水着ゆり依頼
●お手玉で上に投げる玉の事をゆり玉って言うらしいよ。
いつも通り何かの調査の為に出張していた神林 瑛莉(nCL2000072)は、とある海沿いの街にいた。
夏の日差しに照らされた海がまぶしい。浜辺には、夏の日を謳歌する人々の姿が見える。
少々の羨ましさを感じつつ、手近にあった公衆電話で調査報告を始めた。オペレーターと一言二言あいさつを交わす。と、突然、オペレーターが誰かと何やら言い争い始めた。受話器から漏れ出る声から察するに、諍いの相手は夢見の少女、速水 結那(nCL2000114)のようだ。
結那が、受話器をオペレーターからひったくったらしい。とたん、わけのわからない事をまくしたて始めた。声色からは焦りと恐怖となんか色々な感情がない交ぜになった物が見て取れる。半泣きである。
「あ? どうした? ……はぁ? 何言ってんだ速水。浜辺でムキムキの手足が生えたお手玉の古妖が『最近の若い奴はけしからん、お手玉の一つもしない!』と叫びながら老若男女問わず水着を剥きまくっている? そりゃ予知じゃなくて普通に悪夢じゃねぇのか」
とは言え夢見の言葉である。念のため、浜辺を確認すべく視線を移した。戻した。
「おい速水! 浜辺でムキムキの手足が生えたお手玉の古妖が『最近の若い奴はけしからん、お手玉の一つもしない!』って叫びながら老若男女問わず水着を剥きまくってる! 覚者を派遣してくれ!」
いつも通り何かの調査の為に出張していた神林 瑛莉(nCL2000072)は、とある海沿いの街にいた。
夏の日差しに照らされた海がまぶしい。浜辺には、夏の日を謳歌する人々の姿が見える。
少々の羨ましさを感じつつ、手近にあった公衆電話で調査報告を始めた。オペレーターと一言二言あいさつを交わす。と、突然、オペレーターが誰かと何やら言い争い始めた。受話器から漏れ出る声から察するに、諍いの相手は夢見の少女、速水 結那(nCL2000114)のようだ。
結那が、受話器をオペレーターからひったくったらしい。とたん、わけのわからない事をまくしたて始めた。声色からは焦りと恐怖となんか色々な感情がない交ぜになった物が見て取れる。半泣きである。
「あ? どうした? ……はぁ? 何言ってんだ速水。浜辺でムキムキの手足が生えたお手玉の古妖が『最近の若い奴はけしからん、お手玉の一つもしない!』と叫びながら老若男女問わず水着を剥きまくっている? そりゃ予知じゃなくて普通に悪夢じゃねぇのか」
とは言え夢見の言葉である。念のため、浜辺を確認すべく視線を移した。戻した。
「おい速水! 浜辺でムキムキの手足が生えたお手玉の古妖が『最近の若い奴はけしからん、お手玉の一つもしない!』って叫びながら老若男女問わず水着を剥きまくってる! 覚者を派遣してくれ!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.古妖を追い返す。
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
何゛で゛こ゛う゛な゛る゛ん゛だ゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!゛
●敵について
ムキムキの手足が生えたお手玉の古妖
解説:ムキムキの手足が生えたお手玉の古妖。いわゆる付喪神の一種です。
攻撃方法
お手玉をする:お手玉をして心を安らげます。回復します。
水着を剥ぐ:水着を剥かれます。水着を剥かれたら恥ずかしさのあまり痺れます。
お手玉を投げつける:その鍛え抜かれた腕から放たれるお手玉は必殺の一撃です。具体的に言うと 物・遠・単 の攻撃です。
この古妖ですが、普通に殴って追い返してもいいですし、お手玉の腕を見せつけてもいいですし、水着脱いでもいいですし、なんかアメイジングな方法で追い返してくださっても構いません。
●重要情報
シナリオ開始時点のムキムキの手足が生えたお手玉の古妖は、水着を剥く事に執心しているため、覚者も水着を着ていなければ相手にされません。
なので、まずは水着を着てきてください。そして水着を着てきてください。老若男女は特に問いません。重要なのは水着です。
注意を引けたあとは普通の服でも大丈夫ですが、何やかんや理由をつけて剥こうとは思っています。
●援軍
神林瑛莉
皆さんが到着した時点で戦闘不能になって倒れています。
何があったのかはご想像にお任せします。
なお、戦闘終了後は皆で海で遊ぶ時間などありません。殺るか剥かれるかです。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年08月06日
2016年08月06日
■メイン参加者 6人■

●夏だ! 海だ! お手玉だ!
その日は雲一つない晴天で、まさに海水浴日和と言った天気だった。
青い空。
青い海。
光る砂浜。
赤いお手玉。
逃げ惑う人々。
赤いお手玉。
「海辺で水着着て遊ぶだけって聞いて来たんやけど……話が違うよな?」
『烏山椒』榊原 時雨(CL2000418)が言った。
いやいや、海辺で水着を着て(お手玉で)遊ぶ(ついでに脱がされる)……何も間違ってはいないですね。
「というか何なん、わけわからんわ! なんであの古妖水着剥ぐん!?」
「知らないの? 時雨ぴょん。古妖の間じゃ、気に入らない事があれば水着を剥くのが、むしろ常識なんだよ?」
なだめるように、楠瀬 ことこ(CL2000498)。
人間の常識と古妖の常識は、必ずしも一致しない。古妖と人類の間に少なくないトラブルが起きる所以である。
だから今回も、古妖としては至極真っ当な反応により起きた哀しい事件であるのだ。
「え、そうなん……?」
「そんなわけないじゃん」
そんなわけないじゃん。
「そうやろな! ちょっと勢いで納得しかけたうちがアホみたいやわ!」
地団太を踏む時雨と、それをみてケタケタと笑うことこ。
さて、そんな二人を尻目に、『駄天使(残念)』ナレル・アンゲロイ(CL2000956)は、ぶっ倒れてる神林瑛莉を指さして、言った。
「そんな事より、あそこに倒れているアヤツ、ほっといていいのかのう?」
うつぶせに倒れている瑛莉は、全裸だった。どうやらとりあえず殴り掛かって返り討ちにあって剥かれたらしい。かなしいなぁ。
「また、またひどい目にあっているんだね、神林……」
『火纏演武』鐡之蔵 禊(CL2000029)が、心底同情するように呟いた。
「また、って、この人いつもこんな感じなの?」
尋ねることこ。その言葉に、禊、『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)、『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)の三名は同時に頷いた。
「なんというか、神林だなぁ、って感じだよね……」
「無茶をするお方ですから……死にかけたりとかもありましたわ……」
「……よく、捕まったり……する……よね?」
視線をそらしながら、それぞれの、瑛莉についての意見を述べる三人。
それを聞きながら、ことこはなんだか悲しい物を見るような生暖かい視線で、倒れている瑛莉を見つめていた。
「かなしい奴じゃのう……」
空を仰ぎながら、ナレルが思わずぼやいた。
●せいいっぱいのゆりみずぎ
そんなことより!
「えーと、とりあえず……お手玉をして帰ってもらう、って作戦でいいのかな」
水着に着替えた禊が言った。さすが格闘技経験者、引き締まった身体と自慢のおみ足がまぶしい。眼福である。
「そうですわね……ただ、まず無事に近づけるかが怪しいのですけれど」
いのりは橙色のワンピース水着だ。すでに覚醒も済ませて居るため、17歳のメリハリのついたボディである。素晴らしい。
「んー、清純派あいどるとしては汚れ役はちょっと……それより時雨ぴょんで遊びたいー」
「ん? いまウチ『で』って言ったん?」
ことこの水着はタンキニの可愛らしい物だ。体躯は年齢相応と言った所か。今後の成長に期待させられる。
時雨もまた覚醒を済ませて居るため、20歳の姿だ。今回のメンバーの中で一番グラマラスかもしれない。イイネ!
「とりあえず、話しかけて、みよう……?」
瑛莉を木陰に避難させ、フリル付きの可愛いガウンを着せていたミュエルが言った。ちなみに彼女もすでに水着を着ている。彼女によく似合う、可愛らしいデザインの物だ。
「こういう依頼、慣れてるから……。慣れたくないのに、慣れちゃった、から……」
どこか悲壮感すら浮かべる笑顔で答えるミュエル。彼女のF.i.V.E.生活に何があったのだろうか。
「うむ、我様こーりんなのじゃ。我、お手玉とかよくわからんし、者共後は任せた~なのじゃ」
スクール水着を着てそう言ったのはナレルである。外見年齢的に一切違和感がないのが妙な背徳感をそそる。それはさておき、彼女はすっかりサボるつもりのようで、手には売店で購入したジュースなどを持っていたりする。
「オテダマ!!」
だがそんな彼女を戒めるように、突然お手玉古妖の剛腕からお手玉が放たれた! お手玉がナレルの腹部を襲う!
「なんのこのダブルシールドでうぐぅぅぅぅっ!」
直撃!
「は、腹パンは止めるのじゃ!」
こういうのも腹パンというのだろうか。兎に角、水着に着替えた一行は恐る恐るお手玉古妖の元へと向かう。
「お止めなさい!」
いのりが叫ぶ!
「水着!」
お手玉古妖が叫ぶ! その姿が一瞬にしてかき消えた! そして、それは最前列にいた禊の前に現れた!
「うええっ、あたし!?」
慌てて飛びずさる禊。だが、お手玉も早い! 2人が交差した次の瞬間、お手玉古妖のてには禊の水着が!
「し、しま……ううっ!」
慌ててうずくまる禊!
大丈夫、大事な所は見えません。アラタナルは全年齢だからね。
戦利品を掲げつつ、お手玉古妖が勝利の雄たけびを上げる!
「水着だ! 水着を! 剥かせろ!」
なんだこいつ、ひっでぇお手玉もいたもんだ。
「こいつ絶対水着剥きたいだけやん!」
思わず叫ぶ時雨。彼女の言う通りかもしれない。
「水着! お手玉! 水着!」
妙な叫び声をあげつつ、お手玉古妖が次の獲物を探し目を光らせる。
「清純派あいどるだから、脱ぐとかそーゆーのはご法度なの! 代わりにそこの時雨ぴょん存分に剥いていいから!」
一目散に最後列に逃げながら、ことこ。
「ちょ、ことこさんなに言うてんの!?」
慌てて逃げだす時雨。戦列は一瞬にして壊滅状態だ!
「おお、大変な事になっておるのう。我はこちらで隠れて応援を」
「オテダマ!!」
だがそんなナレルの腹部をお手玉が襲う!
「なんのこのダブルシールドでうぐぅぅぅぅっ!」
直撃! 命数使用!
「な、何で我だけ腹に執拗な攻撃を加えるのじゃ!」
何か腹パンしたいオーラの様なものが漂っているのかもしれない。
「おやめなさい! おーやーめーなーさーい!」
必死に叫ぶいのり。その声にようやく気付いたのか、お手玉古妖はいのりに視線を――目が無いので、まぁ多分、だと思うが――向けた。
「お手玉古妖さん、お手玉勝負とまいりましょう!」
言うや、いのりは籠と竿を取り出した。器用に籠と竿を連結し、砂浜に突き刺す。
「貴方は知らないかもしれませんが、現代で最もポピュラーお手玉遊」
「それ、玉入れだな?」
いのりの言葉を遮り、お手玉古妖が言った。
沈黙。
顔が無いお手玉古妖であるが、それ故に異様なプレッシャーを受ける。
思わず視線を逸らすいのり。
「………………はい」
はい。
「水着!」
「くっ、くうっ!!」
いのりも水着を剥かれる! 詳しい描写は省かせてもらいますね、アラタナルは全年齢だから。羞恥に耐える表情が最高に可愛いって事だけ書いておきますね!
「あかん! こうなったらもうやるしかあらへん! 剥いでいいのは剥がれる覚悟のある奴だけや!」
お手玉の何を剥ぐつもりなのか、もしかして外皮とかなのだろうか、兎に角半ば混乱しつつ、獲物を手に叫ぶ時雨。
「ま、まって……ちゃんと、お手玉、してみよ……?」
ミュエルが時雨をなだめつつ、お手玉を取り出した。
「オテダマ……!」
お手玉古妖が明らかに反応する。
「仕方ないなぁ……ねぇねぇ古妖さん。ことこのお手玉、見てくれる?」
ことこの手の中で、器用にお手玉が上へ横へと飛び跳ねる。
「わぁ……ことこさん、上手……」
手拍子でリズムをとりつつ、ミュエルが感嘆の声を上げた。
「古妖、さん……あの、アタシは、やったこと、ないから……おしえて、欲しい、な……」
小首をかしげつつ、ミュエルがお手玉古妖の手を取った。かわいい。惚れそう。
「おお……おお……オテダマ……!」
涙声で――涙は出てないのだが――お手玉古妖が頷く。
かくして、その後しばらく、覚者と古妖によるお手玉遊びが続いたのだった。
「……チョロイ奴じゃのう……」
ナレルさん、しーっ!
●その結末
「ご迷惑をおかけしました……」
意外と腰の低い感じで、古妖はぺこぺこと頭を下げ始めた。
本人が言うには、お手玉が子供達に見向きもされなくなってしまった現状への怒りから、つい水着を剥いてしまったという。
「いや、絶対おかしいて、その理屈」
時雨が思わずぼやく。言葉にこそ出さなかったが、その場にいる覚者達全員が、内心時雨に同意した。
「それでは、私はこの辺で……あ、今日はお手玉楽しかったです。また来ますね!」
爽やかに手を振りながら去っていく古妖。
内心、二度と来ないでほしいなぁ、と思いつつ、覚者達はその姿を見送ったのだった。
かくして、覚者達は無事古妖を追い返すことに成功した。
失ったものと得たものと失ったものを噛みしめつつ、彼らは帰路に
「やだー! 遊ぶ! ここまで来たんだから遊ぶのー!」
モノローグを思いっきり無視し走り出すことこ。まだ日は落ちきっていないし、平穏を取り戻したビーチにはまた客が戻っている。戦闘後に遊べないって書いたけどまぁいいか! 海だし! 簡単ネタ依頼だし!
「ほら、時雨ぴょん、いくよー!」
「ちょ、ことこさん、あんま引っ張らんといて! 所で、隠しカメラとかしかけてへんよな?」
時雨の手を引きながらかけていくことこ。2人は波打ち際でパシャパシャと水を掛け合って遊び始めた。
一方、ナレルはビーチチェアに腰かけ、ジュースなどを片手に、
「ふう、疲れたのじゃ……なぜ我が働かなければならなかったのじゃろう。と言うか今回、我、腹パンされただけじゃなかろうか……?」
すみません。
「神林、その……流石につらかったよね……」
顔を真っ赤にして放心している瑛莉を気遣うように、禊が言った。
とは言え、瑛莉が顔を真っ赤にしているのは、全裸にされたというよりは、着せてもらったミュエルの私物の可愛いガウンが気恥ずかしいという気持ちが強いのかもしれない。
「鐡之蔵……オレさ……なんかこう、もう何も怖い物はないなぁ、って」
自嘲気味に呟く瑛莉。
「愚痴ならお聞きしますわ……」
いのりが頷きながら言う。
「え、えと……こういう事も、よくあるから……頑張ろう、ね?」
どこか悟ったような表情で、ミュエルが言った。
古妖の去ったビーチに、喜びと悲しみ、様々な声が響く。いや、悲しみの感情はごく一部ではあるけれど。
いずれにしても、海辺の危機は去ったのだった。
それでは、来年の水着○○依頼にご期待ください。
その日は雲一つない晴天で、まさに海水浴日和と言った天気だった。
青い空。
青い海。
光る砂浜。
赤いお手玉。
逃げ惑う人々。
赤いお手玉。
「海辺で水着着て遊ぶだけって聞いて来たんやけど……話が違うよな?」
『烏山椒』榊原 時雨(CL2000418)が言った。
いやいや、海辺で水着を着て(お手玉で)遊ぶ(ついでに脱がされる)……何も間違ってはいないですね。
「というか何なん、わけわからんわ! なんであの古妖水着剥ぐん!?」
「知らないの? 時雨ぴょん。古妖の間じゃ、気に入らない事があれば水着を剥くのが、むしろ常識なんだよ?」
なだめるように、楠瀬 ことこ(CL2000498)。
人間の常識と古妖の常識は、必ずしも一致しない。古妖と人類の間に少なくないトラブルが起きる所以である。
だから今回も、古妖としては至極真っ当な反応により起きた哀しい事件であるのだ。
「え、そうなん……?」
「そんなわけないじゃん」
そんなわけないじゃん。
「そうやろな! ちょっと勢いで納得しかけたうちがアホみたいやわ!」
地団太を踏む時雨と、それをみてケタケタと笑うことこ。
さて、そんな二人を尻目に、『駄天使(残念)』ナレル・アンゲロイ(CL2000956)は、ぶっ倒れてる神林瑛莉を指さして、言った。
「そんな事より、あそこに倒れているアヤツ、ほっといていいのかのう?」
うつぶせに倒れている瑛莉は、全裸だった。どうやらとりあえず殴り掛かって返り討ちにあって剥かれたらしい。かなしいなぁ。
「また、またひどい目にあっているんだね、神林……」
『火纏演武』鐡之蔵 禊(CL2000029)が、心底同情するように呟いた。
「また、って、この人いつもこんな感じなの?」
尋ねることこ。その言葉に、禊、『二兎の救い手』秋津洲 いのり(CL2000268)、『ホワイトガーベラ』明石 ミュエル(CL2000172)の三名は同時に頷いた。
「なんというか、神林だなぁ、って感じだよね……」
「無茶をするお方ですから……死にかけたりとかもありましたわ……」
「……よく、捕まったり……する……よね?」
視線をそらしながら、それぞれの、瑛莉についての意見を述べる三人。
それを聞きながら、ことこはなんだか悲しい物を見るような生暖かい視線で、倒れている瑛莉を見つめていた。
「かなしい奴じゃのう……」
空を仰ぎながら、ナレルが思わずぼやいた。
●せいいっぱいのゆりみずぎ
そんなことより!
「えーと、とりあえず……お手玉をして帰ってもらう、って作戦でいいのかな」
水着に着替えた禊が言った。さすが格闘技経験者、引き締まった身体と自慢のおみ足がまぶしい。眼福である。
「そうですわね……ただ、まず無事に近づけるかが怪しいのですけれど」
いのりは橙色のワンピース水着だ。すでに覚醒も済ませて居るため、17歳のメリハリのついたボディである。素晴らしい。
「んー、清純派あいどるとしては汚れ役はちょっと……それより時雨ぴょんで遊びたいー」
「ん? いまウチ『で』って言ったん?」
ことこの水着はタンキニの可愛らしい物だ。体躯は年齢相応と言った所か。今後の成長に期待させられる。
時雨もまた覚醒を済ませて居るため、20歳の姿だ。今回のメンバーの中で一番グラマラスかもしれない。イイネ!
「とりあえず、話しかけて、みよう……?」
瑛莉を木陰に避難させ、フリル付きの可愛いガウンを着せていたミュエルが言った。ちなみに彼女もすでに水着を着ている。彼女によく似合う、可愛らしいデザインの物だ。
「こういう依頼、慣れてるから……。慣れたくないのに、慣れちゃった、から……」
どこか悲壮感すら浮かべる笑顔で答えるミュエル。彼女のF.i.V.E.生活に何があったのだろうか。
「うむ、我様こーりんなのじゃ。我、お手玉とかよくわからんし、者共後は任せた~なのじゃ」
スクール水着を着てそう言ったのはナレルである。外見年齢的に一切違和感がないのが妙な背徳感をそそる。それはさておき、彼女はすっかりサボるつもりのようで、手には売店で購入したジュースなどを持っていたりする。
「オテダマ!!」
だがそんな彼女を戒めるように、突然お手玉古妖の剛腕からお手玉が放たれた! お手玉がナレルの腹部を襲う!
「なんのこのダブルシールドでうぐぅぅぅぅっ!」
直撃!
「は、腹パンは止めるのじゃ!」
こういうのも腹パンというのだろうか。兎に角、水着に着替えた一行は恐る恐るお手玉古妖の元へと向かう。
「お止めなさい!」
いのりが叫ぶ!
「水着!」
お手玉古妖が叫ぶ! その姿が一瞬にしてかき消えた! そして、それは最前列にいた禊の前に現れた!
「うええっ、あたし!?」
慌てて飛びずさる禊。だが、お手玉も早い! 2人が交差した次の瞬間、お手玉古妖のてには禊の水着が!
「し、しま……ううっ!」
慌ててうずくまる禊!
大丈夫、大事な所は見えません。アラタナルは全年齢だからね。
戦利品を掲げつつ、お手玉古妖が勝利の雄たけびを上げる!
「水着だ! 水着を! 剥かせろ!」
なんだこいつ、ひっでぇお手玉もいたもんだ。
「こいつ絶対水着剥きたいだけやん!」
思わず叫ぶ時雨。彼女の言う通りかもしれない。
「水着! お手玉! 水着!」
妙な叫び声をあげつつ、お手玉古妖が次の獲物を探し目を光らせる。
「清純派あいどるだから、脱ぐとかそーゆーのはご法度なの! 代わりにそこの時雨ぴょん存分に剥いていいから!」
一目散に最後列に逃げながら、ことこ。
「ちょ、ことこさんなに言うてんの!?」
慌てて逃げだす時雨。戦列は一瞬にして壊滅状態だ!
「おお、大変な事になっておるのう。我はこちらで隠れて応援を」
「オテダマ!!」
だがそんなナレルの腹部をお手玉が襲う!
「なんのこのダブルシールドでうぐぅぅぅぅっ!」
直撃! 命数使用!
「な、何で我だけ腹に執拗な攻撃を加えるのじゃ!」
何か腹パンしたいオーラの様なものが漂っているのかもしれない。
「おやめなさい! おーやーめーなーさーい!」
必死に叫ぶいのり。その声にようやく気付いたのか、お手玉古妖はいのりに視線を――目が無いので、まぁ多分、だと思うが――向けた。
「お手玉古妖さん、お手玉勝負とまいりましょう!」
言うや、いのりは籠と竿を取り出した。器用に籠と竿を連結し、砂浜に突き刺す。
「貴方は知らないかもしれませんが、現代で最もポピュラーお手玉遊」
「それ、玉入れだな?」
いのりの言葉を遮り、お手玉古妖が言った。
沈黙。
顔が無いお手玉古妖であるが、それ故に異様なプレッシャーを受ける。
思わず視線を逸らすいのり。
「………………はい」
はい。
「水着!」
「くっ、くうっ!!」
いのりも水着を剥かれる! 詳しい描写は省かせてもらいますね、アラタナルは全年齢だから。羞恥に耐える表情が最高に可愛いって事だけ書いておきますね!
「あかん! こうなったらもうやるしかあらへん! 剥いでいいのは剥がれる覚悟のある奴だけや!」
お手玉の何を剥ぐつもりなのか、もしかして外皮とかなのだろうか、兎に角半ば混乱しつつ、獲物を手に叫ぶ時雨。
「ま、まって……ちゃんと、お手玉、してみよ……?」
ミュエルが時雨をなだめつつ、お手玉を取り出した。
「オテダマ……!」
お手玉古妖が明らかに反応する。
「仕方ないなぁ……ねぇねぇ古妖さん。ことこのお手玉、見てくれる?」
ことこの手の中で、器用にお手玉が上へ横へと飛び跳ねる。
「わぁ……ことこさん、上手……」
手拍子でリズムをとりつつ、ミュエルが感嘆の声を上げた。
「古妖、さん……あの、アタシは、やったこと、ないから……おしえて、欲しい、な……」
小首をかしげつつ、ミュエルがお手玉古妖の手を取った。かわいい。惚れそう。
「おお……おお……オテダマ……!」
涙声で――涙は出てないのだが――お手玉古妖が頷く。
かくして、その後しばらく、覚者と古妖によるお手玉遊びが続いたのだった。
「……チョロイ奴じゃのう……」
ナレルさん、しーっ!
●その結末
「ご迷惑をおかけしました……」
意外と腰の低い感じで、古妖はぺこぺこと頭を下げ始めた。
本人が言うには、お手玉が子供達に見向きもされなくなってしまった現状への怒りから、つい水着を剥いてしまったという。
「いや、絶対おかしいて、その理屈」
時雨が思わずぼやく。言葉にこそ出さなかったが、その場にいる覚者達全員が、内心時雨に同意した。
「それでは、私はこの辺で……あ、今日はお手玉楽しかったです。また来ますね!」
爽やかに手を振りながら去っていく古妖。
内心、二度と来ないでほしいなぁ、と思いつつ、覚者達はその姿を見送ったのだった。
かくして、覚者達は無事古妖を追い返すことに成功した。
失ったものと得たものと失ったものを噛みしめつつ、彼らは帰路に
「やだー! 遊ぶ! ここまで来たんだから遊ぶのー!」
モノローグを思いっきり無視し走り出すことこ。まだ日は落ちきっていないし、平穏を取り戻したビーチにはまた客が戻っている。戦闘後に遊べないって書いたけどまぁいいか! 海だし! 簡単ネタ依頼だし!
「ほら、時雨ぴょん、いくよー!」
「ちょ、ことこさん、あんま引っ張らんといて! 所で、隠しカメラとかしかけてへんよな?」
時雨の手を引きながらかけていくことこ。2人は波打ち際でパシャパシャと水を掛け合って遊び始めた。
一方、ナレルはビーチチェアに腰かけ、ジュースなどを片手に、
「ふう、疲れたのじゃ……なぜ我が働かなければならなかったのじゃろう。と言うか今回、我、腹パンされただけじゃなかろうか……?」
すみません。
「神林、その……流石につらかったよね……」
顔を真っ赤にして放心している瑛莉を気遣うように、禊が言った。
とは言え、瑛莉が顔を真っ赤にしているのは、全裸にされたというよりは、着せてもらったミュエルの私物の可愛いガウンが気恥ずかしいという気持ちが強いのかもしれない。
「鐡之蔵……オレさ……なんかこう、もう何も怖い物はないなぁ、って」
自嘲気味に呟く瑛莉。
「愚痴ならお聞きしますわ……」
いのりが頷きながら言う。
「え、えと……こういう事も、よくあるから……頑張ろう、ね?」
どこか悟ったような表情で、ミュエルが言った。
古妖の去ったビーチに、喜びと悲しみ、様々な声が響く。いや、悲しみの感情はごく一部ではあるけれど。
いずれにしても、海辺の危機は去ったのだった。
それでは、来年の水着○○依頼にご期待ください。

■あとがき■
本シナリオにおけるMVPとは「most valuable ぽんぽんにダメージを負った選手」です。
