っておけば溜まってしまう洗い物が増えないようにと常に気をつけ、洗い物をエメレンツィアだけに任せることなく、皿洗いを行う。その辺りの作業は1人暮らしとバイト経験をフルに活かしていたようだ。
さて、客席に視線を移せば。
「ついでに、ドリンクとかデザートはいかがですかぁ?」
愛嬌を振りまき、凜が客に呼びかける。
「ここのデザートは美味しいし、しかも豆腐だから、ヘルシーで超オススメなんよ」
凜はメニューを見せ、女性達に『ヘルシー』を強調してデザートを勧める。
デザート担当は澄香。彼女は客が美味しそうに食べる姿を想像しながら、調理を行う。
そのメニューは、クリームチーズとゼラチン使用、レアチーズケーキのような味の『豆腐のフロマージュ』。
豆腐をクリーム状に練って使用したさっぱりした後味の『豆腐&おからティラミス』。
ホットケーキミックスに豆腐を混ぜて揚げた『豆腐ドーナッツ』。
同じく、ホットケーキミックスと混ぜて分厚くふわふわに焼き、メープルシロップとバターをかけて食べる『豆腐のホットケーキ』。
そして、豆乳とアイス、ヨーグルト氷を攪拌、ひんやりと冷やした『豆乳シェイク』だ。
フロマージュ、ティラミス、ドーナッツは事前に数を作っていた為、ホットケーキとシェイクのオーダー時に調理を始める形を澄香はとっていた。これにより多少手数に余裕を持たせた彼女は、亮平の手伝い、そして、皿洗いなど厨房の雑務も多少カバーしていたようだ。
そんな覚者達の頑張りもあって、店は盛況。忙しくなるのは嬉しいことだが、ウルはテンパってしまわぬようにと深呼吸して、接客を行う。
(僕達が慌てたり、注文を間違えてしまったら、きっと大変な事になるから……)
落ち着いて正確に、その上で笑顔を忘れないように。そう心がけて彼は仕事を頑張る。頑張るウルは女性客達の注目の的となっていたようである。
●お疲れ様の打ち上げを
営業は臨時店という形でのものだったが、2泊3日はあっという間に過ぎていった。
売り上げの主力となったのは、『豆腐バーガー』と『豆腐&おからティラミス』、『豆乳シェイク』だ。暑い中で手軽に食べられるものということ、美味しいデザートに客の興味は集まっていたようだ。
優しいお姉さんとして接客していた凜が男性客を呼び込むことはあったが、ヘルシーな豆腐料理店という宣伝があったことで、やはり女性客が多かったようだ。
可愛らしいウルの接客効果も大きい。覚者の一員として精一杯接客するその姿は女性達の心を鷲掴みにしていたようである。
売り上げは上々といったところ。人数不足は時に『F.i.V.E.』のスタッフがフォローはしてくれていたこともあり、予想プラスアルファ程度の収益を上げられたようだ。
「ゆくゆくは、マックス村ふるさと館に内包するか併設して、常設にしたい企画ね」
多方面に話をつけておきたいと考えるエメレンツィア。
ただ、豆腐屋は村でもかなり売れ行き良好ということで、生産量を上げる必要がある。だが、今回の収益で、小型ではあるが、業務用の豆腐製造機を買うくらいはできそうだ。
(一つ目が人に任せられる部分をオートメーション化する為に必要な設備、その為に必要な売上高を計算して……)
エメレンツィアは営業前にも考えていたが、改めて電卓を叩いて思案する。
「とりあえずは必要な食材の量はこれくらいかしらね」
今度、村で開拓する場所を工場に。村の経営状況も確認して。……まだまだやることは山積みだ。
「ゾゾゾ……」
覚者達の報告で設備を買うことが出来ると知り、一つ目は大きな目を潤ませる。その姿はなんとも可愛らしい。
「美味しいお豆腐のおかげで、お料理が楽しかったです。ありがとうございました」
「ゾゾゾ……」
初めて一つ目に会う澄香が告げると、彼はおいおい涙を流していたようだ。いたずら好きなのが玉にキズだが、とてもいい子である。
そんな一つ目を含めた仲間達の為にと、亮平が豆腐料理を持参してくる。凜は今回、調理には携わらなかったが、折角だからとそのレシピを教えてもらっていた。とりわけ、澄香の作るデザートには興味を持ってメモを取っていたようだ。
その豆腐料理を食べながら、覚者達はささやかな打ち上げを行い、各自疲れを忘れて楽しい一時を過ごす。
「こんなものも用意したけれど、どうかな」
ある程度皆が料理を口にし終えたタイミングを見て、秋人が手持ち花火のセットを取り出す。どうやら、彼は自腹で買ってきたらしい。
一つ目が興味深そうに見つめていると、秋人がその一つに火をつける。勢いよく飛び散る火花に、一つ目は驚く。それに、花火を手にしていた凜や亮平は笑っていたようだ。
『F.i.V.E.』村が始まった頃に一つ目小僧は村へやってきていたが、そこから彼は村の為にと豆腐を作っていた。それを見ていた秋人はずっと気を張っていたのだろうなと考えていたのだ。
「たまにはこうして、息抜きとか、自分の楽しい時間を作ってもいいんだ」
「ゾゾ……」
両極端な一つ目の性格を心配する秋人に対し、彼は嬉しそうに頷いていた。
京都府五麟市。
この地のとある駐車場で、『F.i.V.E.』の覚者達による出店が営業されることとなっている。
「今回はお店で人手が足りない様だったので、少しでもお手伝いが出来たらいいな……と思って、参加してみました」
事前に話を聞いていた『夢猫』ウル・イング(CL2001378)が仲間達へと挨拶をする。お祭り気分なら、いつもとは少しだけ違う自分になれる。そんな気がして、彼は参加を決めていた。
「初めての接客業で、緊張しているけど……。何とか凜さんや皆さんと協力して、最後まで頑張りたいと、思います……」
やる気を見せるウルに、メンバー達は笑顔で挨拶を交わす。
ところで、ここに来る前、メンバー達は一度『F.i.V.E.』村へと立ち寄り、体調を戻して豆腐を作っている一つ目と会って来ていた。
「ふふ、あの一つ目小僧がこんなに成長するなんて。それなら、私達も全力で力にならないとね」
『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)はせっせと豆腐を作る一つ目の姿を思い返して笑う。
「一つ目小僧さん、初めてお会いしたのですが、一生懸命美味しいお豆腐を作ってると聞いていたので、一生懸命応援したいですね」
その彼から、今日1日分の客に提供する豆腐を託されている。『願いの翼』天野 澄香(CL2000194)は料理を頑張ると張り切っていた。
「村の人口も増えて、豆腐も好評のようだけど、一つ目だけだと確かに負担がでかいな」
先日会いに行った際、一つ目の見舞いを行った亮平。その姿を見て思う。
豆腐屋を一つ目が営むに至った経緯には、『BCM店長』阿久津 亮平(CL2000328)が賛同したこともある。だからこそ、彼は設備の資金作りにも力になれるようにと参加していたのだ。
集まるメンバー達は、早速開店準備に取り掛かる。朝も早くに集まっていたが、昼のオープンを目指して行動を開始したのだった。
●仕込みに開店準備!
さて、駐車場に設置された出店内で、開店準備を始めるメンバー達。
ポリバケツのような大きな容器へと沈められた豆腐の塊に、茨田・凜(CL2000438)は視線を落とす。
「豆腐ってヘルシーだから、凜も大好きなんよ」
凜はメンバーが予定している豆腐料理のメニューを見て、自身のレパートリーを増やせそうだと考えていたようだ。
「このお豆腐、もしかしたら冷や奴が一番美味しいかもですね」
少し豆腐を味見してみた澄香の口に、ほんのりと口に甘さが残る。
今回、調理に当たるのは、その澄香と亮平だ。
2人が豆腐の仕込みを進める間、彼らから託された食材をメモに取り、鈴白 秋人(CL2000565)が買出しへと出かける。
彼らの用意するメニューは5品ずつ、合わせて10品。豆腐メインの料理とはいえ、これだけの品数があれば、食材はそれ以外にも必要になる。
亮平が頼んだ食材は、『パン粉、片栗粉、鰹節、バーガー用のバンズ、玉ねぎ、卵、小ねぎ、枝豆、人参、大根、レタス、トマト、串』。彼はそれを秋人に託し、豆腐の水切りを始めていた。
同じく、澄香。冷やす必要のあるデザートから仕込みを始める。
澄香が買出し係の秋人に託したのは、『クリームチーズ、ゼラチン、ホットケーキミックス、アイス、ヨーグルト氷、メープルシロップにバター、それに、ジュース各種』。デザート係を請け負う澄香はさらに、砂糖を頼んでいた。
「お砂糖は、糖質0の甘味料をお願いしますね」
お豆腐は栄養があって低カロリー、ダイエット中の人にも強い味方。澄香はそれを活かし、低カロリーのデザートメニューを考えていた。
(一応、頭にも買う物を忘れずに入れておくけど)
念の為にと買い物メモを受け取った秋人は、近場の24時間営業のスーパーへと韋駄天足を使ってダッシュしていく。
他のメンバーはというと。
エメレンツィアは販売の為の戦略を練る。彼女はこの店を今回限りにするつもりはなく、長く続けられるような店作りをと収支なども踏まえ、電卓を叩きつつ考えていたのだ。
「良いものを作れば勝手に売れるなんて、夢物語は存在しないわ」
料理を作る2人の腕を疑うわけではない。しかしながら、立地は駐車場とさほどよろしくない。名前を出すにしても、マックス村はまだネームバリューにもならない。
「……『F.i.V.E.』の名を借りないといけないかしら」
エメレンツィアはしばし座ったまま、唸りこんでいた。
客席、イートインスペースを造っていたのはウルだ。建てたテントの中で長椅子と長机を並べ、ファストフード店のように客の流れができるようレイアウトする。こうすることで、接客係となる自分達の負担を軽くする狙いだ。
「確かに、全てのお皿を下げたり、品物をお客様へと届ける時に、零してしまったりする事が無くなるかも知れませんよね」
配置を終え、ウルはうんうんと頷く。
そこで、ダッシュで帰って来た秋人。沢山の食材を抱えていた彼だが、食材を痛めないようにとの注意を忘れない。
「暑い中、買い物ありがとう」
汗を垂らす彼をねぎらい、亮平がはちみつレモンソーダを差し出すと、秋人は汗を拭いつつ受け取った飲み物で喉を潤していた。
●一つ目豆腐料理店オープン!
「『F.i.V.E.』提携マックス村提供の豆腐を使った豆腐料理店、仮オープン、と」
昼前になる頃、開店準備が整った。
「さあ、一つ目豆腐店、新たな出だしよ。張り切っていきましょう!」
エメレンツィアが改めてそう仲間へと呼びかけると、全員が気合を入れ直す。そして、並んでいた客を店内へ誘導を始めた。
メインで接客に当たるのは、凜とウルだ。2人は浴衣姿で応対する。豆腐店ということで和風をイメージしていた。
「少しお祭りみたいな感じもして、いいかな……って……」
ひらひらふわふわの帯に、子供用浴衣を着ていたウル。凜も「バッチリOKなんよ」とウインクする。
まずはメイン料理。こちらは亮平担当だ。
メニューは、田楽は串に刺し、味噌を塗った『豆腐田楽』。
滑らかなクリーム状にした豆腐を玉ねぎと混ぜ、俵型にして揚げた『豆腐のクリームコロッケ』。
豆腐、卵、玉ねぎ、枝豆、人参を混ぜてこんがり焼いた『豆腐ハンバーグ』。
豆腐に片栗粉をまぶして揚げ、つゆをかけて、小葱と鰹節と大根おろしをのせた『揚げ出し豆腐』。
そして、豆腐ハンバーグにスライストマト、レタスをバンズに挟んだ『豆腐バーガー』。以上の5品だ。
大きすぎたり、持ちにくかったりしないようにと、亮平は包み紙や容器に収まる大きさになるようにと気がけ、料理を仕上げていた。
並んでいた客を着席させ、凜が元気いっぱいの笑顔でオーダーを聞く。親子を応対した際、彼女は手持ちのお菓子を差し出し、子供を喜ばせていた。
(凜は子どもが大好き。凜も早くママになりたいんよ)
にっこりと笑う彼女の顔は、営業スマイルだけではないようだ。
予め、開店前に出来ていた列でとっていた注文を、凜は厨房の2人へと伝達する。イートインスペースを動きやすいよう配慮していたおかげで、彼女もスムーズに店内を動くことができていたようだ。
ウルもまた、接客に当たる。凜のサブポジションのような立ち位置で、小まめな掃除、そして、レジ打ちを行ったり、追加オーダーを聞いていたりしていた。
それでも、接客が初めてとあって自信を持てないウルは、凜へと積極的に質問を行う。
「元気いっぱいの笑顔で応対しなきゃ、ダメなんよ」
「オドオドしてちゃ、ダメですよね……!」
ウルは「むん!」と気合を入れていたようだ。
厨房で亮平と澄香が忙しなく調理に当たる中、使用済みの調理器具や、客に振舞った料理の後処理を行っていたのは、エメレンツィアだ。
夏場とはいえ、水仕事となれば冷たい水。水の心でその冷たさを気にすることなく彼女は作業に当たる。
「ふふ、こっちもやる事は一杯よ。ホントにね」
作業としては苦手なエメレンツィア。皿などを割らないようにと注意が必要な部分はあったが、慣れない作業を楽しんでもいたようだ。
秋人も淡々と皿洗いをこなす。
接客もこなす彼は紺の甚平を着ていた。ただ、接客は程々にしていた彼は、放っておけば溜まってしまう洗い物が増えないようにと常に気をつけ、洗い物をエメレンツィアだけに任せることなく、皿洗いを行う。その辺りの作業は1人暮らしとバイト経験をフルに活かしていたようだ。
さて、客席に視線を移せば。
「ついでに、ドリンクとかデザートはいかがですかぁ?」
愛嬌を振りまき、凜が客に呼びかける。
「ここのデザートは美味しいし、しかも豆腐だから、ヘルシーで超オススメなんよ」
凜はメニューを見せ、女性達に『ヘルシー』を強調してデザートを勧める。
デザート担当は澄香。彼女は客が美味しそうに食べる姿を想像しながら、調理を行う。
そのメニューは、クリームチーズとゼラチン使用、レアチーズケーキのような味の『豆腐のフロマージュ』。
豆腐をクリーム状に練って使用したさっぱりした後味の『豆腐&おからティラミス』。
ホットケーキミックスに豆腐を混ぜて揚げた『豆腐ドーナッツ』。
同じく、ホットケーキミックスと混ぜて分厚くふわふわに焼き、メープルシロップとバターをかけて食べる『豆腐のホットケーキ』。
そして、豆乳とアイス、ヨーグルト氷を攪拌、ひんやりと冷やした『豆乳シェイク』だ。
フロマージュ、ティラミス、ドーナッツは事前に数を作っていた為、ホットケーキとシェイクのオーダー時に調理を始める形を澄香はとっていた。これにより多少手数に余裕を持たせた彼女は、亮平の手伝い、そして、皿洗いなど厨房の雑務も多少カバーしていたようだ。
そんな覚者達の頑張りもあって、店は盛況。忙しくなるのは嬉しいことだが、ウルはテンパってしまわぬようにと深呼吸して、接客を行う。
(僕達が慌てたり、注文を間違えてしまったら、きっと大変な事になるから……)
落ち着いて正確に、その上で笑顔を忘れないように。そう心がけて彼は仕事を頑張る。頑張るウルは女性客達の注目の的となっていたようである。
●お疲れ様の打ち上げを
営業は臨時店という形でのものだったが、2泊3日はあっという間に過ぎていった。
売り上げの主力となったのは、『豆腐バーガー』と『豆腐&おからティラミス』、『豆乳シェイク』だ。暑い中で手軽に食べられるものということ、美味しいデザートに客の興味は集まっていたようだ。
優しいお姉さんとして接客していた凜が男性客を呼び込むことはあったが、ヘルシーな豆腐料理店という宣伝があったことで、やはり女性客が多かったようだ。
可愛らしいウルの接客効果も大きい。覚者の一員として精一杯接客するその姿は女性達の心を鷲掴みにしていたようである。
売り上げは上々といったところ。人数不足は時に『F.i.V.E.』のスタッフがフォローはしてくれていたこともあり、予想プラスアルファ程度の収益を上げられたようだ。
「ゆくゆくは、マックス村ふるさと館に内包するか併設して、常設にしたい企画ね」
多方面に話をつけておきたいと考えるエメレンツィア。
ただ、豆腐屋は村でもかなり売れ行き良好ということで、生産量を上げる必要がある。だが、今回の収益で、小型ではあるが、業務用の豆腐製造機を買うくらいはできそうだ。
(一つ目が人に任せられる部分をオートメーション化する為に必要な設備、その為に必要な売上高を計算して……)
エメレンツィアは営業前にも考えていたが、改めて電卓を叩いて思案する。
「とりあえずは必要な食材の量はこれくらいかしらね」
今度、村で開拓する場所を工場に。村の経営状況も確認して。……まだまだやることは山積みだ。
「ゾゾゾ……」
覚者達の報告で設備を買うことが出来ると知り、一つ目は大きな目を潤ませる。その姿はなんとも可愛らしい。
「美味しいお豆腐のおかげで、お料理が楽しかったです。ありがとうございました」
「ゾゾゾ……」
初めて一つ目に会う澄香が告げると、彼はおいおい涙を流していたようだ。いたずら好きなのが玉にキズだが、とてもいい子である。
そんな一つ目を含めた仲間達の為にと、亮平が豆腐料理を持参してくる。凜は今回、調理には携わらなかったが、折角だからとそのレシピを教えてもらっていた。とりわけ、澄香の作るデザートには興味を持ってメモを取っていたようだ。
その豆腐料理を食べながら、覚者達はささやかな打ち上げを行い、各自疲れを忘れて楽しい一時を過ごす。
「こんなものも用意したけれど、どうかな」
ある程度皆が料理を口にし終えたタイミングを見て、秋人が手持ち花火のセットを取り出す。どうやら、彼は自腹で買ってきたらしい。
一つ目が興味深そうに見つめていると、秋人がその一つに火をつける。勢いよく飛び散る火花に、一つ目は驚く。それに、花火を手にしていた凜や亮平は笑っていたようだ。
『F.i.V.E.』村が始まった頃に一つ目小僧は村へやってきていたが、そこから彼は村の為にと豆腐を作っていた。それを見ていた秋人はずっと気を張っていたのだろうなと考えていたのだ。
「たまにはこうして、息抜きとか、自分の楽しい時間を作ってもいいんだ」
「ゾゾ……」
両極端な一つ目の性格を心配する秋人に対し、彼は嬉しそうに頷いていた。

■あとがき■
リプレイ公開です。
豆腐専門店の運営、お疲れ様でした!
一つ目がとても喜んでいたようで何よりです。
MVPは雑務にもかかわらず、
あれやこれやと気を回していただいた貴方へ。
特に、忙しく、やることがたくさんある中で、
それらを捌きつつ、
一つ目を気にかけていただいたことは嬉しかったです。
村には小さくはありますが、
一つ目の為に小型豆腐製造機が導入されました。
これで格段に彼の負担が減り、
それでいて豆腐の製造量が格段に増えることでしょう。
参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!
豆腐専門店の運営、お疲れ様でした!
一つ目がとても喜んでいたようで何よりです。
MVPは雑務にもかかわらず、
あれやこれやと気を回していただいた貴方へ。
特に、忙しく、やることがたくさんある中で、
それらを捌きつつ、
一つ目を気にかけていただいたことは嬉しかったです。
村には小さくはありますが、
一つ目の為に小型豆腐製造機が導入されました。
これで格段に彼の負担が減り、
それでいて豆腐の製造量が格段に増えることでしょう。
参加していただいた皆様、
本当にありがとうございました!
