祝開店、五華モールへ遊びに行こう!
●新しい形のショッピングモールへ
安全安心、美味しいご飯とショッピングを楽しめる五華モールがこのたび開店!
遊びに行ったり、働いてみたり、いっそ自分のお店を出してみたり。
ファイヴの皆さんには特別サービスでご対応します!
●守って育てるフードチェーン五華
五華(イツカ)とはフードチェーンの店舗名である。
日中は和食とカフェを合わせた憩いの場として、夜間はオシャレな和装居酒屋として機能するこの店は、隣接する覚者詰所による治安維持効果をもっている。
隔者犯罪の抑止は勿論、妖災害への早急な対応や、避難民の一時的な受け入れなどにも効果を発揮するこの五華チェーンは協賛する大手飲食企業ムラキヨグループの力によって各地域へ拡散。一号店のノウハウをコピーした店舗が各地で次々に開店していった。
この結果として、五華を中心としたエリアに『妖や覚者の被害リスクを抑えられる』ということでいくつもの商店が建ち並ぶようになり、一時は妖等によって壊滅し過疎化した地域が次々に再活性を果たしているという。
そこで協賛グループの会長・敷村は考えた。
周辺の商店をまるごと抱き込み、頑丈な防壁や覚者警備員で固めた安全なシェルターをショッピングモール化すれば、人々が安心して休日を過ごす場所となるのでは?
「そこでこのたびオープンしたのが、五華モールなのです!
以前皆さんのアイデアによって生み出された『五華』を中心に、スーパーマーケットやゲームセンター、複数の店舗ブース、スポーツジム(入浴施設つき)を複合した屋内施設なのです!」
そう説明するのは会長の敷村だ。
自らの資財を投じて地域の発展に貢献する彼の、これは次なる挑戦といった所だろうか。
元々『フードチェーンの力で世界平和』を目標に活動する彼は、五華の収益を次なる店舗の設立にあて、残った分はファイヴに寄付するという無欲な活動をしてきた男でもある。
「今回はオープニングキャンペーンとして皆さんをご招待します。
遊園地なら入園券を差し上げるところですが、今回はモール内で使える一万円分の商品券とさせてください。
中心となっている『五華』では職業体験として働くこともできます。行政の許可もちゃんととっていますので、お子様でも安心してお楽しみいただけるでしょう」
さあ、ショッピングモールにくりだそう!
安全安心、美味しいご飯とショッピングを楽しめる五華モールがこのたび開店!
遊びに行ったり、働いてみたり、いっそ自分のお店を出してみたり。
ファイヴの皆さんには特別サービスでご対応します!
●守って育てるフードチェーン五華
五華(イツカ)とはフードチェーンの店舗名である。
日中は和食とカフェを合わせた憩いの場として、夜間はオシャレな和装居酒屋として機能するこの店は、隣接する覚者詰所による治安維持効果をもっている。
隔者犯罪の抑止は勿論、妖災害への早急な対応や、避難民の一時的な受け入れなどにも効果を発揮するこの五華チェーンは協賛する大手飲食企業ムラキヨグループの力によって各地域へ拡散。一号店のノウハウをコピーした店舗が各地で次々に開店していった。
この結果として、五華を中心としたエリアに『妖や覚者の被害リスクを抑えられる』ということでいくつもの商店が建ち並ぶようになり、一時は妖等によって壊滅し過疎化した地域が次々に再活性を果たしているという。
そこで協賛グループの会長・敷村は考えた。
周辺の商店をまるごと抱き込み、頑丈な防壁や覚者警備員で固めた安全なシェルターをショッピングモール化すれば、人々が安心して休日を過ごす場所となるのでは?
「そこでこのたびオープンしたのが、五華モールなのです!
以前皆さんのアイデアによって生み出された『五華』を中心に、スーパーマーケットやゲームセンター、複数の店舗ブース、スポーツジム(入浴施設つき)を複合した屋内施設なのです!」
そう説明するのは会長の敷村だ。
自らの資財を投じて地域の発展に貢献する彼の、これは次なる挑戦といった所だろうか。
元々『フードチェーンの力で世界平和』を目標に活動する彼は、五華の収益を次なる店舗の設立にあて、残った分はファイヴに寄付するという無欲な活動をしてきた男でもある。
「今回はオープニングキャンペーンとして皆さんをご招待します。
遊園地なら入園券を差し上げるところですが、今回はモール内で使える一万円分の商品券とさせてください。
中心となっている『五華』では職業体験として働くこともできます。行政の許可もちゃんととっていますので、お子様でも安心してお楽しみいただけるでしょう」
さあ、ショッピングモールにくりだそう!

■シナリオ詳細
■成功条件
1.五華モールを楽しむ
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
以下の【A】【B】【C】の三つの中から参加方法を選んで、プレイングに書き込みましょう。(プレイング冒頭に書いてあるととても目立ちます)
尺の問題で一人につき一場面づつの行動となっております。買い物ものしてご飯もたべてといったように複数書いてあった場合は省略されちゃうことがあるので、ご注意くださいませ。
・【A】:モールで遊ぶ
ショッピングをしたり、ジムで汗を流したり、五華でご飯を食べたりできます。
一万円分の商品券があるので、一日満喫して下さい。
・【B】:五華で働いてみる
五華で働いてみます。ちゃんと許可をとった職業体験扱いなので、お子様でも参加できます。
主にキッチンとホールのお仕事があります。
イベント用のステージもあるので、演奏なんかを披露するのもいいかもしれません。
・【C】:店舗ブースやフードコートにお店を出してみる
もしあなたが自分のお店やブランドを持っていたなら、店舗ブースを特別にお貸しします。
明日以降はムラキヨグループのプロ販売員があなたの代わりに管理する代理店として運営することもできるので、ぜひご検討ください。
●モールの中身をちょっとだけご紹介
モール内には五華を中心にスーパーマーケット、店舗ブース、ゲームセンター、スポーツジムが入っています。
中でも五華は単独で24時間営業ができ、大規模なバックヤードキッチンを利用することで五華の和食のみならず複数の飲食店と提携できるようになっています。今のところ入っているのは五華だけのようです。
また外装に特殊装甲を採用し、うっかり近くで大規模な妖被害が起きてもこの中に人々を収容して立てこもることが可能です。
複数の店舗と大勢の人々を(色々な意味で)守ることのできるシェルターとなっています。
●誰かと一緒に遊ぶなら
一緒に遊びに行きたい方が居る場合は『ユアワ・ナビ子(nCL2000122)』のようにフルネームとIDを記載して下さい。こうしないと、とても広いのではぐれちゃうことがあります。
また、八重紅友禅の管理するNPC及びシナリオに搭乗していたNPCを招待することもできます。登場した際には自分の描写量を分配することと、むこうの都合によっては呼んでも来ない可能性があることにはご注意ください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
10日
10日
参加費
50LP
50LP
参加人数
55/∞
55/∞
公開日
2016年07月18日
2016年07月18日
■メイン参加者 55人■

●五華モールショッピング
「フハハハハ! ホームセンターをゆうに越える品揃え。これならあれやこれやがはかどるな。我が買い物上手ぶりに恐れを抱きそうだ。貴様もそう思うだろう、フハハハハハ!」
「うん、そうだねー。ところでお名前言えるかな?」
「え、鞍馬・翔子だが……」
「よくできました。はい、飴あげるね。そこのお椅子に座っていられるかな?」
「気が利くな都会人。よしよし座っていてやろうではないか」
『迷子のお呼び出しをしております。ご家族でお越しの鞍馬様。鞍馬・翔子(CL2001349)様がお待ちです。迷子センターまでお越しください。繰り返します――』
「回転初日から迷子が出るなんて、盛況ですね」
「広い場所ですから、余計ですね」
守衛野 鈴鳴(CL2000222)とクー・ルルーヴ(CL2000403)はそろってファンシーショップ巡りをしていた。
こういうモールはおもしろいもので、一定間隔に同種の店舗ブースが配置されているので自然と大きな距離を移動していたりするものだ。
「鈴鳴さんは、こういうのはお好きでしょうか」
「わあ、可愛い。キレイですっ」
鈴鳴はウサギのガラス細工チャームを光に翳してから、近くにあった犬のキーホルダーを手に取った。
「じゃあ、私はこれ。クーさんみたいで可愛いです。えへへっ」
滅相もございませんと言いながら、クーは照れたように目を伏せた。
そんな彼女たちとすれ違うように店先を歩くラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と鐡之蔵 禊(CL2000029)。
「ココノさん早く早く。お洋服とか見るんでしょ!」
「はわわー、皆さん歩くの早いですねー」
九美上ココノが二人の後ろをゆっくりとついて歩いていた。にっこり笑うラーラ。
「ファイヴに来て日が浅いですよね。ココノさんこういうの興味あると思いまして」
「はいー。可愛いのとか大好きですー」
「この前……」
ラーラが話を切り出しにかかって、禊はちらりと二人の顔を見た。
「助けてくれたの、ココノさんですよね? この借りは……」
「いえー。記憶にありませんー」
ラーラと禊は顔を見合わせた。
「じゃあココノさんがピンチになったとき、私が助けます」
「わー、嬉しいですー。私とーっても弱いので、いつも助けられちゃいますねー」
「まあまあ、その話はまた今度っ」
禊は手を合わせて、クレープ屋の店舗を指さした。
「今日はあそぼっ。色んなもの、見て回ったりしてさ」
ココノの手を引いて小走りにゆく禊たち。
彼女たちの通り過ぎた輸入雑貨店の中で、四月一日 四月二日(CL2000588)と和泉・鷲哉(CL2001115)がコーヒーや酒の棚をゆっくりと見て回っていた。
「やっぱ、じっくり楽しめるものを厳選すんのがいいよな」
「ですねっ、四月二日さん!」
後ろをちょこちょこ突いてくる鷲哉に、四月二日はほんのりと笑った。
「俺最近、泡盛にはまってて」
「へえ、意外かも。キツくない?」
「水割りだとさすがに。けどたとえば……」
「美味そー。甘いの割る用に、ジュースとかも買ってこうか。トロピカル感あるヤツ」
二人は酒瓶を手に取りながら会話を弾ませていた。
「そうだ、この足で俺ん家で宅飲みしない?」
「ここで色々探すのも勿論ですけど良ければ俺少し作りましょうか。出来合いは出来合いで美味しいてすけどアレンジするとそれはそれで結構変わりますし」
「マジ? ウェルカムっていうかお願いしますぜひ!」
「そうと決まれば酒決めてつまみ見に行きましょ」
「はは、楽しい飲み会になりそう!」
こうして二人が駄菓子屋か乾物屋かどっちに行こうか相談している脇を、紙袋を抱えた蘇我島 恭司(CL2001015)と柳 燐花(CL2000695)が並んで通り過ぎた。
「いつもながら、お付き合い下さってありがとうございます」
「いやいや、それにしても夏服探すには良いタイミングだったよねぇ」
「多分必要なものはこれで全部ですね」
紙袋の中身はどうやら服のようだ。恭司は彼女に片っ端から試着させては吟味しての繰り返しをしていたらしい。モールはあっちこっちに服屋があるので見て回るだけでも楽しめるところがある。
ふと足を止める燐花。同じく足を止めた恭司は、彼女の視線の先にあったアクセサリーに気がついた。
「燐ちゃん、じっとしててね」
ペンダントをとって燐花につける。
「あの、これ?」
「燐ちゃん、お店までの道すがら何度か足を止めてたけど、このアクセの前が一番長かったんだよね、見てる時間」
燐花はペンダントを指で撫でて、睫毛を下げた。
「ありがとうございます。大事にします」
彼らが立ち止まったアクセサリーショップのはす向かいには、生花を売る店があった。
一階の外向き店舗だが、ちゃんと店内からも入れるように作られている。
そこへ立ち寄っていたのは天堂・フィオナ(CL2001421)と八重霞 頼蔵(CL2000693)だった。
「天堂くん。そのバラが気になるのかね」
「あ、いや……綺麗だなと思って」
そう応えつつも、フィオナの視線はバラに注がれていた。
「あいにくと花には詳しくないのだが……その花には?」
「昔、不可能って花言葉がついてたいたんだ。けど後から奇跡や夢が叶うって言葉がついたんだ。不可能だったものが本当に可能になったから……」
「そうか……ふむ」
値札を手にとって桁数を数えているフィオナを見て、頼蔵はそばに居た花屋風の男に声をかけた。
「店員、あのバラを買おう」
「いや、俺は花屋ではあるが店員じゃねえ」
困ったように頭を撫でながら返す田場 義高(CL2001151)。
ついうっかり日頃の癖で対応しそうになったが、今日は客である。
「そうか、すまない。店員、店員はいるか……」
頼蔵が店員を見つけて花を買い、フィオナに束で手渡している。
フィオナは華やぐ笑顔で花束を抱きかかえ、店を出て行った。
その後ろ姿を眺め、花屋はこうじゃねえとと頷く義高。そんな彼が手にしていたのはモールのチラシだった。
「しかし……職業体験か。こりゃいい企画かもしれねえな」
五華モールのメインとも言えるカフェ五華。ここでは職業体験を実施していた。
教育促進もさることながら、ここでの仕事に興味を持った人をそのまま引き込む作用も期待できるらしく、初日から結構な人数の体験応募があった。
そこから選ばれた数人の中に、白枝 遥(CL2000500)と財城 真珠(CL2001434)の姿があった。
「子供だからといって甘く見ないでください。ホールスタッフなんて楽勝です。ご注文はおきまりですか?」
ハンディーコントローラーを手に胸を張った真珠に、テーブルにオカルトグッズを沢山並べた天羽・テュール(CL2001432)がびしっと手を上げた。
「ざるそば二枚と生姜焼き定食大盛り。あと焼き肉定食。こっちも大盛りね。あと……」
「わっ、わわ……!」
慣れない操作に慌てる真珠。
がっくり肩を落としたが、後ろでしっかり聞いていたプロスタッフが既に入力を終えていた。
「さ、復唱ですよ」
「えっと……ざるそばふたつと、焼き肉定食……えっと、ごめんなさい」
「いいんですよ。あ、追加でクリームあんみつ大盛り」
「かしこまりましたっ」
オーダーが専用の機械を通してレシート出力されていく。
すごく地味な話だが、(海外の)飲食店では入力した注文内容を無線で送ってキッチン側に出力する装置が使われているが、無線がアレな日本ではハンディーに表示したバーコードを専用の機械にピッと読ませて出力するという装置が使われている。無線式のちょい前くらいに開発された装置だ。
そうして送られてきたレシートを見て、厨房では遥たちが料理に勤しんでいた。
「皆で考えた五華がここまで大きくなったんだ。ふふ、なんだか嬉しいな」
来ている制服は自前。前に貰った名誉店員服である。
こうして見ていると、最初に考えたメニューをモデルにバリエーションが増えていて、遥にとってもちょっと勉強になったりもした。
「この料理、幼なじみに作ったら喜んでくれるかな」
カフェは一般的なフードコートに近い。
買い物をある程度済ませた三島 椿(CL2000061)と六道 瑠璃(CL2000092)がコーヒーや紅茶を飲みながら休憩するにはぴったりな場所なのだ。
選んだのは主に服。欲しかったものをちらほら選んでといた具合である。
「今日は付き合ってくれてどうもありがとう」
「こっちこそ。誘ってくれてありがと」
紅茶に口をつけつつ、目をそらす椿。
「また誘っても……だ、大丈夫かしら」
「えっと、あ、うん」
コーヒーに口をつけて目をそらす瑠璃。
「また誘って貰えると……嬉しい」
二人は顔を見合わせ、照れたように笑った。
その時である、ステージの上に予め設置されていたピアノに、藤 壱縷(CL2001386)が腰掛けた。
「気持ちを込めて歌います。『星結び』……」
ピアノを奏でながらウィスパーヴォイスで歌い上げる彼女に、椿たちはうっとりと耳を傾けた。
季節にちなんで七夕の織姫をイメージしたというその歌は、愛の歌であり希望の歌でもあった。
そんな演奏を、コーヒー片手にじっと聞き入る阿久津 亮平(CL2000328)。
(囁くような声なのに、ちゃんと耳にも心にも届く。しみわたるような歌声なんだな……いいな。とても安らぐ、良い声だ)
演奏が終わる頃。
深々とお辞儀をした彼女に歩み寄り、亮平は花束を手渡した。
「亮平様、聞きに来てくださったんですか!」
「ああ、お疲れ様。やっと藤さんの歌を聴けた。嬉しかったよ」
「ふふふ。私も嬉しいです。ありがとうございます!」
そっと近づいたスタッフが『もう一曲いかがですか』と問いかけて、壱縷は亮平の顔を見た。
頷く亮平。
壱縷は笑顔でピアノの前に座り、再びカバーを開いた。
ポップでモダンな歌が流れる中で、奥州 一悟(CL2000076)はステーキ肉にがっついていた。
その様子を同じく食事を取りながら眺める光邑 研吾(CL2000032)と光邑 リサ(CL2000053)。
「優勝おめでとうさん」
「ありがとう。優勝できてマジ嬉しいぜ」
「やっぱり平和っていいわよネ」
「五麟市が七星剣に襲われて、一時はどうなることかと思うたけど、体育祭が行われるほど復興してよかったな」
「七星剣といえば……ランボーさん、最近噂も聞かないわネ。引退しちゃったのカシラ?」「ランボー? ああ、暴力坂の。死んだんとちゃうか?」
「オレ、会ってないんだよなぁ。で、どんなジイサンなの暴力坂って?」
「あのジジイ、俺のめっちゃ似てる似顔絵見て、知らん言うほどボケとったし」
「あら、なかなかイイ男だったわヨ」
「なんやて! あんなんのどこがええねん!」
「フフフ、焼きもち焼いてくれてうれしいワ。安心して。今までもこれからも、ケンゴがワタシのナンバーワンよ」
「うわぁ、やめてくれよ。父ちゃんと母ちゃんのいちゃラブもたいがいだけどさ……ん?」
ぺらり、と一悟の手元に紙が滑り込んできた。見れば研吾が描いた似顔絵だった。
裏返してみるとこう書いてある。
『濡れ手に粟しようって魂胆が露骨すぎて乗れねえ』
「……すてとけ」
「あら、でもこれって変じゃないかしら。だって私たち、お互いの連絡先を一切知らないのよ? どうやって予知したのかしら」
歌と演奏がゆったりとしたバラード調のものに変わった所で、華神 悠乃(CL2000231)はさっぱりした様子でフードコートにやってきた。
さっきまでスポーツジムで汗を流してきた所だ。
「スポーツジムの設備、やっぱり最新のがそろってたね。まとめ買いとメンテ契約でメーカーから値切ったのかな」
こういう所は大手グループの強みだ。空調も天井備え付けの除過湿複合器とイオン消臭機で相当気分良く運動ができた。普通だと一枠終わった頃には窓ガラスが全て曇っているなんてこともザラなのだ。
「でも一番参考になったのは非常時対応かな。ジムって基本頑丈だし静かだから、非常時には人を寝泊まりさせるのに向くんだね……考えたことも無かったかな」
ただその反面、インストラクターが探り探りなところがあるので悠乃の持てる知識をできる限りアンケート用紙に書いてあげることにした。
そんな彼女の隣の席で。
「ごめんねぇ、いつも家事お願いしちゃってるから……若いうちからそんな所帯じみなくていいのよ……」
「いえ、家計を預かる身としては、他店との比較は大切ですからねっ」
向日葵 御菓子(CL2000429)と菊坂 結鹿(CL2000432)が向き合ってケーキなぞ食べていた。
結鹿はノートになにやら書き込んで、御菓子はそれを眺めているといった様子である。
(この子……中学生のうちからこんな大人の苦労を……だめよね、もっと子供らしい楽しみ方を教えなくっちゃ!)
御菓子は今日一日、結鹿を連れ回すことに決めた。
●売る人買う人巡る人
五華モールにはいくつもの店舗があるが、その中にはファイヴの覚者が開いた店も存在している。
その一つが『マックス村ふるさとショップ』である。
責任者は連名で七海 灯(CL2000579)、エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)、鈴白 秋人(CL2000565)、栗落花 渚(CL2001360)、ゆかり・シャイニング(CL2001288)である。
まず灯はファイヴ村の絵はがきやパンフレットなどを置き、ちょっとした観光案内所に似た相談窓口を設けた。見学会や居住に関する相談も受け付けているようで、初日から効果はなかったが『多くの人が窓口の存在を知る』という所に大きな意味が生まれたようだ。
一方でエメレンツィアや渚はすねこすりキャラバンの出張やアンテナショップの設置など、色々と派手に展開する要素を増やしていった。
「このモールがスタンダード化して全国に展開していったなら、村の広いアピールにもつながるわね」
「そうなると、もっと色々な方に対応できる環境が必要そうです」
「そこは皆で、がんばろうね。ゆくゆくは私の作った野菜なんかも売れたらいいな」
のぼりやポスターを設置していく渚たち。
そこへモール内を歩いていた敷村が立ち寄った。
「まいどどうも! お世話になっております!」
「あ、おじさんあの時の!」
「その節はどうもどうも!」
「お知り合いなんですか?」
ゆかりと秋人が出店風のワゴンを組み立てて、アイスクリームや豆腐なんかを陳列していた。
秋人の入れたアイスクリームはだいぶ売れたが、モールの客数に対して仕入れ数が少なすぎるせいでかなり早めに売り切れてしまった。
今のところは『数量限定』を売り文句にしてしのいでいるが、店舗数が増えることを考慮するともっと根本的な所で量を増やす必要があるだろう。
「今後の課題、沢山あるな……」
「でも、マックス村のいいところ。たくさんアピールできちゃいますね!」
「今後はうちのスタッフが常駐して販売をさせてもらいます。定期的にうちの営業担当が相談に行くと思いますので、どうかひとつ」
「はい、よろしくお願いします」
名刺を改めて受け取って、五人は敷村を見送った。
顔を見合わせる五人。
「ここの売り上げが村の発展にダイレクトにつながるんですね」
「沢山稼げば沢山養える」
「けどそのためには皆の力が必要ね」
「責任、重大だね」
「では先陣をきるつもりで、ビシバシやりましょう!」
『マックス村ふるさとショップ』から少し離れたエリアでは、和物を扱う雑貨屋や服屋が集まっていた。
そんな中で、鈴駆・ありす(CL2001269)と姫神 桃(CL2001376)が和服を選んでいた。
並んだ帯を手にとって吟味する桃。
「ありすさんには、やっぱり赤色かしらね。けど詰め物はいらないから、帯は派手目に……」
「どうせ詰め物のいらいない体型よ」
軽く着せ替え人形になりつつ毒気づくありす。
桃は口に手を当てた。
「あら、ごめんなさい。でもありすさん、可愛いから。もっとそういうところ、引き出したいのよ」
「……」
赤い顔をそらしたありすに、桃はくるりと振り返った。
「そういえば名前で呼んでたけれど、よかったかしら」
「別に……いいわよ」
「そ?」
桃は再び帯選びに戻った。
その後ろ姿をちらちらと見ながら、ありすは小さく咳払いした。
「このあと、お茶でもどう? 五華が気になるし」
「そうね。新メニューに期待ね」
彼女たちが和服を選んでいるその横で、榊原 時雨(CL2000418)と楠瀬 ことこ(CL2000498)たちがうろうろしていた。
「うーん、やっぱり和服わかんないよー」
「せやから、ほら……ああいうのでええんよ? バンドの時みたいな? 服?」
「バンドー?」
くるーりと振り返ることこ。
「あれはことこ手作りだよ? 既製服のアレンジだけど」
「アレンジ……」
ごくりとつばを呑んだ時雨の顔を凝視して、ことこはにんまりと笑った。
顔を近づけることこ。
顔を遠ざける時雨。
「はっはーん」
「なんや近い近い」
「時雨ぴょん、ああいうの着てみたいんだね?」
「や、ちが……くなく……なく、えっとやな……」
「まかせて☆」
ことこはぱっちんとウィンクすると、時雨の腕を引いて走り出した。
「ぴったりのお店があっちにあるから!」
「いやうちは……」
ベンチで待っているといいかけた時雨の脳内にイメージが走った。
ふりっふりの衣装を大量に積み上げたことこと、それを一つ一つ着ては姿見に映される自分の姿である。
「やっぱついてく」
「うん、いっしょに行こ! 女の子が可愛くなるのは、楽しいもんね!」
ことこたちが向かった店がどんな店かと言うと、普通は家でも外でも着ないような服が売っているお店である。
そこでは御白 小唄(CL2001173)と水端 時雨(CL2000345)。そして十夜 八重(CL2000122)という三人がきゃっきゃしていた。
「小唄さん着せかえ人形にしちゃいましょう」
「ふつうの服選ぶ感じじゃなくなってきてオラわくわくすっぞ」
「着せ替え人形!? このお店で!? おかしくない!?」
「おかしくないですよ」
「全くおかしくないですねえ」
「いやおかしいおかしい。僕が着るような服ここには一つも無いよね!」
「あるじゃないですか」
「ここに」
と言って、八重と時雨はタイプの違うメイド服をそれぞれ手に取った
後じさりした小唄は、背後が試着室だと気づいて冷や汗を垂らした。
「そ、そんなの着ません!」
「ふふ、冗談ですよ」
「そっかあ」
「ふふ、冗談じゃないっすよ」
「そっ……ん? うわあやめて!」
試着室の中に小唄を服と一緒に放り込む時雨。
その後ろで、八重はゴスロリ系の服を手に取っていた。
「時雨さんにはこんなのどうでしょう」
「うちそんなの行けるっすかね」
「行けますとも」
「じゃあ十夜パイセンにはカジュアルなのを……」
それぞれに服を渡し、試着室に入っていく。
ややあって、同時にカーテンが開いた。
ゴスロリドレスを身に纏った時雨。
Tシャツとダメージジーンズに野球キャップというスタイルの八重。
そしてメイド服の小唄。
「……僕だけやっぱりおかしいよ!」
いやだーかえるーと言ってメイド服のまま飛び出そうとする小唄を押さえる八重たち。
そんな様子を横目に、時任・千陽(CL2000014)は紙袋を抱えて歩いていた。
(シェルターとモールの組み合わせですか。確かに有事の際、食料品の心配がないのなら心情面でもケアしやすいということですかね……)
そんな彼の後ろから。
「おーい、ときちかー!」
切裂 ジャック(CL2001403)が駆け寄ってきた。
「奇遇ですね、切裂さん」
「まあな、何してんだ。買い物?」
「ええ、日用品を」
「主夫だなー」
ジャックは千陽の格好を下から上まで眺めてから、自分の顎に手を当てた。
「にしても今日もその制服かあ」
「基本的には支給されている制服で特に不便を感じていないので」
「それが私服ってんなら……うん、お前らしくていいんじゃねえか?」
「実際服飾には明るくないので楽ではあります」
「楽だよなあ、何も考えなくても外に出れるからさ。だが目立つなー! TPOがなー!」
「……そんなにですか」
自分の格好を見下ろす千陽に一旦おろおろしてから、ジャックは彼の裾を掴んだ。
「じゃ、服見てみようぜ! 色々あるからさ!」
ジャックに千陽が引っ張られていく。
その通り道に、ゲームセンターの入り口はあった。
モールによく設置されるマジックアームカワイイキャッチをメインにしたエリアで、奥の方にはメダルゲームと少数の音ゲーエリア。加えてカードゲームエリアと通常筐体といった案配である。
平たく言うとモールっぽいゲーセンだ。
その一角で、鳴神 零(CL2000669)と麻弓 紡(CL2000623)がガンシューティングに興じていた。
「ええいコンピューターごときに負けるわけにはいかないのだっ。もうワンコイン!」
「鳴神ちゃん、身体動きすぎてない?」
零は敵の射撃を身体で避けようとするもんだからびしばし当たっていた。一方で紡は手元の操作だけで対応する癖がついていたようで、慣れないながらもスムーズだ。
「ゲームにはゲームのうごきが……奥深い」
「シチュエーションに拘った射撃ゲームだもんね。でもこれは……真剣にならざるをえない」
ピンク色のガンコントローラーを構えてポージングする紡。
零もマネしてポージング。
「いつもより集中してる気がする」
「さ、次のステージいくよー」
きゃっきゃする女子たちの後ろを、ゲームカードを握って駆け抜ける黒崎 ヤマト(CL2001083)と御影・きせき(CL2001110)。
ちなみにゲームカードとはゲームセンターの筐体に対応した専用ICカードのことで、ユーザーデータの管理とお財布機能の二つを備えている。
「きせき! きせき! こっちの見たこと無い新機種!!」
「ほんとだ! 今日はお金を気にせずいっぱい遊べるね! ……ところで、いちまんえんって、100円玉何個分?」
指を折って数え始めるきせいに、ヤマトは胸を張って応えた。
「割り算できないのかまったくー、千個分だよ!」
「百個分だよ」
鯨塚 百(CL2000332)がムシをキングするゲームの前で振り返った。
「すごーい!」
「ところで見てくれよこのカード。レアだぜレア」
「すごーい!」
さっきからすごーいしか言ってないきせきが、音ゲーのコーナーへと足を踏み入れた。
周囲を見回すヤマトと百。
「太鼓にドラムにギターに……色々あんなー、どれにすっか」
「ダンスマニアックス」
「え?」
「ダンスマニアックス」
「なにそれ」
「はかせが一番運動になるって」
「なにそれ……」
今日本中を探しても数えるくらいしか設置数がないと評判のゲーム筐体である。プレイすると高確率でどっか怪我するからだ。
「そんなのねーって。セッションモードしようぜ。オレ、ギターやるから」
「じゃあ僕キーボードやるね」
「おいらドラム!」
「「せーのっ」」
「ショタバンドが見れると思ったか、アタシ(有料コンテンツ)だよ!」
試着室のカーテンを開け放った国生 かりん(CL2001391)がビッとポーズをとった。
その前でもじもじしながら胸元に手を当てる冥道 晴美(CL2001435)。
「かりんちゃん、その水着大胆すぎるよぉ……見てるだけで恥ずかしいよ……」
胸と同時に目元を手のひらで隠す晴美。
「ハル、あんたそれ完全にHDSだよ」
「HDS……」
DAIGO的な略し方に一瞬戸惑う晴美である。
「ほら、今日はハルの水着買いに来たんだから恥ずかしがるな。この中から選べや!」
ヒモと貝殻とシンプルオブセクシーという三種類の水着を押しつけ、試着室に放り込む。
数分後、開くカーテン。
貝殻を身につけて現われる晴美。
「……それを選ぶとは思わなかったわアタシ」
「かりんちゃんが渡したんじゃない!」
「いいって似合うって、胸を張りなハル。いいモンもってんだからサー!」
掴みかかるかりん。んにゃーといって暴れる晴美。
「このカッコでビーチにくりだしゃ、即SEXだよ」
「SEX……」
DAIGO的な略し方。だと思って欲しい。思え。
などと。
そんな会話を聞きつつ、新生ぬりかべ団・ウィズ・明石 ミュエル(CL2000172)はこの世の終わりみたいな顔をしていた。
「だ……大丈夫だよ。アタシたちに似合う水着、あるよ」
「鯉のぼりとか……?」
「ドラム缶とかじゃろ……?」
「ネガティブに、な、ならないで……き、きっと大きくなる……よ?」
「妖怪が?」
「「…………」」
「がんばろ? いいの……さがそ?」
折角都合(※)つけて来たのに大変な爆撃をうけてしまった三人である。
(※今回も工藤STに直接許可を貰ってゲスト出演している)
「……ん?」
そんな彼女たちを一瞥するも、リリス・スクブス(CL2001265)は水着選びを再開した。
「最近の水着は、ハイカラだなー。今日は商品券も貰ったし、思い切って高いの買っちゃおうかな……セーラー服の下に着る水着、とか」
そんな会話を、工藤・奏空(CL2000955)は意識から閉め出した。
「オッホン。たまきちゃんはさ、どんな服欲しいの?」
「そうですね……白いワンピースが欲しくて……」
なんだかアンティーク感のあるレディースファッション店の前で洋服をふらふらと見ているようだ。
奏空にはもうさっぱりの世界観である。axesっていうバラのロゴがついたお店だった。ちなみに奏空はこの読み方すらわかっていない。
「でも私の身長だと……」
「だ、大丈夫じゃない? 試着してみなよ」
「はい……」
たまきは一旦試着室に入ると、カーテンをしめた。
店内に取り残される奏空。あまりの居心地の悪さに外で待とうかと考えて……はたと向かいの雑貨店が目に付いた。
……しばらくして。
試着室のカーテンを開くと、奏空が大きなぬいぐるみを抱えて待っていた。
「じゃーん!」
「わあっ、ありがとうございます!」
たまきはぬいぐるみを受け取ると、満面の笑顔で抱きかかえた。
モールは広く歩く距離も長いので、屋内には等間隔にソファが置いてある。
そのなかのひとつに一組の男女が腰掛けていた。
「中学生のデート、か……」
白部 シキ(CL2000399)はたまきたちを横目に独りごちた。
横に座っていた櫻舞 影踏(CL2001317)が振り返る。
「なんか言ったかい。値段が心配なら気にすんな。商品券で足らねェ分は、俺っちが出してやんよ」
「別に、そんなことじゃないよ」
影踏を見ずに、前だけみて話すシキ。
「叔父とショッピングなんかしてどうするんだい。可愛い女の子や彼氏ならともかく」
「えー?いいじゃねえの、最近の若い子の流行りも知っておきたいんよ、おじさんもさァ」 にんまりと笑う影踏。
目をそらして顔をしかめるシキ。
「私は、きみの囲っている女じゃないからね」
影踏は笑ったまま答えない。ため息をつくシキ。
「なあ、俺っちに似合う服とか、シキちゃんが選んでくれるかい?」
「服なら買ってもらえばいいじゃないか、相手の好みのやつを」
そこまで言って、シキはてに持っていたドリンクボトルを飲み干した。
「なんだあれ。まあいっか」
なんか変な雰囲気の親子がいんなあくらいの顔で、シキたちの横を通り過ぎる成瀬 翔(CL2000063)。
スポーツ用品店で好きなだけ買い物を済ませた後で、待ち合わせの時間が来たというので一緒に来ていた女子たちの所へ向かう最中である。
「スマホの電話機能とか使えればなー。こういうとき楽なのに」
といいつつ合流地点へ到着。
「あっ、翔君お疲れ様です! もうちょっと待っててくださいねー」
「すぐ済みますからね」
いざ合流してみると、阿久津 ほのか(CL2001276)と天野 澄香(CL2000194)が洋服店でキャッキャしていた。
「わ、このレースのブラウス、ほのかちゃんに似合いそうです」
「こっちのワンピース、手触りもふんわりで涼しげで着心地よさそ~。澄香さんに似合いそうです~♪」
「ほんとですか? 可愛いー」
すぐ済むといいつつまだ長くかかりそうだ。
翔は『めしー』と言ってソファにぐでっとなった。
苦笑して振り返る澄香とほのか。
「あわわ、お腹すいちゃいましたか」
「待たせすぎましたね。それじゃあ、ご飯行きましょうか」
気に入ったサンダルやシャツを買って、二人は翔のもとへと歩き出す。
「そういえば、五華は澄香さんたちのアイデアなんでしたっけ」
「そうですね。モールになったなんてびっくりで……なんだか成長した子供を見てる気分です」
「嬉しくなっちゃいますね、そういうの」
「そう、ですね……」
妖のはびこるこんな世界でも、人々は楽しく平和に過ごすことが出来る。
いつでも破壊されてしまうガラス細工のような平和を、これからも守っていけるだろうか。
平和を諦めた者。戦いに狂った者。強欲に膨れる者。死を焦る者。あまりに歪んだこの日本という国の中で、当たり前の平和を守れる可能性を持っているのは……もしかしたら、自分たちだけなのかもしれない。
「フハハハハ! ホームセンターをゆうに越える品揃え。これならあれやこれやがはかどるな。我が買い物上手ぶりに恐れを抱きそうだ。貴様もそう思うだろう、フハハハハハ!」
「うん、そうだねー。ところでお名前言えるかな?」
「え、鞍馬・翔子だが……」
「よくできました。はい、飴あげるね。そこのお椅子に座っていられるかな?」
「気が利くな都会人。よしよし座っていてやろうではないか」
『迷子のお呼び出しをしております。ご家族でお越しの鞍馬様。鞍馬・翔子(CL2001349)様がお待ちです。迷子センターまでお越しください。繰り返します――』
「回転初日から迷子が出るなんて、盛況ですね」
「広い場所ですから、余計ですね」
守衛野 鈴鳴(CL2000222)とクー・ルルーヴ(CL2000403)はそろってファンシーショップ巡りをしていた。
こういうモールはおもしろいもので、一定間隔に同種の店舗ブースが配置されているので自然と大きな距離を移動していたりするものだ。
「鈴鳴さんは、こういうのはお好きでしょうか」
「わあ、可愛い。キレイですっ」
鈴鳴はウサギのガラス細工チャームを光に翳してから、近くにあった犬のキーホルダーを手に取った。
「じゃあ、私はこれ。クーさんみたいで可愛いです。えへへっ」
滅相もございませんと言いながら、クーは照れたように目を伏せた。
そんな彼女たちとすれ違うように店先を歩くラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と鐡之蔵 禊(CL2000029)。
「ココノさん早く早く。お洋服とか見るんでしょ!」
「はわわー、皆さん歩くの早いですねー」
九美上ココノが二人の後ろをゆっくりとついて歩いていた。にっこり笑うラーラ。
「ファイヴに来て日が浅いですよね。ココノさんこういうの興味あると思いまして」
「はいー。可愛いのとか大好きですー」
「この前……」
ラーラが話を切り出しにかかって、禊はちらりと二人の顔を見た。
「助けてくれたの、ココノさんですよね? この借りは……」
「いえー。記憶にありませんー」
ラーラと禊は顔を見合わせた。
「じゃあココノさんがピンチになったとき、私が助けます」
「わー、嬉しいですー。私とーっても弱いので、いつも助けられちゃいますねー」
「まあまあ、その話はまた今度っ」
禊は手を合わせて、クレープ屋の店舗を指さした。
「今日はあそぼっ。色んなもの、見て回ったりしてさ」
ココノの手を引いて小走りにゆく禊たち。
彼女たちの通り過ぎた輸入雑貨店の中で、四月一日 四月二日(CL2000588)と和泉・鷲哉(CL2001115)がコーヒーや酒の棚をゆっくりと見て回っていた。
「やっぱ、じっくり楽しめるものを厳選すんのがいいよな」
「ですねっ、四月二日さん!」
後ろをちょこちょこ突いてくる鷲哉に、四月二日はほんのりと笑った。
「俺最近、泡盛にはまってて」
「へえ、意外かも。キツくない?」
「水割りだとさすがに。けどたとえば……」
「美味そー。甘いの割る用に、ジュースとかも買ってこうか。トロピカル感あるヤツ」
二人は酒瓶を手に取りながら会話を弾ませていた。
「そうだ、この足で俺ん家で宅飲みしない?」
「ここで色々探すのも勿論ですけど良ければ俺少し作りましょうか。出来合いは出来合いで美味しいてすけどアレンジするとそれはそれで結構変わりますし」
「マジ? ウェルカムっていうかお願いしますぜひ!」
「そうと決まれば酒決めてつまみ見に行きましょ」
「はは、楽しい飲み会になりそう!」
こうして二人が駄菓子屋か乾物屋かどっちに行こうか相談している脇を、紙袋を抱えた蘇我島 恭司(CL2001015)と柳 燐花(CL2000695)が並んで通り過ぎた。
「いつもながら、お付き合い下さってありがとうございます」
「いやいや、それにしても夏服探すには良いタイミングだったよねぇ」
「多分必要なものはこれで全部ですね」
紙袋の中身はどうやら服のようだ。恭司は彼女に片っ端から試着させては吟味しての繰り返しをしていたらしい。モールはあっちこっちに服屋があるので見て回るだけでも楽しめるところがある。
ふと足を止める燐花。同じく足を止めた恭司は、彼女の視線の先にあったアクセサリーに気がついた。
「燐ちゃん、じっとしててね」
ペンダントをとって燐花につける。
「あの、これ?」
「燐ちゃん、お店までの道すがら何度か足を止めてたけど、このアクセの前が一番長かったんだよね、見てる時間」
燐花はペンダントを指で撫でて、睫毛を下げた。
「ありがとうございます。大事にします」
彼らが立ち止まったアクセサリーショップのはす向かいには、生花を売る店があった。
一階の外向き店舗だが、ちゃんと店内からも入れるように作られている。
そこへ立ち寄っていたのは天堂・フィオナ(CL2001421)と八重霞 頼蔵(CL2000693)だった。
「天堂くん。そのバラが気になるのかね」
「あ、いや……綺麗だなと思って」
そう応えつつも、フィオナの視線はバラに注がれていた。
「あいにくと花には詳しくないのだが……その花には?」
「昔、不可能って花言葉がついてたいたんだ。けど後から奇跡や夢が叶うって言葉がついたんだ。不可能だったものが本当に可能になったから……」
「そうか……ふむ」
値札を手にとって桁数を数えているフィオナを見て、頼蔵はそばに居た花屋風の男に声をかけた。
「店員、あのバラを買おう」
「いや、俺は花屋ではあるが店員じゃねえ」
困ったように頭を撫でながら返す田場 義高(CL2001151)。
ついうっかり日頃の癖で対応しそうになったが、今日は客である。
「そうか、すまない。店員、店員はいるか……」
頼蔵が店員を見つけて花を買い、フィオナに束で手渡している。
フィオナは華やぐ笑顔で花束を抱きかかえ、店を出て行った。
その後ろ姿を眺め、花屋はこうじゃねえとと頷く義高。そんな彼が手にしていたのはモールのチラシだった。
「しかし……職業体験か。こりゃいい企画かもしれねえな」
五華モールのメインとも言えるカフェ五華。ここでは職業体験を実施していた。
教育促進もさることながら、ここでの仕事に興味を持った人をそのまま引き込む作用も期待できるらしく、初日から結構な人数の体験応募があった。
そこから選ばれた数人の中に、白枝 遥(CL2000500)と財城 真珠(CL2001434)の姿があった。
「子供だからといって甘く見ないでください。ホールスタッフなんて楽勝です。ご注文はおきまりですか?」
ハンディーコントローラーを手に胸を張った真珠に、テーブルにオカルトグッズを沢山並べた天羽・テュール(CL2001432)がびしっと手を上げた。
「ざるそば二枚と生姜焼き定食大盛り。あと焼き肉定食。こっちも大盛りね。あと……」
「わっ、わわ……!」
慣れない操作に慌てる真珠。
がっくり肩を落としたが、後ろでしっかり聞いていたプロスタッフが既に入力を終えていた。
「さ、復唱ですよ」
「えっと……ざるそばふたつと、焼き肉定食……えっと、ごめんなさい」
「いいんですよ。あ、追加でクリームあんみつ大盛り」
「かしこまりましたっ」
オーダーが専用の機械を通してレシート出力されていく。
すごく地味な話だが、(海外の)飲食店では入力した注文内容を無線で送ってキッチン側に出力する装置が使われているが、無線がアレな日本ではハンディーに表示したバーコードを専用の機械にピッと読ませて出力するという装置が使われている。無線式のちょい前くらいに開発された装置だ。
そうして送られてきたレシートを見て、厨房では遥たちが料理に勤しんでいた。
「皆で考えた五華がここまで大きくなったんだ。ふふ、なんだか嬉しいな」
来ている制服は自前。前に貰った名誉店員服である。
こうして見ていると、最初に考えたメニューをモデルにバリエーションが増えていて、遥にとってもちょっと勉強になったりもした。
「この料理、幼なじみに作ったら喜んでくれるかな」
カフェは一般的なフードコートに近い。
買い物をある程度済ませた三島 椿(CL2000061)と六道 瑠璃(CL2000092)がコーヒーや紅茶を飲みながら休憩するにはぴったりな場所なのだ。
選んだのは主に服。欲しかったものをちらほら選んでといた具合である。
「今日は付き合ってくれてどうもありがとう」
「こっちこそ。誘ってくれてありがと」
紅茶に口をつけつつ、目をそらす椿。
「また誘っても……だ、大丈夫かしら」
「えっと、あ、うん」
コーヒーに口をつけて目をそらす瑠璃。
「また誘って貰えると……嬉しい」
二人は顔を見合わせ、照れたように笑った。
その時である、ステージの上に予め設置されていたピアノに、藤 壱縷(CL2001386)が腰掛けた。
「気持ちを込めて歌います。『星結び』……」
ピアノを奏でながらウィスパーヴォイスで歌い上げる彼女に、椿たちはうっとりと耳を傾けた。
季節にちなんで七夕の織姫をイメージしたというその歌は、愛の歌であり希望の歌でもあった。
そんな演奏を、コーヒー片手にじっと聞き入る阿久津 亮平(CL2000328)。
(囁くような声なのに、ちゃんと耳にも心にも届く。しみわたるような歌声なんだな……いいな。とても安らぐ、良い声だ)
演奏が終わる頃。
深々とお辞儀をした彼女に歩み寄り、亮平は花束を手渡した。
「亮平様、聞きに来てくださったんですか!」
「ああ、お疲れ様。やっと藤さんの歌を聴けた。嬉しかったよ」
「ふふふ。私も嬉しいです。ありがとうございます!」
そっと近づいたスタッフが『もう一曲いかがですか』と問いかけて、壱縷は亮平の顔を見た。
頷く亮平。
壱縷は笑顔でピアノの前に座り、再びカバーを開いた。
ポップでモダンな歌が流れる中で、奥州 一悟(CL2000076)はステーキ肉にがっついていた。
その様子を同じく食事を取りながら眺める光邑 研吾(CL2000032)と光邑 リサ(CL2000053)。
「優勝おめでとうさん」
「ありがとう。優勝できてマジ嬉しいぜ」
「やっぱり平和っていいわよネ」
「五麟市が七星剣に襲われて、一時はどうなることかと思うたけど、体育祭が行われるほど復興してよかったな」
「七星剣といえば……ランボーさん、最近噂も聞かないわネ。引退しちゃったのカシラ?」「ランボー? ああ、暴力坂の。死んだんとちゃうか?」
「オレ、会ってないんだよなぁ。で、どんなジイサンなの暴力坂って?」
「あのジジイ、俺のめっちゃ似てる似顔絵見て、知らん言うほどボケとったし」
「あら、なかなかイイ男だったわヨ」
「なんやて! あんなんのどこがええねん!」
「フフフ、焼きもち焼いてくれてうれしいワ。安心して。今までもこれからも、ケンゴがワタシのナンバーワンよ」
「うわぁ、やめてくれよ。父ちゃんと母ちゃんのいちゃラブもたいがいだけどさ……ん?」
ぺらり、と一悟の手元に紙が滑り込んできた。見れば研吾が描いた似顔絵だった。
裏返してみるとこう書いてある。
『濡れ手に粟しようって魂胆が露骨すぎて乗れねえ』
「……すてとけ」
「あら、でもこれって変じゃないかしら。だって私たち、お互いの連絡先を一切知らないのよ? どうやって予知したのかしら」
歌と演奏がゆったりとしたバラード調のものに変わった所で、華神 悠乃(CL2000231)はさっぱりした様子でフードコートにやってきた。
さっきまでスポーツジムで汗を流してきた所だ。
「スポーツジムの設備、やっぱり最新のがそろってたね。まとめ買いとメンテ契約でメーカーから値切ったのかな」
こういう所は大手グループの強みだ。空調も天井備え付けの除過湿複合器とイオン消臭機で相当気分良く運動ができた。普通だと一枠終わった頃には窓ガラスが全て曇っているなんてこともザラなのだ。
「でも一番参考になったのは非常時対応かな。ジムって基本頑丈だし静かだから、非常時には人を寝泊まりさせるのに向くんだね……考えたことも無かったかな」
ただその反面、インストラクターが探り探りなところがあるので悠乃の持てる知識をできる限りアンケート用紙に書いてあげることにした。
そんな彼女の隣の席で。
「ごめんねぇ、いつも家事お願いしちゃってるから……若いうちからそんな所帯じみなくていいのよ……」
「いえ、家計を預かる身としては、他店との比較は大切ですからねっ」
向日葵 御菓子(CL2000429)と菊坂 結鹿(CL2000432)が向き合ってケーキなぞ食べていた。
結鹿はノートになにやら書き込んで、御菓子はそれを眺めているといった様子である。
(この子……中学生のうちからこんな大人の苦労を……だめよね、もっと子供らしい楽しみ方を教えなくっちゃ!)
御菓子は今日一日、結鹿を連れ回すことに決めた。
●売る人買う人巡る人
五華モールにはいくつもの店舗があるが、その中にはファイヴの覚者が開いた店も存在している。
その一つが『マックス村ふるさとショップ』である。
責任者は連名で七海 灯(CL2000579)、エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)、鈴白 秋人(CL2000565)、栗落花 渚(CL2001360)、ゆかり・シャイニング(CL2001288)である。
まず灯はファイヴ村の絵はがきやパンフレットなどを置き、ちょっとした観光案内所に似た相談窓口を設けた。見学会や居住に関する相談も受け付けているようで、初日から効果はなかったが『多くの人が窓口の存在を知る』という所に大きな意味が生まれたようだ。
一方でエメレンツィアや渚はすねこすりキャラバンの出張やアンテナショップの設置など、色々と派手に展開する要素を増やしていった。
「このモールがスタンダード化して全国に展開していったなら、村の広いアピールにもつながるわね」
「そうなると、もっと色々な方に対応できる環境が必要そうです」
「そこは皆で、がんばろうね。ゆくゆくは私の作った野菜なんかも売れたらいいな」
のぼりやポスターを設置していく渚たち。
そこへモール内を歩いていた敷村が立ち寄った。
「まいどどうも! お世話になっております!」
「あ、おじさんあの時の!」
「その節はどうもどうも!」
「お知り合いなんですか?」
ゆかりと秋人が出店風のワゴンを組み立てて、アイスクリームや豆腐なんかを陳列していた。
秋人の入れたアイスクリームはだいぶ売れたが、モールの客数に対して仕入れ数が少なすぎるせいでかなり早めに売り切れてしまった。
今のところは『数量限定』を売り文句にしてしのいでいるが、店舗数が増えることを考慮するともっと根本的な所で量を増やす必要があるだろう。
「今後の課題、沢山あるな……」
「でも、マックス村のいいところ。たくさんアピールできちゃいますね!」
「今後はうちのスタッフが常駐して販売をさせてもらいます。定期的にうちの営業担当が相談に行くと思いますので、どうかひとつ」
「はい、よろしくお願いします」
名刺を改めて受け取って、五人は敷村を見送った。
顔を見合わせる五人。
「ここの売り上げが村の発展にダイレクトにつながるんですね」
「沢山稼げば沢山養える」
「けどそのためには皆の力が必要ね」
「責任、重大だね」
「では先陣をきるつもりで、ビシバシやりましょう!」
『マックス村ふるさとショップ』から少し離れたエリアでは、和物を扱う雑貨屋や服屋が集まっていた。
そんな中で、鈴駆・ありす(CL2001269)と姫神 桃(CL2001376)が和服を選んでいた。
並んだ帯を手にとって吟味する桃。
「ありすさんには、やっぱり赤色かしらね。けど詰め物はいらないから、帯は派手目に……」
「どうせ詰め物のいらいない体型よ」
軽く着せ替え人形になりつつ毒気づくありす。
桃は口に手を当てた。
「あら、ごめんなさい。でもありすさん、可愛いから。もっとそういうところ、引き出したいのよ」
「……」
赤い顔をそらしたありすに、桃はくるりと振り返った。
「そういえば名前で呼んでたけれど、よかったかしら」
「別に……いいわよ」
「そ?」
桃は再び帯選びに戻った。
その後ろ姿をちらちらと見ながら、ありすは小さく咳払いした。
「このあと、お茶でもどう? 五華が気になるし」
「そうね。新メニューに期待ね」
彼女たちが和服を選んでいるその横で、榊原 時雨(CL2000418)と楠瀬 ことこ(CL2000498)たちがうろうろしていた。
「うーん、やっぱり和服わかんないよー」
「せやから、ほら……ああいうのでええんよ? バンドの時みたいな? 服?」
「バンドー?」
くるーりと振り返ることこ。
「あれはことこ手作りだよ? 既製服のアレンジだけど」
「アレンジ……」
ごくりとつばを呑んだ時雨の顔を凝視して、ことこはにんまりと笑った。
顔を近づけることこ。
顔を遠ざける時雨。
「はっはーん」
「なんや近い近い」
「時雨ぴょん、ああいうの着てみたいんだね?」
「や、ちが……くなく……なく、えっとやな……」
「まかせて☆」
ことこはぱっちんとウィンクすると、時雨の腕を引いて走り出した。
「ぴったりのお店があっちにあるから!」
「いやうちは……」
ベンチで待っているといいかけた時雨の脳内にイメージが走った。
ふりっふりの衣装を大量に積み上げたことこと、それを一つ一つ着ては姿見に映される自分の姿である。
「やっぱついてく」
「うん、いっしょに行こ! 女の子が可愛くなるのは、楽しいもんね!」
ことこたちが向かった店がどんな店かと言うと、普通は家でも外でも着ないような服が売っているお店である。
そこでは御白 小唄(CL2001173)と水端 時雨(CL2000345)。そして十夜 八重(CL2000122)という三人がきゃっきゃしていた。
「小唄さん着せかえ人形にしちゃいましょう」
「ふつうの服選ぶ感じじゃなくなってきてオラわくわくすっぞ」
「着せ替え人形!? このお店で!? おかしくない!?」
「おかしくないですよ」
「全くおかしくないですねえ」
「いやおかしいおかしい。僕が着るような服ここには一つも無いよね!」
「あるじゃないですか」
「ここに」
と言って、八重と時雨はタイプの違うメイド服をそれぞれ手に取った
後じさりした小唄は、背後が試着室だと気づいて冷や汗を垂らした。
「そ、そんなの着ません!」
「ふふ、冗談ですよ」
「そっかあ」
「ふふ、冗談じゃないっすよ」
「そっ……ん? うわあやめて!」
試着室の中に小唄を服と一緒に放り込む時雨。
その後ろで、八重はゴスロリ系の服を手に取っていた。
「時雨さんにはこんなのどうでしょう」
「うちそんなの行けるっすかね」
「行けますとも」
「じゃあ十夜パイセンにはカジュアルなのを……」
それぞれに服を渡し、試着室に入っていく。
ややあって、同時にカーテンが開いた。
ゴスロリドレスを身に纏った時雨。
Tシャツとダメージジーンズに野球キャップというスタイルの八重。
そしてメイド服の小唄。
「……僕だけやっぱりおかしいよ!」
いやだーかえるーと言ってメイド服のまま飛び出そうとする小唄を押さえる八重たち。
そんな様子を横目に、時任・千陽(CL2000014)は紙袋を抱えて歩いていた。
(シェルターとモールの組み合わせですか。確かに有事の際、食料品の心配がないのなら心情面でもケアしやすいということですかね……)
そんな彼の後ろから。
「おーい、ときちかー!」
切裂 ジャック(CL2001403)が駆け寄ってきた。
「奇遇ですね、切裂さん」
「まあな、何してんだ。買い物?」
「ええ、日用品を」
「主夫だなー」
ジャックは千陽の格好を下から上まで眺めてから、自分の顎に手を当てた。
「にしても今日もその制服かあ」
「基本的には支給されている制服で特に不便を感じていないので」
「それが私服ってんなら……うん、お前らしくていいんじゃねえか?」
「実際服飾には明るくないので楽ではあります」
「楽だよなあ、何も考えなくても外に出れるからさ。だが目立つなー! TPOがなー!」
「……そんなにですか」
自分の格好を見下ろす千陽に一旦おろおろしてから、ジャックは彼の裾を掴んだ。
「じゃ、服見てみようぜ! 色々あるからさ!」
ジャックに千陽が引っ張られていく。
その通り道に、ゲームセンターの入り口はあった。
モールによく設置されるマジックアームカワイイキャッチをメインにしたエリアで、奥の方にはメダルゲームと少数の音ゲーエリア。加えてカードゲームエリアと通常筐体といった案配である。
平たく言うとモールっぽいゲーセンだ。
その一角で、鳴神 零(CL2000669)と麻弓 紡(CL2000623)がガンシューティングに興じていた。
「ええいコンピューターごときに負けるわけにはいかないのだっ。もうワンコイン!」
「鳴神ちゃん、身体動きすぎてない?」
零は敵の射撃を身体で避けようとするもんだからびしばし当たっていた。一方で紡は手元の操作だけで対応する癖がついていたようで、慣れないながらもスムーズだ。
「ゲームにはゲームのうごきが……奥深い」
「シチュエーションに拘った射撃ゲームだもんね。でもこれは……真剣にならざるをえない」
ピンク色のガンコントローラーを構えてポージングする紡。
零もマネしてポージング。
「いつもより集中してる気がする」
「さ、次のステージいくよー」
きゃっきゃする女子たちの後ろを、ゲームカードを握って駆け抜ける黒崎 ヤマト(CL2001083)と御影・きせき(CL2001110)。
ちなみにゲームカードとはゲームセンターの筐体に対応した専用ICカードのことで、ユーザーデータの管理とお財布機能の二つを備えている。
「きせき! きせき! こっちの見たこと無い新機種!!」
「ほんとだ! 今日はお金を気にせずいっぱい遊べるね! ……ところで、いちまんえんって、100円玉何個分?」
指を折って数え始めるきせいに、ヤマトは胸を張って応えた。
「割り算できないのかまったくー、千個分だよ!」
「百個分だよ」
鯨塚 百(CL2000332)がムシをキングするゲームの前で振り返った。
「すごーい!」
「ところで見てくれよこのカード。レアだぜレア」
「すごーい!」
さっきからすごーいしか言ってないきせきが、音ゲーのコーナーへと足を踏み入れた。
周囲を見回すヤマトと百。
「太鼓にドラムにギターに……色々あんなー、どれにすっか」
「ダンスマニアックス」
「え?」
「ダンスマニアックス」
「なにそれ」
「はかせが一番運動になるって」
「なにそれ……」
今日本中を探しても数えるくらいしか設置数がないと評判のゲーム筐体である。プレイすると高確率でどっか怪我するからだ。
「そんなのねーって。セッションモードしようぜ。オレ、ギターやるから」
「じゃあ僕キーボードやるね」
「おいらドラム!」
「「せーのっ」」
「ショタバンドが見れると思ったか、アタシ(有料コンテンツ)だよ!」
試着室のカーテンを開け放った国生 かりん(CL2001391)がビッとポーズをとった。
その前でもじもじしながら胸元に手を当てる冥道 晴美(CL2001435)。
「かりんちゃん、その水着大胆すぎるよぉ……見てるだけで恥ずかしいよ……」
胸と同時に目元を手のひらで隠す晴美。
「ハル、あんたそれ完全にHDSだよ」
「HDS……」
DAIGO的な略し方に一瞬戸惑う晴美である。
「ほら、今日はハルの水着買いに来たんだから恥ずかしがるな。この中から選べや!」
ヒモと貝殻とシンプルオブセクシーという三種類の水着を押しつけ、試着室に放り込む。
数分後、開くカーテン。
貝殻を身につけて現われる晴美。
「……それを選ぶとは思わなかったわアタシ」
「かりんちゃんが渡したんじゃない!」
「いいって似合うって、胸を張りなハル。いいモンもってんだからサー!」
掴みかかるかりん。んにゃーといって暴れる晴美。
「このカッコでビーチにくりだしゃ、即SEXだよ」
「SEX……」
DAIGO的な略し方。だと思って欲しい。思え。
などと。
そんな会話を聞きつつ、新生ぬりかべ団・ウィズ・明石 ミュエル(CL2000172)はこの世の終わりみたいな顔をしていた。
「だ……大丈夫だよ。アタシたちに似合う水着、あるよ」
「鯉のぼりとか……?」
「ドラム缶とかじゃろ……?」
「ネガティブに、な、ならないで……き、きっと大きくなる……よ?」
「妖怪が?」
「「…………」」
「がんばろ? いいの……さがそ?」
折角都合(※)つけて来たのに大変な爆撃をうけてしまった三人である。
(※今回も工藤STに直接許可を貰ってゲスト出演している)
「……ん?」
そんな彼女たちを一瞥するも、リリス・スクブス(CL2001265)は水着選びを再開した。
「最近の水着は、ハイカラだなー。今日は商品券も貰ったし、思い切って高いの買っちゃおうかな……セーラー服の下に着る水着、とか」
そんな会話を、工藤・奏空(CL2000955)は意識から閉め出した。
「オッホン。たまきちゃんはさ、どんな服欲しいの?」
「そうですね……白いワンピースが欲しくて……」
なんだかアンティーク感のあるレディースファッション店の前で洋服をふらふらと見ているようだ。
奏空にはもうさっぱりの世界観である。axesっていうバラのロゴがついたお店だった。ちなみに奏空はこの読み方すらわかっていない。
「でも私の身長だと……」
「だ、大丈夫じゃない? 試着してみなよ」
「はい……」
たまきは一旦試着室に入ると、カーテンをしめた。
店内に取り残される奏空。あまりの居心地の悪さに外で待とうかと考えて……はたと向かいの雑貨店が目に付いた。
……しばらくして。
試着室のカーテンを開くと、奏空が大きなぬいぐるみを抱えて待っていた。
「じゃーん!」
「わあっ、ありがとうございます!」
たまきはぬいぐるみを受け取ると、満面の笑顔で抱きかかえた。
モールは広く歩く距離も長いので、屋内には等間隔にソファが置いてある。
そのなかのひとつに一組の男女が腰掛けていた。
「中学生のデート、か……」
白部 シキ(CL2000399)はたまきたちを横目に独りごちた。
横に座っていた櫻舞 影踏(CL2001317)が振り返る。
「なんか言ったかい。値段が心配なら気にすんな。商品券で足らねェ分は、俺っちが出してやんよ」
「別に、そんなことじゃないよ」
影踏を見ずに、前だけみて話すシキ。
「叔父とショッピングなんかしてどうするんだい。可愛い女の子や彼氏ならともかく」
「えー?いいじゃねえの、最近の若い子の流行りも知っておきたいんよ、おじさんもさァ」 にんまりと笑う影踏。
目をそらして顔をしかめるシキ。
「私は、きみの囲っている女じゃないからね」
影踏は笑ったまま答えない。ため息をつくシキ。
「なあ、俺っちに似合う服とか、シキちゃんが選んでくれるかい?」
「服なら買ってもらえばいいじゃないか、相手の好みのやつを」
そこまで言って、シキはてに持っていたドリンクボトルを飲み干した。
「なんだあれ。まあいっか」
なんか変な雰囲気の親子がいんなあくらいの顔で、シキたちの横を通り過ぎる成瀬 翔(CL2000063)。
スポーツ用品店で好きなだけ買い物を済ませた後で、待ち合わせの時間が来たというので一緒に来ていた女子たちの所へ向かう最中である。
「スマホの電話機能とか使えればなー。こういうとき楽なのに」
といいつつ合流地点へ到着。
「あっ、翔君お疲れ様です! もうちょっと待っててくださいねー」
「すぐ済みますからね」
いざ合流してみると、阿久津 ほのか(CL2001276)と天野 澄香(CL2000194)が洋服店でキャッキャしていた。
「わ、このレースのブラウス、ほのかちゃんに似合いそうです」
「こっちのワンピース、手触りもふんわりで涼しげで着心地よさそ~。澄香さんに似合いそうです~♪」
「ほんとですか? 可愛いー」
すぐ済むといいつつまだ長くかかりそうだ。
翔は『めしー』と言ってソファにぐでっとなった。
苦笑して振り返る澄香とほのか。
「あわわ、お腹すいちゃいましたか」
「待たせすぎましたね。それじゃあ、ご飯行きましょうか」
気に入ったサンダルやシャツを買って、二人は翔のもとへと歩き出す。
「そういえば、五華は澄香さんたちのアイデアなんでしたっけ」
「そうですね。モールになったなんてびっくりで……なんだか成長した子供を見てる気分です」
「嬉しくなっちゃいますね、そういうの」
「そう、ですね……」
妖のはびこるこんな世界でも、人々は楽しく平和に過ごすことが出来る。
いつでも破壊されてしまうガラス細工のような平和を、これからも守っていけるだろうか。
平和を諦めた者。戦いに狂った者。強欲に膨れる者。死を焦る者。あまりに歪んだこの日本という国の中で、当たり前の平和を守れる可能性を持っているのは……もしかしたら、自分たちだけなのかもしれない。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
