【FiVE村】新規開拓計画
●漁師町を救え
「皆さん、どうか私に……いえ、我が町の漁民に力を貸してください!」
選挙に勝利したベン区長を囲んでプリンスやゲイルたちがサンバのリズムで踊り狂っていた所に、対抗馬であったところの逸見レンが飛び込んできたのがコトの発端である。
「今、我が区の漁師町は壊滅の危機に瀕しています。
皆さんもご存じでしょうが、海漁は妖の発生によって大きな打撃を受けました。昔は漁師民も多く居た町も今や……」
所変わってマックス村(通称ファイヴ村)の集会場。
いつものメンバーが囲む中で、逸見は現状を語っていた。
妖が日本に発生してから25年余り。しかしその対策はまるでとれておらず、一次産業には致命的な打撃を与えてもいた。
勿論海で大量の妖がオイデオイデしているわけではない。人の少ないところにわざわざ出ないらしいので、漁師が被害に遭うことは少ないのだが……もし一度でも遭遇すれば死亡は確定。船は全損。漁師個人だけでなく家族や組合全体に打撃が走り、このままではやっていけないと養殖業に移行する者が増えだしたという。
「おかげで天然魚の価格は高騰。天然を偽って販売する闇業者まで出始めて……もはや地方政治の手に負える段階ではないと思われていました」
しかし、そんな現状を実際に打開して見せたのがマックス村である。
最初は『王子マッチョマックス村』とか言い始めてこの人たち何考えてるんだろうと思ったが、調べて見れば妖によって壊滅した村を自力で駆除・清掃し、今や百人規模の村にまで押し上げているというではないか。
「妖が頻出するせいで封鎖されている区域があります。そこを一旦モデルとして、皆さんのお力を貸して頂けませんでしょうか」
「皆さん、どうか私に……いえ、我が町の漁民に力を貸してください!」
選挙に勝利したベン区長を囲んでプリンスやゲイルたちがサンバのリズムで踊り狂っていた所に、対抗馬であったところの逸見レンが飛び込んできたのがコトの発端である。
「今、我が区の漁師町は壊滅の危機に瀕しています。
皆さんもご存じでしょうが、海漁は妖の発生によって大きな打撃を受けました。昔は漁師民も多く居た町も今や……」
所変わってマックス村(通称ファイヴ村)の集会場。
いつものメンバーが囲む中で、逸見は現状を語っていた。
妖が日本に発生してから25年余り。しかしその対策はまるでとれておらず、一次産業には致命的な打撃を与えてもいた。
勿論海で大量の妖がオイデオイデしているわけではない。人の少ないところにわざわざ出ないらしいので、漁師が被害に遭うことは少ないのだが……もし一度でも遭遇すれば死亡は確定。船は全損。漁師個人だけでなく家族や組合全体に打撃が走り、このままではやっていけないと養殖業に移行する者が増えだしたという。
「おかげで天然魚の価格は高騰。天然を偽って販売する闇業者まで出始めて……もはや地方政治の手に負える段階ではないと思われていました」
しかし、そんな現状を実際に打開して見せたのがマックス村である。
最初は『王子マッチョマックス村』とか言い始めてこの人たち何考えてるんだろうと思ったが、調べて見れば妖によって壊滅した村を自力で駆除・清掃し、今や百人規模の村にまで押し上げているというではないか。
「妖が頻出するせいで封鎖されている区域があります。そこを一旦モデルとして、皆さんのお力を貸して頂けませんでしょうか」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.逸見のお願いを聞いてみる
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
テーマ:古妖と共存する村
村名:マックス村(別名ファイブ村)
建物:役場諸々、民家複数、仮住まい用長屋
農業:エアルーム野菜(初歩)、再規模野菜畑、田園(米と麦)
酪農:鶏(卵)、山羊(乳)、牛(乳)、牛(食肉)
住民:もうすぐ百人規模
勧誘:ぬりかべ、一反木綿、青女房、辰巳、一つ目小僧、すねこすり、木の子
水道光熱:上下水と電気を確保。
セキュリティ:覚者2班レベル
資金源:すねこすり移動動物園(グッズ販売のみ)、小僧の豆腐屋、山羊牧場(中)、畑の野菜(安定供給可能)、ファイヴ村食堂(準備段階)
ニュース:古妖特区申請によりまずは村内の古妖に人権が付与されます。税金や奨学金利子などが免除され、道路などの公共設備に投資がなされました。
==============================
今回のシナリオは2パートに分かれます。
●第一パート
第一パートは封鎖区域の妖退治です。
逸見に託された元漁村は、半魚人型の動物系妖(ランク1)がうろつくせいで封鎖されています。
まずはこの妖を撃滅し、このエリアを開放しましょう。
数は3体。モリで突くなどの攻撃を行ないます。
また、ファイブ村の山向こうの土地に心霊系妖(ランク1)がうろついているという報告があります。場所を動かないので村に被害はありませんが、これを撃滅すれば土地を格安で譲ってくれるという話がまとまっています。
戦力的に余裕を感じたらこちらに人員を回してもいいかもしれません。
数は1体。草刈り鎌で襲ってきます。
●第二パート
ここからは割と自由行動です。
ガイドラインとしては、開放した漁村エリアをかつてのファイヴ村のように整備することです。
古妖特区の申請が通る頃なので、数人の古妖を移すことでインフラの整備を順次整えてくれることでしょう。
ただし古妖だけの村になると近隣住民が怖がるので、ファイブ村の理念的にも人も移して共存させたい所です。
また自由行動パートなので、『私の担当はココだな!』という自覚がある方はそこに集中してください。あっちこっち行ってるとマンパワーが不足しますし、なにより描写が統合されて減ります。
村は今のところ住民が足りており、管理者である皆さんが直接作業をすることなく色々なものが回っています。工事や農業その他諸々です。
ですがあえて原点に立ち返り、畑で農業とかしてみるのもいいかもしれません。それだけの余裕は既にできていますし、住民のモチベーションもあがります。ちなみに今は夏野菜の時期です。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2016年08月01日
2016年08月01日
■メイン参加者 8人■

●新規開拓計画
鉄柵によって封鎖された漁村の中を、半魚人めいた妖があてどなくさまよっていた。
視力が低いのか時折壁にぶつかる者までいる始末だが、どうやら耳はいいらしい。
集団に近づいてくる足音を察知して、妖たちは一斉に振り向いた。
と同時に。
「くらえっ!」
ダブルブレードを閃かせた『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)が、妖の首を三ついっぺんにはねて見せた。
妖が消滅し、代わりに魚の死体がびたびたと地面に落ちる。
相手はただの人間ではない。それだけは認識できた妖たちはモリを手に戦闘を開始。聖華へと襲いかかる。
素早く飛び退き攻撃を回避する聖華。
中空で剣を閃かせ、襲い来る妖にカマイタチを発射。
先頭の一体をはねのけたと同時に、『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)が突撃を開始。数で押し切ろうとしていた妖たちに巨大な注射器を棍棒のごとく叩き付けた。
そのワンスイングで妖の先頭集団が一斉に吹き飛ばされる。
「このくらいなら、なんとか倒しきれそうだね!」
「んっ! こいつら倒して、今度は漁村で古妖と人間の絆を築くぜ! なあ皆!」
振り向く聖華。
それに応えるように、プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)と『希望峰』七海 灯(CL2000579)が妖集団へと攻撃を開始した。
ある者は叩きつぶし、ある者は切り刻み、圧倒的なパワーを見せつける覚者たち。
だがその中には、ファイヴ村からやってきた戦闘古妖チームも混ざっていた。
……という言い方をするとなんか壮大だが。
「戦える古妖、二人だけだったんだね」
渚は丸太みたいな注射器をがっつんがっつん妖に叩き付けるというあんまりヒロインっぽくない戦い方をしながら呟いた。ちなみにこれをさしてプリンスは『丸太フルート戦法』と呼んでいた。なんだそれ。
「ファイヴ村(マックス村側)には古妖が増えてるからちょっとくらいはって思ったけど……」
今現在。村で戦闘可能と自己申告している古妖はぬりかべと一反木綿の二人のみである。新生ぬりかべ団のみである。他の面々は大体『ゲル状に溶ける』とか『頭がパカパカ開く』とか『つま先を煎じて飲むと二日酔いが治る』とか戦闘と全然関係ない能力の古妖ばかりである。逆に言うと、そういう古妖たちだからファイヴ村を頼って来たようなものだ。
「ただ、まあ……この光景は特殊だよね」
壁状になって古妖を叩きつぶしたり巻き付いたりしてる様は(村人が見てないとはいえ)結構なモンだった。それでもやっぱり傷つくし命数とかそういうの無いので、鈴白 秋人(CL2000565)が一生懸命回復させて温存しているところである。
実はかなり重要な話なので覚えて置いて欲しいのだが、戦闘が可能な古妖に外敵の駆除なんかを任せておくと、命数も魂もないぶん気づいたら何人か死んでたってコトになりかねないので気をつけよう。
「噂には聞いていたが……訪れてみると斬新だな」
そんな中で、比較的新顔の水蓮寺 静護(CL2000471)。
ファイヴ村の歴代管理者メンバーはちょこちょこ入れ替わっているので珍しいことではない。静護は周囲の妖を目測で数え、腰の刀に手をかけた。僅かに抜くと、妖気がぶわりと漏れ広がる。
「事件台になってもらおう。この絶海――そして新たな構えのな!」
「「ギー!」」
ちょこざいな。とでも言うように飛びかかっていく妖たち。
静護は迎え撃っての大上段振り下ろし。剣術としては舐めプレイに等しいが、彼の肉体からあふれる様々なエネルギーがそのまま破壊力となり、襲い来る妖を武器ごと身体ごと左右真っ二つに切断してしまった。
返す刀で背後から迫る妖を上下真っ二つに切断。
一度閉じていた目を開き、静護は静かに呟いた。
「かつてない手応え……流石だ」
一方その頃、マックス村の裏にある山では『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)と『田中と書いてシャイニングと読む』ゆかり・シャイニング(CL2001288)が妖との戦闘を繰り広げていた。
「漁村の復興だなんて、ホントに大事になってきたわね」
「村人一人から始めたとは思えないくらい栄えましたね!」
まあ戦闘と言っても、結構なレベルになった覚者が二人がかりでバスバスとビームやアイススパイクやらを叩き込むというシューティングゲームみたいな状態である。
戦闘というより駆除に近い。
こっちに戦力を回した分、漁村側が心配ではあったが、古妖たち(新生ぬりかべ団)による戦力補充もあったし、呼んでもいないのになんかアマゾネスたちが駆けつけたおかげで戦力は割と整っていた。
なんやかんやで最後の妖を倒したエメレンツィアたちのもとへ、スーツをラフに着こなしたベンがやってきた。
「エメ姐さん! ゆかシャイ! やってる!?」
「終わったとこでーす!」
●この山を何に使おうか
引き続いてのエメ姐さんパートである。
ベンと一緒に海側へ向かったゆかシャイたちと入れ替わりに、山の開拓担当者たちが集まっていた。
「ダモ君、今日もお願いね」
「粉塵処理はまかせるんだモ」
山の開き方はこれまでと同じだ。重機を使ってあれやこれやを撤去して、土をならしていく。覚者や古妖がいくら逸脱していても、地球の大地に作物を芽吹かせるには大きな苦労が必要になる。それは皆同じなのだ。
いっそ私も重機資格とろうかしら、みたいなことを考えつつエメレンツィアは土地の所有者から権利書を受け取っていた。
話によれば、地元住民の墓が近くにあるのでそこに妖が取り憑いたのでは、とのことだ。妖はウィルスみたいになんでも妖化してしまうので、なにが妖になるかわかったもんではない。とはいえ後の憂いをなくすべく、エメレンツィアはお祓いの手配も進めていった。
「……それにしても、ガーデニングの趣味がこんなことに発展するなんて、人生は分からないわね」
彼女によって開かれた土地は、今後の農業に活用されていくだろう。
その使い方は、それこそ自分たちで決めていくのだ。
●サザナミ村
「到着!」
軽トラックからしゅたっと飛び降りたゆかりは、Y字ポーズで胸を張った。
そばには手作りの看板がたち、『サザナミ村にようこそ』と書かれている。
その更に横では『ここはサザナミ村だよ』としか喋らない古妖が頑なに突っ立っていた。
「もう古妖が入ってきてるんですね……これならあの子も早くなじめそうかも」
受け入れられやすそうという理由でマックス村から木の子を連れてきていたゆかりたちだが、この分だと比較的早くなじむだろう。
うんうんと頷くゆかり。
「さてと、王子からの通信はまだですかね……おっと」
これはゆかりに届いた送受心映像である。
「夏だよ! 海だよ! 民のみんな! 新たな所領サマーマッチョマックス村にィ……?」
数秒顔芸をしてから、拳を下から上に振り上げるプリンス。
「出てこいやァ!」
「「ファー!」」
プリンスの周囲から飛び出す有象無象の仲間たち。
元々さっきの漁村に住んでいた漁師(今は養殖業)や、ヒモを持っててくれればふよふよ飛んでられるという人面風船や、つま先を大根おろしでしょりしょりしてる巨大なウコンの根っこみたいなやつなどで構成された調査団である。
「ねえ貴公ー、余飛べる人か泳げる人って言ったよね。っていうか誰きみ」
「アキウコンです……」
「ハルウコンです……」
「「船酔いをなおせます……」」
「便利!」
彼らは『王子大漁スピンドルGO号』って書かれた船で近海の調査に出ていた。つっても100メートル程度なのでまださわりである。
「ユカリッチ=サン、聞こえるかい? かゆ……うま……かゆ……うま……」
「なんか、かゆうましか聞こえてこない……」
陸地でげっそりするゆかり。
『かゆ……うま……あじ……うま……』
「あじ?」
『うに……うま……うま……ウッマーイ!』
「食べてる!? 王子ー! おみやげー! ユカリッチにもおみやげっちー!」
頭を抱えてシェイクするゆかり。
一方王子は嫌がらせかってくらいとれたてウニのうまさについて語り続けた。
「プリンスたちが海の調査に出てる間に、村の修理だぜ!」
「「イエーッ!」」
先月ナンパしてきた工事作業員のおっさんたちと共に、聖華は廃墟化した村の修復にとりかかっていた。
工事用ヘルメットを被り、ノートを片手に周囲を観察する静護。
「数年は放置されていたようだが、建物の劣化はすくないようだな。多少修理すればそのまま使えるだろう。ダメなのは小物類だな。金属製品はほぼさびて使えない。リサイクルができればいいが……」
「だってさ、頑張ろうぜ!」
「「イエーッ!」」
盛り上がる聖華とガテンボーイズ。よく見ると、中にちらほら動くマネキンとか足の生えたマグロとかが混ざっていて、軽く妖怪フォルムが浸食している。
「本当に……斬新な村だ……」
静護がファイヴ村の古妖たちに触れて強く学んだのは、『古妖は大したことない』ということである。
言葉の響きや雑さのせいで全部まとめて超人的な神や悪魔のたぐいを想像しがちだが、大抵の古妖は『足の生えたタンス』とか『喋る豆腐』とかそういうのである。下手すると小動物よりか弱いし、なんもできない奴もザラなのだ。
超人的なイメージがついているのは恐らく、ファイヴが出動するレベルの古妖が大抵災害クラスの何かだからだろう。小規模な古妖は活動趣旨からしてかなり目に付かないのだ。
しかし豆腐がしゃべれるなら車に乗せて呼びかけ宣伝ができるし、タンスが走るなら出前に行ける。上手に能力の活用法を見つけてやるのが、実はファイヴ村の素晴らしい所だったりもするのだ。
「皆が外で頑張ってるうちに、私たちもどんどん進めていこうね」
「うん……村が広がるなら、出来ることも増えるしね」
マックス村に建設された食堂。そこでは秋人と渚が新しいメニューの開発に勤しんでいた。
といっても渚の仕事はここ三ヶ月のうちでとれたトマトやキュウリを使った夏野菜を陳列することである。
彼女の始めたエアルーム野菜はいわば家庭菜園のハイエンドモデルだ。村の各庭にわけて野菜を育て、中でも特に個性が際立ったものを残して増やす。これを繰り返して数年がかりで個性を育てるというなかなか気の長い商売である。
モノによっては土の劣化や天候不良によって途絶えてしまうが、そこは辰巳先生の力でどうにかなっているようだ。
「辰巳先生が天候を操るには体力を消耗するから、頻繁にはできないの。作物にとって致命的な気候になった時にだけ頼るようにしないとだね。範囲を広げるなら、頻度はもっと減らさないと」
そう言いながら持ってきたのはトマトのパッケージだ。
ベンのイラストがプリントされたパッケージにはポップな文字で『こようトマト』と書かれている。(ちなみに古妖の妖からとってあやかしトマトと名付けようとしたが、それだとさっき倒したような妖を連想してしまうのでとりやめた)
「これはね、見た目はいびつだけど美味しいよって売るの。見た目が人と違っても、仲良くなれる古妖が沢山居るんだよって……そんな気持ちから」
「そうだね。仲良くなれるのは、いいことだと思う」
一方で秋人が開発しているのはサザナミ村からとれる魚介類を使ったメニューだ。
あえてひねらずシンプルなメニューを作りつつ、徐々に料理の幅を増やしていくつもりだ。
「そういえば、そろそろ食堂の名前も考えないといけないね……」
「海を使った観光業も増えるし、どこから手をつけてもワクワクするね」
一方その頃。
「山側はマックス村。海側はサザナミ村。これらを総称して『ファイヴ村』と呼んでいます。私たちは新しい住民を歓迎しています。特に古妖の方ですと古妖特区としての優待内容として……」
集会場のそばに作られた事務所で灯が外からの客に対応していた。
ベンが調子のいい政治活動をバンバン続けた結果、ファイヴ村の評判がネットやローカルテレビを通じて全国に広まっていたらしいのだ。
おかげで灯は直接やってきた移住希望者や記者だけでなく、電話対応にまで追われている。
「えーと、古妖の『リモコン隠し』さんですね? リモコンが無くなって仕事ができないと……はい、大丈夫です。こちらではアミューズメント事業の展開を考えておりまして……」
とか。
「失礼ですがもう一度……はい、『カップ麺をシンクに流したときにボコンと音を立てる係』様ですね。旧式シンクも用意していますが、よろしければ海洋事業にご興味は……」
とか、そんな感じで一日が過ぎていく。
このままだと本格的なコールセンターが必要だ。
五華モールに乗っかって広告展開をした影響がこんな形で来るとは。
すっかりファイヴ村の広報担当になった灯は、スチールデスクの前でぎゅーっと背伸びをした。目の前にお茶が置かれる。
同じくコールセンター(仮)で働く女性村人レンさんがいれてくれたものだ。
「あ、これはどうも」
「いえいえ。それより七海さんにお話があると……そちらの方が」
「なんでしょう?」
振り返ると、受付所に老紳士が立っていた。
彼は名刺を取り出すと、こんな風に言う。
「突然ですが、鉱山に興味はございませんか」
●現在のファイヴ村
テーマ:古妖と共存する村
所属村:マックス村、サザナミ村
事業:米栽培、野菜栽培(大規模&AR)、酪農(中規模)、漁業(小)、飲食店(開店前)、すねっこキャラバン(グッズ販売)、豆腐屋(大幅進化中)
勧誘:ぬりかべ、一反木綿、青女房、辰巳、一つ目小僧、すねこすり、木の子
ニュース:ファイヴ村が自治体グループに進化しました。周辺自治体が活動内容に注目しています。
鉄柵によって封鎖された漁村の中を、半魚人めいた妖があてどなくさまよっていた。
視力が低いのか時折壁にぶつかる者までいる始末だが、どうやら耳はいいらしい。
集団に近づいてくる足音を察知して、妖たちは一斉に振り向いた。
と同時に。
「くらえっ!」
ダブルブレードを閃かせた『想い受け継ぎ‘最強’を目指す者』天楼院・聖華(CL2000348)が、妖の首を三ついっぺんにはねて見せた。
妖が消滅し、代わりに魚の死体がびたびたと地面に落ちる。
相手はただの人間ではない。それだけは認識できた妖たちはモリを手に戦闘を開始。聖華へと襲いかかる。
素早く飛び退き攻撃を回避する聖華。
中空で剣を閃かせ、襲い来る妖にカマイタチを発射。
先頭の一体をはねのけたと同時に、『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)が突撃を開始。数で押し切ろうとしていた妖たちに巨大な注射器を棍棒のごとく叩き付けた。
そのワンスイングで妖の先頭集団が一斉に吹き飛ばされる。
「このくらいなら、なんとか倒しきれそうだね!」
「んっ! こいつら倒して、今度は漁村で古妖と人間の絆を築くぜ! なあ皆!」
振り向く聖華。
それに応えるように、プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)と『希望峰』七海 灯(CL2000579)が妖集団へと攻撃を開始した。
ある者は叩きつぶし、ある者は切り刻み、圧倒的なパワーを見せつける覚者たち。
だがその中には、ファイヴ村からやってきた戦闘古妖チームも混ざっていた。
……という言い方をするとなんか壮大だが。
「戦える古妖、二人だけだったんだね」
渚は丸太みたいな注射器をがっつんがっつん妖に叩き付けるというあんまりヒロインっぽくない戦い方をしながら呟いた。ちなみにこれをさしてプリンスは『丸太フルート戦法』と呼んでいた。なんだそれ。
「ファイヴ村(マックス村側)には古妖が増えてるからちょっとくらいはって思ったけど……」
今現在。村で戦闘可能と自己申告している古妖はぬりかべと一反木綿の二人のみである。新生ぬりかべ団のみである。他の面々は大体『ゲル状に溶ける』とか『頭がパカパカ開く』とか『つま先を煎じて飲むと二日酔いが治る』とか戦闘と全然関係ない能力の古妖ばかりである。逆に言うと、そういう古妖たちだからファイヴ村を頼って来たようなものだ。
「ただ、まあ……この光景は特殊だよね」
壁状になって古妖を叩きつぶしたり巻き付いたりしてる様は(村人が見てないとはいえ)結構なモンだった。それでもやっぱり傷つくし命数とかそういうの無いので、鈴白 秋人(CL2000565)が一生懸命回復させて温存しているところである。
実はかなり重要な話なので覚えて置いて欲しいのだが、戦闘が可能な古妖に外敵の駆除なんかを任せておくと、命数も魂もないぶん気づいたら何人か死んでたってコトになりかねないので気をつけよう。
「噂には聞いていたが……訪れてみると斬新だな」
そんな中で、比較的新顔の水蓮寺 静護(CL2000471)。
ファイヴ村の歴代管理者メンバーはちょこちょこ入れ替わっているので珍しいことではない。静護は周囲の妖を目測で数え、腰の刀に手をかけた。僅かに抜くと、妖気がぶわりと漏れ広がる。
「事件台になってもらおう。この絶海――そして新たな構えのな!」
「「ギー!」」
ちょこざいな。とでも言うように飛びかかっていく妖たち。
静護は迎え撃っての大上段振り下ろし。剣術としては舐めプレイに等しいが、彼の肉体からあふれる様々なエネルギーがそのまま破壊力となり、襲い来る妖を武器ごと身体ごと左右真っ二つに切断してしまった。
返す刀で背後から迫る妖を上下真っ二つに切断。
一度閉じていた目を開き、静護は静かに呟いた。
「かつてない手応え……流石だ」
一方その頃、マックス村の裏にある山では『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)と『田中と書いてシャイニングと読む』ゆかり・シャイニング(CL2001288)が妖との戦闘を繰り広げていた。
「漁村の復興だなんて、ホントに大事になってきたわね」
「村人一人から始めたとは思えないくらい栄えましたね!」
まあ戦闘と言っても、結構なレベルになった覚者が二人がかりでバスバスとビームやアイススパイクやらを叩き込むというシューティングゲームみたいな状態である。
戦闘というより駆除に近い。
こっちに戦力を回した分、漁村側が心配ではあったが、古妖たち(新生ぬりかべ団)による戦力補充もあったし、呼んでもいないのになんかアマゾネスたちが駆けつけたおかげで戦力は割と整っていた。
なんやかんやで最後の妖を倒したエメレンツィアたちのもとへ、スーツをラフに着こなしたベンがやってきた。
「エメ姐さん! ゆかシャイ! やってる!?」
「終わったとこでーす!」
●この山を何に使おうか
引き続いてのエメ姐さんパートである。
ベンと一緒に海側へ向かったゆかシャイたちと入れ替わりに、山の開拓担当者たちが集まっていた。
「ダモ君、今日もお願いね」
「粉塵処理はまかせるんだモ」
山の開き方はこれまでと同じだ。重機を使ってあれやこれやを撤去して、土をならしていく。覚者や古妖がいくら逸脱していても、地球の大地に作物を芽吹かせるには大きな苦労が必要になる。それは皆同じなのだ。
いっそ私も重機資格とろうかしら、みたいなことを考えつつエメレンツィアは土地の所有者から権利書を受け取っていた。
話によれば、地元住民の墓が近くにあるのでそこに妖が取り憑いたのでは、とのことだ。妖はウィルスみたいになんでも妖化してしまうので、なにが妖になるかわかったもんではない。とはいえ後の憂いをなくすべく、エメレンツィアはお祓いの手配も進めていった。
「……それにしても、ガーデニングの趣味がこんなことに発展するなんて、人生は分からないわね」
彼女によって開かれた土地は、今後の農業に活用されていくだろう。
その使い方は、それこそ自分たちで決めていくのだ。
●サザナミ村
「到着!」
軽トラックからしゅたっと飛び降りたゆかりは、Y字ポーズで胸を張った。
そばには手作りの看板がたち、『サザナミ村にようこそ』と書かれている。
その更に横では『ここはサザナミ村だよ』としか喋らない古妖が頑なに突っ立っていた。
「もう古妖が入ってきてるんですね……これならあの子も早くなじめそうかも」
受け入れられやすそうという理由でマックス村から木の子を連れてきていたゆかりたちだが、この分だと比較的早くなじむだろう。
うんうんと頷くゆかり。
「さてと、王子からの通信はまだですかね……おっと」
これはゆかりに届いた送受心映像である。
「夏だよ! 海だよ! 民のみんな! 新たな所領サマーマッチョマックス村にィ……?」
数秒顔芸をしてから、拳を下から上に振り上げるプリンス。
「出てこいやァ!」
「「ファー!」」
プリンスの周囲から飛び出す有象無象の仲間たち。
元々さっきの漁村に住んでいた漁師(今は養殖業)や、ヒモを持っててくれればふよふよ飛んでられるという人面風船や、つま先を大根おろしでしょりしょりしてる巨大なウコンの根っこみたいなやつなどで構成された調査団である。
「ねえ貴公ー、余飛べる人か泳げる人って言ったよね。っていうか誰きみ」
「アキウコンです……」
「ハルウコンです……」
「「船酔いをなおせます……」」
「便利!」
彼らは『王子大漁スピンドルGO号』って書かれた船で近海の調査に出ていた。つっても100メートル程度なのでまださわりである。
「ユカリッチ=サン、聞こえるかい? かゆ……うま……かゆ……うま……」
「なんか、かゆうましか聞こえてこない……」
陸地でげっそりするゆかり。
『かゆ……うま……あじ……うま……』
「あじ?」
『うに……うま……うま……ウッマーイ!』
「食べてる!? 王子ー! おみやげー! ユカリッチにもおみやげっちー!」
頭を抱えてシェイクするゆかり。
一方王子は嫌がらせかってくらいとれたてウニのうまさについて語り続けた。
「プリンスたちが海の調査に出てる間に、村の修理だぜ!」
「「イエーッ!」」
先月ナンパしてきた工事作業員のおっさんたちと共に、聖華は廃墟化した村の修復にとりかかっていた。
工事用ヘルメットを被り、ノートを片手に周囲を観察する静護。
「数年は放置されていたようだが、建物の劣化はすくないようだな。多少修理すればそのまま使えるだろう。ダメなのは小物類だな。金属製品はほぼさびて使えない。リサイクルができればいいが……」
「だってさ、頑張ろうぜ!」
「「イエーッ!」」
盛り上がる聖華とガテンボーイズ。よく見ると、中にちらほら動くマネキンとか足の生えたマグロとかが混ざっていて、軽く妖怪フォルムが浸食している。
「本当に……斬新な村だ……」
静護がファイヴ村の古妖たちに触れて強く学んだのは、『古妖は大したことない』ということである。
言葉の響きや雑さのせいで全部まとめて超人的な神や悪魔のたぐいを想像しがちだが、大抵の古妖は『足の生えたタンス』とか『喋る豆腐』とかそういうのである。下手すると小動物よりか弱いし、なんもできない奴もザラなのだ。
超人的なイメージがついているのは恐らく、ファイヴが出動するレベルの古妖が大抵災害クラスの何かだからだろう。小規模な古妖は活動趣旨からしてかなり目に付かないのだ。
しかし豆腐がしゃべれるなら車に乗せて呼びかけ宣伝ができるし、タンスが走るなら出前に行ける。上手に能力の活用法を見つけてやるのが、実はファイヴ村の素晴らしい所だったりもするのだ。
「皆が外で頑張ってるうちに、私たちもどんどん進めていこうね」
「うん……村が広がるなら、出来ることも増えるしね」
マックス村に建設された食堂。そこでは秋人と渚が新しいメニューの開発に勤しんでいた。
といっても渚の仕事はここ三ヶ月のうちでとれたトマトやキュウリを使った夏野菜を陳列することである。
彼女の始めたエアルーム野菜はいわば家庭菜園のハイエンドモデルだ。村の各庭にわけて野菜を育て、中でも特に個性が際立ったものを残して増やす。これを繰り返して数年がかりで個性を育てるというなかなか気の長い商売である。
モノによっては土の劣化や天候不良によって途絶えてしまうが、そこは辰巳先生の力でどうにかなっているようだ。
「辰巳先生が天候を操るには体力を消耗するから、頻繁にはできないの。作物にとって致命的な気候になった時にだけ頼るようにしないとだね。範囲を広げるなら、頻度はもっと減らさないと」
そう言いながら持ってきたのはトマトのパッケージだ。
ベンのイラストがプリントされたパッケージにはポップな文字で『こようトマト』と書かれている。(ちなみに古妖の妖からとってあやかしトマトと名付けようとしたが、それだとさっき倒したような妖を連想してしまうのでとりやめた)
「これはね、見た目はいびつだけど美味しいよって売るの。見た目が人と違っても、仲良くなれる古妖が沢山居るんだよって……そんな気持ちから」
「そうだね。仲良くなれるのは、いいことだと思う」
一方で秋人が開発しているのはサザナミ村からとれる魚介類を使ったメニューだ。
あえてひねらずシンプルなメニューを作りつつ、徐々に料理の幅を増やしていくつもりだ。
「そういえば、そろそろ食堂の名前も考えないといけないね……」
「海を使った観光業も増えるし、どこから手をつけてもワクワクするね」
一方その頃。
「山側はマックス村。海側はサザナミ村。これらを総称して『ファイヴ村』と呼んでいます。私たちは新しい住民を歓迎しています。特に古妖の方ですと古妖特区としての優待内容として……」
集会場のそばに作られた事務所で灯が外からの客に対応していた。
ベンが調子のいい政治活動をバンバン続けた結果、ファイヴ村の評判がネットやローカルテレビを通じて全国に広まっていたらしいのだ。
おかげで灯は直接やってきた移住希望者や記者だけでなく、電話対応にまで追われている。
「えーと、古妖の『リモコン隠し』さんですね? リモコンが無くなって仕事ができないと……はい、大丈夫です。こちらではアミューズメント事業の展開を考えておりまして……」
とか。
「失礼ですがもう一度……はい、『カップ麺をシンクに流したときにボコンと音を立てる係』様ですね。旧式シンクも用意していますが、よろしければ海洋事業にご興味は……」
とか、そんな感じで一日が過ぎていく。
このままだと本格的なコールセンターが必要だ。
五華モールに乗っかって広告展開をした影響がこんな形で来るとは。
すっかりファイヴ村の広報担当になった灯は、スチールデスクの前でぎゅーっと背伸びをした。目の前にお茶が置かれる。
同じくコールセンター(仮)で働く女性村人レンさんがいれてくれたものだ。
「あ、これはどうも」
「いえいえ。それより七海さんにお話があると……そちらの方が」
「なんでしょう?」
振り返ると、受付所に老紳士が立っていた。
彼は名刺を取り出すと、こんな風に言う。
「突然ですが、鉱山に興味はございませんか」
●現在のファイヴ村
テーマ:古妖と共存する村
所属村:マックス村、サザナミ村
事業:米栽培、野菜栽培(大規模&AR)、酪農(中規模)、漁業(小)、飲食店(開店前)、すねっこキャラバン(グッズ販売)、豆腐屋(大幅進化中)
勧誘:ぬりかべ、一反木綿、青女房、辰巳、一つ目小僧、すねこすり、木の子
ニュース:ファイヴ村が自治体グループに進化しました。周辺自治体が活動内容に注目しています。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
