遺跡の中で目覚めた大亀
●遺跡に封印されていたのは……
奈良県のとある山中。
地滑りによって口を開いた遺跡の調査が、考古学者によって行われていた。
現在、内部から発見されているのは、勾玉4つ。崩れ落ちた入り口も発見され、そこに張られていた結界から、何かを封印した遺跡であることが判明してきている。
この調査の最中、内部に妖が現れるなどして、『F.i.V.E.』へ依頼が過去4度あった。
そのうち3度は、通路に現れた石人形の妖の討伐。
そして、1度は盗掘などを行う隔者が遺跡内に忍び込んだ。だが、遺跡内に張られた強力な封印によって、1人が破綻者となり、相方を殺害という状況。破綻者対処の依頼があった。
結果、石人形は覚者達によって撃破。破綻者も撃退したが、残念ながらその隔者は命を落としている。隔者達の遺体はその後、外に運び出されて手厚く埋葬されたそうだ。
ところで、現状、考古学者達が危機感を募らせているのは、遺跡内に立ち込める黒いもや。
前回、これを覚者の1人が採取して持ち帰ったのだが……。どうやら、妖を活性化させる効果があるらしい。
また、人体には効果がないと分析されていたが、それはあくまで、遺跡に漂う濃度のレベルでの話。それを持ち帰り、濃度を濃くした場合、ごくごく短時間だけではあるが、理性を奪う効果がある可能性が示唆されたのだ。
それもあって、遺跡は閉ざすべきではないかという議論も出だしていた矢先、とある夢見の予見で事態が動くこととなる。
そこは、『F.i.V.E.』の会議室。
「……依頼の話を始めるが、皆揃っておるかの?」
『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が集まった覚者を見回して話を始める。覚者の中には、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)の姿もあった。
「考古学者の調査していた遺跡で、学者達が妖に襲われるようなのじゃ」
襲ってくるのは、これまでと同様に岩人形のようだが、どうやらそれだけではないらしい。
「岩人形を操る何かが、遺跡の奥で眠っておったらしいの」
遺跡の奥の大広間に入るタイミングで、妖が襲ってくるようだ。事前にけいがこれを夢見の力で視ていなかったなら、学者達に死者すら出ていたかもしれない。
「現れる妖は、巨大な岩のような体をしておっての。遠目で見れば、カミツキガメのような風貌をしておるのがわかるはずじゃ」
幸いにも、そいつは目覚めたばかりではあるのだが、元がかなり強力な力を持った妖であることは間違いない。現状でもランクは3。しかも、その上位に位置するようだ。だからこそ、何者かの手でこの遺跡に封印されたのだと見られている。
また、その大亀の妖は、黒い瘴気を全身から放つことで岩人形を従えている。遺跡内に漂う黒いもやは、これが漏れ出たものだろう。最新の研究で、これが高密度のもや……いや、瘴気となると、理性を奪う効果があると確認されている。
「この大亀が力を取り戻すと、とんでもないことになりそうじゃな」
それだけの力、能力を持った妖だ。力を取り戻した場合、レベルは4に届く可能性すらある。だからこそ、力が完全でない今のうちに倒しておきたい。
「ささやかじゃが、学者達から報酬として、以前、彼らが回収した勾玉を渡すという話も出ておる。大変な依頼となるが、よろしく頼むのじゃ」
けいは改めて、覚者達に妖の討伐を依頼するのだった。
奈良県のとある山中。
地滑りによって口を開いた遺跡の調査が、考古学者によって行われていた。
現在、内部から発見されているのは、勾玉4つ。崩れ落ちた入り口も発見され、そこに張られていた結界から、何かを封印した遺跡であることが判明してきている。
この調査の最中、内部に妖が現れるなどして、『F.i.V.E.』へ依頼が過去4度あった。
そのうち3度は、通路に現れた石人形の妖の討伐。
そして、1度は盗掘などを行う隔者が遺跡内に忍び込んだ。だが、遺跡内に張られた強力な封印によって、1人が破綻者となり、相方を殺害という状況。破綻者対処の依頼があった。
結果、石人形は覚者達によって撃破。破綻者も撃退したが、残念ながらその隔者は命を落としている。隔者達の遺体はその後、外に運び出されて手厚く埋葬されたそうだ。
ところで、現状、考古学者達が危機感を募らせているのは、遺跡内に立ち込める黒いもや。
前回、これを覚者の1人が採取して持ち帰ったのだが……。どうやら、妖を活性化させる効果があるらしい。
また、人体には効果がないと分析されていたが、それはあくまで、遺跡に漂う濃度のレベルでの話。それを持ち帰り、濃度を濃くした場合、ごくごく短時間だけではあるが、理性を奪う効果がある可能性が示唆されたのだ。
それもあって、遺跡は閉ざすべきではないかという議論も出だしていた矢先、とある夢見の予見で事態が動くこととなる。
そこは、『F.i.V.E.』の会議室。
「……依頼の話を始めるが、皆揃っておるかの?」
『薄幸の男の娘』菜花・けい(nCL2000118)が集まった覚者を見回して話を始める。覚者の中には、『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)の姿もあった。
「考古学者の調査していた遺跡で、学者達が妖に襲われるようなのじゃ」
襲ってくるのは、これまでと同様に岩人形のようだが、どうやらそれだけではないらしい。
「岩人形を操る何かが、遺跡の奥で眠っておったらしいの」
遺跡の奥の大広間に入るタイミングで、妖が襲ってくるようだ。事前にけいがこれを夢見の力で視ていなかったなら、学者達に死者すら出ていたかもしれない。
「現れる妖は、巨大な岩のような体をしておっての。遠目で見れば、カミツキガメのような風貌をしておるのがわかるはずじゃ」
幸いにも、そいつは目覚めたばかりではあるのだが、元がかなり強力な力を持った妖であることは間違いない。現状でもランクは3。しかも、その上位に位置するようだ。だからこそ、何者かの手でこの遺跡に封印されたのだと見られている。
また、その大亀の妖は、黒い瘴気を全身から放つことで岩人形を従えている。遺跡内に漂う黒いもやは、これが漏れ出たものだろう。最新の研究で、これが高密度のもや……いや、瘴気となると、理性を奪う効果があると確認されている。
「この大亀が力を取り戻すと、とんでもないことになりそうじゃな」
それだけの力、能力を持った妖だ。力を取り戻した場合、レベルは4に届く可能性すらある。だからこそ、力が完全でない今のうちに倒しておきたい。
「ささやかじゃが、学者達から報酬として、以前、彼らが回収した勾玉を渡すという話も出ておる。大変な依頼となるが、よろしく頼むのじゃ」
けいは改めて、覚者達に妖の討伐を依頼するのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.全ての妖の撃破
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
遺跡の探索も今回は最後と思われますが、それも皆様の活躍次第です。
健闘を祈ります……!
●遺跡
山中にばっくりと口を開けた裂け目から、遺跡の通路に入ることができますが、
そこは正規の入口ではなく、ロープを伝って降りる形です。
突入後、考古学者達によって開通した、
遺跡北東方面の探索、妖の討伐を願います。
遺跡内部は現在、うっすらとですが、
黒いもやがかった何かに覆われています。
もやは大亀から漏れ出しているようですが、
遺跡内部に漂うレベルであれば、害は皆無と分析されています。
●敵
○大亀……生物系の妖、1体。
全身が石でできたカミツキガメのような外見をしており、
全長は5メートル以上あります。
まだ目覚めてさほど時間も経ってないとあって、全力が出せない様子です。
本気でない力でもランクは3相当、
その中でもかなり格上の力を持っています。
噛み砕き(物近列・虚弱)、体当たり(物近列[貫3・100・70・30]・溜め2)、
瘴気(特全・混乱)、地響き(物全・解除)を使用してきます。
○岩人形……自然系の妖、ランク2×4体
周囲の土と岩が3メートルほどの人型に固まり、動き出したものです。
パンチ(物近単・弱体)、踏み潰し(物近単・溜め2)、
石つぶて(特全・出血)を行使して来ます。
●状況
大亀は遺跡の北側の最奥にいます。
その部屋はこれまでになく大きな部屋で、
妖と覚者10名余りが入ってなお、余裕のある空間があります。
戦いとなれば、大亀は周囲の壁から石人形を呼び起こしてきます。
封印の為の呪符に覆われていたようですが、
遺跡の封印が弱まったことで自ら脱出してしまったようです。
現状は、近づく者に攻撃を仕掛けてくる状況です。
大亀が通るだけで、
遺跡通路は幅を占めてしまう状況もあってか、
大亀は完全に覚醒してから外に出る気のようです。
無事、妖を討伐した場合、
緋色の勾玉『物理の勾玉』を入手できます。
また、この予見もあって、
学者達は被害に遭うとされた日の調査を中止しております。
●NPC
○河澄・静音
参加いたします。
基本的には自分で考えて行動しますが、
何かして欲しいことがありましたら、
プレイングにて指示を出していただければと思います。
●補足
これまでのあらすじは全てOPに記載しておりますので、
読まなくとも、今シナリオには全く影響ございませんが、
拙作『封印の解けた遺跡』、『遺跡の内部に現れた通路』、
『遺跡に忍び込んだ隔者の末路』『最後の勾玉……?』
こちらもお手隙であらば、ご参照ください。
それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします!
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
金:1枚 銀:0枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
10/10
10/10
公開日
2016年07月24日
2016年07月24日
■メイン参加者 10人■

●遺跡の探索
奈良県某所の遺跡入り口。
「とても強い妖さんが、お相手だと伺いました……」
賀茂 たまき(CL2000994)が憂慮する後ろで、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が考える。25年前に現れたとされる妖。しかし、それ以前から妖はいたのではないか。
謎は色々とあるものの、推測の域を出ない。奏空はそれを確認すべくやってきていた。
『F.i.V.E.』の覚者達がこの遺跡を訪れるのは5度目。地滑りに端を発した探索は大詰めを迎える。
「ふふ、やはり一筋縄ではいかなかったわね」
「完全に力を取り戻す前に討つチャンスが出来たし、ちゃんと討伐して遺跡の役目を終わらせようか」
『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)がそんな会話をする。封じられていた存在、大亀を撃破するのが今回の目的だ。
「この妖さんが力を取り戻して外へ出てしまえば、大変な事になってしまいます……」
どれだけの被害がでるかなど、想像もしたくない。たまきの言葉に静音も頷いた。
「凜は黒いもやの原因がわかって、一安心なんよ」
遺跡内に漂うもやは妖を活性化させるという。茨田・凜(CL2000438)は自身に悪影響がないことにホッとしていたようだ。
一方で、初参加組。彼らも思い思いにこの場所へやってきている。
「今回の探索で得た事が少しでも、神秘解明に使う事が出来たら」
梶浦 恵(CL2000944)は以前から、遺跡探索に興味があったとのこと。
「妖を活性化させるもやとは、随分剣呑だな」
もやの発生源は大亀というから、如何ともしがたいと『約束』指崎 心琴(CL2001195)は主張する。知る為に封印を破ることに繋がった状況は難儀なものだ、と。
「まさか、奥にとてつもない奴が封印されていたとは」
「大亀……どこまでわたくしの力が通用するか。それも一興かと」
水蓮寺 静護(CL2000471)も傍で遺跡調査について知っていたが、いい予感がしていなかったそうだ。『優麗なる乙女』西荻 つばめ(CL2001243)は逆に自身の力を試すチャンスと捉えていた。
また、勾玉を確保する数少ない機会でもある。
「骨が折れそうだが、ここは確実に撃破しなければならない」
静護が仲間に檄を飛ばしていると。
「オー……、ここからロープで降りるノデスカ? 暗いデスネー……」
遺跡内に興味津々な、『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。スカートを穿いていることもあり、男性陣に後で降りるよう呼びかけていた。
遺跡内へと降り立った覚者達は、灯りで内部を照らす。
探索に皆勤参加の理央はもはや手馴れたもの。マッピング用の道具と前回までに作成した地図。探索の為の灯りを用意し、方位磁針で方角を確認しながら進む。
心琴も暗所をともしびで照らし、マッピングを行いつつ進む。ほぼほぼ、探索は前回までに済ませてはいる。目指す北、大亀が封印されていたという大部屋だ。
「ンー、けほっ……この黒いもやが色々と邪魔デスネー」
「平気とはいえ、なんとも気持ちが悪いものだな」
遺跡内にうっすらと黒いもやが漂うのを、リーネ、心琴が気にする。奏空はそれを吸い込まぬようにと濡れたハンカチを仕込んだマスクをつけていた。
リーネは足元にも気を払い、つばめも危険予知で罠の発見に努める。遺跡は所々崩れてはいたが、罠らしいものは見受けられない。
静護は改めて、以前調査を行っていたメンバーからこれまでの経緯を聞いていた。
「わざわざ四方の祭壇に祀っていた勾玉、実は封印の道具だったりしてね?」
エメレンツィアがそんな推論を立てる。入り口の封印が破られてからもやが現れたこともあったが、勾玉の力が働いていた可能性は否めない。
「でも、そのキレイな勾玉、頂いて帰るんよ」
凜はキラキラ光る包装のキャンディーをなめながら告げる。すでに3つは『F.i.V.E.』が回収し、1つは考古学者が持っている。その1つが今回の報酬だ。
たまきは土の心を使用し、遺跡の空間把握に努め、安全な通路を見つけ出そうと試みる。高い場所は翼人の静音に探索を任せていたようだ。
とはいえ、遺跡通路は静かなものだ。警戒には差はあれど、何事もなくメンバー達は進む。それが逆に不気味でもあったのだが……。
やがて、一行は大きな空間に出る。そこは、自然のものを流用した空洞だ。これには、理央も驚いていたようだ。
そこでは、石が擦れるような音が響く。巨大な大亀が鎮座しており、覚者達を見下ろしてくる。
「ット、ようやく本命のご登場デスネ。近くで見ると本当にオッキイ亀デスネー!」
その亀の周囲には、破かれた封印が散らばっている。心琴はその符の切れ端を素早く拾っていた。
「封じられた存在は、前から色んな人が予想してた事」
覚醒し、瞳を紅く変色させた理央はメガネを外して敵を見据える。
一方の大亀。全身から黒い瘴気を噴き出すと、周囲の壁が崩れて4体の岩人形が現れた。
遺跡最奥に現れた強力な妖との交戦が今、始まる。
●動きは鈍いが……
敵が仕掛けてくるまでの間、覚者達は敵の攻撃に備えていた。
静護は体内の炎を活性化、つばめは敵の攻撃に備えて基礎耐性を高めていく。
奏空、たまき、エメレンツィアが揃って、英霊の力で攻撃力を高め、理央は味方全員へと自然治癒力を高める香りを振り撒いていく。敵の異常攻撃が厄介だと資料にあったからだ。
同じく凜も強化に当たり、快く感じる空気で仲間を包み込んでいた。
心琴は粘りつくような霧を発生させて、亀や岩人形の弱体を図る。リーネはそれを見ながら、周囲の岩を纏っていく。
「サァ! かかって来るのデース!!」
「ナラバ、望ミ通リ……!」
リーネの要望に応えた大亀が大きく口を開いて喰らい付いてくる。その威力たるや。油断していると、体の半身すら持っていかれそうだ。
「おー、噛まれたら雷がなるまで離さないのは、すっぽんだったかな?」
静音が傷つくメンバーを癒しの滴を使う最中、心琴はそんな感想を口にする。
「目覚めたばかりでランク3。とてつもないエネルギーをその身に宿している様ですね」
大亀の繰り出す攻撃に危機感を抱く恵は、岩人形へと雷を落としていく。前に出る岩人形は2体。大亀と他2体は中衛に位置している。
メンバーより二回り以上大きな岩人形はゆらりと動き出し、拳を叩きつけてくる。相手は自然系。ならばと、奏空は激しい雷で岩人形を攻め立てる。
まずは岩人形を全て倒したい。ここで長期戦になっても仕方ないと、静護は神秘の力で生成した水竜を放ち、岩人形達へと喰らいつかせていった。
「どんな大きな妖だろうと、全てこの女帝の前に跪かせてあげるわ!」
攻勢に出るエメレンツィアは荒波を起こし、岩人形の体を洗い流していく。
「栄養がありそうですもの。喜んで咲き乱れ!」
大亀目がけ、つばめが投げ飛ばした種は急成長し、硬い岩に包まれた大亀の体をも砕く。傷口からドロリと体液が流れ出た。
「土人形、大亀共に早々に片をつけませんとね」
つばめはそれを確認し、改めて気合を入れていた。
●岩人形の壁を砕く!
立ちはだかる壁のような妖。
対する覚者の布陣は、前衛は4人、静護、つばめ、リーネ、たまき。中衛に理央、心琴、奏空の3人、そして、残るエメレンツィア、静音、恵、凜が後衛として立ち、戦いに臨んでいた。
「地響き、きます!」
たまきが仲間に呼びかける。大亀はその巨体で暴れ、地響きを起こしてきた。それによって、覚者達は態勢を崩されてしまう。
「アナタが幾ら解除しようと、構わずダメージを与える作戦を思い付きマ……」
「噛み砕きや体当たりの回数が減れば、被ダメ減るからいいかなー」
リーネがドヤ顔をして語りだそうとするが、同じくそれを想定していた凜が、水のベールで仲間の強化を再び行う。
突っ込まれるどころかさらりと流されたリーネは、「オー、華麗にスルーデース」と自身に防御シールドを張る。強敵相手でも、なんともマイペースな2人だ。
そこで、岩人形が石つぶてを繰り出してくる。
(今は大ケガ困るんよ)
凜はそれに当たらないようにと心がけて立ち回っていたようだ。
たまきは積極的に、仲間の盾として動いていた。その最中で、彼女は気を放出し、岩人形達へと負荷を与えていく。
奏空は大亀の注意を引きながら、岩人形に雷を落としていく。
岩人形もランクは2。飛ばす石つぶてが当たれば出血を起こし、繰り出すパンチはこちらを弱体化させてくる。油断ならぬ相手だ。
前衛がそれに耐えている間にと、心琴が敵全体へと光の粒を降り注がせていく。恵はその回復を行いつつ、岩人形に落雷を落とす。彼女は彼女で、気力との勝負。填気での回復も視野に入れつつ戦いを進めていく。
つばめは敵陣を駆け抜けるように岩人形を『双刀・鬼丸』で纏めて斬り付けていくが、やはり物理攻撃が効き辛い。
(苦手としている自然系妖。戦い慣れて行かなくてはなりませんね)
彼女はそれを実感し、渋い表情をしていたようだ。
同じく、リーネが岩人形へ攻め入る。
事前に彼女は敢えて、仲間に補助の対象から外すよう頼んでいた。それはリーネの立ち回りに関係している。パンチを繰り出す岩人形へ、リーネが張った防御シールドが反射してダメージを与えたのだ。
体にヒビが入った敵へ、リーネは波動弾を飛ばす。撃ち抜いた穴から亀裂が入り、岩人形は崩れ落ちていく。
「ヤルナ……」
片言で喋る大亀。これも力を取り戻していない影響だろうか。
そいつは全身から瘴気を噴き出す。覚者達に混乱が走り始める中、岩人形達が構えを取っていた。
理央が治癒力を高めてはいたが、前線が混乱する中、強力な一撃が来るのはまずい。
エメレンツィアは戸惑う奏空を深層水の神秘の力で正気に戻し、その奏空がさらに浄化物質を凝縮し、仲間へと振りまく。
「それにしたって、BSが多すぎだろ!」
奏空はあれこれ迫られる対策に辟易としていたようだ。
敵が隙を見せている間に。覚者達は全力で攻め入る。
「……踏み潰しがくるのか」
我に返った静護は改めて現状を確認する。見れば、もう1体の前衛がかなり痛んでいた。仲間が攻撃を集中させる中、彼は再度水竜を喰らい付かせていく。食われた岩人形は体が維持できなくなり、倒れていった。
依然として岩人形が力を溜めている。覚者達はなおも岩人形に火力を集中させる。
理央が敵陣を焼き払わんと炎の柱を噴き上げた。たまきが畳み掛けるように、ぼろぼろになってきた1体の岩人形の足元から鋭い岩槍を隆起させた。それがトドメとなり、そいつは中央から割れるように崩れ落ちる。
ただ、残る1体の力がその全身に充満していた。繰り出される踏み潰しでつばめが下敷きになってしまう。
「今、手当ていたしますわ!」
気力が尽きかけた静音が全力で、たまきを癒していた。
一方で、覚者達は最後の岩人形を壊すべく術式を放つ。つばめも攻撃を仕掛けていくが、物理攻撃主体の彼女としては本来、余り戦いたくない相手だ。
だが、仲間達が術式で痛めつけてきている。岩人形の限界も近い。
敵の足元へと迫ったつばめは、岩人形の足を持ち上げ、投げ飛ばそうとする。
「これならば、多少は効果があるでしょう?」
如何なる相手でも戦えるようにと考えるつばめは、力技で岩人形を投げ飛ばした。岩人形は地面に打ち付けた腰から、崩れていったのだった。
●未だ覚醒せぬ大亀との戦い
ようやく、妖は大亀だけとなる。覚者達は岩人形との戦いで消耗していたが、体に鞭を打ってさらに戦う。
「貴方が人に危害を与える存在なら、ここから出す訳にはいきません」
たまきは防御を高め、その上で岩人形と同様に足元から岩槍を突き出して甲羅を貫こうとする。
「鬼丸、力の見せ所ですわよ」
つばめは自身の双刀へ声をかける。物理攻撃が効く相手なら、思い通りに攻撃できる。比較的気力にも余裕のある彼女は、刃を連撃で大亀に浴びせかけ始めた。
そういえばと、心琴は戦闘前に符の切れ端を拾ったのを思い出す。それを張って亀を弱体化できればと考えたのだが、どうやら効果はないらしい。符の力が弱まっているのだろう。
大亀が怪しく目を光らせる。ここからが本番。そいつが力を溜め始めたのだ。
「来たな……」
それを見た心琴は落ち着いて集中力を高め、大亀へと苛立ちの感情を呼び起こさせる。
「ヌ、オオオッ!」
吠える大亀は我を忘れ、覚者を踏みつけてくる。待っていたとばかりに、リーネがそれを受け止め、しっかりと反撃も叩き込む。
だが、敵はすぐに異常を振り払ってしまう。
「唯ナラヌ相手……ダ……」
その巨体で普通に踏み潰そうとしてくる通常攻撃でさえ、強力なる一撃となる。たまきがそれを受け止めてダメージも反射していたが。大亀の攻撃によるダメージは決して小さくない。度重なる攻撃に、彼女は命すらもすり減らしてしまう。
壊滅の危機すらある体当たりだけは避け、覚者達は攻め入り続ける。
その最中、リーネが一度、相手の踏みつけによって気を失いかけたが、なんとか命に頼って意識を繋ぎ止め、大亀の足から逃れる。
「フー、危なかったデース……」
静護も大亀の噛み砕きで一度倒れかけてしまう。
「なんて、力だ……!」
体を裂かれそうなほどの威力に、彼もまた意識を繋ぎ止めるよう踏み止まり、日本刀『裂海』で強靭な歯を斬り、弱りながらも危機を脱していた。
その仲間をできるだけカバーしようと、回復役メンバーが気力をすり減らす。
「絶対ここで倒すわよ」
エメレンツィアは仲間を鼓舞し、癒しの滴で大亀の攻撃を受け止めるメンバーを癒す。凜もうまく連携し、回復をばらけさせていたようだ。気力が尽きた静音は打つ手がなくなったようで、仲間達の戦いを見守っている。
そこで、気力は奏空や心琴、理央らがフォローに当たる。
本来、水行使いの理央。土行以外を行使する彼女だが、水行以外の術式に費やす気力は大きい。なんとか自身へと精神力を転化しながら、自身の気力がなくならないようにしていたようだ。その上で、余裕ができれば、味方へとその気力を分け与えるよう動いていく。
「ここで決着をつけなければいけないな!」
覚者11人で相手してもなお、なかなか倒れぬ相手だ。覚醒してしまう前に、この場で。静護は再び構えを取る。
たまきが気を放出してプレッシャーを大亀に与えた直後、大亀の踏みつけを喰らったタイミングで静護はしっかりとカウンターを叩き込む。
そうして、じわりじわりと追い込まれていく大亀は再び、全身から瘴気を撒き散らす。
ここぞとそれを注視していたのは恵だ。事前に調べてあった成分、そして、彼女なりの解釈でそれを再現してみせる。気力が怪しげな黒いもやとなり、大亀の周囲を包み込んでいく。
「ナン……ダト……?」
驚く大亀の隙をつばめが見逃さない。攻撃要因として役割を果たすべく、駆け抜けるようにその巨体を切り刻んでいく。
すかさず、奏空が続く。彼が叩きつけた双刀は、仲間が付けた傷をさらに広げ、大亀へとニ連撃を叩き込む。
「グ、グオオオオッ!」
それが最後だった。全身の岩から血を流す大亀は地響きを起こして地面にへばりつき、動かなくなってしまう。
「ねぇ、……教えてよ。真実を。一体お前達は『何なんだ』、『目的』は?」
奏空が問うが、目から光が失われたそいつが応えることはもうなかった。
●命名『大亀遺跡』
静護、リーネが重軽傷を負ってはいたものの、大亀を討伐した覚者達。
静寂が戻った遺跡、大亀のいた部屋でメンバー達は探索を始めた。
(子亀や卵があるかもしれへんやん)
凜はそう考え、懐中電灯で照らしながら念入りに石壁を調べる。
同じく、心琴。彼は透視を使って周囲を探索していたが、とりわけ目立つ物は見つからなかったようだ。
大亀の出す瘴気を会得した恵。全く同じとはいかなかったが、それに近いスキルとして利用価値はありそうだ。
「まるで、四つの結界の一つを守護する『玄武』の様でしたね」
ただ、こういう敵が後3体いるとは考えたくない話だが……。
奏空は倒した大亀の残留思念が感じ取れればと、交霊術を試みる。
『忌々シイ……無念ダ……』
そんな悔しさに満たされた思念を感じた奏空。自分達が倒したこともあるが、封印をした何かがいるようで、そちらへと思念は強く向けられていたことだけはわかった。
それは心琴も思っていたこと。封印した何者かが大亀を封じた意図が分かればよかったのだが。それは分からずじまい。
その意識はどこへ。恵は頭上を見上げながら、ぼんやりと考えていた。
「この遺跡、何か名称ないの?」
今更ながらに奏空がそんな疑問を仲間に投げかける。確かに、これまでここは『遺跡』としか表現してはこなかった。
「なければ、『大亀遺跡』とか付ける?」
奏空がそんな命名を付ける。異論もなく、それがこの遺跡の名称ともなった。
亀が倒れたことで、遺跡内のもやが少しずつ晴れて行く。これで、考古学者の調査も再開されることだろう。新たな発見に期待したいところだ。
報酬の勾玉を受け取る為にも。一行は遺跡を出た後、学者達へと妖討伐完了の報告に向かうのだった。
奈良県某所の遺跡入り口。
「とても強い妖さんが、お相手だと伺いました……」
賀茂 たまき(CL2000994)が憂慮する後ろで、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)が考える。25年前に現れたとされる妖。しかし、それ以前から妖はいたのではないか。
謎は色々とあるものの、推測の域を出ない。奏空はそれを確認すべくやってきていた。
『F.i.V.E.』の覚者達がこの遺跡を訪れるのは5度目。地滑りに端を発した探索は大詰めを迎える。
「ふふ、やはり一筋縄ではいかなかったわね」
「完全に力を取り戻す前に討つチャンスが出来たし、ちゃんと討伐して遺跡の役目を終わらせようか」
『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)、『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)がそんな会話をする。封じられていた存在、大亀を撃破するのが今回の目的だ。
「この妖さんが力を取り戻して外へ出てしまえば、大変な事になってしまいます……」
どれだけの被害がでるかなど、想像もしたくない。たまきの言葉に静音も頷いた。
「凜は黒いもやの原因がわかって、一安心なんよ」
遺跡内に漂うもやは妖を活性化させるという。茨田・凜(CL2000438)は自身に悪影響がないことにホッとしていたようだ。
一方で、初参加組。彼らも思い思いにこの場所へやってきている。
「今回の探索で得た事が少しでも、神秘解明に使う事が出来たら」
梶浦 恵(CL2000944)は以前から、遺跡探索に興味があったとのこと。
「妖を活性化させるもやとは、随分剣呑だな」
もやの発生源は大亀というから、如何ともしがたいと『約束』指崎 心琴(CL2001195)は主張する。知る為に封印を破ることに繋がった状況は難儀なものだ、と。
「まさか、奥にとてつもない奴が封印されていたとは」
「大亀……どこまでわたくしの力が通用するか。それも一興かと」
水蓮寺 静護(CL2000471)も傍で遺跡調査について知っていたが、いい予感がしていなかったそうだ。『優麗なる乙女』西荻 つばめ(CL2001243)は逆に自身の力を試すチャンスと捉えていた。
また、勾玉を確保する数少ない機会でもある。
「骨が折れそうだが、ここは確実に撃破しなければならない」
静護が仲間に檄を飛ばしていると。
「オー……、ここからロープで降りるノデスカ? 暗いデスネー……」
遺跡内に興味津々な、『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)。スカートを穿いていることもあり、男性陣に後で降りるよう呼びかけていた。
遺跡内へと降り立った覚者達は、灯りで内部を照らす。
探索に皆勤参加の理央はもはや手馴れたもの。マッピング用の道具と前回までに作成した地図。探索の為の灯りを用意し、方位磁針で方角を確認しながら進む。
心琴も暗所をともしびで照らし、マッピングを行いつつ進む。ほぼほぼ、探索は前回までに済ませてはいる。目指す北、大亀が封印されていたという大部屋だ。
「ンー、けほっ……この黒いもやが色々と邪魔デスネー」
「平気とはいえ、なんとも気持ちが悪いものだな」
遺跡内にうっすらと黒いもやが漂うのを、リーネ、心琴が気にする。奏空はそれを吸い込まぬようにと濡れたハンカチを仕込んだマスクをつけていた。
リーネは足元にも気を払い、つばめも危険予知で罠の発見に努める。遺跡は所々崩れてはいたが、罠らしいものは見受けられない。
静護は改めて、以前調査を行っていたメンバーからこれまでの経緯を聞いていた。
「わざわざ四方の祭壇に祀っていた勾玉、実は封印の道具だったりしてね?」
エメレンツィアがそんな推論を立てる。入り口の封印が破られてからもやが現れたこともあったが、勾玉の力が働いていた可能性は否めない。
「でも、そのキレイな勾玉、頂いて帰るんよ」
凜はキラキラ光る包装のキャンディーをなめながら告げる。すでに3つは『F.i.V.E.』が回収し、1つは考古学者が持っている。その1つが今回の報酬だ。
たまきは土の心を使用し、遺跡の空間把握に努め、安全な通路を見つけ出そうと試みる。高い場所は翼人の静音に探索を任せていたようだ。
とはいえ、遺跡通路は静かなものだ。警戒には差はあれど、何事もなくメンバー達は進む。それが逆に不気味でもあったのだが……。
やがて、一行は大きな空間に出る。そこは、自然のものを流用した空洞だ。これには、理央も驚いていたようだ。
そこでは、石が擦れるような音が響く。巨大な大亀が鎮座しており、覚者達を見下ろしてくる。
「ット、ようやく本命のご登場デスネ。近くで見ると本当にオッキイ亀デスネー!」
その亀の周囲には、破かれた封印が散らばっている。心琴はその符の切れ端を素早く拾っていた。
「封じられた存在は、前から色んな人が予想してた事」
覚醒し、瞳を紅く変色させた理央はメガネを外して敵を見据える。
一方の大亀。全身から黒い瘴気を噴き出すと、周囲の壁が崩れて4体の岩人形が現れた。
遺跡最奥に現れた強力な妖との交戦が今、始まる。
●動きは鈍いが……
敵が仕掛けてくるまでの間、覚者達は敵の攻撃に備えていた。
静護は体内の炎を活性化、つばめは敵の攻撃に備えて基礎耐性を高めていく。
奏空、たまき、エメレンツィアが揃って、英霊の力で攻撃力を高め、理央は味方全員へと自然治癒力を高める香りを振り撒いていく。敵の異常攻撃が厄介だと資料にあったからだ。
同じく凜も強化に当たり、快く感じる空気で仲間を包み込んでいた。
心琴は粘りつくような霧を発生させて、亀や岩人形の弱体を図る。リーネはそれを見ながら、周囲の岩を纏っていく。
「サァ! かかって来るのデース!!」
「ナラバ、望ミ通リ……!」
リーネの要望に応えた大亀が大きく口を開いて喰らい付いてくる。その威力たるや。油断していると、体の半身すら持っていかれそうだ。
「おー、噛まれたら雷がなるまで離さないのは、すっぽんだったかな?」
静音が傷つくメンバーを癒しの滴を使う最中、心琴はそんな感想を口にする。
「目覚めたばかりでランク3。とてつもないエネルギーをその身に宿している様ですね」
大亀の繰り出す攻撃に危機感を抱く恵は、岩人形へと雷を落としていく。前に出る岩人形は2体。大亀と他2体は中衛に位置している。
メンバーより二回り以上大きな岩人形はゆらりと動き出し、拳を叩きつけてくる。相手は自然系。ならばと、奏空は激しい雷で岩人形を攻め立てる。
まずは岩人形を全て倒したい。ここで長期戦になっても仕方ないと、静護は神秘の力で生成した水竜を放ち、岩人形達へと喰らいつかせていった。
「どんな大きな妖だろうと、全てこの女帝の前に跪かせてあげるわ!」
攻勢に出るエメレンツィアは荒波を起こし、岩人形の体を洗い流していく。
「栄養がありそうですもの。喜んで咲き乱れ!」
大亀目がけ、つばめが投げ飛ばした種は急成長し、硬い岩に包まれた大亀の体をも砕く。傷口からドロリと体液が流れ出た。
「土人形、大亀共に早々に片をつけませんとね」
つばめはそれを確認し、改めて気合を入れていた。
●岩人形の壁を砕く!
立ちはだかる壁のような妖。
対する覚者の布陣は、前衛は4人、静護、つばめ、リーネ、たまき。中衛に理央、心琴、奏空の3人、そして、残るエメレンツィア、静音、恵、凜が後衛として立ち、戦いに臨んでいた。
「地響き、きます!」
たまきが仲間に呼びかける。大亀はその巨体で暴れ、地響きを起こしてきた。それによって、覚者達は態勢を崩されてしまう。
「アナタが幾ら解除しようと、構わずダメージを与える作戦を思い付きマ……」
「噛み砕きや体当たりの回数が減れば、被ダメ減るからいいかなー」
リーネがドヤ顔をして語りだそうとするが、同じくそれを想定していた凜が、水のベールで仲間の強化を再び行う。
突っ込まれるどころかさらりと流されたリーネは、「オー、華麗にスルーデース」と自身に防御シールドを張る。強敵相手でも、なんともマイペースな2人だ。
そこで、岩人形が石つぶてを繰り出してくる。
(今は大ケガ困るんよ)
凜はそれに当たらないようにと心がけて立ち回っていたようだ。
たまきは積極的に、仲間の盾として動いていた。その最中で、彼女は気を放出し、岩人形達へと負荷を与えていく。
奏空は大亀の注意を引きながら、岩人形に雷を落としていく。
岩人形もランクは2。飛ばす石つぶてが当たれば出血を起こし、繰り出すパンチはこちらを弱体化させてくる。油断ならぬ相手だ。
前衛がそれに耐えている間にと、心琴が敵全体へと光の粒を降り注がせていく。恵はその回復を行いつつ、岩人形に落雷を落とす。彼女は彼女で、気力との勝負。填気での回復も視野に入れつつ戦いを進めていく。
つばめは敵陣を駆け抜けるように岩人形を『双刀・鬼丸』で纏めて斬り付けていくが、やはり物理攻撃が効き辛い。
(苦手としている自然系妖。戦い慣れて行かなくてはなりませんね)
彼女はそれを実感し、渋い表情をしていたようだ。
同じく、リーネが岩人形へ攻め入る。
事前に彼女は敢えて、仲間に補助の対象から外すよう頼んでいた。それはリーネの立ち回りに関係している。パンチを繰り出す岩人形へ、リーネが張った防御シールドが反射してダメージを与えたのだ。
体にヒビが入った敵へ、リーネは波動弾を飛ばす。撃ち抜いた穴から亀裂が入り、岩人形は崩れ落ちていく。
「ヤルナ……」
片言で喋る大亀。これも力を取り戻していない影響だろうか。
そいつは全身から瘴気を噴き出す。覚者達に混乱が走り始める中、岩人形達が構えを取っていた。
理央が治癒力を高めてはいたが、前線が混乱する中、強力な一撃が来るのはまずい。
エメレンツィアは戸惑う奏空を深層水の神秘の力で正気に戻し、その奏空がさらに浄化物質を凝縮し、仲間へと振りまく。
「それにしたって、BSが多すぎだろ!」
奏空はあれこれ迫られる対策に辟易としていたようだ。
敵が隙を見せている間に。覚者達は全力で攻め入る。
「……踏み潰しがくるのか」
我に返った静護は改めて現状を確認する。見れば、もう1体の前衛がかなり痛んでいた。仲間が攻撃を集中させる中、彼は再度水竜を喰らい付かせていく。食われた岩人形は体が維持できなくなり、倒れていった。
依然として岩人形が力を溜めている。覚者達はなおも岩人形に火力を集中させる。
理央が敵陣を焼き払わんと炎の柱を噴き上げた。たまきが畳み掛けるように、ぼろぼろになってきた1体の岩人形の足元から鋭い岩槍を隆起させた。それがトドメとなり、そいつは中央から割れるように崩れ落ちる。
ただ、残る1体の力がその全身に充満していた。繰り出される踏み潰しでつばめが下敷きになってしまう。
「今、手当ていたしますわ!」
気力が尽きかけた静音が全力で、たまきを癒していた。
一方で、覚者達は最後の岩人形を壊すべく術式を放つ。つばめも攻撃を仕掛けていくが、物理攻撃主体の彼女としては本来、余り戦いたくない相手だ。
だが、仲間達が術式で痛めつけてきている。岩人形の限界も近い。
敵の足元へと迫ったつばめは、岩人形の足を持ち上げ、投げ飛ばそうとする。
「これならば、多少は効果があるでしょう?」
如何なる相手でも戦えるようにと考えるつばめは、力技で岩人形を投げ飛ばした。岩人形は地面に打ち付けた腰から、崩れていったのだった。
●未だ覚醒せぬ大亀との戦い
ようやく、妖は大亀だけとなる。覚者達は岩人形との戦いで消耗していたが、体に鞭を打ってさらに戦う。
「貴方が人に危害を与える存在なら、ここから出す訳にはいきません」
たまきは防御を高め、その上で岩人形と同様に足元から岩槍を突き出して甲羅を貫こうとする。
「鬼丸、力の見せ所ですわよ」
つばめは自身の双刀へ声をかける。物理攻撃が効く相手なら、思い通りに攻撃できる。比較的気力にも余裕のある彼女は、刃を連撃で大亀に浴びせかけ始めた。
そういえばと、心琴は戦闘前に符の切れ端を拾ったのを思い出す。それを張って亀を弱体化できればと考えたのだが、どうやら効果はないらしい。符の力が弱まっているのだろう。
大亀が怪しく目を光らせる。ここからが本番。そいつが力を溜め始めたのだ。
「来たな……」
それを見た心琴は落ち着いて集中力を高め、大亀へと苛立ちの感情を呼び起こさせる。
「ヌ、オオオッ!」
吠える大亀は我を忘れ、覚者を踏みつけてくる。待っていたとばかりに、リーネがそれを受け止め、しっかりと反撃も叩き込む。
だが、敵はすぐに異常を振り払ってしまう。
「唯ナラヌ相手……ダ……」
その巨体で普通に踏み潰そうとしてくる通常攻撃でさえ、強力なる一撃となる。たまきがそれを受け止めてダメージも反射していたが。大亀の攻撃によるダメージは決して小さくない。度重なる攻撃に、彼女は命すらもすり減らしてしまう。
壊滅の危機すらある体当たりだけは避け、覚者達は攻め入り続ける。
その最中、リーネが一度、相手の踏みつけによって気を失いかけたが、なんとか命に頼って意識を繋ぎ止め、大亀の足から逃れる。
「フー、危なかったデース……」
静護も大亀の噛み砕きで一度倒れかけてしまう。
「なんて、力だ……!」
体を裂かれそうなほどの威力に、彼もまた意識を繋ぎ止めるよう踏み止まり、日本刀『裂海』で強靭な歯を斬り、弱りながらも危機を脱していた。
その仲間をできるだけカバーしようと、回復役メンバーが気力をすり減らす。
「絶対ここで倒すわよ」
エメレンツィアは仲間を鼓舞し、癒しの滴で大亀の攻撃を受け止めるメンバーを癒す。凜もうまく連携し、回復をばらけさせていたようだ。気力が尽きた静音は打つ手がなくなったようで、仲間達の戦いを見守っている。
そこで、気力は奏空や心琴、理央らがフォローに当たる。
本来、水行使いの理央。土行以外を行使する彼女だが、水行以外の術式に費やす気力は大きい。なんとか自身へと精神力を転化しながら、自身の気力がなくならないようにしていたようだ。その上で、余裕ができれば、味方へとその気力を分け与えるよう動いていく。
「ここで決着をつけなければいけないな!」
覚者11人で相手してもなお、なかなか倒れぬ相手だ。覚醒してしまう前に、この場で。静護は再び構えを取る。
たまきが気を放出してプレッシャーを大亀に与えた直後、大亀の踏みつけを喰らったタイミングで静護はしっかりとカウンターを叩き込む。
そうして、じわりじわりと追い込まれていく大亀は再び、全身から瘴気を撒き散らす。
ここぞとそれを注視していたのは恵だ。事前に調べてあった成分、そして、彼女なりの解釈でそれを再現してみせる。気力が怪しげな黒いもやとなり、大亀の周囲を包み込んでいく。
「ナン……ダト……?」
驚く大亀の隙をつばめが見逃さない。攻撃要因として役割を果たすべく、駆け抜けるようにその巨体を切り刻んでいく。
すかさず、奏空が続く。彼が叩きつけた双刀は、仲間が付けた傷をさらに広げ、大亀へとニ連撃を叩き込む。
「グ、グオオオオッ!」
それが最後だった。全身の岩から血を流す大亀は地響きを起こして地面にへばりつき、動かなくなってしまう。
「ねぇ、……教えてよ。真実を。一体お前達は『何なんだ』、『目的』は?」
奏空が問うが、目から光が失われたそいつが応えることはもうなかった。
●命名『大亀遺跡』
静護、リーネが重軽傷を負ってはいたものの、大亀を討伐した覚者達。
静寂が戻った遺跡、大亀のいた部屋でメンバー達は探索を始めた。
(子亀や卵があるかもしれへんやん)
凜はそう考え、懐中電灯で照らしながら念入りに石壁を調べる。
同じく、心琴。彼は透視を使って周囲を探索していたが、とりわけ目立つ物は見つからなかったようだ。
大亀の出す瘴気を会得した恵。全く同じとはいかなかったが、それに近いスキルとして利用価値はありそうだ。
「まるで、四つの結界の一つを守護する『玄武』の様でしたね」
ただ、こういう敵が後3体いるとは考えたくない話だが……。
奏空は倒した大亀の残留思念が感じ取れればと、交霊術を試みる。
『忌々シイ……無念ダ……』
そんな悔しさに満たされた思念を感じた奏空。自分達が倒したこともあるが、封印をした何かがいるようで、そちらへと思念は強く向けられていたことだけはわかった。
それは心琴も思っていたこと。封印した何者かが大亀を封じた意図が分かればよかったのだが。それは分からずじまい。
その意識はどこへ。恵は頭上を見上げながら、ぼんやりと考えていた。
「この遺跡、何か名称ないの?」
今更ながらに奏空がそんな疑問を仲間に投げかける。確かに、これまでここは『遺跡』としか表現してはこなかった。
「なければ、『大亀遺跡』とか付ける?」
奏空がそんな命名を付ける。異論もなく、それがこの遺跡の名称ともなった。
亀が倒れたことで、遺跡内のもやが少しずつ晴れて行く。これで、考古学者の調査も再開されることだろう。新たな発見に期待したいところだ。
報酬の勾玉を受け取る為にも。一行は遺跡を出た後、学者達へと妖討伐完了の報告に向かうのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
特殊成果
なし

■あとがき■
遺跡の妖討伐、お疲れ様でした!
強力な敵でしたが、皆様の戦法がうまく機能したこともあり、
重軽傷者なく妖を倒すことができました!
妖の目的などは最後まで謎のままでしたが、
すばらしい成果であったと思います。
MVPは
大亀の溜め攻撃をキャンセルしたあなたでしょう。
また、瘴気について、
スキルとして使用可能になりましたが、
完全再現には至らなかったようです。
解析が進めば、うまく行使できるようになるでしょうか……?
ともあれ、ゆっくりお休みくださいませ。
改めて、お疲れ様でした!
ラーニング成功!
取得者:梶浦 恵(CL2000944)
スキル名:妖の靄
強力な敵でしたが、皆様の戦法がうまく機能したこともあり、
重軽傷者なく妖を倒すことができました!
妖の目的などは最後まで謎のままでしたが、
すばらしい成果であったと思います。
MVPは
大亀の溜め攻撃をキャンセルしたあなたでしょう。
また、瘴気について、
スキルとして使用可能になりましたが、
完全再現には至らなかったようです。
解析が進めば、うまく行使できるようになるでしょうか……?
ともあれ、ゆっくりお休みくださいませ。
改めて、お疲れ様でした!
ラーニング成功!
取得者:梶浦 恵(CL2000944)
スキル名:妖の靄
